東京都議会予算特別委員会速記録第三号

○宮崎委員長 ただいまから予算特別委員会を開会いたします。
 これより付託議案の審査を行います。
 第一号議案から第三十号議案までを一括して議題といたします。
 十二日に引き続き総括質疑を行います。
 松原忠義理事の発言を許します。

○松原委員 まず、羽田空港と東京港についてお伺いいたしたいと思います。
 羽田空港の再拡張、国際化というのは、都市再生、国際競争力の強化、経済活性化等の観点から、非常に重要なプロジェクトであります。この間、知事は、みずから先頭に立って国を突き動かし、かつ、この事業の財源スキームに都として協力することを決断いたしました
 二十一世紀の東京のみならず、日本のありようを大きく左右するものといえる重要な施策の一つを早期に実現させるため、知事が今回の決断、国に対して無利子貸付をするという大きな今回の決断をしたものと思い、大きく評価するものであります。
 これによりまして、平成二十一年度の完成に向け、来年度からいよいよ羽田空港の再拡張事業、つまり、四本目の新たな滑走路の整備事業が具体的に動き出すことになります。
 今後、事業が円滑に進められることを切に願うところですが、いまだに、この新たな滑走路をどのようにしてつくるのか、つまり、肝心の工法が決まっていない状況にあります。桟橋工法、埋め立てと桟橋の組み合わせ工法、浮体工法といった工法のいずれかでというように聞いておりますけれども、今後どのようにして、また、いつごろまでに工法が決まるのか、まずお伺いいたしたいと思います。

○勝田都市計画局長 新設いたします滑走路の工法といたしましては、ご指摘の三つが工法として挙げられておりますが、国土交通省では、設計と施工を一括して入札することとしておりまして、この結果により工法が決定されることとなります。
 その時期につきましては、平成十六年度中に入札を実施し、工法を決めたいとしております。

○松原委員 平成二十一年度の完成に向けまして、都においては、事業が円滑に進められますよう、引き続き国に働きかけていただきたいというふうに思います。
 次に、新聞等でたびたび取り上げられておりますけれども、神奈川口構想についてお伺いいたしたいと思います。
 この構想は、神奈川県等が、羽田空港の再拡張や国際化を踏まえ提唱している構想と聞いておりますけれども、その内容はどういうものか、お尋ねをいたします。

○勝田都市計画局長 いわゆる神奈川口構想でございますが、神奈川県、横浜市、川崎市及び神奈川県内の関係団体で構成をされます京浜臨海部再生会議が提唱しているものでございます。
 その内容といたしましては、神奈川方と羽田空港側を結ぶ連絡路等の交通アクセスの整備や、神奈川方における空港関連施設、臨空産業の集積を目指したまちづくりなどが含まれております。

○松原委員 限られた時間でございますので、その内容には触れませんけれども、この構想にはいろいろなものが含まれているわけであります。神奈川方と羽田空港側を結ぶ連絡路は、東京都にも直接かかわって影響の大きいものだというふうに思っております。この連絡路についてどのように検討が進められるのか、お伺いいたします。

○勝田都市計画局長 神奈川口構想につきましては、本年二月に設置されました、国土交通省と神奈川方三団体で構成されます神奈川口構想に関する協議会において検討されることとなっております。
 連絡路につきましては、既に、京浜臨海地域全体の幹線道路網の整備手法などを検討することを目的といたしまして、東京都、神奈川方三団体及び国土交通省等で構成されます京浜臨海部幹線道路網整備検討会議が設置されておりますので、この検討会議において関係者間で議論、検討が進められることとなっております。

○松原委員 ところで、羽田空港には、沖合展開に伴う跡地があります。私はかねてより、この跡地が、再拡張し国際化される羽田空港の機能を十分に発揮させるため、そしてまた、東京に残された数少ない都市再生の起爆剤としての貴重な種地として、非常に重要な空間であると主張してまいりました。神奈川側が神奈川口構想を提唱し、川崎市等を中心とした開発に積極的な姿勢を示している今、羽田空港に隣接するこの跡地をどのように活用するのかがいよいよ重要となっております。
 そこで、神奈川口構想に対する知事の感想とともに、跡地利用に関する今後の取り組みについて知事のご所見をお伺いいたしたいと思います。

○石原知事 空港がその機能を十分に発揮するためには、空港の直接の施設だけではなしに、その周辺地や後背地が空港を支え、空港と一体化して機能することが必要だと思います。
 その意味で、神奈川方がしかるべき機能を持つことは重要でありますが、対岸は、ご存じのように大きな工場が廃絶されまして、過疎化されつつありますが、あそこにも大きなスペースがあるわけですけれども、いずれにしろ、この構想については、今、局長が説明したように、三団体と国交省が協議会を設置して行うということでありますが、その議論をまず見守りたいと思っております。
 一方、この空港に隣接する東京側の跡地は、非常に重要な空間でありまして、両者が競って再開発をしていく段階で、連絡をとりながら、しかし二重投資にならないように、東京は東京で先手を打って、必要なものを講じていく必要があると思います。羽田空港を最大限にサポートするとともに、空港の持つ可能性を十分に活用した利用計画を立てる必要があると思います。
 このためにも、都としては、跡地利用について関係自治体とも調整しながら、非常に大事なスペースでありますので、なるほどというものをあそこにつくっていきたいと思っております。

○松原委員 今、石原知事からご答弁いただきましたけれども、非常に大切な跡地であるということでございます。私も全くそのとおりだというふうに思います。特に東京都において、しっかりとイニシアチブをとって頑張っていただきたいというふうに思います。
 それから、増大する首都圏の国際、国内航空需要への対応や、東京の再生を図るためには、今まで質問した空港整備とあわせて、空港アクセスの改善も重要な課題であります。そこで、空港アクセスの改善について幾つか質問をさせていただきたいと思います。
 まず、都営浅草線の東京駅接着と成田新高速鉄道についてお伺いいたします。
 現在、千葉県内において成田新高速鉄道の事業が進められていると聞いています。この事業が完成しますというと、羽田空港と成田空港間の移動時間の短縮が図れるとともに、日暮里-成田空港間の所要時間は約五十一分から三十六分、十七分短縮されるとのことでありまして、空港アクセスの改善に大きく寄与するものであります。
 一方、東京の都市再生のためには、首都東京の玄関口である東京駅に都営浅草線を乗り入れ、東京駅と羽田、成田両空港を直接結ぶことにより、空港アクセスの改善を図ることが重要であります。
 そこで、現在の都営浅草線東京駅接着構想の検討状況及び成田新高速鉄道の事業の進捗状況について、局長にお伺いいたしたいと思います。

○勝田都市計画局長 都営浅草線の東京駅接着につきましては、国、都、鉄道事業者などから成ります検討会におきまして、八重洲通りに乗り入れる案、周辺再開発と一体的に整備する案、簡易な方式で乗り入れる案の三案を有力な案といたしまして、平成十五年五月に公表いたしました。現在、中央区が進めます再開発構想の取り組みなどとも調整を図りつつ、東京駅接着について検討を進めております。
 また、成田新高速鉄道につきましては、千葉県が出資いたします成田高速鉄道アクセス株式会社において、現在、測量や環境アセスメントなどの調査を実施しておりまして、平成二十二年度の完成を目指して着実に事業を推進しているとのことでございます。

○松原委員 引き続きまして、東海道貨物支線の活用についてお伺いいたしたいと思います。
 この路線は、羽田再拡張にあわせて神奈川県が要望しております神奈川口や、現在の空港アクセスの拠点である天空橋、大田市場などを経由して都心に至る、京浜地区、羽田空港と都心を結ぶ路線であります。この現在の検討状況について局長にお伺いいたします。

○勝田都市計画局長 東海道貨物支線でございますけれども、運輸政策審議会答申第十八号におきまして、今後整備について検討すべき路線として位置づけられております。
 これまで都は、国や沿線自治体から成る協議会に参加してまいりましたが、その報告によりますと、本路線は、広域鉄道ネットワークの充実につながるものの、費用対効果や事業採算性などの面で課題も多いとされております。
 今後とも、関係機関とともに議論をしてまいります。

○松原委員 引き続きまして、京急蒲田とJR蒲田を結びます通称蒲蒲線と私どもはいっておりますけれども、その問題についてお伺いいたしたいと思います。
 この蒲蒲線は、京急空港線と東急多摩川線の間のわずか八百メートルをつなぐことによりまして、東急多摩川線や東横線などと羽田空港が直接結ばれ、広域的なネットワークの形成と、羽田空港アクセスの飛躍的な向上に寄与するものであります。
 平成十二年の運政審では、平成二十七年度までに工事に着手することが適当な路線ということで位置づけられております。地元大田区でも、羽田空港の玄関口として、蒲田の活性化につながるものと大いに期待しております。特に来年度は、大田区がその事業化に向けまして五千万円の調査費を計上したと聞いております。
 羽田空港の再拡張や国際化を踏まえ、国際都市の玄関口としてふさわしい基盤整備を積極的に取り組むべきと考えますけれども、蒲蒲線整備について、都の取り組みについて局長にお伺いいたします。

○勝田都市計画局長 いわゆる蒲蒲線でございますが、お話がございましたとおり、運輸政策審議会答申第十八号におきまして、東急多摩川線と京急空港線とを接続する路線として位置づけられておりまして、これまで国や区が調査を実施してきております。
 これらの調査によりますと、蒲蒲線は、事業採算性のほか、相互に乗り入れます東急線と京急線の線路幅が異なること、また、周辺まちづくりとの整合など、解決すべき課題があるとされております。
 こうした課題を踏まえまして、都といたしましては、今後、国などの検討状況を見ながら、必要な対応を図ってまいります。

○松原委員 以上、羽田と成田、特に羽田への空港アクセスの問題についてご質問させていただきました。とにかくこういう時代でございますので、一日も早く時間の短縮になるように、今後とも、それぞれ努力をしていってほしいなというふうに思います。
 私は、個人的には、リニアモーターカーを羽田-成田間に結ぶとか、十五分で行きますから、あるいは、新幹線をいっそ羽田に結んじゃったらいいんじゃないかとか、そんな個人的な意見は持っておりますけれども、しっかり頑張っていただきたいなというふうに思います。
 このような羽田周辺エリアは、まさに陸海空の結節点でありますけれども、羽田空港再拡張の関係でもう一つ忘れてならないのは、首都圏四千万人の生活と産業を支える東京港の存在であります。羽田空港再拡張に当たっては、当然、港湾機能の確保が図られることが大前提でなくてはなりません。
 そこで、狭隘な東京港の海面において、今後とも羽田空港と東京港の港湾機能は共存し得るものか、この辺をお伺いいたしたいと思います。

○成田港湾局長 羽田空港の再拡張における新滑走路の位置が現在の第一航路に近接することなどから、大型コンテナ船などの入出港に支障を及ぼすことが明らかとなりましたので、都は国に対しまして、航路機能を確保するため、第一航路を東側に寄せ、航路幅を拡張することなどを要請してまいりました。国は、これらを踏まえ、羽田空港と東京港の共存を前提に事業を行うことといたしました。
 現在、国は、新滑走路の構造形式、施工方法などの検討を進めており、都は、工事中の航路確保や航行安全への配慮など、港湾機能との共存に向け、今後とも積極的な調整を行ってまいります。

○松原委員 港湾機能が確保されるということで、安心をいたしました。
 さて、ただいま航路のことが出ましたけれども、この航路に面した東京港のメーンターミナルであります大井コンテナふ頭の再整備事業がこのたび完了いたしまして、本年一月からフル稼働しております。着工から約八年の長きにわたる大事業で、常時コンテナの取り扱いを行いながら再整備を行うという、世界でも類を見ない大変大規模な再整備事業であります。
 既存ストックを活用しつつ貨物取扱量の増加に的確に対応した、この一大プロジェクトの完了をまず評価しますとともに、東京港の国際競争力の強化に向けた大井コンテナふ頭の今後の課題について何点かお伺いいたします。
 初めに、この事業によってコンテナふ頭の機能はどのように向上したのか、また、この結果、取扱量は再整備前と比較してどの程度増加したのか、お伺いいたします。

○成田港湾局長 大井コンテナふ頭再整備事業は、二十一世紀を見据えた高規格コンテナターミナルを実現すべく、平成八年に着工に踏み切った大規模プロジェクトでございます。マイナス十五メートルの水深と三百三十メートル以上のバース延長を確保するとともに、新型のコンテナクレーンの導入などにより、現在、国際基幹航路の主力として就航しておりますコンテナ六千個積みの大型船はもとより、今後続々と進水いたします八千個積みの超大型船にも対応することができるものでございます。
 この結果、再整備前の平成七年と平成十四年の一バース当たりの年間コンテナ取扱個数を比較いたしますと、十七万八千個が二十七万一千個と、一・五倍に増加しているところでございます。

○松原委員 再整備が貨物取扱量の増加につながり、心強い限りでありますけれども、大井ふ頭をさらに使いやすい港とするためには、運営面での改善も必要と考えます。ターミナルゲートのオープン時間拡大などの課題もいまだ残されていると聞いておりますけれども、大井コンテナふ頭の機能をさらに向上させるための課題と、その解決に向けた取り組みについてお伺いいたします。

○成田港湾局長 再整備の完了いたしました大井コンテナふ頭におきまして、取扱貨物の増加に対応し、これまで以上に効率性の高いふ頭運営を行うには、ふ頭業務の共同化の推進やヤード機能の拡張とともに、ふ頭背後の渋滞解消による交通の円滑化などの課題がございます。
 このため、隣接いたしますターミナルの利用者が、クレーンやヤードを相互に融通し合うなど共同化の推進や、ふ頭背後の民有地を活用したヤードの拡張を図ってまいります。
 また、さらに、ゲートオープン時間の延長によるコンテナ車両の平準化など、ふ頭背後道路の交通対策を進め、ターミナル運営のより一層の効率化に向け、官民一体となって取り組んでまいります。

○松原委員 ただいまの答弁にありました大井ふ頭周辺道路の交通状況についてですが、大井ふ頭周辺の道路は、湾岸道路へのアクセス道路となっておりまして、コンテナ車両と一般車両がふくそうするために、今、大変渋滞がひどくなっております。これはもはや、ふ頭運営の効率化だけでは解決できるような状況になっておりません。
 また、さらに、臨海トンネルの開通などに伴いまして、城南島でも混雑が激しくなっております。地元でも今大変困っておりますけれども、一般車両の通過に支障があることはもちろんのこと、輸入貨物の引き取り時間におくれることなども考えられまして、港湾物流にも大きな影響を及ぼしているのではないかと思います。
 そこで、ふ頭周辺の交通渋滞の緩和に向けて早急に対策を講じるべきと考えますが、その取り組みについてお伺いいたします。

○成田港湾局長 ご指摘のとおり、大井コンテナふ頭周辺道路の渋滞対策は喫緊の課題と認識しております。
 このため、ふ頭背後にコンテナ車専用レーンを設け、港湾関連車両のふ頭への出入りを円滑化するとともに、一般の通過交通とのふくそうを解消する対策案を作成したところであります。
 現在、この対策案に基づきまして、ふ頭利用者や関係機関と、具体的な交通動線のあり方等について協議を行っておりまして、協議が調い次第、速やかにその実現に努めてまいります。
 また、ご指摘の城南島におきます交通渋滞の緩和につきましても、関係部署と十分に調整してまいりたいと考えております。

○松原委員 早期の成果を期待していきたいと思っています。
 さて、コンテナふ頭での輸出入に当たっては、貨物のストックや加工などのための倉庫が必要であります。大井ふ頭の周辺には物流倉庫が集積していますけれども、今後の取扱貨物の増加や物流革新の動向を考えますというと、現在の物流倉庫では、量的にも質的にも限界に来ているというふうに思います。
 そこで、このような物流施設に対する需要に今後どのように対応していくのか、お伺いいたします。

○成田港湾局長 東京港では、最近のアジア経済の発展などによりまして、今後とも、アジア貨物を中心に輸入貨物の増加が見込まれております。とりわけ臨海部の倉庫では、東京区部で消費される輸入貨物の約八割を取り扱っておりまして、貨物量の増加や高度な集配機能への対応が求められているところでございます。
 そこで、既存倉庫のリニューアルを図るとともに、中央防波堤外側埋立地に、ITを活用いたしました、自動仕分けや流通加工などができる物流倉庫群やトラックターミナル、コンテナ置き場などを有機的に集積させた、大規模な高機能物流拠点の整備を進めてまいります。

○松原委員 ただいまの港湾局の局長の答弁のように、都の主導で、東京港の将来像をきちんと描くとともに、羽田空港や大井ふ頭を擁するこのエリアを、陸海空の物流の一大拠点として開発、育成していくよう強く求めて、この質問を終えたいと思います。
 次に、中小企業対策についてお伺いいたしたいと思います。
 ものづくり産業では、さまざまな分野のさまざまな技術が結びつき、融合して、新たな技術の開発、製品化につながっていくということが強さの源泉になってきました。
 私の地元の大田区は、知事もよくご存じでございますけれども、すぐれた加工技術を持つさまざまな分野の中小企業の集積地として知られていますけれども、高い技能に裏打ちされた特注部品などの迅速な試作もできないようになれば、柔軟で強靱な分業、協力体制を支えることはできません。技術の連鎖とか、技術の連携こそがイノベーションの揺りかごであり、産業の成長の温床であります。そして、この苗は簡単につくれるものではなくて、現在あるものが一度崩れれば、もとに戻すことがとても難しいものであります。
 ものづくり産業のこうした発展の基本構造が日本各地で揺らいでいる今日、直面している課題は、新製品、新技術の厳しい開発競争と、それにたえ得る研究開発資金や経営資金の調達、後継者、人材の確保といった経営的課題から、取引先の海外移転、海外生産品の流入といった環境の変化に至るまで多岐にわたっています。
 そこで、どうしたらこれからの力強いものづくり産業を育てていけるのか、幅広く将来を見据えて何点か議論をしたいと思います。
 景気全体については、着実に回復しているとの判断もなされておりますが、いまだに身につけたコートを脱ぐ気にはなれないというのが、身近に感じる中小企業の実態であります。
 まず、都内景気の現状認識についてお伺いをいたします。

○有手産業労働局長 国は、二月の月例経済報告で設備投資と輸出に支えられ、景気は確実に回復しているとの判断を示しております。しかしながら、最近の都内経済につきましては、住宅建設投資は好調であるものの、個人消費を支える家計消費支出は引き続き減少傾向にあります。また、生産動向は一進一退の状況にあり、好調な設備投資が東京の産業の生産活動に波及するまでには至っていません。
 また、毎月実施している都内中小企業の景況調査によりますと、二月の業況は改善傾向にあるものの、まだ水面下にあり、都内の中小企業に確かな景気回復の実感が得られるまで、なお時間がかかるものと認識しております。

○松原委員 日本全体でものづくり企業を見たときに、製造業事業所数は、平成二年の七十三万から平成十二年の五十九万へと大きく十四万も減少しております。東京の製造業事業所数は全国で一番多いわけですけれども、東京の製造業の場合はどのように変化したのか、お尋ねをいたします。

○有手産業労働局長 東京においては、ソフトウエア業は五年間で約三千事業所増加するなど、ソフトなものづくり企業の増加が著しい傾向が目立っております。産業構造の変化が見受けられます。
 しかし、東京都の工業統計調査報告によりますと、製造業の事業所数は、平成二年の八万から平成十二年の六万二千へと、この十年間で約一万八千の事業所が減少し、東京のものづくり産業は大変厳しい状況にあると認識しております。

○松原委員 今の報告のとおり、一万八千という減り方は、北海道全体事業所総数を上回る減少でありますので、大変なことであります。大田区でも、平成二年から十年間で約八千から六千へと減っておりまして、二日で一つがなくなっている、こういう状況になっています。事業所数が減るということは、産業の基盤が揺らぐだけでなくて、地域におけるコミュニティも崩れつつあるという深刻な話も聞いております。
 その対策として、これまでもさまざまな施策が講じられてきましたが、もはや従来からの施策にとどまらない幅広い検討が必要な時期に来たと考えております。
 そうした意味から、一昨年の中小企業振興対策審議会答申を受けて設置した産業力強化会議で、東京の産業力の強化を目指し、広く産業を取り巻く政策分野、社会経済環境を視野に置いた検討を行っていることに注目をいたしております。
 その成果と今後の見通しについてお伺いをいたします。

○有手産業労働局長 産業力強化会議は、一つとしまして、産業立地環境の整備、二つとしまして、技術力、知的財産、マーケティング等企業体力の強化、三つといたしまして、産業を支える人材育成など、幅広い課題について全庁的な検討を行い、政策の方向性を定めるものでございます。
 これまでの主な成果でございますが、東京都特別工業地区建築条例の廃止と、その後の区市における規制緩和の進展がございます。区部第二種特別工業地区面積の約六割が面積制限を撤廃、または緩和いたしました。
 次に、中小企業の知的財産活用のための東京戦略の策定、東京都産業科学技術振興指針の作成などが挙げられます。
 今後は、現在審議中の中小企業振興対策審議会の答申内容も加え、東京のものづくり産業の抱える課題に的確に対応して検討を進めてまいります。

○松原委員 そうしました規制緩和の促進とともに、技術開発も積極的に支援していく必要があると思います。大学等の研究成果の活用を促進するとともに、開発資金の供給や、都の産業技術研究所や城南振興センターなどの積極的な技術支援も必要であります。同時に、そうした技術開発支援は、開発した新製品の販路の開拓まで総合的な支援をしていく必要があると思いますけれども、どのように考えるか、お尋ねをいたします。

○有手産業労働局長 都は、競争力ある中小企業を育成する観点から、中小企業の製品開発に対して、産学公連携による高度技術の導入支援や、産業技術研究所による技術指導とあわせ、城南地域中小企業振興センターでの経営、技術の支援などを行ってまいりました。
 また、平成十五年度から、民間OBを活用したニューマーケット開拓支援事業を展開し、中小企業製品の販路開拓支援にも取り組んでおります。大田区の六十六企業を初め、五百二十一企業に支援を行っております。
 さらに、平成十六年度はベンチャーファンドを新たに創設するなど、ものづくりに意欲的に取り組む中小企業に対し、製品開発から販路開拓まで総合的な支援を行ってまいります。

○松原委員 今ご答弁のようなそうした製品、技術の開発支援を進めていくためにも、中小企業の技術者、技能者の技術力向上を支援していく必要があります。どのようにこれを支援していくのか、お尋ねをいたします。

○有手産業労働局長 中小企業の技術者、技能者には、基盤技術の継承や、ナノテク、ITなどの先端技術への対応が求められております。これまで基盤技術の継承を図るため、最先端の金型造形機器の整備、活用や、高度熟練技能者の若手技能者への技能の承継を目指す東京ものづくり名工塾の開催、各種技術セミナー、技術指導の実施などに取り組んでまいりました。
 今後、先端技術に対応できる高度な専門技術者や技能者の育成を目指しまして、産業技術研究所や、平成十八年度開設予定の産業技術の大学院等が相互に連携することによりまして、東京のものづくり産業を支える人材の育成に努めてまいります。

○松原委員 この質問の最後になりますけれども、冒頭にも述べましたとおり、何よりも産業全体や個々の中小企業の活動のイノベーションを促進しなければならないと考えますが、都のものづくり中小企業の育成、強化の方針はどのように考えていらっしゃるのか、知事にお伺いをいたします。

○石原知事 東京にあります技術のヒンターランド、後背地、それを構成している中小企業の技術水準というのは非常に高いものでありますが、いかなる先進技術も、それが開発された段階で、さらに商品化されなければ、また意味がないわけです。
 ピーター・ドラッガーのアメリカ批判の一つとして、アメリカは経営が非常によくないので、せっかくつくった技術を商品化できない、日本の方がそういう点ではすぐれている。開発され、商品化されない技術は石ころと同じだといっておりますが、まさにそのとおりでありますけれども、しかし、我が国も、国のレベルで見ますと、産業政策と金融政策は非常にバランスを欠いておりまして、産業構造の変化を後追いしているだけで、このままでは日本にとって致命的な現象になるのではないかという気がいたします。ものづくり産業の発展と金融機関の資金提供が円滑に循環できる仕組みが不可欠だと思います。
 ゆえにも、都は、今までベンチャー技術大賞、これは、ことしの受賞作などは、識者にいわせますと、まさにノーベル賞クラスのものであるそうでありまして、その他アニメの新産業の振興、さらにCLO、CBOにあわせて、ベンチャー投資法人、中小企業再生ファンドの創設など、国に先駆けて、産業、金融の両面から総合的に施策を展開しているつもりでございます。
 東京には、確かに大田区を初め、独創的で高度な技術を持った全国をリードする中小企業がたくさんございます。また、多彩な技術、技能を持つ人材や研究機関など、経営資源が数多く存在することが東京の強みであります。これを生かす総合的な政策によってものづくり産業のパワーアップを図り、ひいては全国を牽引していきたいと思っております。

○松原委員 ただいまの知事の答弁のとおり、私は厚みのある中小ものづくり産業の再生こそが、金融の円滑化の各般の施策と相まちまして、東京の産業の活性化に直結すると信じて疑わないものであります。ものづくり産業の再生は日本再生の浮沈をかけてもいます。もはや手をこまねいてはいられないと思います。景気回復への期待が出始めた今こそ、都の持てるあらゆる対策を集中的に、かつ果敢に総動員すべきであると思います。
 以上を強調いたしまして、中小企業に対する私のご質問を終わらせていただきます。
 次に、児童福祉についてお伺いをいたしたいと思います。
 保育所への民間福祉施設サービス推進費の再構築についてですが、このたび、都は、民間福祉施設サービス推進費の再構築を来年度から行うとされました。時代の変化を踏まえて、あらゆる制度を利用者本位のものに組み直していくという方向は当然なことであると思います。
 また、この間、施設の代表者とも、一年半にわたり徹底的に意見交換を行ってきたと聞いております。そういった積み重ねの上で今回の再構築案があるわけだと思いますけれども、改めて再構築の目的についてお伺いをいたしたいと思います。

○幸田福祉局長 現行の民間社会福祉施設サービス推進費補助は、職員の増配置や利用者の処遇に充てるA経費と、職員の給与に充てるB経費がございます。しかし、現在の制度は、施設の定員規模、利用者数、平均経験年数に基づく画一的な仕組みとなっており、施設におけるサービスの内容やサービス向上に向けた努力に連動するものとなっておりません。こうしたことを踏まえまして、今回都として望ましいサービス水準を確保し、施設のさまざまな努力が真に報われるものへと、補助の仕組みを再構築するものでございます。

○松原委員 一部の政党からは、今回の再構築で、他施設と比べて保育所のみが突出して補助額が下がるというようなことが声高にいわれています。
 そこで、事実に沿った内容を確認していきたいと思いますけれども、まず、今回の再構築によって、保育所への補助金は他施設と比べてどうなるのか、お伺いをいたします。

○幸田福祉局長 保育所の場合は、職員の増配置や利用者の処遇に充てるサービス推進費補助のA経費相当分は、都加算運営費補助として区市町村を経由した補助という形となっており、再構築の対象は職員の給与に充てるB経費のみでございます。そのため、単純にサービス推進費の金額や増減率を他施設と比較して批判することは誤りであり、誤解を招くものでございます。
 また、お示ししている増減率の推計は、現在の取り組みを前提としているため、施設の努力いかんによって大きく変動いたします。こうした前提の上で、仮に他施設と同じ条件で比較をすると、保育所の減額幅は他施設平均よりも少なくなっております。

○松原委員 また、今回の再構築は、努力が報われる補助にするということですが、具体的な例を挙げて説明してもらいたいと思います。

○幸田福祉局長 保育所に対するサービス推進費では、ゼロ歳児保育、保育所開所時間の延長、障害児保育など、現在都民が切実に求めている保育ニーズへの対応や、在宅で子育てをされている方への支援など、保育所が積極的に取り組んでほしいメニューを努力加算項目として設定しております。
 具体的な数値で説明すると、現在、開所時間を一時間延長している区内の平均的な百人規模の保育所が、開所時間を二時間延長し、新たに障害児保育を実施したとすれば、サービス推進費で約百九十万円、都独自の運営費補助などで約千三百三十万円、合計で千五百二十万円補助金が増加いたします。

○松原委員 今のご説明のとおりなんですが、一部の政党によっていわれていることとは逆でございます。保育については、他施設よりもむしろ減額幅が少ないということが明らかになりました。また、施設の努力によって補助額がふえるということもよくわかりました。
 もう一つ、今回の再構築により、各保育所では経験豊かな保育士を解雇しなければならない事態に陥っていると、保護者の不安をあおっているとも思われる動きがあると聞いています。私は、経験年数が長い人が能力が高いというわけではないという都側の説明は正しいと思いますが、経験豊かだからこそ、若い親御さんにいろいろ育児について教えることができるということもあるだろうから、保育所に経験豊かな人がいることは悪いことではないと思います。そういう人を解雇しなければならなくなるとは、常識的に考えられないのですが、この点、明確に説明していただきたいと思います。

○幸田福祉局長 保育サービスは対人サービスであり、利用者の立場に立って多様なニーズに対応できるすぐれた人材の果たす役割は大きいと考えております。また、質の高い保育サービスを提供していくためには、リーダー、組織の中核を担うコア人材、将来を担う若手職員など、職務、職責に応じて必要なスタッフをバランスよく配置することが必要でございます。
 こうした考え方のもとに、今回のサービス推進費の再構築に当たりましては、国基準の運営費負担金、都独自の運営費補助金に加え、新たに資質の高い職員を継続的に確保するためのコア人材加算を行うとともに、施設の努力に応じて補助額が増額する努力加算項目を設けたところでございます。

○松原委員 東京都にあっては、自信を持って今回の再構築を実現していただきたいと思います。
 最後に、おいしい水についてゆっくり質問しようと思ったのですが、時間がなくなりまして、一、二だけ聞かせていただきたいと思います。
 まず、東京水道の持つ水質検査技術は国際的にも大変高い水準にあるといわれています。現在、水道局では、水道水の水質検査技術について、ISOの認定を受ける準備を進めている。この水質ISOはなかなか例がないと思いますが、改めてISO取得の意義と取得の見通しについてお伺いをいたします。

○飯嶋水道局長 ISO一七〇二五は、水質検査などを行う試験機関に関する国際規格でございます。この規格による認定を受けることは、水質検査の信頼性が第三者によって保証され、客観的な信頼性が一層確保されることになります。現在、認定取得に向けて、検査方法や技術力などにつきまして、半年に及び厳格な審査を受けており、三月中にも取得ができる見込みでございます。
 なお、水道水を対象としてISO一七〇二五を取得している機関は、民間ではこれまで十社程度でございますが、水道事業体としては、我が国初の取得となります。

○松原委員 水道水を高度浄水して、こういうふうなISOを取得しましたから、何とかしてPRをしていきたい、このように私は強く思っているんですが、水を販売するとしたら、どのような課題があるのか、お伺いをします。

○飯嶋水道局長 お尋ねの高度浄水した水を販売するとした場合の課題でございますが、ボトル代ですとか、充てん費ですとか、輸送費などを勘案いたしますと、採算性を確保することが極めて困難でございます。また、ミネラルウオーターと比較した場合の商品性、広範な販売ルートを確保する必要性など、現状ではさまざまな課題が存在しております。今後とも、こうした課題を含めて幅広く検討してまいります。

○松原委員 最後に、知事には大変恐縮でございますが、私、きょう、高度浄水した金町の処理水を持ってきてもらいまして、先ほど飲みました。もし、知事がよければ……。(実物を渡す)その水で、感想とPR方法をぜひお伝えいただければありがたいと思います。

○石原知事 これは本当においしいですね。東京の水道には近代水道の百年に培われた高度な技術がございます。これに比べると、パリの水はだれも飲む人がいない。エビアンもそれで大はやりしたわけですけれども、ニューヨークの水も、私は飲むと必ず顔がかゆくなる、アレルギーが起こりまして。そういう点では、東京の水道は、別に問題はないんですけれども、ミネラルがはんらんしますと、つい僕も飲むんですが、私は少なくとも冬場、冷たい水が出るときは水道の水を飲んでいます。
 ですから、さっき局長に、冷たい水道の水がうまくて、夏になるとみんな飲みたがらないので、そこのところを工夫したらどうだといったんですけれども、またそういう状況を踏まえて、より安全でおいしい水を提供していくために、高度浄水処理の拡充など一層の努力が必要だと思っておりますが、しかし、少なくとも冬場は皆さん、なまじのミネラルウオーターよりもおいしく飲めるぞと宣伝をすれば、少しは効果があるのではないかなと思っておりますし、これは大分お金がかかるんでしょう。そこら辺のところは、費用対効果でこれからも研究いたします。

○松原委員 以上をもって終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

○宮崎委員長 松原忠義理事の発言は終わりました。

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