東京都議会予算特別委員会速記録第二号

   午後一時二分開議

○宮崎委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 委員会の資料要求について申し上げます。
 先ほど委員会として要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 これより総括質疑を行います。
 この際、一言申し上げます。
 質疑に当たりましては、さきに了承いただいております委員会実施要領等に従いまして運営してまいります。委員の皆様方には円滑かつ充実した審議が行われますよう、ご協力をお願いいたします。
 なお、持ち時間につきましては、電光表示盤に残り時間を表示いたします。さらに、振鈴で五分前に一点、時間満了時に二点を打ち、お知らせをいたします。質疑の持ち時間はお守り願います。
 次に、理事者に申し上げます。
 答弁に際しましては、委員の質問時間も限られておりますので、短時間で明快に答弁されるようお願いをいたします。
 なお、各局長に申し上げます。
 発言の際には、必ず職名を告げ、委員長の許可を得た上で発言されるようお願いをいたします。
 これより順次発言を許します。
 遠藤衛理事の発言を許します。

○遠藤委員 都議会自由民主党を代表いたしまして、予算特別委員会総括質疑をさせていただきます。
 さて、知事は就任以来、財政再建に全力を尽くしつつ、新たな政策の苗を植え、国を動かし、東京と日本の再生のために努力されてこられました。
 十六年度予算は、石原都政第二期の最初の予算であり、また、第二次財政再建推進プランの初年度の予算でもあります。そこで、予算内容はもちろん、これからの都政運営のあり方まで含め、質疑をさせていただきたいと思います。
 まず、十六年度予算において、現下の緊急かつ重要な課題に全力で取り組むとのことですが、どのような考えで予算措置を行ったのか、まずお伺いをいたします。

○石原知事 経済も今日のような状況でありますし、税収も一向に伸びません。そういう状況の中で予算編成に当たり最も重視しましたのは、引き続きこういう状況の中での財政再建の取り組みをより強化、向上して都の財政を立て直すとともに、東京の再生に向け、現下の緊急かつ重要な課題に限られた財源をどうやって重点的に配分するかということに一番苦労いたしました。
 プライオリティー、優先順位の問題でありますが、具体的には、意識世論調査しましても、都民の最大の関心事であります治安の回復に向けての総合的な取り組み、それから、日本の産業を基幹で支えております中小企業への支援、都市再生への取り組み、福祉、医療の充実などに重点的に予算を配分いたしたつもりでございます。
 同時に、将来の都財政を見据えて、基金残高の確保や都債の発行抑制にも努めてまいりました。
 十六年度予算は、緊縮型ではありますが、施策展開にも財政再建にも全力で取り組んだ積極的な緊縮予算としたつもりでございます。

○遠藤委員 我が党が強く求めてきました治安対策、中小企業支援、都市再生に関する施策などが幅広く予算化され、あわせて財政基盤の強化を図っていることは率直に評価をいたします。
 一方、十六年度予算の都税収入については、銀行外形課税の税率改正にもかかわらず、前年度と比べて横ばい、実質的には大幅な税収増です。税収の伸びは景気回復の証拠でもあり、都政にとって明るい材料であります。
 そこで、十六年度予算における都税収入をどのような考えで見込んでいるのか、また、景気状況を踏まえ、今後の税収動向をどのように見通しているのかをお伺いいたします。

○川崎主税局長 我が国経済は、輸出やデジタル景気を追い風に、大企業、製造業を中心に企業収益は上向き、緩やかな回復基調にあると思っています。
 一方で、中小企業や非製造業は出おくれが目立ち、景気回復に偏りが見られます。また、雇用や個人消費などの懸念要因もあり、これらを総合的に勘案し、平成十六年度の都税収入を見込みました。
 景気は、外需主導で回復過程にあるものの、為替や米国などの輸出先の景気動向によっては持続性に不安もあり、先行きはなお不透明であります。
 今後の税収動向につきましては、これらを踏まえ、慎重に見きわめてまいりたいと思っております。

○遠藤委員 現在の税収の動きが一時的な回復にとどまるのか、上昇気流に乗る前ぶれなのかを見きわめ、今後の税収の推移に十分注意を払っていただきたいと思います。
 ところで、第二次プランでも、十六年度予算でも、税収を考える上で重要な点が明らかになっておりません。それは、地方消費税交付金など、法令等に基づき都税収入の一定割合を区市町村に交付する、いわゆる税連動経費の問題であります。
 今回の予算でも、都税収入のうち一兆円を税連動経費に持っていかれるため、都が実際に使える税金は、事実上、三兆九千億のうち約二兆九千億しかないのであります。税連動経費を除いた、いわば手取りベースの都税収入を十六年度予算と十五年度予算で比較するとどのようになっているのか、お伺いをいたします。

○櫻井財務局長 税連動経費を除いたいわば手取りベースの都税収入ということでございますが、十五年度の税連動経費は九千六百七十一億円であり、都税収入三兆九千八十六億円からこの税連動経費を差し引いた手取りベースの都税収入は二兆九千四百十五億円となります。
 一方、十六年度の税連動経費ですが、一兆十八億円でありまして、都税収入三兆九千二百六億円からこれを差し引きました二兆九千百八十八億円となりまして、十五年度と比較しますと、都税収入は百二十億円の増となっておりますけれども、手取りベース、いわば実質ベースの都税収入は、逆に二百二十七億円の減収ということになってございます。

○遠藤委員 手取りベースの都税収入は前年度を割り込んでいます。このように、都税収入の中身をひもとくと、巷間いわれております四兆円の税収とは全く別の厳しい都財政の実像が浮かび上がってきたところであります。
 そこで、改めて、十六年度予算編成を終えた段階で都財政の現状をどのようにとらえているのか、お伺いをいたします。

○櫻井財務局長 十六年度予算におきましては、内部努力の徹底や施策の見直しなどにより歳出の削減を図り、財源不足額を圧縮したものの、財源不足の解消には至りませんでした。さらに、今後の税収動向が不透明であることを考えますと、財政再建道半ばの厳しい状況が続いております。
 今後、中長期的に見ても税収の大幅な伸びは期待できないことから、新たな施策に必要な財源を確保するには、執行体制などの徹底したスリム化、効率化を図りつつ、時代変化に適応した機動的な施策の見直し、スクラップ・アンド・ビルドを行いまして、財政の硬直性を克服していく必要がある、このように考えております。

○遠藤委員 財政構造改革の必要性は同感であります。我々も同じ立場に立っております。
 これまでは、いわば集中治療室から出ることに主眼を置いた財政再建でしたが、これからは、新たな前向きな施策を行うためにこそ財政構造改革を行うという、より前向きな視点を強く持たなければなりません。
 過日の本会議で、我が党の大西幹事長の代表質問に対し、知事は、財政再建に新たな一歩を踏み出したと答弁をされました。この新たな一歩とは、新たな施策展開のために財政構造改革を行っていくという趣旨と理解してよいのでしょうか、お聞きいたします。

○櫻井財務局長 財政再建の取り組みは、単に財源不足の解消が目的なのではなくて、都税収入の伸びが期待できない中にありましても、都民ニーズなどの変化に応じ、新たな施策展開を図ることができる強固で弾力的な財政体質、こういうものに転換することが真の目的でございます。
 都財政の構造改革なしに、新たな施策を打ち出し、都民の期待にこたえ続けることは不可能でありまして、ご指摘の点は、まさに我々の取り組みについて深くご理解をいただいているものであり、まことにありがたいことでございます。
 今後とも、都民や議会の理解と協力を得ながら、財政構造改革の実現に向けまして、取り組みを一層強化してまいります。

○遠藤委員 我が党は、財政再建に当たり、都みずからが血を流すことが何よりも優先されるべきであり、都民にとって都側の姿勢が一番わかりやすいのは、人の問題であります。
 十六年度予算には、職員定数の千四百四十四人削減や退職手当の見直しが見込まれました。都もやるべきことはやっていると評価をいたしております。しかしながら、これで十分とはいえません。今後も、なお一層努力を強く求めるところであります。
 ところで、定数削減と退職手当の見直しにより、給与関係費を量の面からは削減できますが、これとあわせて質の改革が必要であります。次の焦点として、能力主義をより明確にし、職責、能力、業績に見合った人事給与制度に再構築することに、これまで以上に積極的に取り組むべきであると考えますが、ご所見をお伺いいたします。

○赤星総務局長 厳しい都財政のもと、ますます複雑、困難化いたします政策課題に的確に対応するためには、その担い手でございます職員一人一人のレベルアップを図り、効果的に活用していくことが必要でございます。
 そのためには、努力し成果を上げた者が報われる人事管理の実現が必要不可欠でございます。このような視点から、職責、能力、業績を反映いたしました人事給与制度を実現することは喫緊の課題であると考えております。
 今後とも、最少の経費で最大の効果を上げることのできる一層効率的な都政運営を実現するため、人事給与制度の見直しに積極的に取り組んでまいります。

○遠藤委員 次に、施策の見直しについてお伺いいたします。
 第二次プランでは、経常経費、投資的経費を問わず、聖域なく見直しを行うこととしております。十六年度予算では、施策の見直しによりどれだけの財源を確保したのか、また、今回の取り組みにとどまることなく、都政の構造改革に向けて、見直しを今後も不断に続けていくべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

○櫻井財務局長 十六年度予算では、ソフト、ハードの両面にわたり、直面する治安、中小企業対策など緊急かつ重要な課題に的確にこたえるために、施策の見直しにより四百三億円の財源を確保することができました。これは、プラン期間中の目標額一千二百億円の三分の一に当たるものであります。
 都民ニーズの変化にこたえ、継続的に新たな施策を展開していくためには、今回の結果に満足することなく、ご指摘のとおり、都財政の構造改革を進めて、弾力的な財政体質を構築する必要があります。
 都は今後とも、内部努力のさらなる徹底はもちろんのこと、全庁を挙げて施策の見直しに取り組んでまいります。

○遠藤委員 施策の見直しによる財源確保があったからこそ、厳しい財政状況にあっても、都民ニーズに的確にこたえる新しい施策が可能となり、緊急課題にしっかりと対応できています。施策の見直しは、新たな取り組みを始めるためには避けて通れません。
 続いて、歳入確保についてお伺いいたします。
 近年、主税局は徴収率の向上に努力をしており、私は評価をしております。しかし、次に取り組む課題は個人都民税です。区市町村がその徴収は行っていますが、徴収率は低く、改善をしなければならない点が多々あると思います。
 また、第二次財政再建推進プランでは、都は、地方税法に基づき、区市町村に対し、個人都民税収入の一律七%、約二百五十億円を徴収取扱費として支払っておりますが、個人都民税の税収は区市町村が徴収する税の二〇%にとどまるのに対し、都が支払う徴収取扱費により区市町村の徴税費用の六五%が賄われているという実態が示されました。これは区市町村平均の数字で述べており、個々の区市町村の数字には高低があるわけです。
 個人都民税の徴収率向上は、都と区市町村の双方の財政再建につながるものです。今回、都は徴収率向上に向けた区市町村の支援に乗り出しますが、これは中長期的に見て、都にも区市町村にも大きなメリットがあります。
 また、都が指摘するような実態にある徴収取扱費についても、地方分権の時代でありながら国が法令により全国一律七%としていることについて、国に問題提起をしていくべきであります。
 個人都民税の徴収体制の強化に当たっては、都と区市町村とががっちりとスクラムを組んで、最少のコストで最大の徴収効果を上げるようにしていくことが不可欠でありますが、所見をお伺いいたします。

○川崎主税局長 都はこれまでも、区市町村の理解と協力を得て、個人都民税の徴収強化に努めてきました。
 個人都民税は、区市町村が区市町村民税と合わせて徴収していることから、都の行う個人都民税の取り組みは、区市町村民税の徴収にも大きなメリットがございます。そのため、都は、区市町村の同意のもとに、滞納整理困難事案の引き継ぎを実施し、処理をしてきているところでございます。
 さらに、来年度からは、全国でも初めて、都職員を区市町村に一定期間派遣し、区市町村職員とともに、処理の進展しなかった事案について財産調査や差し押さえを行うなどにより、なお一層効率的な徴収に努めてまいります。

○遠藤委員 次に、地方税財政制度の改善についてお伺いいたします。
 十六年度の国の予算では、三位一体の改革が曲がりなりにも動き出しました。国庫補助負担金が約一兆三百億円削減されることになり、また、財源措置として、所得譲与税四千二百四十九億円、税源移譲予定特例交付金二千三百九億円が設けられました。新たに設けられた所得譲与税と税源移譲予定特例交付金の都財政への影響を都税当局としてはどのようにとらえているのか、お伺いいたします。

○櫻井財務局長 三位一体改革に伴い、都は、義務教育費国庫負担金などの削減に対する財源補てんとしまして、十六年度予算では新たに、所得譲与税二百四億円、税源移譲予定特例交付金九十二億円の歳入を計上いたしました。しかし、国庫支出金の削減総額は、公共事業関係補助負担金等の詳細がいまだ明らかになっていないため、最終的に帳じりがどうなるかは依然として不明な状態でございます。
 三位一体改革に伴う今回の財源措置は、過渡的なものとはいえ、国に配分権がある移転財源であることに変わりはなく、都の財政運営の自主性、自立性を高めるものとはなっておりません。また、国に強く求めておりました、都に対する不合理な財源調整措置が、今回何ら是正されていないということは大変遺憾であります。
 都は今後とも、真の地方主権の確立に向けた地方税財政制度の実現に向けまして、都議会のご支援もいただきながら、国に対する働きかけを強化していく必要があると考えております。

○遠藤委員 我々も今後、あらゆる機会をとらえて、党本部及び政府に申し入れを行ってまいります。
 さらに、今後の三位一体の改革では、税源移譲は東京だけが得をするという誤った先入観に基づいた東京ひとり勝ち論が問題であります。地方同士が足を引っ張り合っていては、真の改革はおぼつきません。また、東京ひとり勝ち論を明確にしておかないと、最終的に、都のみが地方団体の中で孤立し、不当な扱いを受けるのではないかと私は強く危惧をしております。東京ひとり勝ち論への明確な反論と、これを世に問う取り組みをお伺いいたします。

○前川知事本部長 いわゆる東京ひとり勝ち論につきましては、私どもは二重の意味で間違っていると考えております。
 第一に、この議論は、今進められております現行の税財政制度を前提とした数字合わせの税源移譲を、自治体間の勝ち負けという観点から興味本位で取り上げたものにすぎないわけであります。本来、地方分権改革の趣旨は、日本全体の利益を図る見地から、国と地方の税源配分を抜本的に見直し、すべての自治体の財政基盤を確立することにあるはずであります。
 第二に、本来、財政力とは、自治体の財政需要に照らして論じられるべきものでありまして、ご承知のとおり、東京では膨大な財政需要に見合う税源配分が実現されていないわけであります。
 いずれにせよ、こうした根本的な問題を置き去りにして、地方分権改革を東京対地方という構図に矮小化することを許してはならないと考えております。
 都は今後、国と地方の役割分担や地方税財政制度のあり方など、地方自治のあるべき姿を明らかにし、広く全国自治体や国民に示し、都議会のご協力もいただきながら国を動かしていきたいと考えております。

○遠藤委員 いずれにいたしましても、十五年度予算の財源不足額二千四百九十七億円が、十六年度予算では千七百五十一億円にまで圧縮されたのは大きな成果でありますが、なおも臨時的財源対策を余儀なくされております。
 二期目の石原都政においても、財政再建が重要な課題でありますが、石原知事のリーダーシップをもってすれば、再建は必ずなし遂げられるはずであります。改めて、知事の財政再建に向けた決意をお伺いいたします。

○石原知事 四年前に就任しましたときに、都の財政状況というのは、まさに土俵を割る寸前、瀕死の状況でありました。着実にその後、回復の道を歩んではきたと思いますが、十六年度予算でもなお臨時的な財源対策に頼らざるを得ませんでした。
 都税収入の先行きはまだ不透明でありまして、今後も巨額の財源不足が見込まれますが、内部努力や施策の見直しを徹底して、限られた財源を重点的、効果的に配分していくつもりでおります。
 三位一体の改革においては、基幹税である所得税、消費税の移譲を初め、真の地方の自立を実現する地方税財政制度の確立を国に強く迫っていくつもりでございます。
 東京の再生を可能とする、強固で弾力的な財政体質の確立に向けまして、全庁の創意工夫を結集し、不退転の決意を持って財政再建を進めていくつもりでございます。

○遠藤委員 次に、ITシステムの経費関連についてお伺いをいたします。
 平成十二年三月の予算特別委員会で、我が党の近藤議員の質問に答えて、石原知事がインターネット接続を約束されたのがきっかけとなり、都庁における改革の取り組みが始まりました。この間の電子都庁の成果は、おくれにおくれた都庁における集中的なIT投資により実現したものであり、今後も引き続き積極的に進めていただきたいと思います。
 その一方、汎用機を中心とした業務システム経費については、これまでも見直しを行っているようですが、まだまだ圧縮できると思います。厳しい都財政の中にあって、費用対効果を明確にし、引き続き見直していくことが必要と思いますが、都の考え方をお聞きいたします。

○赤星総務局長 都ではこれまで、都民サービスの向上、都政の簡素効率化を目指しまして、電子申請や電子決定など、電子都庁を推進してまいりました。
 ご指摘の汎用機を中心といたしました既存の業務システムにつきましては、ダウンサイジングや経営的視点を重視いたしました戦略的なアウトソーシングなどによりまして、一層の見直しを行い、経費削減に努めていくことが必要でございます。
 そのため、平成十六年度から、IT推進室に経費削減チームを設置いたしまして、外部の専門家も活用しながら、システムの内容、運用経費などを精査、検証し、徹底した経費削減に取り組んでまいります。

○遠藤委員 次に、新銀行設立についてお伺いいたします。
 まず、先ごろ、新銀行の設立について、全国銀行協会は意見書を発表し、反対の意向を示しました。
 ここで、私は、これまでの地方公共団体が設立した金融機関を調べてみました。
 最初に設立したころの時代背景は、大正九年が第一次世界大戦の戦後恐慌、大正十二年に関東大震災、昭和二年三月には金融恐慌が発生しております。
 大正末期、大阪市議会は、市民生活の安定のためには確固とした基盤を持つ金融機関の設立が必要という観点から、市営銀行設立について研究を開始し、同時に大阪市社会部でも、公営金融機関の創設の研究を開始いたしました。
 大阪市議会では、内務省に対し、市営貯蓄銀行の設立を強く要請しましたが、内務省は、法を改正してまでも大阪市の銀行経営を認めなかったため、昭和二年十一月十一日、結果的に、大阪市の発意により、社会事業と市民生活の安定という二つの役目をあわせ持つ市営貯蓄銀行として、産業組合法に基づき大阪市昭和信用組合が設立されました。これが現在の大阪市信用金庫であります。
 また、大正十年、熊本市は周辺の町村を合併し、大熊本市を形成し、市営電車や上下水道など、都市インフラの建設を開始いたしました。大正十二年、熊本市議会は、都市インフラの建設資金を手当てするための事業資金吸収機関として、また、市民の貯蓄涵養のための庶民金融機関として、信用組合の設立を全会一致で決議をいたしました。
 大正十二年八月二十九日、当時の高橋守雄市長を中心に、財政会の有志が発起人となり、産業組合法に基づき熊本市信用組合が設立されました。これが現在の熊本信用金庫であります。
 また、戦後復興期の混乱と資金難の中、熊本県当局の指導のもと、地元中小企業の有志を中心に、中小企業等協同組合法に基づき、現在の熊本第一信用金庫が設立をされました。
 さて、昭和二十六年設立された東京都民銀行のことについては、多くの方もご存じのとおりでございます。
 戦後の不況の中、中小企業は金融難の時代でありました。そこで、都内の中小企業の金融難を緩和するために、当時の東京都知事の諮問機関として東京都地方銀行対策審議会が設立され、中小企業を主な対象とする地方銀行、東京都民銀行を都内に設置する旨の答申がなされました。同様に、懇談会を設置し、銀行の設立検討を進めていた東京商工会議所からも、東京都民銀行の設立に協力し、支援を行う建議がなされるなど、東京都、経済界、都内の産業界など各方面から多くの期待と支援を受けて、中小企業と個人のための銀行としてスタートしたものであります。
 このように、それぞれの時代背景の中、地方自治体は、不況の中で苦しむ中小企業や個人を救済するため、公営の金融機関の設立に全力を投入してきております。
 このたびの新銀行構想に対し、抜本的な見直しを求めた全国銀行協会は、社会的使命を忘れ、生き残りのための保身しか考えていないのではないかといえます。
 意見書は、都議会に対しても十分な検討を求めておりますが、一方、竹中金融大臣は、金融システムの強化に向けて都と建設的な議論をしていきたいと述べており、新銀行の設立を前向きに受けとめておりますが、全銀協の意見書について、知事はどう受けとめておられるか、お尋ねいたします。

○石原知事 全銀協の主張を私も読みましたが、向こうは向こうの立場があるでしょう。しかし、これは決して限られたパイのとり合いの問題ではないと思います。
 今、非常にありがたいご指摘のように、過去に、国がどうにも動かない、大きな力が動かないときに、地方は地方の責任で、金融機関の創設を含めていろいろ苦労してきたわけでありまして、一番あおりを食う中小企業を救済するためにも、いろんな形で腐心をしたわけであります。
 現在、金融情勢は一定の落ちつきを見せてはおりますが、大手銀行や地域金融機関の破綻が依然として相次ぐなど、火種は一向に消えておりません。国内銀行においては、全額保護されている普通預金が二百兆円を超え、定期預金とほぼ同額の水準となっております。
 全銀協の意見は、既存の銀行が本来の役割を果たしていないにもかかわらず、都の取り組みを否定してかかるものでありまして、到底、都民に限らず国民の、私は理解を得られるものではないと思います。
 来年の四月にはペイオフが全面的に解禁をされまして、本会議で申し上げましたが、都だけが掌握している限られたものでありますけれども、メガバンクの実態もひそかに考慮しますと、やはりこういうものにすべてを依頼するわけにいかないというのが大きな動機でありました。
 来年のペイオフを控えて、都が出資するあくまで民間銀行である新銀行東京が、他の金融機関では担い得ない荷物を、提携をする信用金庫などの地域金融機関と力を合わせ、東京の、ひいては日本のためになっていくことを期待しております。
 これを否定してかかる全銀協を構成しているメガバンクというものは、果たして一年、二年たって大きく好ましく変わるかというと、私は、その期待は非常に難しいんじゃないかと思っております。
 ゆえにも、私は、困っている立場の方々のためにも、あるいは新しい金融のライフラインをつくるためにも、この新銀行東京が必要だと信じております。

○遠藤委員 民が十分な機能を果たし得ないときこそ官が乗り出すのは当然のことであります。それが行政の使命でもあると思っております。
 我々都議会自民党は、真に、新銀行が民業を圧迫せず、都民、中小企業のためになるのであれば、知事の新しい挑戦をバックアップしていきたいと思っております。
 その前に、民業圧迫の懸念について、苦しむ中小企業に対する支援が十分にできるかどうかについてただしていきたいと思います。
 金融秩序回復に向けて、メガバンクでは不良債権の半減が迫られ、ようやく一定の見通しが立ちつつありますが、地方銀行や信用金庫などの地域金融機関は、健全化に向けた本格的な取り組みが進んでおりません。全国を見渡しても、地域金融機関の再編や破綻が続発し、地域経済社会と深いかかわりを持ちながら、ともに疲弊しており、我が国の経済再生への胎動はまだ聞こえてまいりません。
 国は、地域金融機関の強化を念頭に、公的資金を注入する新たな仕組みをつくろうとしておりますが、金融機関のリスク負担能力は低下し、困窮した中小企業に救いの手が伸ばせないのは、東京も同様であります。
 そこで伺いますが、新銀行の設立が、まだ健全化への途上にある地域金融機関と競合し、その経営を圧迫するのではないかと懸念する声もありますが、これらの金融機関といかなる連携をとっていくのか、お伺いをいたします。

○石原知事 ご懸念は全くないと思います。新銀行の既存の地域金融機関との提携はもう必至のことでありまして、そもそもその新銀行の創設は、我が国の経済基盤を根底で支えている中小企業へ生きた資金を円滑に供給する実効性のある仕組みをつくることが、抜本的、第一の目的でありまして、そのためには、地域経済と密接なかかわりを持つ信用金庫あるいは信組などの地域金融機関と緊密に連携することは、もう不可欠であります。
 現在、信用金庫を初めとする地域金融機関は、健全化に向けた取り組みの途上にありまして、そのリスク負担の能力には限界があります。このため、不良債権がなく、低コスト体質を強みとする新銀行によって、信用金庫などの体力を適切に補完しながら中小企業を支援することが、地域経済の活性化に向けて必要なことであると思います。
 新銀行と信用金庫など地域金融機関とは、もう包括的提携契約のもとに、おのおのの強みと持ち味を生かしながら、シンジケート融資や保証などの窓口機能も含め、業務のさまざまな側面で緊密に連携していくことが、東京の疲弊した中小企業を活性化させる最も効果的な方策であると考えております。
 かつて、柳沢君が金融庁の長官をしておりましたときに、NHKが取材をしておりまして、東京の東側の県境間近な地域で、板橋でしたか、どこでありましたか、非常に優秀な可能性を持っている、本当に二、三人でやっている有限会社に欠陥品が出だしたんで、機械を新しく購入する。せいぜい資本が二百万ぐらいの小さな会社ですから、その機械のローンを払う瞬間に債務超過になる。で、そういうところには一切貸すなという命令を金融庁は出しました。それをいかにかいくぐって、この可能性のある小さな会社に、日ごろのつき合いもあり、それを評価して、信用組合の支店長と一、二人の店員さんが、いかに金融庁の目をごまかしながらも融資をするかという苦労をしているリポートでありましたけれども、私、非常にそれを印象的に、感銘を受けて眺めました。
 こういった企業だけではなしに、それを助けている金融機関をもやっぱり新銀行東京が助けていかなくてはならないと思っております。

○遠藤委員 信用金庫とは同じ顧客を同じ条件でとり合うことなく、信用金庫も対応しづらく、しかもメガバンクが手を出さないリスクの高い資金ニーズに対応していくことが、新銀行の目指す方向であると思います。
 新銀行では、シンジケート型融資を一つの目玉としておりますが、具体的に、どのような場合がこの融資の対象となるのか、また信用金庫との検討は始まっているのか、お伺いいたします。

○大塚出納長 シンジケート型融資は、提携金融機関と新銀行とがリスクを分け合いながら、中小企業に対して協調して融資を行うものでありまして、新銀行業務の中で最も重要なビジネスモデルの一つであります。その実施に当たりましては、地域の中小企業の資金ニーズを熟知している信用金庫等と密接に連携をしていくことが極めて重要と考えております。
 この融資は、リスク許容限度を超えるため信用金庫が追加融資にちゅうちょをしているケース、営業キャッシュフローはプラスながら債務超過に陥っている企業への融資など、信用金庫等のリスク負担軽減の要請にこたえるケース、個々の信用金庫等では対応できない比較的大口で返済期間の長いケースなどを想定しております。
 こうした案件を含め、現在、東京都信用金庫協会等から、シンジケート型融資のさまざまなケースについての具体的な提案をいただいております。実施を前提とした事務手続や提携手法などについて、もう既に実務レベルでの検討や調整を行っております。

○遠藤委員 多くの中小企業が待ち望む新銀行について、今回出されたマスタープランが本当に困窮した中小企業に手を差し伸べる計画になっているのかということを、具体的に検証したいと思います。
 まず、新銀行のターゲットを、融資利率の側面から伺います。
 通常、危ない会社に対する融資ほど金利が高くなると思いますが、既存銀行の融資利率の状況はどうなっているのか、お伺いいたします。

○大塚出納長 平成十五年十二月の日銀の統計によりますと、市中銀行の融資額四百八兆円のうち約九割の三百五十七兆円が、リスクの低い融資利率三%以下となっております。
 融資のほとんどが三%以下という実態は、リスクのある中小企業等に対しまして、既存銀行はほとんど融資をしていないということをあらわしています。

○遠藤委員 それでは、銀行に信用リスクが高いと判断され融資対象とならない中小企業は、どこから融資を調達しているのか、そして、それはどのくらいの金利なのか、お伺いいたします。

○大塚出納長 経営状況が良好とはいえず銀行から融資を受けられない中小企業のうち、かなりの事業者が商工ローンなどの事業者向け貸金業者からの借り入れを利用しているという実態があります。残高は、全国で約十八兆円、東京都では十兆円を超える規模と推定をされております。
 この商工ローン等の金利は、多くがいわゆる出資法の上限に近い二五から二九%でございます。

○遠藤委員 金利で三%を超えると、融資する金融機関がなくなり、一気に二五%を超える金利の融資に頼らざるを得ないということなのですか。これでは、中小企業の経営は圧迫され、経営不振から脱却しようとして頑張ろうとしても、息をつくのがやっと、逆に疲弊に追い込まれてしまうのではないでしょうか。
 では、新銀行で計画している中小企業向け融資で、利率三%以上のリスクの高い企業への融資額はどれくらいで、金利の中心はどこにあるのか、お伺いいたします。

○大塚出納長 新銀行では、ほかの金融機関が融資を行わない比較的リスクが高い企業に対しても、キャッシュフローなどの財務状況によりまして、無担保でスピーディーに融資を実施してまいります。
 第三期目までの中小企業向け融資額一兆二千億円のうち、約九割の一兆八百億円を、リスクの高い中小企業へ融資をしていく計画でありまして、その金利は、三%から六%台が中心となります。

○遠藤委員 三%から六%という金利水準はそれほど高い水準ではなく、困窮した中小企業にとって、地獄に仏とはこのことではないでしょうか。既存の金融機関が対象としてこなかった中小企業をターゲットにして、リスクに見合ったぎりぎりの金利で、迅速かつ簡便に融資していこうということがわかりました。
 融資対象がリスクの高い中小企業を含むことについて、さらに具体的に伺います。
 既存の金融機関は、債務超過に陥っている企業は融資対象としてこなかったと思いますが、こういった企業で業績を好転させるというのは非常に難しいと思いますが、どうなのか。また、新銀行では、債務超過の中小企業にまで融資対象とするのか、お伺いいたします。

○大塚出納長 二〇〇三年の中小企業白書によりますと、中小企業二十五万社を対象とした調査で、債務超過で経常赤字の企業のうち、三年後に業績が好転した割合が四四%、売上高を一〇%以上伸ばした企業は四分の一以上もありまして、相当数の企業が、中小企業融資が減少傾向にあるなどの厳しい環境下でも、努力をして業績を向上させております。
 新銀行は、ポートフォリオ融資などの三つの商品を計画しておりますが、いずれも、債務超過の企業でありましても、キャッシュフローや返済計画の見通しなどを重視して、融資の対象といたします。

○遠藤委員 債務超過の企業まで融資対象として、ニーズの高いところへ踏み込んでいこうという姿勢はわかりますが、一方で、融資対象の質が懸念されます。適正なリスクの範囲におさめながら融資を行っていく必要があると考えますが、どのように管理をしていくのか、お伺いをいたします。

○大塚出納長 新銀行の中小企業向け融資は、同じく中小企業を顧客主体といたします信用金庫あるいは第二地銀の約三倍のデフォルト率を想定しております。さらに、この想定を超えて発生するリスクに備えて、貸倒引当率は、想定の二倍近い四・二%を計上し、経営の健全性を確保することとしております。
 リスク管理の具体的な流れにつきまして、貸出債権を一つの固まりとしてマスコントロールするポートフォリオ型融資を例にご説明申し上げますと、まず、延滞が発生をした場合には、速やかにその発生理由を確認し、延滞解消の可能性を見きわめながら債権の回収に当たるとともに、リアルタイムの状況を反映させながらポートフォリオの運営に当たります。
 なお、当初想定をいたしましたデフォルト率を実績が上回りそうな場合には、必要に応じて予想デフォルト率を見直し、個々の融資のコントロールを行います。
 期末におきましては、不良債権について返済条件の緩和を行ったり、経営改善、再建の可能性を十分に追求するなど、新銀行として最大限の努力を行った上で、企業再生ファンドやサービサーに売却あるいは直接償却を実施いたします。
 こうしてオフバランス化をすることによりまして、新銀行として、適切なリスク負担を継続的に行うことができる健全な財務体質を維持してまいります。

○遠藤委員 さらに具体的に、融資の審査についてお伺いいたします。
 新銀行は、二百人の体制で、一日九十件、一店舗当たり九件の新規の中小企業向け融資を実行し、しかも三日以内にスピーディーに審査を行うとしております。今、例に挙げて伺ったポートフォリオ型融資についても、融資先の信用力の把握をするためには、自動審査だけでなく、フェース・ツー・フェースの審査は欠くことができないと思いますが、申し込みから融資までの具体的なプロセスの中で、この体制できちんとした審査が可能なのか、お伺いいたします。

○大塚出納長 新銀行の主力商品の一つであるポートフォリオ型融資におきましては、決算書の財務指標をもとに行う自動審査、これが根っこになりますけれども、それとあわせて、企業の経営方針や経営者の意欲などの定性的な要素も、審査プロセスにおける重要な用件であります。
 具体的には、融資は、コールセンターやインターネットのほか、信用金庫やオリックスなどの提携先による取り次ぎ、さらには商工会議所や業界団体からの紹介などのルートも通じて申し込まれますけれども、各店舗で受け付ける際に、原則として経営者との面談を行い、会社の業況や資金使途、返済原資や経営方針等について把握をいたしますとともに、経営者の識見や意欲、能力を判断してまいります。
 その上で、決算数値をスコアリングモデルに入力をいたしまして、そのアウトプットとともに、融資先の実態に関する実地調査等を行い、提携企業や諸団体からの定性的な企業情報も活用して、融資の可否を判定いたします。
 審査に当たりましては、ITの活用により可能な限り事務の集中化を図ることといたしまして、申し込みから融資回答まで、新規取引でも三営業日以内を目途に迅速な処理を実現してまいります。
 また、面談や融資可否にかかわる最終的な判断は行員が行いますけれども、実地調査等につきましては、金融機関での審査経験が豊富な契約社員等を活用することによりまして、十分対応が可能と考えております。

○遠藤委員 融資の審査体制も大丈夫ということですが、一つの銀行を開業するためには、ハード、ソフトの両面から多面的な準備が必要であります。
 中でも、円滑な開業に向けてのかぎは、高いリスク管理と、審査能力を持った人材確保と、銀行業務の中枢を支えるシステム構築ではないかと思います。
 まず、人材面について、中小企業の経営実態を見きわめることができる要員等をどうやって確保していくのか、また、めどは立っているのか、お伺いいたします。

○大塚出納長 新銀行に必要な人材を計画的に確保することは、その円滑な開業に向けて極めて大切であると認識をしております。
 現在、内外を含め、百名余の体制で鋭意準備作業を進めております。これに加え、既に、執行役を含め、新銀行業務の中核を担う経営幹部候補等二十名程度の直接的な手当ては終わりました。
 さらに、基幹行員について、現在、金融機関出身のスペシャリストの登録者を多数抱える人材紹介会社八社、国内最大手を含む再就職支援会社三社に対して、求める人材の職務経験や能力等の水準を提示した上で、人材リストの提供を受けて、鋭意人選を進めております。また、これに加え、パートナーである信用金庫から、中小企業融資の経験が豊富な職員を一定数採用することを考えております。
 一般行員等につきましては、本年四月以降、一般公募による募集を開始し、採用後は順次十分なトレーニングを行う計画であります。
 都議会でのご審議をいただいた上で、正式に採用の手続に入ることになります。現在はその準備段階にあります。
 今後も、新銀行の開業に必要な執行役、基幹行員、一般行員等の要員を、時期を失することなく確実に確保してまいります。

○遠藤委員 新銀行の開業に向けてのもう一つのかぎは、システムの構築であります。コンピューターシステムは、融資や回収、決済など、銀行業務のほとんどを支える中枢ですが、短い準備期間の中で、システム障害などを起こさぬよう、確実な信頼性の高いシステムを構築することが必要であります。
 現在、システム開発はどこまで進んでいて、今後どのようなスケジュールで準備を進めていくのか、お伺いいたします。

○大塚出納長 システムにつきましては、専門的知識と実務経験豊富な執行役を配置することとしておりますけれども、都議会でのご審議をいただいた上で、この執行役を中心に、十分な体制とスケジュール管理のもと、大手システム開発事業者にシステム構築を委託することを予定しております。
 現在、新銀行の業務内容をシステムに反映する設計などの準備作業を鋭意行っております。設計内容が確定次第、国内数十行でシステム開発の実績を上げてきた技術者等により、強力な開発体制を構築するとともに、来年度早々から本格的なプログラミングテスト等を開始いたします。
 翌年の一月以降には、システムを含めた銀行業務全体の運用を確実なものにするため、全行挙げて総合リハーサルを実施する計画であります。
 銀行システムの開発に当たりましては、稼働期のテストやリハーサル等、システムの検証が最も重要であると認識をしております。新銀行においては、こうした取り組みを確実に実施しながら、開業に向けて万全の体制を構築してまいります。

○遠藤委員 体制までを含めていろいろ伺ってまいりましたが、新銀行は、中小企業融資という政策目的と、銀行としての健全性確保という、ともすれば両立の難しい二つの目的を達成しながら、経営のかじ取りを行っていかなければなりません。
 これまで金融機能が不全に陥ってきた過程を振り返れば、メガバンクのみならず地域金融機関においても、経営陣のガバナンスの巧拙が銀行の浮き沈みを決定してきた例は枚挙にいとまがありません。
 中小企業への資金を循環させる目的で銀行を設立する都は、新銀行の経営に対し、いかなる視点から経営監視を行っていくのか、お伺いいたします。

○石原知事 新銀行は、非常に弱い立場にあります中小企業への金融というものが題目の一つでありますけれども、しかし、決して慈善事業ではございません。都もかなり高額の出資をするわけでありますから、その限りにおいて、いわば間接的な株主ともいえる都民に対する責任もあるわけであります。
 いずれにしろ、困窮している中小企業に資金供給を行うという政策目的の実現を図りながら、民間銀行としての健全性を確保していくことがもう絶対に必要でありまして、他の金融機関では満たされていない領域を中心として業務を行うため、相対的にリスクが高いことは否めません。
 リスクを過剰にとった場合には、当然健全性が損なわれるおそれもございまして、財務内容を重視する姿勢に重きを置き過ぎると政策目標が達成されないという、二律背反の要因は当然自覚しております。
 ただ、新銀行の経営の最大の課題は、両極にある二つの目的の間で、最適な均衡点、調和点を見出すということでありますして、都は、このような観点から、経営の大枠を監視することになります。
 新銀行の経営を担う執行役は、既に企業経営や地域金融などさまざまな分野で実績を発揮されてきた人材をよりすぐっておりますが、代表を初め各執行役とも、新銀行の設立目的や経営課題については十分認識しておりますして、現在、そのためのハード、ソフトの準備に専念しております。
 私としては、開業後の営利、運営管理を含めて、きちっとやってくれると確信をしております。また、そう期待もしております。

○遠藤委員 いずれにしろ、この新銀行の設立の目的を達成するためには、大株主として重大な責任があることを都は肝に銘じておいてほしいと思います。
 次に、中小企業金融についてお伺いいたします。時間が大分迫っておりますので、今後の答弁は少し簡潔にお願いいたします。
 さきの本会議代表質問では、我が党の大西幹事長が、ファンドの創設に向けた知事の意気込み等を伺い、知事からは大変力強い答弁をいただいたところであります。また、制度融資の新しい姿についても、産業労働局長から明らかにしていただきました。ぜひ推進をしていただきたい。
 そこでまず、制度融資についてですが、本年度、都は、中小企業を取り巻く金融環境が大変厳しいとの認識を踏まえ、制度融資の目標額を過去最大の一兆七千五百億円とされました。また昨年末、制度融資利用強化キャンペーンを実施するなど、中小企業への融資供給促進に積極的に取り組んできました。
 ところで、制度融資の昨年十二月末実績は、前年同期比一五%減の一兆一千七百九十二億円余、都の制度融資を含む保証つき融資全体は、六%減の一兆二千九百九十二億円と聞いております。こうした制度融資の実績について、昨今の金融情勢を踏まえ、都はどのように認識をされておるのか、お伺いいたします。

○有手産業労働局長 制度融資の十五年度実績は、前年を下回っております。その理由といたしましては、中小企業の旺盛な借りかえ需要に対しまして、昨年度創設された都及び国の借りかえ制度が十分に利用され、借りかえ需要が一段落したこと、また、資金繰りが改善している中小企業の多くは、財務体質強化のため、これまでの過剰な借入金を返済する意向が強いことなどが挙げられます。
 このような金融情勢にありますけれども、中小企業への資金供給を積極的に展開するため、今般、制度融資をわかりやすく使いやすい仕組みとなるよう抜本的に改善するとともに、来年度も、融資目標額を今年度と同様、過去最大の一兆七千五百億円として、積極的に対応してまいります。

○遠藤委員 次に、ファンドについてであります。
 日本は、直接金融がアメリカと比べ大きく立ちおくれており、都がみずから出資しファンドを設立することは大変意義のあることであります。重要なのは、こうした新たな仕組みをいかに東京の再生のために機能させていくかということであります。
 そこで、企業に対するファンドの周知徹底、利用促進に向け、どのように取り組もうとしておられるのか、お伺いいたします。

○有手産業労働局長 ファンドの創設を、ベンチャー企業の育成や中小企業の再生、さらには東京の再生へとつなげていくためには、ご指摘のとおり、多くの企業の参加が得られますように、ファンドの存在を周知し、利用を促進することが大切でございます。
 そのため、金融専門誌を初めとするマスコミや、都の広報媒体を最大限に活用するとともに、東京商工会議所など関係団体を通じ、中小企業に積極的に周知してまいります。
 また、ファンドによる投資先は、金融機関の協力を得て選定するケースも多いと想定されますので、金融機関に対する周知徹底もあわせて行ってまいります。

○遠藤委員 次に、中小企業ニューマーケット開拓支援事業についてお尋ねいたします。
 東京には、すぐれた発想力と技術力を持つ中小企業が集積しております。しかし、厳しい経済情勢が続く中、高い技術力、製品開発力を有しながらも、経営力が脆弱なために新たな販路が開拓できない中小企業が数多く見受けられます。
 そのような状況の中で、都は、企業のOBを活用し、年間百件の契約目標を設定して、中小企業の販路開拓に取り組んでいるとのことですが、これまでの取り組みと成功例についてお聞かせいただきたい。

○有手産業労働局長 中小企業のすぐれた製品の市場開拓支援のために、企業のOB六十人をビジネスナビゲーターとして活用いたしまして、企業訪問を重ね、目標を達成すべく強力に取り組んでまいりました。
 都が助成金や産学公連携事業等で支援を行った企業など、販路開拓を希望した約五百の企業の製品につきまして、開発企業と売り込み先企業合わせて一万四千回を超える訪問を実施いたしました。その結果、二月末現在で五十八製品、百件の成約がございました。
 主な成功例でございますけれども、販路に苦慮していた住宅用免震装置につきまして、住宅建設会社七社と特許の使用許諾契約を締結いたしました。
 また、コンピューターの搬送用こん包材では、年間で一億円以上の取引が見込まれる大型契約などがこの中に含まれております。

○遠藤委員 都は従来から、新製品・新技術開拓助成事業や産学公連携事業、ベンチャー技術大賞等を通して、多くのものづくり企業を支援しております。
 しかし、依然として厳しい我が国の経済状況を牽引してもらうためにも、十六年度はさらに支援を行い、あわせて多くの中小企業の販路拡大につながるよう、新たな取り組みも必要だと思いますけれども、ご見解をお伺いします。

○有手産業労働局長 中小企業のすぐれた製品につきましては、区市町村や商工会議所等関係機関の協力を得て、広く発掘してまいります。
 また、販路開拓の取り組みの強化につきましても、一つとしまして、ナビゲーターによる対面の売り込みに加えまして、新たに、すぐれた製品を全国にホームページ上でPRしてまいります。
 また、貿易商社や日本貿易振興機構との連携により、海外市場を開拓してまいります。
 十五年度に成約に至らなかった製品につきましても、技術やデザインの改良など、売れる商品づくりヘの助言を行い、販路開拓を引き続き支援してまいります。
 そうした積極的な取り組みを進めていく中で、十六年度も、前年度を上回る成果を目指して頑張ってまいります。

○遠藤委員 次に、雇用就業対策についてお伺いいたします。
 東京の雇用情勢は、一部に改善の兆しが見られるものの、依然として厳しいことには変わりありません。このような状況のもと、知事が提唱する、しごとセンターに大いに期待を寄せるところであります。
 ところで、しごとセンターにおいては、年間就職一万件を目指すということですが、この目標はかなり高いハードルではないかと思います。ぜひともこの水準を達成してもらいたいのですが、どのような方法によって実現を図ろうとしているのか、お聞きいたします。

○有手産業労働局長 しごとセンターにおきましては、民間事業者が持つ豊富なノウハウと情報を最大限に活用して、求職者と求人企業の双方が満足できる質の高い就職あっせんを目指してまいります。
 また、求職者が自発的に行う就職活動につきましても、そのノウハウ、心構えや適職探しなどの面で実践的なアドバイスを行い、早期の再就職を強力に支援してまいります。
 さらに、併設する若者向けハローワークによる紹介などもあわせて実施いたします。
 このように、しごとセンターにおきましては、就職あっせん、自己就職の支援などさまざまな取り組みを複合的に進めていくことにより、利用者全体で一年間一万件の就職を目指してまいりたいと考えております。

○遠藤委員 都は、人材ビジネス会社の活用や、個々の求職者に対するきめ細かな支援などを、しごとセンターの特色として挙げております。しごとセンターでこのようなサービスを提供することの意義と、求職者にとっての効果について、お伺いいたします。

○有手産業労働局長 一般的に、中小企業などの退職者の再就職活動は、本人の自助努力にゆだねられているのが現状でございまして、民間のキャリアカウンセリングなどのサービスを受けることができるのは、大企業のごく一部の社員だけであります。
 しごとセンターにおいては、幅広い都民に対し、質の高い民間の再就職支援サービスを提供することを予定しておりまして、国の施策と相まって、仕事につくための選択肢をふやし、雇用就業を推進する点で意義が大きいと考えております。
 また、求職者が、キャリアカウンセリングなどのきめ細かいサービスを受けることによる主な効果といたしましては、第一に、不安を解消し、前向きに就職活動ができるようになること、第二に、自分自身の希望、職業能力、適性、経験などを改めて把握し、価値観や将来ビジョンなども視野に入れたライフプランを考え、再就職の方向を探ることができること、第三に、就職活動のための具体的なアドバイスや、独自の求人情報に裏打ちされた就職のあっせんなどが受けられることなどが挙げられます。

○遠藤委員 中高年の求職者が、その能力や個性を生かして再就職できるような努力をぜひしていただきたい。これは多くの都民の要望であり、早い時期での開設が期待されているところであります。
 ここで、しごとセンターを早期に開設し、都が雇用就業対策に取り組んでいくべきと考えておりますが、知事の考え方をお聞かせいただきたいと思います。

○石原知事 東京における失業者の要因は、日本全体の経済の低迷もありますが、どうも眺めますとミスマッチが多いような気がいたします。
 失業に苦しむ中高年や、意欲を持ちながら職につけない若者などの苦悩は、本当に切実な問題だと思います。
 しかし、どうも今までの、国の職安というのでしょうか、ああいう方法では、非常に機械的できめが粗い、対応が不十分だという気がいたしますので、東京の旺盛な経済活力を雇用に結びつけるためには、しごとセンターを設立しまして、あちこち回らずに済む、できればワンストップの機能を設置して、今までにない雇用就業システムをつくりたいと思っております。
 都民の期待にこたえ、七月中には業務を全面的に開始できるよう、準備を加速させます。

○遠藤委員 次に、都施行で実施されている周辺区部における土地区画整理事業の促進について、お伺いいたします。
 都心の大手町を起点とする都市計画道路放射第一六号線は、荒川にかかる清砂大橋が完成し、明治通りから環状七号線までの間がこの三月に開通の見通しとなり、周辺道路の交通渋滞の緩和が大いに期待されているところであります。
 ここの区間の道路整備には、都が現在施行中の新砂地区など土地区画整理事業が大きく貢献していると聞いておりますが、具体的にお伺いいたします。

○小峰東京都技監 区部の骨格幹線道路でございます放射一六号線の明治通りから環七通りまでの間につきましては、延長四・六キロのうち三キロを、都及び組合施行の土地区画整理事業により整備してまいりました。
 都施行の新砂地区では、幅員三十メートル、延長九百メートルの道路用地を確保するとともに、業務、商業、居住機能に加えて、福祉、医療を含む新しい複合市街地を目指した整備を進めてきております。

○遠藤委員 現在、汐留地区など都心部のほかに、北区、足立区、江戸川区など、厳しい財政環境のもと、周辺区部の土地区画整理事業は、事業予定がおくれ、地権者から早期生活再建に向けて一層の事業促進が求められています。
 我が党は、一昨年の都議会第四回定例会代表質問でも、この問題を取り上げてきましたが、その後の取り組みを含め、周辺区部における各地域の特性を踏まえた都施行の事業が展開されておりますけれども、こうした周辺区部における土地区画整理事業の意義と、今後の区画整理事業の推進に向けた考え方についてお尋ねいたします。

○小峰東京都技監 現在、都が、北区、足立区、江戸川区で実施している周辺区部の土地区画整理事業は、主要な幹線道路を初め、駅前広場や公園などの都市基盤施設と宅地とを一体的に整備し、交通の円滑化、防災性の向上、居住環境の改善、地域の活性化などを図るものでございます。
 事業を円滑に、かつ計画的に実施していくには、コスト縮減はもとより、事業財源の確保を図る必要があります。このため、都施行の土地区画整理事業と、密集住宅市街地整備促進事業との初めての合併施行導入に向け、国や地元区等と検討を行っているところでございます。
 今後、新たな国費導入など、財源に工夫を凝らすとともに、事業費の確保に努め、早期完了を目指してまいります。

○遠藤委員 次に、道路の整備と沿道まちづくりの推進についてお伺いします。
 ことしの四月には、新しく都市整備局が発足いたします。道路とその沿道のまちを一体的にとらえ整備していくことは、まさにこの新しい組織が真髄を発揮するテーマであると考えます。この観点から幾つか質問いたします。
 幹線道路は、円滑な交通機能を確保するとともに、地域の防災性を高め、都民生活を支える重要な役割を担っております。しかし、幹線道路が整備されたとしても、沿道は、必ずしも地域にふさわしい街並みや土地利用が進んでいない状祝が見受けられます。
 そこでまず、沿道での適切な土地利用の実現とともに、地権者の残地での建てかえなど、事業促進の面からも、道路整備にあわせて用途地域を早期に見直すことが肝要ですが、見直しの現状とあわせて、今後どう取り組んでいくのか、お伺いいたします。

○勝田都市計画局長 今回の用途地域の見直しにおきましては、都市計画道路の完成などに伴う見直しを、放射六号線など合計七十四路線の沿道、約二百二十六ヘクタールにおいて行う予定としております。
 この見直しに当たりましては、整備途中の早い段階であっても、道路の整備状況に応じて、新たな容積率を適用可能とする、誘導容積型の地区計画の決定とあわせた見直しを、調布保谷線沿道で行うこととしております。
 今後は、地元自治体及び道路事業者を交えた検討会を立ち上げるなどいたしまして、道路整備にあわせた沿道の用途地域の見直しを適時適切に行ってまいります。

○遠藤委員 また、昨年十一月には、平成十六年度東京都重点事業として、幹線道路の沿道まちづくりが位置づけられ、期待をしております。既に整備された幹線道路であっても、沿道の建築活動を誘導し、沿道空間を改善していくことは重要であると考えますが、今後の取り組みについてお伺いいたします。

○勝田都市計画局長 幹線道路の沿道は、まちの顔ともなる空間でございますが、ご指摘のようなケースもあり、ゆとりやにぎわいを創出することが重要でございます。
 このため、沿道の状況に照らして、歩道空間を補完するセットバックや商業の立地などを沿道建築物の建てかえ時に誘導できるよう、容積緩和をインセンティブとした仕組みづくりなどに取り組んでまいります。
 また、昨年制定をいたしました、東京のしゃれた街並みづくり推進条例の街並み景観づくり制度につきましても、幹線道路の沿道で積極的に活用してまいります。

○遠藤委員 この事業は、民間開発を誘発し、地域に根差した道路づくりを進める点で評価できることから、積極的に取り組むべきであります。
 平成十六年度に、豊島区東池袋、墨田区鐘ヶ淵の二地区を対象としているが、選定した理由についてお尋ねいたします。

○小峰東京都技監 東池袋と鐘ヶ淵の二地区は、木造住宅が密集した地域であり、昨年九月に改定された防災都市づくり推進計画において、早期に防災性の向上を図る必要がある重点整備地域に指定されました。
 特に、地区内を貫く都市計画道路が未整備なため、避難路の早期確保が強く求められております。
 また、住民が、まちの将来像を検討する協議会などを設置し、都や区と積極的に話し合いを進めております。
 こうした地元の機運を生かし、安全で快適な街並みの形成が大いに期待できる地区であることから、選定いたしました。

○遠藤委員 次に、道路整備における用地買収の促進についてお伺いいたします。
 日々渋滞に悩まされ、交通事故の不安にさらされている都民からは、早く道路を整備してほしいという切実な声が上がっております。こうした都民の声にこたえるために、交通のネックとなっている未整備箇所に集中的に事業費を投入し、骨格幹線道路を整備していくことが急務であります。私は、都としても、新たな用地買収の手法を取り入れていく時期に来ていると考えます。
 こうした中、建設局では、平成十六年度から用地買収の一部を委託すると聞いております。まず、この内容と、具体的にどのような効果があるのか、お伺いいたします。

○小峰東京都技監 用地取得の委託は、整備が急がれる骨格幹線道路の用地取得を重点的、集中的に行い、道路の早期完成を目指すものでございます。
 平成十六年度は、環状五の一号線など三路線四カ所、五十二億円の用地取得を、現東京都駐車場公社、四月からは東京都道路整備保全公社に名称を変更いたしますが、に委託する予定でございます。
 委託する効果といたしましては、用地取得面積の七割を公社が三年間集中的に取得し、残る用地は、都が土地収用法の活用等により取得して、これまで道路完成に要していた期間を、全体で二年間短縮することを見込んでおります。
 また、人件費等の事務費についても、三年間で約二億円を縮減できると考えております。

○遠藤委員 道路計画がありながら事業化が進んでいない地域の方々は、将来の生活設計が立てられず、不安を抱えております。こうした状況を一刻も早く解消するよう、ぜひひとつ頑張っていただきたいと思います。
 次に、臨海副都心開発についてお伺いします。
 最近の東京都心部の再開発は目覚ましいものがあります。六本木や汐留、品川といった地区においては、多くの企業が新しいオフィスを構え、こうしたいわば臨海副都心のライバルが続々と登場しております。臨海副都心が今後ますます発展していくために、みずからが企業などの誘致をさらに積み重ねていくことが必要であります。
 そこで、何よりも心配なのが、開発事業の基礎となる収支見通しです。財政基盤強化プランが十四年に発表され、早くも二年を経過いたしました。この見直しの際、大幅な支出経費を削減し、収支均衡を図ったわけでありますが、有力なライバルが出現する状況の中で、本当に大丈夫なのでしょうか。
 そこで、十五年度の企業誘致の成果と収支見通しについてお伺いいたします。

○成田港湾局長 ご指摘のとおり、六本木や汐留など都心部におきまして大規模な再開発事業が進められており、臨海副都心にとっても少なからず影響があるものと認識しております。
 こうした厳しい状況の中でも、十五年度は、有明北地区の学校、青海I区画のスタジオなど三件の新たな事業者が決定し、土地売買契約の締結により約六百七十億円の収入を得たところでございます。
 しかし、今後の支出は、起債の償還を中心に約八千四百億円が見込まれ、これに見合う収入の確保が必要でございます。引き続き、総力を挙げて事業者誘致を着実に展開していけば、平成三十一年度までに必ず収支均衡できるとの見通しを持っております。

○遠藤委員 確かに財政的には当面の見通しがついたのでしょう。
 しかし、競争が激化する中、臨海副都心の起債の大量償還期を迎えます。これからが本当の正念場であります。
 特に、今、手つかずにいる青海地区北側の開発をどう進めていくかが、今後の臨海副都心の開発を占う大きなポイントであると思っております。平成九年に都は、この地区を都民提案街区といたしました。都民からいろいろな提案がありました。私は、この地区の魅力を引き出し、他の再開発エリアではまねのできない開発をしていくことが、臨海副都心開発をさらに加速させるものと思います。
 そこで、都として、この青海地区北側の開発に着手すべき時期にあると思いますが、いかがでしょうか、お伺いいたします。

○成田港湾局長 りんかい線の東京テレポート駅に隣接した青海の北側地区は、高いポテンシャリティーを有する土地でございます。平成九年には、この一部の都民提案街区につきまして、都民からのアイデアを募り、未来都市や文化の発信基地といった数多くの夢を描いた作品をいただきました。
 現在、台場地区は開発がほぼ終了しております。また、青海の南側地区では、科学未来館や大学村が既にオープンし、新たなテレビスタジオの進出が決定するなど、開発が進んでおります。
 両地区に挟まれました青海の北側のこの地区では、開発の機運が高まっております。臨海副都心のさらなる発展のために、後世の人たちが納得するような総合的、複合的な視野で、具体的な検討に入るべき時期にあると認識しております。

○遠藤委員 都は、昨年、観光まちづくり検討会を立ち上げましたが、この青海地区北側の開発については、どのような検討がなされ、提言があったのか、お伺いいたします。

○成田港湾局長 臨海地区観光まちづくり検討会では、これまでの開発状況や来訪者ニーズといった現実的な視点に立ちまして、臨海副都心の機能、役割などを分析し、広大な臨海副都心の将来を見据え、各地区のエリアコンセプトについて検討いたしました。その成果が先ごろ基本構想として取りまとめられました。
 その中では、青海の北側地区につきましては、芸術性の高いイベントの開催や、人々が娯楽などで憩い、楽しめるまちの創出といった、エンターテインメントとアミューズメントを中心とした観光まちづくりを進めることが望ましいとされております。

○遠藤委員 都は、ほかの再開発事業との競争に負けないためにも、もっと民間の活力を活用し、それをリードしていく開発に取り組んでいくべきであります。今好調でも、それに甘んじることなく、さらに次の第一歩を着実に踏み出していただきたいと思います。二十一世紀、日本の顔となる未来都市建設を目指して、一層の工夫と努力を望むところです。
 そこで、今後、都として、どのような誘致促進策を打ち出していくのか、お伺いをいたします。

○成田港湾局長 今後の誘致促進策についてでございますが、二十一世紀の日本を代表する未来志向型都市を目指し、臨海副都心の魅力やポテンシャリティー、そして昨今の企業等の集積状況を積極的にPRするとともに、千客万来の世界都市となるべく、観光という視点も加えまして、さらなる事業者誘致に向けた活動を引き続き展開してまいります。
 具体的には、広告やプロムナード利用の規制緩和によるにぎわいの創出、またこの地域は、緊急整備地域に指定されておりますので、都市再生認定事業による優遇措置の活用などにより、進出のインセンティブ効果を高めてまいりたいと思います。
 青海の北側地区は、今後の臨海副都心開発の成否を左右する重要なかぎを握っておりまして、都民からの提案の趣旨や観光まちづくり検討会の提言などを踏まえ、都市再生のリーディングエリアとなるよう、開発の準備を着実に進めてまいります。

○遠藤委員 次に、多摩地域の都市と環境の再生について伺います。
 日本をリードする首都における都市再生は極めて重要でありますが、都市再生施策のほとんどが都心部に目が向けられており、多摩地域への関心は薄いといわざるを得ません。
 そうした意味で、多摩地域は、起伏のある地形や豊かな自然、先端産業や大学の集積、緑や農地がまだ多く残る豊かな生活環境など、多様性を持つその存在価値は極めて高いものがあります。多摩地域の発展こそ、首都再生における重要な役割を果たすことになります。二十六市三町一村それぞれ連携し、個性を生かし、特徴ある地域づくりを主体的に推進することが必要であります。
 そこで、地域性を特徴づける基本となる土地利用についてでありますが、先般発表された土地利用現況調査結果では、多摩地域の土地利用はどのような傾向にあるのか、お伺いをいたします。

○勝田都市計画局長 平成十四年度の土地利用現況調査によりますと、多摩都市部では、宅地、道路等の市街地が五七%、農用地が八%、水面、森林等の自然地が三五%でございます。
 この二十年間の動向を見ますと、市街地が八%、面積にして約六千六百ヘクタール増加しておりまして、市街化が大いに進展しております。一方、農用地、自然地はそれぞれ四%減少しております。山村部については、自然地が九七%を占めまして、市街地が二%、農用地が一%ということでございまして、豊かな自然環境が保たれております。

○遠藤委員 現在、東京都では、都市計画の大もととなる都市計画区域マスタープランを策定中でありますが、この中で、多摩地域それぞれのエリアごとの特性をどのように生かして都市づくりを進めていこうとしているのか、お尋ねいたします。

○勝田都市計画局長 都市計画区域マスタープランにおいては、地域ごとの特性を生かした都市づくりの実現を目指しております。
 例えば、多摩東部エリアでは、都心へのアクセス性を生かした良好な住宅市街地の形成、また、多摩中央部エリアでは、核都市などの広域連携の推進とともに、大学や先端技術産業の集積を生かした拠点育成などによる自立都市の形成、さらに、豊かな緑が残された多摩西部エリアでは、自然資源を活用した潤いのあるまちづくりなどを進めることとしております。

○遠藤委員 ところで、多摩には、先ほど触れたように、広大な豊かな森林があります。この緑は、水源の涵養、生物の多様性の保全、二酸化炭素の吸収など、環境を保全する機能の面で重要な役割を果たしております。
 温暖化対策の国際的な枠組みである京都議定書では、我が国のCO2排出削減目標は六%とされていますが、そのうち三・九%を森林の吸収が担うとされております。このことは、緑が人類の生存になくてはならないという事実を改めて私たちの前に突きつけられたものであります。したがって、多摩の貴重な緑を保全する取り組みは、ディーゼル車対策にも匹敵する極めて重要なことだと考えております。
 そこで、多摩を特徴づける豊かな自然に対する認識と、保全のための取り組みについてお尋ねいたします。

○小池環境局長 多摩には、広大な森林、里山を形づくる谷戸、崖線からわく湧水など、豊かな自然があります。これらの自然は、都民に潤いや安らぎを提供するとともに、生物の多様性やCO2の吸収など、多くの公益的機能を持ち、都民全体の貴重な財産となっています。
 このような多摩の自然を保全するため、都は、森林の再生を目指した五十年間にわたる計画的な間伐の実施や、緑豊かな丘陵地等の保全地域の指定と公有地化の推進、貴重な湧水の保全などに取り組んでおります。
 今後、市街化が進展する中で、緑の保全がますます重要な課題になってきておりますが、これらの施策に加えまして、市民緑地制度の活用や地元自治体との連携の強化、開発行為に対する指導の徹底など、さまざまな方法を駆使して、自然環境の保全に一層努めてまいります。

○遠藤委員 長年苦労して緑を守り続けたものの、先ほど述べた農地についても、相続税等の影響で、多摩の農地については、平成十四年度までの五年間で、七・四%の六百二十一ヘクタールが減少しております。
 さらに国は、基礎控除の引き下げを検討されていると聞いておりますが、これが行われると、都市に残された緑の木は一層深刻なものになってまいります。今こそ東京の緑、森林をしっかりと守ることが私たち現役の世代の責務であり、その障害となっている相続税を初めとする税財政制度について、緑の保全と創出を図る観点から、改革を強く国に求めることが必要であると考えますが、所見をお伺いします。

○小池環境局長 ご指摘のとおり、相続を契機に樹林地や農地が売却され、多摩の貴重な緑が失われている実態がございます。
 このため、都はこれまで、将来にわたり保全すべき緑地につきまして、相続税の納税猶予制度の創設や、相続税の物納制度を活用した緑地保全の仕組みづくりを国へ提案要求してまいりました。昨年開催されました八都県市首脳会議におきましても、首都圏の総意として、この点を強く国へ求めております。
 今後とも、他の自治体と連携し、相続税制度の改革と、緑の保全と創出に係る財政措置の拡充を国に一層強く求めてまいります。

○遠藤委員 この冬、東京では、最低気温が氷点下になる日が一日もなく、過ごしやすい面がある一方、異常気象が現実なものとして実感される毎日でありました。
 CO2など温室効果ガスの濃度の増加が原因ですが、さらに東京では、地表面の被覆化やエネルギー消費による人工排熱の増加などにより、熱汚染ともいうべきヒートアイランド現象が進んでおります。
 ヒートアイランド現象は、大都市特有の現象であり、熱中症など都民への健康被害を防ぐためにも、東京都がみずからの問題として取り上げ、取り組みを進めることが必要であると考えますが、所見をお伺いいたします。

○小池環境局長 ヒートアイランド現象は、地球温暖化の影響と相まちまして、熱帯夜、熱中症等により、都民の健康に直接的な影響を及ぼしており、熱汚染という新たな公害ともいうべきものととらえております。
 その対策といたしましては、緑をふやす、熱を出さないという視点から、屋上緑化や人工排熱の抑制など、個々の建築物での対策に加えまして、風の道や緑の軸の形成などを含めました環境に配慮した都市づくりが不可欠であると考えております。
 このため、都市づくり全体を視野に入れまして、都として、総合的な取り組みを推進するため、昨年、ヒートアイランド対策取り組み方針を関係局が連携して策定いたしまして、現在鋭意事業を進めております。
 今後とも、この方針に基づき、全庁を挙げて計画的に取り組んでまいります。

○遠藤委員 ヒートアイランド対策は、都民や民間業者の役割も重要であると考えます。
 そこで、民間事業者におけるヒートアイランド対策を促すために、都として、今後どのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。

○小池環境局長 ヒートアイランド対策を本格的なものとするためには、都市づくりのあらゆる場面におきまして、都民や民間事業者と一体となった取り組みが欠かせないと考えております。そのためには、地域ごとの熱環境の状況や対策に関する技術情報等、わかりやすく提供するなど、民間事業者の取り組みを促すような環境づくりが必要だと考えております。
 そこで、都は、地域の気温分布や、緑や人工排熱の状況等の環境情報を集約しました熱環境マップを策定いたしますとともに、屋上緑化、遮熱性塗装などの対策技術情報の提供や、地域特性に応じた最適な対策手法を示したガイドラインを、平成十六年度中を目途に策定することとしております。
 このガイドラインに基づきまして、民間事業者がヒートアイランド対策に積極的に取り組むように誘導してまいります。

○遠藤委員 次に、都の公立学校の学級編制についてお伺いいたします。
 現在、小学校では、不登校、いじめ、基礎学力の低下などが大きな課題となっており、学級規模を三十人以下にすべきであるという議論があります。
 少人数学級について、文部科学省調査に対し、都教育委員会が該当なしと回答したことを、ある会派は批判しておりますが、今回の代表質問で横山教育長は明確に答弁をしております。都は、三十人学級ではなく、習熟度別指導を充実するとしております。
 少人数指導とは、二学級を三グループに分けるなどして、きめ細かな指導を行うものです。私自身、中学時代、習熟度別クラスで英語、数学等学びました。とても励みになった経験がございます。
 これに対し、昨今、三十人学級の効果が大きいという意見が一部にありますが、本当にそういえるのか、また、都教育委員会の学級編制に関する基本的な考えについてお伺いをいたします。

○横山教育長 学級というのは、学校の教育活動が継続的、日常的に行える基礎的な集団でございまして、児童生徒が集団の中で互いに切磋琢磨をして、社会的に適用能力をはぐくむ、こういう生活集団としての機能と、学校における児童生徒の毎日の学習の場として、基礎、基本の定着を図る学習集団としての機能はございますが、都教委としましては、生活集団としての教育効果を考えた場合、学級には一定の規模が必要でございまして、学級編制基準は、国が標準法で定める四十人とすることが妥当と考えております。
 一方、学習集団としましては、その教科等の特性に応じた多様な集団を編成ができるよう、少人数による習熟度別指導などの拡充に努めているところでございます。
 なお、その少人数学級編制につきまして、国の調査報告においても、定説的な見解が見出せないところでございますが、ご指摘のように、三十人学級編制について教育的効果があるという定まった評価はないと考えております。

○遠藤委員 今の答弁で、特に三十人学級の方が効果があるといったような評価があるわけではないということと、都の学級編制についての考えもよくわかりました。三十人学級にすると、仮に生徒数が三十一人の場合、十五人と十六人のクラスができることになります。こうした小規模な学級が社会性や競争心を養うために適切な規模であるとはいえません。
 やはり、先ほどの都教育委員会の基本的な考え方にあるように、基礎、基本の定着の観点からも、習熟度別などの少人数指導が有効であると考えますが、都教育委員会が推進する少人数指導の実施状況とそのメリットについてお伺いをいたします。
   〔発言する者あり〕

○宮崎委員長 お静かに願います。

○横山教育長 教員を新たに配置して行います少人数指導の実施状況は、平成十五年度におきましては、小学校で七三%、中学校では八六%に上っております。
 この少人数指導のメリットとしましては、まず第一に、習熟の程度や興味、関心の違いなど、個人差に応じた学習集団を編成して指導を行いますことから、一人一人にとってわかる授業が展開されまして、児童生徒が学習への理解を深めたり、意欲を高めたりすることができること、第二に、複数の教員が協力をしまして、学習集団の編成や指導計画の立案、教材作成等を行いますことから、相互に研修し合う機会がふえまして、教員としての指導力を高めることができますこと、第三に、学級や学年の枠を超えた指導体制が整えられることから、学習のおくれがちな児童生徒への指導や不登校などの問題を担任が一人で抱え込まず、組織的に対応できるようになること、こういったことが挙げられます。

○遠藤委員 児童生徒の学力の伸長には、少人数指導が有効なのは、今の答弁にあったとおりであります。ただ、それは、指導する教員の資質、能力いかんでもあります。多くの熱心な教員は、学校の実情や児童生徒の実態、教員の体制に応じ、さまざまな指導形態を工夫し、懸命に努力をされております。
 私は、去年の秋、都立府中朝日養護学校の文化祭に行きました。生徒さんの劇でありますけれども、シンデレラ姫、ソーラン節を見て、そのすばらしさと、指導に当たった先生の努力に感激をいたしました。本当に頭の下がる思いでありました。
 しかし、一部には--この一部というのは、朝日学校ではありません、子どもたちの教育への責任を果たさず、適切な指導を行うことができない教員がいることも事実であります。子どもたちがわかる授業ができない、学習進度、例えば、一学期間の勉強のスケジュール、そういうものが計画的に管理できない教員、また、児童生徒に感情的、高圧的に接し、逆に適切な指導ができない指導力不足教員が少なからずいることは、厳然たる事実であります。
 このことは、児童生徒に直接影響が及ぶという点で喫緊の課題であります。校長の中にも、十分な指導もせず、異動によって問題を先送りする、いわゆるたらい回しを行っているケースがあると、そういう声も一部にはあります。
 昨年、都教育委員会は、教員の異動要綱を改正し、教員の異動は校長の人事構想に基づいて行うとしておりますが、これは、安易に指導上問題のある教員を異動させてもいいということではないと考えますが、見解をお伺いいたします。

○横山教育長 今回の教員の異動要綱は、学校経営責任者でございます校長の人事権を強化する、このために改正をしたわけでございますが、人材育成と能力開発の視点に立ちまして、学校経営方針を踏まえた校長の人事構想に基づいて人事異動を行うこととしております。
 教員の異動におきまして、校長の人事構想が基本となりますことから、小中学校にあっては区市町村教育委員会、都立学校にあっては各校長からヒアリングを行いまして、その内容を確認いたしております。その中で、指導上課題のある教員につきましては、ご指摘のように、安易に異動によって問題を先送りすることがあってはならないと考えております。
 こうした教員に対しましては、現任校において、校長や区市町村教育委員会が継続的に指導を行うことが基本でございますが、それでもなお改善が見られない場合は、指導力不足等教員として都教委が決定をしまして、指導力ステップアップ研修を通して、資質、能力の向上を図るべきものと考えております。

○遠藤委員 今答弁があった指導力ステップアップ研修の中で、長期講習受講者は、いわば本人の資質、能力が欠けていることから、学級担任や教科担任を離れ、一年間研修に専念している者です。現状では、これらの人にも、教職調整額として給料月額の四%が他の教員と全く変わらなく支給されていると聞いておりますけれども、到底理解ができないことであります。
 このことについては、昨年、予算特別委員会においても、我が党が問題点として指摘をしております。早急に見直しをするべきですが、所見をお伺いいたします。

○横山教育長 教職調整額といいますのは、すべての教員に支給することが法律上義務づけられている、こういった制約がございますが、お話しのように、一定の期間を超えて本来の職務を離れる教員に対して、他の教員と同率で支給することは大きな問題があると考えております。
 こうした観点から、ご指摘の指導力不足等教員を対象とします指導力ステップアップ研修長期コース受講者への支給につきましては、早期に見直すよう努めてまいります。

○遠藤委員 指導力不足教員に関して聞きましたが、都教育委員会は、こうした教員については、ぜひとも毅然とした態度で対応していただきたいと思います。
 次に、青少年の健全育成についてお伺いします。
 近年、青少年問題はかつてないほど深刻さを増しております。先日、私は、都内の各地でスポーツを通して活躍をされているおやじの会と、青少年健全育成について、治安担当の竹花副知事とお話をする機会がありました。今こそおやじの出番であると思います。
 我が国の将来を担う青少年の健全育成は、国家百年の計ともいうべきものであり、我々大人が子どもたちに残すことができる最大、最良の財産であります。
 そこで、今回、規制強化に踏み切った条例改正の考え方について、まず、治安担当竹花副知事にお伺いいたします。

○竹花副知事 ご指摘のおやじの会につきましては、委員のご示唆もあり、都は、全都のネットワークづくりを支援しておりますが、それとともに、子どもの健全育成のためには、不健全図書のはんらん、いわゆるブルセラ、生セラなどの有害環境の改善を一刻も早く進める必要があります。
 このため、都青少年問題協議会において、緊急かつ集中的なご議論をいただき、これを踏まえ、実効性の観点を加味しながら、新たな規制を組み込んで、今回の条例改正案を策定したものであります。

○遠藤委員 青少年を健全に育成するためには、規制を図るとのことですが、規制が有効に機能するには、事業者の協力が不可欠であります。
 私は、以前、PTA活動を通して、悪書追放運動の経験がありますが、事業者の協力と理解を得ることが大変難しかったことを思い出します。
 今後、事業者の指導と理解をどのように得るのか、お伺いいたします。

○三宅生活文化局長 事業者の協力についてでございますが、条例改正の検討の際にも、出版業界、図書販売業界など、事業者団体の意見を聞いてまいりましたし、条例改正後は、事業者団体等を通じて説明会を開催するとともに、都の広報だけではなくて、区市町村、業界団体等の広報も活用して周知を図り、事業者の理解と協力を求めてまいります。
 また、自主規制として、表示図書とするように勧告する制度がございますし、青少年健全育成協力員による調査なども活用して、事業者に青少年健全育成への協力を働きかけてまいります。

○遠藤委員 焦眉の急である環境の悪化に対処するため、必要な規制強化を行うとのことですが、今回の条例改正では、不健全図書の包装やアダルトビデオの自動販売機の規制強化、また、いわゆる生セラやスカウトの規制など、全国初の措置も多いとのことです。
 青少年の健全育成の分野では、過去にも、児童買春の規制のように、条例による規制が国の規制を先導してきました。知事も、先日の記者会見で、他県も見習ってほしいという趣旨を述べられております。
 よくもあしくも我が国の社会変化の最先端をいく東京から、今回の条例改正を契機に、東京発青少年健全育成を進められる知事の決意をお伺いいたします。

○石原知事 子どもを取り巻く環境は非常に悪化しておりまして、何とかしないと、子どもたちの将来、つまり我々の社会の全体の将来が危機にさらされると思います。
 今回、多くの全国初の改善策を導入いたしました。不健全図書の包装、あるいは少女を風俗店に勧誘するスカウトの禁止、あるいは非常に変質的な嗜好を持つ大人の嗜好をかなえ得るための、例えば少女の着用済みの下着を売ったりする云々の行為の禁止、そういったものを行っておりますが、いずれにしろ、子どもが安心して育つ環境をつくり直していくことは大人の責任であると思います。
 加えて、遠藤理事もご存じでしょうけれども、最近のパソコンでインターネットで提供されている非常に悪質で刺激的な情報というものは、これはやっぱり、別途、国全体の問題として考えませんと、この程度の条例改正をしても、まさにざるで水をすくうみたいなことにしかならないと思います。
 いずれにしろ、今回条例を改正して、これから伸びていくべき子どもたちの人生の条件を、我々の責任、大人の責任で整えていきたいと思っております。

○遠藤委員 最後に、三宅島の復興についてお伺いをいたします。
 島民が今日まで長期化する避難生活に耐えてこられたのも、帰島への強い思いと、都を初めとした関係機関の支援に支えられてきたためであります。都は、今後も引き続き支援策を継続し、島民を支えていく必要があると考えますが、所見をお伺いいたします。

○石原知事 三宅島の火山ガスの放出状態は、依然として終息しませんで、今後も同程度のガスの放出が続くと予想されております。一部の専門家の所見では、今まで十七、八年ごとに噴火してきたあの火山体質が、かなり変わってきたんじゃないかという推測もありまして、いずれにしろ非常に厄介な状況が続いておりますが、平成十二年の全島避難以来、都は、道路やライフラインの確保など復旧作業を実施するとともに、避難島民に対する各種の支援に努めてまいりました。
 ですから、家屋を除けば、島民の方が帰島されて、基本的な生活状況というのは整って、ライフラインに関しては整っていると思いますが、長期にわたる避難生活において、都及び関係機関の支援が島民の大きな支えになってきたとも思います。
 今後とも、一日も早い帰島を願う島民のために、引き続き島の復旧と島民への支援に力を尽くしてまいります。

○遠藤委員 三宅島げんき農場、ゆめ農園は、島民にとって交流や情報交換の大事な場であるとともに、特産品などの商品開発の場ともなっております。しかし、これについて、国の補助がなくなり、その継続が危ぶまれていると聞いております。
 げんき農場、ゆめ農園はどうなるのか、また帰島後の産業復興に向けた基本的な取り組み状況をお伺いいたします。

○有手産業労働局長 げんき農場、ゆめ農園は、来年度から三宅村が主体となって事業を行うこととなっておりまして、関係各局が連携してこれを支援してまいります。
 また、三宅村の新しい産業の育成を図るため、火山灰を活用したガラス製品や染色製品など、試験研究機関等での技術開発、支援を引き続き行ってまいります。
 さらに、三宅島の漁業資源復活の一環として、漁場の資源調査、アカハタの種苗生産、試験放流を行うなど、帰島後の速やかな産業復興に向けて積極的に取り組んでまいります。

○遠藤委員 ありがとうございました。時間の制約の中で、大変、石原知事を初めご答弁をいただいた皆様方には失礼な部分があったかもしれませんけれども、お許しをいただきたいと思います。
 なお、この青少年の健全育成条例は、先ほども時間の関係で割愛した部分がありますけれども、いずれにしても、日本をしょって立つ子どもの育成は大人の責任であります、大人の責任。そして、特に子どもを持つ親の責任、これらをあらゆる場所で、ぜひひとつ指導していただきたい。心の東京革命を基本として、これからの教育により一層ご努力を願って、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

○宮崎委員長 以上をもちまして、遠藤衛理事の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後二時五十八分休憩

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