東京都議会予算特別委員会速記録第六号

   午後三時三十六分開議

○植木副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 木村陽治委員の発言を許します。

○木村委員 去る三月十六日の予算特別委員会で、我が党の曽根はじめ委員が、医療、福祉に関する質問をしようとした際、神藤高齢者施策推進室長が、質疑通告を受けていないのでお答えできないと、答弁を拒否しました。
 そこで、曽根議員の質疑通告がどのようになっていたのか、医療、福祉に関する部分を紹介していただきたい。

○木内財務局長 三月三日に提出されました曽根理事の質疑通告書によると、質疑事項は三項目あり、そのうち、お尋ねの部分については、一、福祉・医療についてとなっておりました。
 また、その要旨を記載する欄には、1、高齢者福祉について、2、介護保険について、3、その他と記されておりました。

○木村委員 通告がされていた事実が確認されました。
 神藤室長が通告を受けていないと述べたのは、明らかに事実に反します。しかも、その上で答弁を拒否したのは極めて重大です。通告があったのに、なかったといって答弁を拒否するなどということが、議会のルールになってはならないと思います。
 神藤室長に聞きますけれども、もしこのようなことがそのまま行われるということになったら、都議会の言論の府としての基盤を根底から揺るがしかねないというふうに思いますけれども、いかがですか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 ただいま委員のお話しになりましたことをよく踏まえまして、今後、私は、理事者として責務が果たせるよう十分努力してまいります。

○木村委員 当委員会で我が党の渡辺委員が取り上げた地下鉄十二号線の台車亀裂事故問題は、その後、運輸省から、人身事故を伴わない事故としてはかつてない厳しい警告書が発せられ、一歩間違えば人命を奪う大事故の可能性を秘めていたものであったことが裏づけられました。
 また、渡辺委員は、その際、事実の調査と報告を知事に求め、知事も調査と報告を約束されました。ところが、その後、委員会への報告については、自民党、公明党が反対し、報告が行われなくなりました。厳重に抗議するものであります。
 我が党は、二十五日に、事故調査チームとして、問題の車両の点検や修理が行われている光が丘の車両検修場を調査いたしました。
 そこで、二度とこのようなずさんなことが繰り返されないように、幾つかの点について伺いたいと思います。
 まず、事故の原因についてですが、当局の説明は、台車の溶接のふぐあいであるということで、しかも、その後、完全溶け込みの溶接を施したので安全であるという見解だと思いますが、違いますか。

○横溝交通局長 冒頭のお話でございますが、本件に関しましては、交通事業管理者といたしまして、知事並びに運輸省にも報告したところでございます。
 お尋ねの台車亀裂の原因につきましては、溶接の施工不良でございまして、内側に補強板を当てて、完全に溶け込む溶接方法で改修を行ったところでございます。
 その後、追跡調査を実施いたしまして、異常がないことを確認しておりまして、列車運行の安全性は十分に確保されているものでございます。

○木村委員 問題の台車は、前と中央と後ろ、三分割してつくった鋳物を溶接してつくられています。亀裂は、その三つの部分を縦に溶接したところで生まれたわけですね。
 この台車は、軽量車両ということで、中が空洞になっています。溶接といっても、一・五ミリ程度の板が溶接されているだけなんです。しかも、リニアですから、常に線路側に引っ張られるという力が働く。急な坂やカーブになればなるほど、強く引っ張られるということになります。つまり、通常の台車とは違う力が働いているということになります。その力に負けて亀裂が入ったということじゃないんでしょうか。

○横溝交通局長 この亀裂は、特定の年次に製作されたものに集中して発生しておりまして、その原因につきましては、台車メーカーの溶接の施工不良ということでございます。
 したがいまして、構造上の欠陥ではございません。

○木村委員 やはりちょっと違うんじゃないかと思うんですね。なぜ、ほかの台車では亀裂事故が起きないか。検修場の人は、台車が故障するなんて考えられなかったといっていましたけれども、今回の事故まではという意味だと思うんですね。少なくともそういう自信を持っていわれるほど、従来の方法の台車は信頼性があった。それが、住友金属工業の台車だけに事故が起きている。
 ここに、「参考 車両電気部の対策案」という文書があります。これも、交通局が事故後に出された文書、いただいた文書です。こう書いてあります。中長期的な対策というところに幾つか書いてありまして、将来的には縦方向の溶接をしない台車、または一体化(溶接なし)を検討するということなんですね。現場からは、縦方向の溶接をしない台車もしくは一体型の台車でなきゃだめではないか、こういっているわけなんです。
 私どもも見させてもらいましたけれども、光が丘の検修場には、問題の台車以外に、日本車輌がつくった鉄を使った従来の方法の台車がありました。実際に、今でも一編成は使われているんです。予備の台車としても使われているということですが、これは多少重量がある、重い、見た目にもがっちりしているという感じがしました。もともと十二号線の台車は三種類つくられて、二種類は日本車輌が、一種類が住友金属。そこで、何で従来のものを使わないのかと聞いてみましたら、点検するのに手間がかかるという理由だと。
 調べてみましたら、都営交通の台車は、十二号線を除いて、メーカーは違いますが、みんないわゆる従来型なんです。住友金属の方式は、十二号線で初めて取り入れられた新しいやり方なんですね。点検に手間がかかるからという程度の話で、信頼性のある従来方式を排除するというのは間違いだと私は思うんです。
 都民の不安を解消する上でも、第三者機関などにも依頼して、どの台車が最善の方法なのか、再度検討することは、都民に対する最低の努めじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

○横溝交通局長 今回の亀裂の原因は、溶接の施工不良でございまして、新しい溶接方法での強度試験及び疲労試験を実施いたしまして、安全性を確認しているところでございます。
 なお、リニアモーター方式は、運輸省と日本地下鉄協会が中心となった調査委員会において開発したものでございまして、また、いずれの台車も運輸省の認可を受けたものでありますので、第三者機関に依頼して検討する必要はないものと考えております。

○木村委員 運輸省のお墨つきだったということですが、これは、我が党としても国会でも追及していきたいというふうに思います。
 しかし、現に事故が起きたわけですから、再調査するのが筋だというふうに私は思います。
 次に、事故を未然に防ぐ上で決定的に重要な保守点検の問題です。
 列車の点検は、以前は、列車検査は毎日、月検査は毎月やられていた。それが、今では、列車検査は三日に一回、月検査は三カ月に一回。当局は、機械の精度が上がったから、また技術が向上したから大丈夫だ、こういいますが、それが決して大丈夫じゃなかったというのが今度の事故。
 そこで伺いますけれども、リニアモーターを導入した際に、台車の点検方法というのは変更されたんでしょうか。

○横溝交通局長 台車の点検方法につきましては、従来と基本的には同じでございますが、リニアモーター取りつけ部分の点検方法が変更されております。

○木村委員 検査方法は変わっていないんですよ。だから、溶接にミスがあればすぐにわかる磁粉探傷検査という検査もやられなかった。これが月検査に導入されていれば、こんな事故は起こらなかったはずなんです。事故後にやっと月検査に組み込んだ。あなた方は、技術が向上したから安全だというけれども、肝心の検査でそういう手抜かりがあったということなんです。
 ここで、私は、こうした保守管理の実態に合った基準が国の基準として定められていないということが極めて重大だということを指摘したいと思います。
 安全の基準、保守検査の具体的な基準を国が定めるように働きかけるつもりはありませんか。

○横溝交通局長 安全の基準、保守検査の基準につきましては、既に鉄道事業法及び鉄道営業法に基づきまして、運輸省令で細かく定められているところでございます。
 交通局は、この省令に基づき、運輸省へ届け出を行い、その確認を受け、輸送の安全を図っているところでございます。

○木村委員 いわれました政令も拝見させてもらいましたけれども、車両の整備というところはわずか二ページ程度で、しかも、第三十八条というところの項目のトップは蒸気機関車なんですよ。日本じゅうどこにも蒸気機関車が今走っている時代じゃないわけですよね。検査基準の別表を見ても、項目が挙げられているだけで、リニアというのは書いてないんです。結局、具体的なマニュアルは各鉄道事業者任せ、そして、各事業者は、各メーカーのマニュアルに依存しているというのが実際のところなんです。
 次に、人命優先、これが貫かれているかという問題も非常に大事だと思います。
 昨年五月の事故のときには、車両と車両の間の渡り板が盛り上がっているというのを駅の主任が発見したのが発端ですけれども、なぜ渡り板が盛り上がっていたんでしょうか。

○横溝交通局長 光が丘駅の引き上げ線で点検した結果によりますと、台車に亀裂が入ったことによりまして車両間に段差が生じたことが判明したものでございます。

○木村委員 段差が生じたというのは、要するに、どちらかの車両が傾いていたというこなんですね。検修場の人も、傾いていたのではないかというふうにいっていました。台車に亀裂が入った車両がその分沈んでいた、これも重大な話なんです。
 そこで、疑問なんですけれども、なぜ、乗客をおろして回送しなかったのか、危険と判断しなかったのかということ、その点についてどうでしょうか。

○横溝交通局長 平成十年十月十二日の件につきましては、該当列車の後続列車乗務員がリアクションプレートに線状の傷を発見し、また、該当列車の乗客から異音がするとの申し出がございました。
 該当列車を光が丘駅の引き上げ線にて検車の係員が調査した結果、高さ調整弁からの空気漏れが認められました。
 この状況では運行上問題がないと判断いたしましたが、念のため、乗務助役二名、検車係員一名を列車に添乗させ、調査点検と安全の確認をさせながら運行したものでございます。
 また、平成十一年五月十一日の件につきましては、新宿駅にて、駅務助役が該当車両連結部の渡り板に盛り上がりがあるのを発見いたしましたが、渡り板のふぐあいと判断して、光が丘駅まで運行したものでございます。

○木村委員 いずれも運行上は問題なかったといいますけれども、台車に亀裂が入っていたわけですよね。私は、まず乗客をおろして安全を確保するというのが、鉄道事業者の責任だというふうに思います。
 最後に、情報の公開、共有の問題。
 今回の事故も、我が党が取り上げるまで情報が隠されていたということについて、マスコミでもいろいろ指摘がありました。地下鉄の安全性を確保する上で、鉄道事業者やメーカーが、事故やその原因などの情報を共有することは不可欠と専門家の方はいわれています。
 今回のように、事故が起きた場合、情報を隠すのではなく、進んで公開するということが、乗客の生命を預かる交通事業者の責務ではないでしょうか。どうでしょうか。

○横溝交通局長 交通局は、これまで、死亡事故や重大な事故、三十分以上にわたり電車が不通となった場合などにつきまして、基準を設けて、情報の提供を行ってきたところでございます。
 しかし、今回の件を踏まえまして、これらに加えて、車両故障等、安全運行にかかわるものにつきましては、運行上影響が出なかった場合におきましても、速やかに運輸省並びに報道機関に情報提供することとしたところでございまして、既に実施しているところでございます。

○木村委員 私は、あわせてメーカーによるリコール制度なども検討していただきたいというふうに思います。
 我が党の質問を契機に、事故の情報の公開が進められているとのことですけれども、改善が図られたことについては歓迎いたします。
 同時に、当然のことながら、このような取り組みは、地下鉄が都営であること、公営事業であるから、率先してできることだと私は思います。都営交通の誇りを持って頑張っていただきたい。
 我が党も、営団地下鉄や私鉄、JRなども同様に情報公開する仕組みをつくらせるために、国会議員団と協力して取り組む決意であることを表明しておきます。
 いよいよ十二号線の環状部の営業がことしから開始されます。環状部は、放射部以上に起伏が激しく、カーブもきつくなっています。台車にとってはますます過酷な条件となるわけですから、本日私が提起した最小限の対策を必ず実行して、都民の足として、安全確保に全力を挙げるということを要望しておきます。
 さて、今議会ほど税金の使い方が問われた議会はなかったと思います。その点に関しまして、私は、福祉と財政の問題二つについて質問いたしたい。
 まず、福祉切り捨ての問題です。石原知事が提案したのは、シルバーパスの全面有料化、老人医療費助成制度、老人福祉手当の廃止、障害者やひとり親家庭、乳幼児の医療費助成、福祉手当の所得制限の強化や自己負担の導入という、都政史上かつてない軒並みの福祉事業の大幅削減であります。この点で、今定例会は、多くの都民の注視のもとで、都議会でも各会派の態度が鋭く問われてきたわけです。
 つい最近も、二百三の老人クラブの会長さんたちが、シルバーパスの無料制度、マル福と老人福祉手当を今までどおり続けてほしいという署名を持って、知事及び都議会各会派に要請活動をやりました。また、都内の開業医五百五十七人の署名による、医療費助成は現行どおり存続してほしいという意見書も届けられました。
 高齢者、障害者の生活をかけたぎりぎりの行動として連日行われている都民広場での座り込み、初日の人間の鎖を初め、延べ六千人の人々がこうした行動に参加しています。
 この中で、本会議、予算特別委員会及び常任委員会の質疑を通して、何が明らかになったでしょうか。
 第一に、矛先が向けられている高齢者や障害者、ひとり親家庭など、行政の支援を最も必要としている人たちへの影響が、改めて大変深刻なものであるということが明らかになりました。
 第二は、これだけ重大な政策変更であるにもかかわらず、自治体として当然やるべき調査もせず、また、関係者の声を直接聞こうともしないという、やり方のひどさも明らかになりました。
 第三は、この福祉切り捨てを合理化してきた都の論拠が、次々と崩れたということであります。低所得者に配慮した、在宅サービスなどを格段に充実を図ったなどという福祉切り捨てを合理化する論拠は、もはや通用しないんです。新たな充実策の目玉とされている包括補助制度は、肝心の区市町村では予算化されていないし、具体化もされていないということが明らかになりました。しかも、財務局長は、この包括補助は基本的には時限的制度と考えている、つまり数年限りだ、こう答弁したんです。
 以上、三点明らかになった問題点のどれ一つをとっても、石原知事が提案した今回の福祉切り捨てに道理がないということは明白だと思いますが、私は、締めくくりに当たりまして、第一の問題であります影響の深刻さと、第二のやり方のひどさということに関連して、これだけはどうしてもいっておかなければならないというひどさの象徴として、重度障害者手当や障害者医療費助成の所得制限の見直しについて伺いたいと思います。
 まず、今回の見直しで、所得制限を新たに導入することが提案されている重度障害者手当は、どういう障害の方が受けているのでしょうか。福祉局長、いかがでしょうか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 重度心身障害者手当を受けている方は、重度の知的障害者で、かつ常時複雑な配慮を必要とする程度の著しい精神症状を有する方、重度の知的障害者で、かつ身体障害の程度が一定以上の障害を有する方、重度の肢体不自由で、四肢体幹機能障害を有する方でございまして、所得制限はございませんでした。

○木村委員 要するに重度手当というのは、常時複雑な介助が必要など、重度の中でもとりわけ重い障害者に支給されているものであります。ですから、月に六万円という支給額ですが、対象人員は全体で一万人というごく限られた方が対象です。一般的な重度障害者が対象の医療費助成制度が十三万人対象ですから、それに比べても、いかに重度の中の重度の場合かということがわかると思うのです。
 ですから、我が党の吉田委員が指摘しましたように、知事が視察をした都立府中療育センターに入所している人と同じか、あるいはもっと重い障害者、障害児が、重度手当を頼りに在宅生活をしているわけです。
 重い障害があっても家族と一緒に暮らしたいという、これは世界的な常識となっているノーマライゼーションの理念に沿って、在宅生活を希望している人もいます。あるいは、江東区や私の地元の葛飾区のように、入所施設がない、待ち望んでいる東部療育センターの建設が進まない、その中で在宅生活を余儀なくされている人も少なくありません。
 昨年十二月の第四回定例会で、我が党の東議員の一般質問でも紹介しましたけれども、東京都自身が、在宅の重症障害者は常に生命の危険と隣り合わせの生活を余儀なくされているため、親の不安もはかり知れないという報告書をまとめています。
 今回の知事の提案は、そういう生命の危険と隣り合わせの重度・重症の障害を持つ、二十未満の子どものいる家庭に集中豪雨的な被害をもたらすというのは、吉田委員が質疑で明らかにしたとおりです。
 重度障害者手当への所得制限導入による影響人数は何人でしょうか。そのうち、二十歳未満は何人でしょうか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 平成十二年度におきましては、経過措置によりまして、所得基準を超える方に対しても現行どおり支給されるため、具体的な影響はございませんが、仮に、平成十二年度規模で経過措置が終了した平年度ベースで見ると、所得制限の導入による影響人数は、千三百人程度でございます。また、そのうちの二十歳未満は、千百人程度とそれぞれ推計しております。

○木村委員 千三百人のうちの千百人、八五%なんですよ。都の推計でも、ともかく八五%が、二十歳未満の障害児のいる家庭に集中するということが明らかになりました。
 しかも、四人家族で年収六百三十五万円、これは税込みの総収入です。六百三十五万円のラインを超えたら、重度手当がなくなるだけではなくて、児童育成手当も医療費の助成も一遍に切られる。ざっと計算して年百八万円の負担増になる。医療費が物すごくかかる重度の中の重度の人たちですから、実際にやってみれば、影響はさらに大きなものになるということも容易に予想がつきます。
 知事は、代表総括質疑で、非情といわれては困るけれども、切るところは切るというふうにいわれました。しかし、私は、これだけは切ってはならないもの、これを切ろうとしているんだというふうにいわざるを得ないんですけれども、どうでしょうか。

○石原知事 それは、他との予算の編成の兼ね合いで、相対的に、物の考え方によって違うでしょうが、私は、切るという言葉が当てはまるかどうかはわかりませんけれども、その部分に手を触れるべきだと思ったから、触れたわけでございます。

○木村委員 私は、今までちゃんと問題を特定してお尋ねしたんです。とっさのお答えですから、それに正面から向き合わないで、一般論で答えられたということになったと思いますけれども、私は、どんな事情があっても切るべきものではない、そういう問題だと思います。
 福祉局長に伺いますけれども、一九七〇年に制定された障害者基本法の第十一条、重度障害者についてはどう定めていますでしょうか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 障害者基本法第十一条は、「国及び地方公共団体は、重度の障害があり、自立することの著しく困難な障害者について、終生にわたり必要な保護等を行うよう努めなければならない。」と規定しているところでございまして、また第六条では、障害者自身あるいは障害者の家庭の責務についても述べているところでございます。

○木村委員 さまざまな福祉事業の中でも、重度障害者の福祉というのは、つまり、この法第十一条に定められているとおり、それだけ特別に重要な問題として法で位置づけられているということなんです。しかも、その中には、国と地方自治体の努力義務ということがうたわれている。知事も福祉局も、その点を十分に踏まえる必要があると思います。
 ところで、口を開くと、所得基準の見直しは適切だという一点張りの説明です。その根拠というのは、平成八年度の社会福祉基礎調査ですね。生計中心者の平均収入が五百九十四万円だから、六割を超える人が年収六百万円未満だから、四人家族で六百三十五万円の所得基準は適切だという話ですよね。
 しかし、これはとんでもない議論だと私は思います。同じ社会福祉基礎調査を見ますと、世帯収入の平均は七百五十四万七千円なんです。つまり、一般の家庭は、母親がパートで働いたりして、世帯全員で収入を得ている。生計中心者の収入よりも、平均で百六十万多い。同じ調査にちゃんと書いてあるわけです。しかし、重度障害児がいる家庭は、お母さんは介助にかかりきりで働けない。だから生計中心者、つまり、多くの場合はお父さんですが、この収入だけ見れば平均以上であっても、世帯収入の平均よりもずっと低い、それが生活の実態だと思うんですね。
 しかも、その上、障害に特有なさまざまな費用負担がかかる。吉田都議の調査では、移動のための交通費、タクシーを使う、栄養食品、介助用品、医療機器、経常費だけでも平均年間八十四万円。当事者の方々からは、今回の見直しで重度手当も医療費助成もなくなったら、どうやって生きていけばいいのかという切実な声が上がっている。当然だと思うんですよ。
 我が党は、繰り返し当事者の方々の声を直接聞くように求めましたけれども、既に聞いているという答えでした。厚生委員会で、部長級以上の人の中で、昨年からことしにかけて重度障害児の家庭を直接訪問した人がいるのかと聞いたら、手を挙げたのは局長だけだった。
 局長、そこで伺います。昨年からことしにかけて、いつ、どういう在宅重度障害児の家庭を訪問したのか。それは公務で行ったのか。また、その訪問の結果、障害の状態、生活の実態に照らして、提案された所得制限で適切だと判断をした具体的な根拠、これは何だったんでしょうか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 障害者の生活実態につきましては、予算特別委員会の総括質疑や厚生委員会におきましても再三ご質問をいただいているところでございまして、その際は、公式な会議で障害者団体のご意見を伺っているほか、障害児を抱える親御さんの集まりなど、さまざまな機会をとらえて、幅広くご要望等を伺っているとお答えしてきたところでございます。
 今お尋ねの件は、先般の厚生委員会におきまして、在宅で重度の障害者を抱えるご家庭を、昨年からことしにかけて直接伺って話を聞いた経験がある人がいるかとのご質問がございましたので、私は、友人、知人の中で重度の障害を持つ方のご家庭を伺ったりして、状況を知っていましたので、お答えしました。
 なお、それは、私、福祉局長就任以前の話でございます。

○木村委員 これだけの見直し、政策変更をするのに、重度障害児の家庭を実際に訪問調査をするということは、局長初め、だれ一人やっていないということが明らかになったわけです。
 実は障害者医療費助成は、現状どおり無料制度を維持した場合でさえ、四月から、介護保険との関係で障害者には大きな負担増になるんです。訪問看護や訪問リハビリテーションなど、今まで障害者医療費助成で無料だったのが、介護保険の利用料一割負担がかかることになるからなんですね。
 だから、今、全国各地で議論されているのは、障害者医療費助成の切り下げどころか、介護保険に移行する医療系サービスの利用料にまで助成を拡大する必要があるんじゃないかということが問題になっている。
 広島市議会では、この問題について市長が公式に次のような答弁をしました。重度障害者の方々のご意見をお聞きし、市においてもその実態を調査した結果、在宅で療養生活を送っておられる重度心身障害者の方々に多額の負担が生じることがわかりました。重度心身障害者医療費補助制度の目的である保健の向上と福祉の増進を図る観点から、介護保険へ移行する医療系サービスの利用料助成を四月一日から実施したいと思います。重度心身障害者の方々に大変ご心配をおかけし、まことに申しわけありませんでした――市長の議会答弁です。
 私は、これが真っ当な行政の姿勢だと思うんです。知事、どうでしょう。
   〔発言する者あり〕

○植木副委員長 ご静粛に願います。

○木村委員 今、私は広島の市長の議会答弁を紹介したんですよ、知らなかったでしょうから。だから、これが行政の真っ当な姿勢じゃないのか、あなたはどう思いますかということを聞いたんです。知らないじゃ済まないです。お答えいただきたい。

○植木副委員長 石原知事。知事に聞いているんですから。

○木村委員 この福祉切り下げがどういうスタンスで行われているかというのを明白にしている、そういうことだと思うのです。
 障害者医療費助成を受けている人は、介護保険に移行する医療系サービスが一割の有料になる。それだけでも、広島市長がいうように多額の負担が生じる。東京の障害者は、その上、所得制限の強化や自己負担の導入ということが行われるんです。
 現在、全国二十三の県で障害者医療費無料制度が実施されていますけれども、東京のような、このようなひどい見直しをしているところは一つもないということを指摘して、次に行きます。
   〔知事発言を求む〕

○木村委員 さっき聞いたんだから、もういいですよ。(発言する者あり)聞いたときに答えなきゃだめなんだ。
 次に、福祉切り下げを……(発言する者あり)合理化するための都の論拠……。

○植木副委員長 ご静粛に願います。

○木村委員 この論拠がいかに無力で無責任であったかという点に関して、幾つかただしておきます。
   〔発言する者あり〕

○植木副委員長 ご静粛に願います。

○木村委員 まず、低所得者には配慮したという問題。厚生委員会の質疑で、老人福祉手当の廃止に伴う低所得者対策があるのかという我が党の質問に対して、福祉局は、低所得者への配慮は特にしていないと答えざるを得ませんでした。
 そこで伺います。老人医療費助成の廃止に当たっては、低所得者への配慮はあるんでしょうか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 東京都の老人医療費制度、マル福につきましては、六十三歳までの方に一定の配慮をして、現行制度を維持することとしております。したがいまして、特段の低所得者への対策は講じる必要がないと思っております。
 なお、七十歳または六十五歳以上で老人保健の対象となる方は、低額の負担で医療が受けられるほか、また、低所得者には国民健康保険や老人保健においても対応が講じられているところでございます。

○木村委員 要するに、低所得者対策というのはないんですよ。
 代表総括で所得分布のグラフを示しましたけれども、東京の高齢者は、年間五十万未満あるいは百万未満というわずかな収入しかなくて、しかも、介護保険などの負担増がかかるということを示しました。だから、そういう中で非常に大変な話なんです。
 シルバーパスについても聞きますが、知事は、有料化による財源は、高齢者の雇用拡大やコミュニティバスの導入などの充実策に充てるというふうに答弁しました。予算特別委員会の質疑で、千円なり二万五百十円なりの有料パスの代金は、東京バス協会かバス会社の収入になって、都の歳入にならないということが明らかになりました。これも、福祉切り捨てをごまかそうとする都の論拠が、いかにひどいものかということを示したものだと私は思います。
 私は、コミュニティバスは大賛成ですけれども、コミュニティバスというのは、高齢者だけが乗るんじゃなくて、みんなが使うものですね。だから、それを支援するのに、知事答弁のように、シルバーパスの有料化による財源を回すなんていうのは、筋が違うというふうに思います。
   〔発言する者あり〕

○植木副委員長 ご静粛に願います。

○木村委員 今回の見直しは、これまで東京都が発行してきたシルバーパスをやめて、バス会社発行のシルバーパスに切りかえるものでありますが、これによりさまざまな問題が生じることを我が党は明らかにしてきました。
 それに関連してお聞きしますけれども、今回の制度変更により、高齢者はシルバーパスをどこへ買いに行くことになるんですか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 シルバーパスの交付場所につきましては、東京バス協会及びバス事業者と現在検討しているところでございますが、利用者が身近な場所で交付を受けられるように、二百カ所程度設置していきたいと考えております。
 なお、先生さっきお尋ねのございました心身障害者医療費助成でございますが、私どもの都では、低所得者には十分配慮していることはご承知のことと思いますので、よろしくお願いいたします。

○木村委員 さっきの質問はマル福の話ですよ。
 さて、今の答弁ですけれども、ちなみに、バス会社の営業所の数というのは、区部と多摩で何カ所ぐらいになりますか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 都内のバス事業者の主な営業所の数は六十五でございまして、その内訳は、区部が四十六、多摩地区が十九でございます。
 それらの営業所がパスの交付場所に適しているかどうかにつきましても、現在検討中でございます。

○木村委員 今まで非公式に、区役所、市役所の一角を借りて交付するつもりだと聞いていたんですけれども、最近になって、どうもそうではないような様子なんで、あえて聞いたんです。
 いずれにしても、検討中で決まっていない。これまでは多くの自治体で郵送してくれたんだから、利用者にとっては大変心配なことなんです。バス会社が交付する制度になるから、まずは営業所が考えられますけれども、答弁があったように、多摩地域では全体で十九カ所しかない。しかも、バス会社の営業所というのは、バスの車庫と一緒になっていて、幹線道路沿いで、交通も比較的不便なところが多い。高齢者が営業所まで行ってシルバーパスを買うというのは、大変なことなんです。
 また、都内で二百カ所程度考えているといわれますけれども、中学校区一カ所ということでも六百カ所ですよね。そのわずか三分の一にすぎず、非常に数が少ない。本当に身近な場所で交付が受けられるようになるかどうかというのは、大変疑問です。
 高齢者が、まず市役所か区役所へ行って、住民税非課税かどうかの証明書をもらって、それを持ってどこか初めて行くところへ買いに行かなければならない。新たな費用負担と同時に、こうしたことが二重三重の負担になるんじゃないでしょうか。今まで無料パスを受けていた人が、十万人以上が、来年度五千円、三年後に二万五百十円、そしてそのほかの人は一千円の有料、その上に、どうしても欲しい人だけ買いに行きなさいというのでは、シルバーパスが持っている本来の敬老パスとしての精神は……(発言する者あり)ここでなくなるといわざるを得ないと思います。

○植木副委員長 ご静粛に願います。

○木村委員 議会は本来、行政のチェック機能を果たさなければならない立場にあります。こういうひどい福祉切り捨てをそのまま認めたら、やっぱり議会史に大きな汚点を残すといわなければならないと思います。
 二十三日には、一連の福祉見直し関係議案が、自民党、公明党の全面的な賛成によって厚生委員会を通過しました。都民からは厳しい批判の声が上がっている。(発言する者あり)しかし、まだあすの採決もあり、最終日の採決も残っています。

○植木副委員長 ご静粛に願います。

○木村委員 そもそもシルバーパスは、さきの都議選で七二%の都議会議員が、現行のまま存続する、拡充すると公約して、都民の負託を受けたものです。また、代表総括質疑でも紹介しましたけれども、ある党は、一年前の一斉選挙で発表した基本政策では、マル福の拡充を明確に公約している。
 公約は、政治家、政党の命なんです。都議会は、都民の福祉とみずからの公約を守るべきであるということを、この際強く申し述べておきます。
   〔発言する者あり〕

○植木副委員長 ご静粛に願います。

○木村委員 次に、財政の立て直しについて伺います。
   〔発言する者あり〕

○植木副委員長 ご静粛に願います。

○木村委員 都は、財政難だから都民に我慢してくれといいますけれども、都が今日のような借金漬け財政になったのは、福祉や教育にお金をつぎ込んだからではなくて、大型公共事業に熱中してきたためであります。
 ところが、知事は、我が党の本会議代表質問で、大型開発が財政難の主要な原因であることを認めるのかどうかとただしたところ、要因のすべてを公共事業に帰するのは短絡的で、正確な認識とはいいがたいと答弁しました。財政難の原因を正しく認識することは、正しい方向で財政を立て直すための大前提でありますから、その点で、私どもは知事の答弁は容認できません。
 したがって、私はまず、財政難の原因について、どこにあるかということについてお尋ねします。
 東京都の問題に入る前に、最初に、日本全体の大状況の認識について伺います。
 今日、日本では、国と地方を合わせて、社会保障の給付に二十兆円使われているの対して、公共事業には五十兆円つぎ込まれています。この逆立ちした税金の使い方に対する国民の批判というものは、非常に大きく広がっています。
 日本の公共事業は、国際的に見て、異常に突出しています。パネルを用意いたしました。(発言する者あり)これは奈良女子大の助教授の中山さんが、参議院の予算委員会で……。

○植木副委員長 ご静粛に願います。

○木村委員 予算委員会の公聴会で示したものでありますけれども、OECD、経済協力開発機構の資料によって、サミット参加七カ国の一九九五年の公共事業費を比較したものなんです。(発言する者あり)これが日本……。

○植木副委員長 ご静粛に願います。

○木村委員 これがカナダ、アメリカ、フランス、この六カ国全体の合計がこれです。(発言する者あり)青ですね。

○植木副委員長 ご静粛に願います。

○木村委員 つまり、サミット参加国の日本以外の六カ国を全部合わせたよりも、日本一国の公共事業費の方が多い。はるかに多い。東京だけを抜き出してみる。この赤く書いたのは東京です。東京だけを抜き出してみても、これは二百二十億ですが、これは、イギリスの百九十九億ドル、カナダの百二十九億ドルよりも大きく、ほぼイタリアに匹敵をするという規模です。
 どうしてこういうことになるのかということですね。この大もとは、内需拡大のためといって、アメリカに十年間で四百三十兆円の公共投資を行うことを約束したというところにある。それが九〇年には六百三十兆という規模に膨らんだんですよね。だから、この異常な公共事業の膨張、これが、国と地方合わせて今日六百兆円を超える借金財政の原因であることは、今日では常識じゃないかというふうに思うんです。
 知事、アメリカなど先進六カ国の合計額よりも多いとか、国際的に例を見ない、そういう日本の公共事業費の膨張ぶりというものをやっぱり異常だと思いませんか。また、それが今日の国と地方の借金財政の原因になっているというふうに思われませんか。その点伺います。

○石原知事 先ほど、自民党の方の席からも発言がありましたけれども、不規則かもしれませんが、外国と、先進国と日本を比べて、社会資本の充実ぶりというのは、日本の場合は目を覆うほど惨たんたるものがありますね。パリや、あるいはロンドンの郊外の外郭環状線の充足ぶりを見ますと、日本はその半ばにも及ばない。それが要するに渋滞を引き起こし、大気汚染も引き起こしているわけですけれども、私は、それだってマイナスの意味の福祉だと思いますよ。
 それから、かつて共産党、社会党が主導して、首都圏ストってばかなストライキを国鉄がやった。十日間やるつもりで、物価が上がってひいひいいうだろうと思ったら、何とちゃんと東名という高速道路が活用されまして、物価に全く影響がもたらされずに、恥ずかしくなって、社会党と共産党は、六日か七日であのストをやめました。
 つまり、物価が上がらないということも福祉じゃないですか。それを保障しているのは、あなた方がご反対の大型の公共事業によって、東名なら東名というハイウエーができたからであります。憲法二十五条で保障されている福祉というのは、確かに老人の福祉も身障者の福祉も大切でありますが、決してそれに限られたものじゃございませんで、私は、前にも申しましたけれども、共産党が短絡的に、社会事業、社会資本をつくる大きな公共事業はすべて悪と決めつけるというのは、非常に短絡というか、非常にこっけいな価値観だと思いますし、もっと広範な福祉というものを保障するために、必要な公共事業は当然行われるべきだと思います。
 ただ、私はやっぱり、自民党に籍がありました国会議員として一つ反省を込めて申しますけれども、かつて海部内閣のときに、小沢一郎というある意味ではらつ腕家、非常に間違った意味の腕を使った人がいまして、アメリカが押しつけた経済構造協議に応じまして、やっちゃいけないバイラテラルな構造協議をやった。その結果、十年間で四百兆ですか、めちゃくちゃな公共事業を起こせという重荷を日本は背負わされた。私はこれ真っ向から反対しましたけれども、衆寡敵せずに、その結果、いささか必要のないような公共事業も随分あちこちであったような気がいたします。
 これは、私はやっぱり、国政は国政として与野党挙げて反省すべき問題だと思いますが、この東京に関していえば、外郭環状道路を含めて、まだまだ都民の福祉のために必要な公共事業はたくさん残されております。これを阻害したのは、かつて皆さんが熱心に支持された美濃部さんの、共産党の支持したかつてのあの都政だったんじゃないんでしょうか。これはやっぱり、共産党も政党として反省されるべき問題だと思います。

○木村委員 私は、OECDの資料を使った国際比較について知事の感想を求めたわけです。その点については直接のお答えはなかった。東京だけが、日本だけが、サミット参加国の六カ国全部合わせたよりも多いというのを、財政問題として聞いたわけですから。
 そこで、まあさまざまなことをいわれましたけれども、私がこれを知事に聞くのは根拠があるんです。なぜならば、知事は知事選挙の立候補に当たって発表したみずからの政策がありますよね。東京がよみがえるために、NOといえる東京、覚えていらっしゃいますか。向こう十年間に四百三十兆という膨大な公共事業を行うとアメリカに強引に約束させられてしまった結果、赤字国債は増発され続け、今日日本の国債依存度は最悪のものとなり、国と地方の債務残高――当時は五百六十兆円ですね――のGDP比は、イタリアに並んで最悪のものとなりましたという認識を示したですね。
 それから、最近の石原知事の監修された、この一橋総研の本ですね。ここにもさまざまなことが書かれていますけれども、政府は、アメリカの要請を受けた公共事業拡大政策を各地方自治体に押しつけ、動かしてきた。あげくに日本の財政は、全体的にどうにもならない逼迫した状況に陥ったとか、あるいは年間五十兆円にも達する公共事業費の額は、日本以外の欧米主要先進国、G6ですね、すべての公共事業合計金額とほぼ匹敵するもの――私が今いったとおりです。日本は異常な巨額を毎年支出している。国と地方の借金が六百兆円まで膨張してしまったのは、さまざまな要因のうちで一番はっきりしているのが、公共事業増大を賄うために、建設国債や地方債の増発と、そして地方交付税や補助金の交付にほかならないともいっています。あなた自身がいっているんですよ。だから、そういう意味でどうなのかということを聞いたんです。
 それ以外いろいろ話を膨らませましたけれども、まずその点について、つまり、こういう異常な公共事業費が財政を逼迫させているという点についてどうなのかと。

○石原知事 先般も本会議でさんざん答えましたが、確かに、日本の財政、東京の財政は逼迫しておりますけれども、これをもたらしたものは必ずしも公共事業だけではございません。しかし公共事業も一つ大きな要因でありましょう。国全体から眺めれば、つくらなくていいものをあちこちつくっている。もっともっと東京を充足させれば、東京の活力が出てきて、経済性も出て、首都移転なんてばかな論も出ないでしょうけれども、いずれにしろ国家のためになったものを、国会で、どういう意向でどういう配分をしたか知りませんが、夜間になれば車の通らない要するに高速道路をつくったりして、こういったものがやっぱりある意味でむだだといっているわけで、私は日本の今日の財政というものを逼迫させたものは、必ずしも過剰な公共事業に対する投資だけとは思っておりません。

○木村委員 公共事業だけとはこっちもいっていないんですよ。主要な原因となっているんではないかということについて、まともにやっぱり議論すべきですよね。あなたの好きな主要矛盾というのがあるでしょう。そういうことを聞いているのに対して、やっぱり、必ずしもそうでない、しかし大きな要因になっているといういい方ですからね。もっと率直に答弁をされてもいい思うのです。
 さらに、もう一ついっておきます。共産党が公共事業悪論に立っているというふうにいわれますけれども、それは全く間違いです。今、我々が、大型公共事業の浪費、そして、国際的に見ても異常に突出している――東京だけでイギリスと匹敵するんですからね。そういうことを問題にしているのは、この公共事業が財政を圧迫し、そして、あなたもいわれたように、採算性も無視して行うようなプロジェクトが行われているから、だから今これをたださなければならない、そのゆがみをたださなければならないという立場でいっているわけなんです。ですから、あなたの答弁の方が短絡的な批判なんですよ。その点は申し上げておきます。
 さて、それでは、東京の大型公共事業、確かにいろいろなものがありますけれども、現に東京の財政を悪化させてきた大型公共事業というのは、決して、今日みんないいものということにはならないわけですね。その公共事業の中身がやはり問題だと思います。
 そこで、朝日新聞の三月十一日付に石原知事のインタビューが載っていました。このインタビューには、知事は、鈴木都政の最後の二年間について、東京のコンセプトが違う、東京に何でもなければいけないという考え方は違うというふうに批判されています。国際展示場と国際スタジアムを例に挙げていっていますね。つまり、国際展示場はつくる必要はなかったというふうな意味合いでいっているんだと思いますけれども、どうでしょう。
 また、同じインタビューで、明らかに採算の立たないプロジェクトがあった、それをつぶしていたら随分楽になったと思うと述べていますけれども、そのプロジェクトとは一体何を指しているんでしょうか、お答えいただきたいと思います。

○石原知事 私は最近嫁に来た者でございまして、来てみてびっくりすることがいろいろございましたけれども、どの時点でだれがどういう、いわゆる箱物ですか、に手をつけられたか、一々時点としてつまびらかにいたしませんけれども、青島前知事が博覧会を中止された。まああれやっていたら少しは金になったかもしれませんが、どうせつぶすなら、ついでにつぶしてもらった方が随分たくさんあってよかったんじゃないかと思う節が多々ありますね。
 例えば東京スタジアムなどは、私が就任して間もなく、こういう形で決断してほしいということで持ってきた。三十分のブリーフィングで私はこんなに大事な決心できないし、とても判押せないから少し時間をくれということで、何かほかの方法はないかということで、三、四の金融筋に持ちかけて検討してもらいましたが、こんなばかなものを証券にして買うやつは一人もいない、どだいこんなものは最初から間違ったという専門家の評価でして、私もそう思いますね。
 それから、あの要するにビッグサイトにしたって、せっかく幕張にあれだけのものがあるなら、私は、東京都というのは、都であると同時に、やっぱりメガロポリスの中心でありますから、再三申してきましたように、日本の首都としての機能というのは、東京と神奈川県、埼玉県、千葉県、そういった他県も一緒になって構成して機能しているわけでありまして、もう既に横浜に立派なスタジアムがある、あるいは浦和ですか、立派なものがもうできつつあるときに、何で東京スタジアム要るのかな。既に幕張であれだけの施設が講じられているのに、すぐ目と鼻の先に大きなものをまたつくれば、これは本当に両方とも採算が立たなくなるんで、こういうことはもう少し冷静に考えて、どなたが決められたことか知りませんし、まあその後任者も四年間時間があったわけですから、着工する前に考えたらどうか。
 私は、東京スタジアムに関して申しますと、友人の水野君が橋本内閣のときに補佐官をしておりました。ずっと代議士をした仲でしたけれども、彼がある日電話をくれまして、これは人からも忠告されたけれども、東京スタジアムって、石原さん、これ精査した方がいいよ、できたらとても採算合わないだろうからということで、私はその報告が来る前に調べましたら、もう着工して、もう半分以上でき上がっている、とても間に合わないということで、今回の措置をやむなくしたわけでありますけれども、まあこういったものは、だれが見ても、経営というものを考える方が見れば見るほど、歴然としてやっぱり余計なものだったという気がしますね。

○木村委員 知事はよく、最近来たからというふうにいいますけれども、率直にいって、知事はバブル後の都の財政運営に直接の責任は負っていないですよ。だからこそ、間違っているものは間違っていると、これはいいやすい立場にあるわけ。ですから、この間の公共事業の拡大、むだな公共事業、借金拡大の財政運営についても、やっぱり間違っているものは間違っているというふうにいって改めさせていくということは、僕は大事だというふうに思うんです。
 そこで、公共事業と東京都財政の問題に話を戻します。
 そこで、(パネルを示す)いいですか、本題はここなんですよ。要するに、国全体の異常な公共事業のふえ方ということがあります。これはむしろ地方自治体を先頭にして進められたというところに特徴があったわけですね。その典型が東京だった。これは日本全体の公共事業、年間五十兆円、そのうちに占める東京の割合というんで、こっちがパーセントで出ていますが、大体一割、東京は一割です。一割のところをずっと、ほとんど変わらないで来ているということですね。そして、これが東京都の公共事業の額です。そしてこの色分けは事業主体ですね。一番下の緑が都費です。真ん中が、紫が国ですね。で、市町村。これ見ますと、やっぱり東京都が押し上げているということが明らかです。これは八三年から九六年までのものですけれども、自治大臣官房室が発行している「行政投資」から作成したものです。
 これが示しているのは、東京都下における公共事業費が常に全国の一割前後を占めていること。バブルとともに急激に膨張して、バブル崩壊後も五兆円前後で高どまりしていること。それから、バブルが始まって以降、国が横ばいなのに、東京都の事業費が急速に膨れていることですね、緑、これが明らかになっている。いいですか、高どまりですよ、こっちから見て。よく見てください。こっちですね。ということです。
 そこで――急ぎますね。(「下がっているよ」と呼ぶ者あり)下がっていないよ。
 もう一つパネルを見てください。これは普通建設事業費、その財源の内訳と都債残高の推移です。普通建設事業費の大半は都の単独事業ですね。バブルによる税収をつぎ込んで、単独事業を急速に膨れ上がらせた。バブル崩壊後は税収が減ったんだから、膨らませた投資を減らすのが本当なのに、借金をしてその水準を維持したということですね。これは都債です。つまり、黄色がここです。いいですか、これが財源ですね。ここから落ちて、黄色が大きくなっています。つまり、都債がその分ふえて、そして膨らましたまま推移した。今日、その結果、一般会計で七兆円の借金財政です。
 これらを見れば、公共事業の膨張が、都においても、財政難、借金財政の原因だということが明らかだと思うんですね。ここに今日の財政難の原因があるのじゃないかということについて、知事の答弁を願いたいと思います。

○石原知事 それもまた、東京の財政に関して非常に短絡的な結論でありまして、私は、たまたま東京は幸い今不交付団体でありますから、つまり、他県に比べてナショナルミニマムをはるかに上回るいろいろな福祉行政もしてきたわけです。これだって、やっぱりかなり、つまり、他県に比べて東京の財政というものを逼迫させた原因になっていると思いますよ、財政的に見れば。
 それから、ついでに申しますと、私がせっかく、局長から具体的な数字を申し上げさせて、お答えをさらにしようと思ったら、親の心子知らずで、何か忌避されましたけれども、広島市の市長は、社会党出身の秋葉君でしょう。彼がどういう観点でどういう行政をしているか、つまびらかにしませんし、数値も知りませんが、しかし、広島市と東京都の財政というのは全く事情が違いまして、そういったものの数量的に比較もせずに、向こうがやったことを東京がなぜできないんだというのは、これは全く行政を知らない、地方自治体というものの意味を知らない暴論でありまして、人のいうことを聞かないから、今改めてここで答えとして申し上げておきます。
 そして、いかに広島市なり広島県と、東京都がどれくらいに財政的に違うかということが必要だったら、後で神藤局長なり財務局長からお答えいたします。

○木村委員 まあ、今になって広島の話が出ましたけれども、財政規模からいえば、そりゃあ広島と東京と比べれば、どちらが大きいかということはもう自明じゃないですか。つまり、私はその中で障害者施策について物をいったんですよ。それをそういう形で弁明するというのは、やっぱり問題を相当無理してはぐらかすという、そういうことだというふうに思います。
 さて、そこで、今日のいろいろ公共事業、私どもは公共事業悪論に立つものではない、ただゆがみをただすという立場で問題にしているということを申し上げましたけれども、今日ふえ続けてきたこの異常な高どまりの公共事業が、都民の役に立っているのかと、果たして景気回復にも役に立っているのかという点についてお伺いしたいと思います。
   〔発言する者あり〕

○植木副委員長 ご静粛に願います。

○木村委員 そこで、今日行われている建設省の公共事業着工統計で、東京における総工事評価額、労働者延べ就業予定数、総工事評価額百万円当たりの労働者数、これは九〇年と九八年とどうなっているでしょうか。

○古川建設局長 平成二年度の東京における公共事業の総工事評価額は約一兆四千六百億円、労働者延べ就業予定者数は約二千五百五十万人、総工事費評価額百万円当たり労働者数は十八人です。平成十年度の東京における総工事費評価額は約一兆一千四百億円、労働者延べ就業予定者数は約一千百五十万人、総工事費評価額百万円当たり労働者数は十人です。

○木村委員 つまり、景気対策として行われてきた公共事業は、雇用にも役に立っていないということが明らかなんです。そういう傾向が今の数字で明白だと思います。そこで、今、東京都の予算でも、投資的経費を思い切って減らしていくということが大事だというふうに思います。
 私ども日本共産党は、きょうは、異常に膨れ上がった公共事業のゆがみをただすという立場、そして東京都の財政とのかかわりで、財政難の主要な根源となっていることについてただしました。私たちは、このあり方を二十一世紀に向かって変えていくというために、一つは、まず投資的経費を総額減らしていく。少なくともバブル前まで減らしていくということが大事です。
 もう一つは、先ほどいわれましたように、知事は、かつて行われたさまざまなプロジェクト、問題があるといいましたけれども、今や、臨海副都心も含めて、開発目的も崩れ、採算性も見込めない、そういう……(発言する者あり)大型開発、プロジェクトは……。

○植木副委員長 ご静粛に願います。

○木村委員 思い切って勇気を持って見直していくということ、そして公共事業全体は、先ほど建設局長に答弁していただいたように、だんだんだんだん大型事業が大きくなっていて、単位当たりの雇用人員も減っているわけですから、それを生活密着型、東京都でいえば住宅や福祉の公共事業に転換をしていく、そういう三つの方向で転換をしていくということが必要だということを申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)

○植木副委員長 木村陽治委員の発言は終わりました。

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