東京都議会予算特別委員会速記録第三号

   午後六時三十三分開議

○前島副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 木内良明委員の発言を許します。

○木内委員 二十一世紀は心の時代だと、こういうふうにいわれておりまして、いわば旧来の軍事力や、あるいは経済力といったハードパワーが影を潜め、まさに、新たな時代の展開は心によって構築をされるということはよくいわれることであります。
 しかしながら、我が国の心というものは、なかなか国際社会に理解をされていないというのが実態ではないか、私はこんなふうに思います。例えば、一年間で百五十億ドルもの開発援助など拠出していながら、残念なことに、申し上げるように心というものが理解されないために、なかなか評価、尊敬されていないという現実があるのであります。
 いわば、心ということ、それから日本人のそうした心を形成するに大きな存在性のある文学ということについて、私は議会の議論にはなじむかどうか当初は大変迷いましたけれども、あえてきょうは、知事と何問か議論を重ねたい、こんなふうに思っております。
 文学について、ヨーロッパの歴史との対比でいえば、例えば八世紀、大ブリテン島におきましては、侵略者であったアングロサクソン系の民族が幾つかの国家をつくっていた。また、既にローマ化されていた土着のケルト系民族の国もあり、殺りくと抗争のまさに真っただ中にあったわけでありますけれども、いわゆる七王国時代というときに、日本では既に「古事記」が編まれ、また、それ以前から「万葉集」が編さんされてきている、こういう事実がありますし、また十世紀、ゲルマン民族がヨーロッパ大陸で抗争を続けていたとき、我が国では世界最初の長編小説といわれる「源氏物語」や、あるいは「枕草子」といった、そうしたものが物されている。ちなみに、「源氏物語」は、やっと二十世紀に入りましてから、大英博物館の学芸員でありましたアーサー・ウェリーによって翻訳をされて世に、国際舞台に出たわけであります。
 こうした議論をするときに、やはりドナルド・キーンの名前も忘れるわけにはいきませんけれども、いずれにしましても、我が国には外国に類比して、卓越した、また繊細な情緒的精神性という資質の系譜というものがあるわけでありまして、きのうの質疑を聞いておりましても、該博な石原知事からは、江戸文化に触れられたくだりがありまして、江戸の町は人情の町であるというような言及もされておりましたけれども、まさにそのとおりだと思うのであります。
 一方、日本の現代文学に対する海外からの関心が高まっている中で、昨年の秋、国際交流基金の招きで来日をいたしました、外国の出版関係の方々とのいろんな交流の場があったわけでありますけれども、たしかイタリアの出版社の社長であったと思いますが、この人のコメントに、自分の国とは異なる考え方や、あるいは日本の生活の実態だとか、人間関係の機微などについて知ることのできる、いわゆるそうした作品を紹介したい、こういうような意見も出されたのであります。
 こうした時代的背景を考えるならば、二十一世紀の国際社会と日本との対比を考えるときに、文学の持つポテンシャリティーというものは極めて大きいといわざるを得ません。
 その意味で、過日、知事が亀井静香さんにお会いになったときに、日本の現代文学を世界に紹介するためのいわば政策として、翻訳出版事業の大きな推進を要請されたということは、まさに知事ならではの面目躍如たる要請であった、こんなふうに思っているわけであります。
 さて、このいわゆる文人政治家というものを歴史の中に渉猟してみますと、恐らく概念の設け方にもよるとは思いますけれども、例えば、ドイツ古典主義の大作家でありまして、ワイマール公国の宰相であったゲーテ、あるいはヴィクトリア朝の大政治家にして作家であったディズレーリ、あるいは、近くは第二次大戦で相当に活躍をした伝記作家のアンドレ・モーロアでありますとか、さまざまに邂逅することができるわけであります。ドゴール政治を支えた、いわゆる行動する作家としてのアンドレ・マルロー、また、近くではジェフリー・アーチャー、こういった人たちも実は見ることができるわけであります。
 共通してこうした人たちに私どもは光を当ててみますと、精神領域での希求の高さというものがこうした行動に結びつき、実存社会に相わたっている例、こういうものを見ることができるのであります。
 したがって、私は、現実の政治に対しては、文学は断じて無力ではなくて、むしろ時代精神、社会文化の基本ファクターとしての大切な存在意義というものを持っている、これは断言ができるんだと思うのであります。
 しこうして、決して私は阿諛するわけではありませんけれども、新たな時代のふくそうした社会環境と、また政治風土の今日的状況下でのいわゆるリテラリーポリティシャン、あるいはステーツマンと申し上げていいんでしょうか、石原知事のレーゾンデートルというものは極めて大きく、後世に特筆してとどめられるであろう、こう私は思っているわけであります。
 ちなみに、私は今回の質問をするに当たって、前置きが長くなって恐縮でありますけれども、平林たい子賞を受賞した知事の「生還」という作品を読ませていただきました。がんを独自の形で克服をし、現実社会に回帰したときの、また葛藤を描いたストーリーでありましたけれども、大変に研ぎ澄まされた角度からのストーリーであると同時に、生命境涯と申し上げていいんでしょうか、における問題提起を明確になさっておられたことに、新たな感慨を深くしたのであります。
 さらに、「わが人生の時の時」というのも読ませていただきました。芥川賞などを受賞され、現在同賞選考委員でもある知事は、日本を代表する作家の一人である、こう思うわけでありますけれども、知事における文学と政治の融合ということについて、いかなる感懐をお持ちか、まずお尋ねをしたいのでありますが、その前に、きのうかきょうの読売だと思うんですけれども、事前に確認しましたら、江藤淳さんがお亡くなりになったときに知事は弔辞をお読みになったということで、ご縁の大変深いということで、私もちょっと引用させていただくんですが、江藤さんが、「国語、言語能力を中心とする教育を深刻に反省し、考え直さないと、今後、どんな指導者が出てくるか、非常に心もとないのではないか」こういう警鐘を乱打しておられることでもありますけれども、この際、文学と政治の融合ということについていかなる感懐を知事がお持ちか、なかなか一言では難しいと思いますが、まずお尋ねをします。

○石原知事 大変難しいご質問でございますけれども、お互いに政治家でありまして、政治家というのは、だれとはいいませんが、決して、お金と人間関係だけで政治が運用できるものでございませんで、やはりそれぞれの理念を持ち、それを表現するということで、一人の人間としての自己表現というものを政治を通じてお互いに行っているわけであります。
 いいかえれば、口舌の徒ということでありますけれども、物書きもそうでありまして、やはり言葉というものを、私たちは大事な方法、手段として取り入れ、それによってそれぞれの個性というものを表現、発揮して、議席も得、活動しているわけで、私は最初、自民党から全国区の参議院に立候補したときに、仲間から非常にそしられたり、場合によっては軽べつもされましたが、しかし、政治と文学というのは決してそう離れたものではございませんで、これが音楽とか絵かきになると、ちょっと違いますけれども、両方とも言葉というものを道具として不可欠に使って表現する、自分を表現する、理念を表現するという点で、離れているようで、実は背中合わせの存在だと思います。
 私は、そう自覚して、文学でなし切れないものを、やはり政治家として体現していきたいと思っておりますし、物書きとしてのスタンスも失うことなく、最後はそれぞれ国家のために、都のために、自分の愛する者のために、自分の表現というものをし尽くしていく、そういう使命のもとに生きている政治家という存在と自覚しております。

○木内委員 非常に丁重にご答弁いただいて恐縮しておりますけれども、人間としての自己表現という、全く理解させていただくところでありまして、承っていまして私が感じたのは、ノブレスオブリージュという言葉が、かつては高貴な人たちの義務というふうに直訳をされたんでしょうが、今では選ばれた者の社会的責務とでもいいましょうか、これが今非常に求められているんじゃないかというふうに思うんですね。
 同時に、前提となるものが、いわゆる人間としての、私はよく人間力ということをいうわけでありますけれども、そうした責任感というか、あるいは感性といいますか、エモーショナルな部分が大変大事だと思うんですね。知事は感性とか情念ということをよくいわれるわけですが、それも軌を一にするものではないか、こんなふうに思いますが、一言でご答弁願えますか。

○石原知事 全くそのとおりだと思います。私が非常に親しくしている、江藤淳の後継者ともされている福田和也君が、よく、日本の政治にはエロスがないというんですけれども、エロスというと誤解されやすいですが、つまり、それを担当している政治家の情念なり感性というものが感じられないという意味で、それをエロスという形でくくったんだと思います。

○木内委員 あんまりこのたぐいの議論をしていますと、もう十分以上たっちゃったわけでありまして、申し上げている点を基軸に何点か提案、意見を申し上げたいと思うんです。
 いわば日本の現代文学を世界に発信する、このための施策というものが、今後相当に必要になってくるだろう、こう思うわけであります。
 一つは、都立大学という非常にレベルの高い、最近にわかにまた評価も高まっている学術機関を東京都は持っているわけでありますけれども、人文学部文学科には、文化論で著名な高山教授であるとか、プルースト研究の吉川教授、あるいは日本英語学会会長の中島教授など、非常に重層な教授陣がそろっているんですね。ただ、考えてみますと、海外の文学を受容するというシステムはあるけれども、こちら側から、双方向で、日本の現代文学を向こうに出版し、翻訳するというようなネタになるような環境ができていない。フランスからお見えになっているシッシェ助教授という方がおられるんですが、この人は水上勉さんの「雁の寺」なんかを初め、何点か翻訳をして、非常に斯界では有名な学者さんなんです。こういう方も都立大にいるわけであります。
 私は、この際、あえて都立大に要請したいんですけれども、双方向、とりわけドメスティックな立場から海外に現代文学をどんどん発信できるような環境づくりのための、いわばそうした頭脳というものを、今後、都立大は招請をしていくべきではないか、これを一つ思うわけであります。
 まずその点について、都立大事務局長。

○川崎都立大学事務局長 ただいま委員からご指摘いただいたように、現代文学の翻訳を通しまして日本文化を諸外国に発信していくことは、大学に期待される役割の大きな一つであると考えております。
 こうした観点からも、さまざまな機会を活用して、すぐれた外国人研究者や留学生を積極的に受け入れるとともに、同時に、国際的な文化の相互理解のために、文学を媒介にした日本文化の紹介や、翻訳に関します実践的研究を充実することによりまして、大学としても日本文化の発信に努めてまいりたいと思っております。

○木内委員 今、川崎さんから、実践的研究ということで、非常に具体的、現実的な答弁がありましたので、ぜひその進ちょくを期待したいと思います。
 それから、同じく都立大学の関連で、日本文学に関する研究及び教育交流というものを、これだけIT化が進んでいる現代社会でありますので、いわゆるディスタンス・ラーニング・システムを活用して、海外大学との単位の協定なども行いながら、こうした日本の現代文学の発信もまたできるわけでありますから、ぜひ進めていくことを提案します。
 これについても明快に答弁願いたいと思う。

○川崎都立大学事務局長 都立大学では、ニューヨーク市立大学など海外の十八大学と、学術文化交流に関します協定を結んでおります。そして、共同研究や相互の単位認定を伴う学生の交換等を実施してきております。
 最近では、ウィーン大学の日本学研究所やエール大学の言語学科と研究交流協定を締結し、日本文学に関する研究教育にも取り組んでいるところでございます。
 先生お尋ねのディスタンス・ラーニング・システム、遠隔教育につきましては、海外のこれらの大学との研究教育の交流促進のために、大変効果的な手段であると考えております。
 今後、その方法等について十分検討してまいります。

○木内委員 方法等について十分検討ということでありますから、実現を前提にした、そういう意味であると受けとめますので、ぜひ鋭意検討、研究を願いたいと思います。
 さて、知事、再びで恐縮でございますけれども、先日、亀井静香さんにお会いになったときに、いわゆる翻訳出版事業ということで大きな網をかけられた。私もこの報道に触れて、じゃ、東京都で何ができるだろうかといろいろ考えてみたんですが、私なりの一つの提案は、姉妹・友好都市を結んでいる十一の都市の日本語学科のある、あるいは日本研究部門のある大学に限定をいたしまして、ここに、生のまま、翻訳をする前の素材としての現代文学を、ピンポイントということになりますけれども、寄贈する事業というものを、ぜひこれは進めたらよろしいと思う。
 というのは、私なりに試算をして--その前に、ニューヨーク市では、コロンビア大学の日本語学科というのは、かなり規模、レベルともに高いようですね。こういったところは十分こなせるわけです。相手によっては、かなり濃淡があるとは思いますけれども、ぜひこれは進めていきたいし、この予算ベースについても計算をしてみたんですけれども、例えば、十一都市二十五機関に、単行本単価千五百円のものを百冊ずつ贈ったとしましても、四百万円いかないんですね、これ。
 ただ、金額の問題にかかわらず、こういう話を財務だとか生活文化局にしますと、また、需要の調査だとか、実態を勘案してとか、こんなことになるから私は聞かないわけですよ。いいよと、これも。知事と直接私はこの議論をしてみたいし、知事の率直な答弁をいただいて、何とかこれを果実にして--私は、こういうものは経済効果だとか費用対効果といわずに、まずやってみることだと思うんですね。
 これ以上申しません。聡明な知事のことですから、私のいうところをよく理解いただけると思いますので、ぜひご答弁願いたいと思う。

○石原知事 それはまさにグッドアイデアでございまして、大したお金じゃありませんから、すぐやりたいと思います。
 ただ、そのときに何を贈るかが問題でして、ハイブラウな文学も結構なんですけれども、この間、ジョン・ネイスンというのが、非常にすぐれた翻訳家ですけれども、例の十億円の構想のことで来まして、話をしたんですが、彼にいいましたのは、やっぱり翻訳ということに関しても、日本にも非常にすぐれた推理小説があるから、そういうものをやったらどうだ。これだったらとにかく売れる。三島由紀夫さんの評判の小説にしたって、せいぜい売れて一万や二万もいかないそうでありますから、つまり翻訳家も非常にちゅうちょする。ネイスンが夜中にアルバイトというんですか、頼まれた仕事をしていると、娘さんが入ってきて、お母さんに、お父さん、また日本文学の翻訳なんかしている、むだなことしていると怒るそうでありますけれども、そういう間口を広げるためにも、何も純文学だけじゃなしに、非常にすぐれた推理小説とか、あるいは何というんでしょう、アニメの台本とか、そういうものも私はやっぱり、ビデオも添えて贈ることで、日本の積極的な紹介になると思います。
 これは大変いいことで、大した予算じゃございませんから、都立大学発信で、川崎理事にもよくいっておきますので、必ずやります。

○木内委員 さすがにといっては僣越ないい方になりますが、知事、大変な答弁を得て、私は、この一問でもきょうの質問の意味はあったと、こう思うぐらいでありますよ。
 生文局長、議会の議論というのはこういうものですよ。お互いに知恵を出して、財政のないときは、文化をつくるために議論を紡いで果実を得ていく。具体的な方法についてはそれぞれの事務局にお任せをし、いざ今いった書籍の選択や何かは、知事は芥川賞の選考委員であり、日本を代表する作家でいらっしゃるんですから、お任せをして、また知恵をいただけばいいわけであります。
 なお、今最後に、都立大学窓口というお話もありました。あるいは東京都の生文がやるか、それはどうぞご検討いただいて、今いった姉妹・友好都市の方面に向けての発信を早急にご準備いただきたいと思います。
 これは、都立大の事務局長に答弁、それから生文の局長に答弁、求めません。具体的な進ちょくを図っていただければ結構であります。
 さて、心ということに関連をして、次のテーマでありますけれども、ユネスコ活動についてお尋ねをします。
 国連教育科学文化機関ユネスコは、教育、科学及び文化の分野における国際理解と国際協力を通じて世界の平和と人類の福祉に貢献することを目的に、国連の専門機関として設立をされたものであります。我が国は、昭和二十六年七月、国際連合に加盟する五年前にユネスコに加盟し、そうして国際社会復帰第一歩を踏み出しております。
 ユネスコ憲章では、戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならないと高らかに宣言をしています。二十一世紀の歴史は、軍事力や経済力といった、そうした先ほど申し上げたハードパワーによってではなく、ソフトパワーによって構築されるものでありまして、私は、この意味からも、この憲章の趣旨に全く同感であります。
 この人類の平和と福祉を希求する我が国のユネスコ活動の取り組みについても、これを高く評価いたしますとともに、これまで以上にユネスコに対して都は積極的な支援を行うべき、こう考えるわけでありまして、そこでまず、このユネスコ活動に対する知事の基本的評価をお尋ねします。

○石原知事 仄聞しますと、アメリカは何かこのごろ、ユネスコの協力も情熱を失って、半分手を引いたそうでありますが--確かには承知しておりませんけれども、いずれにしろ私は、もしそうとすれば、やっぱりちょっと一つのアメリカのおごりで、黙ってついてくればいい、アメリカの文明、文化こそワールドスタンダードという、何か、自負ならいいんですけれども、ちょっとおごりじゃないかという気がしないでもありませんが、いずれにしろ、これは例えば唐招提寺などもその対象になりましたけれども、自然や文化遺跡というものを世界遺産として登録して積極的に残すという活動はユネスコがしているそうでありますが、これは、環境が破壊されている現況の中で、とても大事な仕事だと思います。
 さらに、教育の分野では、途上国への識字教育支援など、あるいは科学の分野でも積極的にやっておりまして、これは非常に高く評価されるべきものだと私は認識しております。

○木内委員 また、首都東京におけるユネスコ活動の実績というものは、平和の願いを、日本国内のみならず、世界に発信する大きな力になるものであると確信をしておりまして、国及び地方公共団体におけるユネスコ活動への対応については、これに関する法律できちっと明文化をされている。そこで、都におけるこれまでのユネスコ活動の実績並びに都の支援実態についてはいかなるものであったか。
 あわせて、新たな世紀の幕あけとなる平成十三年は、我が国にとりまして、ユネスコ加盟五十周年という記念すべき年であります。近年、地域紛争や民族対立の多発と激化、発展途上国における貧困や飢餓、そして地球規模での環境悪化など、多くの問題が山積しておりまして、改めてユネスコ憲章の精神の実現が急務になっております。
 そこで私は、ぜひお訴えをするのでありますけれども、都においては、この五十周年に当たり、東京都ユネスコ連絡協議会が実施する記念事業に対し、単年度にせよ、財政的な援助を含めた支援など、積極的な連携、協力を進めることが必要と考えますけれども、明快にご答弁願いたいと思います。

○横山教育長 東京におきますユネスコ活動としましては、都内に十二のユネスコ民間団体がございます。それから、連合体でございます東京都ユネスコ連絡協議会がございまして、国際理解や国際交流の活動を中心として、さまざまなボランティア活動を行っております。
 また、都のユネスコ活動への支援につきましては、東京で開催された日本ユネスコ運動全国大会及び民間ユネスコ運動世界大会を共同で開催するなど、支援を継続しているところでございます。
 次のユネスコ加盟五十周年記念事業に対する支援につきましては、ユネスコ活動の一層の発展を図るため、東京都ユネスコ連絡協議会が行います同記念事業に対しまして、都教委として、ご指摘の趣旨を踏まえ、支援、協力を行ってまいります。

○木内委員 指摘の趣旨を踏まえて支援、協力ということでありますので、これも極めて具体的な答弁で、中身の推進をしっかり要請をしておきます。
 先ほど、文学の議論をしましたとき、ちょっと角度が違うので、今申し上げるのでありますけれども、関連をして、朝の十分間読書運動という点について一問だけ、要請、提案をしたいと思うのであります。
 子どもにとっての読書は人間形成に不可欠なものでありまして、子どもが本と触れ合うことは、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高めるということにとどまらず、創造的でより豊かな生き方につながるものであります。これは、先ほどの江藤さんの記事にも明らかでありますけれども、良書に接することで人生のすばらしい価値を見出すなどの体験は、多くの人が持っている。読書は、知事のいわれる、さっきも触れました感性あるいは情念をはぐくむ上で極めて重要な意味を持つものでありまして、心を毒する有害図書やテレビゲームがはんらんする世相の中で、子どもたちが積極的に良書に親しめる、そういう環境をつくるということは、社会の大きな責務であると思います。このことは、結果的には、知事の標榜される心の東京革命の推進、達成に向けての原動力の一つとなるものとも考えるものであります。
 昨年の子ども読書年を機に、全国的に、読み聞かせ運動、読書セミナー、児童読書アドバイザーシステム等が実施されてきておりますけれども、私はこの際、東京都においては、小中学校の教育現場での朝の十分間読書運動を推進していくように提案をするものであります。
 なお、これは、区市町村の教育委員会が主にイニシアチブをとる事業になるでありましょう。したがって、それぞれの現場の状況はあるでしょうけれども、東京都の教育庁としては、ぜひそうした状況も勘案しながら、朝の十分間読書運動の推進をしていかれるよう、連絡調整、指導を区市町村に対して願いたい。こういうことで、私の質問の趣旨はご理解いただけると思います。
 なお、実績等については、各地のケースを仄聞いたしますと、まさに担任の先生が、読書運動、朝の十分間を始めた途端、生徒の情緒性が安定したり、あるいは授業に非常にスムーズに入れるようになったり、いわば極端なさま変わりに涙し、胸を熱くするというような、こういうケースも報告をされているわけでありまして、ぜひ教育長の前向きの答弁を願いたいと思います。

○横山教育長 都教委としましても、最近の子どもの読書離れといいますか、そういった傾向については極めて憂慮しているところでございます。
 読書につきましては、児童生徒の豊かな人間形成や情操を養う上で重要な役割を担っていると考えております。読書活動につきましては、実施をしている都内の小中学校において、例えば、心の安定や学習意欲の向上などにつきまして大きな成果を上げているという報告を受けております。
 都教委としましては、お話のような朝の十分間読書などの読書活動の方法につきましては、学校に対しまして指導助言していくなど、読書活動の普及に努めてまいります。
 また、今後、各学校の読書活動を支援するため、司書教諭講習による有資格者の養成を進めたり、あるいは読書活動の推進に関する顕彰について検討するなど、読書環境づくりにつきまして、区市町村教委と協力しながら推進に努めてまいります。

○木内委員 これまた、教育長としては極めて明快な具体的答弁でありますので、進められるよう強く要請をするものであります。
 さて、全く角度が変わりますけれども、高次脳機能障害対策についてであります。
 平成十年、私どもは、この高次脳機能障害の実態について調査をすべきとの要請をいたしました。この提案を反映して、東京都は、十一年度、この実態調査に踏み切ったわけであります。
 時間の関係で多くは申しませんけれども、新たな時代が生んだ新しい病ということで、かつての古い時代ならば命を落としていたような脳血管疾患や、あるいはまた不慮の事故が、救急医療技術の発達によって、命は助かるけれども、記憶障害や知覚障害や言語障害、空間障害といった、そうしたいわば社会復帰できないような障害に悩む。そのために、いわば二十四時間の家族の介護も必要ということで、当事者やその家族は、大変不安の日々を過ごしていたわけであります。
 これは見過ごしにはできないということで訴えて、全国からのさまざまな関心と、また注目が集まる中、実態調査が行われて、四千二百人、都内にこの障害を持つ人がおられるということが判明をいたしました。
 いよいよそれから、衛生局においては、これに関するいわゆるリハビリを中心とした研究会を立ち上げるなど、今日までさまざまな努力をしてこられたことを多とするものでありますし、また同時に、大変短時日でありましたけれども、この東京都の取り組みというものが国を動かし、ついに本年の十三年度予算、先ごろ衆議院を通過しましたけれども、厚生労働省予算の中に、我が党のこの発言、また要請によりまして、一億円が対策費として計上されるということにもなってきたわけであります。
 そこで衛生局長にお尋ねするわけでありますけれども、都のいわば施策の先進的な取り組みというものが、この新たな時代の新しい必要な施策、高次脳機能障害対策における、国をいわば動かしたということがいえると思うんですけれども、どう認識されますか。

○今村衛生局長 都が調査方法を開発いたしまして実施した高次脳機能障害者実態調査につきましては、他の自治体から多くの問い合わせが寄せられております。
 また、国も平成十三年度から、高次脳機能障害者支援モデル事業を実施することとなっております。
 都が、この障害についての実態把握について全国に先駆けまして取り組んだことは、高次脳機能障害者対策の推進に大きな役割を果たすものと認識しております。

○木内委員 やはり都政のあり方というのは大変大事だと、つくづくこの問題についても実感をいたします。都が、いわばイニシアチブをとって国を動かしながら、本当に全国でお困りの方々、そしてまた、行政に反映されないで、福祉や医療の制度の谷間に置かれている方々を救済していくという、そうした大きな、また、私自身、議員としての責任も感じるわけであります。それによく都はこたえてくださっていると、こういうふうに思いたいのであります。
 議論の途中でありますけれども、きのう以来のある党の議論を聞いておりますと、共産党ですけれども、私はやっぱり、大分主張はするけれども、一体何が結果として得られているんだろうか。何か私の印象としては、不毛の議論という気がしてならない。やはり実績をね--物をいうときには議会で主張する、あるいは議会の過半数の賛同を得るように、その汗を流す、そして、その施策の実現のために予算獲得に努力をする、こういうプロセスがあってその党の施策なのでありまして、実績なのでありまして、いってみれば、福祉の切り捨てを許すな、こういって満足しているようなことでは、政党の役割は果たせないんじゃないか。
 私どもは、さまざまないわば新しい時代が生んだ福祉の課題に対して、一つ一つ新たな課題として、責任を持ってチャレンジを積み重ねているわけでありまして、それがこうして果実を生んでいるということに、また新しい責任も感じているわけであります。
 さて、この東京都における実態調査の結果というものは、申し上げたように、高次脳機能障害者リハビリテーション等調査研究会、これによって今、その対応等が研究されているわけでありまして、これは本年八月に行われると聞いているわけでありますけれども、研究、検討の内容状況はどんなものであるか、これをまずお聞きしたいと思います。

○今村衛生局長 医師等で構成いたします高次脳機能障害者リハビリテーション等調査研究会におきまして、医師等専門家向けのマニュアルと、家族向けのパンフレットを作成していただくこととしております。
 医師等専門家向けのマニュアルでは、診断のポイント、専門的なリハビリテーションの方法など、診断の際に活用できるもの、また家族向けパンフレットでは、障害に対する理解を助け、日常の家族への支援となるものをご検討いただいております。

○木内委員 去年、実態調査を踏まえてのさまざまな質疑を展開した中で、私は、各区市町村において、この高次脳機能障害の方々、ご家族の方が区市町村の窓口に行ったときに、いわば理解が十分でないために門前払いに遭ったり、あるいはたらい回しにされるということがあった。したがって、東京都は、この問題について、都内区市町村の行政担当者向けのこの問題に関する講習会をぜひ行って、そうしてその対応方を図るべきだ、このことを強く訴えました。
 先月二十五日、この私の訴えを受けて、行政担当者の方々初め、医療関係の方など三百人の方がお集まりになって、この講習会が開かれた。私も、こういうご縁がありますので、朝の九時からだったと思いますが、文京区の会場に駆けつけまして、見聞をしてまいりました。
 この問題の施策の一環として、区市町村への周知徹底ということの、この体制の充実を訴えたところでありますけれども、今回のこの周知徹底によりまして、現場のいわゆる区市町村の窓口ではどのように今後の対応が図られていくのか、これは福祉局になると思いますが、お尋ねをします。

○前川福祉局長高齢者施策推進室長兼務 今お話がありました、先月実施いたしました講習会、これは、行政が高次脳機能障害をテーマに初めて開催したものでございます。今回の講習会は、区市町村の相談窓口の職員が、高次脳機能障害について理解を深める上で有効であったと考えております。
 今後、区市町村の窓口において相談を受けとめていただくよう要請するとともに、都としても、専門的見地から助言等の支援を行ってまいります。

○木内委員 もう一つ、関連して福祉局ですけれども、社会復帰の具体策をも含めた福祉面の充実というのは、この問題については今後重要な課題であります。例えば、区市町村が設置する障害者福祉センターといった施設での受け入れを含め、いわゆる法内施設ですが、新たな具体的対応が必要と考えますが、どうですか。

○前川福祉局長高齢者施策推進室長兼務 都はこれまでも、高次脳機能障害の方々につきまして、障害者の手帳を所持している場合はもとより、手帳を取得されていない場合でも、小規模作業所等へ受け入れが可能となるよう、区市町村へ働きかけてまいりました。その結果、かなりの数の高次脳機能障害者の方々が、現に小規模作業所等に通所しておられます。
 今後、高次脳機能障害に関する国の動向を踏まえながら、委員ご指摘の障害者福祉センターでの受け入れなど、区市町村と連携して福祉施策での対応を検討してまいります。

○木内委員 今の答弁で明らかなように、公式の場で、そうした施設への受け入れが可能となるわけでありますから、きょうの答弁は、大変関係者の方にとっては朗報になるであろうと、こんなふうにお聞きしておりました。
 東部療育センターについてであります。幾つか用意してまいりましたが、一点だけお尋ねをいたします。
 この東部療育センターの建設費、基本設計五千万の予算措置は、やはり長年の悲願でありました家族の会等の関係の方にとっては、今、朗報となっておりますけれども、今後のいわば建設に当たっての具体的な設計面その他の配慮は、十二分になされなければいけないと思います。とりわけ、障害児本人や、あるいはご家族の要望を可能な限り反映したものとすべき、こう考えておりますが、これが一点。
 それから、医療療育を受ける重症児者にとって、緊急時に遠い医療機関に転院、通院することは大きな負担となります。同じ医療機関で必要な医療を受けたいという強い願望を持っておられます。こうした指摘を視野に入れながら、医療については、例えば他の専門機関、都立墨東病院や近接の高齢者複合施設医療機関、さらには大学病院などとの密接な連携体制の確立を図ることで療育内容の充実を図るべきと、こう私は訴えるものであります。
 以上について答弁をいただきます。

○今村衛生局長 東部療育センターにつきましては、おかげさまで十三年度に基本設計費を予算案として計上させていただいております。新施設におきましては、常時濃厚な医療ケアを必要とする超重症児などへの対応につきましては、高度な医療設備など、専門の診療機関等が必要と認識しております。新施設についても、このような超重症児に適切に対応してまいります。
 また、新施設の診療機能につきましては、障害児に起こりやすい疾病や、専門的な治療に適切に対応できるように整備してまいります。
 また、診療科目につきましては、要望の多い歯科を含めて、他の都立施設を参考に設置していく予定であります。
 また、療育内容の充実を図るためには、ご指摘のとおり、他の医療機関との連携は大変重要であると認識しておりまして、このため、都立墨東病院を初めといたしまして、隣接する高齢者専門病院や地域の医療機関等と連携を行いまして、適切な医療の提供に努めてまいります。

○木内委員 以上で終わります。(拍手)

○前島副委員長 木内良明委員の発言は終わりました。

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