東京都議会予算特別委員会速記録第三号

○白井(威)副委員長 古館和憲理事の発言を許します。
〔白井(威)副委員長退席、松村副委員長着席〕

○古館委員 初めに、都内製造業の支援について伺います。
 この問題について、知事は、昨年十二月の第四回定例会での我が党議員の質問に答えて、今ある集積地をさらに支援するとともに、新たな集積地の形成を積極的に推進していくと述べました。問題は、この知事の答弁と、実際の都の施策の間に隔たりがあることだということです。
 まず、中小企業予算について見ますと--ここにパネルを用意いたしました。この十年間、融資と臨海開発関連を除いた事業としての中小企業予算は、一貫して減り続けています。この赤い棒が中小企業の予算ですね。九一年度に三百四十一億円あった予算が、来年度予算では約六割の二百六億円になっています。私もグラフにして驚きました。
 恐縮なんですけれども、昨日この委員会で話題となりました、国直轄事業負担金と首都高速道路公団への貸付金と並べてみましたが、この二つは右肩上がりで、この国直轄事業は高値安定です。これは首都高の貸付金ですが、急激に増額をしております。やはりどこかおかしいというふうに思うのは私だけではないと思います。
 このうち工業に使われる予算は、来年度わずか十一億九千五百万円にすぎません。一方、この間の都内製造業は、国の産業構造改革や大企業のリストラ、海外移転などによって痛めつけられ、この十年間に、企業の全倒産件数の二割以上を占める六千五百九十九件もの企業が倒産に至っております。このため、工場数は八六%に減少しました。
 このように、東京の製造業の生き残りのために行政が挙げて支援に力を尽くさなければならないときに、東京都は、我が党が提案した工業集積地域活性化事業などの例は除いて、全体として施策を後退させてきたことは重大であります。
 そこでお尋ねしますが、予算が施策のすべてを物語るといわれています。この余りに少ない予算で、既存の集積地、さらには新たな集積地の形成という知事の提案を実現していくことができるとお考えでしょうか。

○浪越労働経済局長 ただいまこのグラフを見させていただいたので、データを比較分析するのにちょっと時間がございませんが、何とも申しかねますが、まずこの表を見て思うことは、都の一般会計予算に占める中小企業対策経費の割合がどうなっているのか、あるいは局予算に占める中小企業対策費の割合等がどうなっているのか、とってみなければわからないんですけれども、また、今お話しの、この示された図の下を見ますと、基準年度によってとり方もいろいろ変わってくるだろうと思いますし、まず中小対策経費という中から制度融資を除いているのはいかがなものかと私は考えます。中小対策費といえば、まさに制度融資を入れてこそ初めて正しい姿になるのじゃなかろうかと、私はそう思います。
 分析しておりませんので、ちょっと結果はわかりませんけれども、私はそのように思いますし、それから、正確なデータを持っていないのでちょっとわかりませんけれども、私の感じだけで申し上げて、違っていたら申しわけございませんけれども、十二年度予算と十三年度予算についていえば、制度融資と有限責任組合をつくるときのお金がございますので、それを除いた経費で比較してみると、ほぼ横ばいだったというふうに記憶をいたしております。
 このように、いろんな見方、考え方があろうかと思いますが、私どもは、都内の中小企業が社会経済環境の変化に適切に対応し、東京における産業立地のメリットを十分生かしながら維持発展できるよう、施策の充実を図るために、厳しい財政状況の中ではありますが、必要な予算の確保に努めてきたところでございます。

○古館委員 今、これから私が質問しようとしている工業関係なんですが、これなんかは、例えば十二年度予算が十一億六千七百万、十三年度予算が、今度の提案ですが、十億九千五百万ということで、明らかに減っているわけですよね。
 ですから、そういうふうに、予算というのは非常に具体的なものでありまして、厳しい財政状況の中にありましても、例えば工業関連予算を倍加させるくらいの財源があることは、きのうの我が党木村幹事長の質問でも明らかだと思います。
 それで、次の問題は、工業集積地域活性化事業であります。これは、我が党がこれまで何回も取り上げてきた問題でありますから、知事もよくご承知のことだと思いますけれども、東京都がこの事業を、現在指定を受けている地域の期間が終わる二〇〇四年をもって、事業そのものを終了させようとしていることについて、関係自治体や工業団体などから危惧する声が上がっています。
 まず、この三月末で最初に指定を受けた大田、品川、墨田、足立が終了し、来年には私の地元の板橋区が終了することになっています。労働経済局は、事業継続の要望に対して、事業が終了する二〇〇四年以降に、総括し、検討するという方針で臨んでいるようです。これでは間に合わないのです。だから、今すぐ総括、検討して、継続の方向に踏み出してほしい、このことをいっているのであります。
 ここで押し問答していても始まりませんので、私自身、地元の板橋区の工業集積地域活性化事業がどうなっているのかを調べてきました。
 そもそも板橋、北区は、光学レンズや金属製品などの集積地として知られていましたけれども、ほかの地域と同様に衰退傾向にあります。現在は、ここにある労働経済局発行の「東京の産業と労働の二〇〇〇」にも記述されておりますように、城北地区は、産業別で見ますと、出版、印刷、次いで金属製品、一般機械などが続いていて、城南、城東、都心地域などの集積地に負けない地場産業を形成しております。
 とりわけ、板橋区で見ますと、工場数は三千三百四十九で、二十三区中第九位、従業員は三万九千三百六十一人で第二位、製造品出荷額は九千百六十八億円で第三位と、それぞれ二十三区の中でも都内有数の工業区だということであります。
 今回、板橋区内の工場を訪問して、話を伺ってまいりましたけれども、改めて、城北地域の工業が不況をはねのけて頑張っている姿に、私自身、感動させられました。その原動力になっているのが、都が独自に実施している工業集積地域活性化事業であります。そのことを少し紹介いたします。
 板橋区は、四年前に集積地域活性化事業に指定されたのを契機に組織改正を行い、製造業、物づくりを専門で扱う工業振興係を設置しました。そして、活性化事業のメニューとして、環境にかかわったリーディング産業の育成、三万人を超す参加者でにぎわう製造業製品の見本市、そしてISO取得助成事業など、十事業を立ち上げました。
 その中の中心的な柱の一つに、きょう私が紹介したいと思っています、板橋経営品質賞があります。板橋経営品質賞は、都内で初めての試みで、区内の製造業を営む中小企業を対象として、すぐれた経営システム、つまり、すぐれた経営品質を有する企業を表彰するというものです。これまでは、つくられた製品を表彰する制度などは各地にありましたけれども、経営システムに着目したところに、このユニークさがあらわれていると思います。
 具体的には、これに応募した企業は、まず六月ごろから半年間かけて、中小企業の目線に合わせた板橋経営品質賞勉強会が持たれ、今年度は四班に分かれて、三十五社から五十三人が参加しています。
 私が大変重要だと思ったことは、こうした勉強を通して、中小企業みずからが診断項目リストに五段階の自己採点をし、これに基づいて、経営コンサルタントの資格を持つ人など、三名の審査員が採点するという仕組みです。
 審査員は、直接会社を訪問して、社長など幹部と直接面談し、経営の質を高める八つの審査基準に基づき、千点満点で評価するものであります。後日、強み・特徴、改善点をまとめた審査リポートを送り、指定する日時に区役所に来てもらい、審査結果について率直に質疑応答、経営指導するというものです。
 そこでお尋ねしますが、都の工業集積地域活性化事業が、城北の地、板橋でも、都内で初めてといわれる板橋経営品質賞として具体化され、板橋の製造業者の中に確実に生かされ、広がりつつあることについてどのように評価されておりますか。まず、ご所見をお尋ねいたします。

○浪越労働経済局長 工業集積地域活性化支援事業は、地域的に特色ある工業集積地域が形成されることに着目いたしまして、区市と共同して、その地域の活性化を図るための事業でございます。
 お話の板橋区の板橋経営品質賞については、主に製造業に携わる区内中小企業を対象に、卓越した経営の仕組みづくりを支援することを目的に創設された表彰制度でございまして、中小企業を振興する上で意義あるものと考えます。

○古館委員 局長から、意義あるものとの認識が表明されましたが、知事としてどのように評価されているでしょうか、お伺いしたいと思います。

○石原知事 大変結構なことだと思います。

○古館委員 知事の答弁を聞いて、今考えたのですけれども、この板橋の経営品質賞という仕組みを、都が旗振りをして、全都的に普及することを考えることはできないでしょうか。その際、知事賞をつくって支援するなどもアイデアの一つだと思いますけれども、いかがでしょうか。

○石原知事 参考にさせていただきます。

○古館委員 ぜひ参考にして取り組んでいただきたいと思います。
 そこで、工業集積活性化事業の継続についてですけれども、あちこちの社長さんの話を私伺って、改めて実感したのですけれども、この事業が我々が想像していたよりはるかに区内の製造業者に歓迎され、積極的に活用されているということであります。
 私は、この経営品質賞に挑戦している、資本金一千万円のM社を訪ねました。この企業は、九九年から三年続けて応募し、第一回目は二百点台、二回目が三百点台の前半、そして三回目は四百点台、大体四百点台に迫ると合格ということになっているようでありますけれども、指摘された改善点を従業員と一緒に目標を決めて頑張り、ことしは努力賞がもらえる、社長は、これを励みに、さらに意識改革していきたいと語っておりました。
 M社の社長は二代目で、現在は、編み機を使って健康、介護、スポーツなどのサポーター製品を製造販売しています。先代の父親は、編み機を製造する会社として創業した独立企業ですけれども、バブル崩壊と長引く不況、そしてユニクロ旋風などで、繊維産業界が厳しい状況に置かれ、経営も大変な危機に見舞われ、ビジネスホテルにしたらという誘いに、一時は心が揺らいだそうです。
 しかし、物づくりにこだわろうと思い、その思いから、編み機を使った何かをつくりたい、そのためには、板橋区の経営品質賞に応募して、経営の確信を持ちたいということから参加を決意したとのことでありました。
 勉強会を通じて、現在、消費者ニーズの把握がいかに大事かということを学び、会社の庭を利用して自社製品を地域の方に即売をし、意見などを聞きながら、製品の質もよりよいものにしようと努力をしているとのことです。まさに、工業集積地域活性化事業が花開いた一例だと思っています。しかし、このままでは、この活性化事業が、板橋区の場合、来年度で指定が終了してしまうことになります。事業自体も、二〇〇四年度までとされております。
 M社の社長さんは、板橋経営品質賞の勉強会などを通じて、中小企業こそ、経営戦略、方向性が毎年毎年確認できていかないとならない、そのことができているので、都の工業集積活性化事業補助がそのベースになっていることを知って、都が先導的にかかわっていることに力強さを感じ、継続しているからこそ大きな意義があるもので、五年で打ち切ることはしないでほしい、このように語っておられます。
 また、板橋区内の工業を束ねている社団法人板橋産業連合会の幹部の方も、板橋区の経営品質賞の果たしている役割の大きさを評価し、こうした機会をより多くの中小の製造業に与えるためにも、都の工業集積地域活性化事業を引き続き継続してほしいと、強く要望しております。この思いは、最初に活性化事業の指定を受けた大田区、品川区、墨田区、足立区も一緒で、継続を強く求めております。
 そこで、お尋ねします。私には、これだけ喜ばれている工業集積活性化事業をなぜ廃止しなければならないのか、わかりません。きちんと説明をしていただきたいと思います。

○浪越労働経済局長 工業集積地域活性化支援事業は、サンセット方式による補助事業でございまして、全体の事業終了時期をあらかじめ定めるとともに、一地域の計画期間は五年とすることで実施しているものでございます。
 すなわち、この事業は、平成八年度から毎年四地域、合計二十地域を指定し、当初計画どおり、今年度をもって地域指定を終了しました。事業がすべて終了する平成十六年度に、この事業の成果を総括した上で、地域の工業振興策のあり方について検討する予定でございます。

○古館委員 平成十六年度なんかで検討したら、もう本当に答えになってないと思うのです。区市町村の企業からこれだけ歓迎されている事業が、終わったら、もう数年間何もしない、そうなれば、もうそれこそ芽がつまれていくものになるじゃありませんか。
 つまり、東京都の補助なら補助が事業をより拡充することにもなる、後押しをするということについて、私は先ほどお話ししたとおりです。ようやく花開こうとしている事業も、つぼみのままで終わってしまうことになります。百歩譲って、総括し、検討するという手順が必要だというならば、大田、品川、墨田、足立という、東京を代表する産業集積地の指定がこの三月で事業が終了するのですから、これを総括し、検討することは可能ではないかと思います。
 しかも、工業集積地域活性化事業を初めに要望しておりましたのは、これらの地域だったのだからこそ、ここから教訓をくみ取ることが非常に大事だと思っています。
 そこでお尋ねしますが、知事、来年度、しかも早い時期に、総括と検討を指示されることくらいぜひやっていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

○石原知事 中小企業対策は、この活性化事業だけではなしに、もっと多角的にやっているわけです。例えば先ほど言及されたかどうかわかりませんが、東京都が新しく構えた制度融資、昨年度は七百億円、ことしは三百五十億ですかの新しいCLOプラス、もうちょっと直接融資に近い債券発行をしまして、そういう手だてで中小企業の援助をしております。
 五年という時間は非常に長いタイムスパンでして、私は自分が衆議院の選挙区に品川・大田を選んだときに、あの品川地域というのは、当時は日本で有数、世界で有数の豆電球の生産地でありました。これが発展途上国の香港なんかに追い上げられて、まず一年の間に淘汰されました。しかし、その間、そういうものをつくっている業者は、全部発想を変えて新しい製品を開発して、見事に今まで以上の売り上げといいますか、実績を上げています。
 私は、やはりそういう工夫も必要だと思いますし、五年の間に立ち直るものは立ち直る、伸びるものは伸びる、しかし、だめなものはだめなんです。あなたのおっしゃった非常に評価されているそういう援助制度というものも、これは共産主義や社会主義の経済圏ではあり得ないことでありまして、つまり自由競争というものを助長するためのよき方法ですから、それが五年という十分なタイムスパンを置いて効果が上がらない企業は、やはりこれは自業自得というと気の毒ですけれども、反省すべきものもあると思うし、伸びるものは伸びていっていると思う。
 だから、五年という十分に長いタイムスパンをとったわけでありまして、それが一回終了するという形で、できるだけ速やかにこういったものを総括して、また新しい手だてを講じたいと思います。

○古館委員 ぜひ知事、できるだけ速やかにというご答弁がありましたので、ぜひともこれはそういう前向きの方向で検討していただきたい、そのように強く申し述べさせていただきます。
 今、国際的にも中小企業の役割を見直し、制度として確立していく方向が大きな流れになっているからであります。例えばILOでは、これまで系統的に中小企業の振興、育成に関する決議や勧告を行ってきておりますし、日本も参加している経済協力機構、OECDは、中小企業を創業、発展させる必要性を合意した、産業政策の新たな指針をまとめました。
 EUでは、二〇〇〇年の欧州小企業憲章で、小企業は欧州経済のバックボーンである、新しい経済は小企業が優先されて初めて成功すると宣言しました。また、アメリカの九八年の中小企業庁レポートは、中小企業が社会的に効率的である、社会的、経済的ニーズを満たす主体であるとしています。
 東京の中小企業は、事業所で九九%、ここで働く就業者は八割も占めております。製造業だけでなく、東京の産業の中心である中小企業を支え、発展させていくことが、東京都の最重要課題の一つであります。そのためにも、中小企業対策を進める上で、大変大事な条例が必要となってきていると考えるものです。
 国内では、墨田区が、中小企業の健全な発展と区民福祉の向上に寄与することを目的とする中小企業振興基本条例を制定することで、区の仕事の柱として中小企業がいつも位置づけられており、商工費の予算も構成比七・二%と、二十三区平均の二・四%を大きく上回っております。
 都には、行政運営の基本となる条例が幾つもあります。例えば住宅基本条例、環境基本条例、自然保護条例など各分野にわたっておりますけれども、なぜか中小企業を支援する条例がございません。
 そこで伺います。東京都として、中小企業の振興を目的とした地域経済振興条例を制定することを提案するものでございますが、いかがでしょうか。
   〔松村副委員長退席、委員長着席〕

○浪越労働経済局長 都は、産業の大宗を占めます中小企業の振興を都政の重要課題の一つと位置づけ、中小企業基本法を初め、各種法令に基づく国の施策とも連携をし、中小企業施策を実施しているところでございます。
 また、中小企業振興対策審議会等において広く意見を聞きながら、その時々の経済状況の変化に的確に対応した技術、経営、資金、創業などのさまざまな施策を実施してきているところでございます。
 今後とも、中小企業のニーズを的確に把握するとともに、昨年七月に策定いたしました東京都産業振興ビジョンを具体化するなど、施策の充実に努めてまいります。
 お話しの中小企業振興条例の制定については、考えてございません。

○古館委員 この問題は、引き続き条例制定に向けて取り上げていくつもりでございます。
 次に、三宅島支援について伺います。
 初めに、長期の避難生活を強いられている島民の皆さんに、心からお見舞いを申し上げます。また、避難者の支援と島の保全に努められている職員、関係者のご努力にも敬意を表します。
 我が党は、先日の本会議代表質問で、被災者の生活支援を中心に、都が可能な限りの手だてを尽くすことを求めてまいりました。そこで、きょうは、さらに島から遠く離れて暮らす島民の、島に寄せる熱い思いにどうこたえるかについて、問題点を絞って伺います。
 今、島民の方々は、島を離れてから七カ月たって、島の状態がどうなっているのか、それぞれの集落がどうなっているのか、自分の家や道路などがこれ以上被害を受けないで帰島ができるのかなど、たとえ寝ていても頭から離れない問題となっているからです。
 しかし、現実には島の情報は限られ、島民はテレビのニュースからの情報に頼らざるを得ない状況にあります。我が党は、これまでの島の現状をビデオなどで島民に刻々に知らせることを求めてきたわけでありますけれども、今改めて、この全島避難が長引きそうだ、家は、畑は、美しい海は……、家が泥流で押し流されている、先祖代々、家族の宝物であるアルバムは、という島民の思いになぜ都はこたえようとしないのか、これが島民の率直な声となっております。この声にこたえることが、何よりも応援になるのではないでしょうか。
 こうした中で、三宅島村議会が十二日に開催され、私も村長にもお会いし、議会を傍聴いたしましたけれども、十人の村議全員が質問に立っていました。避難島民の生活補償、商工業支援、子どもの教育など、切実な問題を取り上げておりましたけれども、同時に一番印象に残ったのは、全議員が要求したのが島民の一時帰島の願いでありました。
 ある老夫婦のご主人が、避難先の八王子の都営住宅十階の廊下からじっと遠くを見ているので、奥さんが何を見ているのと尋ねると、海を見ていると答え、部屋で座っているのが一番つらいからと、このようにいっています。
 そこで、ご質問しますけれども、火山ガスなど障害も多いことは島民が一番承知しております。しかし、たとえ短時間でもいいから一時帰島して、自分の家がどうなっているのかこの目で確かめたい、家に残してきたアルバムや衣服など、最小限のものでよいから手元に持っていきたい、こういう願いに何とかこたえてあげるべきではありませんか。いかがでしょうか。

○石原知事 東京が島民の要望にこたえていないとは、どういう点でこたえていないのか、聞きたいね。(発言する者あり)帰心矢のごとしはわかりますよ。しかし、あなた方、生命の保証をするのですか、島民が帰ったときに。現に、副知事が帰って死にそうになったんだよ。
 そういう状況の中で、それは帰りたい気持ちはわかるけれども、あなた方、センチメンタルに帰せ帰せと、その後、人命が毀損されたら、共産党が責任持つのかね。こんな君、売名的な政治が政治になって……。そんなたわけたことをいうな本当に、ここで。

○古館委員 安全の問題、こういうもので慎重になるというのは、私ども理解しています。その上に立って、数時間でも短時間でも--島民は、石原知事が、あるいは森首相が視察をしたということは、テレビでも承知しておりますし、一国の首相が島に上がれて、なぜ島の人たちがだめなのかという声もあります。
 そこで、知事、お尋ねしますけれども、長谷川村長は先日の村議会で、火山ガスが日に二万から五万トン出ている状態では、一定方向に吹く時期がいいという条件つきではありますけれども、それでも、一時帰島について都に要請していくと答弁されました。この島民の願いにぜひ答えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○大関総務局長 避難してから六カ月以上経過したわけですから、三宅村村民の、一時的にせよ戻りたいという気持ちはよくわかりますけれども、何よりも村民の安全、命が大事でございます。
 そういう点で、三宅島は現在でも日量二万トンから五万トンの有毒ガスが出ておりまして、特に山ろくでは、環境基準の百倍ものガスが出ているわけでございます。そうした中に、私どもが責任を持って、一時的にしろ、送るということはできません。
 そういう点で、私どもとしては、まず私どもがモルモットがわりに、防災職員が先行して、十五人から二十人ほどが来月から参りますから、そのことによって安全を確認した上で、このことを検討していきたいと思っております。

○古館委員 そのことについては、評価をしています。
 それで、私どもがいっているのは、何週間とかはいっておりません。数時間とか一時間とか、そういう短時間でも、あるいはできないのであれば、例えばビデオで今こういう状況になっておりますとか、情報の提供とか(「何をいっているのだ、ビデオとは違うじゃないか」と呼び、その他発言する者あり)だから、帰島の、一時帰還、可能であれば、ぜひこれは実現をしてもらいたい、このことを私ども強く求めておきます。
 同時に、島民の方々が口々にいわれているのが、石原知事に島民が今何を求め、都に何をしてほしいのか、これをぜひつぶさに聞いてほしい、理解してほしいということを島民の方々がいっています。この問題について、知事、ぜひこの島民の声を聞く機会を設けていただくわけにいかないでしょうか。いかがでしょうか。

○石原知事 私が出向いて、島民からじかに聞くのは簡単ですよ。しかしね、もっと微細に、各支庁なり各局がもっと微細にニーズを聞いているわけでありますから、それを集約して私が判断すればいいことで、あなた方、ビデオ、ビデオというなら、送り込みますから、共産党の責任で危険を侵してビデオを撮ってきてくださいよ。

○古館委員 これからそういう常駐体制ということも、先ほどやられるという答弁がありました。ですから、そういうできるような可能なことを考えていくということが非常に大事だと思っています。
 先日、NHKで「全島避難から半年」という特集番組が放映されていました。この中では、月二十万円の利子を払っているのだけれども、もう払えない。ところが、それを借りかえしようというにも、借りかえのしようがない。例えば、借りかえの融資があったとしても、一千万円無利子で、あとは全部有利子になってしまう。したがって、この問題について、生活関連融資について、対応を検討してもらいたい。
 しかも、この問題については、無利息、無利子、そういうような直貸しを東京都として検討していただきたいと思いますが、このことについて、いかがでしょうか。

○大関総務局長 避難生活が長期化する中で、都は、事業資金につきまして、貸し付けの全期間を無利子とする災害復旧資金融資による支援措置を実施してきております。
 そのほかの教育、住宅等の生活関連融資につきましては、村民の債務状況を調査、把握の上、今後の対応方について検討してまいります。

○古館委員 生活関連融資についても、ぜひ今いわれたような形で--ぜひとも生活関連融資については対応を検討するというのが重要です。先ほどいいましたけれども、事業資金融資は一千万円以上は有利子ですし、肝心の既往債務の借りかえについては認められておりません。
 それで、私ども、国を動かすという問題が非常に大事になってきていると思っています。三月二日に三宅島を視察した森首相は、特別立法の必要性を述べ、関係局に指示したと伝えられています。特別立法が現実的課題になろうとしている今日、ぜひこの個人の補償の実現、自然災害による個人資産、住宅の損失への補てんなど、雲仙でも鳥取でも大きく前進しています。
 世界の流れは、台湾でもカリフォルニアでも、個人資産の保全を当然のこととして補償しています。このことをぜひ含めた特別立法を制定していただきたいと思いますが、最後に質問して、質問を終わりたいと思います。

○大関総務局長 東京都は、長期の避難生活に対するさらなる支援策や、三宅島現地の被害拡大防止対策、帰島後の復旧、復興対策等について取り組んでいるわけでございますけれども、今後、国に対し、現行法制度の弾力的運用等を含め、適宜、必要な要請をしてまいります。

○田村委員長 古館和憲理事の発言は終わりました。(拍手)
 以上で、本日の予定しました質疑はすべて終了いたしました。
 なお、明日は午前十一時から理事会を控室一で、また午後一時から委員会を本委員会室で開催しますので、よろしくお願いいたします。
 これをもちまして本日の委員会は終わりました。
   午後九時八分散会

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