東京都議会予算特別委員会速記録第二号

○樺山副委員長 木内良明理事の発言を許します。
   〔樺山副委員長退席、大木田副委員長着席〕

○木内委員 きょう、午前十一時から本委員会が開会になりまして、福永副知事が十六年度予算案についての説明報告をされたときに、知事のお顔を拝見しておりまして、振り返ってみると、五年間、この同じ予特で、私はこの席に立って知事とやってきたことを実はそのとき思い出した。
 去年はたしか財政状況の厳しさを象徴的におっしゃったとき、相撲でいえば徳俵に足がかかって、もう一歩で、もう極めて危ないというお話をされた。これに対して私は、知事が危なければ一生懸命後ろからサポートするよという意味の発言をしたような覚えがございます。
 都議会公明党を代表して総括質疑に入らせていただきます。
 まず、予算案でありますけれども、率直にいって、私は、大変なご苦労をされて知事の指示のもと財務当局が編成をされた予算案だと、まず評価をさせていただきます。すなわち、相矛盾する大変厳しい三つの命題を抱えながら編成されたものであると。
 一つは、財政再建を進めなければならない、もう一つは、都政の直面する緊急かつ重要な課題について、このための施策を展開していかなければならない、もう一つは、将来を見据えた財政運営もこの中に取り込んでいかなければならない、こういう厳しい状況だったと思うわけでありまして、都税収入が前年度に引き続いてまた四兆円を下回りました。一般会計全体では対前年度比〇・四%減という緊縮型予算になっている。
 にもかかわらず、今日の緊急かつ重要な課題である、例えば後にお聞きする中小企業対策、雇用問題、あるいは福祉、医療の充実、都市の再生など重要施策には財源を優先的に配分をしている。また、厳しい財政状況の中でよくこの予算案を精査いたしますと、私ども公明党が議会の発言の中で主張してまいりましたさまざまな施策をよく取り入れて、これを反映しているという特徴があります。
 例えば介護予防推進モデル事業、これも新規事業であります。きょうここに出席しております我が党の女性議員の野上さんが強く本会議で訴えた不妊治療の四億円も新規事業として反映されている。あるいはまた、先ほど来質疑で触れられております特別支援教育のモデル事業の実施、これも我が党が主張した、新規事業として入っている。
 こう考えますと、政治の使命というのは、私は、百の演説より一つの実行だということを重ねて今痛感するわけでありますけれども、そういった意味合いからも、私はこの十六年度予算案をまず高く評価させていただくものであります。
 それで、さっきの知事の表情を拝見した話でありますけれども、どうだ、これでという、そんな知事の思いが表情に自信としてあらわれているような印象を受けたんですが、どうでしょうか、知事。

○石原知事 お褒めいただいて大変ありがたいんですが、とても自信満々というところまではいきません。いずれにしろ、ない袖は振れないわけでありますから、ぎりぎりの選択を都庁としては衆知を集めてやってきたつもりでございます。
 もし土俵を割って再建団体に転落しますれば、これはやっぱり、繰り返していってきたことですけれども、福祉にしろ何にしろ、国の決めたナショナルミニマムを押しつけられるわけでありまして、都独自の行政ができなくなりますから、いずれにしろ、さまざまな都民ニーズに積極的に対応するとともに、将来の都財政にも配慮した取り組みを行いまして、何とか都民の期待にこたえる予算を編成できたとは思っております。
 今後、都みずからがぎりぎりの内部努力を行うとともに、施策の見直しを徹底しまして、新たな施策展開を可能とする、持続可能な財政体質を確立していかなくてはならないと思っております。常に現場主義を貫いて、スピード感覚を持って都民のニーズに対応し、都政の構造改革を進めてまいります。

○木内委員 昨年の引用した言葉の、徳俵に足がかかったというのは非常に平易な言葉で、都民の理解を得られたと思うんですが、重ねて、徳俵に足がかかっていた去年の状態から少し土俵中央に戻りましたか。

○石原知事 いや、とても中央までは戻っていませんね。何か身を反らせて、辛うじて棒立ちでこらえているところじゃないでしょうか、まだまだ。

○木内委員 やはり車の両輪の一つとして、議会もしっかり、私どもは知事を支えていきたい、こんなふうに思います。
 さて、具体論であります。
 一つは、平成十六年度予算、これは第二次財政再建プランの初年度に当たるわけでありまして、第一次プランにおける初年度における状況として、置きかえて、どういう差異があるのかということを検証したいと思うのですが、私の方からそれを申し上げますと、財源確保額の達成率でいきますと、内部努力は、第二次では三四・四、第一次では三六・一だった、施策の見直しは、今回、三三・六、第一次は四九・一だった、それから歳入確保では、五四・五、これが二一・五だったと、こういうふうになっておりまして、当時とは状況が異なりますから、単純な比較はできませんけれども、施策の見直しは、前回に比べて達成率が低くなっているという実態が一つあるわけであります。
 ところで、地方税財政制度の問題とも関連があるのですけれども、今回、予算書を見てみますと、地方税財政制度の改善による財源確保については、数字が計上されていないということがいえるわけであります。
 すなわち、例えば所得税への税源移譲に道筋がつけられたということで、譲与額は全体で四千二百四十九億円。こういう中で、東京都への譲与額というものも二百億円。数字は既に報道されている。ところが、予算の中にこれが盛り込まれていないということに、都民は率直な実は疑問を持っているわけでありますけれども、これをまずご説明願いたいと思います。

○櫻井財務局長 今回制度化されました所得譲与税と税源移譲予定特例交付金は、国の十六年度予算における三位一体改革に伴う財源補てん措置として創設されましたが、国が地方への配分権を握ったままの制度となっておりまして、地方がみずからの責任において賦課徴収できる税が国から移譲されるという、本来あるべき税源移譲の姿とは異なるものであること、国庫補助負担金の削減見合いで財源補てんされたものであると、そういうことから、都としては新たな財源を確保したわけではないということから、第二次財政再建推進プランに基づく財源確保額としてはとらえていなかったわけでございます。

○木内委員 そういう意味からいきますと、いずれも本来の税源移譲という形には至っていない、本質的にですね、そういうことなわけであります。国を頼りにはできないという東京都の事情があるわけであります。
 しかし、そうかといって、国が頼りにならないから手をこまねいているわけにはいかないということで、一つの方法として、さらに内部努力の推進ということが求められているわけであります。この努力なくして財政再建に対する都民の理解と合意も得られないということは、これはいうまでもないことであります。
 そこで、内部努力ということなんですけれども、これまで公明党は、行財政改革ということで定数削減等、先進的にこれを主張し、実行していただいてきたわけでありますけれども、これまで私どもが主張してまいりました定数削減等による内部努力というもの、今あるものを切るという発想というのは、もうそろそろ転換をしなくてはいけないのではないか、こういうふうに考えているわけであります。
 この定数削減も、したがって、ただやみくもに数さえ削減していけばいいというのではない。今後は、申し上げたように、これまでの発想に加えて抜本的な、例えば定数削減の方法として、定型事務の一元センター化でありますとか、あるいはアウトソーシングの手法などを積極的に取り入れていく必要がある、こんなふうに思うんですけれども、財務局長になりますか、どうですか。総務局長。

○赤星総務局長 お答え申し上げます。
 東京都では、従来から、内部努力の一環として職員定数の見直しを実施してまいりました。
 昨年発表いたしました第二次財政再建推進プランでは、財政再建のための内部努力の柱といたしまして、三年間で四千人の削減目標を掲げましたが、この目標を着実に達成していくためには、ご指摘のように、これまでの取り組みに加えまして、新たな手法によります、さらなる定数削減に取り組んでいく必要がございます。
 現在、定型的業務でございます総務事務の集中化やIT化による業務効率化に向けまして、総務事務改革推進委員会を設置し、検討を進めております。
 また、公の施設の指定管理者制度や、民間の資金、技術、運営のノウハウを活用するPFI手法など、施設の目的や特性に応じまして、新たなアウトソーシングの手法を導入いたします。

○木内委員 こうした議論の中で、抜きにできないのが、今もちょっと触れておられた、各分野におけるコストの削減という問題であります。
 第二次プランでは、土木建築コストあるいは管理コスト縮減を徹底するとしているわけでありまして、民間で五十億の仕事では、公共事業では百億かかる、こういうふうな実は指摘もされているわけでありまして、国では五年で一五%という公共工事の削減目標を示しております。
 私どもの党としましても、四年で二〇%削減できる、こういうふうに具体的に主張しているわけでありますけれども、そこで端的にお尋ねをしたいんですけれども、例えばしばしば高コストと指摘される建設コストについても、特に縮減への精力的な取り組みが必要なわけでありまして、これを所管する都技監にお尋ねをいたしますけれども、国交省、国の取り組みが遅々として進まない中で、都としての具体的な施策の展開を図るべきだ、こう思いますが、どうでしょうか。

○小峰東京都技監 建設コストにつきましては、これまでも新材料、新工法の採用や入札制度の改善などにより、計画から工事実施段階での縮減に取り組んでまいりました。引き続きこれらの方策を一層強化するとともに、新たな取り組みも行ってまいります。
 例えば将来の維持管理コストの縮減を図るため、アセットマネジメントの考え方を導入し、ライフサイクルコストの縮減や長寿命化を図ってまいります。また、立体交差工事の短期間施工などにより、事業効果を早期に発現させ、社会的コストの縮減にも取り組んでまいります。
 今月末に策定される新行動計画の中でこれまで以上の目標を設定し、建設コストの縮減を一層推進してまいります。

○木内委員 今、小峰技監がいわれた中で私が着目したいのは、社会的コストの縮減という問題であります。これは余り今まで議論されてこなかった。例えば調布市の鶴川街道の京王線との踏切の立体化、これは設計、工事を入れて四年間といわれていた。工事正味二年間の予定を一年で短縮してやった。かかった予算も十五億、当初予算に比べて十二億ですか、で終わった。これによって、実は、渋滞解消であるとか地元の地域の方々の生活の利便性だとか、これは目の子ですけれども、社会資本の獲得といいますか、社会的コストの軽減という意味では、年間十億円以上見ていいのではないかという指摘もある。これは私は新しい角度で、ぜひ研究を進めてもらいたいと思うんです。
 答弁は簡単でいいんですが、東京都公共施設等コスト管理委員会の中の建設部会というのがあるそうでありますが、ぜひここで精力的な検討を重ねるように要望しますが、一言、やるかやらないかだけ答えてください。

○小峰東京都技監 ただいまお話にございました管理委員会ですが、これは財務局長がキャップになってやっております。また、建設局の道路監も副委員長でやっておりますので、その中で検討してまいります。

○木内委員 新しい答弁で出ましたので、いつごろまでに成案をまとめろとかということは今求めませんので、精力的にひとつ進めてもらいたい、こういうふうに思います。
 次に、新銀行、きょうは同僚議員が既に二人質疑を展開されておりますので、私は固有の角度と立場から質問をしたい、こういうふうに思います。
 私の後ろにいる大木田副委員長、党内にこの大木田さんを座長にして新銀行構想プロジェクトチームというのをさきに立ち上げまして、関係団体に幅広く委員を広げて、さまざまな研究、検討を行ってきたところであります。
 さきに私が例えば全銀協の皆さんからの要請も承ったところであります。常に私はそのプロジェクトの中でいい続けてきたのは、例えば全銀協にしても、あるいは他の団体にしても、例えば既得の権益について物はいろいろいわれる。あるいは経営形態、リスク管理等について話は出るけれども、都民本位、本当に塗炭の苦しみにあえいでいる現場の中小企業の方々の思いというものがどれだけ議論に反映されてきただろうかということ、これを実は痛感をしたわけであります。
 知事は新銀行を設立して東京発金融改革を進めていくと発信されておりまして、私は基本的にこの考え方には大賛成でありますし、実際に今議論をしております、そしていよいよ来年四月一日のスタートに向けて準備をしている内容についても、この理念に実態がどれだけ実は肉薄できるか、一体化できるかというのが今大きな課題になっているはずでありまして、そこでまず知事にお聞きするわけでありますけれども、そうした東京発金融改革、この理念でスタートする新銀行のスタートが既存銀行にどういうインパクトを与え、変革を促していくことになるかということについて、まず見解を承りたいと思います。

○石原知事 詳細を申し上げるわけにいきませんけれども、都は都なりに、メーンバンクを含めて、既存のメガバンクの実態を調査いたしましたが、これはやはり非常に寒心にたえないものがございます。そういう意味でこの決断をいたしましたけれども、いずれにしろ、英米の金融界においても、日本でのバブルの崩壊に先立って、景気後退とそれに伴う銀行株の暴落や金融不安を経験したようでありますが、その代表的な銀行の一つであるシティーバンクも、金融本来の業務の強化や顧客との関係の緊密化など積極的な改革に取り組みまして、九〇年代の前半には復活を遂げてまいりました。しかし、それに比べて日本の銀行はバブル崩壊後の十数年を経過した今、いまだに調べれば調べるほど負の遺産から解放されておりません。日本の銀行は長期にわたっていわゆる護送船団方式で、横並びの意識が強くて、みずからを直す、改革をする努力をしてこなかったと思います。顧客重視といった経営姿勢などもほかの産業では当然のことでありますけれども、とても十分とはいえないと思います。
 例えば、あれはモルガン・スタンレーでしたか、アメリカのメーンバンクの一つが、我々がこれから扱う商品はもはや金ではない、リスクだ、つまりデリバティブだ、金融派生商品だと明言したのに、大蔵省の怠慢もあり、結局日本の金融界はこういうものに手だてを講ぜずに、完全にそういう新しい武器を通じてアメリカの金融支配というものに甘んじる形になりました。
 そうした金融界を取り巻く環境が大きく変化する中で、既存の銀行が目を向けなかった、リスクもある中小企業に対する無担保融資や、共通のインフラとしての高い利便性を総合的に提供するICカードの導入など、そういう特殊な機能を持った企業にも提携してもらいまして、実際に真に社会に貢献する新銀行の経営姿勢は、必ず既存の銀行に衝撃を与え、金融界全体がこれによって襟を正し、リフレッシュされ、国民の負託にこたえ得るよき変革を遂げてもらえるものと思っております。

○木内委員 今知事いわれたように、既存の銀行業界に大変な衝撃を与えたわけでありまして、その意味ではすさまじい激震が走った。これに対して、既存の金融機関ができなかったことを幾ら新銀行でもできるわけがないという反論もある。さまざまな批判がある。私はこれをよく考えますと、新銀行の成功によってその反論をなきものにして、やればできるじゃないかという証明をすべきだということを一つ思うんです。もしですよ、知事、この銀行が破綻をしてしまえば、誤解を恐れずにいえば、既存の銀行業界が、それ見たことかというので寄ってたかって、もう二度とこういういわば必要な機構というものは生まれないだろう、こう思うんです。決意をもう一言、これについて。

○石原知事 おっしゃるとおりだと思います。ゆえにも我々歯を食いしばってもこれを成功させなきゃいけませんが、一方、既存の銀行は、都のいい分にまねて、このごろ中小企業への融資などをぼつぼつ始めているようですけれども、対象も限られておりますし、量的にも非常に少ない。要するに余りに日本の既存の金融、特にメガバンクたちが抱えている負の遺産が多過ぎて、そう簡単には身動きできないんじゃないかなという気が私はいたします。それにあえてこういう新しい措置を講じて、日本の金融界にひとついい意味での刺激を与えたいと思っておりますし、国民の利益につながると思っております。

○木内委員 私はしっかり応援してまいりたいと思うんです。
 そこで、今知事いわれました既存の銀行等で恐らく手を出すことができない分野、個人保証の免責の問題であります。知事はご記憶でしょうけれども、何度にもわたって私は知事と、敗者復活システムを社会機構の中に反映すべきだということをいってきた。一番印象的だったのは、豊田佐吉翁の話を知事が引かれて、あれはもう何年か前になりますよね、知事。そこでいろいろな方策を私は申し上げた。後に触れますけれども、事業破綻者のために都営住宅を提供するというのも二月二十三日から募集が始まった。あるいは国に私どもは都議会の議論を押し上げて、公明党が発信して、ついに十六年度予算では、商工中金や中小企業金融公庫の政府系機関で個人保証を融資の際に免除するシステムがスタートすることになった。ただ、これは知事、だれでも彼でもこの免責を受けるわけじゃなくて、モラルハザードを招かないように、財政悪化を未然に防ぐ財務制限条項、これを経営者と結んで個人保証を免除していく、政府系機関でついに始まった、私がいってき続けたことが。
 今度、この新銀行においても個人保証を解除する仕組みというものが今進められている、準備として。これを聞いておりますので、この点についてまず聞きたいんです。日本は、水に落ちた犬をたたけという論理が経済界にはあります。一回失敗したら、二度と立ち上がれない。アメリカでは、やる気さえあれば社会がこれを応援しようといって、事業破綻者の四七%、すなわち二人に一人が再起している実績がある。日本ではわずか一三%です。融資を受けるときに中小企業事業者が個人保証をしますから、無限責任を強いられます。事業破綻をすると、一家離散、夜逃げ。そしてラストラブレターといわれる、保険に入ってみずからの命を絶っていく。商工会議所のある方の発言によると、おととし三万人自殺した中で、六、七千人がラストラブレターで遺族への手当てをして、みずからの命を縮めたのではないかといわれている。だから、今こそ敗者復活システムを各分野にわたって構築しなければいけない。
 実は、こうした敗者復活システムを構築するためには融資制度における個人保証のあり方というものを見直さなければいけない。しかし、無制限にこれを許すわけにいかないから、さまざまなルールや規則をつくって、やる気があってまじめな経営者としての資格を持っていて、それで事業計画や中身が健全であれば保証会社がこれを保証するという、そういう形を今度の新銀行は新しいモデルとして検討をしておられる。
 そして、最初にお聞きするわけでありますけれども、申し上げた中小企業融資における個人保証の慣行というものについて、申し上げた点を踏まえて、都はどう考えておられるかお尋ねします。

○石原知事 個人保証の問題でありますけれども、中小企業金融では、経営者が会社債務を個人的に保証するという一種の商慣行が続いておりまして、約八割の融資に個人保証が付されているようであります。結局、こういったシステムが、全部とはいいませんけれども、東京に今日多く見られるホームレスの方々の悲劇にもつながっていると思います。個人保証は中小企業の担保能力を補完する半面、経営者に過剰な責任を負わせる場合も多くて、欧米では一般的にその責任の範囲が限定されております。国の法制審議会においても、包括根保証の制限に向け、行き過ぎた個人保証の見直しの具体的な検討が行われているようでありますが、新銀行は第三者保証を原則として不要といたします。また、経営者の個人保証を求める場合でも、その責任を合理的な範囲に限定しまして、さらに技術力、将来性重視型の融資を初めとして、個人保証を解除する仕組みを独自に検討していきたいと思っております。

○木内委員 今の知事の発言は革命的な発言なんです。これは政府系金融機関で十六年度からやるということは申し上げた。我が国では民間銀行は一切やってない、今まで。これを新銀行がやろうという今の知事の発言であります。
 そこで、担当局長にお聞きをするわけでありますけれども、この仕組みの具体的内容と、それから今知事がいわれた個人保証の解除を希望する場合の具体的な手続については、どういうスキームを想定されていますか。

○大塚出納長 基本スキームでありますけれども、提携企業などが運営管理する保証会社を新たに設立をいたします。融資先企業の経営者が融資を受けるに際し、保証料に相当する額を出資をいたします。その保証会社が経営者にかわり保証を行うことによって、経営者の個人保証を解除するスキームであります。
 具体的には、融資申し込みがあった場合、新銀行は個人保証解除の対象となる案件につきまして、経営者に保証会社を紹介をいたします。経営者が個人保証解除の仕組みの利用を希望する場合は、保証会社の面接など、適格性の審査を受け、保証債務に応じた一定率の出資を行います。

○木内委員 今、中小企業の経営者が一定率を出資して、この出資によっていわば保証会社に保証を肩がわりしてもらう。本人の無限責任はそこで解除されるわけですよね。
 さて、そこで今、都内大勢の中小企業の方々がこのテレビを見ておられる。この一定の出資は保証債務の何%の数字になりますか。これが非常に重要なところであります。この出資が余り高額であれば、このシステムは用をなさない。私はかねてからこれを低くすべきだ、低くすべきだといってきたんです。答弁可能ですか、この場で。

○大塚出納長 お尋ねの出資額についてでありますけれども、検討段階でありますけれども、保証債務の二%程度の出資を考えております。

○木内委員 きのうの夜の段階で確認したら、まだ出てなかったんですが、これ、何時ごろの情報ですか、ちょっと、その保証会社からの。

○大塚出納長 本日早々の結論でありまして、保証会社はずっと夜っぴていろいろ計算をして、まあこの程度だったらという数字であります。

○木内委員 恐らく無理を聞いてもらって、きょうの予特の総括の中で明らかにできるならばという要望をいったら、恐らく徹夜で検討作業が続いて、この結論だったと思うんです。五百万借りて、二%の出資で個人保証免除を求める場合、幾ら払えばいいんですか、単純な計算だけれども。

○大塚出納長 十万円になると思います。

○木内委員 二%は十万円なんです--カメラ、こっちにください。十万円を払えば五百万円の個人保証は解除される、この銀行では。これは大変な革命です。そのかわり、面接があったり、資格審査等は厳しいと思う。だから、まじめに頑張れば、やる気があれば新銀行は応援しますよ、こういうんじゃないんですか。

○大塚出納長 そういうことで一生懸命やってまいります。
   〔石原知事「広報担当重役にしたい」と呼ぶ〕

○木内委員 私はあえてこのテレビ中継を通じて東京都の広報担当重役に今知事から要望がありましたので、ぜひまた細目については、都民の皆様はこの議論の経過を踏まえて、ご利用方を検討いただければ、こういうふうに思うわけであります。
 さて、さっき申し上げた、去年の予特で議論をいたしました中小企業事業破綻者、大変厳しい環境ににわかに身を置かざるを得なくなる。持ち家も売らなければならない。土地も手放す。再起に向けてまず住環境を整えようじゃありませんかということで知事と議論をさせていただいたんです。住宅局長も産業労働局長も、あのときは、規則がどうだとか公営住宅法がどうだとかといういろいろな実はためらった答弁でありましたので、知事と直接どうですかといったら、いい考えだ、ぜひやろう、ただし、だれでも彼でもというわけにいかないから、ルールはつくろうじゃありませんかということで答弁があって、それから準備が進んだ。いよいよ二月二十三日から三月の頭まで募集が行われました。
 時間の関係で確認をいたしません。私の方から申し上げます。二月二十三日から三月五日までの間、事業再建者向き定期使用住宅の募集の結果、問い合わせは九十二件ありました。申し込みは三件ありました。問い合わせ内容は、募集期間、募集地区、特に申込資格に関するものが多かったんです。そして九十二件も問い合わせがあって、申し込みがわずか三件だったというのは、実は民事再生手続に入っていて、この法律に基づくいわゆる再建計画が認定された者という条件があるということを電話で聞いて、自分には無理だと既にその段階であきらめたケースも多いと聞いております。
 住宅局長に一点だけ確認と要請をいたします。
 こういう経過だったことは説明は要りません。申し上げました。住宅局長どこにおられますか。--随分奥の方におられるからわからなかった。済みません。それで、今後、私はプラン・ドゥ・シーでいきますと、今回の募集というものはいろいろまたチェックしなければならない内容があるけれども、一つは、周知徹底が極めて不十分であった。本来ならば都営住宅の募集は区報、市報等に掲載されるのに、例えば今回されてませんね。第二回の実施に当たってぜひともこれは実行してもらいたいと思いますが、この点だけお答えいただけますか。

○高橋住宅局長 都民への周知でございますが、制度創設ということでプレス発表をいたしまして、募集のパンフレットを住宅局や住宅供給公社の各窓口のほか、都庁の案内コーナー、産業労働局やその事業所、区市町村、商工会議所等の関係窓口で配布をいたしました。また、住宅供給公社のホームページにも募集の案内を掲載いたしました。パンフレットの配布の期間は通常の都営住宅の募集と同様、土日を除きまして一週間とったところでございます。
 今後は制度の一層の周知を図るために、お話のありました区市などの広報紙への掲載の協力要請を初めといたしまして、募集パンフレットの配布先や配布期間につきましても検討していきたい、このように考えております。

○木内委員 なかなかこの敗者復活システムというのは長い年数の議論になってしまいました。一つの施策が実施されたからといって、一点突破、全面展開というわけにいきませんが、さっきいった個人保証の問題あるいは住宅対策等、相乗効果が必ずあらわれる。また、こういった点について行政が施策として構築をしていくということに、中小企業事業者の方々はどれだけまた安心と信頼を持つかはかり知れないものがありますので、ぜひこれからの継続した課題にしてまいりたいと思います。
 さっきこの問題について申し上げているとき、知事が書類をめくっておられたので、何か感懐、感想があればお聞きします。特になければ、結構ですが、何か答弁のご準備しておられたのかと思いまして。そうじゃありませんか。--はい、わかりました。ほかの書類を見ておられたようであります。
 次に、治安対策についてであります。
 知事は、治安こそ最大の都民福祉であるということを標榜されました。治安のベテランである竹花副知事を起用され、そして治安対策本部を昨年立ち上げられました。一年未満でありますけれども、着実な成果を上げておられると私は評価をさせていただきます。
 ところで、知事はベルベットグローブとアイアンフィストという言葉をご存じでしょうか。該博、博覧強記の知事でもご存じない。恐縮ですけれども、竹花副知事が警察学論集という論文の中で引用されて、私も見まして、その見識に実は胸打たれたのでありますけれども、ベルベットグローブとはやわらかい手袋、アイアンフィストというのは鉄のこぶし、そういう意味なんですね。鉄のこぶしにやわらかい手袋をはめている、そういうイメージをしていただければ結構。副知事、そういうことでいいですよね。--はい。鉄のこぶしというのはこの場合、警察力。警察にしかできないことは、例えば警察でしっかりやっていく、やわらかい手袋、すなわち警察でなくてもできることは、できるだけ一般の行政機関や市民の手にゆだねて解決をしていく、犯罪を予防していく、これが現在の欧米における治安対策の主流となる考え方である、こういうふうに聞いているわけであります。
 ところで、提案された十六年度予算案においては、治安対策関連費として累計で約八十七億円が投入される。申し上げたこのベルベットグローブとアイアンフィストという考え方がまさに当てはまるというふうには思うんですけれども、今回のこの治安対策関連の予算案、私は必要な予算が必要に応じて措置されたと判断しているわけでありますが、知事の感懐を伺いたいと思います。

○石原知事 この答えの前に、先ほどの問いかけでありますけれども、やはり日本人はフェールセーフという、敗者を優遇する、気遣うという習慣を取り戻さないと、この社会の本当の可能性というのはダイナミックに出てこないと思います。
 続いて、治安の問題でありますけれども、予算の点ではまだまだという感じがいたします。やるなら徹底して迅速にやりませんと、こういうものはだらだらやるものじゃありませんし、現に先日も今までなかった形で、あれは聞くところ、東ヨーロッパ系の白人だそうでありますが、これは実に周到なプロが何と販売価格にして数十億の貴金属をあっという間に銀座で強奪して、しかも成田から姿を消した。大体身元が割れたので、インターポールとの協力で動いているようでありますが、いずれにしろ、こういった、時間的、空間的に世界が狭くなりますと、今までなかった犯罪が次々出てきます。そういう点でも、治安の回復のために、警察力の整備を含めて、ハードとソフトの両面でバランスのとれた施策を、もっともっと多角的、総合的に展開することが必要であるというご意見には、まさに全く同感であります。
 来年度の東京の予算案も、こうした観点に立ち、警官の増員を初めとして、東京港の水際対策、地域の防犯力を向上させるための防犯設備などの整備などの対策から、スクールサポーターの配置、治安回復のための留学生、就学生対策といったソフトの面の事業に至るまで、可能な限りの財源を重点的に配分できたものと考えて--まあ、重点的に配分しましたが、まだまだ総量として足りないんじゃないかと思いますけれども、こうした対策を種々通じて、一日も早い治安の回復を図っていきたいと思っております。

○木内委員 恐らく知事答弁らしくない、相当具体論に至るまでの今お話でありまして、恐縮しておりますが、全く私も同感であります。
 さて、竹花副知事にお尋ねするんですが、昨年十月に東京都安全・安心まちづくり協議会を設置されました。随分足を各地に運ばれまして、こういう結果、各地域でのまたボランティアの防犯活動というものも盛んになってきた。
 私も、そういう動きの中で、ある著名な大学の柔道部の監督をやっておられて、たしかオリンピック選手でもあった方が、その人に連なる柔道グループでぜひ東京の治安に貢献したいという申し出がありましたので、お連れしましたよね。具体的なお話もいただいたりして、今準備を進めているところでありますけれども、さてここで、副知事、地域の防犯活動の中核となるべき人材をこれから育てていく必要があるんじゃないか。適切な情報や、あるいは的確な対応方法等、こうしたいわばノウハウというものも伝えていただき、治安対策に生かす。東京都としても具体的にこの方策を考えられたらどうか、こう思うんですが、どうでしょうか。

○竹花副知事 ご指摘のとおり、みずからが生活する地域の安全を確保するため何かやりたいと思いながら、どうも具体的なことがわからない、で、一歩踏み出せないでいるという方がたくさんおられるものと思います。そのような方々に声をかけて、実際の行動を促していく、あるいは、その行動をコーディネートするという地域のリーダーが必要でございます。
 このようなリーダーを育成していく仕組み、例えば、今、私ども考えておりますのは、安全・安心アカデミーといったような制度を創設したいと考えておりまして、都内の大学や専門家の協力も得まして、その内容、方法等を早急に検討したいと思っております。

○木内委員 極めて具体的なご答弁をいただいて、了としたいと思うんです。
 安心・安全アカデミー、いいですね、名前が。ぜひ具体的に、精力的にご準備をいただいて、新しい治安対策のコア施策にしていただきたい、こういうことを要望したいと思います。
 もう一つ、今回の青少年健全育成条例の中での不健全図書への対応でありますけれども、都民から寄せられる意見の中には、青少年の健全育成という観点から、特に、領域を、すそ野を広げて、多様な分野の図書類までもが規制の対象にされるのではないかという声も一部にあるようでありますけれども、この点についてはいかがでしょうか。

○竹花副知事 今回の条例改正案は、出版及び販売業者による自主規制を中心に据えて、この自主規制がなされない有害図書について、個別に指定するという従来の基本的な枠組みを維持しながら、この枠組みを有効に、より有効に機能させるために必要な新たな措置を加えたものでございます。
 その内容は、有害図書につきまして、青少年に適当でない旨の表示及び包装に努める義務を課したこと、その義務を果たさず有害図書が販売されようとしている場合には、指定図書として指定するとともに、これを包装して区分陳列しないで、さらに警告に従わない場合には罰則を科すこととしたこと、さらに、定期的に刊行されている図書類が指定された場合には、次の号から、表示図書類として表示及び包装するよう勧告することができるようにしたこと等でございまして、これらの内容が表現の自由を侵害するものでないことは、疑いを入れないところでございます。
 したがいまして、委員ご指摘のように、コミック誌等のこれまで規制の対象とならなかったものが広く規制されるというようなものではございませんで、そうした有害図書として指定するかどうかの基準は従来と全く変わっておりませんで、これらの図書が法外に広くなるということは、全く変わりません、これまでと全く変わらないことでございまして、むしろこのような新たな措置を規定することで、不健全図書がはんらんしている状況が大幅に改善されるということが期待されるものと考えております。

○木内委員 実態は従来の法概念の域を出ないものである、しかし現実対応能力があるものである、こういうふうに判断をしたいと思います。
 それから、外国人犯罪の問題でありますけれども、去る一月の東京都と在日中国人の方々との新春対話の会、ここでもさまざまな意見が出たようでありますけれども、中国人による犯罪を撲滅するために立ち上がりたいという、在日中国人の方から、そういう話もあったように仄聞しているんです。都としても、こうした動きがあれば、ぜひ対応すべきだと思うんです。どうでしょうか。

○竹花副知事 ご指摘のように、中国からの留学生や就学生などが犯罪を犯すケースというものが多々ございまして、こうしたことは、本人にとっても不幸なことでもありますし、我々にとって、日本社会にとっても大変大きな危険を増しているものでございます。
 こういう状況を改善したいと考えております在日中国人の方々、心ある方々が多数おられまして、現在、この方々と私どもはさまざまな協議を進めておりますが、中国人による中国人のための、これらの人たちの相談を受ける業務を行うNPO法人、中国人センターといったようなものを創設したいという動きもございまして、こうした動きも、都としてもできる限りサポートしてまいりたいと考えております。

○木内委員 きょうの質疑は、いろいろ新しい情報なり施策が報告されるわけですが、今のセンター構想も、早期にぜひ支援体制をおつくりいただくよう要請をしたいと思います。
 生文局長にお聞きするんですけれども、外国人犯罪の四割が実は留学生、就学生ではないかという指摘もあります。そこで、ほとんどの留学生は意欲に燃えたまじめな学生たちでありますけれども、実はそうでない、犯罪の温床という側面も指摘しないわけにはまいらない。
 そこで、具体的に、こうした外国人の就学生等が東京の生活に挫折することなく安心して勉強に励むことができる、そういうサポート策というものも行政の役割ではないかと思うんです。東京都では留学生の支援を充実すべきだと考えますが、具体的な施策も含めて、見解を伺います。

○三宅生活文化局長 お話の、いわゆる大方のまじめな留学生、就学生への支援についてでございますが、東京都はこれまでも、民間の非営利団体への助成を通じまして、留学生、就学生の生活全般に関する相談を実施するなどの支援を行ってまいりましたが、平成十六年度には、留学生等が在籍する学校を通じても必要な情報や支援が得られるように、新たに日本語学校や専修学校向けの相談窓口を設置する予定でございます。
 今後とも、学校や留学生等に対し、きめ細やかなサポートに努めたいと思います。

○木内委員 日本語学校や専修学校向けの相談窓口の設置もぜひ鋭意進めていただきたいと思います。
 治安の最後、港湾対策。
 何度か我が党は代表質問等で触れてまいりました、批准、既にされておりますSOLAS条約に対応した、テロ、密入国対策のための港湾整備の問題であります。今後とも、東京港を世界一安全な港としていかなければならないと考えます。
 そこで、これまで主張してまいりましたけれども、改正SOLAS条約に対応した最新の準備状況と、今後の港湾整備に向けての港湾局長のコメント、答弁をいただきたいと思います。

○成田港湾局長 改正SOLAS条約の本年七月の発効に向けまして、緊急に整備が必要なフェンスやゲートにつきましては、近く工事に着工し、本年六月末の完成を目指します。また、引き続き、監視カメラや照明等の施設の整備を進め、保安の強化を図ってまいります。
 こうした施設整備の取り組みとともに、東京港の各ふ頭につきまして、現在、具体的な保安計画を策定中でございます。
 また、水際での対策をさらに強化するため、本年一月二十九日には、東京港保安委員会を発足させたところでございますが、民間事業者を含めた連携体制を整え、この計画の実効性の確保を図ってまいります。
 東京港が、今度とも日本を代表する国際貿易港といたしましてさらに発展していくために、これらの施策の推進に全力を挙げ、世界に信頼される安全な港づくりに邁進してまいります。

○木内委員 次に、雇用問題について質問をいたします。
 初めに、若年者雇用であります。
 我が党は、さきの四定におきまして、国の施策であるジョブカフェを、都のしごとセンター事業に取り込んで、若年者の雇用環境の改善を強力に推進するよう主張をいたしました。
 若者の就業ワンストップサービスセンターであるジョブカフェの運営に当たっては、縦割り的な考え方を打破して、そして関係機関との連携を強めていく必要があります。とりわけ、学校との連携は極めて重要であります。この点を踏まえて、どのように具体的に取り組んでいかれるのか、答弁を求めます。

○有手産業労働局長 お話の、国の施策であるジョブカフェは、若年者向けの就業ワンストップサービスを提供するものでございます。都は、これをしごとセンターの一事業として取り込み、実施していきたいと考えております。
 若年者対策は、学校との連携が重要であると考えておりまして、ジョブカフェの運営に当たりましても、都立高校、私立高校、専門学校、大学などの学校関係者を含めたジョブカフェ運営協議会を設置するなど、これまで以上に緊密に連携を図ってまいります。

○木内委員 今、産労局長がいわれたように、やはり学校でありますとか教育の現場、専門学校等、いわゆるそうした現場との有機的な結合の中で施策の展開が行われることで、大きな成果がまた期待もできるわけでありますから、ぜひご努力をいただきたいと思います。
 これが、知事、今爆発的に売れている、ご存じですね、村上龍さんの書いた「十三歳のハローワーク」というやつ。いい学校を出て、いい会社に入れば安心という時代は終わりました。五百十四の職種、職業が紹介されている。本当に、ミスマッチということがよくいわれますけれども、逆に、個性、適性に合った仕事選びの大きな示唆の書として今あるわけでありますけれども、若い人々のフリーター化や、あるいは安易な離職、転職を未然に防ぐには、抽象的な連携ではなく、学校等の就職指導担当者、さらに保護者が職業に対する具体的なイメージを形成し、認識することが、この就職環境をつくる上で大変大きな力になっていくと思うんです。これを反映した施策の展開が必要だと思うんです。産労局長の答弁を求めます。

○有手産業労働局長 若年者のフリーター化や離転職者の増加は、職業意識の希薄さや、将来の生活設計に対する意識の欠如が要因の一つとして考えられております。こうした観点から、在学中の早い時期から職業に興味を持たせ、具体的な職業意識の形成を支援することが極めて重要でございます。
 しごとセンターでは、積極的に学校に出向いて、学生や就職指導担当教員を対象に、就職セミナーや就職情報の提供を行うとともに、保護者も対象としたセミナーを実施するなど、精力的に取り組んでまいります。

○木内委員 昨年来、このしごとセンターのスタートに向けて、議会の議論、私たちもさまざま参画をしてまいりました。随分いろんな機能が、しごとセンターには付加されるようになりましたね。とりわけ今の、保護者も対象としたセミナーの実施などというのは、だれも思いつかない、しかし極めて重要なことだ、こういうふうに思います。
 さて、この若者の社会参加という意味から、商店街振興という課題とリンクをさせてお尋ねをしたいと思うのであります。
 例えば、広く若者の中から、将来の商店主の候補として、商売のおもしろさを知って商人を志す者をつくり出すような仕組みをつくっていくことも一つの切り口ではないかと思うんです。
 そこで、例えば商業高校などの学生に、先進的な取り組みを行っている商店街や、あるいは商店で実際に商業体験をしてもらう、いわゆる商人インターンシップ事業も必要ではないか、こういう提案をするんですが、どうですか。

○有手産業労働局長 都内の商店街には、地域特性を生かしたユニークなイベントの実施や、高齢者向け事業、独自ブランドの開発など、先進的な取り組みを行っているところが多数あります。商業高校生などがこうした商店街で商業体験をすることは、商店街に対する理解を深め、商売の魅力を体得する上で非常に有意義であると思いますし、また商店街にとりましても、新しい若者の発想や感覚を事業に生かす、大変よい機会となると考えております。
 ご提案の商人インターンシップ事業につきましては、教育庁と連携を図りながら、商店街ごとの特徴を生かし、カリキュラムに十分工夫を凝らすことにより、将来の商店街の新たな担い手の創出につながる効果的な事業となるように、早期実施に向けて検討に入りたいと思っております。

○木内委員 これも早期実施ということでありますから、強く要請しておきます。
 先ほど、この議論を聞いて、濱渦副知事がよくうなずいておられるのですが、いいですか。--別にそういうことではない。ご発言があればと思ったんですが、いいですか。
 では、先へ進ませていただきます。
 もう一つ、高齢者の就業という問題についてであります。
 我が国においては急速な高齢化が進展し、東京においても団塊の世代が六十三万人も存在していて、これが、一斉にこの就労が必要になってくる、あるいは希望者がふえる、高齢実態にあるわけであります。こうした方々への就業支援策が極めて重要であります。
 この、いわば高齢者のために取り組んでいる就業施策というものは、例えば地域レベルの取り組みの代表的なものとして、シルバー人材センターがある。しかし、このシルバー人材センターは、大変に先進的に苦労して企画豊かに進めているところもあれば、マンネリに陥っているところも中にはある。必ずしも新しい社会構造の変化に対応するものとなっていない実態があるのであります。
 東京都として、このシルバー人材センターのやる気を引き出して、より活動を活性化させ、そして、申し上げた団塊の世代に対応できるものとなるよう、具体的な施策の推進が急務だと思うんですが、どうですか、これも産労局でいいんですか。

○有手産業労働局長 あと三年から五年で団塊の世代が定年を迎えます。その大きな受け皿の一つとしまして、シルバー人材センターの役割、機能を大幅に見直す必要があると認識しております。
 都では、シルバー人材センターが抱える課題を打開する観点から、来年度より、経営改善の数値目標をみずから設定させ、これを達成した場合に限り補助金を交付する仕組みを構築する考えでございます。
 さらに、商店街や学校など地域の団体等と連携して、コミュニティ就業など先進的なモデル事業に挑戦するシルバー人材センターに対する新たな補助金を創設する予定であります。
 こうした新たな取り組みを通じまして、区市町村とともに、シルバー人材センターの活性化を積極的に推進していきたいと考えております。

○木内委員 経営改善の数値目標の設定、これを事業として達成した場合に限って補助金を交付する、頑張っているところは手厚く対応しますよ、こういうことでありました。それからもう一つは、新たな補助金の創設、これも積極的な施策でありますから、期待をさせていただきます。
 次に、児童虐待の問題についてお尋ねをいたします。
 これは、知事、最初にまず答弁をいただきたいと思うんですが、ここ数年、最も愛されなければならない親から死に至る虐待を受けるという事例が余りに多い。私は、この問題に、誤解を恐れず申し上げれば、議員である限り挑戦をし続けたいという決意を先ごろさせていただきました。
 もとより、虐待をする親の問題というのは、すぐれて精神性といいますか、精神世界の問題でありますから、行政や政治がどこまで実は迫れるか、甚だ疑問です、率直に申し上げて。だけれども、何かしなくてはいけない。
 例えば東京都では、百五十人あるいは二百人前後の相談件数の中で、約三%の子どもたちが死に至る虐待を受けています。何だ、そんなものかという数字ではありません。年間五人、六人とこういう事態がある。顕在化しているだけでもこれだけであります。
 これは本当に、その残虐な児童虐待の事例を耳にしていたずらに涙を流したり、慨嘆することはだれでもできるけれども、今政治ができることが何かあるはずだと、私はさまざま研究をさせていただいた。我が党の中でも、児童虐待プロジェクトチームというものをスタートさせていただき、この中で議論を重ねてまいりました。
 知事、実は、行政が対応できる部分と、そうでない部分と申し上げましたけれども、幾つかの分野があります、児童虐待防止は。早期発見の手法を確立すること、それから児童を引き揚げて保護をしていく分野、それから今度は、虐待をして、世間の言葉でいえば鬼のような母親であっても、再統合、親子の再統合に向けて具体的な……(発言する者あり)いや、父親でもいいですよ、親なんだから。そういうことをいわないでほしいんだよ、例えばでいっているんだから。両親の問題です。再統合のノウハウをどう、より多くの人が身につけて、これを実行していくか、そのフォローの問題等いろいろあるわけであります。
 特にきょうは、早期発見という点について私は提案を申し上げたいんですけれども、その前に知事、申し上げたように、一人の政治家というと生意気だけれども、都議会議員の木内良明として、これからこの問題に迫ってまいりたいと思うんですが、まず知事のご見解を承りたいと思います。

○石原知事 子どもにとって親は、一番間近な大人であるとともに、一生涯の先生、つまり教育の最高責任者だと思います。その親が、子どもの心に深い傷を残して、命さえ奪うということは、もう本当にこれは許されるものじゃないと思います。
 少し前も、非常に風俗的にも嫌な事例がありましたね。子どもを産んで、だんなさんと別れて、今度は年下の高校生と同棲している母親が、昔だと自分の情夫ですか、それにこびて、一緒になって子どもをいじめて殺したと。こういうことは昔はめったになかったような事件だと思うんですけれども、いずれにしろ、これは、その虐待を克服するためには、子どもを最優先に考え、社会全体の責任で取り組まなくちゃならないと思いますが、行政として、待ちの姿勢ではなく、ちゅうちょせずに児童虐待の発生予防、早期発見、早期対応、家族の再統合まで含めた総合的な取り組みを推進していきたいと思います。
 事例としては、どういう事情か、とにかくある時期お子さんを預かって、やがては親に返すという里親の制度が東京で幾つか見られますが、本当にとうとい試みだと思いますし、その前に、子どもを死に追いやらないためにも、周りの目がやっぱりそういう問題を鋭く見て、見守って、それで通報する、そういう習慣というものを何かやはり行政が誘導していきたいなと思っております。

○木内委員 周囲の関係者にも、これを発見して通報する策を誘導してまいりたいと、知事、いみじくもいっていただきましたので、この後、議論を展開させていただきたいと思いますので、ぜひ耳を、例によって傾けていただきたい、こういうふうに思います。
 今、知事がいわれた、かつては考えられなかったようなケースというのがよくあるのは、例えば、若い女性が結婚をする、子どもができる、離婚をする、若い男性と同棲をする、結局、核家族化の社会構造の中で、例えば夜泣きをされる、子育てにもうノイローゼになってしまう、で、虐待が始まる。一方、若い男性の方も、夫婦生活に子どもが邪魔だというので殺してしまおうと。要するに、社会構造の変化ということが一つありますけれども、もう一つは、児童虐待というのは、虐待連鎖という世代間連鎖が今よくいわれているわけでありまして、今とめなければ、恐らく、後世の私たちの社会を担う若者たちに、社会資産としてこの環境を受け継いでいけないのではないかという危惧すら持っているわけであります。
 さて、今、知事がいわれた早期発見の手法ということでありますけれども、残念なことを申し上げなければなりません。国においては、児童虐待防止法、児童福祉法等が今改正されようとしておりまして、この前、与野党協議の結果が新聞報道されておりました。この中で、最もこの児童虐待防止に必要な、安否の確認をするのに力を発揮する警察の立入調査権というものが除外をされてしまった。これは私は、現場を知らない国会議員たちの見識のなさだと、はっきり申し上げたいわけでありますけれども、国がやらなければ、都が新しいルールなり環境をつくりたい、こういうことを一つ申し上げたいのであります。
 子どもの安全確保を最優先するといういわば東京ルール確立のため、具体的取り組みをすべきだと思うんですが、都の所見を伺います。

○幸田福祉局長 具体的取り組みとして、児童相談所におきましては、虐待通報を受けると、直ちに虐待対策班を中心として迅速に情報収集を行いまして、必要に応じて立入調査、一時保護をちゅうちょすることなく行っております。
 また、区市町村の子ども家庭支援センターを核に、学校、保育所、警察、医療機関、児童委員などから成る虐待防止ネットワークにおいて情報を共有するなど、関係機関と密接に連携しながら、虐待への対応に努めております。
 さらに来年度からは、援助の必要な子どもの情報を早期につかみ、より一層迅速果敢に対応できるよう、民間の相談、支援機関と児童相談所が連携する仕組みを構築してまいります。

○木内委員 地域と行政のかけ橋である児童委員の方々、ぜひお力をおかりしていきたいと思うんです。都内一万人いらっしゃる、こういう方々への呼びかけ、会合等での研修も実行してもらいたいと思うんですが、どうでしょうか。

○幸田福祉局長 児童委員の方々には、虐待通報に際しての実情の把握など、昼夜を問わない地道な活動に献身的に取り組んでいただいており、私ども大変感謝をしているところでございます。
 このように、児童虐待を防止するためには、地域における子どもの健全育成のかなめである児童委員の方々と力を合わせ、日ごろから、見守りなどのきめ細かな取り組みを行うことが重要でございます。
 このため、来年度、主任児童委員や新任の児童委員を中心に、児童虐待をテーマとし、専門的知識の付与と具体的なケーススタディーを含めた研修を、一千人規模で実施してまいります。

○木内委員 一千人規模ということでありますので、濃密な内容で研修を実施してください。
 知事、私、今あっちこっちの関係行政機関について触れているのは、今こそ行政の総力、社会の総力を挙げて児童虐待を防止しよう、抵抗する力のない子どもがなぜ殺されなければならないのか、これは社会の責任です。あるいは酒乱の--こういうことをいうと、また何か意見が出そうだけれども、何かこう想像したのと違う男性と結婚しちゃって、いじめられて、それで逃げると。これは大人の判断の問題ですから。子どもはそれができないんですよ。要するに懐に飛び込みたい、その飛び込んだときに殺されるなんていうことが、絶対あってはいけないわけであります。
 平井健康局長、これは答弁要りませんが、お聞きいただきたいんです。
 きょう、午後二時から四時半まで、病院管理講習会というのが行われています。対象は、都内全病院六百八十に参加を呼びかけて、今、情報を得ました、本日、三百六十八病院で三百九十名が参加して、一庁の五階大会議場で行われたんです。これが使われたそうであります。医療機関向けの支援マニュアル、いろいろなのがあるんですが、この中で、大きな項目に子どもの虐待というのがあるんです。
 残念ながら、きょうのテーマに入ったかどうか確認はしておりませんけれども、実は病院で診察をする段階で、あざや、あるいは頭部のけがや、さまざまな肉体異常。去年も触れたけれども、歯科医師会の先生方のご協力によって、齲歯の、養護施設における健診をした。こういうときにも児童虐待は発見されるんです。この通報システムをさらに充実していただきたい、こういう講習会等も通じて行っていただきたい、こういうふうに思うのであります。
 さて、横山教育長にお尋ねをいたします。
 学校力ということを私は申し上げたい。こんな話を申し上げていいと思うんですけれども、ある地域の児相のスタッフが、虐待をされていると想像される子どもを家庭に訪ねたら、追い返された。学校に行っているときに、引き取りに、保護しようとしに行った。学校の現場では、校長先生が出てきた。今、あの子どもは教室を出て帰りますので、学校の敷地の中では保護しないでください、校門を出たら保護してください。これはどういうことかといえば、かかわり合いになりたくない、児相は児相でやってください。こういう無責任な学校現場の対応は、断じて許すわけにはいかない。
 と同時に、学校というのは、子どもを保護し、訓育し、学習させ、そして守るという機能を持った、最も滞在時間の多い、子どもにとっては、環境であります。この学校力を生かさない手はない、こう思うわけであります。
 したがって、まず、身体測定や授業中などにおける児童虐待の早期発見など、学校の力、すなわち学校力を高めていく必要があると思うんです。具体的な方策を、どうかご報告願います。今後何をやるか。

○横山教育長 お話のように、最近の報道される事例を見ますと、学校でもっと注意をしていればわかったのではないかと、こういう指摘が非常になされるわけでございます。そういった意味でも、児童虐待の早期発見あるいは通告のために、学校において、その対応する力を高める必要があると痛感をいたしております。
 そのために、まず、教員の意識を変えなければいけない。そんなことがございますので、すべての区市町村教育委員会に対しまして、児童虐待防止に関します教員の研修を実施するように指導いたします。
 また、都立盲・ろう・養護学校での児童虐待の早期発見などについての研修、あるいは都立高等学校の生活指導主任や養護教諭に対しての児童虐待防止に関する研修を実施してまいります。
 また、教員がどういうところを注意したらチェックができるのか、こんなことがございますので、新たに児童虐待早期発見チェックリストを作成しまして、全公立学校に配布してまいります。

○木内委員 今、教育長がいわれたことは、いずれも新たな施策事業としての報告でありましたので、これは具体的に全部進めてもらいたいんです。例えば、今、区市町村教育委員会に対する、虐待防止に関する研修の実施を指導していくという強い文言でありましたので、ぜひこれも期待をしたいと思うのであります。
 それで、その結果どうなったか、私は、また次の議論の機会に、教育庁関係の分野における、こうしたいわば成果というものをやはり検証させていただきたいと思いますので、教育庁も目の色を変えて、この児童虐待防止に取り組んでいただきたいと思うのですが、関連してもう一点。
 不登校や虐待など、子どもの生活にかかわるさまざまな問題を早期に発見し予防するには、学校が家庭における子どもの状況を把握することが極めて重要であります。家庭訪問が、実は昔ほど今励行されていない。私が小学生のころ、学校の先生というのは神格化していましたから、その先生が、自分の家に来て両親と会う、この緊張感と信頼感と学校への一種のイメージというのは独特なものがあった。今はないと、忙しいといって。
 報告書を書く、どうやってやるかというと、家のある場所の確認だけして帰ってきて、家族に会わない、こういうケースがあるんです。この家庭訪問の目的は、児童虐待防止ということには決してならないわけでありますけれども、結果的には、その家庭の実態を知る大きなよすがになるわけであります。
 そういった意味で、家庭訪問を今後具体的に着実に進めていただきたいことを要望しますが、答弁を求めます。

○横山教育長 お話のように、不登校あるいは虐待など、生活あるいは養育に課題のある児童生徒の状況を把握するのに、担任等によります家庭訪問は、大変有効な手だてであると考えております。
 現在、今、先生は全然やってないとおっしゃいましたが(木内委員「全然じゃないんですよ、やっている人もいるんだ、いっぱい」と呼ぶ)各学校では、こうした児童生徒につきましては、随時家庭訪問を行うなど、家庭での実態の把握に努めているところでございます。
 今後、これに加えまして、設置者でございます区市町村教育委員会と連携を図りまして、担任等が長期休業日等を積極的に活用して家庭訪問を行いまして、児童生徒の状況をきめ細かく把握し、虐待等の早期発見や防止に一層努めてまいりたいと考えております。

○木内委員 答弁を了としたいと思います、具体的でありますから。
 それから、福祉局長に聞きます。福祉局が行っております一時保護所に入所している児童生徒の学習活動について、今、職員の方々が、私も現場に行って見てまいりましたけれども、専門職でない、教員の資格を持っておられない方が、一生懸命勉強を教えたり体育を教えたりしている現実があるんです。三十日から、三カ月間も、長期にわたって、子どもによってはそこに入所しているわけであります。この間、学校の授業は受けられないわけであります。ぜひこれは、福祉局の事業執行によって教員の配置を願いたい。
 答弁をお願いします。

○幸田福祉局長 一時保護という環境に置かれている子どもたちにあっても、他の子どもと同様に教育を受けることは大変重要でございます。一時保護所では、これまで、子どもに学習を習慣づけ、学習への意欲を向上させるために、職員が学習指導を行っておりますが、ご指摘のとおり、教員免許を持っている教師による学習指導を行うことが望ましいと考えております。
 そのため、平成十六年の四月から、教職経験者の再雇用職員を二カ所の一時保護所に配置する予定でございます。

○木内委員 答弁を了としたいと思います。
 教育長、答弁は結構です。ぜひ今の答弁の協力を要請しておきますので、うなずいていただければ結構です。--よろしくお願いをいたします。
 実は先日の代表質問で、我が党の石井幹事長が夜間中学の問題を取り上げました。時間の関係で多くは説明申し上げませんけれども、こうした質問、また提案等が契機となりまして、その後、つい三、四日前ですか、学校現場に教員の配置、講師の配置の通知が行きました。現場は、大変朗報だとしてこれを受けとめているところであります。議会の議論の重要性というものを今さらながら思うわけであります。
 また、今回、この児童相談所等のセンターに教職経験者が配置をされるということでありますので、これも大事な事業でありますので、よろしくお願いをいたします。
 なお、この問題の最後に、知事、これはぜひ知っていただきたいんですけれども、さっき申し上げた親子の再統合に向けて、現場で黙々と努力をしておられる家庭復帰支援員という方がおられます。これは、先日テレビでやったビデオを私は見たんですけれども、立川で活動しておられる桜井さんという六十歳の方。児相に保護された親子関係の改善があった、あるいは親に生活基盤の安定性がある、周辺からの支援が期待できるというような基準が一つでもあれば、親のところへ行って何度でも何度でも話し合って、子どもと一緒に暮らせるようにということで、まさに海の波浪が岩を砕くような、気の遠くなるような作業を献身的にやっておられる東京都のこの職員の方、これにまた連なる方がいらっしゃる。このことを申し上げておきます。これは答弁も何も結構でありますけれども、胸を熱くした次第であります。
 さて、最後の課題であります。歯科健診についてであります。
 私は去年の予特で、健康は最大の教養である、心の東京革命ということに関連をいたしまして、健康づくりのもととしての歯の健康管理が必要であるということを訴えました。そして、小学校、中学校等のいわゆる学齢期の歯の健診システムはあり、高齢期に入るとまた健診システムはあるけれども、最も働き盛りの二十代、二十を過ぎてからの社会人、これはずっと健診システムの対象になっていない、空洞化しているために、実はこの問題提起をしたわけであります。
 そこで、私が申し上げたのは、成人の歯と口腔の健康管理を進めるツールとして、歯の健康手帳を作成するということを提案した。それに対して東京都は、モデル的に実施をしますという明確な答弁をされた。その後の取り組み状況について、まずご報告願います。

○平井健康局長 都は、八十歳で二十本以上の歯を保つことを目標として、これまで、幼児及び成人向けのパンフレットの作成や、島しょ地域での総合的な歯の健康づくりに関するモデル事業を実施するなど、さまざまな普及啓発事業に取り組んでまいりました。
 ご提案の歯の健康手帳につきましては、こうした事業の一環として、現在、東京都歯科医師会と協力して作成しております。

○木内委員 それで、モデル事業のあり方ということなんですけれども、例えば、国は健康増進法の施行に合わせて、歯科健診から予防管理、歯科治療へと円滑につなげていく、効果的な歯科保健医療提供体制の整備を目的としたモデル事業の方針を明らかにしております。
 東京都で、この事業を活用して、地域や職域で、成人に対する健康管理にモデル的に取り組むことを提案するんですが、いかがでしょうか。

○平井健康局長 都は、ご指摘のモデル事業を活用しまして、幾つかの健康保険組合を指定し、職域における歯科健診や保健指導の取り組みを試行したいと考えております。
 その上で、学識経験者などをメンバーとする委員会を設置いたしまして、地域や職域における効果的な取り組みや、健診から予防管理、治療へとつなげていく連携の仕組みについて検討し、その成果を関係団体等に提供していく考えでございます。

○木内委員 今の答弁、職域における試行実施ということでありますし、また、委員会の設置等があります。
 そこで、このモデル事業を実施するということでありますが、その中で、今年度作成される、私が申し上げております歯の健康手帳を活用してはどうでしょうか。都民の皆さんが日常的に手帳を見ながら、みずからの健康管理に取り組み、また、歯科医師がその健康管理をサポートしていくといった利用方法であります。
 特に、歯の健康手帳を健康管理のツールとすることで、都民の歯科保健意識の向上や、ひいては、かかりつけ歯科医の定着も図れるのではないか。すなわち、職域における歯科健診を行う、治療が必要だと診断される、そのときに、地域に戻って近隣の歯科医の方をかかりつけ医としていく。こういうことが今後考えられるわけであります。いかがでしょうか。

○平井健康局長 ご指摘のとおり、都民一人一人が、自分の歯の健康状態につきまして常に意識を持つことは大切なことでございまして、成人に対するモデル事業を実施するに当たりましては、歯の健康手帳の活用について、実施を前提に積極的に検討してまいりたいと考えております。

○木内委員 実施を前提に検討でありますから、このモデル事業と併用ということでぜひお願いをいたします。強く要望するものであります。
 これは、答弁は必要ありませんが、申し上げます。さっきちょっと触れましたけれども、職域での健診を契機に、実はかかりつけ歯科医を求めるケースがあります。この場合、医療の分野でも歯科医療でもいわれるんですけれども、いいお医者さん、いい歯医者さんにかかりたい。特に歯科医については、そういうことが多くいわれます。
 したがって、例えば歯科医師会等の皆さんが大変ご活躍をされて、今、地域にさまざまな運動を展開しておりますけれども、歯科医師会にもこのことを要請して、そういういわば紹介要請があった場合に、これに対応できる体制もつくっていただくように、局の方から協議を願えればと、このことも申し上げておきたいと思います。
 ちょうど、あと一分になりました。最後に、知事にご答弁を願いたいと思います。
 これまでの質疑によって、生涯を通じた歯と口腔の健康づくりを目指し、地域や職域で歯の健康手帳を活用したモデル的な取り組みが行われることが明確に示されたわけであります。歯の健康手帳が職域の健康保険組合と地域のかかりつけ歯科医をつなぐかけ橋といった役割を果たし、やがては職域の健康保険組合が実施した健診の結果を受けて、地域のかかりつけ歯科医が治療や歯科相談をしていくという流れが定着していくものと、また、それを期待したいと思います。
 こうした新たな取り組みによって、都民の健康づくりがより一層推進され、豊かな都民生活が実現されるものと考えます。これまでの質疑をお聞きいただいて、知事の率直なご見解を求めたいと思います。

○石原知事 かむということは、まさに健康の源、長寿の要因だと思います。都民の一人一人が自分の歯の健康状態を把握して、自分の歯をいつまでも保ち続けることは、とても人生にとって大切なことだと思います。
 私も、子どものころ歯が悪くて、あのころは非常に原始的な治療しかしませんでしたから、歯医者へ行くのが非常に嫌でしたけど、このごろは非常に治療の器材も進歩しまして、例えば抜歯するときの麻薬なんかも、非常に簡単にできるように、苦痛を伴わず治療も受けられるようになりましたし、何といっても、トゥースピックというんですが、ようじのかわりの、もっと毛の生えた、ああいうものは、本当に常用していると、自分でお医者さんへ行く前に虫歯を防げて大変便利だと思うんですが、余りそういう情報が世間に知られてないので、私、この間、私と同世代の男にそのことを教えましたら、こんなものあるの知らなかったというので、実にいいこと教わったって感謝されましたが、いずれにしろ、都としても、引き続き歯の健康づくりに積極的に取り組んでいきたいと思います。

○大木田副委員長 木内良明理事の発言は終わりました。(拍手)
 この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩いたします。
   午後六時十四分休憩

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