東京都議会予算特別委員会速記録第三号

○大木田副委員長 いなば真一委員の発言を許します。
   〔大木田副委員長退席、樺山副委員長着席〕

○いなば委員 まず冒頭に、私は今回の予特では、石原都知事に対する質問、投げかけ、答弁が、極めてメンバーの中で少ないということが残念でありますけれども、恐縮に思っております。
 まず、私、一番最初に、都立病院関連についてお伺いしたいと思っております。
 セカンドオピニオン外来の実施についてでありますけれども、現在、石原知事の提唱する東京発医療改革の核といたしまして、都立病院改革が進められています。私は、三定の一般質問でも、都民への医療サービスの向上を図るための都立病院改革を推進していく立場から、何点か質問してまいりました。平成十六年度予算案が明らかになった今、改めて、進捗状況などを確認していきたいと思っております。
 まず、セカンドオピニオン外来の実施についてであります。患者さんが、治療方法などをみずからの意思で選択して、納得できる医療を受けていくために有効な方法の一つであり、その仕組みづくりが急がれております。昨年の三定でいただいた答弁では、さまざまな解決すべき課題があり、駒込病院での実施を目指して、患者の方々を円滑に受け入れるための仕組みづくりなどを具体的に検討しているとのことでありました。
 そこで、都立駒込病院で実施するセカンドオピニオン外来の患者の受け入れ体制などについて、その後の検討状況を、まずお伺いしたいと思っております。

○碇山病院経営本部長 ただいまのいなば委員のお話にもございましたように、セカンドオピニオンでございますが、これは、患者の皆様がみずからの意思に基づきまして治療方法などを選択できるという、患者中心の医療を提供していくために、大変重要な意義を持つものでございます。都といたしましても、都立駒込病院で実施していく考えでございます。
 これまで、このセカンドオピニオン外来につきまして、検討を重ねてまいりました。対象を、主治医の紹介状や、あるいは検査データなどを持参しました患者またはそのご家族とすること、完全予約制により実施をしていくことなど、具体的な実施方法を詰めてきたところでございます。

○いなば委員 都民が安心してこの医療を受けていく体制をつくっていくためには、患者さんの声を大事にしたい、このような取り組みを一歩一歩積み重ねていくことが、非常に重要であるわけでありますけれども、以前の答弁で、平成十六年度の早い時期から開始する予定であるとの答弁をいただいたわけでありますけれども、この受け入れ体制が整ってきたならば、一刻も早くこのセカンドオピニオン外来を開始して、都民が利用できるようにしていくべきだと思っております。
 また、駒込病院だけではなくて、他の都立病院にも拡大していくことも必要ではないかと考えます。
 今後の具体的なスケジュールには、どうしていくのか、これもお尋ねしたいと思っております。

○碇山病院経営本部長 都立駒込病院のセカンドオピニオン外来でございますが、がん、HIV感染症、C型肝炎などを対象疾患といたしまして、駒込病院の専門性を十分生かしながら、患者の皆様が納得できる医療を受けることができますよう、本年四月から試行として実施してまいります。
 また、この試行の状況を検証いたしまして、課題を整理した上で、同病院におきます本格実施を行うとともに、他の都立病院におきます対応を検討してまいります。

○いなば委員 次に、私どもの豊島病院の区立病院構想についてお伺いします。
 平成十三年十二月に作成された都立病院改革マスタープランにおいて、私の地元、板橋区に立地する豊島病院については、隣接する老人医療センターとの統合民営化を進めることが、都立病院再編整備の基本方針として打ち出されました。この統合民営化については、これまでも都議会や区議会を初めとし、さまざまな機会を通じて、意見や議論が交わされてきたところであります。
 一方で、板橋区は、都立病院改革マスタープランの発表後、地域医療の充実をみずから図るという観点から、豊島病院の区立病院化に向けて、検討を行ってきました。
 その結果、板橋区からは、豊島病院の区移管は、区民の医療にとって大きなメリットがあって、自治権拡充の観点からも、大きな意義があるとの理由によりまして、豊島病院を区立病院として運営することを目指して取り組むため、移管の実現に向けた課題について、協議をしていきたいとの要望を、昨年十一月に都に提出しています。こうした状況を受け、我が党は昨年の四定に引き続き、先般の代表質問におきましても、板橋区による豊島病院の区立病院構想に関する質疑を行ってまいりました。
 我が党は、板橋区が豊島病院を区立病院としての運営を目指すという意思表示を行ったことは、地域の医療提供における都と区の役割分担という点で、大いに評価でき、こうした観点に基づいて、都として積極的に区の要望にこたえるべきという考えから、今後の都の対応についても伺ったところであります。
 これに対して、病院経営本部長からは、豊島病院の板橋区への移管に向けた協議を区との間で早期に開始して、移管に向けて解決すべきさまざまな課題について、本年夏ごろまでに一定の結論を得ていくとの答弁をいただきました。
 板橋区と移管に向けた協議を開始するとの東京都の意思表示は、本定例会の我が党の代表質問において、初めてここで明らかにされたものであって、大いに評価しております。
 しかしながら、統合民営化が示された都立病院改革マスタープランが作成されて以降、豊島病院は一体どのようになっていくのかという不安が、私どもの板橋区民を初めとする地域の方々の中にあったことも事実であります。このため、協議を開始する以上は、早急にその方向性を示すことが必要だと私は強く認識しております。
 このような点から、板橋区による豊島病院の区立病院構想について、さらに掘り下げた質問を行ってまいりたいと思います。
 まず、都と板橋区との間で移管に向けた協議を行っていくとのことでありますが、板橋区との協議の意味は、都立病院改革マスタープランで示された、豊島病院と老人医療センターとの統合民営化の方針を変更して、豊島病院の区への移管を目指すということでよいのか、改めてこの点お伺いしたいと思います。

○碇山病院経営本部長 都は、板橋区によります都立豊島病院の区立病院構想を実現することによりまして、統合民営化の目的の一つでございます地域医療のさらなる充実を図ることができるとの考え方から、豊島病院につきましては、今回、ただいまお話にもございましたように、老人医療センターとの統合の考え方から、区への移管、これを目指していくこととしたものでございます。

○いなば委員 地域医療の充実に向けて、みずから区立病院の運営を目指すという板橋区の意向を十分に受けとめた今回の都の方針は大いに評価できると思います。
 しかしながら、施設面において四百五十床を超える規模を有する豊島病院を板橋区に移管するためには、ただ単に区の意向だけを評価して実現できるものではないと思っています。板橋区が豊島病院を区立病院として運営するには、まず、区みずからが確固たる構想ないし青写真を有していなければならないことは当然でありまして、それがなければ、都区間の協議そのものも進まないのではないかと考えます。
 そこで伺います。板橋区は、豊島病院の区立病院化について、現時点でどのような構想を持っているのか、お尋ねしたいと思います。

○碇山病院経営本部長 板橋区が実施いたしまして、平成十五年九月に公表いたしました区立病院可能性調査によりますと、一日当たりの入院患者数を四百三十人程度、外来患者を九百六十人程度と見込んでございます。同調査では、病院の運営形態につきましては、板橋区の政策を反映できる方式を採用することとしてございます。
 また、医療機能につきましては、救急医療や小児医療など区民に求められる医療のほか、区におきます保健、福祉、医療の拠点病院としての機能を提供していくこととしてございます。

○いなば委員 板橋区が独自に調査を行って、その一定の青写真を持っていることはわかりました。しかし、豊島病院という総合病院を都から区へ移管するというこの取り組みは、都にとって初めての試みでもあります。加えて、先ほども申し上げたとおり、板橋区は病院運営の実績がこれまでありません。こうした実情を考えると、豊島病院の区移管を現実のものとするためには、都と板橋区との間で十分な協議を重ねていく必要があると思います。
 そこで伺うんですが、区への移管に当たっては、解決すべきさまざまな課題が残されているとのことですけれども、具体的にはどのようなことが課題としてあるのか、ここでまたつぶさにお伺いしたいと思います。

○碇山病院経営本部長 都立豊島病院の板橋区への移管に当たりましては、今後の具体的な課題といたしまして、現在の豊島病院の土地建物、医療機器などの資産をどのように区側に移管していくか、あるいは、区立病院を運営するに当たりまして必要な管理スタッフや医療スタッフをどのように確保、育成していくかなどの問題がございます。今後、これらの課題を多角的に検討してまいります。

○いなば委員 今、私の質疑を通じて、豊島病院の区移管に当たってはさまざまな課題があることが少しは理解できました。
 しかしながら、都が策定しました保健医療計画では、地域医療は基礎的自治体である区市町村が取り組むべき課題とされております。板橋区はこの趣旨を十分に受けとめた上で、豊島病院を区立病院化して、みずからが地域医療の充実を図ろうとしていると私は理解しています。
 したがいまして、都としては、そのような区の姿勢を十分に尊重して、移管を実現するための最大限の助力を行うべきだと考えております。これから開始される都と区との検討協議の場においても、都が有する病院経営のノウハウを区に提供するとともに、区に対しできる限りの協力体制を強く要望しておきたいと思います。
 ところで、都立病院改革マスタープランが発表されて二年が経過いたしたわけであります。本議会での質疑を通じまして、豊島病院の板橋区への移管を目指して、都と区が協議を開始することが明らかになった以上、移管の実現に向けたプロセスもできる限り明らかにしていく必要があるのではないかと思っております。
 そこで伺いますけれども、区との協議について、この夏までには一定の結論を得るとのことですけれども、その後のスケジュールについてお尋ねしたいと思います。

○碇山病院経営本部長 都立豊島病院の板橋区への移管の実現に向け、諸課題を都と区との間で具体的に協議した上で、区が移管時期や運営形態などを明らかにしていく必要があると考えてございます。
 その後、この協議の結論を踏まえまして、板橋区と十分な連携をとりつつ、区側の受け入れ体制の整備状況に応じて、速やかに移管に向けた準備作業を開始してまいります。

○いなば委員 ところで、この板橋区や台東区の区立病院構想に見られるように、現在、特別区においても地域医療に取り組む積極的な動きもあります。
 このことを踏まえて、都は、東京の医療提供体制を構築する上でどのような役割を果たしていくのか、お伺いいたします。

○平井健康局長 都民に適切な医療を提供する体制を構築するためには、都と区市町村が役割分担のもとで取り組むことが重要でございます。
 都は、二次保健医療圏を単位といたしまして、医療施設間の連携システムの構築などに取り組むほか、住民に身近な地域医療の確保に主体的に取り組む区市町村への支援を行うこととしております。

○いなば委員 続きまして、老人医療センターについて幾つかお伺いいたします。
 これまでの質疑で、豊島病院の区立病院構想についての都の考え方が明らかになってきたわけであります。都立病院改革マスタープランにおいて、豊島病院と統合民営化する方針が出されていた老人医療センターについては、地域の関心も高くて、昨年六月、板橋区長から都知事に、豊島病院とは切り離し、現在の医療機能を存続する方向で検討することを要望しました。また、板橋区議会からは、今後も都の運営を存続されるよう要望が出されているところであります。
 老人医療センターは、高齢者専用の高度専門医療への取り組みで住民からは大きな評価と期待が持たれている病院であります。また、医療連携によりまして地域の医療機関を支援する施設としても大きな役割を果たしています。
 このような評価と期待を得ている老人医療センターが、今後どのような病院となっていくのか、私も板橋区民や周辺区住民とともに深い関心を持っております。
 十五年の四定で我が党が、豊島病院の区立病院化に向けた動きを踏まえて、老人医療センターについてどのように検討していくのかと質問しましたが、ここで改めて都の考えを伺います。豊島病院について都が区移管を目指すのであれば、老人医療センターについてはどうするのか、お答えいただきたいと思います。

○幸田福祉局長 老人医療センターにつきましては、都立病院改革マスタープランで示された基本的考え方を踏まえ、単独での民営化について検討してまいります。

○いなば委員 老人医療センターはこれまで、高齢者の高度専門医療を行うモデル病院として、高齢者のQOLの向上、維持を第一義とした医療を提供してきました。
 マスタープランでは、統合の理由として、豊島病院と老人医療センターが隣接地に立地している関係上、それぞれ異なった役割と医療機能を有しつつも、設備面、診療科目など多くの機能が重複していること、老人医療センターの老朽化に伴う近い将来の改築の必要性を挙げております。これらのことを踏まえると、老人医療センターの改革については多くの課題や困難があると考えられます。
 そこで伺います。今後の老人医療センターの役割や機能をどのように考えているのか、また、多くの課題にどのように対応していこうとしているのか、お伺いしたいと思います。

○幸田福祉局長 老人医療センターの役割や機能としては、高齢者専門医療機関として質の高い医療サービスを提供するとともに、これまで取り組んできた高齢者医療の一層の充実と普及拡大を図っていくことが求められていると考えております。
 また、民営化を検討するに当たっての課題につきましては、老人医療センターの医療機能や規模などを医療資源の効率的配分の観点から見直すなど、今後具体的に検討してまいります。

○いなば委員 課題は多くあると思うんですけれども、どうか関係者とも十分協議して進めてほしいと思います。
 最後に伺いますけれども、老人医療センターに関しては、さきの四定でも、できるだけ早い時期に都としての方向性を明確にするとの答弁があったところでありますけれども、具体的にはいつごろまでに結論を得ていく予定なのか、お尋ねいたします。

○幸田福祉局長 老人医療センターの方向性につきましては、関係局とも調整を図りながら、本年夏ごろまでには明らかにできるよう検討を進めてまいります。

○いなば委員 ありがとうございます。そういう方向性で、これも早期に何とかお願いしたいと思います。
 続きまして、食の安全についてお伺いいたします。
 鳥インフルエンザが、山口、大分、京都という各地で発生し始めました。食品の安全という観点からこの問題を見ますと、鳥肉や鶏卵を食べることで人に感染した例はないとのことですけれども、この点を正確かつ迅速に説明するなど、都民に不安を生じさせない工夫が大切であることはいうまでもありません。
 今回の鳥インフルエンザに限らず、新たなリスクの可能性や事件、事故が大きく報じられるたびに、都民は食の安全に不安を感じていると思いますが、ややもすると必要以上に過剰な消費行動に走ってしまうこともあります。
 安全かどうか少しでも疑問なものは避けようとの思いは、都民の立場に立てば当然のことともいえます。あれも食べられない、これもやめようといった過剰過ぎる消費行動は、小売店など事業者に大きな影響を及ぼすことにもなりかねません。
 さらに、こうした繰り返しにより、結果として都民自身が食べるものの選択肢を必要以上に狭めることになりかねず、これでは、いつまでたっても食の安全は確保できません。今日的な混乱はぜひとも解消すべきであると思います。
 食の安全を確保するために都は食品安全条例を提案しましたが、こうした混乱状況にありまして、知事はどのような方針で食品の安全確保をしていく考えなのか、お伺いしたいと思います。

○石原知事 昨今、食品への不信を招きかねない出来事が多過ぎる感じがいたします。食に対する都民の不安が増大する中で、食品の安全を確保することは急務でありまして、そのためには、都や事業者だけではなくて、都民自身も一定の役割を担っていただいて、お互いの取り組みについて理解と協力を深めることが不可欠だと思います。
 今回提案しました食品安全条例に基づきまして、今後さらに、生産、流通、消費の各段階を通して、総合的な食の安全行政に取り組んでいきたいと思っております。

○いなば委員 都民も食の安全を確保するための当事者という考え方は大変重要であると思います。当事者としても、正しい理解のもとに冷静に行動することが求められるわけであります。
 しかし、食品の安全については、マスコミの報道を初めさまざまな情報が飛び交っています。鳥インフルエンザについても、病気の鶏から人への感染が懸念されているのに、食べたらもっと危ないのではないかなど、科学的根拠もないまま無責任なコメントが流されたこともあったと聞き及んでいます。
 都民が混乱に陥りかねない状況にあって、都民を交えた相互理解と協力を実現するためにはどのように取り組む考えなのか、お伺いしたいと思います。

○平井健康局長 都民を交えた相互理解と協力を深めていくためには、都民が食の安全について正しく理解し行動できるようにすることが重要でございます。
 このため、都としては、食品の安全に関する情報を最新の科学的知見に基づきまして整理分析し、都民にわかりやすく伝えてまいります。また、事業者に対しては、みずから提供する食品の安全に関し積極的に情報を公表し、都民に説明するよう働きかけてまいります。
 今後、このような取り組みを行いながら、都、都民、事業者の相互理解と協力の促進に努めてまいります。

○いなば委員 情報を最新の科学的知見に基づき整理分析することは、根拠のない情報がもたらす無用の混乱を避けるためにぜひとも必要なことであります。
 その上で都民にわかりやすく伝えるとのことですが、これでは--これは、いろいろなことを考えているんですけれども、口でいうほど簡単なことじゃないと思うんですね、これは。必ずしも科学的知識があるとは限らない都民に対しまして、情報を正確に伝えるということは、専門家であっても容易なことではないと思っています。
 行政の立場で積極的に情報を提供したつもりであっても、昨年六月に国が魚介類中の水銀含有量に関する発表を行った際も、一部の魚介類について風評被害があったように、伝え方次第でかえって今のように不安をあおってしまうことにもなりかねません。
 わかりやすく伝えるための方法の確立に向けた取り組みが必要と考えますけれども、その点、どうでしょうか。

○平井健康局長 食に関する事件、事故が多発する中で、食品の安全に関する情報を都民に正しく、わかりやすく伝えることが極めて重要だと考えております。
 ご指摘の事例におきましては、魚介類の摂取に関する注意喚起の対象が妊婦に限定された理由がわかりにくかったため、混乱を招いたといわれております。
 そこで、都では、この事例を素材といたしまして、情報を都民に提供する際の表現方法や伝え方等について鋭意検討しておるところでございます。今後、こうした検討を積み重ね、都民にとって正確でわかりやすい、理解しやすい情報提供に努めてまいります。

○いなば委員 この点はむしろ、マスコミ以前に、もっともっと都側が声高にいろいろと皆さんに知らしめるという必要性がやはり高いと思っております。
 食の安全は多面的な評価が必要でありまして、一つの側面だけで結論づけられるものではありません。また、その安全性についても、だれもが共通の認識を持つことができて初めて、本当の意味で安全の確保につながるんだと思っております。地道な努力の積み重ねであろうかと思いますが、都の不断の取り組みを強く要望いたしまして、次に、中央卸売市場について何点かお伺いいたします。
 私どもほど食に敏感で食べることにこだわるお国柄はほかにはないんじゃないかと思っています。有名な初ガツオのように初物にこだわったり、産地にもこだわる昨今であります。イチゴやサクランボの高級ブランドは、まるで宝石のように箱詰めされて店頭を飾っています。また、花見過ぎたらカキ食うなとか秋ナスは嫁に食わすななど、食に関することわざも数え切れないほどあります。
 野菜や魚のしゅんを大切にして、冬ならフグちり、アンコウなべ、大根やレンコンの煮の物、春になればメバルの煮つけや菜の花のおひたしなど、食卓に並んだおかずに季節を感じ、ふるさとを思い出したりするものでもあります。また、調理法にもこだわりを持って、生で食べたり、煮たり、焼いたり、揚げたりなど多くのバリエーションを持っております。
 日本ほど食が文化にまで高められているところはほかにはないんじゃないかと思っています。私は、こうした日本の食文化を誇りにさえ思っております。
 こういった食文化を歴史的にも伝統的にも担ってきたのが卸売市場だと思っております。
 先日、近所の八百屋さんをのぞいて、どうですかと尋ねましたら、店のおやじさんが、いつものぐちで、景気が悪くてと応じていましたけれども、その後で、最近ちょっと気になることがあるんだと。どうも市場に元気がない、元気がない市場じゃ野菜まで色あせて見えるという話をしていました。
 食文化の中心ともいえる卸売市場に元気がないようでは、町の小売商や飲食店まで活気を失ってしまうと思います。市場に買い出しにくる八百屋さんにまで活気のなさが伝わるようであれば、これはもう相当重症だと思いますけれども、本当に市場に元気がないのかどうか、卸売市場の取引の状況はどうなっているのか、まず初めにお伺いしたいと思います。

○森澤中央卸売市場長 まず、生鮮食料品流通の状況についてでありますが、青果物、水産物とも、輸入品の増加により国内総流通量は増加傾向にあります。しかし、量販店や外食、中食等の大口需要者が直接、輸入商社、生産者から商品を調達するなど、流通チャンネルの多元化が進んでおりまして、全国の卸売市場経由率は、青果物、水産物とも、この十年間で約一〇%低下し、平成十三年度では、青果物で約六九%、水産物で約六四%となっております。
 東京都中央卸売市場の取扱数量を見ますと、平成四年に対し、平成十三年では青果物、水産物双方とも約一〇%の減少となっております。

○いなば委員 全国展開している大型スーパーの野菜売り場に行きますと、顔が見える野菜とか産直のコーナーが今目立つようになってきています。今流行のトレーサビリティー等とあわせて、売り場の目玉として大々的に宣伝しているスーパーもあります。これがいわゆる市場外流通の実態なんだなと思ってもおりますけれども、大型スーパーがこれだけ力を入れて産直に取り組むようになってくれば、卸売市場の業者は苦戦を免れないと思っております。
 そこで、市場経由率が低下傾向にある中で、市場関係業者の経営状況はどうなっているのか、これについても伺います。

○森澤中央卸売市場長 卸売市場の取扱数量の減少に加え、近年の低価格傾向によりまして、東京都中央卸売市場の取扱金額は、この十年間に、青果物、水産物とも約二〇%減少をしております。
 平成十四年度の市場関係業者の財務状況は、卸売業者につきましては減収傾向にありますが、経費の圧縮などにより収益を確保している状況でございます。仲卸業者は、小規模・零細企業が多く、その約四割が経常収支が赤字であり、大変厳しい状況にあるといえます。
 このように依然として厳しい経営状況が続いておりますが、市場関係業者の中には、当然のことながら、創意工夫により積極的な事業展開を図り、業績を伸ばしている業者も見られます。

○いなば委員 そこで、市場の取扱金額が減ってくれば、市場関係業者の経営状況もよくないのは当然であるわけです。その中で頑張っている業者もいるとのことですけれども、商売である以上、個々の事業者の取り組み方で結果に差が出てくるのはやむを得ないと思っています。
 業績を伸ばしている業者には、何か他の業者にない共通の特徴や理由があると思いますけれども、その見解を伺いたいと思います。

○森澤中央卸売市場長 業績を伸ばしている事業者の特徴を挙げるとすれば、消費者に近い小売り商、外食産業などが求めるパッケージや加工などのニーズにきめ細かく対応していること、商品知識を生かした販売企画の提案を行っていること、また、地域の購買層に合わせた品ぞろえや販路の拡大など、市場の置かれた地域特性や立地条件などを積極的に生かした経営を行っていることなどが挙げられます。

○いなば委員 消費者の動向を一番把握している小売店等のニーズにきめ細かく対応することが重要であるとのことですけれども、私の地元板橋区には、青果と花き市場があります。板橋市場があるわけですけれども、この板橋市場にも頑張っている業者がいると思いますけれども、市場全体の取引が低迷している中で、この市場の取引状況はどのようになっているのか、お伺いいたします。

○森澤中央卸売市場長 板橋市場の青果物の取引状況を見ますと、都の中央卸売市場全体の取扱数量、金額が減少している中で、ほぼ横ばいで推移しており、比較的善戦している市場であります。
 その要因といたしましては、仲卸業者の中に、先ほど申し上げましたような、量販店のニーズに対応するため、幅広い集荷による豊富な品ぞろえを行って、販売実績を着実に増加させている業者がいること、また、埼玉県との都県境に立地するという特性を生かした広域的、戦略的な経営を積極的に展開している業者がいること、こうした業者の活躍によりまして、板橋市場は安定した取扱実績を維持しているものと考えております。

○いなば委員 市場全体の取扱量が減少している、そういうお答えをいただきました。そういう中でも板橋市場は比較的善戦をしているという話であります。少し安心したというか、ちょっと解せないところもありますけれども、今後とも、板橋市場にしかない特徴というか強みを生かして頑張れるよう強力に指導していただくとともに、老朽化が進んできた施設の整備拡充にも積極的に取り組んでいただきたいと思います。
 卸売市場やその市場業者の活性化については、日ごろ東京都といたしましても、顧客である買い受け人などのために、低温施設、物流を効率化するための荷さばき場の整備や卸、仲卸業者の経営指導など、さまざまな取り組みを行ってこられたことは承知しております。
 それでも市場外流通の拡大などによりましてその取扱量が減って、その上、低価格化傾向が続き、市場の活性化が図れないということは、やはり現行の卸売市場制度が市場を取り巻く流通環境の変化についていけない、つまり、既に制度疲労を起こしているのではないかとも思っております。
 ところで、国はこうした卸売市場の制度を改革するために、このたび卸売市場法を改正しようとしておりますけれども、この法改正の内容は簡単にいうとどんなことなのか、教えていただきたいと思います。

○森澤中央卸売市場長 今回の卸売市場法の改正は、生鮮食料品流通を取り巻く環境の変化に対応して、卸売市場を生産、消費両サイドの期待にこたえられる安全・安心で効率的な流通システムへと転換するために、一つには、商品提供機能の強化等を内容とする規制緩和、二つには、商物分離取引の拡大や市場の再編等による低コスト流通の実現、三つ目には、品質管理等の徹底を図り、食の安全・安心の確保を図ることなどを内容といたしております。

○いなば委員 この制度改正では、安全・安心で効率的な流通システムへの転換を図るということですけれども、卸売市場における食の安全・安心については、先日の我が党の代表質問でも取り上げさせていただきました。
 都として、法改正などを踏まえて、これまでの危機管理対応に加えまして、関係規定の見直しや整備計画の中で、衛生水準の向上や品質管理の高度化などの方策を重点事項として位置づけております。
 安全・安心な生鮮食料品流通の確保が図れるよう、より一層の取り組みを進めていくとの力強い答弁をいただいておりますので、この点については是といたしたいと思っております。
 ここでは、制度改正のもう一つのキーワード、生鮮食料品の効率的な流通システムへの転換について伺いたいと思います。
 効率的な流通システムを確立するために取引規制を緩和するとのことでありますけれども、市場で取引を行っている市場関係業者にとっては、自分たちの取引にどのような影響があるのかが一番の関心事だと思います。
 そこで、この法改正によって取引がどのように変わっていくのか、明らかにしていただきたいと思います。所見を伺いたいと思います。

○森澤中央卸売市場長 法改正によって取引面で変わる点としましては、まず電子商取引が導入されることであります。これにより、これまで認められていなかった商物分離取引が特定の品目で可能となり、市場内に現物を搬入せずに販売ができるようになります。
 次に、卸売業者は生産者からの受託による集荷が原則でありますが、買い付けによる集荷が自由にできるようになります。これにより、需要に応じた計画的な仕入れが可能となります。
 また、市場同士が連携して取引を行う場合及び生産者や外食、加工業者などと連携して新たな商品開発や需要を開拓する場合には、卸売業者が連携する他の市場の業者や市場業者以外の者へ販売したり、仲卸業者が産地等から直接仕入れることが可能となることなどが挙げられます。

○いなば委員 IT化や情報化の時代といわれる中にありまして、幾ら取り扱っているものが天候に大きく左右される生鮮食料品であり、現物を見なければ品質を判断できないものであるといっても、この電子商取引を利用した商物分離取引がなぜ今まで一切認められてこなかったのか、理解に苦しむところです。
 いずれにしましても、旧態依然とした取引規制が緩和されて、より自由な経営ができるようになることは大変結構なことであると思います。ぜひ効率的な流通システムの構築に取り組んでいただきたいと思います。
 先ほど卸、仲卸業者の経営は、一部頑張っている業者はいるものの、まだまだ厳しい状況にあると伺いました。市場関係業者は、今回のこの卸売制度改正がみずからの経営改善の契機となることを大いに期待していると思いますけれども、この点についてはどのようになっているのか伺います。

○森澤中央卸売市場長 先ほど申し上げましたように、電子商取引の導入、買い付け集荷の自由化、卸売業者の市場外業者への販売、仲卸業者による産地等からの直接仕入れなどを可能とする規制緩和によりまして、経営の自由度の一層の向上が図られるようになります。
 また、卸、仲卸業者の兼業や市場外での販売規制が緩和されることになり、多角的な事業運営が可能となります。これにより、市場関係業者はみずからの創意工夫により、経営基盤の強化につなげることができると考えております。
 さらに、今回の改正では、仲卸業者の経営の自己管理の目安となる財務基準が設定されることから、経営体質の強化にもつながるものと考えております。

○いなば委員 この市場関係業者の経営問題は、単に市場の活性化のためだけじゃなくて、食の安全を守る上でも大変重要な要素であると思います。食の安全に対する意識は十分持っていても、その経営が安定しなければ、安全確認や安全対策に取り組むことが二の次になってしまいます。結果として、それが重大な事件を招くことにもなりかねません。安定した経営状況にあって、初めて適切な判断や的確な対応が可能になっていくわけであります。
 食の安全・安心を守るためにも、市場を活性化するためにも、一日も早く経営基盤の強化が図れるよう、ぜひとも本腰を入れて市場関係業者の指導や支援に取り組んでいただきたいと思っております。
 昔から、よい道具というものは心を込めて手入れをし、使い込めば使い込むほど手にしっくりとなじんで、使いやすい道具になるといわれています。私は、制度というものもやっぱり同じじゃないかと思っています。
 まず、制度改正の内容や運用方針などを十分に市場関係業者に説明して意見交換をした上で、取引の実態や消費者への影響など、個々の市場の実情に合わせてうまく運用していくことで、新しい制度の効果も十分に発揮できるようになると思っております。
 今回の制度改正を踏まえ、今後どのように市場を運営していくつもりなのか、見解を伺います。

○森澤中央卸売市場長 今日、生産技術の向上や輸入量の増加による供給の安定化、食品流通の広域化、流通チャンネルや取引形態の多様化、さらには品質管理の向上など、生鮮食料品をめぐる環境は大きく変化をいたしております。
 都といたしましては、法改正を踏まえまして、市場業者が営業活動においてみずからの創意と工夫を発揮し、経営基盤を強化できる環境を整え、卸売市場が食の安全・安心を初めとする消費者の多様なニーズに的確に対応できるよう、大消費地東京の実態を踏まえた市場改革に取り組んでまいる所存でございます。
 このこととあわせまして、生産者にとっても、市場を利用する方々にとっても効率的で魅力ある市場となるよう運営に努めてまいります。

○いなば委員 この卸売市場は、多種多様で安全・安心な生鮮食料品を効率的に提供していくと。消費者の食生活を支える場として、また市場関係業者にとっては、取引活動を行うビジネスの場として重要な機能を持っているわけであります。
 今回の卸売市場制度の改正を契機として、卸売市場や市場関係業者の活性化はもとより、卸売市場から仕入れている商店街の小売店の活性化にもつながるように、市場機能の強化に努めていただきたいということを願いたいと思います。
 最後ですけれども、少し時間が余りましたが、早くずっとやってまいりました。私はいつも思うんですけれども、いかに文武がまさろうとも、人の情けのわからぬ者は人間ではないと。けだものに等しいとはいいませんけれども、石原知事がいつもいうように、感性とか情操、これをはぐくむためにも、議会と行政がチェック・アンド・バランス機能というものを大いにやっぱり発揮していくような、これからの私どもの取り組みが必要ではなかろうかと思います。
 このことを最後に申しまして、少し早いようですけれども、皆さんに短縮の協力をさせていただきました。どうもありがとうございました。
 以上で終わります。(拍手)

○樺山副委員長 いなば真一委員の発言は終わりました。

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