東京都議会予算特別委員会速記録第三号

○和田副委員長 藤井一委員の発言を許します。
   〔和田副委員長退席、土持副委員長着席〕

○藤井委員 まず初めに、新生児の聴覚検査について伺います。
 現在、新生児の千人のうち一人から二人が聴覚障害があるというふうにいわれております。全国で年間百二十万、都内では約十万人の新生児が生まれるわけですが、その中で、こういった聴覚障害児が誕生しているわけでございます。この障害については、早期に発見、そして早期にケアをすれば、普通のお子さんのように聴覚が聞こえるように、あるいは言葉の発達がややおくれても、日常生活には支障がないわけですが、発見がおくれればおくれるほど、この言語がおくれるというふうにいわれております。
 そのために、早期の発見、早期のケアが大事でありますけれども、残念ながら、現在、この新生児の聴覚検査については三歳の健康診断で実施をされますが、その段階で発見されても、この言語の発達がおくれるというふうにいわれております。いわゆる手おくれになる。
 そこで、この聴覚検査については大変発達しておりますアメリカにおいては、聴覚検査の判定する機械が、優秀な機械が発明されておりまして、生まれたての赤ちゃんの耳にイヤホンとマイクロホンが入った端子を入れるだけで、たった十秒間で聴覚障害があるかどうかが判定できるというふうにいわれております。そのため、国は、平成十二年から、この聴覚障害のお子さんの検査をする自治体、都道府県に対して補助金を出し、試行的に実施をすることを勧めておりますが、残念ながら、現在実施をしているのは、神奈川、岡山、秋田だけでございまして、東京都はまだ実施されておりません。
 そこで、私は、昨年の第一回定例会におきまして、この新生児の聴覚検査を早く東京都も実施をするよう訴えたところでございます。これに対して東京都は、昨年五月に検討会を発足いたしまして、種々検討を重ねた結果、ことしの一月に報告がなされたというふうに聞いております。
 そこで、この報告を受けまして、都は、来年度予算にどのように反映されているのか、まずお伺いをいたします。

○今村衛生局長 検討会の報告では、都において新生児聴覚検査の普及に積極的に取り組んでいく必要はあるが、検査を受けることができなかった子どもたちへの検査体制や早期の相談・療育体制を検討する必要があるなどの課題が示され、これらを具体的に解決するため、試行的に新生児等の聴覚検査を実施すべきであるとの提案をいただきました。これを受けまして、都は、平成十四年度から新生児等聴覚検査モデル事業を実施する予定でございます。

○藤井委員 来年度、モデル事業を実施するということでございますけれども、これについては若いお母さん方が大変望んでいることでございまして、私たち公明党が、昨年、署名運動を行いましたところ、約十七万人のお母さん方の署名をいただいたところでございまして、都知事に提出したところでございます。
 また、早期発見、早期ケアをすれば、現在聾学校に通っている生徒の三割から五割が普通学校に通えるというふうにもいわれておりますので、今回、東京都の前向きな努力に対し、敬意を表したいと思います。
 そこで、ただいまありましたように、来年度実施されます新生児聴覚検査のモデル事業、どういう内容か、お伺いいたします。

○今村衛生局長 モデル事業では、都内の区市町村から二地区を選定いたしまして、三千人の新生児等に対して、聴覚検査及び保護者への助言、指導を行うとともに、従事者に対する研修や関係機関との調整、モデル事業の評価、検証のための検討会などを行うことを計画しております。

○藤井委員 二地区を選定し、モデル事業をやるということですけれども、私の地元、大田区がぜひこの事業をやりたいと手を挙げております。聞くところによりますと、もう一区手を挙げているそうでございますが、このモデル事業、対象となる地区をどのように選定するのか、お伺いしたいと思います。

○今村衛生局長 全都的な観点から、モデル事業の評価、検証を行うため、区部と多摩地区から選定する予定でございますが、選定に当たりましては、区市町村の意向や地区内の検査機器の整備状況、出生数等を考慮しながら柔軟に対応してまいりたいと考えております。

○藤井委員 知事に質問すればやっていただけるなら聞きますけれども……。(石原知事「こっちが聞きたい」と呼ぶ、笑声)
 ぜひともこういったモデル事業、大変お母さん方が安心して子どもを産み育てられる環境づくりが大事だと思います。特に、障害を持っても、こういった制度によってよりよく生きられるように東京都がしっかりと援助していただけますよう、また、すべての赤ちゃんが聴覚検査を受け、そして、早期発見と早期ケアができるよう強く要望したいと思っております。
 次に、障害者の親亡き後対策について伺います。
 東京都は、昨年、福祉改革推進プランを策定いたしまして、その中で心身障害者の緊急整備三カ年計画を発表いたしました。内容は、今後三年間で二十カ所のいわゆる障害者の入所施設をつくるという計画でございます。
 また、先月発表されましたTOKYO改革STEP2におきましては、障害者が可能な限り地域で生活できるよう、生活寮や、あるいは重度障害者グループホーム、そしてまた、体験型生活寮、こういったものを整備することによって親亡き後の不安を解消することを目指しております。
 そういった意味で、都は、今後身近な地域にこれらの障害者の入所施設を早期につくることが求められているわけでございますが、そこでお伺いいたします。
 現在、都内には、知的障害者入所更生施設が幾つあるのか。そしてまた、待機者はどうなっているのか。そのうち二十三区内の入所施設の数、そして待機者は何名か、お伺いいたします。

○前川福祉局長 今お話がありましたとおり、私どもは、障害を持つ方々を含めまして、だれもが地域の中で可能な限り自立して生活できる、こうした福祉社会を実現しようと考えているわけですが、今お話がありました入所施設の待機者の解消を図るに当たりましても、こうした観点に立って、お話の入所施設の整備を進めるとともに、あわせて地域生活の場である生活寮などの大幅な増設を進めたいと考えております。
 お尋ねの知的障害者の入所更生施設の数は、平成十三年九月現在で都内で三十五カ所、そのうち区部は四カ所でございます。また、待機者の数は平成十三年十月現在で千百七十七名、そのうち区部は六百六十五名となっております。

○藤井委員 現在、二十三区内には四カ所しか施設がないということでございました。私どもの方にも多くの方がご相談に来ておりますけれども、この障害者のいわゆる入所待機者は、親が年をとりまして、あるいは病気になって、自分で自分の子どもの面倒を見たいけれども、見れない。仕方ないから、病院や、あるいはショートステイなどの一時施設に子どもを預けて、そういった施設を転々といいますか、たらい回しにされて入所を待っているわけでございます。こういった親御さんたちにとってみれば、一日も早く自分の子どもを安心したところに入れたいという、そういう思いでいるわけでございます。
 そこで、東京都は、二十三区内で入所施設を早急に整備をするというふうに打ち出したわけでございますので、今後、この入所施設の設置を促進するために具体的にどのような対策をとるのですか、伺います。

○前川福祉局長 今お話がありましたとおり、私ども、知的障害者の入所更生施設の整備に積極的に取り組みたいと考えております。そのために、心身障害者施設緊急整備三カ年計画におきまして、用地取得費の貸付率の引き上げなどの特別措置を講じるほか、包括補助制度などを活用して、施設が区部を含め、各地域にバランスよく整備されるよう支援していくことといたしております。
 お尋ねの区部におきましても、学校跡地の有効活用であるとか、あるいは特別養護老人ホームとの併設であるとか、地域の実情に応じた取り組みが現に図られており、今後、相当数の増設を見込んでおります。

○藤井委員 第三番目に、都の計画では、現在自宅にいる障害者、あるいは施設にいる障害者でも、自分の地域で住めるようにということで、生活寮等をふやすというふうになっております。しかし、今までは施設にいた障害者の方がそういった地域で暮らしたくても、例えば生活上の習慣が身についていないとか、あるいはまた、訓練が必要だとか、そしてまた、障害者に何かあったときのサポート体制が、あるいはバックアップ体制が不十分だとかいう不安があるわけでございまして、そういったハードルを乗り越えるために都はどのように取り組もうとされているのか、お伺いいたします。

○前川福祉局長 障害を持つ方が地域で自立して生活していただくと。このためには、幾つか要件がありますが、まずご本人が日常生活の基本的な習慣や能力を身につけていただくことが必要であろうと思います。このために都は、昨年度、利用者の自立生活の訓練などを行う体験型生活寮といっておりますが、そのモデル事業を開始いたしました。平成十四年度には、民間アパートを借り上げまして、施設に入っている方の地域自立訓練を実施する事業者に対して助成を始める方針でございます。
 次に、こういったご本人の要件とあわせまして、地域生活の場である生活寮そのものについて、例えば緊急時の応援体制を確保するとか、安定した運営が行われることが必要でございます。このため、来年度からモデル事業を開始したいと考えております。

○藤井委員 こういった施設の整備については、先ほど申しましたように、障害者の親御さんたちが首を長くして待っておりますので、早急な整備を強く要望したいと思っております。
 次に、産業廃棄物対策について伺います。
 産業廃棄物は、現在、都道府県をまたがって広域的に処理をされているわけでございまして、都内から排出されます産業廃棄物は、年間約二千六百万トンというふうにいわれております。そのうち約七割が東京都外で処理をされているというふうにいわれておりますが、そのすべてが必ずしも適正に処理されているとはいえません。
 すなわち、都内から排出されました産業廃棄物が、千葉や埼玉、神奈川、あるいは青森まで不法投棄をされている実態があるわけでございます。そういった意味で、近年、こういった不法投棄が広域化、あるいは悪質化、巧妙化しているわけでございます。そのため、東京都は、こういった不法投棄に対しては、今後とも迅速かつ的確に、そしてまた、強力に指導するとともに、厳正な行政処分に取り組むべきというふうに考えるわけでございます。
 そこで、第一に、そのために不法投棄に対します新たな監視体制をしっかりと都は取り組むべきと考えますが、この点についていかがでしょうか。

○赤星環境局長 ご指摘のように、産業廃棄物は広域的に処理されまして、その一部が他県で不法投棄等の不適正処理等が行われている実態がございます。東京都は、平成十二年度に東京都の提唱により設立されました広域的な自治体二十二で設立されております産廃スクラム二十二を通じまして、近隣自治体との広域連携を図り、適正処理の確保に努めてきたところでございます。
 しかし、最近の産業廃棄物の不法投棄は、複数の業者が介在しまして、数県を経由して投棄されるなど、広域かつ悪質、巧妙化してきており、対応を困難にしてきております。
 このため、平成十四年度に産廃Gメンを設置し、広域監視体制の充実を図り、不法投棄撲滅への取り組みを強化してまいります。

○藤井委員 今、産廃Gメンの創設ということでご答弁がありました。関東近県では、こういった産廃Gメンというのはないと思いますけれども、恐らく全国でもないと思います。東京都が先駆的に取り組まれたことに対して、努力を多としたいと思っております。
 そういった意味で、今後、東京都として、具体的にこの産廃Gメンがどのような活動をするのか、教えていただきたいと思います。

○赤星環境局長 不法投棄の事案を専門に取り扱います産廃Gメンは、第一線で発生いたしました不法投棄の実行行為者から排出者に至りますルートを迅速に解明いたしまして、これを受けまして、関与者には厳正な処分、指導を行ってまいります。
 また、他自治体や警察と合同で産業廃棄物収集運搬車両の路上調査を行いますほか、処理業者の事業所への立入検査を実施するなど、未然防止に努め、不法投棄対策に重要な役割を果たしていきたいと考えております。

○藤井委員 ぜひとも頑張っていただきたいと思います。
 第三に、優良事業者の表彰についてであります。
 不法投棄によりまして、まじめに産業廃棄物処理に従事している業者の方が不法投棄をしているんじゃないかと疑われるなど、大変迷惑をしているという声が寄せられております。今後、こういった廃棄物の発生をまず抑制したり、あるいはリサイクルをしたり、そしてまた、適正な処理を進めるためには、優良な事業者に対して何らかの東京都の働きかけが必要だというふうに思います。また、こういった事業者を育成していくことが重要だと考えます。
 そのため、優良な事業者を表彰する制度をつくったらどうかと思いますが、局長、いかがでしょうか。

○赤星環境局長 産業廃棄物の適正処理や資源化を促進するためには、ご指摘のように優良事業者の育成がかなめとなります。このため、産業廃棄物の適正処理や資源化などに積極的に取り組みまして、成果を上げている事業者を表彰することは、意義のあることと考えております。
 今後、優良事業者の選定基準や表彰の方法などにつきまして、業界団体などの意見を聞きながら検討を進めてまいります。

○藤井委員 ぜひ早期に実施をしていただくよう要望したいと思っております。
 次に、中小企業対策について伺います。
 我が党の石井幹事長の代表質問にもありましたように、今、大変中小企業がご苦労されております。産業空洞化の問題等々で、非常に苦労しているのが中小企業だと思っております。
 私の地元大田区でも中小企業がたくさんございますけれども、私は地元の企業の皆さんにお会いし、そして、いろいろ話を聞いてまいりましたけれども、多かったのは、一つは、親企業が中国に進出して、そして仕事が半分以下になってしまったとか、あるいはまた、単価の切り下げ要求が激しくて、断れば仕事が来ない、そのためにやむなく赤字覚悟で仕事をせざるを得ないとか、また、熟練の技術者がどんどん高齢化して、そして工場を去っていく、その半面、若い人がなかなか中小企業に来てくれない、こういったような声がありました。また、このデフレ傾向や地価の下落、あるいは産業の空洞化によって、まともな企業でさえ今はおかしくなっている、このような声もあったわけでございます。
 そして、あるベテランの工場経営者はつくづく語っておられました。それは、六十五年間工場を経営してきたけれども、こんなに厳しいのは初めてだ、私のところは東京都のモデル工場になっているけれども、四月まで工場がもつかどうかわからない、こういったような、まさに悲痛な声を上げているわけでございます。
 そこで、何点か中小企業対策について伺います。
 まず初めに、中小企業が特許を取りやすくする、そういった支援策についてであります。
 アメリカでは簡単に特許が取れるわけですが、これに比べて日本では、特許を取るのに大変な時間と多額な費用がかかるといわれております。また、特許を取った後も毎年毎年管理費用がかかってしまって、そのために、せっかく新しい技術や、そういった特許の資格があっても特許を取らない中小企業が多いのが実態でございます。また、一方、新しい特許を取ったために仕事に困らないというような工場も多数あるわけでございます。
 そこで、東京都は、これらの中小企業の活性化、そして新たなビジネスチャンスを拡大するために、特許を取りやすくするよう国に働きかけるとともに、また、都内の中小企業者が身近なところで特許の相談ができるよう、弁理士などを配置するようにしたらどうかと考えますが、この点についていかがでしょうか。

○浪越産業労働局長 特許の取得等については、国は、手続の一部簡素化と中小企業に対する一部費用の減額の措置を講じているところでございます。今後、中小企業に対する、さらなる費用の減額措置や審査期間の短縮について国に働きかけてまいります。
 また、東京都中小企業振興公社の総合相談窓口に、弁理士、特許流通相談員を配置するとともに、希望する企業に、弁理士などの専門家を低廉な費用で派遣して特許相談に応じているほか、地域中小企業振興センター等においても随時相談を受け付けております。
 今後、特許相談についての積極的なPRを行い、発明協会や弁理士会、あるいは商工会議所などとの連携を深め、身近なところでいつでも相談が受けられるよう協力を求めてまいります。

○藤井委員 ぜひよろしくお願いいたします。
 第二に、創業支援について何点か伺います。
 東京都は、今まで、創業しようとする企業や、あるいはベンチャー企業に対して、東京都の空き庁舎などを使って創業の支援を行ってまいりました。これについて、現状はどうなっているのか、まずお伺いいたします。

○浪越産業労働局長 都の空き庁舎を利用した総合支援施設といたしましては、平成十二年度に、墨田区内の庁舎を改装して、部屋数二十二室の「ベンチャー・SUMIDA」を開設しました。平成十三年度は、千代田区内に部屋数三十室の「ベンチャー・KANDA」を、また、八王子市内には部屋数十一室の「ベンチャー・HACHIOJI」を開設したところでございます。

○藤井委員 それでは、ただいまのそういった施設の最近における申し込みの状況はどうなっていますか。

○浪越産業労働局長 平成十三年度に開設した創業支援施設の申込状況は、「ベンチャー・KANDA」が、部屋数三十室に対しまして百三十五件で約四・五倍、また、「ベンチャー・HACHIOJI」は、部屋数十一室に対して二十八件で約二・五倍の申し込みがありました。

○藤井委員 ただいまご答弁ありましたように、ベンチャー企業から要望というのはまだまだたくさんあるわけでございまして、四・五倍のこういった申し込みがあるということは、今後、より多くのこうした施設を整備していく必要があるんじゃないかというふうに考えます。しかし、すべてのそういった都の空き庁舎を使って提供するということは、財政的にも非常に困難だというふうに考えます。
 そこで、今、大変少子化なわけでございまして、そうしますと、各区において小学校の統廃合等が行われているわけです。こういった統廃合によって、あいた施設、小学校の施設をこういった創業支援施設として活用したらどうかというふうに考えるわけでございます。
 新しい事業にチャレンジする、こういった創業者のために、インキュベーター施設として小学校の空き校舎を活用したらどうかと考えますけれども、この点について東京都はどのようなお考えをお持ちでしょうか。

○浪越産業労働局長 地域の産業の活性化を図るためには、各地域ですぐれた発想を持つ意欲的な創業者が多数輩出することが重要でございまして、そのためにも、都内各地にできるだけ多くの創業を支援する施設が整備される必要があろうかと考えております。最近は、区や市においても空き校舎などを創業支援施設に活用する動きがございます。
 このため、意欲のある区市と連携して都内各地での創業を支援するため、平成十四年度から、区市が行う創業支援施設の整備に対して、国とも連携して助成を行っていくこととしております。

○藤井委員 ぜひとも、こういった支援施設の整備に取り組んでいただけるようお願いしたいと思います。
 第五番目に、物づくりの人材育成についてであります。
 先ほど申しましたように、東京というのは、大変すぐれた技術を持った中小企業がたくさんあります。私の地元大田区でも、大変すぐれた技術を持っている企業がたくさんあります。持ってきましたけど、「日本の技わ術ざは世界一」という本があります。
 この中に、日本全国の中小企業で非常に技術を持った企業が紹介されておりますが、九十一企業が紹介されているうち、何と東京都内の企業が四十五社、半分入っているわけでございます。
 その中には、例えば大田区の企業で宇宙ロケットに使われる、あの先端部分をヘラ絞りをする、コンピューターよりも熟練した技術を持ったところであるとか、あるいは国連から要望されて、地雷が埋まっているところを、地雷を調べるといいますか、赤外線センサーでもって調べれば、すぐに地雷がどこにあるかというのを発明したのも大田区の企業でございます。
 このように、すぐれた企業を今後とも育てていくための人材、そういったものを今後とも育成していかなきゃいけないと思いますけれども、都としても、若手や、あるいは中堅技能者が技術の研さんに取り組めるように、熟練技術を習得する場を提供したり、あるいは熟練技術者の社会的地位を高める対策を講ずる必要があると考えますが、この点についていかがでしょうか。

○浪越産業労働局長 都は、若手中堅技能者を含む在職者を対象といたしまして、多様な能力向上訓練を技術専門校で実施するなど、より高度な技術、技能の習得の場を提供してきております。
 さらに、今年度は、製造業で失われつつある高度熟練技能を青年技能者の方々に継承してもらうための場として、ものづくり名工塾を大田技術専門校で開設したところでございます。来年度は立川校でも開設し、その後、板橋校、江戸川校にも順次拡大することを検討してまいります。
 また、優秀技能者の表彰や現代の名工への推薦などを行ってきましたが、今後とも引き続き、熟練技能者の社会的地位の向上に努めてまいります。

○藤井委員 物づくりというのがおもしろいというふうに、若い人たちが取り組めるようにすることが大事だと思います。しかし、残念ながら、そのおもしろさを知る機会というのが学校でも家庭でも少ないわけでございまして、この機会を与えれば、興味を持つ子どもさんがふえるというふうに考えます。
 そのため、小中学校の教育課程において、東京の物づくりを体験する教科とか、あるいはそういう科目を設置したらどうかと考えますが、この点についていかがでしょうか。

○横山教育長 子どもたちが物づくりの体験を通しまして、物づくりの楽しさや大切さを理解することは、みずからを高め、よりよい生活をつくり出していく、こういうことになりますので、まさに生きる力を育成する上で重要なことでございます。
 こうしたことから、新学習指導要領におきましては、小学校の理科では、物づくりなどを通して、科学的な見方、考え方を養う、中学校の技術・家庭科では、物づくりの学習を通して、技術の果たす役割の理解を深めることなどを求めております。
 今後、こうした教科の学習を初めとしまして、総合的な学習の時間や特別活動において、児童生徒に物づくりの体験学習を通して、技術の習得や問題を解決する能力及び態度の育成を図るよう、地元の中小企業経営者等を招いた先進的な事例を紹介するなどして、区市町村教育委員会に積極的に働きかけてまいります。

○藤井委員 次に、私はデュアルシステムの導入について--ちょっと発音が悪くて済みません。このデュアルシステムとは、ドイツで行われている職業教育でございまして、生徒は企業と契約して、そして、週に三日から四日は企業の現場に行って熟練技術者から実技指導を学ぶというものでございます。また、残りの週の一日か二日は専門教育の学習を行うというのが、こういったドイツのシステムでございますけれども、この職業訓練を修了すると、職人証書というのがもらえて、就職ができるというふうにいわれております。これは、大変実践的な教育訓練ということで、物づくり基盤を支える人材を育成できる、私は新しい教育システムではないかなと思うわけでございます。
 聞くところによりますと、東京都は、今、審議会でいろいろと検討されているというふうに聞いておりますけれども、ぜひとも東京都においては、都立の工業高校において、例えば週一日か二日は企業でもって熟練技術を学ぶ、一年間修了すれば単位がもらえる、こういったような東京版デュアルシステムなどを導入したらどうかと考えますが、この点についていかがでしょうか。

○横山教育長 技術を身につけて、職業人として自立できる生徒の育成を図るという観点から、まさに働くことが学びになる、こうした新しい教育システムの構築が必要であると考えております。
 現在、都立蔵前工業高校におきまして、デュアルシステムにつきまして文部科学省の研究開発学校の指定を受けて、平成十四年度から生徒の企業への派遣を予定しておりまして、連携企業数の確保等の準備を進めているところでございます。
 一方、お話がございましたように、現在、東京都産業教育審議会におきまして、専門高校におけるデュアルシステムの導入について諮問いたしておりまして、その意義やあり方について審議を行っているところでございます。
 今後、審議会の答申を受けまして、本年秋に策定予定の、都立高校改革の新たな実施計画の中で具体化を図るよう検討してまいります。

○藤井委員 中小企業問題の最後に、知事にお伺いしたいと思います。
 日本の製造業は、すぐれた技術、技能を持つ中小企業によって支えられてきました。しかし、近年、企業の海外移転に伴う工場数の減少、技術者の高齢化、そして、若者の中小企業離れなど、物づくりの基盤が崩れつつあります。このような東京の産業基盤の空洞化に対して、知事は東京の物づくり基盤をどのように守っていくのか、お伺いいたします。

○石原知事 私、かつてアメリカを大分刺激しました「『NO』と言える日本」という本を、日本版では盛田・ソニーの創設者とつくりましたときに、二人がいみじくも、私は会社の経営者ではございませんが、一種の文明論として奇しくも一致したことは、やはり物をつくる産業というものを維持しなければ、どんな国家社会も栄えていかない。アメリカは、そういう意味で非常に衰弱してきたという指摘をしたんですけれども、日本も、また違った意味合いで同じ轍を踏みかねない状況にあると思います。
 大田区は、私の選挙区でもございましたが、すばらしい技術を持った人たちがたくさんおられて、そういう人たちの持っているクラフトというんでしょうか、マニュファクチャリングのわざを何とか維持したいと思うんですけれども、もろもろの条件がそれを阻害しているというのは否めないと思います。
 本当は、こういう物づくりの基盤をしっかりつくるのは国の仕事でありますけれども、都においても、物づくりを支える人材の育成、これもいろいろな観点はございますが、工業高校なんかへ行ってみますと、実際にわざを勉強する旋盤が本当に一つか二つしかないという貧弱な教育状況で、おっしゃるように、こういうものを補うためには、むしろ現場へ、すぐれた企業のところへ出かけていって学ぶということも、非常に肝要じゃないかと思います。あるいは、新技術や新製品の開発支援などによる競争力の強化、あるいは都がずっとやってきましたが、CLOなどによる資金調達の円滑化など、複合的に、積極的に進めていきたいと思っております。

○藤井委員 最後に、羽田空港問題についてお伺いしたいと思います。
 第一に、羽田空港の救急体制の整備についてであります。
 現在、羽田空港には年間五千万人を超える利用者があります。しかし、空港ターミナル付近には消防署がありません。そのため、緊急の事態があった場合、救急車が到着するまでに時間がかかるわけでございます。
 そこで、我が党は、昨年の本会議で空港ターミナルに救急車を早急に配置すべきだということを訴えたところでございます。いよいよサッカーワールドカップも開催が間近になってまいりました。世界から羽田空港に約五十万人の外国のお客が来るといわれておりますけれども、急病人などの救急対応として、早急に救急車を羽田空港に整備すべきと考えますが、いかがでしょうか。

○杉村消防総監 空港ターミナルビル付近への救急車の配備についてでございますが、羽田空港の沖合展開事業による空港施設の拡充に伴い、空港利用者は年々増加しております。さらに、ただいま先生お話しのとおり、五月末からは、サッカーのワールドカップも控えまして、旅客の一層の増加が見込まれます。
 このようなことから、救急要請に迅速に対応するため、ターミナルビル直近に救急車を配置することが望ましいということで、国及び関係方面と協議を進めてまいりました。このたび、その協議が調いましたので、救急隊の常駐施設の確保について、ワールドカップ開催前までに行うことといたしたいと思います。

○藤井委員 次に、新しい国際線ターミナルについて伺います。
 羽田空港には、夜の出発便や朝の到着便がほとんどありません。そのため、この時間帯を国際便で使うことによって、本格的な国際化を東京都は提案しているわけですが、しかし、現在の空港ターミナルでは扱える旅客数は限られておりますので、新しい国際線ターミナルが必要になるわけでございます。
 都は、この新しい国際線ターミナルを、羽田空港の以前のターミナルがあった位置につくるよう国に提案しておりますけれども、その理由について伺います。

○木内都市計画局長 以前ターミナルのあった場所は、施設配置に十分な面積がとれること、京急線やモノレールからのアクセス整備の可能性が高いこと、現在空地となっており、すぐにでも建設に着手できることなどから、その場所を本格的な国際線ターミナルとして、東京都として提案しているものでございます。

○藤井委員 ぜひとも国際線ターミナルの早急な整備を国に働きかけていただきたいと思います。
 羽田空港の国際化については、昨年の二月から、羽田空港から国際チャーター便が飛んでおります。また、昨年の八月には、国の都市再生本部が第二次プロジェクトを発表いたしまして、その中に、国際化を視野に入れつつ、羽田空港に四本目の滑走路をつくることを明らかにしております。また、昨年の十二月には、国土交通省が、羽田空港の再拡張は、いわゆるB滑走路平行案によるという基本的な考え方を決定したところでございます。いよいよ羽田空港が真の国際空港となる日が近いのではないかというふうに、都民並びに国民が大いに期待しているところでございます。
 そこで、知事にお伺いしたいと思いますけれども、知事は、就任以来、強いイニシアチブを持って首都圏の空港の危機に取り組んでこられました。国がやらなければ、東京から波を起こすとばかり、この羽田空港の再拡張案を国に先んじて提案いたしまして、約一年後に国を動かして、実現の方向に動き始めたわけでございます。羽田空港の国際化、そして再拡張を実現するためにも、一刻も早い事業化に向けまして、引き続き知事の強力なリーダーシップを発揮されて取り組んでいただきたいというふうに強く思うわけでございます。
 知事は、亀井前運輸大臣・政調会長を動かし、そしてまた、家族ぐるみでおつき合いをしているといわれる扇国土交通大臣も動かしながら、この問題についても今後とも引き続きしっかりと取り組んでいただきまして、羽田空港の国際化を知事の時代に実現していただくよう強く要望したいと思いますが、知事の決意とお考えをお伺いいたします。

○石原知事 国際空港の整備はもともと国の仕事でありますが、私も運輸大臣をやりまして、そのころから懸念を感じておりましたけれども、一向にらちが明きませんので、都知事の立場で発言をいたしまして、何とかめどがつきそうでございます。
 本来ならB滑走路の平行というものが理想的だったんですけれども、片方にはコンテナ船の航路があり、片方には多摩川の河口がありまして、ちょっと現実性がないと思っておりましたら、皮肉なことに、省庁の統廃合で建設省が国土交通省と一緒になりまして、例の縄張り争いで建設省の河川局は、羽田の再拡張のときにも、多摩川の海に向かって左側の河口の入り口をちょっといじることも絶対反対しておりましたが、今度は見事に変節をいたしまして、多摩川の中に橋梁式の橋げたをかけて、はみ出してもよいということになりまして、ある意味で理想的な形になったと思います。
 あとは、国がどこまで本気で、どれだけ時間を短縮してやるかの問題で、私も都知事の立場で、これからも飽かずにハッパをかけていきたいと思っております。

○藤井委員 どうもありがとうございました。(拍手)

○土持副委員長 藤井一委員の発言は終わりました。

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