東京都議会予算特別委員会速記録第三号

○樺山副委員長 続いて樋口ゆうこ委員の発言を許します。
   〔樺山副委員長退席、青木副委員長着席〕

○樋口委員 民主党の樋口ゆうこでございます。予算委員会の委員になるのは今回が初めてでございますので、大変緊張いたしております。知事を初めとする理事者の皆様、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 まず初めに、保育、子育ての問題についてお伺いいたします。
 昔から、子どもは社会全体の宝であるといわれております。私は、子どもに関して大切なことは、大きくとらえると二つありまして、一つが教育でありまして、将来を託す子どもたちが健全に育つこと、そのために私たちは子どもに対し、しつけや我慢する心、他に対する思いやりや感謝、そして何事も一生懸命やって、それが達成したときの達成感を喜ぶこと、そのようなことを会得しまして、健やかに成長するように、大人としての責任を果たす必要があると思っております。
 もう一つは、子育てであります。急速な少子高齢化の進行はさまざまな原因が重なっているかと思いますが、働いている女性にとっては、まだまだ仕事と子育て、それを両立することは大変難しいことでございます。
 子育ての問題は、私にとって、議員としての職責と同時に、仕事を持ちながら二人の子どもを育てております母親としてもまた取り組んでおります問題でございまして、良好な保育環境を一日も早く実現していただきたいと思っております。
 保育に関して大都市共通の傾向なんでしょうが、この数年、子どもの数が減少しているのにもかかわらず、保育を受けたいと希望する保育需要の数、また待機児童数は増加していると伺っております。
 最近、治安の悪化が叫ばれ、東京都を先頭に、各自治体、国においても治安対策は強化されておりますが、保育にまつわる環境についても悪化が続いておりまして、治安対策と同様、保育もまた行政による対応の強化が必要なことだと思っております。
 石原知事が就任されて以来、保育に関しては大きな改善が見られました。それは、改めて申し上げるまでもなく、認証保育所の創設であります。
 知事は、東京の強みは現場を持っていることだとよくいわれます。こうした現場からの発想が認証保育制度に結びついたのだと受けとめておりますが、認証保育所が開設して二年半を経過しており、今定例会の施政方針の中でも、知事は、都民、事業者の広範な支持を得て、認証保育所は今年度末には約二百カ所になると述べられております。非常に順調に事業が展開されていると思うのですが、認証保育所は保育サービスの向上に関してどのような効果があったとご認識していらっしゃるでしょうか。

○石原知事 都は従来、大都市としての特性に沿って、利用者本位の福祉改革を推進してまいりました。その一環として、保育においては認証保育所を創設したわけであります。
 この認証保育所は、大都市の保育ニーズに対応するために、すべての保育所でゼロ歳児の保育と十三時間以上の開所を行っておりますが、さらに独自に、インターネットを通じて子どもの様子をリアルタイムの動画で配信するなど、特色のあるサービスも実施しております。全国画一的な国の決めた認可保育所では、こうした大都市の特有の保育ニーズに的確に対応していけないと思います。
 本来ならば、この東京のシステムの認証保育所も国が認可すべきだと思いますけれども、国は相変わらず画一主義を脱することはできません。認証保育所は、都民からの広範な支援を得たからこそ、当時の予定を大幅に上回って伸びたものと認識しております。

○樋口委員 ただいまご答弁をいただきましたとおり、認証保育所を初めとする施設型集団保育は必要不可欠なものであります。全体として見れば、あくまでも施設による保育が保育事業の基本となることは十分承知しておりますが、そこには、弾力的な運営や臨機応変な対応には限界があるということも、どうすることもできない集団施設保育の限界であり、それを補完する仕組みとして、自宅での少人数の家庭的な保育も必要な事業であると思われます。
 家庭的保育の代表的なものとしまして、都では、家庭福祉員制度、いわゆる保育ママがあります。福祉改革の理念は、一つは選択だと聞いております。保育においても都民は多様な選択肢を望んでいるのであり、その答えが家庭的保育、いわゆる在宅保育であろうと考えられます。
 そこで、お伺いさせていただきますが、在宅保育の実態はどのようになっているのでしょうか。また、都は、そのような在宅保育サービスをどのように評価しているのでしょうか、お教えください。

○幸田福祉局長 お話の家庭福祉員制度は、保育技能や子育て経験を持つ人が、自宅を活用し、保育を要する三歳未満の子どもを預かり、保育するものでございます。平成十五年六月一日時点で、都内の家庭福祉員は六百二十九人、受託児童数は千百二十五人となっております。
 この制度は、家庭的な雰囲気の中で少人数の子どもに対し保育を行うものであり、多様なニーズにこたえる保育サービスの一つと考えてございます。

○樋口委員 私は、多様な選択肢を提供するためにも、在宅保育の充実を図るべきだと思っております。それは、単に予算をつける、補助を行うということではなく、都民の方が安心して利用できるよう、品質を保証するようなことも立派な支援であると思っております。ぜひとも、多様な在宅保育に対し、積極的な支援をお願いしたいと思います。
 保育に関する質問は以上でございますが、三位一体改革に関しまして一言申し上げたいことがございます。
 保育、子育てについて、行政の役割を考えたとき、大きな制度設計は当然国の役割でありますが、私の目で国の施策を見ると、国の施策は疑問点ばかりが目立っております。
 その顕著な例が、保育所運営費の一般財源化の問題があります。
 保育所運営費は、理論上は削減された補助金に見合う額が、市町村では地方交付税、二十三区では財調によって埋め合わされることになります。しかし、地方交付税そのものが削減され、臨時財政対策債と合わせると、昨年と比べて交付額が三兆円近くも減っているのが現状です。
 現場を抱える区市町村にとって、保育所運営費の削減は、別の財源で穴埋めされているとはとても受けとめることができません。単に補助金を削減されただけというのが地方自治体の偽らざる心境であります。
 知事は、今回、定例議会で、我が党の名取幹事長の代表質問に対して、国の官僚が、各省の縦割りによる既得権益擁護の構図を維持したまま、財政破綻のしわ寄せを地方に押しつけることは到底許されないと弁明されましたが、今後も進行するであろう国の押しつけに対し、毅然とした態度で挑んでいただきたいと強く願うものでございます。
 今回、補助金削減で、もう一つ申し上げたいことが進め方であります。
 国庫支出金一兆円の削減は、小泉内閣が、このままでは三位一体改革の公約を破ることになるという危惧の中で、体裁を繕うために急遽仕上げたもので、中身を議論するよりも前に数字ありきで動いていたこと、例えば厚生労働省のメニューが、当初、生活保護費の削減から保育に変更したことも明らかであります。とにかく削れば何でもいいという国のやり方に最も被害をこうむっているのは私たち国民であり、そして、地方自治体だと思っております。
 何も私は、三位一体改革の考え方を否定するわけではございませんが、突然の決定であったため、財政力が弱いといわれている団体ほど影響力は深刻であります。せめて半年くらい前に内容が明らかになっていたらよかったのですが、直前に通告されたため、地方自治体も打つ手がない状況であります。私の地元中野区では、区長は頭を抱えております。
 ぜひとも、拙速で一方的な国のやり方を変えさせ、都道府県はもちろんのこと、区市町村も納得できる改革を石原知事のお力で実現していただきたいと思っております。
 昨年の十二月、東京都社会福祉事業団が運営しております千葉福祉園を利用し、地域で生活していくための訓練を行っている二十六歳の男性が、一時帰宅を終え、自宅から園に戻った後、約九日間、所持金三千円少々で、その行方がわからなくなるという事件がありました。私も含め、関係者の必死の捜索によって発見をされました。私は、大きな事故につながらなかったことに胸をなでおろしたものです。
 いなくなった理由というのは特に限定されず、全くわかりません。一般論として、知的障害者は一般社会の荒波を受けとめることができず、ふとしたことがきっかけでパニックに陥ってしまう場合が多々あります。そうしたことに十分に配慮した運営がなされることとは思いますが、今回の件は、障害者施設の利用者に対してどのような接し方をしていくべきなのか、どのような訓練を提供していくべきなのか、私自身が改めていろいろなことを考える機会になりました。そこで、障害者施設の取り組みについて、何点かお伺いしたいと思います。
 こうした事項を取り上げますと、施設側の管理強化を望んでいると短絡的に考えられてしまうおそれがありますが、私は、そうした施設の管理強化を望むという立場からではなく、障害者もできるだけ早期に地域生活に移行していくべきだという視点で幾つか質問をさせていただきます。
 いうまでもなく、安全を確保するために、施設や養護学校の中で、職員や先生が細心の注意を払わなければなりませんが、障害者や障害児が施設や学校での生活を楽しいと感じられるものとしていくことは大変重要であります。特に入所施設は、一日の大半を過ごす場所でもあり、充実が望まれるものです。
 そこでお伺いいたします。施設の利用者が楽しく積極的な毎日を送るために、都立の知的障害者入所更生施設では、どのように考え、どのような取り組みを行っているのか、また、都立の知的障害者入所更生施設において、利用者が将来、地域生活に移行することを見据えた取り組みといたしまして、現在どのようなものがあるのか、お教えください。

○幸田福祉局長 都立の知的障害者施設では、利用者の生活意欲や心身機能の向上を図り、基本的な日常生活を営むことができるよう、日中の訓練活動を行っております。
 これらの訓練の実施に当たりましては、音楽療法、陶芸、木工、園芸などの多くのメニューを用意し、利用者の希望や障害特性に応じて選択できるようにしているほか、利用者の状況により、個別カウンセリングも実施しております。
 また、利用者がボランティアなどと一緒に各種のクラブ活動に参加したり、お花見、夏祭りなど季節感のある行事を楽しみ、地域の人々と交流できるようにするなどの取り組みも行っております。
 また、都立の知的障害者更生施設では、利用者のニーズを把握し、個々人の年齢や障害程度に応じた個別支援計画を策定して、これをもとに、利用者が自立できるよう支援しております。
 具体的には、職員宿舎などを活用いたしまして、利用者が将来、地域で自立して生活することができるよう、日常生活に必要な炊事、金銭管理、円滑なコミュニケーションなど、さまざまな自活訓練を積極的に行っております。
 また、一部の施設では、スーパーマーケットやクリーニング工場、パン工場などに通いまして体験実習を行い、利用者の就労自立に備えております。

○樋口委員 環境の変化への対応能力が弱い知的障害を持つ方が円滑に地域生活に移行できるためには、施設で息の長い、きめ細やかな訓練が欠かせません。国の制度では、訓練期間を最長で一年としており、施設外でアパートなどを借り上げる場合も、その経費を特別に補助する制度がないのは問題です。
 私は、東京都として、訓練期間の延長と、借家に対する何らかの施策が必要だと考えており、こうした施設の中で、訓練事業についてどのように充実させていくつもりなのか、今後の取り組みについてお伺いいたします。

○幸田福祉局長 お話のとおり、施設入所者の地域生活移行を進めるためには、国の自活訓練事業だけでは不十分であります。
 そのため、都は、平成十四年度から、都内の民間施設に対しまして、独自にアパートの借り上げ助成を実施しております。
 来年度からは、国が最長でも一年間としている訓練期間を、都は、さらに一年間延長できるよう補助を充実するとともに、アパートの借り上げ助成につきましても、都外の施設に拡大する予定でございます。
 十分な訓練期間と訓練場所の確保を都が支援することにより、地域での生活を希望する障害者の地域生活移行の一層の促進を図ってまいります。

○樋口委員 社会的に非常に弱い立場にある知的障害者の方々が自立していくためには、行政の支援が必要不可欠であります。しかし、国の支援は不十分であり、国が手を差し伸べない以上、都が支援する場面がどうしても出てくると思います。
 施設から地域へと、いうはやすしであります。細かなことですが、一例を申し上げますと、施設でおふろの水をとめること、電気を消すことなどは習慣づいておらず、実際、地域で暮らし出すと、さまざまな問題が起こってくるのが実情であります。現場の声をしっかりと受けとめながら、きめ細やかに取り組めるよう、引き続き支援をお願いしたいと思います。
 それでは、次に、教育についてお尋ね申し上げます。
 東京の教育を全国と比較いたしますと、私立学校が、絶対数で見ても、割合で見ても、全国平均より際立って高いという特徴があります。私立と公立が車の両輪となって、東京の教育を支えているのだと思います。
 私は、私立の役割は極めて大きいと考えておりますが、私立学校が東京の教育に果たしてきた役割をどう認識していらっしゃるのでしょうか、お聞かせください。

○三宅生活文化局長 都内の学校の生徒数で見ますと、中学生の二五%、全日制の高校生の五八%が私立学校に学んでおります。
 東京の私立学校は、建学の精神に基づく独自の校風や伝統のもとで、その自主的で自由な立場から、中学と高校、あるいは幼稚園から大学までを併設した多様な一貫教育、宗教に根差した教育、男女別学教育など、さまざまな特色ある教育を行っております。
 また、各学校の独自性を発揮したユニークな教育内容でも都民の信頼を得ており、東京の公教育の中で重要な役割を果たしていると考えております。

○樋口委員 私立の役割を評価されている点については同じ認識を持つことができ、安心しております。
 しかし、ここはあえて申し上げるのですが、私立学校の関係者が非常に危惧している事例があります。中高一貫教育の都立校の参入であります。
 中高一貫教育は、ある意味で、文部科学省が定めた六・三・三・四制の現在の教育制度では賄い切れないような教育を提供してまいりました。それは、学習内容にとどまらず、人格形成の面など多岐に及んでおりますが、そうしたトータルな教育環境を提供することで、国が定める一律的な教育制度だけでは生み出すことができないような人材を育て、社会に還元してきたのだと思います。
 中高一貫教育は、これまではほとんど私学だけが提供してきた分野でありまして、私立が長い歴史の中で実績を積み重ね、成果を出してきたものであります。
 私は、現在、教育庁が進めております都立高校改革には賛成の立場でありますし、チャレンジスクールだとかエンカレッジスクール、デュアルシステム高校などについては、少し片仮名が多過ぎるように思いますけれども、さすが都立ならではのカリキュラムと、高く敬意を払っております。
 ただ、このような多彩なメニューを既に用意されていらっしゃる都立高校が、あえて中高一貫教育にまで参入する必要があるのかどうなのか、正直なところ、私の友人である私学の経営者や教員などからは、官による民業の圧迫という懸念の声も聞こえてくるのですが、この点については、どのようにご認識されていらっしゃるのでしょうか。

○横山教育長 都民の意識調査でも明らかになりましたけれども、都教育委員会では、都民の公立中高一貫教育校に対します大きな期待がある、そうした大きな期待を踏まえまして、生徒や保護者の学校選択幅を拡大する、こういう観点から、生徒像としましては、高い知性、豊かな教養、日本人としてのアイデンティティー等を身につけた、さまざまな場面、分野でリーダーとなり得る人間の育成を目指した中高一貫教育校を全都で十校設置することとしております。
 私立の中高一貫教育校に対しましては、進学指導重視からスポーツ重視等、特色ある運営がなされていることは十分承知をいたしております。
 中高一貫教育に対します、こうした公立や私立への都民の期待にこたえるべく、公と私がそれぞれの立場から中高一貫教育を担っていくべきものと考えております。

○樋口委員 都立の中高一貫教育の実施が都民ニーズそのものだということをおっしゃって、それぞれの役割分担の中で、公私両方が中高一貫教育を担っていくことなのだと思います。公立高校と私立高校に、置かれている状況、立場に大きな相違があるのも事実であります。
 その一番顕著な事例が費用負担の点だと思いますので、公立高校と私立高校について、その比較を行ってみたいと思います。生徒一人当たりの本人負担額と公的支援額について、それぞれの金額をお示しください。

○横山教育長 公立高校におきます本人負担額は、平成十四年度の全日制では、授業料及び入学金の合計で、生徒一人当たり十一万七千円でございます。
 それからまた、同様に、平成十四年度の全日制の生徒一人当たりに要した経費、これは公的支援額ではございませんが、地方教育費調査によれば百四万七千円でございます。

○三宅生活文化局長 私立高校においての本人負担額は、平成十四年度の全日制の初年度納付金で見ますと、生徒一人当たり約八十二万円でございます。
 また、学校に対する公費負担額としては、平成十四年度の全日制の私立高校経常費補助額で見ますと、生徒一人当たり約三十五万円でございます。

○樋口委員 都立高校では、全体の経費のおよそ九割を公費、すなわち税金で賄っているのに対し、私立高校では、公的負担は三割にとどまっております。
 全く同じ内容であれば、授業料が全く違うわけですから、官と民が競争した場合、官が勝つのは当たり前の話でありまして、私立学校は、公立と違う土俵に立つよう、個性化、差別化に日夜腐心している、それが私立学校の姿であります。
 中高一貫教育というような同じ教育を提供するのであれば、都立に流れるのは当たり前の話だとも思います。もちろん都立高校は必要でありますし、私学も、あえて私学経営に乗り出している以上、最大限の経営努力を払うことも当然必要だと思います。
 しかし、都立が、安い授業料に物をいわせて、先駆者である私立を駆逐するようなことであってはならず、都立と私立とは、切磋琢磨しながら共存共栄を図っていく関係にあると思うのですが、いかがでしょうか。

○横山教育長 東京におきましては、先ほどもご指摘がございましたが、他県に比しても非常に比重が高く、従来から公立と私立が、それぞれの教育理念あるいは建学の精神に基づきながら連携、協力しつつ、適切な役割分担のもとで高等学校教育を担ってきております。
 都教委としましては、少子化及び生徒の多様化が進む中で、都立高校の個性化、特色化を図りますとともに、都立高校の統合、改編を着実に推進をしてまいりました。
 東京の公教育の質を高めていくためには、よい意味での競争のもとで公私が切磋琢磨しながら、さまざまな教育課題に適切に対応しまして、その解決に向けて取り組んでいくことが必要であると認識をいたしております。
 今後とも、都民の多様な高校教育への期待にこたえられるように、私立と協調していくことによりまして、東京における高校教育の充実、発展に努めてまいります。

○樋口委員 教育長も、公私が切磋琢磨しながら共存共栄を図っていく立場であるということで、私も安心いたしました。
 よい教育を提供していただくためには、公私間の、さらにいえば公私の別なく、それぞれの学校同士で健全な競争が行われることが必要であると思います。ぜひとも、都立の学校には、私立のコピーではない、個性ある学校経営を行っていただきたいということを強く要望いたしまして、次の質問に移ります。
 次は、臨海副都心開発についてであります。
 私は先日、臨海副都心に足を運びました。東京ビッグサイトの隣では有明病院の建築が急ピッチで進んでおり、また、フジテレビのスタジオ、臨港警察署の建設が決まるなど、着実に成長を続けていることが実感できました。
 しかし一方で、臨海副都心は本当に大丈夫なんだろうかという、何と申し上げたらいいのでしょうか、もやがかかったような印象をぬぐい切れないのも率直な気持ちであります。
 その理由を自分なりに分析しますと、一つは、臨海副都心のあちこちに残っている空き地、あるいは暫定的に駐車場などに利用されている土地が本当に売れるんだろうかという懸念であります。
 この点については、時間があれば質問をさせていただきたかったのですが、今後の努力次第でという面が大変多い部分でございますので、先ほど取り上げた臨港署、フジテレビスタジオの予定地を初め、十六年度にそれなりに土地が売れる見込みであるということですので、当面は今後の売却に期待をしておくことにいたします。
 もう一つの大きな不安材料は、臨海副都心に関連する第三セクターの経営状況であります。
 「ゆりかもめ」のように順調に利用者を伸ばし、まあ順調と呼べる会社もありますが、それは少数派で、多くの第三セクターは経営に苦しんでいるはずです。
 そこで本日は、代表的な事例としまして、臨海地域及び竹芝に相当の床面積を持ちます、株式会社東京テレポートセンターを取り上げたいと思いますので、よろしくお願いします。
 最初は、会社の決算状況から伺いたいと思います。正直なところ、決算書を拝見するのは頭が痛くなるような作業ですので、この場でわかりやすく教えていただきたいと思います。
 一つは、バランスシートについて、資産と資本、負債の状況、二つ目は、損益の状況を過去五年間の経年でお示しいただきたいと思います。

○成田港湾局長 臨海の三セクの経営状況につきましてお答え申し上げます。
 ご案内のように、臨海の三セクといたしましては、お話が出ました東京テレポートセンター、さらに東京臨海副都心建設株式会社、竹芝地域開発株式会社、三社が一体となって取り組んでおります。
 その三社の、まず資本と資産、そして負債の状況でございますが、平成十四年度末現在での三社の状況を申し上げますと、株式会社東京テレポートセンターでは、資産が約一千二百五十六億円、負債が約一千三百四億円、資本は、マイナスで約四十八億円でございます。
 また、東京臨海副都心建設株式会社では、資産が約三千五百三十九億円、負債が約三千七百二十億円、資本は、マイナスで約百八十一億円でございます。
 竹芝地域開発株式会社では、資産が約一千百五十九億円、負債が約一千二百六十二億円、資本は、マイナスで約百二億円となってございます。
 次に、会社の損益状況でございますが、これは三社合計で申し上げますと、営業利益は、この間、経営安定化策を策定して経営改善に取り組み始めました平成十年度はマイナス一億円でございますが、翌十一年度には二十六億円と黒字を達成し、以降、毎年度三十八億円の黒字を計上しているところでございます。
 当期利益でございますが、平成十年度がマイナス九十一億円、十一年度以降は、順にマイナス五十億円、マイナス三十五億円、マイナス十七億円、そして十四年度はマイナス三十二億円となってございます。
 当期利益につきましては、このように依然赤字ではございますが、この五年間で約百二十億円ほど赤字額が改善されているところでございます。

○樋口委員 損失が膨らむ一方であるように感じられました。
 それでは、この会社の収益構造はどのようになっているのでしょうか。収益の柱となるのは何であるか、お教えください。

○成田港湾局長 臨海三セクが行っております収益事業とその収入を十四年度決算で見てみますと、ビル事業が二百四十九億円、情報通信関連事業が八億円、施設管理事業が六億円、東京都からの受託事業が八億円、合計二百七十一億円となってございます。
 したがいまして、会社収益事業の中では、ビル事業の占めます割合が九割以上と高く、ビル事業が収益の柱となっているところでございます。

○樋口委員 収益の中心を占めるのはテナント料ということになっていますが、そうしますと、臨海副都心に建てられている四つのビル、テレコムセンターだとか三つのフロンティアビルがあるんですけれども、そのテナントの入居状況を調べました。テレコムセンターが九一・二%、フロンティアビルが八三・二%、ニューピア竹芝九六・九%。まだまだ大変な状況であります。
 会社を黒字にするには、テナント料の収入をふやさなければならないということになりますが、都心に新しいビルがどんどんできているこの中で、この話は単純明快であるだけに、かえって難しいのではないかと思います。
 そこで、都としては、今後どのような見込みを持っているのか、また、団体を監理する立場としてどのように指導していくおつもりなのか、お教えください。

○成田港湾局長 ことしに入りまして、いわゆる二〇〇三年問題の影響は鎮静化しつつございますけれども、ビル事業は今後とも厳しい状況にあると認識しているところでございます。
 都は、臨海三セクを、監理団体の中でも特に重要な団体と位置づけて指導監督しておりまして、収益事業の柱であるビル事業におきまして、テナントの入居率を向上させることが会社経営の上からも重要であると考え、積極的な営業活動により収益の確保に努めるよう、引き続き会社に対して指導してまいります。

○樋口委員 正直なところ、前途は非常に厳しいものだと思いますが、今さら後戻りをするわけにはまいりません。ぜひとも頑張っていただきたいと思っております。
 臨海をだれからも愛されるまちにしていただきたいと私は願っております。最後に、臨海副都心の将来展望についてお尋ね申し上げます。
 六本木ヒルズ、丸の内、汐留あるいはディズニーランドなど、ビジネス、レジャー両面で多くのライバルが近隣に控えている中で、ここ臨海を一層にぎわいのあるまちにしていくのには、大胆な事業の展開、例えばカジノなど、また特区--規制緩和ですよね。必要だと思いますけれども、知事のお考えをぜひお示しください。

○石原知事 いろいろ予定されておりますアクセスが全部完了しますと、お台場というのは、一種の幹線のクロスするところにもなりまして、また、あるいは大きな意味での一種の環状線の一部にもなりまして、非常に便利になると思います。その点では、六本木その他の新興開発地と比べて、非常に有利な条件を持っていると思います。
 いずれにしろ、新たなまちを開発して発展させていくためには、そうした交通等のインフラの整備だけではなくて、ソフト面での規制緩和も不可欠だと思います。
 いずれにしろ、あそこは、かつては水でありまして、よくあそこにカモの猟に行ったのを覚えておりますけれども、それが陸に変じまして、周囲がずっと海という、東京の他にない特性を持った地域でございまして、そういった特性を生かしまして、企業の進出しやすい環境の整備に努めてまいりました。
 その努力もようやく実を結びまして、土地の活用率は、暫定利用を含めると約七六%にまで上がってきました。年間の来訪者数も四千万人を超える状況でありますが、職、住、学、遊の多彩な顔を持つ未来志向型の都市を目指して、首都東京の再生を担う有力な拠点となるように、今後も総力を挙げて、衆知を集めて開発に取り組んでいきます。

○樋口委員 知事のご答弁に対し、私の臨海に対するもやは、少し晴れていくのではないかと思います。
 臨海の関係各局の連携した取り組みをじっくりと見続けながら、そして疑問点については、これからもお教えいただきたいと思います。そして、私は、成田局長のファンの一人でもありますので、より一層、この港湾のこと、頑張っていただきたいと思いながら、次の質問に移らせていただきます。
 三年前は大変暑い夏でございました。渇水が心配され、小河内ダムの人工降雨機を動かしたところ、多量に雨が降りまして、石原知事が、画期的だ、洪水になるかもと称賛された記事を拝見いたしました。その後、八ッ場ダムを契機に、水資源の確保について、しばしば考えるようになりました。
 人工降雨とは、今から五十年前の一九四六年に、アメリカのGE社が飛行機からドライアイスを散布して人工降雨の効果を確認したことが初めで、その後、ヨウ化銀が用いられ、現在では五十カ国を超える国々が人工降雨などの気象改変に関心を示しているといわれており、日本を初め、中国、韓国、イタリアなどで、実際に水不足解消のために人工降雨への取り組みが行われております。アメリカでは、空港の霧を晴らすために、人工降雨によって雨を降らせて、そしてその霧を晴れさせるというようなことも実際行っているそうでございます。
 小河内ダムの人工降雨は、ご存じかと思いますが、アセトンとヨウ化銀を燃焼し、これを上空に噴き上げ、雲の中に氷の結晶をつくって、雲から雨を降らせるようなものでありまして、これは、もっとも、上空に雲がなければ何にもならないことなのでございますけれども、ただ、私は、このヨウ化銀というものについて、ちょっと興味を持ちました。
 ヨウ化銀は、果たして安全なのかどうなのか。私は、たくさんの製品安全データシート、MSDSを取り寄せました。そして、ヨウ化銀は、危険有害性の分類で急性毒性物質と記載されており、また、有毒性情報や環境影響情報のデータは、ほとんどの項目がデータなしと記載されております。また、危険有害性の分類の項目や、取り扱い及び保管上の注意という項目の中では、強熱すると、有害な酸化銀の煙霧及びガスを発生すると記載されております。製品安全データシートを見る限りにおいては、安全性や取り扱いに大変問題のある物質だということを私なりに理解をいたしております。
 そこで、ぜひお伺いをさせていただきたいのは、この小河内ダムの人工降雨、今から四十年以上も前にできた、大分古ぼけたものでございますけれども、そのころ一千五百万円を使ってつくったものでございます。しかし、科学というのは日進月歩、進んでおります。この中において、四十数年前のものを使っていて、そして、安全性も世界的には定かではないというような物質を使って、果たして本当にいいんだろうか、私たち東京都民の水は本当に安全なんだろうか、そのことについて私は大変疑問を持ちました。
 先ほど、アメリカの空港で、霧を晴らすということに実際使っているということを申し上げましたけれども、それは何と、日本人の福田教授、その方が実際、液体炭酸という物質を使って、そして行っているものでございます。ヨウ化銀を燃焼させて……

○青木副委員長 樋口委員、樋口委員、質疑中恐縮でございますが、時間が過ぎておりますので、質疑にまとめていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○樋口委員 そして、上空に持っていくということは大変珍しいことだと思います。
 ぜひ安全性、そしてこれからいかに予算がかかろうとも、これからもっともっと人工降雨について考えていかなくてはならないと私は考えておりますが、ぜひご所見をお伺いさせていただきまして、私、樋口ゆうこの質問を終わらせていただきたいと思います。

○飯嶋水道局長 人工降雨におけるヨウ化銀につきましては、我が国を初めとする主要国では、水源水域におきまして、監視を要するほどの濃度では検出されておりませんことから、水道水質基準の対象項目とはなっておりません。
 一方、米国では、飲料水における銀とその化合物の基準を定めておりまして、ちなみにこの基準に照らして試算いたしてみますと、水道局で過去十年間に最も多く人工降雨を実施いたしましたのが平成八年度の五十七回でございますが、その際、小河内ダムに流入するヨウ化銀の濃度は、一リットル当たり四億分の一グラムと試算され、さきに述べた基準値の約九万分の一と、極めて低い数値となっております。
 また、これまで世界で行われている人工降雨におきまして、ヨウ化銀が人体や環境に影響をもたらしたという報告もされておりません。
 したがいまして、水道局が実施している人工降雨につきましては、安全性が懸念される状況にはないと考えております。
 また、人工降雨に関しましては、毎年、三十カ国余りの国々から実施結果が世界気象機関に報告されておりますので、今後、それらを踏まえまして、新たな知見が得られれば、水道局におきましても参考とさせていただきたいと思っております。

○樋口委員 どうもありがとうございました。(拍手)

○青木副委員長 以上で樋口ゆうこ委員の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時二十四分休憩

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