東京都議会予算特別委員会速記録第三号

○樺山副委員長 大山とも子委員の発言を許します。
   〔樺山副委員長退席、委員長着席〕

○大山委員 私は、まず保育について質疑を行いたいと思います。
 保育園で過ごす乳幼児期というのは、人間としての基礎をつくる大事な時期であり、目覚ましい成長を遂げる期間です。しかも今、子どもたちが育つ上でさまざまな困難な状況が生まれているときだけに、子どもたちが心も体も豊かに成長することができる保育の質の充実がますます重要になっていると考えています。その立場から、以下質問をしていきたいと思います。
 まず最初に知事に伺いたいんですけれども、我が党の代表質問で、何よりも子どもをどのように豊かに育てるのかという視点を据えて保育行政を進めることが必要であると考えるものですが、いかがですかと基本的考え方を質問したことに対して、知事は、都民の多様なニーズに的確にこたえていくことが重要だと答弁しました。
 もちろん多様なニーズにこたえることは必要であり、我が党は都民の強い要求であります産休明け保育や延長保育の拡充を求めてきました。しかし、知事の答弁には、子どもをどのように豊かに育てるのかという視点が全く欠落しているといわざるを得ません。子どもを豊かにはぐくむことを保育行政の基本に据える必要があることを認めないのですか。知事、はっきり答えていただきたいと思います。

○石原知事 当たり前過ぎることですが、あえてお答えしましたが、だれだって子どもを豊かに育てたいと思っていると思います。

○大山委員 だれだって豊かに育てたいと思っているというふうにおっしゃいますけれども、知事、子どもを豊かにはぐくむ、それを保育行政の中心に据えることを認めるのか認めないのかということなんです。

○石原知事 当たり前のことじゃないですか。

○大山委員 当たり前のことじゃないですかということは、子どもの健全な発達を図るべきこと、それを中心に据えるということは、今答弁されたことは、私は本当に大事なことだというふうに思っています。そうであるなら、子どもの健全な発達にとってプラスになることかどうか、あるいは最善のことかどうか、これを保育行政を進める上で一番大事な物差しにする、これが当然のことだというふうに思っています。
 知事に伺いますけれども、サービス推進費について今大きな問題になっているわけですけれども、サービス推進費については経験年数を加味しない、これが大きな問題になっています。知事に伺いますけれども、保育における職員の経験年数をどう考えているんでしょう。

○幸田福祉局長 保育のような対人サービスにおいては、資質の高い職員の果たす役割は大きく、職員の資質には経験に裏打ちされたものがあることも事実であります。しかし、経験の長い職員のすべてが資質が高いとはいいがたく、また、経験年数の長い職員の多くいる施設が質の高いサービスを提供しているとはいい切れません。

○大山委員 そういうごまかしはやめてください。経験が長ければそれでいいなんて、だれもいっていないわけですよ。その上で、もちろん切磋琢磨は当然必要ですよ。経験豊かな保育士がたくさんいる、それはよい保育をつくっていく上で必要条件だというふうにいっているわけです。福祉局だって、保育園の指導検査の結果として、職員の定着率の高い保育園はよい保育園だということを認めてきたわけですね。
 アメリカにおける、権威ある研究報告がありますけれども、保育園の職員の離職率の高さは、その保育園の質の低さを示す重要な指標である、というのは、継続的、安定的保育を受けることができないために、子どもたちの言葉や社会的発達にマイナスの影響を生じる危険があると指摘されているわけです。どうしてアメリカの例かといえば、研究でこういうことが進んでいるかといえば、市場原理のもとで保育の質の確保が大問題になっているアメリカだからこそ、このように市場原理による保育の質の低下に警鐘が鳴らされているわけですね。
 福祉は人というふうにいわれるように、福祉サービスの質を高めるには、質の高い人材の確保が大事であって、そのためには、福祉人材の待遇や給与の保障を確立することが大事だというのは、福祉関係者が長年の経験の中で共通の認識として確認されてきたことです。とりわけ、人間形成の一番大事なときに日常的に乳幼児に接する保育の分野では重要なことです。
 この問題を重視して、全国に先駆けて公私格差是正事業をつくったのが東京都です。これをサービス推進費に切りかえたときも大きな問題になりましたが、保育、福祉の質を高めるためには、経験ある質の高い職員の確保が重要だという立場は確認してきたんですね。
 当時、福祉局は、保育の質は人の確保と専門性だ、そして人の確保については給与が大変重要な役割を果たしていると公式に答弁しているんです。これはわずか五年前ですよ。それを何の検証もなしに突然態度を変えて、従来の立場を投げ捨てるというのが今回の見直しです。
 その結果、どういうことになるか。予特資料の第60号にありますけれども、私立保育園の補助金だけで三十四億円を超える削減になります。現行の四割近い大幅削減です。さっき発言した方は、保育園だけが大きな割合だというふうに、おかしいというふうにいいましたけれども、そしてA経費を合わせるともっと割合が低いんだというふうに福祉局は答弁しましたけれども、保育園はそのA経費の部分は既に区市町村を通じての補助になっていますから、その補助率だって、もう二分の一になっているわけです。ですから、実際のサービス推進費を比較する場合は、保育園はB経費でやらなきゃわからないということは当たり前のことです。
 しかも、来年度五百万円、二年目一千万円、三年目一千五百万円で、三年間で総額三千万円に及ぶ削減になる施設も少なくないわけです。経験の長い職員は、例えば、ある園では九十万円から百三十万円の削減、中堅の人は五十万円から七十万円の削減、それでも五百万円に届きません。二年目、三年目の削減に対応するには職員を減らすことも考えざるを得ない、実際にこういう問題が生まれているわけです。一つだけじゃありませんよ。
 子どもの命を預かり、子どもを育てる専門職である保育士の確保や働く条件の大後退が、東京都の手で行われようとしているんです。東京の福祉の質の取り返しのつかない低下を招くことは明白だと私は思います。
 今回の見直しで、職員の働く条件の後退は起きない、職員の定着率が低下するようなことはないというふうに考えているんですか。

○幸田福祉局長 現在、都におきます民間の認可保育所に対しましては、国基準の運営費負担金、国の補助金、都独自の運営費負担金に加えまして、サービス推進費が運営費として支出されております。
 具体的な数字で申し上げますと、開所時間を一時間延長している都内の平均的な百人規模の保育所に対して、国負担金が七千八百万円、国補助金百四十万円、都運営費補助金四千四百二十万円、サービス推進費千三百万円、合計で一億三千六百六十万円支出されており、サービス推進費の占める割合は全体の九・五%でございます。今回の再構築でこの施設へのサービス推進費は千二十万円となりますが、減少額は二百八十万円であり、これは全体の運営費の約二%でございます。さらに、この推計値は施設の努力を見込まないものでございまして、施設の努力に応じて補助額は増加するものでございます。
 このように、施設運営に要する経費はサービス推進費のみで賄われているわけではないこと、施設の努力に応じて補助額は増加すること、施設運営が支障がないよう経過措置を設けていることなどを考慮すれば、仮に補助額が減少する場合でも、各施設や法人の創意工夫や努力により十分対応できると考えております。
 なお、職員の勤務条件を初めとする労使関係の問題は各法人独自の問題であり、都は関与する立場にありません。

○大山委員 余りにも大きな、一つの園で三年間で三千万円ですよ。それだけの削減というのは、さっきいったみたいに、人を削らざるを得ない、常勤者を非常勤にせざるを得ない、そういう労使関係ではもう解決できないところまでいっているわけですよ。
 努力加算だというふうにいっていますけれども、例えば努力加算、いろんな園の園長先生、施設長さんたちがいっているのは、実績払いだから、それは非常に不安定な補助なんだと。だから、不安定な補助であったら、不安定な雇用形態しかとれないと。それがどうして保育内容を低下させない、働く条件の低下がないというふうにいえるのかと。大体国の基準で、運営費では経験ある保育士が定着できない。だからこそ公私格差是正事業が始められたんじゃないですか。
 知事もご存じだと思いますけれども、ゼロ歳の後半、一歳ぐらいだと乳幼児は人見知りしますね。知らない人を見るだけで不安になったり、大泣きする子もいますよ。職員が不安定労働者になってころころと入れかわるような保育園では、情緒の安定した子どもは育ちません。国が示している保育所保育指針も、乳幼児期は特定の大人との安定した信頼関係、愛情で結ばれた関係をつくることが何よりも大事だと強調しているんです。一握りの正規職員、常勤職員のほかは非常勤やパートでつなぐというやり方では、情緒の安定した子どもを育てることはできないんです。
 それだけではありません。子育ての経験不足など、親に対する支援も重要になっている。児童虐待の早期発見だとか、適切な対応の点でも保育所の役割は高まっています。アトピーへの対応、それから小学校に上がっても、そわそわして落ちつかないというような子どもがふえているとか、体温の調節ができないなど、気になる子どもがふえています。乳幼児期にそれぞれの発達段階に応じた力をしっかりと獲得できるように、丁寧な個別対応が必要になっている。どこからどう見ても経験ある質の高い職員の必要性はますます高まっているといわざるを得ません。
 にもかかわらず、知事は私立保育園への補助を切り下げて、高い保育料、施設の不備、低賃金、不安定雇用という認証保育所を東京の保育の中心に据えようとしています。認証保育所、とりわけ企業が参入したA型保育を東京の保育の中心にするといっていいのか、それが今改めて問われています。
 そこで伺いますけれども、認可保育園と認証保育園のそれぞれの職員の平均経験年数はどうなっているのか。そして、認証保育所A型の二歳児以上の定員数と利用児童数はどうなっているのか。ことしの十月一日の時点でいいですから、あわせてお願いします。二歳以上でいいです。

○幸田福祉局長 民間の認可保育所における職員全体の平均経験年数は約九年となっており、認証保育所においては、こうした把握はしておりません。
 次に、認証保育所A型の利用実態についてでございますが、平成十五年十月一日現在において、ゼロ歳児は取扱人員九百十六人に対して利用児童数は九百九十九人、一歳児は千九十九人に対して千百三十五人、二歳児は九百二十一人に対して八百三十三人、三歳児は四百二十四人に対して三百二十五人、四歳児以上は三百七十九人に対して百九十人であります。

○大山委員 今まで、保育園にとって職員の経験年数がいかに大事なものかということをいってきましたけれども、認可保育所の九年、これは決して十分ではないと思いますけれども、認証保育所は福祉局が把握すらしていないということなんですね。
 実は、開設のときは職員の名簿と保育士の資格証明を全部そろえて都に提出しますけれども、一たん開設した後、職員の定着がどうなっているかとか、把握はしていないわけですね。現に職員が次々と入れかわるなどの訴えが後を絶ちません。
 利用状況を見ても、さっきおっしゃっていましたけれども、ゼロ歳、一歳は定員オーバーですけれども、三歳以上になると利用率は六割程度ですね。その背景にあるのは、認証保育所は保育料が高いこと、施設面で不十分なことなどが挙げられます。園庭もない、多くの場合、ベランダもないような駅ビルの中で、三歳、四歳、五歳という、走り回ったり、動き回りたい年齢の子どもたちが、一日のうちの十三時間過ごすというのは無理があるんですね。
 知事、あなたは、厚生労働省の「よい保育施設の選び方十か条」というのを読んだことがありますか。

○石原知事 ありません。

○大山委員 保育を論ずるんだったら、それぐらい目を通しておいてもらいたいわけですけれども、そこの第七条に、施設の様子を見て保育園を決めることが重要だと書いてあります。赤ちゃんが静かに眠れる場所があるか、また、子どもが動き回れる十分な広さがあるかということがチェックポイントになっています。
 知事、認可保育所と認証保育所のどちらがこの基準を満たしていると思いますか。

○幸田福祉局長 まず、先ほどお話の中で、認証保育所の保育士の年齢を押さえていないというお話でございましたけれども、ご存じだと思いますが、認可保育所に対しましては、民改費ということで、先ほどから議論になっているサービス推進費、いわゆる従前のB経費といわれるものですけれども、これで補てんしている。年齢、経験に応じて幾らという、こういう格好になっているわけでございます。
 ところが、知事が進めている認証保育所は、いわゆる民改費相当分、補助金が出ていないんです。国基準運営費でやっているんですね。そこのところは十分ご承知おきいただいていると思いますけれども、念のため申し添えます。
 ゼロ歳児の受け入れは、全認可保育所のうち七四%となっておりますが、産休明け保育を実施している認可保育所は、全体の四七%と半数に満たないわけでございます。特にニーズの高い開所時間の延長につきましては、開所時間の二時間延長の実施率は、認可保育所の三・四%にしかすぎない。一方、認証保育所は、すべての認証保育所において産休明け保育の実施及び十三時間開所を実施しており、都民ニーズによりこたえるものになっております。
 それから、先ほどのお尋ねの中で、認証保育所の保育従事者は若い人ばかりではございませんで、認証保育所の保育従事者、四十代が約一七%、三十代が約二四%、二十代が約五二%と、バランスのとれた配置になっていると考えております。

○大山委員 認証、認証といって、知事が進めているということですけれども、知事が責任を持って進めているところの経験年数さえも把握しない、これが実態ですよ。
 そして、今、建物、第七条について聞いているんですよ。建物について、どっちが当てはまりますかと聞いているのに、全く的外れな答弁をするわけですね。
 しかし、今いったことだって、十三時間の開所だとか、それから産休明け保育だとかいいましたけれども、例えば、ゼロ歳や一歳、二歳の乳幼児が、朝の七時から夜の八時まで、親と離れて保育園で過ごすわけですよね。で、不安定にならずに健全な発達を図る、それは、延長保育の保育士の配置を、少なくとも昼間と同じようにできるように改善すること、これこそ重要なんです。必要なんですよ。私たちは繰り返し提案してきたにもかかわらず、それをやってこなかった自分たちの責任を棚に上げて、認可保育所の努力が足りないようにいうのは筋違いの話だというふうに思います。
 また、ゼロ歳児保育を進めるためには、増改築や大規模改修などの施設整備が必要なんですよ。これも予算がないからといって厳しく抑えてきたのは東京都じゃないですか。
 認証保育所に預けているお母さんたちは、施設が狭い、園庭がない、このまま認可園に入れなかったら子どもにとってよくないと思っている。かつては認可保育所で働いていた、今は認証保育所に勤めている保育士さんも、園庭がないところがほとんどだ、近くの公園であればよいということだけれども、園庭と公園では同じ遊びはできない、泥んこなど、衛生面から考えても公園ではできない、こういうふうにいっているわけですよ。
 さらに、認証保育所にフランチャイズが参入していることも重大な問題です。今は一社九園ですけれども、フランチャイズ関係者は、認証保育はフランチャイズ商法にとって最もやりやすい分野の一つだといっています。実際に宣伝して、募集されています。今後、フランチャイズの進出が相次ぐというふうに見られています。保育の分野に経験のない人でも商売として成り立つことをうたい文句にしています。
 あるフランチャイズの本社がホームページでフランチャイジーを募集しています。加盟料が二百万円、複数ルームの場合は、二ルーム目からはさらに五十万円ずつ払わなければなりません。開設モデルによりますと、保証金が五十万円、宣伝費、スタッフリクルート費などで、開設だけで四百万円をフランチャイズ本社に支払うことになっています。また、ロイヤルティーを月額十万円から二十万円も支払わなければなりません。認証保育所への都の補助がこういうところに使われてしまうわけです。
 知事、これで、よい保育ができると思っていますか。

○幸田福祉局長 随分いろいろといわれましたので、私の方からちょっとお答えをしなくちゃいけませんので、ちょっと申し上げます。
 まず、認証保育所利用者の声ということでお話しになりましたけれども、私どもが聞いているのは、例えば保育施策に関する意見では、もっともっと認証保育所のような保育施設をふやしてくれと。同等のサービス、安心して預けられる保育士、園長の姿勢が得られる保育園をふやしてもらえるとうれしい。また、保育内容については、認可保育園の時間延長をしてほしい。母親の勤務状況にこだわらない認証保育所に入所できてとても助かっている。例えばこんな声がございました。
 それから、認証保育所のお話の中で、保育料が高いということでございましたけれども、一例申し上げます。
 認可保育所で十三時間開所を行っていないところが多いわけでございます。そうすると、二重保育になれば幾らになるか。むしろ、認証保育所は国基準八万円以下で運営をしなきゃならぬ。それがダブルで十一万と、高額になるわけであります。
 それから、園庭がないというお話でございました。
 施設が狭い、園庭がないといいますが、今、駅前立地ということで利用者のいわゆる利便性を高めるか、それとも環境を見るかという、この判断はもちろんあるかと思います。ただ、都は、駅前という立地から見ても、これは当然、必然的な結果だろうというふうに一つ思います。ただし、基準は認可保育所と同一でございます。認可保育所も、園庭がない場合は近隣のところで遊戯場を持てばよいという、これは国の基準でございまして、これに合致している。法違反ではないわけでございます。
 それから次に、認証保育所を長時間保育というふうにおっしゃいましたけれども、今、認証保育所は十三時間あいているわけでございまして、この間に、ご利用したい方が自由に時間を選べる。そういうことで、私どもが調べた限りでは、大体四時間から八時間というのが三割五分、八時間から十時間が約四割、こういうようなデータが出ております。
 それから、フランチャイズの件でお尋ねがございました。
 認証保育所は、事業者の創意工夫によって運営することを期待しているものでございまして、経営の方法についても、事業者みずから選択するものであります。フランチャイズ方式に加盟している保育所は、本部から経営や保育技術の指導を受け、商標等の使用の権利の付与等の対価として契約料を払っている。フランチャイズに伴うこれらの経費を補助金により一部賄うことについては、社会福祉法人においても、本部会計における共通経費への補助金からの支出を認められていることから、契約料等の経費への支出が問題があるとはいえません。

○大山委員 的確に答えてくださいよ。今いろいろいいましたけれども、延長保育を認可保育園できちんとできるように、お母さんたちが安心して預けられるようにするというのが本来でしょう。
 大体今の答弁の中には、子どもたちをきちんと豊かに育てようなんていう視点が全くないじゃないですか。園庭がなくたっていいといったって、認可保育園で園庭がないところは数えるほどしかないでしょう。認証保育所は、園庭があるところを数える方が困難なんですよ。
 フランチャイズ、そうやって上納する。知事は以前、我が党が、フランチャイズの本部への送金がおくれた場合の年利二〇%近い遅延損害金の徴収などの問題をただしたとき、フランチャイズシステムに対して法規制が必要だとの認識を示しましたね。その答弁からいったって、今の福祉局長の答弁というのは全く無責任な答弁だといわざるを得ません。保育園というのは、コンビニやファストフードの店とは違うんです。
 さて、サービス推進費補助の問題に戻ります。
 知事、保育行政の基本的立場として、子どもの健全な発達を図るべきことは当然だというふうにさっきおっしゃいましたけれども、そういうふうにいうんだったら、サービス推進費の見直しはやめて、職員の経験年数に応じた加算を存続するべきじゃないんですか。

○幸田福祉局長 お答えいたします。
 職員の経験年数の長さが直接サービスの質につながるということで、お話がずっと続いておりますけれども、経験年数に応じて交付される補助金の額の多寡とサービス提供内容には必ずしも相関関係は認められないわけでございます。例えば、サービス推進費の交付を受けていない保育所と二千万円以上受けている保育所で比較した場合、二時間以上延長や一時保育の実施率は、交付を受けていない保育所の方が高いのであります。
 さらに、補助金の交付を受けていない、定員九十人、平均勤続年数六年の施設で、ゼロ歳児特別対策のほか、二時間以上の開所延長、一時保育を提供している施設もあり、サービス推進費の補助額の多寡が必ずしもサービス内容に直結しているわけではございません。
 サービス推進費補助制度は、あくまでも利用者に提供するサービスの向上を目的としておりまして、給与等職員処遇の向上を第一義的な目的としたものではございません。今回の再構築は、こうした認識のもと、施設におけるサービス向上のための努力が真に報われるものとなるよう実施するものであります。

○大山委員 今、福祉局長がいったのは、保育内容のことじゃ全くないわけですよ。サービス提供、何をするかということだけですね。サービス推進費というのは、公私格差是正事業、つまり、きちんとした保育内容が提供できるように、働き続けられる、バランスよく職員が配置できるように、働き続けられるための保障です。ですから、保育内容をきちんと保障するためのものなんですよ。
 施設の努力が報われるだとか何だとか、いろいろいいますけれども、だれも歓迎していないわけですよ。認可保育園は、ゼロ歳から卒業するまで、一人一人の子どもに愛情を注いで、職員と子どもたちの信頼関係をつくり上げていきたい。そして卒業してからも、顔なじみの保育士がいて、遊びに来られるような保育園にしたい。多くの保育園がそういう努力を重ねてきたわけですね。それが音を立てて崩れていくわけです。しかも、職員を育てる努力をして、保育の質を高める努力をしてきたところほど大幅削減になるという批判と疑問の声が一斉に吹き出しているわけです。
 例えば、昨年十二月に最終合意を得ているというふうにいっているわけですけれども、一月二十五日に、園長、職員、保護者らが八百四十人も集まって、今回の再構築は、子どもの置かれた実態や私たちの願いに背を向けるものです、私たち保育関係者や保護者の声に耳をかさず、強引に見直しを進める東京都の保育行政のあり方に強い怒りを感じています、こういうアピールを採択しています。現場の園長も職員も保護者も、みんなが今回の見直しに反対しているじゃありませんか。
 しかも、納得していないのは保育園の関係者だけではありません。児童養護施設の従事者会の方々も、東京都は施設代表者と合意に至ったとしていますが、多くの従事者は納得しておらず、大いなる不安と危惧を抱いております、という要請に見えました。
 直接話を伺いましたけれども、知事もご存じかと思いますが、児童養護施設に入る子どもたちの多くは、被虐待ケースがふえていて、人間関係における愛着形成が未発達で、経験ある職員でなければ対応が非常に難しい。しかも、特定の職員と安定した人間関係を長い時間かけてつくり上げる必要があるなど、切々とした訴えでした。そして、児童養護施設では、すべての職員にとって経験年数の積み上げが不可欠であり、サービス推進費補助の充実を図ることこそ必要だと力説されていました。
 同時に、保育園の保護者会がこぞって都に説明会を求めているのに、こたえようとしない、これもとんでもない話です。
 本会議代表質問への答弁で、福祉局長は、サービス推進費は事業者に対するものだから、保護者会に説明する必要はないという見解でした。しかし、この補助制度の目的は、事業者のためではなく、施設利用者の福祉の向上を図ることじゃないんですか、福祉局長。

○幸田福祉局長 サービス推進費については、一昨年の八月以来、施設代表者の方々と意見交換を積み重ねまして、昨年八月には基本的考え方について、それで、九月には再構築後の具体的な補助単価等について提示をし、十二月には最終合意を得たところでございます。
 制度の見直しを行う場合には、賛成、反対、その他さまざまな意見が出ることは当然のことであります。反対の声がある一方で、現在、認可保育所における実施率が低いゼロ歳児保育や延長保育の充実を望む声があることもまた事実でございます。
 また、現在、サービス推進費の対象となっている保育所は、十四年度決算ベースで五百五十九カ所、定員は五万六千人余であり、大多数の保育所や利用者からは、今回の再構築についてご理解を得ていると考えております。
 したがって、お話のアピールをもって、すべての保育所利用者が反対意見を唱えているとは考えておりません。
 ただ、一部の方々が、再構築の意味を正しくご理解いただけていないために、利用者の方々にまで不安が広がっているのは、都としても不本意であり、今後、十分な提供に努めていきたいと思います。

○宮崎委員長 大変申しわけございませんが、時間が経過をいたしております。一分程度でおまとめをいただきます。

○大山委員 全く質問に答えていません。これは、十六年の二月九日に説明会用資料として--全保育園に説明会をしました。その中に、民間社会福祉施設サービス推進費交付要綱、これは、目的の中に、社会福祉施設利用者の福祉の向上を図ることを目的とすると、ちゃんと書いてあるんですよ。
 保育園の利用者というのは、去年の答弁の中でも、子どもと保護者だというふうにはっきりいったわけですね。その利用者であります保護者が、きちんと説明をしてくれ、そういうふうに求めているわけですよね。だから、それにこたえないというのは、全く東京都の姿勢としてもおかしいし、サービス推進費補助のねらいからいっても全くおかしいと思います。
 ですから、サービス推進費補助については、改悪をしないで、利用者にまず説明をするということをするべきだというふうに意見を述べて、終わりにします。(拍手)

○宮崎委員長 大山とも子委員の発言は終わりました。

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