東京都議会予算特別委員会速記録第二号

   午後六時四十八分開議

○宮崎委員長 休憩前に引き続き委員会を開会いたします。
 質疑を続行いたします。
 吉田信夫委員の発言を許します。

○吉田委員 初めに、商店街振興について伺います。
 長い消費不況と大型店の相次ぐ出店など、都内の地域商店街の衰退は、依然として歯どめがかからない深刻な状況です。そこで、都はこれまで、商店街振興事業に加え、今年度、商店街の活力の源泉である個店に対する支援に着目して、振興策の再構築を図る、輝け店舗支援事業を開始いたしました。
 ところが、ここまで都の施策として位置づけられたはずの個店支援事業、輝け店舗支援事業が、たった一年やっただけで、来年度は予算ゼロ、やめてしまうということになっています。今、商業関係者や区市の担当者からは、一体都は何を考えているんだと、驚きと失望の声が一斉に上がっています。
 本会議代表質問での輝け店舗支援事業に関する答弁で、産業労働局長は、予想したほどの反応がなく、継続しないこととしたと答えました。
 お伺いしますが、現在でも、この認識に変わりはないのでしょうか。

○有手産業労働局長 本年度、本事業を初めとしまして、幾つかの新規事業を実施いたしました。実績で見ますと、例えば知的財産総合センターの相談件数は二千五百件、中小企業ニューマーケット開拓支援事業の支援希望企業は五百を超えるなど、いずれも予想を上回る大きな反響があり、また、その成果が上がっていると思っております。
 輝け店舗支援事業につきましては、私どもも、ぜひ商店街の核となる商店を育成して、商店街振興に努めたいと思っておりましたけれども、期待した応募はなくて、予想に反し申請件数が少なかったため、年度途中に職員が区市町村を回り、連絡会議を開いたり、直接訪問などを繰り返し繰り返し働きかけて、追加募集も行いました。しかし、最終的には七区四市、予算額の三割という実績にとどまったため、こうした結果を踏まえまして、大変残念ではありますけれども、継続しないことを決断いたしました。今も変わりありません。

○吉田委員 思ったほどの反応がなかったというふうなお話だったんですけれども、やはり初年度なんですよ。初年度にこれだけの応募をすること自身は、決して容易なことではありません。申請額が予算の三割ということが--この不況のときに、四分の一は自己負担なんですよ。そういう事業の計画からして、直ちに商店が手を挙げるということが、初年度において容易でないことは明らかなんですね。
 区や市の担当者や商店関係者たちが一様にいうのは、今いったように、準備期間や周知期間がなかったということなんです。個店を支援する事業だからといって、単に店舗の改装に税金をつぎ込むわけにはいかない。当たり前のことです。区や市の担当者からすれば、当然、個店の事業計画がいかに商店街全体の再生に波及効果を持つのかとか、そういうことを見きわめる必要があるわけですね。
 したがって、そのための要綱をつくったり、審査会を立ち上げたり、そういうもろもろの準備をして初めてこれがスタートしていくわけです。応募する個店の方は、そのために詳細な事業計画をつくり上げることが求められているんです。
 ことし、この事業で補助を受けることができた、ある市の八百屋さんの話を聞きましたけれども、市の要綱ができたのが昨年の三月三十一日、商店街連合会の役員会が開かれたのが四月八日、そこで説明を聞き、次の週までに応募するかどうかを決めてくれといわれたと。この方は、かねてから地産地消、地元で生産したものを地元で消費するという目的を持って商売に取り組んで、東京野菜をブランド化しようという計画を立てていたので、すぐ応募をすることができたわけです。しかし、そのためにも、五月の連休にかかりっきりでこの事業計画をつくり、六月には販売計画書をつくると。交付決定通知は九月でしたが、都の予算が成立してからは、二カ月もないうちにこれだけの事業計画を提出しなければならなかったと。
 ここに、申請書一式と、この方がつくった事業計画書の詳細なものがありますよ。本当に個店の方がこれだけの詳細な計画をつくるというのは、並大抵のものじゃないと思うんですね。そういう意味では、余りにも期間が短かったと。来年度に応募にしようかといっていた人もいたけど、それが一年でやめると聞いて、本当に驚いていると。これでは、この事業が果たしてよかったどうかという検証もできないではないかと、こういう声が上がっているんです。
 そこでお伺いしますけれども、応募する個店が予定より少なかったのは、都の拙速なやり方に原因があるのであって、自分のことを棚に上げて、区市や商店のせいにして、たった一年で突如としてやめてしまうというのは、余りにもひどい話じゃありませんか、局長。

○有手産業労働局長 この事業につきましては、平成十四年の十月一日に町村会に提案をいたしまして、協議を始めましてから、十月から十二月にかけて特別区助役会、市長会、そういったところに十分話をしまして、そしてこの事業を立ち上げて、区市町村の担当には、輝け店舗支援事業のスケジュールだとか内容等については、十分私どもは周知しましたし、また追加募集に当たりましても、先ほど申しましたように、再三話をしたわけでございます。
 そういった点で、私どもの努力が足りなかったとは思っておりません。

○吉田委員 明らかに、一年で直ちに準備をせよというのは、それはきつい話なんですよ。区市の担当者も、事前の相談もなかったということです。
 しかも、この個店支援というのは、あなた方局自身が、三位一体、第一が商店街支援、第二が個店支援、さらに人材育成、この三位一体で今後は商店街支援を進めていくのだということを、はっきりと局の事業概要に書いてあるではありませんか。
 我が党は、もちろん、こうしたことを以前から主張してまいりましたし、中小企業庁も、二〇〇〇年の商店街実態調査で、商店街が今後取り組む必要のある事業のトップが個店の改善、活性化ということを打ち出しているじゃありませんか。
 しかも、区市では、当然、来年度も継続されるだろうというふうに思って準備をしていたところがあるのですよ、少なからず。練馬区は募集を受け付け、写真店、そして漬物屋さん、ケーキ屋さんからも応募があり、審査委員会も設けて審査をし、一店に絞って、来年度の区の予算に計上しているのですよ。
 板橋区では、魅力ある店舗支援事業として千二百万円を予算計上し、区長は、定例会の施政方針演説で、魅力ある商業の振興を図るため、意欲的な小売業者による魅力的な店舗づくりを助成いたしますという発言を、東京都の方針を受けて行っているのです。
 二十三区商工課長会幹事長の中央区商工課長は、我が党の問い合わせに対して、三年のサンセット事業と理解していたと。当然ですよ、少なくとも。都の予算は査定で切られたというが、既に七、八区は予算を組んでいたと。既に事業化しているところもあり、都に前向きに検討してもらいたい、こういっています。
 一方、多摩地域はどうかといえば、例えば小金井市では、昨年の十月に広報で募集し、「黄金井名物市」で生み出されたパウンドケーキの小金井ブランドをつくるために、三つの店がグループで共同して申請する、そして来年度も予算計上しているというふうに聞いているのです。
 このように、地域商店街の再生のために、核となる商店の魅力を高めて活力を取り戻していくというのは今の大きな流れであり、しかも、そこに意欲が生まれ始めて、来年度予算で計上している区市が既にあるときに、これをなぜ打ち切るのかということなんですよ。
 都の提起を受けて、区や市がこんなに真剣に具体化をしているのに、どうしてやめるのかと。これに対して、区や市の努力に対して、思ったほどの反応がなかったというのは、本当にひどい話だと思うのです。
 知事、詳しい経過は聞いていらっしゃらなかったかもしれませんけれども、こうした経過なんですね。今危機にある地域商店街の中で核となる個店が、みずからの経営資源を活用して、地産地消とか、高齢化社会対応とか、環境など、それぞれの目的に基づいて事業計画を持って魅力ある個店をつくることで、全体に商店街を活性化する、非常にすばらしいことだと思うのです。
 予算額も一億円程度であり、少なくとも、自治体として既に準備をしているところへの支援など、再検討していただきたいと思うのですが、いかがですか。

○有手産業労働局長 商店街振興については、私どもも、これからも重要な施策ということで力を入れているわけでございます。
 私どもの方では、昨年の四月に、これは一年限りのパイロット事業ですよといったことを、市町村にはお伝えしてあるわけです。それで、市町村も、努力していただいた区もあります。そういった方たちには、私どもも懸命に、個店の事業が進むようにアドバイスもし、支援もしております。
 そういったことで、東京都としてこの事業を始める際に、これは個店に対する、個人の財産に対する公金の投入である、こういった性格がありましたものですから、これを一個店に税金を支出するだけではなくて、その個店が地域の商店街に集客力を増していい影響を及ぼすということで、商店街振興策の一環として実施いたしました。
 そういうことであったために、我々もこの事業を成功させようと思って努力したわけですけれども、結果的には、先ほどいったような内容で終わったわけです。
 今後も、商店街振興の施策の全般の中で、各個店に対しましても十分配慮して、振興ができるような方途につきましては、区市町村とも協議してまいりたいと思います。

○吉田委員 局長、先ほども、わざわざあなた方の事業概要を紹介してあげましたけれども、皆さん方自身が、個店対策は商店街振興の三つの柱の一つであると。しかも、いや、一年度と初めにいったといいますけれども、先ほど紹介したように、二十三区の商工課長会の幹事は、当然三年やるものだと思っていましたと。だからこそ、既に来年度予算を計上している区市があるのですよ。
 その実情に即して、この打ち切りは再検討、ぜひ知事、検討していただきたいと思うのですが、いかがですか。
 知事、お答えください。知事、お答えくださいよ、知事。

○有手産業労働局長 商店街の振興につきましては、各商店街、各個店とも、自主自立の精神でやるのが基本でございます。
 そういった点で、それぞれの商店街で努力されている、その精神は十分尊重しながら、商店街が地域に果たす非常に重要な役割があります。そういった商店街の地域に果たす役割を踏まえまして、東京都といたしましては、商業振興策にいささかも後退がないように努めてまいります。

○吉田委員 こういう姿勢では、やはり商店街支援に対する東京都の態度が問われますよ。
 知事、答えにくいから黙っていたかもしれませんけれども、ぜひこれは検討していただきたいということを重ねてお願いいたします。
 次に、今日の生活状況と高齢者の問題を中心に質問させていただきます。
 長引く不況の中で、自治体が住民の暮らし、福祉を守るという自治体らしさを取り戻すことが、今ほど求められているときはありません。本会議代表質問で、我が党は、不況やリストラの影響に加えて、高齢者、障害者の医療費助成や手当の段階的廃止や縮小という、この間の経済給付的事業の打ち切りが、国の医療費患者負担の大幅引き上げなど社会保障改悪とも相まって、都民、とりわけ障害者、高齢者に痛みを拡大していることを指摘いたしました。
 また、四年前の経済給付事業の見直し理由に挙げた、社会保障が充実したからということも、拡充どころか改悪が続き、高齢者にとって生活の支えである国民年金で一五%の切り下げが計画をされていることを挙げ、状況の大きな変化が今生まれている、そういう状況にふさわしく、見直しの結果を検証し、所得の低い人に対する支援の強化に取り組むことを求めました。
 しかし、知事は、世界的にもまれな豊かで平等な社会を実現し、総体的に高い生活水準を維持しているとか、国民皆年金制度や生活保護などの社会保障制度によって、社会的リスクにはきちんと対応していると答弁をされました。
 また、高齢者世帯では所得格差が歴然とし、低所得の高齢者世帯が多数存在する事実について認識をただした再質問に対し、福祉局長は、貯蓄の平均額のみを取り上げて、所得格差の指摘を、当たらないという答弁をいたしました。
 これまでも繰り返し指摘しましたが、所得格差が他の世帯以上に一番大きいのが高齢者世帯、もう常識です。それを平均値のみで高齢者全体の評価をするということは、大変重大な誤りだと私は思います。
 そこで、改めて福祉局長に伺いますが、再質問は、高齢者の所得格差が広がっていることをどう認識しているのかということを聞いたものです。改めて、この点での答弁を求めます。

○幸田福祉局長 所得は、仕事の種類、仕事の内容、職責、本人の努力などに応じて決まるものでございまして、高齢者世帯に限らず、すべての世代において、所得の高い人、低い人がいるのは当然のことであります。
 私が本会議で申し上げたのは、高齢者の生活実態は、全世帯と比較して、収入額で見ても、貯蓄額で見ても、高い水準を維持しているということを申し上げたわけでございます。
 具体的な数値で申し上げますと、収入額を国民生活基礎調査をもとに平成十三年の世帯一人当たり所得で比較すると、全世帯の平均が二百十三万五千円に対しまして、高齢者世帯の平均は百九十五万三千円であり、その差は小さいものがございます。
 一方、貯蓄額を平成十二年の貯蓄動向調査で見ますと、高齢者世帯平均の貯蓄額は二千七百三十九万円で、全世帯の約一・五倍であるのに対しまして、負債額は百八十三万円で、全世帯の約三割という状況でございます。

○吉田委員 結局、平均でしか答えませんでしたけれども、いかに所得格差が高齢者世帯で激しく生まれているのかという問題を直視しなければ、東京都の福祉施策は誤りますよ。
 しかも、(パネルを示す)これは、今いわれた高齢者の貯蓄についての分布を示したものであります。国民生活基礎調査の最新版です。
 これで見てもらえばわかるとおり、高齢者世帯の中では、貯蓄がないという方が一〇・七%、最も多いのですよ。しかも、四百万以下の貯蓄という、トータルで合わせて、最もここに集中しているわけです。三九%、約四割ですよ。
 一部に、こういう方がいらっしゃるから、平均しては高くなる。今、局長のいった二千七百万程度の貯蓄という方が果たしてどれだけいらっしゃいますか、それ以上の方は。十数%ですよ。
 したがって、わずか貯蓄が四百万未満の方が約四割、中には貯蓄ゼロの方が一〇%を超えているという現実を直視して行政に当たるべきだということをいっているのですよ。
 さらに、(パネルを示す)これは貯蓄じゃなくて所得です。同じく最新版の国民生活基礎調査ですよ。しかもこれは、今いわれた他世代、全世代との比較もあえて示しました。
 ここに示されているように、高齢者世帯では、いいですか、百万未満の所得という方が一四%、そして、二百万未満の所得というこの方を合わせれば、これも四一・三%。四割なんですよ、二百万未満の所得の方々が。
 これが全世代とどう違うのか。例えば百万から二百万、全世代は一一・六%、これに対して、二十数%の高い位置に高齢者世帯はあるのですよ。比較的他世代は平準的だけれども、高齢者ほど、こういう激しい低所得の方に大勢集まっている、これが現実の姿ですよ。いかがですか、局長。

○幸田福祉局長 平成十年の国民生活基礎調査の最終計に基づく厚生科学研究報告書によれば、昭和六十年から平成十年までの高齢者の所得、貯蓄額の推移を見ますと、一貫して金額の少ない階層が減少し、金額の多い階層が増加している。この間、高齢者が受給する公的年金、恩給の額は、ほぼ倍増しております。社会保障の充実が高齢者の所得及び資産の増加に寄与したのだ、こういうふうに考えております。
 また、国民生活基礎調査によると、昭和六十一年から平成十三年までの十五年間で、所得五十万円未満で貯蓄のない高齢者世帯の割合は約三分の一に減少しておりまして、所得も資産もなく、公的な扶助を必要とする高齢者は少ないといえようかと存じます。

○吉田委員 結局、私が示した、それも国の国民生活基礎調査の最新版の統計を示して見解を問うたにもかかわらず、それについて答えることはできませんでした。
 知事、豊かで平等でというふうにお答えになりましたけれども、現実的には、貯蓄が四百万以下が四割、所得で二百万以下が四割、そういうところに多くの高齢者の方々が現実に存在している、統計的に見ても実態的に見ても。
 これで果たして、平等でありたいと思いますけれども、平等で豊かというふうに単純にいえないのじゃないですか、現実は。どうですか。
 知事、ちょっと知事に質問しているのだから、知事に答えさせてよ。

○幸田福祉局長 お話のデータは、全国ベースで個人が得ている所得に着目した数値なんですね。世帯単位でとらえていないものであるというものであります。
 平成七年の同調査を用いて世帯員一人当たりの平均所得を見ると、六十五歳以上で二百九万、全世帯平均の二百二十二万七千円と比較しても大きな差はない。また、三十歳から六十四歳までのデータを見ても、専業主婦層と見られる所得なしの人が、高齢者の一一・八%に対しまして、約二倍の二三・九%いる。
 このように、個人のデータを用いて低所得者の議論をすることは、誤解と混乱を招くだけでございまして、世帯員一人当たりの所得で議論すべきではなかろうかというふうに思います。
 それから、当該調査で所得なし及び八十万円未満とされる高齢者について見ますと、その九割以上は、配偶者、それから子どもたちと同居をしておりまして、本人の所得のみで生活をしなければならないというわけではないかと存じます。
 また、六十五歳以上の単独世帯で見ても、一人当たりの平均所得は百九十万七千円であり、所得が八十万円未満の単身者は、全高齢者の約二・五%でございます。
 都内の実態を見ましても、平成十二年度の東京都社会福祉基礎調査、高齢者の生活実態によれば、年収五十万未満の高齢者は九・四%、そのうち九割は、子どもとの同居や夫婦で生活をしております。全国ベースの調査である国民生活基礎調査の結果とも、ほぼ一致しているかというふうに思います。

○吉田委員 知事どうですか。私の質問にお答えくださいよ。

○石原知事 局長がお答えしたように、これはやはり、個人というよりは、むしろ世帯という単位で事を論ずるべき、判断すべきだと思います。

○吉田委員 そうすると、世帯ならば低所得世帯は多数存在しているということをお認めになるのですか。(発言する者あり)
 東京都の調査をいわれましたけれども、東京都自身の調査で見ても、東京都の基礎調査で見ても、いいですか、二百万未満の方々が四〇%を超えて存在しているというふうに、はっきり書かれているのですよ。
 しかも、これは厚生白書になりますけれども、はっきりと、高齢者世帯の場合、全世帯に比べ所得の低い層の割合が高く、いわば持てる者と持たざる者との格差が大きくなっており、高齢者の負担を考える場合には、若年者よりもきめ細かな配慮が必要となると、これが厚生白書の結論ですよ。なぜそういう現実をきちんと直視して対応しないのかということなんです。
 さらに、より具体的にお伺いしますけれども、国民年金についてお伺いいたしますが、国民年金の老齢年金受給者数と受給額は、どの程度と認識をしていらっしゃいますか。

○幸田福祉局長 国民年金には、老齢基礎年金、老齢年金、障害基礎年金、遺族基礎年金がございまして、このうち、いわゆる老齢年金は、すべての国民に共通の基礎年金である老齢基礎年金に、昭和六十年の基礎年金導入前に年齢六十歳以上または年金受給権のあった人を対象としている老齢年金を加えたものでございます。
 平成十三年度末現在、この老齢年金の受給者は百四十万一千八百五十八人、平均受給月額は五万三千十三円でございます。

○吉田委員 具体的に、都民の中で老齢年金受給者約百四十万、平均月額五万三千円と。もちろん、この受給者の中には、厚生年金の基礎部分とダブりますから、純粋に国民年金のみを受け取っている方というのは六十万前後という推計ができますけれども、それだけのまとまった層をなした方々が、月額で見ればわずか五万円余。もし夫婦二人であったとしても十万円余、これが現実なんですよ。
 そういう限られた年金収入で暮らさざるを得ないそういう人たちに、医療費の定額負担から一割負担が導入され、新たに、低所得の場合、無料だった介護保険の負担も、介護保険料だけではなくて、一割の利用料が負担させられる。
 他方、東京都は、介護保険導入までは支給していた老人医療費助成、老人福祉手当、こういうものは廃止をし、また六十五歳からの老人医療費助成制度は段階的に打ち切ると。
 これでは、生活が大変なだけではなくて、必要な医療や介護そのものを受け取ることができない、こういう事態になることは、今の国民年金受給額の金額からすれば、だれだって想像できるわけですよね。
 しかも、低所得者対策があるじゃないかというふうに思うかもしれませんが、医療費でいえば、外来は上限八千円です。それ以前は上限三千四百円。介護保険の利用料でいえば、一割が原則だけれども、低所得者の上限があります。じゃ幾らかといえば、その月額で見れば二万四千六百円ですよ。
 したがって、一人で五万円、夫婦で十万円程度の国民年金しか受け取ることができない家庭で、医療や介護が必要になったら、もうそれだけで受け取る金額の半数近くを占めるという事態が現実に起きてしまう。
 私は、実際、これは聞いた話ですけれども、夫婦とも国民年金で、合わせてこの方の場合には七万円の収入しかない。夫は介護五で五年間寝たきり、毎月二万円程度の利用料負担に、おむつ代が一万円かかる。以前は老人福祉手当で助けられていたが、これが打ち切られたために、年金収入で介護費用が飛んでしまう。以前は訪問診療も受けていたけれども、払い切れなくてやめたし、ショートステイも利用したいけれども、あきらめている。結局、生活を切り縮めるとともに、介護サービスを抑制すると。こういう例は、ケアマネジャーの方々に聞けば、本当に無数に存在していることがいわれています。
 私は、こうした実態があるから、現時点で改めて検証し、必要な方への支援策をすべきだというふうに提案しているのです。
 知事は、生活保護がある、生活保護で対応すればいいというけれども、国民年金のみの方々、何十万といらっしゃるのですよ。またそれ以外に、統計的には明らかになっていませんが、全く年金のない高齢者の方々もいらっしゃるわけです。
 したがって、こうした医療や介護が困難な方々への支援策というものは、当然、こうした国民年金の受給額の実態を見ても検討すべきだというふうに思うのですが、いかがですか。

○幸田福祉局長 所得保障につきましては、国の責務として、各種の年金や福祉手当、老人保健法による給付などの諸制度が整備されているところでございます。
 低所得の人に対しましては、例えば老人保健制度における自己負担の軽減、医療保険における高額療養費、介護保険における高額介護サービス費などの自己負担の軽減、国民健康保険料、介護保険料などの軽減、生活福祉資金、母子福祉資金などの資金の貸し付け、課税最低限や老年者、寡婦等の所得控除の適用などのさまざまな施策が設けられております。
 さらに、最後のセーフティーネットとしての生活保護制度など、二重、三重に制度を整備して生活を支援しているというふうに思っております。

○吉田委員 上限額があるといいましたけれども、私は、その上限額は、医療でいえば、たとえ低所得者の方々であっても月額八千円、介護保険の利用料であれば月額二万四千六百円、合わせて三万円を超えるのですよ、それだけで。したがって、国民年金受給者の方々からすれば、それ自身が大変な負担となってのしかかってきて、生活を削るか、医療や介護を削るか、これが現実だといっているのです。
 しかも、生活保護をいわれましたけれども、量的にこれだけの方がいらっしゃる。しかも生活保護制度そのものでいえば、きちんと対応することが求められているにもかかわらず、これが今、国の制度においては、老齢加算の廃止、あるいは国自身の負担の削減ということで、東京都自身も大変心配していることは明らかじゃないですか。
 しかも、生活保護そのものを拡充すると同時に、やはりさまざまな分野からの支援策を拡充するということが必要だというのが福祉関係者の声なんです。
 例えば福祉広報の二月号で紹介された目黒区のケースワーカーは、生活保護制度が社会保障全体のセーフティーネットとして機能していくためには、カテゴリー別の社会手当制度を拡充し、その給付水準を少なくとも生活保護基準と同等にするなど、過度の負担が生活保護制度にかからないように措置をとる必要があるというふうに述べているのですよ。これは当然のことだと思うのです。
 しかも、何かかたくなに拒否をする姿勢をとっていますけれども、東京都自身も介護保険の利用料軽減については、国の制度を土台にし、東京都独自にそのメニューを拡大するという、やはり低所得に着目をした支援策をとってきているじゃありませんか。何年か前のこの議会でも、知事も含めて、この問題についてはご発言があったわけですよ。それをさらにもっと拡充すべきだというのが私の提案であります。
 そこで、質問いたしますけれども、例えば都の介護保険利用料の軽減制度は、高齢者全体の約一五%の方々を対象として設定しているというふうに、繰り返しご説明がありました。創設時は一〇%でしたけれども、国の一五%に合わせて拡充をする。ただ、現実的には極めて申請者の方々が少ないというのが状況だと思うんですけれども、実際の軽減対象として交付確認を得た高齢者は一体何人で、高齢者全体及び介護サービスを利用している人の中でどの程度の水準なのかということを、簡潔に、私の質問した数だけ答えてください。

○幸田福祉局長 確認書の交付を受けた人数は、平成十六年一月末現在で二千四百六十三人、高齢者人口二百十三万八千人の〇・一%、サービス受給者二十五万二千人の一・〇%でございます。
 なお、対象者の拡大を図るため、収入を、従来の百二十万から百四十万円、貯蓄を六十万から百二十万円と引き上げたところでございます。

○吉田委員 引き上げたのは既に昨年の話なんですよね。今ご説明あったのは、最新の数でしょう。国は、そしてそれを受けて東京都も、高齢者の一五%をカバーしようということでつくられた制度だけれども、高齢者全体の数からすれば〇・一%。介護サービスを受けている方々の数と比較してみても、わずかその一%しか利用されてない。さまざまな要因があると思うんですよ。周知徹底の不十分さだとか。やはり現実に一五%の方々が本当にカバーされるような、そういう制度として現状分析し、拡充していくということをぜひしていただきたいと思うんですが、知事、いかがですか。

○幸田福祉局長 介護保険制度は、国民の共同連帯の理念に基づく社会保険制度でございまして、受益と負担の公平の見地から、適正な負担をすることが原則でございます。その上で、先ほどお答えいたしましたように、低所得者に対する配慮として、所得段階別の保険料設定や高額介護サービス費による負担の軽減などが行われているところでございます。
 さらに、都は国の特別対策を拡大をして、生計困難者に対する利用料の軽減措置事業を実施しております。したがって、都として、独自にさらなる軽減措置を実施する考えはございません。

○吉田委員 国ですら、一五%をカバーできるようにという指示を出しているんでしょう。しかし、現実には、利用している方々の一%しか手を挙げる状況になっていない。他の都内の市の中では、国の所得やあるいは貯蓄の制限が厳し過ぎる、独自に拡充をするさまざまな努力がされているじゃないですか。
 ぜひ知事、この問題について、現実を直視して、拡充するように再検討していただきたいと思うんですが、いかがですか。

○幸田福祉局長 もう一度申し上げます。(吉田委員「幸田さん、同じことを繰り返さないで」と呼ぶ)先ほどお答えしたとおり、都として独自にさらなる軽減措置を実施する予定はございません、今のところ。

○吉田委員 本当に、考え方の違いはもちろんそれ、お互いありますよ。しかし、現実の実態や事実に即して、それに基づいて対応すべきだということで示したにもかかわらず、それを直視しない。これはもう本当に自治体としての姿勢が問われることだと。
 しかも、憲法二十五条は、健康で文化的な最低限度の生活を保障するという、この生存権規定は、国はもちろん一次的責任はありますが、地方自治体もそれを担うのは当然なんです。今まさに、先ほど国民年金の平均五万何がしということを示されましたけれども、さらにこれが一五%カットされようとしているんですよ。ますます持てる者と持てない者との格差が広がろうとしているときに、当然現状を検証し、それに対応するというのは、私は自治体としての最低限度の責任だと思うんです。
 こうした問題について、事実を直視せず、ほおかむりするという態度は本当にひどいものだというふうに指摘をしておきます。
 次に、石原都政が進めようとし、既に来年度予算でもその一部が具体化されようとしている第二次財政再建推進プランと第二次都庁改革アクションプランの方向について、ただしたいと思います。
 第二次の財政再建推進プランは、これまでの代表質問で明らかにしてきましたけれども、総額一千二百億円もの施策見直しを目標に掲げ、福祉や教育にはもちろん、これまで手をつけてこなかった分野にまで、補助金などの廃止、縮小の見直しを図ろうとするものです。
 そこで、私学助成について取り上げたいと思います。
 第二次財政再建推進プランで、時代変化に即して都の施策の範囲及び水準を見直すべき事例として私学助成が挙げられ、その中で、都の児童生徒一人当たりの補助額が、埼玉、千葉、神奈川などの近県と比べ相当高い水準にあるというふうに指摘をしています。
 しかし、都民の側から見たらどうなのか。保護者負担の実態は、都内の私立高校の平均初年度納付金が八十二万円余りで全国第二位。この五年間で平均三万円近く値上げをされ、神奈川県を抜いて首都圏ではトップの負担になっています。
 授業料が平均的なある私立高校父母会の昨年のアンケート調査では、子どもの教育費が家計収入の二割以上占めているという方が八割、家計の三割もそうした教育費が占めているという方が四割もいらっしゃるということです。
 これがもし、財政プランの生徒一人当たりの単価で首都圏の平均まで削減をされるということになったら、大変な影響が及ぶ結果になると思うんです。首都圏の平均額は幾らなのか、現在から見たらどれだけ後退をするのか、そしてその総額影響はどれだけかということをお答えください。

○三宅生活文化局長 各県の高校の経常費の予算の積算はそれぞれ異なっておりまして、生徒一人当たり単価方式による場合、あるいは公立学校の決算値をもとにした標準的運営費方式による場合などございます。単純に平成十四年度の経常費補助総額を生徒数で割り返した一人当たりの金額で見ますと、東京都におきましては約三十四万円、首都圏ということで一都三県の平均は約二十九万一千円となっておりまして、この割合が、大体東京都に対して一都三県の平均は八五・七%でございます。
 それで、首都圏の平均値を東京都に適用した場合というお尋ねでございますが、各県の地域社会あるいは地域経済でさまざまでございます。それをそのまま適用するのは多少無理があろうかと思いますが、強いてこれを算定いたしますと、東京都の場合は標準的運営費方式で経常費補助予算を積算しておりまして、その八五・七%を適用しますと、平成十六年度の高等学校経常費補助予算額で当てはめて算定しますと、約五百十六億円、八十六億円の減となります。

○吉田委員 詳細に計算をしていただきましたけれども、全体で見れば八十六億円の減になる、もし首都圏平均に合わせようということになれば。
 ちなみに、私学助成の削減は、今これから始まるわけではなくて、財政健全化計画、そして一次プラン、この七年間で既に百五十億円近い削減が進められているんです。もしこうした二次プランの方向で首都圏のレベルに合わせるんだということで八十六億円の削減ということになれば、それはストレートに学校経営に響くだけではなく、さらに父母、生徒たちに授業料の値上げという形になってはね返ってくることは明らかだと思うんですね。
 しかも、この間の経済状況から見れば、これまでと比べてみても、どこでもやはり授業料が払えないという方々が生まれています。四年前、わずか数名だった学校で四十名、東京全体でも三百五名だった方々が五百名を超えるという事態があります。私学助成を削減するということになれば、父母負担にはね返り、こうした深刻な問題が拡大されていくということは明らかだと思うんです。
 私学助成は削減をしないということをぜひお答え願いたいと思うんです。いかがですか。

○三宅生活文化局長 私学の公教育における役割はもちろん非常に重要なものと認識しております。現在、東京都の私学助成につきましては、先ほども申し上げましたとおり、公立学校の運営経費を基礎としました標準的運営費方式を基本としつつ、時代の変化に即応しながら助成をしております。
 今後、より適切、かつ効果的な補助のあり方を検討しながら施策の展開に努め、今後とも、社会経済状況の変化に対応しつつ適切に対処してまいります。

○吉田委員 社会経済状況は、やはり深刻な事態が続いているんですよ。しかも、ご承知のとおり、東京の場合には、私学に通っている高校生は全体の六割、まさに私学が公教育を支えるという役割をとっており、しかも日本の場合、他の国々と比べてみても、こうした公的な負担が少なく、あるいは私的な負担が高いということは、OECDなどの調査結果でも明らかです。
 この問題は、いわば他の会派も含めて、超党派で取り組んでいる課題でもありますけれども、ぜひ私学助成の継続、拡充ということで大いに努力をしていただきたいということを述べておきます。
 次に、この二つのプランの方向は、都民の福祉や教育だけではなく、都民がはぐくんできた文化まで破壊しかねないということが大きな問題として今浮上しています。その一例が、アクションプランで明記をされている、東京都交響楽団への有期雇用制度、有期契約制度の導入問題です。
 東京都交響楽団は、高い演奏水準とともに、比較的安い料金でクラシックに親しむことができ、また小笠原、三宅島を初め、離島コンサートや小中学生のための音楽鑑賞教室など、都響ならではの役割を果たしているというふうに思います。
 そこで、こうした水準、役割は一層継続すべきというふうに思いますが、教育長、東京都交響楽団の役割をどのように考えているのか、お答えを願います。

○横山教育長 東京都交響楽団は、都民に親しまれること、青少年の情操教育に役立てること、さらにその芸術性の高いものにすること、こうした設立の目的としまして、昭和四十年に都が出捐し設立をされた交響楽団でございます。
 この東京都交響楽団では、都民に対して、低廉な料金で良質な音楽に接する機会を提供しておりますし、また、小中学生を対象としました音楽鑑賞教室を行いまして、音楽を通じた青少年の情操教育に寄与しているほか、福祉施設あるいは病院や養護学校等での出前コンサートを行うなど、公共的性格を示す事業も行っております。
 こうしたことから、東京都交響楽団が果たしております東京における文化振興の役割は大きいものと考えております。

○吉田委員 私も先日、東京都交響楽団の三宅島支援コンサートで、メンデルスゾーンの「イタリア」を鑑賞しましたが、すばらしい演奏と、かつ会場と一体となった演奏に非常に感動いたしました。こうしたオーケストラを都民の力で持っているということのすばらしさを再確認することができました。
 ところが、その都響に有期雇用制の導入を計画する。すなわち、楽員全員を解雇し、二年単位の個別の契約雇用に切りかえるということが出されて、楽団内部だけではなく、広く音楽関係者からも批判の声あるいは危惧の声が広がっています。
 そこでお伺いしますが、東京都交響楽団に有期雇用契約を導入しようとする理由は何なんでしょうか。

○横山教育長 東京都教育委員会では、東京都交響楽団に対しまして、業績や能力の実証に基づかない年齢給の改善、あるいは適切な業績評価制度の導入、芸術家にふさわしい勤務制度の確立、そして四つとしまして、楽団の自立性の向上と弾力的な運営体制の確保、この四つの課題について指導を行ってまいりました。
 東京都交響楽団では、この四つの課題の解決に向けまして、第一に、終身雇用制度の廃止と能力・業績評価制度の導入を行い、楽員のモラールアップを図り、より一層質の高い楽団の実現、第二に、一律的な勤務条件を廃止をし、楽員にふさわしい勤務条件の実現、第三に、退職金制度を廃止をし、人件費支出の年度間の変動を抑えて、楽団の自立性を向上させる、こうした三つの観点から総合的に検討を行った結果、契約楽員制度の導入がふさわしいと判断したものでございます。

○吉田委員 要は、質の高い楽団の実現ということがいわれましたけれども、今の楽員を全員解雇し、わずか二年ごとの個人契約に切りかえると。不安定な雇用形態で質の高い楽団ができると本当にお考えでしょうか。芸術のレベルに直結する問題だけに、これは慎重な検討が求められていると思うんです。
 そこで、確かめたいんですけれども、日本オーケストラ連盟に加盟している楽団の中で、この二年程度の有期雇用の実例があるのか。また、あったとしたら、それで効果が上がったという過去の実例はあるのか。また、提案に当たって、専門家の検討を経たのか。この点についてお答えください。

○横山教育長 すべてを網羅して調べたわけではございませんが、国内のオーケストラでは、オーケストラ・アンサンブル金沢が、これまでの終身雇用制度とあわせまして、平成十五年度から契約楽員制度を新たに創設をしまして、希望者は契約楽員制度に移行できる制度を採用しております。
 また、海外におきましては、アメリカでは一般的に契約社会でございまして、著名な楽団においても、契約制によりまして雇用契約を結んでおります。
 こうした契約楽員制度が、今おっしゃったように、効果があるか否か、私は効果がある、楽団としての質の向上に効果があると考えております。

○吉田委員 オーケストラ連盟に加盟しているオーケストラすべて、こういう制度はとっていないというのが現実なんですよ。しかも、金沢の場合には併用制で、どちらを選ぶこともできる。そして、三十二名のうち、この制度を利用している方は、主席演奏者なども含めてですけれども、たった五名しかいらっしゃらない。確かめました。
 アメリカの例をいわれましたけれども、アメリカは全く、今東京都がやろうとしている制度とは異質なものなんです。すなわちアメリカの場合は、すべてのミュージシャンが、ミュージシャンとしてのユニオン、組合に入って、そして個々が契約するのではなくて、まとまってそれぞれが弁護士なり法律家を立てて交渉し、処遇が悪ければストライキをするというものであって、今東京都がやろうとしている制度とは天と地の違いがあるんです。
 しかも、あえて触れられませんでしたけれども、ヨーロッパでは終身雇用制、これはもうほぼこうした制度がとられているというのは極めて有名な話なんですよね。なぜかといえば、やはりこうした--しかも今いわれましたけれども、こうしたことによって果たして大丈夫かということについて、何ら検証はされてないんですよ。こうした、いわば寄せ集め的な短期のエキストラによるオーケストラでは、真にすばらしいオーケストラとして成立することはできない。なぜなら、オーケストラは集団の力で、長年の練習を積み重ねることによって楽団としての音を獲得し、かつレパートリーもふやしていく。そういうオーケストラのあり方からして逆行する雇用制度だというのが、多くの専門家が共通して指摘をしている声ではないでしょうか。
 しかも、都響は、私がいうまでもありませんけれども、芸術性、演奏水準という点でも、N響や読売日本交響楽団などと並んで、日本のオーケストラの中のビッグスリー、御三家の一つだという評価がされていますし、世界的な指揮者ガリー・ベルティーニ氏を音楽監督に招いて、八十名の楽団によって重層的な演奏で高く評価をされ、とりわけ非常に難解だ、難しいというマーラーの演奏にかけては最も高い評価を受けて、東京以外からも招かれて演奏している。そういう水準を今の都響はつくり上げてきたんですよ。これを破壊しかねないということで、今多くの方々が声を上げている。
 しかも、都響に入るということは、音楽大学卒業生から見れば大変な、至難なことなんですね。一つのポストに五十名から百名の方々がオーディションに応募するという切磋琢磨、努力をして入り、かつその中で努力をしているわけですよ。やはり私は、こうした芸術文化に直結する非常に大きな問題であるだけに、行政的に判断するのではなくて、専門家の方々の意見に真剣に耳を傾けるという努力が当然今求められていると思うのですが、いかがですか。

○横山教育長 今、契約楽員制度を寄せ集めのエキストラと、余りにも失礼ないい方じゃないですか。それから、契約楽員制度が、他に例がないという。例がないことをやった場合、だめなら、何の改革も進まないんじゃないか、私はそう思っています。

○吉田委員 寄せ集めのエキストラということは私がいったことではなくて、音楽家の中からそういう厳しい批判の声が上がっているんですよ。しかも、全く検証していない。二年間の短期間の有期雇用という、世界を見ても極めて異例な、初めての制度を検証なしにやって、これで楽団の質が上がるなどということは、何をもっていうことができますか。
 全くこれまでの文化、歴史、そういうものを取り崩しかねないと、それは私がいっているんじゃないんですよ。多くの音楽家がいっているんですから、それに耳を傾けるべきだということを、私は改めて強調しておきたいと思うんです。
 次に移ります。(発言する者あり)これはもう、ぜひ、皆さんいろいろいっていますけれども、じゃあ超党派でやろうじゃないですか。
 これまで商店への支援の拡充や一次プランのとりわけ高齢者への影響、さらに二つのプランの方向がいかに都民の暮らしや福祉、教育に重大な影響をもたらしてきたのかということを明らかにしてまいりました。
 しかし、自治体としての、それは本当の姿ではないと思うんです。どんなに財政が大変であったとしても、暮らしや福祉を守るという点で努力をするというのは当然のことです。財政難といっても、東京の予算は、全部合わせればカナダの国家予算に匹敵するというのは有名な話です。したがって、私はやはり予算の使い方にメスを入れるということが、今改めて求められていると思うんです。
 これまでも指摘してきましたけれども、政令市を持つ県で、福祉費ないし民生費を比較することのできる他の県と比べてみて、九九年度予算と来年度予算を比べた場合(パネルを示す)これがその変化を比べた資料ですけれども、東京はマイナス九・四%の減ですよ。それに対して、千葉の一六・四%を先頭に、他の県はそれぞれ一〇%を超える、あるいはそれ近く民生費、福祉費を伸ばしているというのが現実の姿です。
 なぜこういう歴然とした、それだけじゃなくて、予算に占める構成比ということをいわれるかもしれませんけれども、例えば予算に占める構成比、もう既に東京は第一位じゃありません。第一位は神奈川県で一〇%です。二位は埼玉県、九・六%です。三位で東京都で八・九%、こういう状況です。
 知事は、福祉予算の削減を、巨額の財源不足を生ずるなどといって、財政再建推進プランをつくって進めてきました。しかしその結果、確保された財源見直しによって、総額二千四百二十九億円です。また、職員給与の削減など内部努力で一千六百六十九億円。合わせて四千億円を超える財源が捻出されているんです。本当に、だから財源がないのかということが、今改めてこの間の経過を見て問われると思うんです。
 しかも、税収を見ても、銀行税の敗訴という結果はありましたけれども、当初のプランよりも四千億円以上、税収が伸びているんです。したがって、予算の使い方、この税収を生かすならば、福祉の切り捨てではなくて、拡充することが可能だったじゃありませんか。どうですか。

○幸田福祉局長 都は、他の自治体と状況が違うということが一つあるわけでございます。
 一つは、大都市特性の福祉ニーズを踏まえた独自施策を積極的に展開をしている。また、他の自治体とはサイズも、都市としての性格も違う。こういうことから、都の福祉予算を他の道府県と単純に比較することは余り意味がないのかなというふうに思います。
 一つ、例で申し上げますと、例えば平成十一年度予算と平成十六年度予算を比較した場合に、都と他の府県ではこんな点で違いがあるというふうに思っております。
 まず一つは、都区制度改革に伴いまして、特別区の国民健康保険調整交付金が廃止された。国における三位一体改革の一つとして、公立保育所の運営費負担金の一般財源化が図られた。このため、政令市のある府県においては、今回の一般財源化の影響というのが都に比べると少ないものだというふうに思っております。
 このようなことからも、都と他県とを比較する、予算の増減をもとにした議論というものはいかがなものかなというふうに思います。

○吉田委員 他県は財政が大変であったとしても、例えば医療費助成制度や、あるいはシルバーパスなどの無料制度を、少なからず継続の努力をしているんですよ。ところが、東京都は経済給付事業をばっさりと削るという、全く他の政令市を持つ他県にない非常に非情な削減を進めたことが、こうした予算の削減にあらわれているんです。それをいい繕ってもだめですよ。
 しかも、そうやって切り捨てる一方で、確実に財政が大変だといいながら税収の増があったじゃないですか。それだけに、私はこの税金の使い方、予算の編成の仕方、ここに今本当に東京都として目を向けるべきなんだということを改めて強調しておきたいと思うんです。
 そこで、税金の使い方にかかわって、臨海開発の問題について話を進めます。
 今後、都財政と都政に大きな影響を及ぼすことが予想されるのが、臨海副都心開発についてです。まず、この土地利用の状況についてですけれども、総額、全体で百三十九ヘクタールのうち、リースもしくは売却などを利用されている土地が七十ヘクタールですから、まだ半分の土地が残されているということになります。
 そこで、臨海副都心開発の今年度に契約に至った土地の代金は、それぞれ平米当たり幾らか、お答えください。

○成田港湾局長 平成十五年度以降に売却した土地の平米当たりの単価についてでございますが、台場H区画が約百三十八万円、有明南P区画が約八十九万円、有明南LM二、三区画が約八十七万円、防災拠点が約七十八万円、また青海GH区画が約七十八万円でございます。
 有明北の学校用地は区画整理事業中でございまして、減歩想定分を補正すると、約三十四万円となります。
 いうまでもありませんが、土地価格は、その位置、最寄り駅からの接近条件、接道等の画地条件、容積率などにより大きく異なり、それぞれの区画の単価はこれらの条件を反映しているものでございます。

○吉田委員 これまでの過去の経過から見たら、年々この売却価格が減少している。学校用地に至っては、今既に金額が示されましたけれども、三十万余ですか、そういう事態なんですよね。それで、果たして今後の臨海会計は一体どのようになっていくのかということです。
 ここにパネルを用意いたしました。これは、今後の土地の収益と借入金の返済に必要な資金を試算して、私どもが独自につくって並べたものです。一番右側が今後の収入見込み、一番下が今後土地をすべて売却し、最近の売却金額で推計したものです。四千五百三十億円。中段が、中期リースの収入、九百九十億円。一番上が手持ち資金六百七十二億円です。
 それに対して、真ん中は今後払わなければならないものの推計です。一番下が臨海地域開発事業会計の元金債、六千五百七十億円、真ん中が臨海建設株式会社が借り入れているお金、三千六百五十一億円、上段が今後の追加で必要とされる投資、約一千五百億円です。
 参考のために、一番左の柱は、臨海副都心開発に当たって提供された埋立地の価格、一兆二千九百億円で、本来旧埋立会計の財産、すなわち都民が活用できる財産です。
 これを見れば一目瞭然、すべての土地が売れたとしても、到底借金返済には届かない。どう逆立ちしても、収益が出るどころか債務超過で、大変な財政負担が発生しかねないということを私たちは推計してみました。
 かつて、知事も行くも地獄云々というお話がありましたけれども、日本共産党はこうした破綻の事実をすべての都民の前に明らかにした上で、今後の関連投資を大幅に圧縮するとか、銀行の高い金利など適正なものにさせるとか、そういうやはりこの現状、この将来を直視して検討していくということが必要だと思うんですが、知事、この私たちの試算、どういうふうに見ますか。どういうふうに今後対応しようとお考えですか、知事。

○成田港湾局長 今、吉田委員から知事に答えてほしいとございましたけれども、何でそんなでたらめな数字をつくって知事に答えさせるのか、私は憤りでいっぱいです。
 私どもが、これまで予算特別委員会あるいは経・港委等々でお示しした数字をきちっと冷静にまとめていただきますと、きょう遠藤理事にお答えしたように、これからの歳出が八千五百億円である。もちろん、先ほど吉田先生の中で、これからの基盤整備が約千五百億。これは同じように認識しておりますが、ただ都債の償還、会社の借り入れ、実はこれは転貸債等々で行ってこいの部分がございまして、これをあえてダブルで計上しまして、収入を凌駕する数字をあえてつくられた。
 私どもがこれまで出しております数字では、収入が八千四百億円、それから支出も八千四百億円。これは収支が均衡します平成四十一年ですか、三十一年までの数字でございますが、それをベースに考えた場合には、今申し上げましたように都債の償還が六千五百億円、それから基盤整備の経費が千六百億円、その他管理経費等の歳出が約八千四百億円でございまして、それに必要な歳入の確保、これといたしまして、土地の処分等で約八千億円でございます。その内訳といたしまして、土地の売却等々六千三百億円がございます。
 そしてこれは、先ほどの点は、吉田先生もおっしゃったように、今後の土地の処分が約百三十九ヘクタールの半分近く残っております。これを平米単価当たり八十五万円で処分していけば、十分歳出に見合う土地処分による、これは貸し付けも含みますが、財源を確保することができるということでございまして、そもそも議論する以上は、きちっとした数字でお示しいただきたいということをお願いしておきます。

○吉田委員 大変でたらめなような発言をしましたけれども、我々は精査をして計算をしたんですよ。
 あなた方は、例えば今の土地の売却にしても、それは高く売れる方向で推計すれば、幾らでも膨らますことができますよ。しかも、それではこれ、逆に年度ごとの返済額の資料、これはそちらがつくったものですけれども、例えば平成二十一年には総額一千億、平成二十二年には総額一千五百億という莫大な返済が、今後生まれてくる。それは推計の仕方によっては金額は上下するかもしれませんけれども、決して将来にわたって楽観できるというような事態でないことは、私は明らかだと思うんです。
 さらに強調したいことは、今後のインフラ一千五百億の金額のとらえ方が違うといわれたけれども、さらに臨海会計のこうした内部的な基盤整備だけではなくて、今後の一般会計が直接かかわる環状二号あるいは晴海通り延伸、補助三一四号、三一五号、高速道路晴海線、あるいは臨海道路二期工事、こうした一般会計に直接かかわる新たなインフラ整備というものも生まれてくるわけですよ。
 こうした新たな基盤整備、これから総事業費、どれだけですか。

○小峰東京都技監 環二延伸部など六路線は、臨海地域全体の発展はもとより、都心と臨海部の連携強化、物流の効率化に寄与する重要な路線でございます。東京の再生を実現する上からも不可欠でございます。
 お尋ねの六路線の総事業費でございますが、五千八百四十億円、残事業費は四千七百五十八億円でございます。ただし、残事業費につきましては、土地区画整理事業で確保する用地費相当額を除いております。

○吉田委員 残事業費が四千七百五十八億円と、そうしたもの以外に、有明北地区の埋め立て、豊洲・晴海開発などの新たな投資が今後生まれてくる。しかも、そういうときに、昨年の予算特別委員会で木村議員が質問しましたけれども、晴豊一号橋の首都高速と東京都の負担の問題、なぜ東京都が持たなきゃならないのかということについて問題提起をしましたけれども、この公団負担分は一体どうなったんでしょうか。

○小峰東京都技監 晴豊一号橋の首都高速道路公団負担につきましては、昨年来、継続的に公団と負担額や支払い時期などの具体的な協議を行ってまいりました。昨年、公団が負担することについては基本的な合意がされております。現在、公団と負担額などについて協議中でございます。

○吉田委員 一年がたっていながら、まだなぜ執行されていないのかという疑問を持ちます。
 その一方で、来年度の予算に計上されていますが、この臨海高速鉄道、これへのいわば穴埋めとして、東京都が新たに追加出資を行う。これも本当にひどい話だと思うんですが、なぜ東京都が臨海高速鉄道の損失補償、追加出資を行わなきゃならないのか、簡潔にご答弁ください。

○勝田都市計画局長 りんかい線の関係でございますが、東京都はりんかい線の基幹的公共交通機関としての重要性、それに加えまして、資本金の約九割を東京都は出資しているという最大株主としての責任、こういったものを踏まえまして、東京臨海高速鉄道株式会社の経営安定化を図っていくことが必要であるというふうに考えております。
 このため、今年度の当初予算では、昨今の金融情勢の悪化により、会社単独での新たな借り入れが困難となった状況等を踏まえまして、都の損失補償をつけ、会社が必要資金を調達する、こういう支援をしております。
 それからまた、建設借入金の返済や利子、こういった負担が大きくなります開業後数年間の資金不足、こういったものを解消し、鉄道経営を中長期的に安定化させるという意味で、会社の極限までの経営努力を前提といたしまして、来年度からの五年間で三百億円、十六年度はそのうち百十五億円の出資による支援を行うというものでございます。

○吉田委員 実態としては、大崎駅への接続のための改良工事のうち、JR大崎駅の改良工事や、本来JRが負担すべき通路の工事まで臨海高速鉄道が引き受けると。その結果、都の負担が膨れ上がっているという面があるんですよ。なぜこんなところまで、いわれたまま東京都が負担しなければならないのか。
 知事、なかなか答弁に立ちませんけれども、例えば、これまで首都高に対する無利子貸し付け、あるいは国直轄事業に対する東京都の負担、こういう問題を予算特別委員会で取り上げた際に、知事自身もそれに対して疑問を呈し、見直しをするという旨のご発言をされました。覚えていらっしゃると思うんです。
 ところが、それが何ら見直しをするどころか、さらに大崎駅の改良に関連するりんかい線の負担など、減るどころか出す方がふえるばかりじゃありませんか。こんなことで、財政再建ができるわけがない。本当に、やはり東京都が負担すべき問題について見直しをしていくという努力が必要だと思うんです。いかがですか。

○勝田都市計画局長 りんかい線につきましては、大変経営が厳しい中、社員一丸となりまして大変頑張っているという状況でありますけれども、先ほど申し上げたように、基幹的公共交通機関ということの重要性にかんがみ、あるいは最大株主、こういう責任を踏まえまして、こういう臨海高速鉄道株式会社の支援をするのは当然のことというふうに考えております。

○吉田委員 そういう姿勢を続ける限り、財政負担で東京都の財政はますます再建されないどころか、そのしわ寄せが福祉や暮らし、教育の削減となって響いていくという道をたどることは、もう明らかなんですよね。何ら国に対して、やっぱりいうべきことをいわない、そういう状況だと思うんです。
 繰り返し私が知事答弁を求めたにもかかわらず、知事は答弁に立とうとされませんでした。これは本当にひどい話ですよ。
 最後に、これはどうしても知事に立って答えていただかなければならない韓国併合正当化発言についてただしたいと思います。
 我が党は、知事の憲法否定、イラクへの米英の戦争容認、テロ容認発言など、平和と民主主義に逆行する発言について、その都度厳しくただしてまいりました。他の会派が何らただそうとしない態度を、本当に私は異常なものだと思います。
 昨年秋の、いわゆる韓国併合を事実上正当化し、植民地支配が人道的であったかのような発言について、私は第四回定例会で文書質問を知事に提出いたしました。二月に答弁書が送付されました。その内容は、具体的な根拠、事実を示すことなく、従来の見解を繰り返すというものでありました。
 その回答の中で、見解が立場によって食い違うのはいたし方ありませんが、歴史的事実を正確に認識して議論する必要があるというふうに述べています。したがって、私は本当に知事のいわれていることが歴史的事実に基づくものなのかどうかということを、限られた時間の中でただしていきたいと思うんですが、例えば、知事は武力で侵犯したものではないと。私は、あえて開国に当たる日朝修好条約、一八七六年の際に、いかに軍事力による威嚇が行われたのか等々の事例を一つ一つ挙げながら、明らかに武力による威嚇と行使があったというふうに指摘をいたしました。
 一八七六年、日朝修好条約締結に当たって、軍艦六隻等々での威嚇行為、さらに一八九五年、事もあろうに日本公使、三浦梧楼の指示によって王妃閔妃暗殺事件、また一九〇五年、第二次日韓協商調印の際に、いかに武力が動員をされ恫喝的なことが行われたのか。そして、一九一〇年、日韓併合条約締結に当たって、日本の軍隊が海、そして現ソウル中心に、まさに戒厳令と同じ体制がしかれたか。
 こうした具体的な事実を挙げて、武力による明確な威嚇があったということを指摘いたしましたが、知事はこのような事実がなかったとでもいうんですか。

○石原知事 大事な問題でございますから、これから出てくる質問にそれぞれお答えする前に、あるべき歴史観というか、歴史をどう見るかという基本的な認識を共通したいと思ってお話ししますが、何であろうと、すべての現実というのは非常に複合的なものです。
 それで、過去の歴史ということになりますと、いろんな思惑が重なってきて、さらにその複合的なさまざまな現実があやなして歴史を構成しているわけでありまして、まさにその意味において、ヤスパースがいったように、歴史というのは複合に複合を重ねた重層的なものだと思います。それを、それぞれの人間が、例えば日本の当時の、その前の軍隊の挙動についても、それはあったことはあったでしょうが、それをどうとるか、どう見るか、その判断は、それぞれの、つまり価値観というものを踏まえたいろんな見方があり得るわけでありまして、それがヤスパースのいった歴史の重層性だということだと思います。
 この日韓併合が行われましたあの時期、つまり二十世紀というものをいや応なしに支配していた歴史原理というのは、私は植民地主義だったと思います。これは決して好ましいものじゃありませんが、しかし、今になってそれを、ヒューマニズムをかざして非人間的としてそしるのは非常に容易でありますけれども、当時にあっては食うか食われるか、二者択一の国際関係の原理が世界を支配していた、この事実はだれも否定できないでしょう。
 当時の東アジアは、中国、朝鮮半島の支配をめぐる列強の衝突の場でしたね。日本は、国家としての存在をかけ、つまり白人のロシアの南下、欧米の進出によって植民化されまいという必死のつまり努力を、国家としての存亡をかけて、私たちの先祖は死力を振り絞って近代化をなし遂げたわけであります。日韓併合も、そうした生き残りをかけての戦いの帰結でありました。
 レーニンは--私は共産主義は大嫌いでありますが、しかしたまには共産主義者もいいことをいう。あなた方が信奉しているレーニンはこういっていますな。近代ヨーロッパの繁栄は、植民地における豊富な資源の収奪と奴隷に近い安価な労働力の使役の上にあり得たと。
 そのとおりでしょうね。オランダはインドネシアで一体何百万の人を殺しましたか。アメリカは、スペインが後退した後、独立を果たそうとしたあのフィリピンで、マッカーサーの父親であった総督が、何とバターン半島に人を追い込んで四十万もの独立の志士たちを餓死させた。イギリスが中国で何をやったかということは、最近まで属領としてあった香港の存在を見ても明らかなことでありましょう。
 こうした白人のアジア諸国に対する人権じゅうりんの歴史はほとんど不問に付されているのに、日本だけが、日本の共産党も含めて、帝国主義というあの時代の歴史的必然の中で、より人間的に振る舞った行為が、共産党も含めていまだに糾弾されている。第二次世界大戦における勝者のみが、過去の過酷な植民地政策を免罪されている、これは非常におかしなあれじゃないですか。そして、歴史的な経緯を忘れ、現在の視点のみで過去を断罪するのは、非常に私はこっけいで愚かなことだと思いますよ。
 それで、この軍事行動云々でありますけれども、韓国では近代化がおくれまして、十九世紀末から政治情勢が極めて不安定となっている(傍聴席にて発言する者あり)何。(「時間がないから早くやれ」と呼び、その他傍聴席にて発言する者あり)時間がないから早くやれとは何だ。無礼ないい方するな。出て行け、おまえなんか。
 韓国では、近代化がおくれて、十九世紀末から政治情勢が極めて不安定となっています。清国、ロシア、あるいは日本のいずれかに統治をゆだねざるを得ないところまで追いつめられていたわけですよ。
 そうした政治状況の中で、日露戦争後、当時の韓国の政府であります李朝政府は、閣議に諮るなどして、国家の意思の決定的手続を経て、私はこの李朝政府というのは完全に朝鮮民族の代表であったかどうかは知りません、不明にして。しかし、いずれにしろ当時存在した唯一の政府であります。この政府が、政府としての意思決定をして、日韓合併を実行する条約を締結したんじゃないですか。
 このような経緯を踏まえて、彼らの総意として日本を選んだと私は理解しております。

○吉田委員 委員長、一言。
 知事、今そういわれましたけれども、結論的にはいかに人道的であったかということを強調されても、その朝鮮、韓国の人々がいかに非人道的であったかということを、当事者がそういう声を上げているんですよ。その当事者の声に、なぜ素直に目を向けないんですか。
 しかも、私が聞いた話では、大韓民国民団東京地方本部は、知事に直接会って歴史的事実について話し合いたいと。認識が違うなら、ぜひ直接会ってやるべきじゃないですか。しかも、しかも(発言する者あり)例えば一九九〇年、韓国大統領が来たときに、当時の海部首相は……

○宮崎委員長 吉田委員、時間でございますから、簡潔にお願いします。

○吉田委員 終わります。朝鮮半島の方々が我が国の行為により耐えがたい苦しみと悲しみを体験したことについて謙虚に反省し、素直なおわびの気持ちを申し上げたいと。そこまで海部首相、衆参議長も反省を表明したんですよ。

○宮崎委員長 共産党は、ルールをお守りください。

○吉田委員 以上です。

○石原知事 日韓併合は、十九世紀から二十世紀にかけての大きな大きな政治のうねりの中で行われたものです。併合に至る過程では、当時の植民地主義の中の列強もこれを認めたというプロセスがあります。
 で、私たちの先祖が朝鮮において何を統治したかということは、いろんな見方もあるでしょう。しかし、例えば、ここに、現代に生きている韓国の、要するに国民の一人であるキム・ワンソプさんの「親日派のための弁明」、これによりますと、こう書いてありますよ。私たちは国を奪われたのではなく、日本という、よりましな統治者を受け入れたのである。これは明らかに進歩であり、朝鮮民族の自然な選択であった。日本は、当時の時代状況をかんがみれば、大層礼儀正しく、人本主義に立った統治を実施したと。
 そして、これは相対的に眺めますと、欧米諸国による植民地支配というのは、現地の住民を劣等視して差別して、極めて非人間的なものです。(発言する者あり)聞きたくないのかい。(「演説会じゃないよ」と呼ぶ者あり)そっちが演説しているじゃないか。これは答弁ですよ。(発言する者多し)

○宮崎委員長 答弁中です。お静かに願います。
 答弁願います。

○石原知事 これに比べて日本の植民地統治は、社会インフラや教育制度の制度に配慮したものであったことは歴史的事実です。それを明かしたのは、私が福田赳夫さんと一緒に行って懇談した、戦後の韓国の最もすぐれた大統領とされている朴大統領が、いろいろ我々が気に食わないこともあったけれども、しかし、欧米に比べれば、はるかに人間的な、公平な統治をしたと思う。現に、自分は貧農の出だ。学校に行きたくてしようがなかったけれども、とても行けなかった。ところが、日本人がやってきて、強制的に義務教育をしいた。親は嫌がったけれども、自分はそのおかげで学校へ行くことができた。そして、彼は、もっと上へ行きたいなと思ったら、学校の先生が、それだったら師範学校に行けと、やがては朝鮮人が朝鮮を教える時代が来る、そのためにおまえは立派な先生になれといわれて行ったら、そこの教官の日本人が、おまえはあんまり優秀だから、もっと出世する道がある。(発言する者あり)黙れ。そして、軍人を養成する……
   〔発言する者多し〕

○宮崎委員長 発言中です。静かに願います。

○石原知事 軍人を養成する軍官学校に行けといった。そして、満州に行った。そこで満州の軍官学校の教官が、日本人の教官ですよ、おまえは非常に優秀だなということで推薦されて市ケ谷の陸軍士官学校に行って、あの人は首席で卒業したんだ。これ一つもってしても、私は公平な教育の一つの証左だと思いますよ。
 これ、例えばですね、ハーバード大学の朝鮮史の専門家のカーター・J・エッカートが、日本がやった統治というものが、いかに戦後の韓国の近代化に役に立ったかということを、事例を挙げて証明していますよ。皆さん読んだらいい。みんなの人がこれを読んでもらったらいい。

○宮崎委員長 吉田信夫委員の発言は終わりました。
〔吉田委員「知事、正々堂々と韓国の人と話をしなさいよ。ひきょうだよ、知事……」と呼ぶ〕
   〔発言する者多し〕
   〔傍聴席にて発言する者あり〕

○宮崎委員長 各委員の皆様方に、委員長よりお願いをさせていただきます。
 委員会実施要領に従って……(「委員長が従ってないじゃないか」と呼び、その他発言する者多し)(傍聴席にて発言する者あり)
 傍聴の皆さん、吉田委員さんには、発言が終えているんです。しかし、それでも委員長として一分の時間を与えようと。三分話したんです。話した以上は、知事の答弁は当たり前。発言をしなければ、知事の答弁は求めません。きちっとルールを守ってください。守らないから、問題が起こるんです。

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