東京都議会予算特別委員会速記録第五号

○田村委員長 藤田愛子委員の発言を許します。

○藤田委員 まず初めに、臨海副都心開発について伺いたいと思います。
 私たち生活者ネットワークは、この臨海副都心開発、当初から関心を持ってまいりました。
 きっかけは、この地域のごみ収集システムでしたけれども、調べるうちに、この計画は、都市計画としても、また財政計画としても、バブルに乗って一挙につくってしまう、まちをつくってしまう、非常に無謀なことだということがわかりました。私たちは、このために、開発のストップではなくて、情報公開と都民参加で見直して、規模を縮小することや段階的な開発を提案してきました。最大の見直しは平成九年の見直しで、一部提案が取り入れられましたけれども、多くの点で不十分でありました。そのことをまた指摘してきたつもりでございます。
 この間の議論で、この平成九年二月に策定した長期収支を見直すことを明言されています。事業について庁内の検討機関をつくるとのことですけれども、なぜ会計統合が先行するのか、順序が逆ではないかと考えます。しかも、これまでの質疑では、理由は、財政基盤の強化策であるとか、あるいは原因としては厳しい経済状況などということを挙げておりますけれども、非常に抽象的でわかりにくいわけです。
 では、この平成九年に立てた収支からすると、三会計統合による会計間の借入など、バランスシートや収支上の効果はどのようなものか、伺います。

○齋藤港湾局長 三会計統合は、他会計からの借入金約三千六百億円や、その利子年間約百億円になりますが、これらを消滅させることから、負債を圧縮し、資金収支を改善する効果があります。この結果、会計統合を行うことにより、収支両面にわたる改善策も相まって、臨海副都心開発事業の長期収支試算における収支均衡年次が、現行の平成四十八年度から大幅に短縮できると考えております。

○藤田委員 バランスシートのこともちょっとお伺いしたわけですけれども、埋立会計が出資している約六千七百億円の現物出資はどんなふうになりますか。

○齋藤港湾局長 埋立会計の現物出資でございますけれども、三会計統合によりまして、会計間の資本、負債、それから資産すべて統合されますので、埋立会計による現物出資は、新しい会計の資産となります。

○藤田委員 会計統合によりまして、バランスシートで三千六百億円、そして、今お話のありました自己資本で六千七百億円、合わせて一兆一千三百億円が消滅をしてしまうわけです。これまでの議論で、親会社、子会社の関係であって、借金の棒引きでないというふうに答えがありましたけれども、確かに一般財源ではありませんけれども、都民の財産にはほかならないわけです。無理な開発計画の穴埋めに、財政基盤の強化という抽象的な理由では、到底納得がいきません。
 しかし、長期収支の採算が問題であることは間違いなさそうだというふうに思います。
 さきの公営企業決算委員会で、採算の合うような望ましい土地価格を平米百八十五万円と答弁された根拠は何でしょうか。

○齋藤港湾局長 臨海副都心開発事業の回収すべき経費は、企業債約五千二百億円、他会計借入金約三千六百億円など、合計で約二兆円と試算されます。これを、今後処分可能な土地として見込んだ約百八ヘクタールで割り戻すと、一平方メートル当たり百八十五万円程度になると概算でお答えしたものでございます。
 しかし、三会計を統合しますと、他会計借入金等が消滅するため、回収すべき経費が縮減され、この価格は大幅に低下いたします。このことによって、事業の採算性が格段に向上すると考えております。

○藤田委員 ところが、実際はどうかといいますと、さきの都市・環境委員会では、最新の処分価格が平米九十二万円であったということが明らかになっています。収支の均衡のためには、この臨海副都心の土地価格が倍以上にならないとだめだということです。平成九年の見直しやここで立てた長期収支がいかに甘かったか、そして、この事業の破綻は私は明白であるというふうに思います。もちろん、こうしないためにも会計統合ということになったんだと思いますけれども、これまでの質疑で、収支は均衡すると答弁されました。
 それでは、会計統合すれば、長期収支の見直しは必要ないのかということでありますけれども、実際には長期収支を見直すというふうに今お答えになりました。一兆一千三百億の消滅でもまだ足りないということではないかというふうに思います。いかにこの事業の危機が深いかということであります。
 問題はこればかりではありません。民間会社の調べ、ごくごく最近のものでありますけれども、ビルの更新という事情もありまして、二〇〇三年には、大型オフィスビルの供給が、史上最大の二〇〇〇年の二・五倍の百七十二万平米供給されるそうです。しかも、その八割が都心三区で、百四十八万平米供給される。臨海高速の大崎延伸はありますけれども、都心への回帰という中で、臨海副都心地域は、利便性そして価格対抗力、価格は、採算性との間で板挟みであり、非常に厳しい状況だというふうに思います。
 こうした中で、どうしても事実上の一般財源支援をという声は、水面下でも聞こえております。有明の丘地域の有償移管、こんなことがいわれておりますけれども、いろいろ理屈はついておりますけれども、この案は、一般財源による支援という側面が極めて強いといわざるを得ません。
 臨海開発について、歴代の知事は、私たちの質問に対して、都民の税金は一切使わない、一般財源は使わないというふうにいってきましたけれども、会計統合を提案している現段階でも、そのようなことがいえますでしょうか。

○齋藤港湾局長 臨海副都心開発は、これまでも、道路、公園等の地域内都市基盤を開発者負担により整備するなど、いわゆる開発利益の還元方式により進めることで、極力都民負担を抑制してきており、また、議会においてもこのようにお答えしてまいりました。
 事業を取り巻く経済環境は依然厳しいものがありますが、これまでどおり都民負担を極力抑制しつつ、開発を着実に進めていくためには、三会計の統合がどうしても必要であります。

○藤田委員 私も、今の質問への答弁を八年間同じように聞いてまいりましたけれども、やはりニュアンスがだんだんだんだん変わってきているのを感じています。
 さて、平成九年長期収支計画を見直していくというふうにいっていらっしゃいます。検討機関をつくるということもいっていらっしゃいます。その中で、私たちは、公募の市民や専門家も入れるべきであるし、事業そのものもトータルに見直すべきで、今後整備が残っております、まだ多大な投資があるとされている広域交通基盤整備量についての見直しが必要だというふうに思っています。
 少なくとも長期収支について複数案の提案をして見直すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○齋藤港湾局長 臨海副都心開発は、過去、バブルの崩壊という経済環境の激変を受け、都民も参加した懇談会や都議会での議論を経て開発内容の見直しを行い、現行のまちづくり推進計画を策定いたしました。
 現在では、既に地域内都市基盤の約八割が完成し、進出企業や来訪者でにぎわうなど、まちは活況を呈しており、現行計画の基本的な方向や東京構想二〇〇〇を踏まえて、今後とも開発を着実に推進していく必要があると考えております。
 しかし、事業を取り巻く経済環境は厳しい状況にあることから、外部の専門家の知恵も活用しながら、事業の収支改善のための財政基盤強化に向けた改革に大胆に取り組んでまいります。
 三会計統合後の長期収支については、今後設置する関係局による協議・検討機関での収支改善策に関する検討結果を踏まえて試算し、できるだけ早期に都民に明らかにしてまいります。

○藤田委員 私は、臨海副都心開発について、収支と都市計画の無理の問題をいってまいりましたけれども、最大の問題は、投資についての説明責任が果たされていないということだと思っています。もちろん、行政という立場だけでなくて、なれない売り手、不動産業のような役割を果たすためか、なかなか欠点についての情報や説明が十分されてきていないことも問題だと思います。
 しかし、都民の財産をつぎ込む以上、このままでは決して不信が解消されないということを強調しておきたいというふうに思います。
 次に、少子高齢化社会での重要な課題であります女性と労働について伺います。
 パート労働については、パート労働法が制定されましたが、実態として均等待遇が保障されていないことは明らかであります。
 パート労働は、身近な地域における就業問題です。このような中で、都では、個別労働紛争に対応する制度として、平成十三年度から、個別的労働紛争調整委員制度を設置するというふうに聞いていますけれども、どのように取り組んでいくのか伺います。

○浪越労働経済局長 労政事務所では、パートタイム労働問題について、従来から、労働相談やあっせんを通じて労使紛争の解決支援に努めてきたところでございます。
 今日、労使紛争が複雑、多様化する中で、職員によるあっせんでは解決することが困難な事例が増加しており、相談、あっせんの実効性を一層高めるため、外部の有識者から成る個別的労働紛争調整委員制度を設けるものでございます。この制度を有効に活用することは、パートタイム労働者等の紛争解決にも資するものと考えております。

○藤田委員 ヨーロッパでは常識とされているパートとフルタイムの均等待遇を実現するために、ILOの家族責任条約やパートタイム条約の内容を踏まえた具体的な施策が必要だと思います。例えば、労働条件の明示、雇い入れ通知書をつくって、事業者みずから制度化することに手を挙げた事業者と都が協定を結ぶ、これを公表する制度を設けて評価していくことを検討すべきだと思っています。
 パートとフルタイムの均等待遇を実現していくために、こうしたインセンティブを都として考えるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○浪越労働経済局長 都は、これまでも、パートタイム労働者の雇用管理の改善に向け、いわゆるパートタイム労働法やパートタイム労働指針の普及啓発に努めてきたところでございます。
 昨今、パートタイム労働者が増加する中で、労使の紛争についても増加の傾向が見られます。このため、都は、事業主団体と定期的に意見交換を行い、法の遵守について要請するとともに、パートアドバイザーによる企業訪問を行ってきたところです。
 また、現在実施している女性の能力活用や仕事と家庭の両立支援に積極的に取り組んでいる企業を表彰する男女労働者に優しい職場推進企業表彰制度の中で、パートタイム労働指針で示された基準を上回る雇用管理を行っている企業も今後表彰の対象とするよう検討してまいります。

○藤田委員 この予特の中で、私は、自己決定をするための情報開示ということをいろいろな角度から述べてきたつもりです。今、だれもが責任をとらない、あいまいな状況、政治も行政も市民社会にもそういうことがあります。臨海副都心開発も、バブルがはじけたとはいえ、説明責任が足りないという点では同様だと思っています。
 患者の権利の問題、それから消費者の選択権、女性、子ども、高齢者の自己決定権ということで、私は、自己決定をするための情報の提供の仕組みということが必要だというふうに述べてまいりました。
 この状況をぜひつくっていくことをお願いしたいと思いますけれども、知事の見解をお伺いして、終わります。

○石原知事 これからは、自己責任に基づいた多様な選択が可能な社会を築いていくことが大事だと思います。そのためにも、まず、都民が必要とする情報が適切に供給されることが不可欠だと思います。
 例えば食品の安全性などに関する情報の開示とか、都立病院におけるカルテ等診療情報の開示、あるいは第三者による福祉サービスの評価の公表など、都民がみずからの責任と判断で決定できるような情報提供のシステムづくりに努めていきたいと思っております。
 いずれにしろ、よらしむべし、知らしむべからずという、そういう中央集権的な姿勢というものはこれからはあり得ませんし、非常に危険なものでありまして、やはり良識のある国民、都民が、自分の判断で自分の立場を守るなり判断するという、そういう情報の提供というものは、これからの行政に不可欠なものだと心得ております。

○藤田委員 ありがとうございました。(拍手)

○田村委員長 藤田愛子委員の発言は終わりました。
 以上をもちまして、付託議案に対する締めくくり総括質疑は終了いたしました。
 お諮りいたします。
 第一号議案から第二十九号議案までに対する質疑は、これをもって終了したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○田村委員長 異議なしと認めます。よって、本案に対する質疑は終了いたしました。
 なお、明日三月二十七日の午前十一時から理事会を控室一で、また、午後一時から委員会を本委員会室で開催いたしますので、よろしくお願いいたします。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後七時五十三分散会

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