東京都議会予算特別委員会速記録第二号

○比留間副委員長 続きまして木内良明理事の発言を許します。
   〔比留間副委員長退席、土持副委員長着席〕

○木内委員 去年、都議会選挙がございました。新たな都政の出発をしたわけであります。おかげさまで、私ども公明党も、都内全域で二十三名の候補を立てさせていただいて、広範な力強いご支援をいただいた皆様のおかげで、全員当選を果たさせていただいて、この議場に臨むことができております。大変にありがたいことでございまして、同時に、二十一世紀の扉を開くこのとき、私ども都議会議員に与えられた使命と役割の大きさは、これまでにないものがあろうかと思います。そうした都民の負託と信頼にこたえるため、誠実に、そして真摯に、精力的に、十四年度予算の審議に当たってまいりたいと、こんなふうに思います。
 そうした流れの中で、私は都議会公明党を代表して、都政の重要課題について、石原慎太郎知事並びに関係局長に質問をさせていただくものであります。
 先ほど来の議論を聞いておりますと、知事の答弁の機会が、どうも昨年までに比べて少ないような気がいたしておりますので、知事は拍手をされておりますけれども、折に触れてコメント、答弁をいただきたい。こんなふうに思いますので、ひとつ知事の方もご用意をお願いをいたします。
 長期化する不況の中で、都税収入が前年度に比べて三千六百億円という大変な落ち込みを来してしまいました。五兆九千七十八億円、二年ぶりに前年度を下回る、こういう規模の予算編成となりました。編成に当たりましては、知事を初め関係の方のご苦労を多とするものでありますけれども、よくいわれるように、経済の顔は株価にあらわれる、政治の顔は予算の数字にあらわれるといわれております。
 私どもは、示された十四年度予算案を精査をさせていただきました。もとより公明党は、政策実現政党として、現場第一主義、調査第一主義に基づいて、これまで都政のあらゆる場で、施策の実現に向けての各分野における提言をいたしてまいりました。
 この規模の予算の中で、これまでの私どもの提案を反映して、それぞれ都民生活とは密接不可分の関連を持った重要な分野、例えば、景気、中小企業、都市再生、環境といった課題についても、重点施策の反映を初めとして、これまで生命の尊厳の立場から訴えてまいりました福祉と医療の充実についても、かつてない一般会計の中で一二%を占めるという、そうした予算編成になっておりまして、あらゆる領域に私どもの施策が、主張が、反映をされているということで、まず高く評価をさせていただくものであります。
 さて、先ほど知事は、えらいときにえらいところに嫁に来たと、まさに厳しい財政状況の中に身を投じて、国に向かって、世界に向けていろいろな発信をされてきた、そのご苦労を裏返すかのような発言を、古賀委員の質疑の中でされたわけでありますけれども、その心境を推しはかることができるような気がしているのでございます。
 翻って、今回のこの予算編成は、知事にとっては三回目であります。一年目の十二年度は財政再建推進プランのスタートでありました。二年目の十三年度を経て、今、三年目の予算、これは申し上げたように、非常に厳しい状況になっているわけでございます。
 今、ご苦労の末、議会にこの予算案を提出された、率直な知事の肉声での感想をまず承りたいと思います。

○石原知事 いってみますと、先場所は、八勝七敗で何とか勝ち越すことができたと思いますが、それも際どい勝負勝負でありまして、いってみますと、総体的には土俵を何とか割らずに済んだなという感じはしましたが、ことしも予算編成を終えてみますと、この先、何が待っているかわかりませんが、押し込まれ押し込まれで、去年以上に押し込まれて、土俵際を伝って伝って、割ったかと思ったら、辛うじて徳俵に足がかかって残っているという心境でございます。(笑声)

○木内委員 私ども公明党は、都民与党の立場から、知事が土俵際の徳俵に足が乗ったら、後ろから土俵の中に戻すような、そういうまた応援もしたいと思いますので、ぜひ頑張っていただきたいと思うのであります。
 さて、去年まで、そしてこれまで、予算編成でいろいろ苦労したけれども、何とか乗り切ってきたということは、十四年度を経て、十五年度以降、厳しい局面が展開されるであろうという、こういう予測をされての今のご発言だったと思うんです。そして、十四年度予算案では、既に基金の取り崩しなど合計二千五百億円の財源対策というものが講じられております。実は、こうした手法がいつまでも通用すると思ったら、大間違いという厳しい事態なのであります。
 今回、予算案とあわせて、平成十五年度から十八年度までの収支見通しが示されておりますけれども、今後、毎年度三千億円から四千億円の財源不足が生じてくる、こうされておりまして、したがって我々は、予算審議に当たっては、中長期的な財政運営も含めて、真剣な議論を、そうした認識のもとで行っていきたいと思うのであります。
 そこで、私がお訴えしたいのは、資料で出していただいた財政再建プランの達成状況というものを見てまいりますと、全部で四分野あるわけでありますが、きょう議論の焦点に据えたい税財政制度の問題以外の、すなわち財源確保の部分。これは、目標六千三百億円に対して五千七十五億円ということでありますから、達成率八〇・六%。それから、内部努力が八割ということで、さらに施策の見直しでも八割以上、歳入確保は一三二%というふうに大幅に上回っているのであります。後に触れるのでありますけれども、税源の移譲を初めとした税財政制度の改革につきましては、実は、いまだほとんど進捗の見られない分野ということで、都政、財政運営にとって極めて重要な課題であるという認識をしているのであります。
 さて、最初にお尋ねするわけでありますけれども、十五年度から十八年度の収支見通しを見る上で、決して見逃すことのできないのが税収見通しの点であります。実際、今年度まで財政再建プランどおりに努力してきて、ほかの分野については極めてうまくいっているけれども、この税収見通しが外れて、今日的には大変苦しんでいる実態がある。
 まず、この税収見通しをどういう根拠で算定されたのか、明らかにしていただきます。

○安樂財務局長 東京都を取り巻く経済環境が急激に変化する中で、今後の都税収入の見通しを正確に見定めることは大変な困難なことでございます。わずか一年前に試算いたしました収支見通しさえも、修正を余儀なくされております。
 今回の収支見通しの策定に当たりましては、国税の動向や政府の経済見通しなどを勘案いたしまして試算を行ったところでございます。
 具体的に申しますと、都税収入の根幹をなしております法人二税や個人都民税の所得割につきましては、国税である法人税や所得税の動向による影響を翌年に強く受けることから、十五年度はさらに減収となるものと見込むとともに、十六年度以降は、政府見通しを踏まえ、毎年度一・五%の伸びとなると見込んでおります。
 また、都民税の利子割につきましては、高金利の郵便貯金の集中満期が終了することから、十五年度は減少し、十六年度以降は十五年度と同水準で推移する、このように見込んでおります。
 それ以外の税につきましては、十四年度と同水準と見込みました。

○木内委員 今、一見、克明なご報告をいただいたようでありますけれども、要約すれば、いわゆる不確定要素といいますか、他律的要因である税収については、極めて予測が困難だと、こういう答弁であったというふうに思います。そうした、いわゆる他律的要因とならざるを得ない税収の見通し、不確定要素を抱えながら、いかにして財政再建を進めていくのかということが今日的課題だろうと、こんなふうに思うんです。
 こうした要素を踏まえての安定した財政運営を、今後どのように都としては進めようとしているのか、この方針を明らかにしていただきたいと思います。

○安樂財務局長 東京都の歳入構造は、法人二税を中心とした都税収入に大きく依存しておりますので、景気の変動に左右されやすいものとなっております。そうしたことから、昨年夏以降の景気の急速な悪化の影響を受けまして、十四年度の都税収入は、前年度に比べまして三千六百億円という大きな落ち込みとなっております。しかも、今後景気の速やかな改善が見込めない、そういう中で、都税収入のさらなる減少を覚悟せざるを得ないという状況になっております。
 それに加えまして、消費税や所得税などの地方への移譲など、いわゆる地方税財政制度の抜本的改革が一向に進んでいないということもありまして、大変厳しい局面に対応しております。
 こういうことで、今後におきましても、財政運営におきましては、徹底した歳入歳出の見直しと同時に、こういう税財政制度の改革というものを求めていかざるを得ないというふうに思っております。

○木内委員 財政再建プランにおける四分野の中で、内部努力あるいは徴税努力と、私ども訴えてまいりました。とりわけ我が党の伝統として、内部努力、監理団体の統廃合を初めとした行革--この分野でも、随分と実は成果が上がってきているわけでありますが、今いわれたように、税収の確保が不安定で困難であるならばということで、今、税財政制度の改善を初めとする項目をお挙げになりました。
 たしか、先ほどの民主党の和田副委員長と知事の議論の中でも、ちょっとリンクするかもしれませんけれども、外形標準課税のことについて、さっき知事は触れられたように思います。
 今、安樂局長がこちらへお立ちになるときに、知事が耳打ちされていたのは、恐らく……
   〔石原知事「違う」と呼ぶ〕

○木内委員 全然違う。じゃ、知事の方から何かありましたら、ご発言をお願いします。今の点。もうちょっと待ちますか。
   〔石原知事「もうちょっと」と呼ぶ〕

○木内委員 もうちょっと待つ。はい、わかりました。
 いずれにいたしましても、議論の流れというものが、そういうことで、不確定要素である税源のあり方というもの、これをカバーして余りあるリカバーの策というのはないのかといえば、さっき知事がお挙げになった外形標準課税等の新たな施策展開と同時に、税財政制度の改善ということであります。
 税財政制度も含めて財政議論というのは、よく金太郎あめの議論といわれるんです。何回やったって、同じ答えしか出てこないじゃないかという堂々めぐりになってしまう。そういうリスクがあるから、私はこの点については余り深入りをしたくないのでありますけれども、実は、政府税調においても、あるいはまた、政府関係のそうした経済財政諮問会議であったり地方分権改革会議におきまして、これまでの税財政制度に関する議論というものが、今、相当熟成をしてきている。
 その結果、どういう流れになっているかというと、例えば、申し上げた経済財政諮問会議では、ことしの六月を目途に税制改正の行程表を出すということを、議長である小泉総理が明確にしている。あるいは政府税調においても、同じく六月を目途に改革の主要論点を発表することにしていたり、地方分権改革会議においても、全部六月が今、めどになっているわけであります。
 したがって、これまでのいわゆる税財政議論とは異なって、今日的な、今の時期における税財政議論というものは、国に東京都の意見を押し上げていくという意味では極めて重要な意義を持っている、こういうふうに思っているんですけれども、これは局長でなくて、お待ちいただいた知事。

○石原知事 それは非常に核心に触れた大事な問題でありまして、実は私、国会議員時代の顔見知りの次官経験者とか、大事な局長をやったような連中と、集めまして、時々アドバイザイリーボードで二十人ほどの連中といろいろ話をするんです。この間も私、自分の私案をぶつけましたときに、だれでしたかな、あれは前の大蔵次官の田波君でしたか、彼が、おっしゃることはわかるんですけど、日本人というのは、金融に関しては非常に変なDNAができてしまって、少しでもリスクのある金の使い方ができない、私も実はそうでしたといういい方をしていました。
 ですから、まさに、先ほどちょっと申しましたが、新しい財源の捻出というものを何かの形でやっぱり考えませんと、それは外形標準のような新しい税だけではなくて、後でご質問が出るかもしれませんけども、東京都独自の金融の何かシステムとか、その他この他で一生懸命考えているんですが、ぜひこれは、東京のひとつそういう新しい財源の捻出というもののフォーマットができれば、それこそ国にも突き上げることができますし、今、研究中でありますけども、議会の皆さんにもひとついろいろ案を出していただいて、今まで地方自治体がやらなかったような財源の開拓というんでしょうか、それができればなと思っている最中でございます。

○木内委員 この前の「都政新報」に、議会の議論のあり方ということで、議員の質疑に期待するという項目と別に、知事の、よい提案であればどんどん受け入れるという、そういう姿勢に言及しているところがありまして、そんなことを実は今心に刻みながら、私も臨んでいるわけでありまして、議会と行政は両輪でありますから、ぜひこれまでのように、私どもの提案を、いいものはどんどん受け入れていただいて施策に反映をしてもらいたいと思うわけであります。
 さて、税源移譲の動きについて、東京の区域内から国税は幾ら税収として上がっていて、幾ら都に返還されるのか、端的に答えてください。

○安樂財務局長 十一年度の決算で申し上げます。都の区域から徴収される国税の全体額は十六兆四千四百五十二億円であります。一方、国から国庫支出金などを通じて都及び都内の区市町村へ還元される額は一兆二千九百九十五億円でございます。

○木内委員 したがって、概数で申し上げますと、十六兆円台のお金を、東京の都民が懸命に額に汗して働いて国に納めて、結果的に一兆円しか戻ってこない、これはとんでもない話です。これは、全体の税制があるとしても、都民の感情からしたら決して許せることではありません。だから、これまでの流れの議論に風穴をあけて、新しい運動というものを展開していくことが必要だというふうに思います。
 さっきの議論にも若干関係しますけれども、いわゆる国から地方への税源移譲に関する考え方の議論というものが、ようやく国においても熟成してきたということは、さっき申し上げました。率直に客観的に、担当局長から、最近におけるこの問題に関する国の動向をご報告願います。

○安間主税局長 昨年六月に閣議決定されました、いわゆる骨太の方針において、政府として初めて、国から地方への税源移譲に触れております。また、昨年八月に片山総務大臣が経済財政諮問会議に提出いたしました、いわゆる片山プランにおきましては、消費税など偏在性の少ない税目による税源移譲により、国税と地方税の比率を一対一にすることが明記されております。さらに、委員ご指摘のように、国においては、今後、地方分権にふさわしい地方税のあり方などについて、本年六月ごろを目途に基本的な方針を示すこととしております。

○木内委員 今、報告のありました地方消費税の税率の場合、関連して伺いますけれども、現行の地方消費税の税率を一%アップして二%とした場合、東京都への税源移譲の規模、また、同じケースで神奈川、愛知、大阪といった大都市圏の府県ではどうなりますか。

○安間主税局長 消費税から一%相当を税源移譲した場合につきましては、東京都税制調査会の答申における税源移譲のシミュレーションに基づき、平成十年度ベースで申し上げますと、東京都で一千五百三十八億円、神奈川県七百五十七億円、愛知県七百五十九億円、大阪府九百七十五億円の税源移譲額となります。

○木内委員 今、地方消費税の税源移譲についての話がありました。これは、したがって、今の地域においては、地方全体としても理解が得られるのではないかと思うわけです。
 私は、その前の点として申し上げたいのは、東京都が独自でこれを訴えますと、東京都のエゴイズム論、利己主義的な発想だとよくいわれてしまうわけでありますけれども、そうではない。いわゆる都市再生に向けての大都市需要の必要性というものは、今、極めて大きくなっているわけでありまして、申し上げている大阪や愛知、あるいは東京といった大都市圏の共通の課題を抱える、こうしたところが、石原知事を先頭に立ち上がって国に攻め上げていくということも、私は極めて重要だと思うんですが、それは後ほど知事から答弁をいただくとして、消費税の一部を地方に移譲しても、結果的には、交付税の減によって相殺されてしまうということがよくいわれるわけであります。
 しかし、それであっても、仮に与えていって、いわゆる地方財源全体としてのパイがとんとんであって同じならば、それ以外に、いわゆる分権の時代に即応した地方主権の流れというものが、使い道を特定されない、自由に東京都や府県が使える幅というものが大きくなって、ひいては、これまで我々が訴えてきた税財政改革につながる流れをつくれると思うんですけど、主税局長、どうでしょうか。

○安間主税局長 税源移譲を行ったとしても、大半の道府県は地方交付税の交付団体であると見込まれることから、税源移譲の効果が、地方交付税の減額によって相殺されてしまうことはご指摘のとおりでございます。
 しかしながら、ご指摘のように、地方税源の充実は、地方の主体的な判断によって政策決定ができるという自己決定権の拡充、住民の受益と負担の明確化等の観点から、意義あることと考えております。

○木内委員 したがって、先ほど申し上げた大都市需要についての論理的攻勢展開は、局の方に要望をするにとどめておきますけれども、さっきも触れました、大都市圏における知事の力を総和して、ぜひ国に強い要請を行っていただきたいと思うわけであります。
 先般、私どもは、所も同じ都議会議事堂の中の部屋で、大都市サミットというのを行いました。東京から、そして大阪から愛知から、県会議員を初め関係者が大勢集まりました。そこでさまざまな議論が、現場的感覚の中で交わされました。そうして、この税財政制度の改正ということで、その日のうちに、実は官邸に福田官房長官を訪ねて、小泉総理あての要請書も出したところであります。
 そういう意思統一を、私ども党としてのレベルで進めてきたところでありますけれども、申し上げている趣旨を踏まえて、知事、ひとつここはぜひ大阪、愛知等との共闘といいますか、足並みをそろえての運動論を展開されるよう要請するんですが、ご答弁をいただければと思います。

○石原知事 小渕内閣の時代に、私は小渕総理に、日本もだんだんじり貧になってきたので、これを持ち上げる一つの大きなめどは、大都市というものを再生させなきゃだめだ、自分が知事になったからいうわけじゃないがということで、問題意識はできまして、ちょっと時間はかかりましたが、都市再生の本部も政府の中にできました。東京からも局長クラスの男を一人送っているわけですが。
 おっしゃるとおりでありまして、今まで大都市の取り分がいかにも少なかったことを今さらいってもしようがありませんけれども、しかし、やっぱり非常に偏ったひずみというものを国全体がつくってしまいました。これを平均化するというか、正常に戻すということは、私は、人体でいいますと、血液の流通もよくなり、健康を取り戻す大事なよすがだと思いますので、大都市の再生ということで、前内閣のときにも案を頼まれましたものですから、五年間で十兆というような案を出しまして、一部実現しつつございます。
 これから、決して東京圏だけの問題ではなしに、地方をないがしろにするわけではありませんが、何といっても大都市というのは頭脳部であり、主要な内蔵であり、心臓であるわけでありまして、もちろん手や足の指もないがしろにはしませんけれども、まず人間の五体の中での主要部分がむしばまれていけば体全体が失われるということで、国もようやくその認識を持ち出したと思いますし、今度は牧野君という前の次官が都市再生の特別補佐官になりまして、年じゅう連絡をとっておりますけれども、東京の主張だけでなくて大都市の主張を、各県知事はかって、声を合わせて政府に貫き通させていきたいと思っております。

○木内委員 いろんな率直な感懐をお述べになった後、最後に具体的、明確なご決意を披瀝いただきましたので、ぜひその運動の展開を要請したいと思います。
 次の問題であります。いよいよこの四月からの定期預金のペイオフ解禁後の、公金の安全管理の問題であります。
 このペイオフの対象になる領域というのは、実は三つあるのは、既に当局の皆さんはご存じのとおりであります。一つには歳入歳出の決済口座である歳計現金、二つ目には貯金に当たる基金、三つ目には制度融資のための預託金、この三つがあるわけであります。これが今、非常に微妙な対応に揺らいでいる領域もありますので、順次触れておきたいと思います。具体的に、ポイントだけお聞きしてまいります。
 東京都はこれまで、ペイオフに関する検討委員会というものを持ってまいりました。先ごろ、これが一度なくなりました。いよいよこの対策のための委員会が立ち上がるわけであります。
 ここでは、ペイオフ解禁後の対応について、取引先の金融機関を六段階に格付して、破綻懸念のある金融機関に対しては、中途解約を含め厳格に対応する、こうしているわけでありますけれども、これまで発表されていない分野も含めて、具体的にどのような基準で格付を実施させるのか、明らかにしてください。

○大塚出納長 都の公金を預ける金融機関につきまして、複数の格付機関による格付、それから国の定めた規制基準、これは国際取引で八%、それから国内で四%でございますけれども、これを上回る水準の自己資本比率、さらに預金量の推移を組み合わせました都独自の基準によりまして格付を行ってまいります。
 また、指標の遅行性を補うため、株価、それから社債利回りに常時着目をいたしまして、経営悪化の兆候を早期に察知してまいります。

○木内委員 私は、こういう議論のあり方を非常に大切にしたいと思いますのは、答弁の中で、施策の具体的方針が明らかになってくる。今、大塚さんからお話のあった複数の格付機関による格付、あるいは規制基準を上回る水準の自己資本比率など、この議論の中で、東京都独自の基準として初めて明らかになってくるわけでありますので、さらに一歩踏み込んでお聞きしたいのでありますが、この格付等を行う公金管理委員会の委員構成、設置時期、内容について明らかにしてください。

○大塚出納長 公金管理委員会はこれからでございますけれども、その委員につきましては、金融分野に経験と識見を有する学識経験者、金融アナリスト、それから公認会計士、弁護士、おおむね十名弱程度でございます。金融機関そのものにかかわりのある方は一人も入っておりません。
 それから、委員会は、ペイオフ解禁に先立ちまして今月中に設置をいたします。金融機関の経営状況の評価を具体的にいただくとともに、公金管理の基本的な方針の策定、それから、問題の金融機関に破綻のおそれが生じた場合の危機管理対応などについて検討していただき、提言を受けてまいります。

○木内委員 このやりとりの中で、どんどん明らかになってくる。都民の皆さんは、テレビを通じ、新聞を通じ、こうしたいわば危機管理体制の中での都の対応に大きな関心を持っているわけであります。
 そこで、この委員会から専門的な立場から提言を受けるわけでありますけれども、都民は、この委員会における議論のあり方あるいは格付等も含め、公金管理の実態について情報を得る権利と資格を持っていると思います。ただ、金融政策という分野の特殊性を考えると、明らかにできるところと、そうでないところはあるでしょうけれども、まず都民に対する報告をどのようにされるのか、これを明らかにしてください。

○大塚出納長 理事ご指摘のとおり、でき得るならば、そういうふうな方向でということも考えるわけでございますけれども、ただ一方、これもおっしゃいましたけれども、金融政策といいますか、国全体の金融政策との、ある種の配慮といいますか、そうしたものも必要でございますので、基本的には、都民からお預かりしている公金を、具体的にどのように管理し、どのように運用していくかにつきましては、これは総体として当然、都民に明らかにしていく責任があるというふうに考えております。
 先ほど申し上げましたけれども、ただ、都の対応が金融秩序に無用の混乱を起こすことのないような配慮もあわせて必要だというふうに思っております。公金の運用実績等につきましては、定期的に都議会にご報告申し上げるとともに、都民に対して適時適切に明らかにしてまいります。

○木内委員 今また明らかになったことは、一つは都議会に報告をされるということでありますが、重ねてお尋ねをしますが、報告の頻度は、時期的にどんなことを想定されるのか、また、これはいわゆる条例とか規則に基づくものではないわけでありますけれども、その辺の基準についてもご報告願えればと思います。

○大塚出納長 定期的な報告としては、おおむね年四回程度、それから、特段の状況が起きた場合には、随時の報告も含めてご報告したいというふうに考えております。

○木内委員 ほぼ四半期に一度ということですから、定例会ごとということに、あるいは合致してくるかもしれませんですね。ぜひ私どもも、極めて高い関心を持ってその報告を受けていきたい、こういうふうに思います。
 それから、今申し上げた三つの分野のうちの二つについては、まだまだ確認をしたいことがありますけれども、今後のご努力をまず要請申し上げて、三つ目の分野についてお尋ねをします。
 いわゆる制度融資の預託金の保全という問題であります。今、ペイオフ議論が非常に盛んでありますけれども、ほとんどの議論を見ていると、さっき申し上げた歳計現金、貯金に当たる基金、この二つに集中しているように思います。私は、この制度の間隙に沈潜しているといってはおかしいけれども、無視できない、看過できない重大な問題は、実は制度融資のための預託金の問題だと、こういうふうに思っていますが、さきに触れた検討委員会での研究の対象になっていますか。

○大塚出納長 制度融資につきましては、いわば一定の政策目的のために預託金があるわけでございまして、私どもで管理をしているいわゆる公金とは性格が異なるため、検討委員会の検討の対象外でございます。

○木内委員 ちょっとお座りになる前に、失礼ですが、私が今お尋ねする場合の担当局はどこになりますか。

○大塚出納長 制度融資につきましては、産業労働局でございます。

○木内委員 さてそこで、制度融資の預託金といいますのは、いわゆるペイオフの議論の対象になっている大手銀行等が対象ではなくて、実は七十以上に及ぶ、銀行はもとより各地域の信用組合、信用金庫等にまで全部預託をされているわけです。年間規模、十四年度予算の会計規模でいいますと約二千三百億円以上、今までのいわゆる出入り等、歴年のものを含めますと、瞬間風速ですから確定はできませんけれども、大きいときは四、五千億になるわけであります。この対応について、産業労働局長、どうお考えですか。

○浪越産業労働局長 中小企業制度融資の預託の管理は、歳計現金の管理とは別で、中小企業の金融の円滑化という政策目的を達成するための歳出予算として組まれておりました。このことから、制度融資を所管する私ども産業労働局で検討を行っているところでございます。

○木内委員 これは二千三百億以上の規模の、いわば公金ですよね、預託金。これはどんな実態で、各金融機関に保証協会経由で預けられていますか。それから、具体的に定期の形か普通の形か、いずれかであるならば、もうあと半月以上でペイオフの対象になってしまう。したがって、今月中に預金の組みかえをしなきゃならないんじゃないですか、きのう関係の方と打ち合わせしたとき申し上げたんだけど。それから、そうでないものは、四月一日に入ったら、いわば十四年度の二千三百億については、今までの預金形態とは違う形にしないと、四月一日から金融機関破綻の際の大きな問題の原因になるんじゃないでしょうか。
 以上について、三点答えてください。

○浪越産業労働局長 現在、預託は、都から東京信用保証協会に貸し付けた資金を、同協会が各金融機関へ預託する方法で実施しております。今お話がありましたように、平成十四年度予算では二千二百三十三億円を計上してございます。先ほどお話のありましたように、預託先の金融機関の数は七十六を予定してございます。
 また、預託は現在、東京信用保証協会が各金融機関に定期預金として預け入れしているところでございますが、ペイオフの関係等がございまして、普通預金などの決済性預金は平成十五年三月末までペイオフの対象とならないために、平成十四年度は預託金のすべてを普通預金とすることとしたところでございます。

○木内委員 当面の保全策は懸命に進めてください、預金の組みかえは。
 さて、これは中長期的な保全策を考えると、今のは極めて不十分な対策にすぎません。対症療法です、いいですね。例えば、保全の観点から金融機関からの引き揚げをすることがありますか、どうですか。

○浪越産業労働局長 私どもは、預託金につきましては、まず公金保護の観点から、破綻の危険性の少ない金融機関に預託することが、中小企業の利益にかなうことであるというふうに考えてございます。その上で、なるべく多くの、多様な形態の金融機関に預託することで、中小企業者が利用しやすい資金供給の道を確保したいと、そのように考えてございます。

○木内委員 危険の少ない金融機関に数を減少するんですね。そうすると、今の制度融資のあり方というものは縮小せざるを得ませんね。どうするんですか。

○浪越産業労働局長 私ども、平成十四年度の預託金については、普通預金で運用するために……(木内委員「十五年度以降の話よ、政策論議は」と呼ぶ)はい。一年間の時間的な余裕がございますが、このため制度融資の政策目的を見据えながら、出納長室が定めた金融機関の選択基準の適用、あるいはペイオフ解禁後の金融機関の状況など多様な要素を多面的に検討し、平成十五年度に向けてしっかりとした運用方針を定めたいと、そのように考えております。

○木内委員 今、局長がいわれた検討委員会の対象に、信用金庫、組合は入っていますか。

○浪越産業労働局長 種々検討してまいりたいと思っております。

○木内委員 そんなこと、何で答えられないんですか。対象に入っているか入っていないかぐらい答えられるでしょう。

○浪越産業労働局長 当然入っております。

○木内委員 さっきの答弁の、大塚さん、入っていますか。

○土持副委員長 速記をとめてください。
   〔速記中止〕

○土持副委員長 速記を再開してください。

○大塚出納長 今回出したものは都市銀行中心でございまして、信金信組につきましては、この後、もちろん検討の対象には入っているんですけれども、決まりの話はこの先でございます。(木内委員「検討委員会の対象に入ってないんでしょう」と呼ぶ)一定の方向は見せております。問題は収納金です。簡単に申し上げますと、大きな銀行は、あの基準でいきます。この先、大きな銀行でも、ほどほどの世界があるわけですから、この先の信金信組は、あの延長ではいかないということで検討の対象に入っています。

○木内委員 要するに、いろいろおっしゃるけれども、検討の対象に入っていないんですよ。あるいはこれから入れようとするという、何か自語相違みたいな答弁をされているけれども、後でこれは確認してください。答弁は結構です。浪越局長も耳打ちされて、にわかに答弁を求められてお困りだと思うから。
 ただ、いずれにしても私は、こういう議論の中で、答弁の立ち往生を求めているわけじゃないんです。極めて政策性の高い、そしてまた整合性の要求される政治判断が必要だからいっているんです。これは何かおっしゃりたいことがあるようですが、私も確認していないから聞いているだけです。
 仄聞するところ、さっきもごちゃごちゃおっしゃっていたけれども、これからは入ってくるけど今まで入っていなかったとか、一定規模だとか、いろいろあるけれども、地域に密着した信金信組というのは、入っていないと聞いているんです、今までの検討委員会の中では。
 ただ、もしそうであれば、これから検討をぜひお願いしたいし、それからもう一つは、じゃ、そういう破綻の危険性のある金融機関が明確になった、ここに預けてある預託金を引き揚げますよ、風評被害が広がります。それでなくても今、都内全域では、そういう中小企業、地域を対象にした信金信組が懸命な努力をしているわけです。そういうときに、風評によって破綻に、またインセンティブを与えてしまう、こういうことがあるんじゃないですかということを聞いたんです。そしたら、さっき答弁が違う方向に行っちゃったから……。(発言する者あり)何かおっしゃいますか。これは実際に難しいでしょう。うなずいているから、私は難しいということが認識できればいいです。
 じゃ、制度融資がこのまま充実拡大できるように、信金信組にこのまま据え置いておいたらどうなるかというと、都民の税金である預託金がふいになる、元も子もなくなるおそれがある、こういう問題意識を提起しているわけであります。反論されると、私の方はもっと反論しちゃうから、もっと答弁が苦しくなるから問題なんです。このことだけ申し上げておきたいと思う。
 私のいっていることを理解したかどうか、それと、これから精力的に、一年間あるけれども、懸命に都民の資産を守るために頑張るという決意があれば、局長、いってください。それ以外なら要らない。

○浪越産業労働局長 都民からお預かりしている税金でございますので、ペイオフ解禁後の金融機関の状況等を、私ども、出納長とも連絡を密にし、多面的に検討し、しっかりとした運用方針を定めていきたいと、そのように考えております。

○木内委員 それでひとつ頑張ってください。浪越局長のお人柄、まじめなふだんのお仕事、私は本当に敬意を持っているわけでありまして、ひとつご努力を重ねられるよう要請をしておきたいと思います。
 さて、次の問題であります。去年の四定でも、私ども代表質問で取り上げました。二〇〇〇年の、思い出せば、この場でもまた議論がありました。去年の三月も敗者復活について、石原知事と私はここで議論させていただきました。マサチューセッツ工科大学のレスター・サロー教授の日本経済活性化についての引用をしながら、あの一九九〇年代、経済が大変な苦境にあえいでいたアメリカ社会の中で、活性化の大きな苗となったのが、何度失敗してもやる気と、そしてその熱意さえあれば、社会がこれを応援していくという敗者復活の社会システムが必要だというレスター・サローさんの話を引いて、知事と話をいたしました。知事はあのとき、たしかトヨタの創始者であった豊田佐吉翁の例を引かれまして、人が相手にしないときに、お母さんは懸命に息子の佐吉を支えた、人が立ち上がるときの環境とはそういうものだという、まさに胸を熱くするやりとりをさせていただきました。
 そして去年、産業労働局長とのやりとりの中で、いよいよ東京都もこうした敗者復活の社会システムを具体化するための研究会を立ち上げるべきだと、このように私は訴えました。そして都からは、立ち上げる、検討を始めるということになりました。この研究会が随分熟成して固まってきたようですね。研究会の構成、規模、検討内容等についてご報告ください。

○浪越産業労働局長 本研究会は、意欲のある人が再挑戦できる社会システムの構築を目指しまして、多岐にわたる分野について検討を予定しております。そのため、構成メンバーには、弁護士、ベンチャー企業の経営者、NPOの代表、税理士など、民間で実際に実務に携わっている方々や大学教授などの学識経験者、約十名にお願いしたいと考えており、人選を行っているところであります。四月中には、第一回の研究会を開催したいと考えております。

○木内委員 明確な答弁、了としたいと思います。この研究成果を具体的にどう反映させますか。

○浪越産業労働局長 本研究会で検討する内容は大変広範囲に及んでおりまして、長期的課題や我が国の社会システムそのものの改革につながるような問題については、慎重に時間をかけて検討していく必要があると考えております。
 また、再挑戦できる社会システムの構築は、本来、国が果たすべき役割であると考えられるため、検討した内容について、国へ積極的に提案要求していくとともに、早期に実現が必要なものについては、可能な限り平成十五年度の予算要求に反映させたいと考えております。

○木内委員 随分具体的に進んできましたね。きょう見えているけど、私どもの中山団長、石井幹事長もそれぞれ、本会議の代表質問で執拗にこのことを訴えてきた。やっぱり議会の議論の中で紡ぎ出される成果というものがどんどん行政に反映されていく、これが政策実現政党としての私どものあり方だと、こういうふうに思っているわけであります。
 さてそこで、この具体論なんですけれども、いろんなケースを私も見聞してきているんです。日本の社会というのは、会社の事業を起こすとき、融資を起こすとき、個人の住宅や土地、個人資産を、いわば個人保証の担保にしちゃうものですから、事業が破綻すると、それまで全部とられちゃいますね。夜逃げしなきゃならない、一家離散しなきゃならない、究極的には自殺まで追い込まれる人もいるわけであります。
 住むところを失う、あるいは買った家のローンが払えなくなって経済的に行き詰まってしまう、こういうこともあるわけですけど、局長、これはこの研究会でぜひ検討してもらいたいんですが、事業が破綻して住む家を失った人が、一年か二年の期限つきで、例えば都営住宅等に緊急避難として入って、再起の力をそこで蓄える、こんなシステムというのは考えてもいいと思うんですよ。これなんかはどうですか、局長。

○浪越産業労働局長 本研究会では、幅広い分野について検討する予定でございまして、具体的な施策などについては、今後、研究会の中で議論していきたいと考えております。

○木内委員 橋本住宅局長、この点どうでしょう。

○橋本住宅局長 都民共有の財産でございます都営住宅は、真に住宅に困窮する都民に公平に提供するために設置するものでございます。期限つき入居制度は、真に住宅に困窮している都民が広く利用することができるように、利用機会の公平を確保するため導入したものでございます。
 ご指摘の中小企業等の事業破綻者について、他の住宅困窮者に対して入居を認めるべきかどうかということにつきましては、これらの事情を勘案しながら、今後検討してまいります。

○木内委員 局長、私の顔を見て。いいですか、対象は住宅困窮の人でしょう。これらの事情を勘案して、何でそんな答弁になるんですか。今いったのは、住宅困窮しちゃったケースについていっているんじゃないですか。いいですか、期限つき入居制度が先般導入された、あるいは都営住宅におけるグループホームであるとか、社会的に多面的な活用分野が広まってきている。こういう中で、東京都全体が敗者復活のための再チャレンジシステムを考えようと。例えば、こういうケースの場合、都営住宅で一年でも二年でも家族で再起のチャンスに力を蓄えてくださいと。
 そういうことであれば、ぜひ検討しましょうぐらい何でいえないんですか。知事だって恐らく同じ考えだと思いますよ。

○橋本住宅局長 ただいま申し上げたのは、言葉足らずでございましたけど、(木内委員「何が言葉足らずだよ」と呼ぶ)いや、そうじゃなくて、他の住宅困窮者に優先してどうかということを検討すると申し上げたわけでございまして、ただ、現実に住宅困窮者である場合には、当然検討していかなければならないと思っております。

○木内委員 橋本局長、もう一度。座っていてください。住宅困窮者ならばということでしょう。だから、ここに、私がいう社会政策的な判断基準の位置づけも必要なんじゃないですかと、こういっているんですよ。そういうことで--いいんです、局長、本当にご苦労かけます。一生懸命頑張っていただいているのは、ふだんから知っていますから。
 知事、敗者復活システムは何度も今まで議論してきました。知事からの前向きの答弁も随分いただいているところであります。したがって、今の議論を総括して、ぜひ率直な感懐をお述べいただけませんか。もしできれば、都営住宅なんかも一言コメントいただければね。

○石原知事 今ご指摘の、力がありながら、やんぬるかな倒産するとかそういう方々は、やっぱり復活のポテンシャルというのはとても高い方々だと私は思いますし、そういう方々のために都営住宅を積極的に使うというのは、一つの非常にいい案だと思います。積極的に検討させていただきます。ただ、我も我もということになりますと、数によっては受け切れるかどうかということも検討した上でします。

○木内委員 私は知事の英断に心から敬意を、お世辞でなく表させていただきます。政治というのはそんなものじゃないですか、局長。別に局長にいうわけじゃないけれども、必要なものを時代の要請に応じて行政が血を通わせていく。確かに知事のおっしゃるように規模的な限度はあるでしょう。それは線を引きながら、しかし制度として、七転び八起きで敗者復活に挑んでいこうという人のために、都政が、知事を先頭に我々も知恵を出していくという、これが大事なんじゃないですか。そういうことです。住宅局長の答弁は結構ですから、ぜひ今の答弁を踏まえて進めてください。また後退するおそれがあるから。(笑声)
 さて、次に観光産業振興策についてであります。きょうの午後の議論の中でも、これは随分と出ました。その中で、新しい財源確保策としての位置づけも、さっきは知事もされておりました。観光というのはすそ野が広く、運輸や宿泊、あるいは飲食業など、各分野に、また雇用吸収効果もあり、大きな経済波及効果をもたらすものでありまして、異なる文化の交流にも大きく資するものであります。都が千客万来の世界都市東京を目指そうということに、私たちは心から賛同をいたしましたし、暗い話が多い中で、世界に輝く私たちのまち東京を一緒に構築していこうというのは、極めて重要な課題だと思っております。
 外国人旅行者を、現在の年間二百七十七万人から五年間で六百万人に倍増することを目指して、いよいよ観光産業振興プランが産業労働局の中でこの前発表されまして、私は再読をいたしました。各分野、各事業の方々の立場からいろいろな意見を集約してのものであったと思いますけれども、あれを決して画餅に帰してはならないと思います。
 基本的理念は、よく並べられておりました。しかし、各局に共管、またがったり、あるいは国へ要請をしたり、新しい行政施策の展開を必要とするものなど数多くありましたので、これは五年間の作業になりますけれども、できるものは前倒しでどんどん進めていくべきである、こういうふうに思います。
 そこで、実は私は、きょうここで議論をするに当たって、東京で四十年近く外客、外国人観光客の英語のガイドに当たってこられたベテランの観光案内業の方、複数の方との懇談の機会を長時間持ってきたわけであります。そこで知り得た現場の声、あるいは肌で感じたそうしたガイドの方々を通じての外客の方の日本、東京への印象、こういったものを数点に絞りながらお尋ねをしていきたいと思うんです。
 まず、さっき古賀委員のお話で、私は軌を一にするものだなと思ったのは、ペリーの日本来航記の話がありました。そのときに、小型のボートで江戸に上陸したんですか、クルーたちが甲板に戻ってきていった言葉、そっくり同じことを、今の欧米人の方が東京に来ていうそうなんです。英語ですから、ポライト・アンド・クリーンと。東京の人は礼儀正しくて親切で、まちがきれいだというんですよ、本当に異口同音に。私も意外だったんです。こちらからどんな印象ですかと聞かないでも、先方がいってくるんですって、ポライト・アンド・クリーンて。わかる気もする、ペリーのさっきの話ですね。そんな話がありまして、結局、私は都民としての誇りを新たに発見するような始末だったわけであります。
 逆に、東京の印象で悪いのは、一つは、後で触れるにおいです。ゆで卵が腐ったようなにおいが、一流の都心の繁華街や国際的感覚のまちにあるということと、もう一つは物価高ですって。(「そのとおり。こんなに高かったら来ない」と呼ぶ者あり)本当、こんなに高かったら来ないって、民主党さんまでいっているんだから、(笑声)これは共闘できると思っている。
 それで、例えばウエルカムカードが我が党の提案で実施されることになっているわけですけれども、ワールドカップの開催時に、この利用者に都内のさまざまな文化施設などの入場が料金割り引きできるような、こういう施策展開をすべきだと思うんです。
 イギリスでは、外国籍のパスポートを提示すれば、例えばロンドンのナショナル・ギャラリーや大英博物館は無料という例もあるんですね。実現を前提に検討されたい。
 というのは、日常的な滞在中の経費は物価高で大変かかる。しかし、そういう点に配慮した都の姿勢というものが、外客にはようく伝わるわけでありますから、ぜひ実行されたいと思いますが、担当局長、どうでしょうか。

○浪越産業労働局長 鉄道路線などの案内図や緊急連絡先、あるいは割引施設などの情報を掲載いたしましたウエルカムカードは、外国人旅行者を温かく迎えるための有効な手段であると考えてございます。
 このために、ワールドカップ大会開催時に、協力を得られた都内の文化施設などの割引が受けられるウエルカムカードの作成を準備しているところでございまして、ホテル、旅館及び空港等で配布したいと考えております。
 今後とも、ワールドカップでの成果を確認しながら、ウエルカムカードによるサービスを検討していきたい、そのように考えております。

○木内委員 あわせて、来月から生文の方に都内の文化施設は集約、移管ということになりますね。生文局長に聞くのですけれども、都内の文化施設、申し上げた趣旨で、日韓のワールドカップの例えばチケットを使ったり、今いったカード等の利用によって入場割引ができるような、そういう施策を進めてもらいたいと、一つ思います。
 それから、もう一つ。まだ確定できないのですけれども、朝鮮通信使の歴史というのは、知事の方がご存じだと思いますが、かなり古いもので、室町にまでさかのぼれるようですね、どうも歴史が。絵巻物に残っているのは、秀吉のころであるとか信長のころになるわけですけれども。すなわち、近年における短期間の日韓の交流の空白は別にして、長い歴史があるわけで、この際、ワールドカップの開催に合わせて、日韓交流の文化事業なども盛んに展開されてはどうか、こう思うのですが、これは生文局長でいいですか、答弁をお願いします。

○高橋生活文化局長 ワールドカップのサッカーの大会に向けまして、ウエルカムカードやワールドカップチケットの提示による割引を、都の文化施設としても実施するほか、在京大使館を対象とした見学会を既に開催しましたが、観光業界と連携して各国へ情報提供したり、来日外国人やメディアに対して、ホテルなどで資料配布するなど、都立文化施設の存在もPRしてまいりたいと思います。
 さらに、その文化施設の中で、今、先生のご提案になりました朝鮮通信使につきましても、日韓文化交流ということで江戸博でやることを既に予定をしておりますが、そうした特集展示の実施や、日本の若手写真家の展覧会の開催など、そうした内容を工夫をしたり、それからボランティアガイドの活用による外国語の説明など、きめ細やかなサービスを提供することにより、東京の文化の魅力を、この際、積極的に海外に発信していきたいと思います。

○木内委員 産労局長も生文局長も大変前向きな答弁でありますので、一刻も早い実現を要請をしておきたいと思います。
 関連して、文化芸術施設における料金システムと寄附金のあり方についてであります。
 ある方に先般聞きましたら、ニューヨークのある美術館に行って非常に感動をしたと。この感動を、美術館の、あるいは博物館ですか、運営資金の一助にということで寄附金を申し出たら、ありがたい申し出だけれども、もしそういうことであれば、売店でこの館のグッズを売っているので、これをぜひ買ってほしい、この売り上げを施設の運営費の一部にしたいというようなことがあった。むしろそのシステムにも再び感動をしたという話を聞きました。
 もう一つは、やはりニューヨークのある、これはメトロポリタンミュージアムなんですかね、こういう掲示があるそうです。ウイ・アスク・ユー・ツー・ペイ・テンダラーズ・サジェステッド、目安として十ドルお願いしますと。お心のままにというやつですね、寄附金。いわばお金を払ってでなく、料金制とは別に、感動や関心や胸の高まりによって、みずから料金を決めて払うという寄附金制度、こういったものが世界の先進的な施設では行われているケースがあるんです。一定の入場料金の設定も前提としながらでも結構ですけれども、ぜひこういう寄附金制度のあり方というものも検討していいのじゃないでしょうか。文化は心の福祉だといいます。この文化を支えていく一つの姿として、寄附金制度の検討もされてはどうか、こういうお尋ねです。

○高橋生活文化局長 文化施設の運営につきましては、世界のさまざまな国で、歴史的背景や市民の考え方、あるいは税制の仕組みなどに応じて、多様な方法をとっております。
 ご指摘のような、メトロポリタン美術館があるアメリカでは、運営経費の多くを入場収入や、個人及び企業の寄附金等から得ております。
 日本では、大半を自治体や国が負担をし、特に広く鑑賞の機会を提供しておりますが、入場料や使用料として受益者にも適切な額のご負担をと思っているところであります。
 これからの文化施設の運営に当たりましては、このような、既存のシステムにとどまらず、文化に関心を持つ人が寄附や協賛金などで施設に財政的に支援をしたり、あるいはボランティアガイドなどでの貢献をしていただけるようにすることが重要だと考えております。
 今後、例えば友の会制度というふうな形で賛助会を--今、写美等で既にもらっておりますけれども、友の会の制度の充実など、文化施設の運営の手助けとなるような仕組みを考えてまいりたいというふうに思います。

○木内委員 政策を聞くとどうも友の会制度とかグループ化とか、何々の会となっちゃうのだけれども、それはそれで貴重な存在だけれども--これはもう答弁は結構ですから、私が申し上げるのは、そういったものも一つの文化振興のあり方、都民と芸術とを結びつける大きな礎になるのではないかということですから、含めて検討されることを要請します。
 さて、さっきちょっと申し上げましたけれども、知事、大分あれのようですから、今の議論、観光政策等をいろいろお聞きになって、後ほど一言ご感想等をいただきたいと思いますので、お願いしたいと思うのですが、もう一つ、トイレ、これが外人の、欧米人の女性には不評です。洋式のトイレがないために、地獄の苦しみでしょうね、恐らく。しゃがめないんですって、西洋人の女性は。浅草の雷門、仲見世通り、両側の裏側四カ所、公衆便所があります。私はガイドさんからそれを聞いて、行って見てきました。そうしたところ、四カ所とも全部、狭いオープンなトイレ、男女共用、和式一カ所。外人の女性はそこへ行って、とてもじゃないけどって、尿意をこらえて逃げ出したという、こういうトイレです。
 観光地、人の集まるところ、動線の集中するところ、こういったところについては、ぜひトイレの環境整備、これもお願いしたいと思いますが、答弁、どこになりますか。

○浪越産業労働局長 観光産業振興のためには、旅行者が東京で快適に過ごしていただく環境の整備を図ることが重要でございます。
 都内観光地のトイレの現状は、ご指摘のように、まだまだ十分とはいえない状況ではございます。
 しかし、トイレの設置は、基本的には施設の設置者が責任を持って整備すべきだと考えておりますが、今後、主要な観光地のトイレ整備について、都としても、区市町村や民間事業者にその重要性を呼びかけていきたいと考えております。

○木内委員 局長、これはもう答弁要りませんけど、私、その後いろいろ調べてみたんです。東京都固有の施設、公園等にトイレがいっぱいあります。で、洋式便所がないところがあるんです。区市町村との連携も結構。しかし、都が独自に進められるところは、担当局とよく相談して進めていただくように要請します。謹んで答弁をいただきます。(笑声)

○浪越産業労働局長 ご指摘の点を踏まえ、関係各局とも十分ご相談させていただきたいと思います。

○木内委員 ご相談の上、実現に向けて懸命な努力という意味ですからね。(「流さないでよ」と呼ぶ者あり)そういうふうに受けとめておきます。
 時間の関係で次へ参ります。
 もう一つ、私は観光産業育成また振興のために、一つ知事に提案を申し上げたいのですけれども、CNNニュースで韓国の金キム大中・デジュン大統領が、韓国はどんどん変わっています、新しい韓国に来てください、こう呼びかけているコマーシャルがあるんですね。
 私は見ておりません。仄聞するところ、ニューヨークのジュリアーニ市長がそれをやっている。ハワイの州知事、それからブッシュ大統領もアメリカの観光コマーシャルに出ているんです。
 私ね、例えば石原知事が出たらどうでしょうかなとガイドさんに聞いたんですよ、懇談の席でスパゲッティを食べながら。そうしたらいってました。今、キーワードはジャパンよりも東京ですって、外国人から見て。それで、小泉さんよりも石原知事さんいいですねと、例えば。それで、知事ね、テレビコマーシャル検討してくれませんか。お出になって、東京へどうぞというやつ。

○石原知事 それはギャランティーが出るんですかね。(笑声)まあ、それは冗談でありまして、そういう機会があったら、喜んで協力したいと思います。
 大体、日本は自分自身の宣伝が下手でして、早い話が、このごろハーバード大学の学生食堂にもすしバーがありますが、すしがすばらしいというのを発見したのは、日本人がアメリカ人に教えたのじゃなく、アメリカ人が自分で発見した。事ほどさように、本当に日本人というのは自分の宣伝が下手で、説明が下手でしてね。
 私、ついでに申し上げますと、観光ってやっぱりすごい産業だなと思ったのは、ちょっということは面映ゆいのですが、小樽に弟の記念館ができまして、要するに、あれの相乗効果というのはすごいもので、その市長が親しい人なんですけど、たまげてましたが、開設その年に、小樽というのは人口十万ぐらいの町でしょうか、小さな町ですけど、その市全体の飲食店の売り上げが三倍になったと。これは、ちょうどそばにある運河と相まって、ほかに観光資源のないところですから、殊さら効果があったのですが、その他この他、私は、東京はもういっぱい観光資源があるんです。
 この間、区長会議で、各区の呼び物、売り物を挙げてくれたら、東京が編集して歳時記に沿って流しますよと。例えば、どこでどんな花火をやっているかというのをみんな知らないんですけども、みんな喜んでくださいましてね、おっしゃるとおりで、まあCNNのコマーシャルも結構でありますけど、本当に観光というのはすばらしい産業で、大きなお金もうけにつながる。東京にはいっぱい名所があるのに、日本人のお客様も、来ると非常に不案内で、どこへ行って何があるかわからないという現況でございますから、労経局に移しましたので、一生懸命その宣伝を努め、収入に努めるつもりでございます。

○木内委員 そういうことですから、浪越局長よく受けとめて、検討準備を進めてください。
 それから、小樽、石原家の近くへ行ってきまして、裕次郎さんが登ったかもしれないという木にさわってきましたけどね。
 それから次に、臭気対策。
 やはりさっきいった物価高と、もう一つは、突如として襲ってくる町中での臭気の襲来というやつ、これは経験がおありだと思うんですけれども、卵のにおうようなこのにおい、物すごい街成化の歴史の長い町であっても、これが逆にあるんです。これは、観光の目玉、アトラクティブなものをつくることも大事だけれども、一瞬にして好印象を吹き飛ばしてしまうような町の悪臭を、やはり撃滅をしなくてはいけないということであります。
 そこで、二年前に私は、都心区の著名なホテルが二カ所、しょうしゃなフランスレストランや国際的なブティックが並ぶ先進的な通り、ここの町会の方からご相談を受けて、鈴木下水道局長、当時、中部事務所の所長さんでしたよね、現地でお会いさせていただいて、何とかここを、物すごいにおいがするけれども、何とかなりませんかと。技術畑出身の鈴木さんは大変ご苦労くださって、二年を経て、知事、大変な減殺効果が今出ているんです。
 それは対応策は二つです、端的にいって。まず、においのもとを断つこと、それから、出てしまったにおいを、ふたをして表に出さないこと。
 まず前者については、ビルの中にある貯水槽、ビルピット、これが週末になって二日、三日たちますと、もう腐敗をして悪臭が出てきます。こういった、いわゆる低水位にするようなことでありますとか、これを攪拌することによって、いわばそうした悪臭を防ぐという根源的な対策をすること。
 これについては、それぞれビルの事業者がありますから、大変対応が困難。協力を仰ぐしかないということです。今申し上げた地域では、十五の事業所がありました。そのうち十二までが協力してくれた。残る三つは十四年度中に全部対策を講じてくれるということで、においがほとんどなくなったのです。具体的な地名は、語弊がありますから申し上げませんけれども、弁慶橋の近くです、あそこのね。(「いっちゃったじゃないですか」と呼ぶ者あり、笑声)いやいや、すばらしくなったんだから、それは。今はなったからね。
 それで、もう一つは、下水道局が開発した「防臭くん」といいまして、においを防ぐというのがあるんです。水は下へ落とすけれども悪臭は上に上げないというのを開発しまして、これを、あの通りだけである二十数カ所の側道のマンホールに全部はめたのです。これによって地元の方は大変喜んでくださる結果になりました。これは日本全国、東京都内はもとより、先進的な成功例であります。
 これについて簡単なご報告を、下水道局長。

○鈴木下水道局長 お話の地区では、以前から臭気に対する強い改善要望がございまして、これまでも管渠の清掃などさまざまな対策を講じてまいりました。しかし、先生がおっしゃるように、なかなか成果があらわれませんでした。このため、臭気の出口である雨水ますに設置している防臭装置について、お話しのように改良を重ねてきたわけでございます。
 また、対象となる十五のビルの所有者などに粘り強く働きかけまして、臭気発生の原因究明を行い、ビルピットが原因であることについてご理解をいただきました。
 その上で、ビルの所有者などの協力を得まして、ビルピットの清掃の徹底、それから、先ほどもうお話しのとおりでございますが、低水位運転、水中攪拌曝気装置の設置など多様な改善を図りまして、結果といたしまして、臭気対策の効果があらわれたものでございます。

○木内委員 答弁の要旨が字数が限定されているというんで、じゃあ、私の方で概略申し上げて、(笑声)あとは下水道局長に認めてもらおうという、こういう話ですからね。それで、もう時間が迫ってきましたので、端的に続けてお聞きします。
 この成果を生かして、十四年度、地域を特定して事業の展開をさらに図るべきだと思いますし、そうした技術的ノウハウ等を、国内はもとより世界じゅうにも発信されることが肝要かと思いますが、あわせてご答弁願います。

○鈴木下水道局長 臭気対策につきましては、臭気の発生が多い地区などを重点化いたしまして、速やかに取り組んでいくこととしております。
 現在、新宿区西新宿地区におきましては、地元区と臭気対策にかかわる協定を締結いたしまして、区との役割分担の明確化を図り、地元町会やビルの所有者への説明会を実施するなど、臭気解消に向けた取り組みを進めているところでございます。
 引き続き、理事ご提案の趣旨を踏まえまして、これらの方策を港区新橋地区や千代田区内神田地区などに拡大してまいりたいと考えております。
 また、この技術につきましてですが、都は下水道の維持管理につきまして、長年の積み重ねによりまして豊富なノウハウを有しております。今回のような臭気対策に効果のあるすぐれた技術や手法につきましては、研究発表や専門誌への掲載など、さまざまな機会を通しまして、他都市に積極的に紹介してまいりたいと考えております。

○木内委員 さて、福祉改革についてでありますが、知事からご答弁をと思いましたけれども、別の機会に譲らせていただきます。でも、せっかくご用意いただいたから、いいですか。
 それじゃ、福祉改革の方に参ります。
 我が党は、二十一世紀型ともいえる今後の福祉のあり方として、時代の変化に的確に対応できる新しい福祉改革を、財源対策も含めて、具体的な提案のもとに主張してまいりました。
 東京都はこうした我が党の提案を受けとめて、昨年、福祉改革推進プランを策定し、さらにこのプランを具体化、発展させるために、今回、TOKYO福祉改革STEP2を新たに示したものと理解しております。
 この一連の取り組みは評価するものでありますが、福祉改革の基本は、さきに代表質問でも指摘したように、あくまでもサービス水準の向上であります。その点を踏まえて、一、二点お尋ねをいたします。
 全国一律、施設中心の従来の発想に基づく福祉が行き詰まりを見せていることは、共通の認識に立っているところですが、そのために、STEP2では、利用者本位を徹底する新しいシステムの構築をうたっております。
 問題は、利用者本位をシステムとしていかに確立するかでありまして、この点を強く要望するとともに、具体的内容について答弁を求めます。

○前川福祉局長 利用者本位を徹底するために具体的な方策でありますが、これは当然ながら、まずサービスの質と量を拡充をしなくちゃいけない、地域の中でだれもが質の高い福祉サービスを選択して、安心して利用できるようにする、そういうことであろうと思います。
 そのためには、都独自の規制緩和も推進をいたしますし、それから、あわせて、利用者保護のための第三者によるサービス評価であるとか情報提供、さらには権利侵害等への相談対応など、こういった利用者保護の仕組みを身近な地域につくっていきたい。こういったすべてを合わせて、利用者本位を徹底する新しいシステムといっているわけでございます。

○木内委員 ところで先日、西東京市で、痴呆症状の高齢者の奥さんでありますけれども、同居していた夫の死んだのを理解できないまま、一カ月もの間、食事を出し続けたという痛ましい事件が起きました。
 私は、この一事をもってして、同情することにとどまらず、現場主義的な発想に立って、こうした事態が起きないような、今後の対策の展開が必要であろうということを想起するわけであります。
 そこで私は、ぜひこうしたひとり暮らしの高齢者、あるいは高齢者のご夫婦が、地域社会の中で、共助というシステムの中で、こうした事態が起きないよう、よく地域社会との連携の中でお元気に生き生きと快適な暮らしができるような、そういう環境づくりというものも行政の責務であろう、こういう視点から、例えばひとり暮らし高齢者カルテというものの作成を提案をするわけであります。
 プライバシーの問題、人権の問題等いろいろクリアすべき課題はありますけれども、高齢者のケアに当たって、個別に具体的にカルテを作成して、今指摘したような痛ましい事件が起きないよう、地域全体で共助の発想に立って取り組むための重要な対応策とすべき、このように考えるわけでありますが、前川局長、どうでしょうか。

○前川福祉局長 お話しの事例につきましては、私ども、まことに痛ましい事例であって、高齢者の生活を支える仕組みづくりを担う福祉行政の任にある者として、深刻に受けとめております。
 お話にありましたように、ひとり暮らしの高齢者の方、あるいは高齢者のみの世帯の方でありましても、家族や地域社会の支えを得ながら、地域の中で生活を続けていく、これを実現するためには、当然、それを支える地域社会全体での見守りといいますか、そういったシステムが必要であろうと考えております。
 そこで、当然、大変重い課題であって、プライバシーの問題とか、お話があったようにいろいろクリアすべき課題はあるわけでありますが、私どもとしては、ひとり暮らしの高齢者などが安心して住み続けられるように、現に区市町村が地域の社会資源を活用することなどによりまして、見守りや支援の仕組みを構築していく、こういった方向に持っていきたいというふうに考えております。
 都としては、こうした取り組みを行う区市町村を支援していくとともに、東京都としても、高齢者を地域の中で支える仕組みづくりについて、ご提案を含めて検討していきたいと、こう考えております。

○木内委員 大変内容の充実した答弁でありましたので、その施策の推進を強く要請をするものであります。
 それから、もう一点、幼児虐待の問題であります。
 さっき和田副委員長も触れられましたけれども、最も愛されなければならない親から虐待をされ、心のよすがを失い、まさに帰るべき母港を失ったように漂流する船に例えられるような、そうした子どもたちの事例が今大きく社会を震撼させているのであります。単なる行政システムだけではなく、血の通った施策の展開が必要だと思うのであります。
 これは、概括的に私は知事にお伺いいたします。
 治療援助を含めて一たんは施設に入れられた子どもが親元にまた戻れるような、親の指導、親の精神の構築、あるいはそういう環境づくりということが極めて重要だと思います。先ほど雑談をしたときにも申し上げました。けさ、著書の「わが人生の時の時」というのを読んでまいりました。極限状態における命のとうとさ、これにかけるまた人間の美しさというものを、きょう、知事の著書の中で再確認したわけでありますけれども、命のとうとさというのは、この虐待を受ける子どもにあっても同じことだと思いますので、ぜひ知事のコメントを答弁いただければと思います。

○石原知事 虐待される幼い子どもたちをどう守るかというのは、いろいろ手だて、方法があると思いますが、先般、福祉局に案内されまして、里親家庭というのを初めて拝見しましたが、非常に強い印象を、感銘を受けました。あれは非常に奇特な方々があってのことでありますけれども、東京はかねてから心の東京革命を主唱しておりますし、人と人の交流が本当に、都会でありながら希薄になってしまったために、若い夫婦が相談もできない、相談する相手もいるようでいない。まことに、そこで、近所に人がいながら孤立している若い親たちが、当たるところがなくて子どもをいじめるというような事態が頻発しているわけですけれども、これはもうとにかく深刻な問題でありまして、里親家庭の普遍も含めまして、多角的に複合的にいろいろ手を尽くして、とにかく積極的に考えていかざるを得ない問題だと認識しております。
 今、私ここでそれ以上のこと答えられませんが、ちょっと私自身にとっては想像できないような事態が若い人の家庭に起こっているというのは、本当にただただ慨嘆するだけでも済まないことでありますけれども、行政としてもできるだけの手を尽くしたいと思っております。また何かアイデアがございましたら、ひとつお教えいただきたいと思います。

○木内委員 いみじくも知事から、アイデアがあったらということで、幾つか用意しておりますので、別の機会にこれは訴えながら、また福祉局とも連携をとって進めていきたいというふうに思います。
 次に、三宅島の問題であります。
 一日も早い帰島を目指しながら、避難島民の方々は今懸命に日々の生活を送っておられます。
 具体論で一つだけ、今有毒ガスの測定は山ろくの複数箇所で行われているわけでありますけれども、ある学者の指摘によりますと、これは非常に不確定な要素を実は包括してしまう場合があると。予知連の見解、判断基準への影響等も考え、より一層正確な火山性ガスの測定をすべきではないか、こんなふうに思います。
 今、聞くところによりますと、災害対策部の方では随分とご苦労をされまして、実際に工夫をして、火口底にまで何か測定機をおろすような、そんな工夫をして実施されるようですけれども、どうなっているんでしょうか。

○大関総務局長 現在、ご案内だと思いますけれども、火山活動の観測、これは望遠カメラによる噴煙の高さ、あるいは気象庁が調べておりますガスの発生量と火山の温度、それからもう一つが、環境局が観測しております二酸化硫黄ガスの濃度調査、この三つをやっているわけでございます。ただ、これはいずれも遠いところからやっているものですから、なかなか正確なガスの把握ができないという状況にございます。
 先生ご指摘のとおり、一番近いところ、いわばガスの噴火口まで測定機を入れちゃいまして、それで調査しようと今研究しています。どういう入れ方がいいか、例えばこういう、図面でちょっと恐縮ですが、いろいろな貨車に機械を積んで落とすやり方とか、銃で撃ち込んで入れるやり方とか、いろいろ検討しておりまして、このどれかをまず実現させまして、より正確な測定をしていきたい、このように考えております。

○木内委員 随分原始的な道具のようですけれども、木の車なんでしょう、輪っかつけて。そこに観測機を乗っけて、ひもにつないで火口底におろして、引き揚げるという、そういうことですね。ぜひ正確な観測をされるようお願いしたいと思います。(笑声)原始的だけれども、非常に正確なようですね。
 それからもう一つ、避難島民からの極めて重要な要望がありました。今まで五時間程度の一時帰島のときの島での滞在時間であった。まことにうれしいけれども、同時に半面寂しい、何とかこの滞在時間を拡大できないか、一泊でも船中泊でもいいからと、切実な要望が私どものところにありました。確認をしてみたら、やはり総務局の方でいろいろ工夫をして、これまで以上に、さらに滞在時間の拡大をされるようですけれども、まだ公式には発表されていないようですから--発表されているんですか。ああ、した。それでは答弁は結構ですが、いずれにしても、早い竹芝出発で遅い竹芝到着ということで、八時間ぐらいの滞在になるようですね。そういうことでよろしいですか。

○大関総務局長 そのとおりでございまして、毎週月曜日に募集しまして、乗せていただいて、応援の方もお手伝いしてもらって、荷物も運んでこられるような、そういう仕組みにしました。

○木内委員 以上で終わります。(拍手)

○土持副委員長 木内良明理事の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩いたします。
   午後六時二十分休憩

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