東京都議会予算特別委員会速記録第四号

○前島副委員長 古賀俊昭理事の発言を許します。
〔前島副委員長退席、白井(威)副委員長着席〕

○古賀委員 順番を少し変えまして、最後の方から始めてみたいと思います。
 去る三月二日に、私たち都議会が平成十一年度一般会計予算に付帯決議を付してその完成を求めてまいりました東京空襲犠牲者を追悼する慰霊碑が完成し、私も出席いたしてまいりました。この東京空襲犠牲者の追悼碑の建設に至る経過は、いろいろ犠牲者の遺族の皆さんの意向もあって、その建設場所、時期、形態等についてさまざまな意見がありました。しかし、場所等の問題は、いろいろな懸案として残った感も多少否めませんけれども、戦後五十六年にしてこの慰霊碑が完成した。経済大国において、十万人以上の皆さんが犠牲になったこの慰霊をするための追悼碑が完成した。これは大変大きな知事の決断であり、評価できるものだというふうに思います。
 この空襲犠牲者の皆さんの願いは達成されたわけでありますけれども、当日おさめられました名簿につきましては、六万八千名余ということでありましたから、まだお名前が判明していない皆さんが多数おられるということでありますので、今後、東京都は、この名簿の収集並びに取り扱い等についてどう取り組んでいくのか、この点ひとつお聞かせください。

○高橋生活文化局長 東京空襲犠牲者名簿につきましては、これまで、都や区市町村及び全国の自治体のお知らせ、あるいは町会の回覧、平和の日の記念行事等、さまざまな機会を活用して広報に努めまして、空襲で犠牲となられた、今、先生数字を発表されましたけれども、六万八千七十二名のお名前を収集し、二十八冊の名簿に記名して、先般、碑の中におさめたところでございます。
 都といたしましては、犠牲となった方々を追悼し、平和を祈念するため、一人でも多くの方のお名前を収集し、名簿に登載したいと考えております。
 今後も、都の広報媒体の活用はもとより、他の自治体の広報誌への掲載依頼、遺族、関係団体などの協力も求めながら、引き続き収集に努め、年一回程度名簿に登載し、碑におさめる予定でございます。

○古賀委員 当日の式典の模様について、ちょっと私の所見を述べておきます。
 この東京空襲犠牲者の追悼碑の早期建立に取り組むことというのは、平成十一年度の一般会計の付帯決議としてつけられたものであります。これに共産党は反対をしたわけでありますけれども、当日出席をして、議員の皆さんもお見えでした。この式典の冒頭、国歌斉唱がございましたけれども、共産党の都議会議員が起立を拒み、全員が起立する中、座り続けた問題は、見過ごしができない、参列者に対する大変非礼な行為であったというふうに思います。
 これは、主義主張であるとか、思想、信条の問題ではなく、主宰者の意向に従い、その式典に参加した以上は、その流れにのっとるというのが、私は儀礼的な行為として常識ではないかというふうに思うわけです。実に許しがたい、礼節にもとる行為であったというふうに思います。遺族の皆さんがご起立されている中でのことでありましたので、この非礼な態度については、私は、参列者、遺族に対して、著しく礼儀を欠いた行為であったということは、指摘をしておかなければならないというふうに思うわけです。
 私は、この慰霊碑の碑文を見まして感じたことがあります。
 それは、東京裁判というのがありましたけれども、東京裁判で、起訴されました全被告の無罪を主張いたしました、十一人の判事の中で、唯一の国際法によって学位を得たインド代表のラダビノード・パール判事のことであります。
 このパール博士は、東京裁判の後、昭和二十七年、四年ぶりに日本を訪れて、広島市を訪問いたしております。この広島市を訪れた十一月の四日という日でありますけれども、世界連邦アジア会議に出席します。その後、広島市長の案内で原爆慰霊碑に参拝をする。黙祷をささげた後、通訳に碑文の意味を尋ねております。その内容を聞くと、パール博士は怒りを顔にあらわして、過ちを繰り返さぬとは何たることか。ここに祭られている霊は、皆原爆の犠牲者ではないか。原爆を落とした人間の謝罪なら話はわかるが、被害者の遺族たちや同胞が再び繰り返さぬといっても、それは何になるのか。そのほかいろいろありますけれども、痛烈にその場にいた広島市長に詰問しております。
 このことは、当時、広島地方、中国地方で広く読まれております中国新聞に詳しく報道されている事実であります。このパール博士の指摘は、この東京空襲犠牲者の慰霊碑について、そのまま当てはまるのではないかというふうに思うわけです。つまり、東京都の場合には、この広島のパール博士の慨嘆をきちんと踏まえて、こういった指摘が全く当たらないような形でこの碑を完成させたということであります。
 ちなみに、このパール博士は、翌日、広島市民の、博士であればどのような碑文を書きますかという求めに応じて、半日瞑想した結果、戦死者の心を祈り、大東亜戦争の意義に思いを潜めて、ベンガル語で詩を書いております。その内容はここで一々紹介はいたしませんけれども、広島市の本照寺というところにきちんと石碑に刻まれてありますので、広島に行かれた折には、原爆のいろいろな施設はありますけれども、ぜひここにも訪れてもらいたいというふうに思うわけです。
 空襲犠牲者の追悼碑は、主語、述語がきちんとしております。私が必ず盛り込んでもらいたいと願っておりました、だれが空襲をしたのか、ここにはアメリカ軍のたび重なる空襲によるというふうに記されております。また、だれが犠牲になったか、大方の非戦闘員である多くの都民が犠牲になった。つまり、国際法で禁じられている非戦闘員へのこれは無差別テロであった、攻撃であったということがはっきりと記されているわけであります。広島のようなことにならなくてよかった、そういう思いを持ってこの式典の会場を後にしたことを申し添えておきます。
 私どもの会派が、本会議の代表質問において、さきの戦争に関連し、硫黄島の遺骨収集について知事の所見を伺っております。硫黄島は、ご存じのように大激戦が行われた地でありまして、当時、アメリカ軍の猛烈な空爆と艦砲射撃によって、島の草木は一本もないというふうに攻撃を受けたわけであります。米軍は、上陸後五日で占領できる、攻略できるという判断をしておりましたけれども、実際には一カ月以上攻略にかかった。
 これは、昭和十九年の七月から配備されました、栗林中将以下、陸海軍二万一千名の奮闘によるものであったわけであります。深さ二十メートル前後、延長十八キロメートルに及ぶ大地下陣地を築いて米軍と相対峙した。この硫黄島の戦いでは、あのロサンゼルスオリンピックの馬術の金メダリストとしてその名を知られた戦車隊長西竹一中佐も戦死を遂げております。この硫黄島の戦いについて、米軍の海兵隊指揮官のホーランド・スミスという海軍中将は、その回顧録の中で、栗林中将を、太平洋戦線でまみえた敵指揮官の中で最も勇敢であったと記しております。
 この硫黄島は、東京都の行政区域であります。知事は、遺骨収集についていろいろこの島をお訪ねになっている経験から、島の気候や不発弾処理の問題に触れて、今後、島全体を慰霊の象徴的なモニュメントとすることもよいのではないかというふうにお話をされました。関係者、旧島民、また遺族の皆さんも、その知事の答弁には大変心を打たれるものがあるというふうに思います。
 今後一層、旧島民の方々、あるいは亡くなられた関係者の遺族の皆さん方のために、東京都の行政区域内でありますので、ぜひこれからも、この問題、残された課題について、国あるいは関係機関に強く働きかけを行っていただきたいというふうに思うわけです。
 この戦争による犠牲者の皆さんの慰霊の問題については、私は、知事の取り組みに大いに期待をするところであります。
 その一つは、この戦いに倒れた人たちが祭られている靖国神社の参拝の件であります。
 この靖国神社は、大東亜戦争による戦死者の皆さんだけではなくて、吉田松陰も高杉晋作も坂本竜馬も祭られている、ひめゆりの犠牲者の皆さんも祭られている社でありますので、私は、知事の昨年八月十五日の参拝を大変心から歓迎、感激いたしましたし、ことしの知事の参拝が果たして実現するのか、その点大変気になるところであります。
 昨年の、靖国神社の八月十五日の知事としての参拝に対して、私も出席、参列いたしましたけれども、昨年十月十八日の秋季例大祭当日、湯澤宮司がごあいさつをされました。これは各国の武官も、それから関係者の皆さんも大勢参列されている中でのごあいさつでありました。長いあいさつでありましたけれども、その中で、湯澤宮司はこう述べてごあいさつをされました。政府与党の一部から、靖国神社に対しましてまことに不遜な、不謹慎な発言がマスコミをにぎわしましたが、今後とも靖国神社は、明治天皇の大御心のまにまに祭祀を厳修し、ご祭神の奉慰・顕彰に勤めてまいるとの思いを新たにしている次第でございます。--その後が知事にお聞き願いたいんですが、それに比べて、本年八月十五日には、ご遺族、戦友等の要望にこたえられ、他国におもねることなく堂々と参拝されました石原慎太郎東京都知事に対して、深甚なる敬意を表します。こういうごあいさつがございました。
 当日も、私、知事の参拝の様子を拝見させていただいておりましたけれども、遺族の高齢の皆さんの中には、手を合わせて涙を流しておられる方もいらっしゃいました。国の総理大臣以下、外国の恫喝に屈して皆腰抜けでありますので、ぜひ知事には、本年も遺族の皆さん、戦友会の皆さん等のご要望にこたえて参拝をしていただければというふうに思いますけれども、まだちょっと時間がありますが、知事のお考えをお聞きしたいと思います。

○石原知事 ことしも参拝いたします。

○古賀委員 ご答弁ありがとうございました。
 国のために犠牲になられた皆さんの、その礎の上に今日の平和、繁栄があるわけでありますので、そのことに思いをいたす一日として知事が参拝されるということを、心から高く私たちも歓迎をさせていただき、評価をさせていただきたいと思います。
 それでは、他の質問に移ってまいります。
 まず、多摩都市モノレールのことを聞かせていただきます。
 多摩都市モノレールは、昨年の一月に整備路線十六キロメートルが全線開業いたしまして、ちょうど一年がたつわけです。この間、モノレールの利用者は、初めは一日五万八千人程度でありましたけれども、現在では一日約九万人と、徐々に乗客数も増加いたしております。先ほど、今度一区間の料金を二百円から五〇%割り引きして百円にするという案も実施されるようでありますので、乗客数はこれからも増加するものだというふうに思います。
 ところが、この多摩都市モノレールの開業に伴って、経営努力がいろいろあったと思いますけれども、日野市も含めて、大変便利な南北交通として定着しているわけでありますけれども、こうした中で、ことしの一月雪が降りました折に、三回にわたってモノレールが動かなくなりました。利用者は、当然その影響をもちろん受けました。
 まず、モノレールが運休に至った原因と状況について説明してください。

○山下都市計画局長 多摩都市モノレール株式会社によりますと、降雪に伴い、軌道げたの路面が凍結し、上り坂で車輪がスリップして走行不能となる事態があったため、乗客輸送の安全確保の観点から運転を見合わせたとのことでございます。

○古賀委員 東京は豪雪地帯じゃありませんので、毎年何日かは雪に見舞われるわけなんですね。東京都あるいは多摩都市モノレールは、事業者として、開業に当たりどのような降雪対策を検討し、かつ講じてきたのか、いかがでしょうか。

○山下都市計画局長 車両の前に除雪機を設置したり、融雪材や砂をまくなどして対応してきたところでございます。当初におきましては、いわゆる融雪用の熱線などをどうするかというようなことについても検討したわけでございますが、現実的な対応として、今回そうしたものを選んだわけでございます。

○古賀委員 雪に対する努力というのは理解できますけれども、モノレールをとめざるを得なかった。つまり、それは効果がなかったわけですよね。
 今後どのような降雪対策を講じていくのか、改善策があろうかと思いますが、どうでしょう。

○山下都市計画局長 多摩都市モノレール株式会社におきまして、除雪機のブラシの改良や、除雪及び融雪方式の工夫などの検討を行っているところでございます。
 今後、これらの検討結果に基づき、来期に向けて降雪対策を実施していく予定でございます。

○古賀委員 一月から二月という時期は受験期なんですよね。ですから、高校、大学、入学試験が一斉に行われるそういうときでありますので、雪によってモノレールがとまりますと、影響が非常に大きいわけですので、ひとつ、豪雪地帯じゃないんですから、雪に強いモノレールを期待して、この質問を終わりにいたします。
 続いて、ちょっと地元の問題なんですが、生活圈の件についてお尋ねいたします。
 東日本旅客鉄道の中央線日野駅改良と駅周辺の整備に関することでありますが、私の住んでおります日野市では、平成十一年度に、東京都の調査費の補助を受けまして、生活圈のまちづくりについて、具体的には日野駅改良及び駅周辺地区整備計画策定調査を一千万円かけて行いました。調査は、宿場町として甲州街道に沿って古くから発展したこの町をより魅力あるものとして整備していくことに取り組んだものです。東京都や東日本旅客鉄道などの参加、協力を得ながら、地元の自治会長あるいは商店会長なども加わってまとめ上げた労作であります。
 それによれば、第一に、老朽化した日野駅を、安全で利用しやすい駅を目指して改良すること、第二に、駅周辺の区画整理など各種のまちづくり事業を進めることなどが課題であると提起しています。
 私は、何はともあれ、市民要望の強い、老朽化した日野駅を近代的な駅舎として整備していくことが必要だというふうに思います。乗客にとって危険度もある程度指摘されております。
 まず、日野駅、これは私も大体わかるんですけれども、現在、一日の乗客数をどの程度だと把握していますか。

○山下都市計画局長 日野駅の一日当たりの乗降客数は、約五万六千人となっております。

○古賀委員 JR中央線の東京駅から高尾駅までの間で、エスカレーター、エレベーターが未設置となっている駅がどのくらいあるか。日野駅はないんですけれども、この数はどうでしょう。

○山下都市計画局長 JR中央線の東京駅から高尾駅までは三十二駅ございますが、エスカレーター、エレベーターともに未設置の駅は、日野駅を含め五駅でございます。

○古賀委員 未設置駅が三十二駅中五駅ということでありますので、ほとんどの駅が設置されているということになるわけです。一日当たり五万六千人の人が利用している。いかに日野駅が後回しになっているかという感が深いわけですけれども、いわゆるバリアフリー、さらには、だれにとっても使いやすいという意味で、私、余り横文字好きじゃないんですが、ユニバーサルデザインというのがいわれております。
 まず、エスカレーター、エレベーターが優先されるべきだというふうに考えるわけですが、日野駅の改良について、鉄道事業者はどのような考えを持っているのか、いかがですか。

○山下都市計画局長 JR東日本といたしましても、駅におけるエレベーター、エスカレーターの整備を積極的に推進しているところでございます。
 しかし、日野駅につきましては、ホームの幅員が狭いなどの課題がございまして、まずはエスカレーターの設置についてどのような案が実現可能か、現在、地元市とともに検討しているというふうに聞いております。

○古賀委員 昨年十一月に施行されました交通バリアフリー法では、鉄道駅のバリアフリー化の整備目標についてどのようなことを定めているのか、これに日野駅は整備対象というふうになるのかどうか、いかがでしょうか。

○山下都市計画局長 交通バリアフリー法に基づく移動円滑化に関する基本方針によりますと、一日当たりの利用者数が五千人以上の駅を対象といたしまして、平成二十二年までにエレベーター、エスカレーターの整備、視覚障害者誘導用ブロックの整備などを行うことを目標としております。
 日野駅につきましても、この方針に沿ってバリアフリー化を図ることを目指すこととなります。

○古賀委員 JRとの交渉において、地元市だけではどうにもできないんですね。ですから、東京都の協力が不可欠であるわけです。ぜひ支援をお願いいたします。
 あとは、これは厚生委員会が所管となってまいりますので、常任委員会の方でさらに今後取り上げてまいりたいというふうに思います。
 この件に関する最後の質問ですが、知事は、昨年十二月、初めて長期計画を策定いたしました。千客万来の世界都市をめざしてという副題がついております。これには、今後十五年間、平成二十七年までの政策目標が描かれており、その中で、生活圏の都市構造が打ち出されています。
 職住が近接し、高齢社会において、都市の活力を向上させ、環境負荷の少ない生活圏を実現するとありますが、具体的な中身がまだ必ずしも明確ではありません。しかし、日野駅とこれを中心とするまちづくりも、東京都の長期計画に合致するものだと私は考えますが、今後、東京都は生活圏のまちづくりの実現にどのように取り組むのか、説明してください。

○山下都市計画局長 都民が豊かでゆとりある暮らしを実現するためには、東京圏全体を視野に入れた大きな都市の骨格づくりに取り組む一方で、身近な生活圏にも着目し、地域の拠点となるまちを計画的に育成していくことも必要でございます。
 ご質問の日野駅とその周辺地区につきましては、現在、地元市が都市計画マスタープランを策定中でありまして、その中で、駅の改良や駅周辺の歩行者空間の整備など、生活圏のまちづくりの事業内容を明らかにすると聞いております。
 都といたしましては、必要に応じて、JR東日本へ働きかけるなど、計画の実現に向けた地域のまちづくりを支援していく考えでございます。

○古賀委員 それでは次に、福祉改革についてお尋ねいたします。
 これまで淡々といろいろな事業を拡充して延長してまいりました福祉政策を、都民ニーズの多様化、高度化に的確に対応するということで、大きく転換するということになりました。こうした中で、東京都は、昨年の末に福祉改革推進プランを発表し、利用者指向の開かれた福祉を目指して、これまでの画一的なお仕着せの福祉の世界を変え、利用者がみずから選択、利用する仕組みを築くということであります。
 この計画は、将来、新しい福祉の姿を都民にわかりやすく示すとともに、それを実現するために具体的な取り組みを盛り込んでおります。私どもの会派の主張も全面的に取り入れたものとなっており、評価するところです。
 さらに、この計画に盛り込まれた各種の施策の総事業費は、五年間で五千二百億円を上回るものであり、困窮する現在の都財政の中にあって、新しい福祉構築に向け、財源を集中投入しようとする知事の英断は称賛できるというふうに思います。
 この計画の副題にある開かれた福祉というのは、これまでの、行政がサービスの内容や水準をすべて決め、社会福祉法人中心にサービスを提供する単一的な福祉の仕組みを、利用者の要求に的確にこたえていくことのできる福祉の仕組みをつくるというものであります。
 具体的に、民間活力を生かして、市場を基盤としてサービスを提供していく分野を中心に、NPOなど地域の力や特性に着目してサービスを提供していく分野、あるいは従前の措置制度を維持しながら、サービスの質の向上を図る分野など、多元的なものです。
 さまざまなサービスの供給主体が、まさに利用者指向に立って、サービスの質の競い合いをしていく、つまり、事業者の顔が行政に向いているのではなく、利用者の方向を向いている、このように変えていくことを開かれた福祉という言葉で表現しているわけです。
 これは、市場の中に多様な事業者がさまざまな創意と工夫を凝らしながら、サービスを提供していく。利用者は、自分に合ったサービスを選んでいくということ、一般社会の中では至極当然のことであり、福祉の世界もやっと社会主義的な体質から脱却する未来志向の方向を向いてきたということであると思います。
 当然のこととはいえ、これは大きな転換であります。この方向を現実のものとしていかなければなりません。みずからの責任でサービスを選べる状況が整備されなければならないわけで、開かれた福祉の意義が生きてくるのは、そこから初めていえることだと思います。
 この点に関してお聞きいたします。自分に最も適したものを選択できるよう、都としてどのような仕組みが必要だと考えているか、基本的な見解を伺います。

○前川福祉局長高齢者施策推進室長兼務 今、お尋ねがありましたが、利用者みずからが必要とするサービスを選択できる開かれた福祉を実現するためには、利用者保護の新しい仕組みをつくっていくことが不可欠であると考えております。
 具体的には、サービス利用の際などに生ずる苦情に対応する仕組みや、福祉サービスの質などを客観的に評価する仕組み、サービスの内容や評価結果など、利用者が必要とする情報を総合的に提供する仕組みなどを、今後早急に整備する必要があると考えております。

○古賀委員 今の答弁にありましたサービスの内容や事業者の情報を提供する、利用者の苦情に対応する仕組み、おおむね理解できますけれども、サービス評価というのはよく耳にするんですが、具体的な取り組みの内容、姿がよく伝わってまいりません。
 食堂なんかに行きますと、ここは何がおいしいとか、そういう情報がありますね。どの製品の性能がいいのかどうか、そういった評価情報が一般雑誌などに取り上げられております。利用者が利用する際の貴重な情報源ということになっているわけです。
 片や、福祉の分野はどうかということを考えるとき、今までそのような流れはほとんどありませんでした。いきなり急に事業者や利用者の意識が変わり、サービス評価がどんどん行われるということは考えられないわけでありますけれども、都が考えるサービス評価の仕組み、概要と取り組みについてお聞きいたします。

○前川福祉局長高齢者施策推進室長兼務 利用者が正確な情報に基づいてサービスの選択ができるようにする、そのためには、まず、私ども、信頼性の高い評価機関が民間に多数存在して、多様な評価手法を用いて客観的にサービス評価を行う、これが重要であると考えております。また、その評価結果が、利用者や事業者に広く情報提供されることによって、利用者の選択やサービスの向上に資する仕組みであることが望ましいと考えます。
 現在、外部委員による検討会を設置し、こうした課題の検討を行うとともに、六つの区市において、保育サービスや心身障害者の在宅サービスについて試行事業を実施いたしております。

○古賀委員 保育所や心身障害者在宅サービスについて、市や区で試行しているということであります。しかし、全部合わせてもまだ少ないわけで、この調子でいきますと、全施設にサービス評価が行き渡るには、長期間要するということになるわけです。これでは、利用者が安心してサービスを利用できるということにはつながらないと思うわけですが、まだ始まったばかりですから、仕方ないんですが、いろいろな障害があるのではないかというふうに思います。
 特に、制度の初めのころというのは理解が得られにくいという面もありますけれども、サービス評価が必要だということはだれでもわかっているわけで、このようなときに、短期間に一気に制度を浸透させようとする場合には、全施設にサービス評価を義務づける、その結果を公表する、こういう多少荒療治も必要ではないかというふうに考えるわけです。それくらいやらないと、事業者や利用者の意識はなかなか変わらないわけです。これは要望いたしておきます。
 もう一つ確認しておきたいわけでありますが、サービス評価の対象となる福祉サービスの範囲であります。都が目指す開かれた福祉は、先ほどいいましたように、民間や契約の分野、従前の措置制度を維持しながら、サービスの質の水準向上を図る、こういうことです。多元的なものとしていく必要があります。
 そのような場合に、保育所や心身障害者の在宅サービスなど、現在取り組まれている分野だけではなく、私が指摘した三つの分野を踏まえて、漏れることなく、サービス評価の目を構築していかなければ、開かれた福祉の実現は支えていけないのではないかと思いますけれども、どうでしょう。

○前川福祉局長高齢者施策推進室長兼務 サービスの評価は、利用者のサービスの選択と同時に、事業者によるサービス向上にも資するものでございますから、可能な限り、広い福祉分野において評価を実施していくことが望ましいと考えております。他方、この制度は、各事業者が自主的に第三者の評価を受けることを基本とするものでありますから、制度の実効性を確保するための手法など、検討すべき課題もございます。
 したがって、今後、制度の構築に当たりましては、ご指摘の対象サービスの範囲も含めまして、十分検討を行ってまいりたいと考えます。

○古賀委員 知事に、最後にちょっとこの福祉の件についてお聞きいたしますけれども、いろいろ今やりとりをして、ちょっと早口だったんですが、あくまで利用者指向の新しい開かれた福祉に変革していこうという福祉改革の実現を、私も求めているわけですが、知事の意気込みをお聞かせください。

○石原知事 福祉改革ということで、大きな方向転換をしたわけでありますけれども、今開かれた福祉ということをいわれましたが、これはいろいろな意味合いがあると思います。前川局長が、今幾つかの手だてについて申しましたけれども、プラス、試行錯誤というものを恐れずに、すべき反省はして、新しい知見あるいは評価も含め、ユーザーの、お客様たちの苦情も含めて、できるだけ情報を多角的にとって、それを踏まえて、やっていることの反省もし、それを改良していくという努力を続けるべきだと思っております。それでないと、せっかくやった方向転換が実ってまいりませんし、また、都民の評価も得ることができないと心得ております。

○古賀委員 それでは、次に、教科書採択の件についてお尋ねいたします。
 これは、教育長に一問だけお聞きして、あとは知事にもう一度お尋ねしたいというふうに思っております。
 いろいろ準備したんですが、教育基本法の改正であるとか、知事の徳目教育の重視、こういったことから、教育に関する関心は非常に高まっているわけです。その中での教科書の問題。
 今回、私は東京通知と呼んでおりますけれども、教育長名によって、教科書の採択について通知が出されました。各区市町村教育委員会の教科書採択事務の実態について、その問題点や課題については、具体的にどう都教委として把握しているのか、この点についてだけお尋ねいたします。

○横山教育長 今回通知を出しましたのは、昨年四月に、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第五十九条が廃止されまして、教科書採択権が特別区に移った。これに伴いまして、都教委としては、移管事務の説明とあわせまして、教科書採択事務の適正化について、市町村教委も含めて指導を行ってまいりました。
 その過程で、主な問題点としましては、一つとして、教科書の調査研究が十分なされていないこと、二つとして、区市町村教育委員会の中には、実質的な採択行為を下部機関に任せてしまうなど、教育委員会としての権限や責任が明確になっていないこと、三つとして、教科書採択に関する事項を調査、審議する採択委員会等に保護者代表等の参加がない、それから、四つとして、教科書採択後、採択委員会等の議事録や委員名簿が公開されていない、こういった改善すべき実態が判明したことから、適正化に向けた指導を行ってきたところでございます。

○古賀委員 現在、平成十四年度から使用する教科書の検定作業が行われておりますけれども、新聞報道等で、共産中国や韓国の政治指導者の方から、いろいろ意見が述べられているわけです。
 我が国の教科書制度に対する、私は明らかな内政干渉だというふうに思いますけれども、外務省はどういうわけか、しっかりとした内政干渉だという反発もしない。昭和五十七年に、教科書の検定に関しては、中国華北への侵略が進出と書きかえられたという誤報問題があって、現在も、このことがもとになって近隣諸国条項というものがあるわけでありますけれども、私は、外務省、文部省、政府は、毅然と内政干渉だということをはっきりといい返すべきだというふうに思うんですけれども、この点に対して、知事はいかがお考えでしょうか。

○石原知事 ある教科書がターゲットになっている。採択されたわけじゃありませんで、それがとにかく作成中にその内容が漏れたということもけげんな話でありますけれども、それに対して外国がああしろこうしろ、これは好ましくないということは、本当に異常な事態でありまして、それについて外務省が内政干渉たり得ないというのも、ちょっと私には解せない話であります。今の外務省の日本の外交の本質というものを露呈している一つの言動だと思いますけれども……。
 もし仮に、日本が、中国なり韓国の教科書、あれは国定教科書のようですけれども、記述に明らかに間違いがあります。例えば、中国の高等学校の教科書には、東京裁判でも、要するに証拠として否認された、偽造された田中義一の上申書なるものが採択されておりまして、これはそのまま史実として書かれているけれども、全く、つまり東京裁判でも否定された、誤った認識の文書であります。こういったものを、日本が仮に中国の政府に取り消せとか、好ましくないというとき、どういうことになるんでしょうかね。
 私は、日本はとにかく表現の自由というのが憲法で認められているわけでありますから、特定の方々が、よき教科書をつくろうということで編集中の教科書について、外国がああしろこうしろ、好ましくないということは、これは憲法というものの侵害であり、日本に対する明らかな、基本的な日本の自由主義体制に対する、私は内政干渉による毀損につながりかねないと思います。

○古賀委員 次に、北方領土奪回運動についてお尋ねいたします。
 今、返還運動というふうに私たちは呼んでいるんですけど、貸したものなら、返してくれという表現は合うと思うんですけど、とられているものを返してくださいというのはおかしいので、ソ連に出ていけ、ロシア出ていけ、奪回、奪い返すという視点が欠けているところに、今の運動を何か惨めにしているんじゃないかと思うわけです。
 私は、一月三十日に、東京の銀座のガスホールで開かれました北方領土返還を求める都民大会に、佐藤幹事長がかわりに行けということで、出席をいたしてまいりました。さぞ盛り上がった、領土を奪い返すわけでありますので、しっかりした会かなと思いましたら、よくいえば非常に紳士的、悪くいえば無気力な大会でありました。内閣府や外務省の役人も来ていましたけれども、何か書かれたものを読むだけで、ぱっとしない。副知事もいらっしゃっていましたね。
 第二次世界大戦で領土をふやした国が一国だけあります。ソ連。しかも、サンフランシスコ講和条約で、日本は、北方領土、千島諸島と樺太は放棄いたしましたけれども、ソ連はこれに署名していないわけですね。署名していないのに、戦争が、戦闘が停止した八月十八日、三日もたって戦闘を仕掛けてきて、こっちが鉄砲を撃たないんですから、これほどやりやすい戦争はない。九月三日までかかって、占拠してしまった。今日に至っているわけです。
 もっと怒りを込めた国際法、歴史的経緯、それから、国際正義に照らした奪回運動というものを考えなきゃいけないと思うんです。この都民会議は、知事が顧問になっていますし、生活文化局長が理事なんですよね。お金も出している。
 そういうことでありますので--大きい国というのはたちが悪いんですよ、こちらがお人好しじゃだめなので--来年はちょうど二十回大会だそうです。切りのいい数字の大会でありますので、ぜひことしの大会、私の感想を今申し上げましたけれども、そういう状態でありましたので、この旧ソ連、現在のロシアの無法な侵略に抗議する、都民の怒りをあらわす、また、それを爆発させるような世論喚起の大会にしてもらいたいというふうに思うんですけど、顧問としての知事、いかがでしょうか。

○石原知事 私は、北方四島もまさに奪われたものでありますし、同じように、百五十人の日本人が誘拐されて北朝鮮に抑留され、奪われたままでいるわけです。こういうものを取り返すための外交の姿勢というのは、日本は非常に軟弱といいますか、非常に稚拙といいますか、別に居丈高に強く出ろということをいっているわけじゃありませんけども、イソップのたとえをよく引きまして、太陽か、あるいは北風方式でいくかということですが、私は、この北方四島などは、日本人があそこに抑留された方がいるわけではありませんから、ある意味で突き放した形で、冷観したらいいと思う。
 私は、プーチンという新しい政権が非常に不安定で、つまり、日本をどう扱うか、あるいはその前に中国をどういうふうに扱っていくかという基本的な外交姿勢がまだ決まっておりませんから、この時期に右往左往しない方がいいと思いますし、日本人のいいところであり、悪いところでありますけれども、今、非合法といいましょうかね、とにかく北海道の一部と行ったり来たり、かなりやっています。これが限られた島に経済的な恩恵を与えておりますけれども、こういったものも、私は、一回クールに突き放すと。どれだけ、要するに、あそこに住んでいるロシア人たちが困惑、困窮するかということを、身にしみて体験させたらいいと思う。
 そして、その後、そういう人たちの声を、つまり、日本が活用したらよろしいので、私は、あそこに住んでいるロシア人自身が、いかなる国に帰属した方が自分たちは得かということを決めるような、そういう算段も一つの方法として十分考えるべきだと思っております。

○古賀委員 終わります。(拍手)

○白井(威)副委員長 古賀俊昭理事の発言は終わりました。
 この際、議事の都合によりおおむね三十分間休憩いたします。
   午後六時十九分休憩

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