東京都議会予算特別委員会速記録第六号

○清原委員長 大河原雅子委員の発言を許します。

○大河原委員 本日もしんがりでございます。生活者ネットワークとしての締めくくり総括質疑を行います。
 森を守ることは、川を守ること、おいしい水を守ることという東京都水道局のポスターに、遠い存在のように思われがちな森林と私たち都市住民との関係を改めて考えさせられました。
 東京の総面積の約四割を占める森林は、本来、材木を生産し、水を蓄え、大気を浄化するなど、私たちの生活にはかり知れない恵みをもたらしてきました。しかし、昨今では、この貴重な森林も、林業をめぐる経済社会状況の悪化により、手入れを放棄された山がふえ、荒廃が進んでおります。まさに東京の森林環境は危機的な状況にあるわけです。
 森の荒廃が進んでいる一方、市民ボランティアが森に足を運び、山の作業を行っております。都は、森林を都民共通の財産として位置づけ、都民参加による都市型森林政策を進めてきたはずです。これまでの成果と、今後の方向性をどのようにとらえているのか、まず伺います。

○大関労働経済局長 お話のように、木材価格の低迷などによりまして、東京の森林の荒廃が進んでおります。このため、東京都では、都民参加の森づくりを重要課題と位置づけまして、森のオーナー制度や、森林を守る都民基金の設置、それから都民の森の開設などを進めてまいりました。
 そうした一方で、都内では、十二団体、約八百人の方たちが、森林ボランティアとして荒れた森林を整備するなど、都民の理解も深まってきております。
 今後とも、広く都民の参加と合意のもとに、より多様な形で森づくりを進めてまいります。

○大河原委員 次に、平成八年度策定の十カ年計画「東京の森林づくりプラン21」の現時点での課題、見直しについてお尋ねいたします。
 また、産業としての東京の林業を考えるとき、産業ビジョンや都市構想に改めて環境保全型産業として林業が位置づけられるべきであり、そこでは、東京独自の振興策が必要であると考えます。地場消費が進んでいる都市農業と同様に、林業でも、東京で生産される木材の東京での消費を優先して進めるべきであり、消費者にわかりやすく、選びやすくすることも大切です。都市林業を進めるためには、一般市場任せの価格システムではなく、次の生産を保障する新たな仕組みも必要です。
 東京の森づくりに貢献する東京産の木材に消費者が付加価値を認めて育てることで販路が拡大する、いわば産直林業の進展を図るべきと考えますが、所見を伺います。

○大関労働経済局長 東京の林業を取り巻く状況は、森林づくりプランの策定時と比較いたしましても、さらに厳しさを増しておりまして、木材利用の拡大と適切な森林整備を進めることが緊急の課題と認識しております。
 プランの見直しにつきましては、今後、こうした課題を整理しながら検討してまいります。
 また、ご提案の産直林業の推進でございますけれども、大消費地であり、かつ多様な需要が期待できます東京においては、大変有意義なことと考えております。現在、東京では、森林組合と生活協同組合との協定に基づき、都内の産材を積極的に使用する家づくりなどが始まっております。都は、こうした動きを側面から支援し、東京産木材の一層の利用拡大を進めてまいります。

○大河原委員 次に、行政評価について伺います。
 豊かな森林は、川やダムへの土砂の流入を防ぎ、雨水を地中に涵養する緑のダムです。
 この二月に出された水道事業評価委員会の報告は、公共事業のあり方が各方面で議論される中、国で進めるダム開発について、需要者の立場である水道事業者として初めて行った事業評価であり、都が模索している事業評価システムとも相まって、注目しておりました。
 この委員会では、定量化が困難な投資効果分析の取り扱いが主な争点となり、また、付帯意見としては、外部経済や環境対策の費用対効果の検討や既得水源の活用など、東京の水循環を考える上では非常に重要な助言が提言されました。このような事業評価委員会の助言などを受けとめて、今後の事業に生かしていくのも、事業評価を行った目的です。
 特に、外部経済や環境対策の費用対効果など、多様な視点から事業評価を行うことを検討されたいとあることは、国が主導する公共事業についても、都が主体的に施策の方向を誘導し、都民の意見の反映や、国にデータの公開を求めていくためにも、そしてまた水循環の視点からも、貴重な意見だと私は思います。
 今後、どのようにこれらを生かしていくのでしょうか、基本的な考えを伺います。

○赤川水道局長 水道事業における事業評価委員会でのさまざまな意見は、水道事業を推進していく上で貴重なものと受けとめております。ご指摘の趣旨も踏まえまして、こうした意見を可能な限り事業評価に反映できるよう、今後、客観的かつ合理的な評価手法の確立や、目標設定のあり方も含めまして、総合的に検討してまいります。

○大河原委員 さて、むだとか、効果に疑問というように、公共事業に対する批判が強まっていますが、建設局では、平成十年から事業評価委員会を設置して、投資的経費にかかわる事業の一部を事業評価してきました。この部門にこそ客観性と透明性が担保されなくては、この制度への都民の信頼は得られないでしょう。
 事前評価、再事業評価、事後評価といった総合的な評価制度とともに、第三者によるチェックシステムが必要です。二年間の事業評価を経て、このような課題への認識と対応について伺います。

○古川建設局長 事業評価については、平成十年度から、外部の学識経験者から成る事業評価委員会を設置し、公開の場において、事業の必要性、効果、コスト縮減などについて、再評価を既に東京都全体で七十四事業実施しており、制度として定着しつつあります。
 二年間の経験から、事業評価に当たって、都民への説明責任に十分こたえるためには、定量的な評価が難しい公園事業などでの客観的でわかりやすい評価手法の開発、及び第三者機関の活用が有効であると認識しています。
 これまでも、事前評価として新規事業の費用対効果、また、事後評価として道路整備による経済効果の把握などを行政内部において実施してきましたが、今後は、事前、事後評価についても第三者機関に諮ることを検討するなど、事業評価の一層の充実に努めてまいります。

○大河原委員 現在、総務局では、平成十三年度の本格実施に向けて、行政評価制度の試行を行っていますが、現時点では、都民への情報公開と、それによる職員の意識改革が主たる目的になっているにすぎません。今後は、政策のコストと効果をわかりやすく整理するとともに、コストに換算できない事業を評価していく、いわゆる社会アセスメントを取り入れることが求められます。経済価値だけでは置きかえられない環境問題や高齢社会への見地といった社会のニーズを評価軸に置き、総合的に評価することが重要です。
 このような観点は、本格実施に向けて、行政評価制度の中にどのように取り入れられるのか、その点を伺います。

○横山総務局長 行政評価制度は、都の行政活動の目標と結果を都民にわかりやすい形で示しまして、それらを客観的に評価することを一つのねらいといたしております。
 今年度の試行結果におきましても、わかりやすく、かつ事業の成果を的確に評価できる指標の設定が主な課題となっておりまして、来年度の試行におきましては、都民生活にどのような効果をもたらすのかを示す指標を設定して、実際の評価に当たっていくこととしております。
 今後とも、課題の検証を重ねまして、都にふさわしい行政評価制度を確立すべく努めてまいります。

○大河原委員 持ち時間が残り少なくなってまいりましたので、大幅に近道をさせていただきます。理事者の方々にはご了承願います。
 最後に、臨海副都心開発について伺います。
 この開発については、平成九年に、青島知事のもとで盛んな議論の末、懇談会も設置して見直してきました。
 私たちは、当初の開発計画の問題は、バブルに踊ったという側面はありますが、投資を一挙にするというリスクの点、また、一挙に基盤整備してまちづくりを固定化するという点の二つの点から、もともと無理な計画であったと考えております。その点では、過去何回かの見直しでは、この過去の負債をどうしていくかがポイントであったと思います。
 そこで、まず、港湾局長にお尋ねいたします。
 平成九年の見直しの時点で、地代、権利金収入はどれくらい減収したのか、お答えください。

○浪越港湾局長 収支均衡年次までの地代及び権利金収入の合計につきましては、平成二年九月試算では約四兆三千六百億円としていましたが、現行の平成九年二月試算では、土地の処分方式や平均単価を見直した結果、約二兆二千五百億円と見積もってございます。

○大河原委員 世の中全体の土地価格が減少してしまったので、処分方式の転換、それから単価の見直し、今、答弁のあったように、二兆円を超える収支の大穴があいてしまったんです。
 平成九年には、さまざまなやりくりによって、まちづくり計画を策定しました。しかし、この時点での地価上昇の見通しは、平成十一年までは上昇率〇%、十二年度以降は二%、十九年度以降は三%上昇として計算されています。しかし、現行の景気動向や地価動向を踏まえると、九年の計画の前提である来年度以降二%の地価上昇はとても厳しい状況であり、収支見通しにも響くのではないかと考えます。
 こうした意味で、今後の投資については厳しい精査をする必要があり、この点で、臨海の今後の投資は、広域幹線道路を中心とした整備になっております。これらの道路の主要なものは、有明北の埋め立てを前提としたものです。現在、この問題は、ハゼを中心とした環境問題が注目されていますが、ぜひとも、事業計画の危機と裏表の関係であることを認識しなくてはなりません。
 広域幹線道路の総事業費は約四千百億円、開発者負担と公共負担で折半、五割ずつの負担となります。一般財源の負担が二千五十億円という巨額なものです。都内主要幹線道路の五、六年分に当たります。さらに、開発者負担として、実は地権者である臨海会計の負担分も出てくるわけです。地価をめぐる状況などから、先ほど、一般会計と税収のお話がありましたけれども、事業全体を見れば、転貸債に元利合わせておよそ四千百億円、他会計に三千六百億円の負債があることを忘れてはなりません。地価をめぐる状況などからいって、事業へのリスクは可能な限り少なくすべきと考えます。また、財政状況や、他の都内の道路整備との均衡も考慮すべきです。
 平成九年の見直しにおいては、人口フレームの見直しによる発生交通などの変化によって、広域幹線道路の整備量が減らされているわけですが、私ども生活者ネットワークは、いまだにその整備量は大きいと指摘してきました。
 平成十三年に、現行の事業計画であるまちづくり推進計画の見直しが予定されています。十三年度における見直しに当たっては、広域幹線道路の整備量を減らす、あるいは優先順位を決めるべきだと考えますが、この点いかがお考えでしょうか。

○浪越港湾局長 晴海通りや環状二号線の延伸など、広域幹線道路の整備は、臨海副都心を初めとする臨海地域全体の発展にとって不可欠であるのみならず、東京全体、さらには首都圏全体の経済の活性化に資する交通ネットワークを形成する観点からも重要であると認識しております。
 今後の広域幹線道路の整備に当たっては、コスト縮減に努めることはもとより、国庫補助の充実を国に対して要請していくなど、可能な限りの対策を講じながら、着実に整備を進めてまいります。

○大河原委員 臨海副都心については、お台場のにぎわいはありますが、当初の計画の負の遺産は消えておりません。立場は異なりますが、将来世代に可能な限り負債を残さない選択肢を探していく知恵を結集すべきであるというふうに考えます。
 このためにも、事業についての情報公開と説明責任を強く要望して、私の質問を終わります。(拍手)

○清原委員長 大河原雅子委員の発言は終わりました。
 以上をもちまして、付託議案に対する締めくくり総括質疑は終了いたしました。
 お諮りいたします。
 第一号議案から第三十一号議案までに対する質疑は、これをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○清原委員長 異議なしと認めます。よって、本案に対する質疑は終了いたしました。
 なお、明日三月二十八日の午前十一時から理事会を控室一で、また、午後一時から委員会を当第十五委員会室で開催いたしますので、よろしくお願いいたします。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後七時五十八分散会

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