東京都議会予算特別委員会速記録第三号

○松村副委員長 服部ゆくお委員の発言を許します。
〔松村副委員長退席、白井(威)副委員長着席〕

○服部委員 最初に、教育についてですが、平成十四年度から実施をされる新学習指導要領について質問いたします。
 私は、パネルの用意もありませんし、都議会は言論の府でありますから、言論一本で私は質問をしたい、そのように思います。
 二十一世紀の幕が開かれました。新しい世紀が希望と躍動に満ちた時代であることは全国民の願いであり、その実現は、まずもって将来を担う子供たちの教育のありようにかかっていると考えられます。教育は国の基本であります。昨年発足した国の教育改革国民会議の最終報告の提言によりますと、先人が築いてきた知恵や文化を受け継ぐとともに、新しい考え方や行動を編み出していくには、教育こそ人間社会の存立基盤であると述べ、今後の教育を変える十七の提案を行いました。
 東京都は、国に先立ちまして、心の東京革命を初め、東京構想二〇〇〇において、次の世代を担う児童生徒の心の教育の充実や、個性や感性を磨く教育を推進する施策を打ち立て、その実現に向けて取り組んでいます。こうした理想の実現のためには、すべての国民が日本国家の将来のありさまをしっかりと見据え、我々大人の責任において後世に誇り得る教育をつくり上げていくことが重要であります。
 特に、成長著しい児童生徒の教育を預かる学校教育に関しては、戦後の教育を総括するとともに、真剣に取り組んでいかなければなりません。現在、学校では、新学習指導要領の完全実施に向けて鋭意努力されておりますが、二十一世紀初頭の教育について示されたものであり、この成否が二十一世紀百年間の教育を占う重要なものであると思います。
 ちょうど、きょうのこれは読売新聞ですが、こういう見出しでトップで出ておりました。日本人の意識、本社全国調査として、「ゆとり教育四八%反対」「学力低下に懸念高まる」こういう見出しの記事が出ておりましたし、詳しい世論調査のデータが中身で出ておりますが、今までは、どちらかといえば、詰め込み教育の批判が相当出されていたんですね。そして今度、いろいろな要望あるいは時代の要求等を考えながら、ゆとり教育、そういったことを打ち出し、そういった今回の学習指導要領の改訂に当たって、大幅な学習内容、それから授業時間数の削減を行いました。そのために、この新聞ではありませんが、子どもたちの学力の低下を招くんじゃないか、あるいは技術立国としての土台が揺らぐのではないか、こういった指摘があります。
 そこで、東京都教育委員会は、この新しい学習指導要領に基づいて教育を進めるに当たって、このような声に対してどのように考えているのか、伺います。

○横山教育長 今お話しの学力観をめぐりましては、昨今非常に議論されておりますし、きょうの読売新聞の記事を私も拝見いたしました。
 この学力につきましては、単に知識の量の多少というか、それだけでとらえるのではなくて、基礎的な、基本的な内容を確実に身につけることはもとよりでございますが、新学習指導要領がねらいとしております、主体的にみずから学んでいく、みずから考えていく、そういった生きる力がはぐくまれているかどうかによってとらえる必要がございますし、この生きる力を身につけることが、基礎学力そのものの向上につながるものと考えております。
 都教育委員会としましては、新学習指導要領の移行措置としまして、学習内容の理解が不十分な児童生徒には、繰り返し指導したり、補充的な指導を行うとともに、十分理解した児童生徒には、その興味、関心に応じて、より進んだ内容を指導するなど、個に応じた多様な教育の推進に努めているところでございます。
 一方、国におきましても、子どもたちの基礎学力の向上に向けて、弾力的に少人数指導を実施できるなどの措置がなされているところでございます。

○服部委員 生きる力を身につけさせる、そういったことでこれから当たっていただけるわけですが、こうした新しい学習指導要領の実施とともに、学校の週五日制、これが実施されるわけですね。家庭や地域の教育力の低下が指摘されている現在、休日に子どもたちが、家庭やあるいは地域で充実した生活を送ることができるかどうかが懸念されているんです。特に、土曜日に子どもだけで過ごさざるを得ない家庭、あるいは心身に障害のある子どもなどへの対応、そういったことも気がかりだと思います。
 そこで、東京都教育委員会は、完全学校週五日制を目前に控えて、子どもたちの生活をより豊かなものにするためにどのように取り組んでいくのか、伺います。

○横山教育長 完全学校週五日制の取り組みといたしましては、学校、家庭、地域社会が一体となって地域の教育力の回復を図るとともに、子どもたちに生きる力をはぐくんでいくことが大切と考えております。そのために、区市町村が中心となりまして、子どもたちのさまざまな活動の機会と場を整えていく必要がございます。
 そこで、都教育委員会は、昨年、完全学校週五日制対応行動プランというものを策定いたしまして、その中で、区市町村などと連携して、とうきょう親子ふれあいキャンペーン、そういった充実に取り組むほか、区市町村事業への支援としまして、障害のある子どもたちの活動支援のための指導者を養成する講座などを実施することとしております。

○服部委員 先ほども質問で触れられたかと思うんですが、ことしの成人式の状況です。この成人式の意義、そういったものを理解することなく、場内でお酒を飲んだり、あるいは携帯電話で大声で話したり、あるいは人の話を聞かない、そういった勝手な気ままな言動、これはまさに本当に大変残念な報道がされておりました。
 もちろんすべての会場だと私は思いたくありません。ただ、そういったことを考えたときに、本当に改めて愕然とするとともに、日本の将来に少なからず不安を抱いております。こうした状況を目の当たりにして、改めて東京都が提唱した心の東京革命の必要性を痛感して、今後、我々大人がまさに責任を持って、社会的ルールの尊重を初めとした、人が生きていく上で当然の心得、これを伝えていかなければならないと強く私は感じました。
 ところで、こうした若者たちの行動の背景には、式典に対する知識の欠落、あるいは厳粛かつ清新な式典を経験してこなかった、こういったことにあるんじゃないかと思うんですね。先ほど奥山先生も触れられました、卒業式で本当に生徒が校長先生に花をささげて、胴上げをさせてほしい、先生ありがとうという感謝の気持ちをあらわす、そういうことが一つの教育のあり方だと思いますが、こうしたいろいろな学校教育の中で、体験が不足している、もちろん学校教育だけに私は責任を問うつもりはありませんけれども、入学式とか卒業式、そういった場において適切な指導がなされてこなかったんじゃないか、そういうことも影響しているんではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○横山教育長 確かに、入学式や卒業式などの儀式的行事でございますが、こういったものは、学校生活に有意義な変化や折り目をつけまして、厳粛で清新な気分を味わい、新しい生活の展開への動機づけとなりますことから、これは実は学習指導要領に明記されておりまして、こうした学習指導要領にのっとって適切に実施されるよう、区市町村教育委員会や学校を指導してまいりました。
 一方で、先ほど先生がおっしゃいましたように、学校教育だけではなくて、子どもたちに規範意識を醸成することは必要でございますので、家庭や地域全体で考えていく必要がございます。そのため、「心の東京革命」教育推進プランを実施いたしているところでございます。

○服部委員 昨今の学校教育に対して、多くの方々から批判の声、そういったものが渦巻いているといっても過言ではないと思うんですが、ただ、ささいなことでも学校の責任を追及したり、あるいは家庭や社会の責任まで学校に負わせる、そのような風潮があることも事実です。
 確かに、学校に原因があることもありますけれども、多くの教師、こういった方々は、子どもの教育のために本当に日夜頑張っていると思うんです。先ほどの日教組の教研集会なんてもう論外の話ですが、多くの方が日夜頑張っていますよ。そういった学校に対する批判ばかりではなくて、必死に教育に取り組んでいる教師の意欲を、批判ばかりではそぐことになってしまう。だから、それがまた学校教育全体の教育力の低下を招くことにもつながってくるんじゃないかと思うんです。
 ここに、ノーベル医学生理学賞を受賞したコンラート・ローレンツ博士、オーストリアの方ですが、こういうことをいっていますね。人間というものは、まず第一に自分の好きな人、第二に尊敬を抱いている人からのみ伝統を受け継がれるようプログラミングされている、こう述べているんです。教師と児童生徒、あるいは教師と父母、教師と地域社会、こういったおのおのの信頼関係を取り戻して、そこからまた教師としての自覚あるいは責任、そういったものが生まれるよう、また教師の奮起も期待して、そして、教育に情熱を持って、日本の将来をしっかりと見据えて教育に携わっている教師に対しては、社会全体で応援していく、こういうことも大事だと思うんです。
 いずれ、教師に感謝する日、教師の日を制定して、学校教育全体の活性化を図っていくことの大切さを、これは強く要望して、この件については終わります。
 次に、町会について伺います。
 町会というのは、これはもう自然発生的に組織されて、お祭りとかそういった行事を通じて、お隣近所のおつき合いだとか、あるいは連帯感をもとに、相互扶助あるいは地域問題の解決、そして行政の円満な運営への協力をいただいています。
 町会としての行政への協力は、先日の都議会自民党の松原忠義議員の一般質問でも取り上げられましたように、非常に多いんですね。交通、防火、防災を初め、あるいは地域の発展や課題の解決に今まで多くの貢献をしてきました。近隣の人々が被災者の発見や救助に大きな役割を果たした阪神・淡路大震災、こういった例を挙げるまでもなく、町会は、地域に住む人々の連帯と交流がエネルギーとなって、自分たちのことは自分たちが責任を持つ、自分の町は自分で守る、そういう自助あるいは共助に支えられた、私は地方自治のこれは原点だ、そのように思っているんです。
 私の地元の、観音様、浅草寺の伝法院に参りますと、後藤新平翁が揮毫された、こんな大きな、畳一畳ぐらいでしょうか、額が掲げられてあります。そこには、人のお世話にならぬよう、人の世話をするように、そして報いを求めぬよう、こういうことが書いてあるんです。まさにこれはボランティア精神を説いたものだと思いますし、町会の活動というのは、この言葉どおりを実践している、そういう奉仕活動そのものだと私は思っています。
 平成三年に地方自治法が改正されて、町会会館とかそういった不動産等に関する権利を町会で保有できる、そういう道も開かれましたし、平成十一年には、地縁による団体功労者感謝状規定を定めて、功労のあった町会長を顕彰する制度もスタートいたしました。いずれも、これは国が町会の重要性を認めた一つの証左と私は受けとめています。
 しかし、近年、価値観の変化というんでしょうか、地域の活動に無関心な人がふえてきた。町会の役員はもとより、町会の加入者も減少している、これは大変残念なことです。今後一層東京が発展をしていくためには、地域の歴史や、あるいは文化を生かした魅力あるまちづくりを進め、そしてまた、人々が触れ合い、あるいは潤いを持って暮らせるまちとして、地域の交流と連帯の礎となる町会の活性化、これは私は極めて重要な課題だと思います。
 知事は、町会をどう認識をされ、また今後、東京においてこの町会に何を期待しているのか、お伺いいたします。

○石原知事 私は、町会というのは、世界の中でも非常に希有なるものじゃないかと思います。非常にいい意味で日本的でありまして、こういう小さなサークルが部分的に活躍している例は外国にもあるかもしれませんが、しかし、日本のようにどこに行ってもとにかく町会があると。昔は、隣組という形で、歌までありました。トントントンカラリと隣組と。これで本当に自助、共助というものが促進されて、また、そこの町、同じ町に住む人間同士のアイデンティティーというものが確立されていったと思います。
 おっしゃるとおり、いろいろな形で町会の方々が活躍していただき、行政も直接間接お世話になっているわけでありますけれども、今後、時代の変化で、これが希薄なものになっていくのは非常に残念なことであります。さりとて、都がこれを、強制とはいきませんけれども、とにかく強く働きかけて、町会というものを、何というんでしょうか、助長するというのも僣越な話で、やはりこれは自家発生的な、人間同士の心のつながりから生まれてくる目に見えた連帯ということだと思います。
 いずれにしろ、今後とも、こういう日本の社会的な美風というものがよき伝統として存続され、災害などの折に限らず、年を通じていろいろなアクティブな活動をされるということを心から期待をしております。

○服部委員 ありがとうございました。
 町会は、まちづくりとか福祉、こういった都民の生活に密着したさまざまな問題の解決に取り組む、地域を支える団体なんです。都政に関する情報を積極的に提供していただき、自主的、主体的にまちづくりを担う町会とよく連携をとって、都政の推進を心がけるべきだと考えますが、この点、いかがでしょうか。

○高橋生活文化局長 町会は、今のお話にもございますように、行政と住民とのパイプ役として非常に重要な役割を果たしております。このため、平成八年度以来、区の町会連合会及び自治会連合会で組織する東京都町会連合会との間で、清掃事業の区への移管やリサイクル事業の円滑な実施、それから防災対策あるいはオウム問題、TDMの問題など、さまざまなテーマで連合会と意見交換を行ってきております。また、東京空襲犠牲者を追悼し平和を祈念する碑の建設募金などにもご協力をいただいたところでございます。
 今後とも、先生お話しございました、心の東京革命などでは、町の町会の会館から、子どもたちがそこに合宿をして学校に行くというような教育庁の試みもございますが、そうした心の東京革命の推進を初め、地域ぐるみで取り組んでいただく課題につきまして、情報交換の場を設けるなど、都政と町会との連絡を図ってまいりたいと思います。

○服部委員 町会というのは、本来、今までもそうだし、これからも、各区市町村との関係でやっていくということが基本だと私も思います。
 ただ、そういった町会長さんの代表者が、東京都の町会連合会として今実際に年に何回か会合も開いています。新年会もありますし、定期総会もあるし、あるいは東京都との連絡会もあります。そういった中で、いろいろな情報も伝達もしていただきながら、また、知事、たまには、時にはひとつこういう会合のときに一度出席もいただいて、皆さん、ご苦労さまというねぎらいの言葉をかけていただければ、大変町会の皆さんも励みになるんじゃないかな、そう思います。
 あともう一点、東京都の功労者表彰制度、この中に、地域自治振興功労者枠が設けられたんですが、実績として町会枠が年々減っている。平成十年には五十一名あった、平成十一年には五十五名、昨年は二十名、半分以下、いろいろお考えもあるかもしれませんが、やはり地域で本当に奉仕活動として頑張っておられる、こういうことこそ、私は都として表彰に値する方だと思うんですよ。したがって、こういった東京都の地域自治振興功労者枠、これもぜひ拡大をしていただきたい、そのように要望いたします。
 ぜひ東京都の職員の皆さんもひとつ町会にも所属されて、大いに町会活動、奉仕活動もやっていただきたい、そのように思います。
 次に、住民基本台帳ネットワークシステム、いわゆる住基台帳のネットワークシステムについてお伺いいたします。
 一昨年になりますか、八月に住民基本台帳法が一部改正されて、住民基本台帳ネットワークシステムが導入されることになりました。住民票の写しの広域交付や転入・転出手続の簡素化等を行うことで、住民負担の軽減あるいは住民サービスの向上、さらには国、地方を通じた行政の効率化が図られるため、このシステムの導入は必要だと私は思います。
 十三年度はシステム構築の本格的な段階に入ると聞いていますけれども、期待される反面、構築する経費の財政負担あるいは個人情報保護対策など解決すべき課題があります。
 システムの構築経費についてですけれども、区市町村の財政状況が非常に今は厳しい、そういった中で、大きな負担となっている。都内の区市町村では、人口規模など団体間に差はあるんですけれども、一団体おおむね四千万から一億、そういう費用がかかるということであります。この財源については、平成十二年度から普通交付税で措置されることになって、また、不交付団体に対しては、これは特別交付税として措置される、そのように聞いています。
 しかし、私の地元の台東区を初め、特別区は、都区合算規定などによって地方交付税が実質的に交付されないわけです。国は、ほとんどすべての地方自治体に対して地方交付税で財政措置する中で、特別区だけ例外扱いする、こういうのは不合理だと考えるのですが、特別区に対し何か別途の財源措置を講じるのか、また財調制度での対応はどうなっているのか、お伺いします。

○大関総務局長 お話しのとおり、特別区には、実質的に地方交付税による措置が行われていないわけでございます。国におきましては、地方交付税とは別途に、このネットワークシステムに関連した実験事業ということで、平成十三年度予算におきまして、一区当たり二千万円程度の事業費を予算化したと、このように聞いております。
 また、平成十三年度の都区財政調整におきましては、今回のシステム構築にかかわる区が負担する費用につきましては、各区に共通する標準的な経費といたしまして、新たに基準財政需要額として必要額を算定することとなりました。これらの財政措置によりまして、特別区は、平成十三年度のシステム構築に当たり、十分な対応ができるものと考えております。

○服部委員 国の特別な措置並びに財調算入によって特別区は財源的には問題ないと、そういうことであります。
 もう一つは、課題であります個人情報保護対策、いわゆるプライバシーのことですが、このシステムの導入に当たって、個人情報の保護対策が重要な課題となっていますね。一昨年の八月に一部改正された住民基本台帳法には、どのような個人情報保護措置が加えられたのか、また、システムの技術面あるいは運用面でどのような保護措置がとられているのか、伺います。

○大関総務局長 住民基本台帳は、やはり個人情報をしっかりと保護するということは大事なことでございます。改正住民基本台帳法により、本システムを利用するに当たりましては、本人確認情報の提供先や利用目的を具体的に限定し、提供した情報の目的外利用を一切禁止するとともに、情報に関与する者すべてに対し、これまでより厳しい守秘義務を課すなど、さまざまな個人情報保護措置が定められたわけでございます。
 また、技術面、これがまた難しゅうございますので、これにつきましては、ネットワークに専用回線を使用し、送信情報を暗号化するなど高度なセキュリティー対策を講じていく予定となってございます。
 さらに、運用面におきましては、情報の管理責任者を明示するなど、個人情報保護については、国際的基準に適合した対策を講じていくこととなってございます。

○服部委員 もう一点、このシステムは、いわゆる国民総背番号制と危惧されるようなものなのか、この点についてご見解を伺います。

○大関総務局長 このシステムは、地方公共団体共同のシステムでございまして、取り扱う情報も、法律に基づき、本人確認のための住所、氏名など、基本的に五つの情報だけということになってございます。
 また、国の機関等へのデータ提供は、法律で定められた事務に限定され、目的外利用は一切禁止されております。
 以上のようなことから、国民に付した番号のもとに国があらゆる個人情報を一元的に収集、管理する、いわゆる国民総背番号制に当たらないものと考えております。

○服部委員 このシステムは、区市町村が、このカードを活用することで多様なサービスが受けられるんだ、また効率化もあると。そして、これは国が管理するシステムではない、いわゆる地方公共団体共同のシステムである。その点の認識が大事だと思うんですけれども、こうした住民基本台帳カードというのは、例えば私が持っている運転免許証とか、あるいはパスポート、これを持っていない人のために、全国で通用する新たな身分証明書となることはもちろん、カードにさまざまな情報を入力して、それで独自のサービスを打ち出していく、そういったことが可能になると思うんです。
 例えば、高齢者、そういったカルテを、病院と連携して、そのカードの中に入れておく。そうすると、何か救急のときに、迅速で的確な処置が受けられる。ですから、こういう利用方法を我々はいろんな角度から、せっかく導入する以上、大いに知恵を出しながら、どうやってうまく使うか、それが大事なことだと私は思うんです。
 そういった意味で、大変魅力のあるシステムだと私は思うんですが、これがなかなか理解をいただけない方もいらっしゃるようです。そういった方々、特定の区なんかもこういったこともおっしゃっている方がいらっしゃるようですが、やっぱりこれはスケジュールどおり、着実にこのシステムの構築を行っていくことが大切だと私は思います。
 もちろん、システムの導入に当たっては、利用者である都民の理解を得ること、これがやはり重要であると考えますし、都民への広報を十分にして、わかりやすく行っていただくよう、あわせて要望をしておきます。
 次に、山谷対策とホームレス問題について伺います。
 これは、私も何回か質問もいたしました。長引く経済不況の中で、本当にこの山谷地域を含め、日雇い労働市場の状況はまだまだ改善されていません。今回、都は、福祉局と高齢者施策推進室との組織の統合に合わせて、今まで部レベルで行っていた山谷対策を、今度は課レベルに組織がえをする、こういう発表がされました。
 私は、これによって、今までやってきたいわゆる総合調整機能の低下とか、あるいは事業が縮小されるんじゃないか、そういうようにしか受け取れないんですね。都としての山谷対策の重要性については、いささかも変わることがない、そう思うんですが、その基本的な認識、そしてまた役割についてどのように考えているのか、所見を伺います。

○前川福祉局長高齢者施策推進室長兼務 山谷地域は、近年、日雇い労働者の減少あるいは高齢化が進む一方、ホームレスが増加するなど、地域を取り巻く環境が大きく変容いたしております。こうした中で、山谷対策を有効に推進していくためには、生活支援に関する諸施策などとの連携を強化して、総合的に取り組むことが不可欠となっていると考えております。
 今回の組織改正は、こうした趣旨に基づきまして、関係する局や区との総合調整機能などは引き続き確保しながら、福祉局内の関連部門との一体化を図るものでございます。

○服部委員 今までどおり山谷対策については、大変でしょうけれども、取り組んでいただきたい。組織が変わっても、積極的にこの山谷対策に取り組むことがやはり必要だと思うんです。山谷地域では、現在簡易宿泊所が並ぶこの町並み、こういった中に空洞化が目立ちます。ですから、こういった空き地を活用して、環境整備とか一体的なまちづくりを進めるなど、こうした課題への対応も重要と考えます。
 山谷対策は、台東、荒川二区の問題ではなくて、大都市問題として、都を中心に解決に向けて取り組むべきだと私は思います。
 そこで、山谷地域は二区にまたがることから、地元区が中心になり、まちづくり協議会での検討を進める際、都が積極的に参画し、調整を行うべきと考えますが、所見を伺います。

○山下都市計画局長 ご指摘の地域におきましては、建物の老朽化や小売店等の減少などが進行しておりまして、まちづくりの上では、防災性の向上や商店街の活性化に向けた地元区の取り組みが、何よりも重要であると認識しております。
 都といたしましては、地元区を中心といたしました協議会等が設置された場合に、都も参画し、都区の適切な役割分担のもとにまちづくりを推進してまいります。

○服部委員 せんだっての我が党の代表質問で、佐藤幹事長の質問に答えて、東京のホームレスという白書を出されまして、その実態が明らかにされたわけですが、ホームレス自身の自助努力、これを前提として、やはり社会全体として取り組んでいかなければならないと思います。
 そこで、今後のホームレス対策の考え方、また具体的な取り組みについて伺います。

○前川福祉局長高齢者施策推進室長兼務 ホームレス対策につきましては、今回発表いたしました白書でお示しをいたしましたように、これまでの応急援護を中心とした対策から、就労、住宅、福祉、保健、医療等、多分野にわたる長期的、総合的な対策へと転換していく必要があると考えております。
 福祉分野におきましては、ホームレスみずからの社会復帰に向けた努力を支援する施策を、二十三区と共同して推進していく考えでございます。当面、十三年度におきましては、自立支援センターの増設やグループホームの拡充を図るとともに、新たに、ホームレスを一時保護し、心身の健康回復と処遇方針の決定を目的とする緊急一時保護センターを設置する方針であります。現在、特別区と協議を進めております。

○服部委員 今の答弁にあったように、都と二十三区がまず一歩を踏み出す、そういうことが意義があって重要なことと考えます。しかし、本来、ホームレス問題は社会のセーフティーネットにかかわる問題であって、国の責務が最も重要であると考えますけれども、正面から取り組んでいる、まだそのようには思えません。国のより積極的かつ責任のある取り組みを促すべきだと考えますが、知事はこの問題にどのように取り組まれるのか、決意をお伺いいたします。

○石原知事 おっしゃいますように、これはあくまでも国家の問題といいますか、全社会的な問題だと思いますが、いずれにしろ、先般、東京としては、恐らく全国に先駆けて初めてホームレスに関する詳細な調査をいたしました。ホームレス白書なるものをつくりましたが、いろいろ改めて確認されたといいましょうか、わかってきたことがあるようであります。
 例えば、一時的な対処、食糧の給与などというものは、何ら本質的な解決につながり得ない、もっと大きな対策が必要だという、そういう認識を持ちましたが、なればなるほど、これはやっぱり国との連携というか、国のこういう問題に対する責任の自覚というものが必要になってくると思います。
 東京も、そういう点ではホームレスの多い自治体でありまして、東京から何か発案し、そして国の援助を得るべきものは国に建言して、国の力も引き出したいと思っておりますが、都内に関していいますと、何か積極的にこれに関する施設をつくろうと思うと、総論賛成、各論反対になりがちでありまして、そういう点でも、区市町村のいろいろ理解と協力をいただきたいと思っております。

○服部委員 こうした問題解決に自立支援センターの開設など、特別区の皆さんにも本当に汗を流していただいておりますけれども、さらに特別区と東京都が協力して、この白書が示した自立支援の仕組みを定着させて、安定的に稼働させることが問題解決のために私は必要だと思います。
 そして、何よりも国の積極的な取り組みが不可欠であって、この実現に向けて、都としても国に対して積極的に働きかけることを強く要望しておきます。
 商店街の活性化について一問だけ質問いたします。
 元気を出せ商店街、この事業は年々大変ふえていますし、私はこれは大変重要な施策だと思います。こういった元気出せ商店街の結果、商店街からは本当に活性化やイメージアップに効果があったとか、大江戸線の開業に合わせたイベントに今後の成果が期待できるとか、こういうご意見もたくさん寄せられて、やはりこの事業を引き続き実施することが必要である、そういうことは私は明白だと思うんです。
 二十一世紀の商店街づくり振興プラン等もありますけれども、このプランの策定により、商店街の活性化にどのように取り組もうとしているのか、考え方を最後に伺います。
 それと同時に、これは時間がありませんので、要望もあわせて申し上げますが、知事、やる気のある意欲的な商店街、こういったところがあるんですよ。大型のスーパーや、そういったものが出てきても、負けてたまるか、おれたちでやるんだという意欲的な商店街、それは大いに育てていかなければならないと思うんです。ですから、そういうやる気のある商店街については、知事が視察でもいただいて、励まして、その商店街を奮い立たせていただきたい。そこに、元気出せ商店街とか二十一世紀商店街づくり振興プラン、これが生きてくると私は思うんですよ。
 ぜひ、それによって千客万来の国際都市東京、この未来が開けてくると信じて、質問を終わります。

○浪越労働経済局長 二十一世紀プランの策定によって商店街の活性がどう図られるのかというご質問でございます。
 商店街の活性化を図るためには、商店街が地域の実情に応じて、二十一世紀商店街づくり振興プランで示す戦略を参考に、主体的な取り組みを行うことが極めて重要であると考えております。
 また、NPOや地域住民との協働関係を保ちながら、地域コミュニティの中核としての役割を果たしていくことにより、商店街みずからが活性化するとともに、その地域全体の活性化にも貢献できるものと考えています。
 都としては、このような商店街が行う意欲的な取り組みに対して、地域の実情に精通した区市町村との連携のもとに、積極的に支援をしてまいります。

○白井(威)副委員長 服部ゆくお委員の発言は終わりました。(拍手)
 この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩いたします。
   午後五時五十八分休憩

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