東京都議会予算特別委員会速記録第三号

○星野委員長 坂口こうじ委員の発言を許します。
   〔委員長退席、和田副委員長着席〕

○坂口委員 昨日の和田宗春副委員長に続きまして、総括質疑をさせていただきます。
 最初に、知事にお伺いをしたいと思うんですけれども、日本の社会といいますのは、明治以来、独立国家としての礎を築くために、中央集権国家体制をとりまして、富国強兵、殖産興業というようなものに取り組んできた。そして戦後は、アメリカの占領軍のもとではありますが、新生憲法のもとに国富を築いてきた。その間には朝鮮戦争があったり、またベトナム戦争があったり、その特需にもあやかるというような形で高度成長社会を実現し、今日の社会を築いてきたということになるわけでございますけれども、二十一世紀の入り口に立ちまして、大変大きな転換期を迎えている。今までの中央集権的な体制、システムというものが行き詰まりを見せまして、新たな視点で、また新たな発想でこれからの地域社会づくりや国づくりや、またはアジアや世界に対していかなければならない、そのような歴史的な転換点に差しかかっていると思います。知事も何回も施政方針でそのことは述べているところでございます。
 ちょうど一世紀前になりますけれども、福沢諭吉が、去年、没後百年でございまして、ちょうどことしは百一年目を迎えております。そんな時期を迎えているわけでございますけれども、福沢諭吉は、キーワードといたしまして、独立自尊ということと、それから知事も、「国家なる幻影」の一番最後の方であったかと思いますが、引用しておられますけれども、「立国は公にあらず、私なり」というような名言を残しているわけでございますけれども、二十一世紀を迎えました今日この時点、一昨年、地方分権一括法というものが成立をしたわけでございますけれども、その意義、内容を含めましてどのような所見をお持ちか、まずお伺いをしたいと思います。

○石原知事 私が国会にいるときにあの法律ができたら、あの法律に対する意識が大分違っていたと思うんですが、たまたま知事に就任しまして、その直後にあの法律ができて、今の自分の立場を踏まえて、非常に大きな期待、強い関心であの法律というものを分析しましたが、いってみれば、仏つくって魂入れずの、ただの形骸でしかないと思います。行政というのは、やはり財政というものが背景になければ運営できるものじゃありません。その財政の財源あるいは税源というものの分与は、中長期という形で棚上げされているわけでありまして、これをもって日本に新しい地方の時代、地方の位置というものが確立されて、地方の時代が始まるとはとても思えない。そんなていたらくの法律でしかないと思います。つまり小手先といいましょうか、名目だけといいましょうか、時代の推移というものを敏感に感じながら、結局、国の役人が体裁だけつくった法律でしかない。これにいかに実を入れていくかということが、地方自治体の政治を構成する、理事者にしろ、議会にしろの責任じゃないかと思うんです。
 レーガンの場合には、やせた政府をつくろうということで非常に思い切った権限の分与をしまして、中央政府もそれで浮かび上がってきましたが、まだまだとてもそこまでは行っていない。地方分権の時代といいながら、その名称にはほど遠い内容のものでしかないと思います。

○坂口委員 仏つくって魂入らず、まさにぴったしの表現ではないかと思います。私なりに別の例えを用いるならば、産むことは産んだ、しかし子育てをしてない、養育をどうも放棄しかけている親によく似ているのではないか、そんな気もしてなりません。
 そこで、次にお聞きいたしますけれども、今回の分権によりまして、国から都、また、都から基礎自治体への権限移譲等の進捗状況はどのようになっているか、知事本部長にお伺いをしたいと思います。

○田原知事本部長 今回の分権一括法によります権限移譲につきましては、国から都道府県には、公共下水道事業計画の認可、それから保安林の指定、解除に係る事務など十三項目の事務が、それと都道府県から区市町村には、犬の登録、鑑札等の交付、身体障害児に対する補装具の交付など九項目の事務が移譲されております。
 法令によります権限移譲は、このように、数的にも内容的にもわずかな項目にとどまっております。さらに都の場合には、区市町村に既に委任をしております事務が含まれておりまして、都民にとっては、さらに地方分権の実感が伴わないものとなっていると思っております。

○坂口委員 あわせまして、現在の国と地方自治体の仕事の分担、これもいろんな委員会でやられておりますので、おさらいにすぎないわけでございますけれども、この際お聞きをしたいと思います。

○田原知事本部長 国と地方自治体の役割分担でございますけれども、国と地方の歳出規模で考えますと、四対六でございます。で、地方自治体の方が、より多くの仕事を分担しているということがいえると思います。また一方、税収の割合で見ると、六対四という逆転の状況になっております。

○坂口委員 今の答弁の中にもございますが、六割の仕事は地方自治体でやっている。しかし、その財源が最初から与えられているかというと、与えられていない。永田町、霞が関にまず召し上げられてから配分がされている。そこのところに大きな問題があるわけですね。分権といいますのは、やはり分人、分財、分物、私は分情と呼んでいるわけでございますが、人、物、金、それに情報と。知事はよく、よらしむべし、知らしむべからずの構図が今なおあるんだということを再三申しますが、まさにそのとおりだと思うんですね。そのようなものが移譲されて初めて地方分権の内実が整ってくる、そんなふうに私は考えます。
 そこで、福永副知事を先頭に、東京都の要望をもう三年間にわたって、国に、政府に対して持っていっているわけでございますけれども、税源移譲について、現状及び取り組みをよろしくお願いいたします。

○安間主税局長 地方主権を確立するためには、地方税の充実を図り、安定的な税財政基盤を確立することが不可欠である、こうした認識に立ちまして、都では、平成十一年度以降、税源移譲を国に対する提案要求の最重点事項と位置づけまして、都議会のご協力をいただきながら、消費税や所得税等の移譲を強く求めてまいりました。
 また、東京都税制調査会から税源移譲の具体的なシナリオを提言いただきまして、これを活用して国に強く提案要求するなどの取り組みを行ってまいりました。
 しかしながら、本年一月に発表されました経済財政諮問会議の「構造改革と経済財政の中期展望」においても、税源移譲という言葉は明記しているものの、今なお総論の域を出ておらず、国の壁は依然として厚いと考えております。

○坂口委員 国の壁が厚い、これをどうブレークしていくかというのが、我が都議会の、そしてまた、全地方自治体の大きなテーマではないかと思います。恐らく、この問題といいますのは、いろんな政治の問題、三分の二ぐらいは政治の課題である、今の政府が決断をすれば私はできると思っているわけでございます。都議会の中でも多くの自民党の議員の皆様方も、政権内野党だということを時々おっしゃることがございますけれども、それぐらい一致しているんですね。ですから、本当に東京をして、どう霞が関、永田町を攻めて、そして、江戸城の開城ではございませんけれども、この税源移譲をさせるか、そういうシチュエーションをどうつくれるかということではないかと思います。つまり戦略、戦術がそこには必要になってくると思うんですね。それについて論議を進めていきたいと思います。
 三年間にわたって、事務次官等ともお会いして福永副知事が一生懸命やっておられるわけでございますけれども、この問題にこれからどう取り組んでいくのか、まず都の考えをお聞きしたいと思います。

○安間主税局長 税源移譲を実現することは容易ではなく、ご指摘のとおり、さまざまな工夫が必要であると考えております。このため、都議会のご協力をいただきながら、国に対し粘り強く働きかけるとともに、引き続き東京都税制調査会を活用し、さまざまな機会をとらえて国に強くアピールしてまいります。
 また、パンフレットやインターネットを用いて、東京都税制調査会の答申内容を紹介するなど、都民に理解を深めていただけるよう努めてまいります。
 さらに、七都県市など全国自治体とも連携を強め、国に迫ってまいりたいと思います。

○坂口委員 今、戦略の一端が出てきたわけでございますけれども、三年間かかってやっているわけでございますけれども、なおかつ国民の理解というものが必ずしも十分得られていない。また、その戦線といいますか、ちょうど明治維新の際には、薩摩、長州、土佐というようなところが連携をいたしまして倒幕に向かっていったわけでございますけれども、そのような戦略がやはり必要なのではないかと思います。
 戦略の目標といいますのは、財政再建プランにもございますように、かなり明確になってきたと思います。これは神野先生などのご尽力もあり、また都税調の皆様方のご努力もありまして、どうやったらいいのか、また目標をどこに設定したらいいのかということが論議されてまいりました。
 まずは基幹的な税目ですね。いろいろ税目がありますけれども、所得税や住民税、これに着目をする。今、六九対三一ぐらいの割合でございます。これを五〇対五〇に持っていく。それから、消費税ですね。今は四対一であるわけでございますが、これも、一対一に持っていければいいわけでございますが、当面、三対二ぐらいに持っていくというだけで、平成十年度のベースで--最近では十一年度のあれも出ておりますけれども、私の頭の中には十年度のベースのものが入っております、七兆数千億円ぐらいの税源移譲が実現するんですね。これは国、地方合わせての総予算の一割以下でございます。一割以下であるわけでございますが、地方自治体に及ぼす影響は大変大なるものがあるわけでございまして、東京都には三千数百億円、区市町村には約七千億円余の税源移譲が起こります。つまり区市町村に厚く起こってくるんですね。だから町村合併はいいということは全くいうつもりはありません。区市町村も、自己決定、自己責任が全うできるような努力を、最大限の努力をすべきであると思います。そのことをおいた上でもなおかつ税源移譲というのは大変重要な課題になってくるということでございます。
 これを何とか国民の皆様方にも知っていただきまして、東京ひとり勝ちではないんだということを知っていただき、せめて納めた税金の半分ぐらいはこの首都東京で使えるような、そうしないと東京都が心筋梗塞を起こしてしまう、そういうシチュエーションであるわけでございますから、理解と協力を得ることが大変肝要ではないかと思います。
 今、インターネット上で、「世界がもし百人の村だったら」という本が大変ヒットしているようでございますけれども、東京がもし百人の村であったならばどういう状況かといいますと、所得税、住民税については、六十九人分が永田町、霞が関に行っちゃっている。東京都民が使えるのは三十一人分しかない。消費税についていうならば、八十人分が永田町、霞が関に行ってしまっておりまして、二十人分ぐらいしか首都東京で使われていない。こういうシチュエーションですね。これをわかりやすく都民にも訴えていくということが大変重要なのではないかと思います。
 そこで、税源移譲に向けまして、七都県市などとの強力な連携やPRの工夫が必要と考えますけれども、知事の所見をお伺いしたいと思います。

○石原知事 今、坂口委員がおっしゃったことは、国の連中も政治家も官僚も含めて、痛いように知っているはずなんですね。ですけど、とにかく一回握ってしまったものは絶対放さぬというのが通弊でありまして、それをどうやって崩していくかということですが、中長期といううたいがあるわけで、私、議員の経験からすれば、国会における中期というのは、どんなに短くても五年、長くて十年、長期になると二十年から、下手すると五十年を超えるわけでして、それまで待つわけにいかないわけです。
 なれば、私は、つまり違う手だてを講じて、現実認識を国に迫っていく以外にない。それはやはりこの首都というものを構成している七都県市が力を合わせて、新しい試みを税制の上でもして、それを果敢に実行していくことだと私は思います。物によっては、七都県市全部歩調がそろうもの、そろわないもの、また、入るつもりもないもの、いろいろあるでしょうけれども、現に三つか四つそういうメニューをつくりまして、今、各セクターと話をしているわけですし、また、都議会の自民党の皆さんも、そういう話を持ちかけて会合を持ってくださっているようですが、いずれにしろ、この首都圏という致命的な日本の部分の幾つかの地方の自治体というものが力を合わせて新しい試みをする、新しい税制も講じるということでないと、単独、単独の自治体がやるよりもその方がはるかに力がありますから。ましてこの首都圏というのは致命的な部分でありまして、そういう意味で、私は、その角度から国を崩していく以外にない、ただただ国に強く要請を繰り返すだけでは物は絶対動かないと思っております。

○坂口委員 七都県市というのがやっぱり中心になっていくのではないかと私も思います。(「大阪も……」と呼ぶ者あり)租税還元率等を見てもやはりそのようなことがありますね。それにも増して、今ちょっと木内理事の方からも出ましたけれども、大阪、それから愛知等、こういう首都圏において租税還元率が極めて低い。東京都の場合、二九%でございます。ですから、そういうところとも--先ほど、薩摩、長州、土佐というようなことをいいましたけれども、連合を組んでいく。それで、にしきの御旗、古いいい方になってしまいますけれども、立てながら今の政府に迫っていく。そして、小泉さんなのか、塩じいなのかわかりませんけれども、開城を迫っていくという、そういう構図をオール都庁、オール都議会でやはりつくっていかなければならないのではないか、そんなふうに私は感じますので、そのような部隊をつくるために我々も努力しますので、知事におかれましても、全力を傾注していただければと思います。
 せっかくの機会でございますから、先ほど、清原委員でしょうか、出ました相続税の問題につきましてもちょっとお聞きしたいと思います。
 相続税というのは、軽減ということが僕は一つのキーワードとしてあると思うんですが、もう一つ、私ども自治体にかかわる者からいたしますと、例えば相続税でも物納の物件がございますが、区や市がいろいろ道路を整備したり上下水道を整備したりして成熟した土地が、相続が発生した後に物納されて、これが国有財産になっちゃうんですね。その中には、もと公園だったようなところもあります。これがもし地方税としてそれぞれの区市町村で使えるならば、公園を存続させることもできますし、またそこに福祉施設をつくることもできますし、他の用途に使うこともできるわけですね。
 地方分権の時代において、このようなものについても、やはり国に対して、地方税にすべきだというような、そういう旗を立てていく必要があるのではないかと思いますが、知事のご所見をお伺いしたいと思います。
〔石原知事「ちょっとその前に主税局長の方から」と呼ぶ〕

○安間主税局長 我が国の相続税は、最高税率だけでなく、国民所得に占める比率で見ても、諸外国に比べて高くなっておりまして、社会経済が急速に変化する中で、その役割やあり方を含め、抜本的に見直すべき時期に来ております。
 とりわけ、相続税が中小事業者の円滑な事業承継や良好なまちづくりの妨げになっている状況は、早急に解消しなければならないと考えておりまして、大幅な負担軽減を国に迫ってまいります。
 相続税の地方税への移譲についてでございますが、東京都税制調査会でも具体的に提言されておりまして、地方団体間の配分など課題はいろいろございますけれども、将来的には目指すべき方向であると考えております。

○石原知事 ちょっと質問の趣旨を、私、誤解しておりましたが、相続税を地方税として構えるということは、一つの案だと思いますね。それが実現できれば、もっと物納されたような物件についてはユーティリティーが出てくるわけでありまして、国というのはいつまでも、それを抱えてしまうと放さなくて、そういう事例があちこち枚挙にいとまがありませんけれども、地方なら、そういったものを、要するに地方の特性に沿って、一〇〇%活用することができると思います。
 大変いい案だと思います。都の税調で論議していただきまして、ぶつけるときには、国にぶつけたいと思います。

○坂口委員 それでは、時間の関係もありまして、次の大きな課題の入札制度の改革に移らせていただきたいと思います。
 最近、談合、汚職など公共工事の入札・契約制度をめぐる不祥事が、残念ながら絶えません。災い転じて福となす、ピンチはチャンスという言葉もあるわけでございますけれども、ぜひこれを機会に、行政や政治、または企業の信頼回復を図っていきたいと思いますし、また、その改革を通じて財政再建に寄与できるような、そういう可能性が出てくるならば、これまた大いに努力をすべきである、そのように私は考えております。
 そこで、お聞きいたしますけれども、徳島の圓藤知事なども逮捕されるというような、大変ショッキングな事件が相次いでいるわけでございますが、知事のご所見について、率直なところをお聞きしたいと思います。

○石原知事 この談合の問題は、非常に忌まわしい経過がありまして、実は何年前ですか、国会議員からも逮捕者が出て、ゼネコンの幹部が次々に逮捕された時期がございました。
 談合がこの焦点だったんですけれども、そのときに、ある私の知己のゼネコンの社長が、あるところで会いましたら、愚痴といいましょうか、とにかく石原さん、建設省はひどいと。今までは、談合をしろしろといって、要するに、その手はずを講じてきたのは建設省自身だったと。それが時流が変わってくると、とにかく知らぬ顔をして私たちを見放して、私たちはいわれるままに談合してきたんで、いい方法とも思っていないけれども、つまり、これが日本のしきたりであるし、結局は効率がいいんだからという形で指導されてきたという愚痴をいっていましたが、私はそれは本音だと思います。そこら辺に、やっぱり政官というもののいろんな問題があるんでしょうけれども、癒着の。
 電子入札も含めて、新しい方法というのが講じられる世の中になりました。ただ、この電子入札をしても、一〇〇%談合が阻止できるかといったら、これはやっぱり抜け道があってできないと思います。
 ただそれは、今まで以上に談合の間口を狭くするということで効果があると思いますので、いろいろ手を講じて、東京からそういう悪き事例が新たに発生しないように努力をしていきたいと思います。

○坂口委員 常々、知事も私どもも、東京が変われば日本が変わるということをいってきているわけでございますけれども、ぜひ東京から変えていきたい、そのように考えております。
 そこで、第二点でございますけれども、東京都では大変多くの入札・契約を行っております。登録している事業者数、それから契約件数、契約金額、そしてこの落札率ですね、これがどのようになっているか、お答えをいただきたいと思います。

○安樂財務局長 競争入札の参加資格を有する者の登録者数ですが、三月一日現在で、工事関係者が約一万二千、物品関係が約一万でございます。
 東京都全体の契約件数と金額ですが、平成十二年度で申しますと、工事関係は、契約件数が約三万件、契約金額は六千八百十三億円であります。それから物品関係は、契約件数が約二十万件、契約金額は四千三百三十三億円でございます。
 落札率でありますが、平成十二年度の財務局契約を例にとりますと、工事関係は九五%、業務委託は八八%、その他物品関係は九〇%となっております。

○坂口委員 ちょっとわき道にそれますけれども、この入札制度に関連して、やはり座視できないものに低価格入札という問題がございますね。
 これは委員会でも取り上げられておりますけれども、特に、東京都におきましては、総務局の文書管理システムの開発ですね。これは東京だけではございませんで、実は国でもいろんな問題が起こっております。しかし、都政でございますので、今回のシステム開発において低価格入札が行われたわけでございますけれども、どうしてこのようなことが起こるのか、また防止策としてどのようなことを考えておられるのか、財務局長にお聞きしたいと思います。

○安樂財務局長 業者が低価格で入札してくる理由でありますけれども、初めにシステム開発の受注に成功すれば、その後のシステムの保守管理等の入札で有利な立場に立つことができ、損を取り戻せると考えているためであります。
 これを防止する決定打は、今のところ見当たりませんが、低価格によって品質も落ちてしまうのではないかという、そういう懸念があるような場合には、価格だけではなくて、性能や機能なども総合的に評価した上で落札者を決定する、いわゆる総合評価方式の入札を採用することによりまして、低価格入札に伴う弊害をなるべく除去したいと考えております。

○坂口委員 今後起こらないように、総合評価システムの導入ということのようでございますけれども、いろんな国の法令その他を見ておりますと、やっぱり時代にそぐわないものを感じるんですね。
 このコンピューターのソフト開発ですと、その納入が製造物ではない、物品として処理されているというようなことなんですね。そこに大変大きな問題があるということに行き当たります。
 システム開発のような委託契約に最低制限価格の設定が採用できないものかどうか、また、国に対して、地方自治法の改正などについて働きかけをしていくことが大変重要だと思うんですが、時間の関係もありまして、一括してお聞きしますが、よろしくお願いいたします。

○安樂財務局長 低価格入札を防止するためには、入札に際して、最低価格をあらかじめ設定しまして、これ以下の入札を無効にする、いわゆる最低制限価格制度、あるいは低価格の入札があった場合に、その価格で履行が可能なのかどうかを調査した上で契約を結ぶ、いわゆる低入札価格調査制度、こういう方法が考えられますが、このような方法は、地方自治法の規定によりまして、工事または製造の請負の場合に限られておりまして、システム開発などの委託契約ではできないこととなっております。
 平成八年十月、平成九年七月に、こういう点についての改正を、自治省への要望を行っておりまして、ことしに入ってからも、低入札価格調査制度あるいは最低制限価格制度を導入するために法改正してくれという要望を行っております。
 現在のところ、文書による正式な回答は得ておりませんが、国とのやりとりの中で、低入札価格調査制度の導入については、前向きの感触を得ているところであります。

○坂口委員 いわずもがなでございますが、安かろう悪かろうでは困るんですね。公平で公正な入札をするということと、それから、知事がいっておられますように、これからのリーディングインダストリーは、恐らくIT産業ですとか、コンテンツ産業ですとか、またはバイオテクノロジーですとか、そういうものになっていくはずなんですね。ですから、IT産業等が、特に中小企業等が健全に育成されるような、そういう入札制度でなければならない。
 今、財務局長の方から、国に対して働きかけをしているといいましたけれども、僕は、いろいろ聞いていく中で、これは東京都の条例でできるんではないかという気がしてまいりました。
 先ほどいいましたように、例えば工事または製造の請負というところに、何らかの形で、ソフトウェア等は製造物に準ずるものというような理解を加えた上で、条例制定したらいいんじゃないですか。そういう私は地方の時代が来ている、そのように感じます。これは提案をしておきたいと思います。
 さて、そのようなことを踏まえまして、望ましい入札・契約制度のあり方をどう考えているのか。先ほどの本論に戻りますけれども、談合を排除して、公平で公正な入札制度、または契約制度を確立するためには何が必要と考えているのか、お聞きしたいと思います。

○安樂財務局長 地方公共団体の入札や契約というのは、どこからも疑惑を持たれない、公平性、公正性、信頼性が命であります。これに加えまして、効率性、経済性、それから履行の確実性などが強く要請されております。
 東京都は、これらの要請を踏まえまして、今後、さらに入札や契約の制度の改善を進めていきたいというふうに思っております。
 とりわけ、先ほどお話がありました談合や、さまざまな不正行為を防止するためには、徹底した予定価格の事前公表あるいは現場説明会の段階的な廃止など、従来の枠にとらわれない入札・契約制度の見直しが必要でありまして、一層改善努力を行っていきたいと思っております。

○坂口委員 先ほど知事の方から事前にご発言がございましたけれども、そのような中で、横須賀を初めといたしまして、電子入札制度というものが大変注目されております。それが万能薬ではございません。その前に、やっぱり制度の改正が必要なんですね。そして電子入札、そしてその範囲を拡大していくということが必要だと思うんです。
 東京におきましても、資料15に書いていただいたわけでございますけれども、電子調達システムの導入が今検討され、一部進められております。稼働時期、内容はどうなっているのか、財務局長にお聞きしまして、公営企業関係三局、交通局長、水道局長、下水道局長に、その取り組み、進捗状況をお伺いしたいと思います。

○安樂財務局長 ことしの四月には、東京都の入札予定や入札結果をインターネットで一元的に提供する入札情報サービスシステム、これを本格稼働させます。秋には、資格審査申請をインターネットで行う入札参加資格申請システム、これを稼働させる予定です。さらに、平成十四年度後半から電子入札システムの実証実験を行います。平成十五年度の早い時期に、財務局が発注する大規模工事につきまして、電子入札を開始いたします。
 その後、大規模工事以外の工事や物品等につきまして、順次、電子入札を行っていく予定であります。

○寺内交通局長 交通局におきましても、入札・契約制度の効率性、透明性、公平性の確保等に取り組んでおりますけれども、さらにこれを進めるために、電子調達システムの導入につきまして、積極的に取り組んでまいります。

○飯嶋水道局長 水道局といたしましても、入札・契約制度の透明性、競争性を高めるため、電子調達システムの早期導入に向け、積極的に取り組んでいるところでございます。

○鈴木下水道局長 下水道局におきましても、入札・契約制度の透明性、競争性を高めるため、電子調達システムの導入に積極的に取り組み、今後とも下水道事業を着実に推進してまいります。

○坂口委員 財務局、それから公営企業局を含めまして、大体、首都東京では二十三万社が登録し、参加をしている。この契約の金額といいますのは、先ほどもちょっと財務局長からありましたが、約一兆二千億円、年によって違いますけれども、それぐらいでございます。大変巨大なものでございます。これがどう改革されるかというのは、大変大きな問題でございます。
 そこで、お聞きいたしますけれども、先進的な事例として全国から注目されております横須賀市、我々も調査団で行ってまいりました。くしくも、小泉さんのおひざ元ということであるわけでございますけれども、横須賀市の事例をどのように東京都の財務局は把握しておられるのか。
 また、時間の関係でまとめますけれども、電子調達システム導入によるメリットをどのように推計しておられるのか。東京を例にとりまして、また横須賀との比較でお願いします。

○安樂財務局長 電子調達システムを取り入れました横須賀市では、競争性の向上、談合の懸念の減少、受注機会の拡大、発注情報の透明性の向上、落札価格の低下などといった効果があったというふうに聞いております。
 東京都における電子調達システムの導入による効果の予測を、さまざまな仮定を置きまして試算してみますと、これは一つの試算でありますが、第一には、民間企業における業務の効率化という点では、現在、入札の都度、最低三回は来庁する必要性がありますが、こういうものとか、資格審査が省かれる結果、約百七十八万時間の業務の節減が可能となるというふうに思っております。
 第二には、来庁に要する交通費の負担軽減といたしまして、機械的に計算しますと、約三億二千万ほど削減ができるのではないかと思います。
 それから第三に、これは重要なことでありますが、都の調達コストにつきまして、競争性の向上によりまして、例えば落札率が一%低下すると仮定いたしますと、約六十億円の調達コストの節減を図ることができます。
 それから、業務の効率化によりまして、都の職員の勤務時間を契約一件当たり一時間短縮できると仮定いたしますと、約二十三万時間の業務の効率化を図ることができるというふうに試算できます。

○坂口委員 横須賀のシステムが提起しております課題はいろいろあるわけでございますけれども、先ほど財務局長からありましたように、競争性の向上、談合懸念の減少--談合の排除といってもいいかと思います。受注機会の拡大、透明性の向上、特に五番目にいわれました落札価格の低下というのが注目に値すると思います。
 横須賀は四十二万ぐらいのまちでございます、知事もよくご承知かもしれません。発注しております総金額が三百数十億円ぐらい、そのような中で、平成十二年の結果でございますけれども、落札率を一〇%ぐらい低減した、そして四十二億円ぐらいの財源を生み出しているんですね。
 今、財務局長にご答弁をいただきましたけれども、東京でやった場合、いろんなアサンプションといいますか、前提条件があるんですけれども、調達コストを一%低減させるだけで約六十億円ということなんですね。これは六千億でございますから、全部対象になっておりません、先ほど一兆二千億円といった。これ、時間をかけて対象幅を拡大する、または落札率の低減を図ると、一〇%までいったら、これは大変なことですね。
 仮に一兆二千億円の一〇%といいましたら、一千億円ということになりますね。これはとらぬタヌキの皮算用ということになるかもしれませんが、五%低減しただけでも五百億円ぐらいということになってくるんですね。
 財務局が出しましたこの六十億円を基数に考えても、五%低減いたしますと、三百億円でございますから、大変な効果が出てくるというものでございます。
 時間がありませんので、ここまでにとどめますけれども、きょうはホワイトデーでもございまして、女性から男性に何かお返しをするというのがならわしのようでございますが、私の方から(「逆だよ」と呼ぶ者あり)男性から女性にお返しをするというのがならわしのようでございますけれども、横須賀から取り寄せましたレポートを知事に……。(「ホワイトデーはあしただよ」と呼ぶ者あり)申しわけございません、ホワイトデーはあした、十四日だそうでございますけれども、チョコレートなどをいただいた男性諸氏におかれましては、忘れないようにしていただきたいと思います。私も間違えないようにしたいと思います。
 そこで、最後になりますけれども、これから電子調達システムを導入し、入札・契約制度の改革を進めるに当たりまして、知事のご決意をお伺いしたいと思います。

○石原知事 いずれにしましても、一兆円余のお金をいかに有効に使うかという大眼目があるわけでありまして、その入札の業務というものを透明化し、合理化し、ロスの少ないような手だてを多角的に講じていきたいと思います。

○坂口委員 スピード感を持って、なおかつ局が大変懸念をしておりますけれども、中小零細企業に対しての配慮をぜひお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)

○和田副委員長 坂口こうじ委員の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時十六分休憩

ページ先頭に戻る