東京都議会予算特別委員会速記録第三号

   午後七時二分開議

○青木副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 初鹿明博委員の発言を許します。

○初鹿委員 私は、先ほどの北城委員、四十九歳でお子さんが生まれた、恵まれたということですが、私は二十八歳で長女、三十一歳で長男、そして三十四歳で次女に恵まれまして、今子育ての真っ最中の身ですが、これから近い将来到来するであろう青少年の問題について、幾つか質問をさせていただきます。
 まず初めに、ひきこもりについてお伺いいたします。
 ひきこもりという言葉、恐らく多くの方は、もうご存じだと思います。しかし、それと同様にして、多くの方がひきこもりの実態やその実情について理解をしていないのが、実は現状なのではないかなと思います。そうしたひきこもりの定義すら理解をされていないことが、現在、社会問題として顕在化しているにもかかわらず、対応がおくれていて、なかなか対策が進んでいかないその理由の一つになっているのではないかなと感じております。
 平成十五年に厚生労働省がひきこもりガイドラインを作成して、やっと政府レベルでも、問題の認識をして対策が進み出しているところであります。
 本日は、このひきこもりとは何かということを、何が問題なのかということを、まず皆さんにご理解をしていただくということを目的として、何点か質問させていただきます。
 まず、東京都はこれまで、ひきこもりという問題を取り出して施策を行ってきておりませんが、思春期における心のケア対策として、健康局が保健所や精神保健福祉センターにおいて、精神保健福祉相談や訪問指導の中で、ひきこもりについても対応してまいりました。
 平成十三年度からは、東京都思春期精神保健ケースマネジメントモデル事業を実施し、精神保健福祉センターを中心に、医療的ケアを必要とする対応困難な事例に対し、関係機関による援助活動チームを編成し、心の問題を抱えた本人と家族への支援を行い、実績を上げてきたと聞いています。そこで伺います。
 健康局に伺いますが、これまでの取り組みの中で、ひきこもりについてはどのような課題があると認識しておりますか。

○平井健康局長 ひきこもりとは、厚生労働省の定義によれば、統合失調症やうつ病などの精神障害を含めたさまざまな要因により、自宅以外の生活の場が長期にわたって失われている状態とされております。
 これまでに対応したひきこもりの事例によりますと、精神保健医療の分野だけではなく、社会や家族とのかかわりなど、さまざまな要素を考慮していかなければ解決が困難な側面がございます。
 このため、教育相談所や児童相談所などの公的機関や民間の支援団体などが連携した総合的な支援が重要であると考えております。

○初鹿委員 今お答えにありましたけれども、重要なところは、精神保健医療の分野だけでは解決困難な事例、これについてどのような対策を行うかということだと思うんです。今までの都の施策ですと、どうしても精神医療、精神障害という医療的な対応で行ってきたように思うんですが、ここで、ひきこもりの中でも、いわゆる社会的ひきこもりというものに対する対策というのが必要なんだということを、重要だということを押さえておきたいと思います。
 ところで、社会的ひきこもりということですが、斎藤環さんという精神科の先生の定義によれば、知事もご存じだと思いますが、二十代後半までに問題化をし、自宅以外での生活の場が六カ月以上の長期にわたって失われている状態で、統合失調症やうつ病などの精神障害が第一の原因であるとは考えにくい状態ということであります。つまり、医療的なアプローチだけでは解決できないということなんですね。
 ところで、じゃ、現在、ひきこもりの人はどれぐらいいるのかということですけれども、さまざまな調査があります。教育評論家の尾木直樹氏なども調査を行っておりますが、その調査などによりますと、全国で五十万から百万人いるのではないかと類推されております。あくまでも類推です。この数字を単純に基礎にすれば、都内で五万から十万ということですから、百世帯から五十世帯に一人はひきこもりの方がいるという計算になりますね。
 つまり、皆さん今、幹部の職員の方並んでいますが、その中にも一人いてもおかしくないぐらいいるということなんですね。それぐらい多くの方がひきこもってしまっているという現状があるということを、皆さん認識していただきたい。
 さて、ひきこもりにある方の年齢ですけれども、これもさまざまな調査によりますと、平均年齢が大体二十六から二十七歳。二十代から三十代で約八割。特に三十代では三五%前後ということで、私、三十五歳ですけれども、ひきこもりの中心は、大体三十代に移ってきているということです。
 また、期間はどれぐらいになるかというと、調査で大体出てくるのは、四年から六年ぐらいが多いということなんですね。また七年以上ひきこもっているという方も十五%以上もいるというんですよ。何でこういう数字が出てくるかというと、恐らく、五年ぐらいひきこもっていると、そろそろ親もこのままじゃいけないなと思って、さまざまな相談機関などに足を運ぶ。その結果、四年から六年、それ以上にあらわれてくるんだと思うんです。実際には、顕在化していない四年未満の方というのも相当数いるということを、やっぱり認識として押さえておかなければならないと思います。
 また、多くの調査で指摘されているところですが、男女比では、男性が約八割ぐらいに上るんじゃないかとか、また長男、長女の割合も八割に上るということであります。これは何を意味しているのかということを、皆さん考えていただきたいと思います。
 おおよその概要をお話しさせていただきましたが、なかなか実態がつかめていないんですよ。ですから、調査というものも、これから進めていかなければなりません。そういう意味では、ことし平成十六年度から、生活文化局が中心となって、ひきこもり等相談事業を開始するということですから、ぜひしっかりとした調査、相談を行っていただきたいとお願いをするとともに、もう既に民間のNPOなどは、実績を上げて、調査もそれなりの成果を上げております。こういった民間の団体と連携をしたり、その調査結果を活用したりということも考えていただきたいんですね。
 ご承知だと思いますけれども、NHKは、ひきこもりサポートキャンペーンというホームページを開いて、ブラウン管から離れて、ひきこもりの当事者に対してホームページ上で相談に乗るなど、ひきこもりについて取り組んできております。
 また、ひきこもりの親の会で唯一の全国組織である、全国引きこもりKHJ親の会というのがあるんですが、こちらも先ごろ、ひきこもりサポートナビというホームページを立ち上げました。このホームページも、ネット上で相談に乗ったり、またメール相談も受け付けている。また会員制で、親子で会員になると--ひきこもりというのは、親子同士、会話がなかなかできない。ネット上で親子で会話するというシステムもつくっているということなんですね。これはまさに、ひきこもりの当事者やひきこもりの親のニーズをしっかりとらえているからこそできる、そういうシステムだと思うんですね。
 また、この引きこもりKHJ親の会の東東京では、二年前から電話相談事業を始めていて、またそれに並行して、電話相談員の教育、育成ということも行ってきているんです。そういう実績を上げているNPOや民間団体を活用して、連携していくことが非常に重要だと思うんですね。
 またあわせて、都庁内でも、ひきこもりというと、どうしても、相談に行って、いろいろ役所をたらい回しにされてしまうというんですよ。例えば児童相談所に行ったら、これは対応できないから、じゃ、これは教育委員会じゃないかとか、また、何か暴力とかがあれば、それは警察の問題じゃないかとか、いろいろなところをたらい回しにされて、どこで対応していいかわからないということなんです。
 いろんな関係機関がかかわっているということのあかしだと思うんですが、今回、生活文化局が中心になるということですが、そういった関係局と連携をすることが必要だと思います。またあわせて、現場の区市町村との連携も必要になってくるわけですが、このような幅広く関係者と連携をすることについて検討を進めていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○三宅生活文化局長 社会的ひきこもりは、その原因、生活の実態、あるいは必要とされます支援もさまざまでありまして、個々の実情に適切に対応する上で、柔軟かつ機動的に活動できる民間団体の果たす役割は大きく、行政と民間団体の連携が重要であります。
 このため、お話のひきこもり等相談事業におきまして、行政、NPO等の連絡会議を設け、都の関係各局、区市町村及び民間団体の間で情報交換を行うこととしておりますし、ネットワークづくりなど、連携のあり方についても検討してまいります。

○初鹿委員 早期に連絡会をつくり上げて、今後の施策の検討を進めていただきたいと思います。
 さて、ひきこもりの対応で重要なのは、私は出口と入り口だと思うんですね。この考え方が必要だと思うんです。つまり、ひきこもりというのは、現在、社会に出ていけない状態です。そこに対してさまざまな、訪問をしてサポートをするとか、居場所をつくるとか、いろんなサポートをしながら、最終的に出口は何かといえば、仕事をして自立をしていくということだと思うんです。つまり、就労のための支援が一番重要だと思うんですね。ただ外に行くだけでは、やはり不十分だということです。
 そういう意味では、就労ということですから、産業労働局長、後ろの方で、何か関係なさそうな顔をしていますけれども、産業労働局長が一番大切な位置にいるので、そのことをしっかり押さえていただいて、連絡会にもしっかりと参加をしていただくようにお願いをいたします。
 ひきこもりの問題は、以前、知事もいっておりましたが、個々の家族の問題であるというのは間違いありません。しかし、家族では解決できないから、今、社会問題として顕在化しているんだと思います。このひきこもりを社会問題としてとらえ、行政が何らかの対策を打たなければいけないというのは、どういう意味なのかということをぜひ考えていただきたいんですね。
 ひきこもりが長期化をして、そして今は親に養われているけれども、じゃ、親が養うことができなくなったらどうなるのか。十年、二十年と、社会と関係を持たなかったら、働くことは当然できなくなって、そうしたら、生活保護なり何らかの福祉の手当てなりをして、行政が税金で面倒を見るという結果になりかねません。
 そうならない前に、先に手当てをして、そして将来的に仕事をして、最後は、自分たちが税金でサポートしてもらった分を自分が働いて返せるように、生きたお金を使う方が私は有効だと、有意義だと考えておりますので、ぜひそのことを皆さんご理解いただきたいと思います。
 さて、出口、入り口というお話をいたしましたが、入り口は何かということに移ります。
 入り口というのは、ひきこもりをこれ以上増加させないということだと思います。さまざまな調査の結果で、ひきこもりの方の多くが、小中高生時代に不登校の経験があるといいます。また、約三五%は、高校生のときから継続してひきこもっているという調査の結果もあります。つまり、不登校対策、特に義務教育が修了するこのときの対応というのが非常に重要だと思うんですね。
 そこでまずお伺いしますが、現在の中学校の不登校の生徒、大体七千人いるということですが、この中学生の不登校の理由と、また不登校生徒の進路の状況とその後の状況について、まずお伺いいたします。

○横山教育長 平成十四年度におけます中学校の不登校生徒七千三百三十二人のうち、不登校状態が継続している主な理由と人数でございますが、不安など情緒的混乱が千六百四十二人、無気力が千三百五十二人、遊び、非行が八百六十二人、学校生活上の影響が五百五人でございます。
 また、平成十四年度における長期欠席者の卒業時の主な進路状況は、長期欠席者四千八人中、進学した者が二千九百十人、就職した者が三百十人、進学も就職もしなかった者が七百六十九人でございます。
 卒業時以降の進路の状況につきましては、進路が多様なため、追跡調査が難しいことや、プライバシーへの配慮が必要なことから、特に調査は行っておりません。

○初鹿委員 当たり前なんですけれども、進学していると把握できるけれども、進学しなくなると、その後ひきこもっているのかどうなのかもわからなくなってしまうということだと思うんですよ。ですから、本人が進学をして学業を続けたいという希望があるならば、実際に登校できるかは否かとして、その希望をかなえてあげていきたいなと思うんです。
 そういう意味では、不登校の傾向のある生徒を積極的に受け入れているチャレンジスクールの試みというのは、非常に評価をしているところなんです。特に桐ケ丘、世田谷泉のチャレンジスクール両校では、本来四年で卒業のところを、およそ四割の生徒が三年で卒業しているということです。これは、弾力的な教育課程が、この不登校傾向の生徒にマッチしている、そのあかしだと思うんです。しかし、このチャレンジスクールにおいても不登校になってしまう生徒がいるということですね。
 学業を継続する意思があるにもかかわらず、なかなか登校できなくなってしまったそういう生徒を、中退することなく、何とか学業を続けさせる、そういう方策はないのでしょうか。

○横山教育長 チャレンジスクールでは、多様な科目の設置、あるいは柔軟で弾力的な履修形態を採用しますとともに、カウンセリング等の相談体制の充実を図っているところでございますが、さらに、生徒のつまずきや悩みに学校全体でケアできるように、学校現場では、さまざまな工夫やきめ細かい努力を行っているところでございます。
 これまでの工夫や努力を今後も精力的に行うと同時に、お話がございましたように、通信制課程との連携によります単位取得も有効な方法であると考えられますので、今後、その具体化についても検討してまいります。

○初鹿委員 今、最後にお答えになりました、この通信制の単位を認めるということで、中退せずに卒業できる生徒が生まれてくるのではないかなと思いますので、早期に検討のほどお願いいたします。
 いずれにしましても、不登校からひきこもりに継続していく生徒を一人も出さないぞという決意で、きめ細やかな対応を進めていただきたいと強くお願いをいたします。
 さて、次に移りますが、不登校の原因、さまざまあると思うんですが、いじめ、体罰など考えられるのではないかなと思います。
 いじめ、体罰などに悩む子どもたちの相談窓口として、自治体や警視庁やその他さまざまなところで電話相談が行われております。その一つに数えてよいと思うんですが、平成十年から試行されてきた、子どもの権利擁護委員会事業というものがあります。いじめ、体罰、虐待など、子どもが重大な権利侵害を受けたという電話の相談について、何らかの具体的な対応が必要な事案について、三名の権利擁護委員と三名の専門員で対応を協議し、時には当事者と接触する中で、権利が侵害されている状態を回復したり、当事者の関係を改善したりすることを目的として、これまで実績を上げてまいりました。
 このたび、試行期間を終え、本事業として再編されることとなりましたが、これまでは、電話相談員のほかに権利擁護委員が三名、専門員三名いたものが、権利擁護委員がなくなって、専門員三名の体制に変更するということですか、この変更に対して、事業の後退につながるのではないかという指摘も一部にあります。しかし、その一方で、重大な対応困難な事案については、児童福祉審議会の対応の申し入れを行うというようにも変わります。
 今回の改正によってどのようなメリットがあるのか、お伺いいたします。

○幸田福祉局長 来年度から新たに開始いたします子どもの権利擁護専門相談事業は、これまでの試行の成果を踏まえまして、より実効性の高い権利擁護の仕組みとしたものでございます。
 具体的には、これまでと同様、フリーダイヤルの電話相談や子どもの権利擁護専門員による調査、調整などの活動に加えまして、新たな仕組みとして、権利擁護専門員では解決が困難な案件について、児童福祉審議会が関係機関などに対し、個別具体的に、法に基づく意見具申を行えるようにしたものでございます。
 このことにより、すべての児童の福祉向上がより一層図られるものと期待しております。

○初鹿委員 この法に基づく意見具申というのが、それなりに効力があるということだと思います。
 これまでの相談の実績を見ますと、権利擁護にかかわる相談は、トータルで千八百件。このうち、電話相談だけでは解決できずに、専門員が取り扱いをしたケースは二百件。この二百件の中で、いじめ、体罰など、発生場所が学校のケースが約半分に上ります。
 都内の中学生の約二・五割、高校生に至っては、約半数が私学に通っているということを考えると、権利侵害の場が私学になる可能性は十分にあるわけです。しかし、現状の法体系では、私学に強制力を持って立入調査などすることはできません。
 しかし、審議会の意見具申という形で調査依頼の要請があり、そして、私学側が仮に調査に協力しないという体制をとったときに、もうこれ以上、調査しませんよということにはならないと思うんですね。
 私学がこういう態度をとったときに、私学を所管する生活文化局としては、どのような対応をするのか、お答えください。

○三宅生活文化局長 生活文化局の私学部では、これまでも、事業を所管する福祉局もまじえながら、子どもの権利擁護委員会との意見交換を行ってまいりました。こうした協力体制をとりながら、児童生徒への案内の配布、学校や私学団体への制度の周知などを行ってまいりました。
 今後、新たな制度のもと、万一ご指摘のような事例が起こり、私立学校に関する意見具申がなされた場合には、福祉局と連携しながら、対象となる学校の協力が得られるよう働きかけてまいります。

○初鹿委員 ぜひ、子どもにとっては、公立も私学も同じ学校ですから、対応がうまくできないということがないように、しっかりと行っていただきたいと思います。
 続いて、青少年健全育成条例について何点か質問いたします。
 現在のこの社会の情勢を見ますと、確かに子どもが犯罪に巻き込まれるというケースが多くなって、私も、子どもを育てながら、毎日非常に不安な思いをしているわけであります。今回は、そういう意味では改正に反対をするという立場ではなくて、あくまでも多くの都民がこの改正について疑問に思っていることを明らかにするような形で、具体的な例を挙げて幾つか質問をさせていただきます。
 今回の改正では、全国で初めての規制が目玉とされております。幾つかあります。その一つとして生セラの禁止というものがあります。身につけている下着などを目の前で脱いで、それを売却する行為を生セラというわけですね。単に下着やブルマーなどを売るブラセラと分けているということなんですが、まあ好ましい行為じゃないと思いますが、生セラショップが都内に二カ所あるということも私は知りませんでしたし、現行法で何の規制の対象にもならないというのは驚きであります。
 このような状態ですから、規制もしかるべしかなと思うんですが、果たして規制がうまくいくのかなというのも疑問なんですね。つまり、生セラショップの、そのショップで売買をするなら取り締まり可能でしょうけれども、路上で声をかけたり、携帯電話を使ったりした場合に、なかなか取り締まりできないんじゃないかなと思うんです。
 また、もう一つ目玉として、スカウトの禁止というのも今回、目玉でありますね。路上で、風俗店やホストクラブなどに勧誘をするということですけれども、これも、路上で声をかけている男の人が、その女性にナンパしているのか、それともそういうところに誘っているのか、区別つかないですね。そういう意味では、規制が果たしてうまくいくのか、難しいなと思うんです。
 しかし、今回禁止をするというのは、取り締まりがうまくいくかどうかというだけではなくて意味があるという判断なんだと思いますが、その辺をお答えください。

○三宅生活文化局長 お話のいわゆる生セラにつきましては、売買する場所の提供や、売却相手の紹介を禁ずることとしておりますし、スカウトに関しても、規制対象となる行為を明確にしております。そういったことによりまして、一定の実効性が確保されると考えております。
 また、条例に禁止規定を設けることにより、いわゆる生セラ及びスカウトが禁止されるべき行為であるという認識を宣言し、大人に節度ある行動を求めるとともに、青少年の啓発を図ることもねらいとしております。

○初鹿委員 大人に節度ある行動を求め、青少年に啓発を図ること。つまり、具体的なことを挙げて禁止をするということが最大の目的なんだと思うんですね。
 ところで、深夜同行について禁止をするわけですが、これについては条文が、正当な理由なくと、禁止する事項があいまいなんですよ。恐らく禁止したい事項というのは、買春目的とか、家出とか、例えば薬物を乱用するとか、非行にかかわるようなことに対して同行したら禁止をしたいということだと思うんですが、これも具体的にいった方がアピールになるんじゃないかなと思うんです。
 また、非常にあいまいな中身だと、取り締まり側の解釈によっては、これが拡大していってしまうおそれもあるんではないかなと思うんですが、この点についてはいかがですか。

○三宅生活文化局長 青少年の深夜外出の規制は、青少年が犯罪に巻き込まれる危険を未然に防止することなどを目的としております。その危険を具体的、網羅的に挙げることは非常に難しいものがございます。むしろ、社会通念上、正当と認められる理由がある場合を除き禁止すると定める方が、青少年を保護する上で有効であると考えたものでございます。

○初鹿委員 これが拡大されることがないように、運用には十分に気をつけていただきたいと思いますね。
 例えば、定時制高校に通っていれば、二十歳と十五歳でつき合いをすることだってあるわけですよ。それで親が反対をしていた場合に、じゃ、親が反対をしているからそれを取り締まるかということにはならないと思います。そういった事例もあるということをぜひ考えていただきたいと思います。
 次に、不健全図書の指定についてですけれども、不健全図書に指定された図書類は、包装して、ほかの雑誌とは分けて区分陳列を行うということが販売店に義務づけられるといいます。しかし区分陳列が、大きな書店なら、周りを区切って分けることができますけれども、コンビニなど間口が本当に狭いところだと、こっちの棚に雑誌があって、こっちの棚に、すぐ横に分けているだけという状況になると思うんですが、これで、区分陳列自体、非常に難しいと思うんですけれども、いかがですか。

○三宅生活文化局長 東京都の規則で定める区分陳列の方法には、周囲を囲う方法以外にも、陳列棚を離して置く、仕切り板をつける、子どもの手が届かない高さに陳列するなど、さまざまな方法がございます。店舗の状況に適した方法を選択して実施されるよう、販売店を指導してまいります。

○初鹿委員 じゃ、区分陳列ができていたとして、それをだれかが確認しないと、実行されているかどうかわからないですよね。都内にはたくさんのコンビニや書店があります。十名の職員では不可能だと思いますが、どうするんですか。

○三宅生活文化局長 今回の条例改正で、青少年健全育成協力員制度というのを設けました。この協力員によりまして、販売店の状況について報告を受け、職員による区分陳列状況の調査、指導をより効果的に行うこととしております。

○初鹿委員 その協力員が区分陳列違反を発見した場合に、それで直ちに、直罰になるということなんですか。どうなんですか。

○三宅生活文化局長 区分陳列義務違反には、まず正しく区分陳列するように警告を行います。それに従わない場合に罰則を適用するものでございます。
 なお、違反があった場合でも、警告に先立って指導を行うことを原則としておりまして、販売店の意識の向上と自主的協力を促すこととしております。

○初鹿委員 今の販売店の協力と意識の向上というんですかね、そこが一番重要だと思うんですね。なかなか、都内にたくさんありますから、それを徹底するのが難しいと思いますので、その徹底をぜひ試みていただくよう、お願いをいたします。
 ところで、周囲を区切って区分陳列している場合には、あえて包装する必要はないんじゃないかなと思うんですが、その点はいかがですか。

○三宅生活文化局長 成人向け図書の陳列場所を間仕切り等で隔離している場合には、販売店員が内部を監視しにくいというおそれがあります。そういう意味で、逆に、包装して青少年が容易に閲覧できないようにする必要があると考えたものです。

○初鹿委員 つまり、大人で買いたい人は我慢しろということですよね。我慢しろということですね。包装しているのを見て、家に帰って、中が何なのかなと、どきどきした方が刺激的かなと私も思います。(笑声)それは余談ですけれども……。
 次に、不健全図書の指定の方法についてお伺いしますけれども、包括指定、緊急指定の導入というものが検討課題になりました。これに対しては、さまざまな反対の声が上がったと思います。そうした中で、今回の改正では見送ることになりましたが、その理由は何でしょうか。

○三宅生活文化局長 青少年問題協議会の答申におきましては、包括指定について、不健全図書を幅広く指定できることや、発行間隔が短い図書等でも指定できるという長所がある、一方、実効性を確保するための指導体制の整備が困難、あるいは、内容によらず量だけで指定することなどの短所も挙げられております。それらを総合的に勘案して、当面は導入を見送るべきであると提言がなされました。

○初鹿委員 つまり、図書名を公表しないと、なかなか徹底ができないということだと思います。私もそのとおりだと思いますから、今回、事業者に自主規制を促すという方向で、この自主規制と連動して個別指定をするというこの制度、非常に有効で、また、一番よいところに落ち着いたんではないかなと評価をするところです。
 ところで、不健全図書というと、著しく性的欲望を助長するというものに目がいきがちなんですが、それ以外の理由でも指定を行ってきておりますよね。それ以外の理由で今まで指定を行ってきた具体例を挙げて、またその理由をお答えください。

○三宅生活文化局長 平成十五年度中に指定された図書は百十三冊ございます。このうち、甚だしく残虐性を助長すると認められたものが十二誌、著しく犯罪を誘発すると認められたものが十九誌ございました。

○初鹿委員 今、著しく犯罪を誘発するものといいましたけれども、例えば、実際に犯罪を犯した人が、この本に書いてあるとおりにこの犯罪をやったんだとか、以前もありましたよね、格闘ゲームのわざをかけたいといって暴行をしたような事件がありましたけれども、そういったケースでは直ちに指定をするということになるんですか。

○三宅生活文化局長 図書が、著しく犯罪を誘発し、青少年の健全な育成を阻害するおそれがあると認められるか否かは、個別事例に左右されるものではなく、お話の図書も含めて、有識者で構成する青少年健全育成審議会への諮問を経て、認定基準に沿って、公平、適正に指定されるものでございます。

○初鹿委員 つまり、今までと指定の仕方は変わらないということ。今回の規制は、販売について事業者を規制するものであって、規制の対象の内容が拡大をするという意味ではないということでよろしいんですかね。お答えください。

○三宅生活文化局長 指定の仕方でございますが、条例改正後も、自主規制団体の意見を聴取し、青少年健全育成審議会への諮問を経て、不健全図書を個別に指定するということで、従来とは変わりません。
 それと、今回の条例改正は、出版業者が自主的に成人向け図書を表示して包装することなどによりまして、書店等における図書の販売方法を規制するものでございます。

○初鹿委員 今のところが重要だと思うんですよ。今回の規制に反対している人の中で、この規制の内容が拡大していくんじゃないかというので懸念をしている方が多いんですね。つまり、漫画が対象になるんじゃないかということで、金曜日に副知事の答弁でもありましたけれども、漫画は対象にならないということで、対象としては個別に判断をするということでいいわけですね。
 では、次に移りますけれども、そうはいっても、図書を規制したところで、インターネットでさまざまなわいせつな画像などがはんらんしているわけですから、何ら対策が有効じゃないんじゃないかという意見が、青少年問題協議会でも出ました。それについてはどのように感じておりますか。

○三宅生活文化局長 インターネットなどの問題に関しましては、国に対して法的規制や業界の指導を提案要求しておりますが、問題の広がりと深刻さを考慮しますと、都としても、関係業界や事業者と協力して有効な対策を検討する必要があるのではないかと考えております。

○初鹿委員 なかなかインターネットなどの規制をするというのは難しいと思います。そういうことを考えると、規制だけでは十分じゃないということですよね。やはり子どもたちが、与えられた目の前にある情報をどのように判断するかという、その判断基準をしっかりと養う、そういう教育を行うことが一番重要だということなんです。学校現場ではそのような教育についてどのように行っていくのか、お伺いします。

○横山教育長 現在、全都的に展開しております心の東京革命の一環として、都内のすべての公立小中学校におきまして、道徳授業地区公開講座あるいはトライ&チャレンジふれあい月間を実施しまして、保護者の地域の人々とともに、児童生徒に正義感や倫理観、思いやりの心をはぐくんでまいりました。
 今後とも、その重要性にかんがみまして、各学校が道徳や総合的な学習の時間などを通して、児童生徒の規範意識を高め、正しい判断に基づいて行動ができる力を育てる教育を推進してまいります。

○初鹿委員 なかなか道徳の授業だけでは十分じゃないと思うんですね。日々の授業の中でも、常にこのことを考えて授業を行ってもらいたいんです。
 それにしても、最近、先生の不祥事っていうの多いですよね。この点もやはり、道徳を教える先生がおかしなことをやってるんじゃ話にならないので、とにかくしっかりやるようにお願いします。
 いずれにしても、今回、改正をしたからといって、すぐに実効性が上がるわけではないということをまず押さえておく必要があると思うんです。大人も子どもも意識を変えていく必要がある。なかなかそれはうまく進みません。
 例えば、子どもの意識を変えるといっても、先ほどの生セラじゃないですけれども、お金欲しさに下着を売っている子どもに、何で下着を売っちゃいけないのかって教えるの、みんな直感的に、これは嫌な行為だなと思うんだけれども、難しいですよね。じゃあ上着だったらいいのか、靴下と下着はどこが違うのか、論理的に説明できないんですよね。難しいですよ。しかし、いけないことだとみんなが思っている。このことを考えるときに、非常に難しいことなんですけれども、やはり社会の中で許していいこと、悪いことという共通の認識というのはどこかにあるんじゃないかなと思うんです。
 私は、このことを考えたときに、ガンジーってインドの独立の父、ご存じですよね。ガンジーのお墓のラージガートというところに碑文が書かれているんです。そこには、七つの社会的罪というのが書かれております。七つの社会的な罪、この世の中で、社会がもたらす罪を七つ挙げているんですが、このことを思い出すんですよ。
 そこに何が書いてあるかというと、まず一つ、労働なき富ということが書いてあります。ウェルス・ウイズアウト・ワーク。つまり、生セラをする子どもたちには、労働しないで、働かないで富を得ちゃいけないよ、お金を得ちゃいけないよということを、労働しないでお金を得るというのは社会の害なんだということを植えつける必要があるんじゃないかなと。
 また、不健全図書を出版したり販売したりしている事業者には、道徳なき商業と書いてあります。コマース・ウイズアウト・モラリティー。これをぜひ送りたいなと思います。
 また、大人にも子どもにも、我々も反省しなきゃいけないかもしれませんけれども、良心なき快楽ともあります。このほかに、人格なき学識、人間性なき科学、献身なき信仰と挙げられているんですが、今六つ挙げたんですが、その一番上に挙げられているの何だかわかります、皆さん。ご存じですか。知事は知っていると思います。これは、理念なき政治って書かれているんですよ。理念なき政治って書かれているんですよ。恐らく日本の戦後の政治が理念なかったおかげで、今の社会がこういう状態になってしまったんですよね。五十年間政権持ってた自民党さん、考えてもらいたいんですけどね。無責任な政治が……
   〔発言する者多し〕

○青木副委員長 静粛にお願いいたします。

○初鹿委員 大人が無責任になり、そして親も無責任になっているんではないかなと思うんです。そういったことを踏まえて、今回の条例改正について知事のご見解を、意義についてお伺いします。

○石原知事 ガンジーの例を引くまでもなく、人間の社会には、立場、世代、時代を超えて垂直につながっていく価値観、倫理というものがあると思います。それがですね、いささか希薄になってきたのが現代だと思いますが、いずれにしろ、現実に子どもを取り巻く環境が非常に悪化しているわけでして、これを具体的に何とかしなければ、子どもたちの将来、ひいては、つまりこの社会の将来が危惧されるわけです。
 だから、子どものために、子どもが安心して、得心して育つ環境をつくり直していくことは、私たち大人の責任だと思います。いろいろ抜け穴もあったり、これから補うこともあるかもしれませんけれども、いずれにしろ、今ですね、とにかくこれから伸びていく子どもたちのための条件というものを、条例も、今回だけじゃなしに、改正すべきときにはこれから先も改正して、子どもたちのこれからの人生のため、我々の社会の未来のための条件を整えることは必要だと思っております。

○初鹿委員 時間がないので、速く話をさせていただきますけれども、知事はしばしば、最近の若い親は責任感がないということをいわれますよね。
 今、私、手元に、知事が昭和四十四年、私の生まれた年に書いた「スパルタ教育」という本を持っているんですが、この前書きに、なぜこの本を書こうと思ったかという理由を、「子どもの最大の教育者たるべき世の親たちが、自分の子どもの教育について、まったくその責任を放擲し、自信を失っている事実に、不満と失望を感じたからだ。」って書いてあるんですよ。三十五年前に知事が指摘をしている。それがいまだに続いているというね、やっぱりこの事実というものを受けとめないといけないと思うんですね。
 ここでさらにいっているのは、「将来、どんな人間がこの日本の社会に氾濫するかを思うと、ぞっとする」。まさにぞっとする状態ですよね。そのとき指摘をした親が育てた子どもが、今の親たちになっている。つまり、どこかで断ち切らないと、その連鎖って、なかなか簡単に切れないんだということなんだと思います。
 このころ知事は、三冊の教育に関する本を書いているんですよ。このほかに、「魂を植える教育」そして「真実の性教育」って書いているんですけれども、この本で知事がいいたいことは、学校や社会が子どもにしつけをするんじゃなくて、一番最大の教育者は親だと、親がしっかりとすることが重要だといっているんですね。それでまたその中で、ちょっと関係するところでいうと……(「とっくに時計は過ぎてるじゃないか」と呼ぶ者あり)はい。
 私は子どもの前でヌード写真の氾らんした雑誌を隠さぬことにしているということも書いてあります。
 また、ここに、「『理由なき反抗』の作者で、精神分析医であるアメリカのロバート・リンドナーの、いかなるタイプの書物であろうと、非行あるいは犯行をそそり、教唆したりすることは、ぜったいなく、かりに、好ましくない本のすべてがこの社会になくなっても、犯罪、非行、反道徳、反社会的な行動は減少しないという説にも同感である。」と書いてあります。
   〔発言する者多し〕

○青木副委員長 初鹿委員、手短にお願いいたします。

○初鹿委員 はい。
 また、現代の社会では、放置すればだれでも各種のウイルスに感染をし……(発言する者多し)最後まで聞いてくださいね。その抗体を備えていくものだが、同じことが性にもいえるだろう。これだけ俗悪わいせつな出版物がはんらんし……
   〔発言する者多し〕

○青木副委員長 初鹿委員、再度お願いします。
   〔発言する者多し〕

○初鹿委員 はい。
 そうした催しがはんらんしている時代ならば、親がいかにそれを禁じようとも、子どもたちはそうした性的事物に自分の好奇心を踏まえて感染していくはずであると書いてあります。
 そういった、三十年前に……
   〔発言する者多し〕

○青木副委員長 それでは初鹿委員……。

○初鹿委員 はい、まとめます。

○青木副委員長 初鹿委員、時間が過ぎてますから……。

○初鹿委員 三十年前にこのことをいった知事が、それでもやっぱり、今改正しなきゃいけないような状況になっているというふうにいうわけですよ。三十年間できなかったことを……
   〔発言する者多し〕

○青木副委員長 初鹿委員、初鹿委員、発言を終わります。

○初鹿委員 三十年間できなかったことを、これからやるわけですから……。

○青木副委員長 初鹿委員、発言を終わりにしてください。

○初鹿委員 どのような決意を持ってこれから取り組んでいくのかということをお伺いいたします。
   〔発言する者多し〕

○青木副委員長 以上で初鹿委員の発言は……。
 質疑ですか。

○初鹿委員 これからどういう決意でやるのかお伺いします。
〔「答弁する必要はない」と呼び、その他発言する者多し〕

○青木副委員長 質疑ですか。--石原知事。
   〔発言する者多し〕

○石原知事 ここまで来たら、不退転の決意でやります。

○青木副委員長 初鹿委員の発言は終わりました。

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