東京都議会予算特別委員会速記録第五号

○石井副委員長 大山均委員の発言を許します。
   〔石井副委員長退席、三原副委員長着席〕

○大山委員 知事は、昨年の東京都知事選挙で、街角で、立国は公にあらず私なりというお言葉を訴えて、そして、中小企業の直接融資の道、また、東京に入ってくる多量の車のバイパスをつくること、そういうことをうたいながら選挙戦を戦い、そして、見事な勝利をおさめました。
 そういう中、実は、就任後も、これからの東京構想二〇〇〇、そういうものを策定すると表明しておりますが、それは、今後東京が目指すべき中長期的な都市像、生活像を明らかにし、その実現に向けた施策の展開の道筋を表明しているものであります。この中で明らかになるでしょうが、将来のまちづくりには、総合的計画の策定と着実な事業の推進が特に重要であると考えます。
 しかし、現実には、事業の執行段階ではかなりの時間が生じ、公共事業の推進に極めて重大な影響を与えているのが現状であります。現に、本日、この議会棟の前の都民広場では、ごみの最終処分場の建設反対を叫び、座り込みなどの抗議行動が展開されております。公共の利益となるような事業を進めるに当たっては、この際、問題点を十分に洗い出し、整理しておくべきでありましょう。私は、その一つとして、土地収用制度のあり方に注目したいと思います。
 そこで、私は、公共事業の促進の観点から、土地収用制度について何点かお伺いいたします。
 ことしの二月六日のある新聞の記事に、青山副知事が「土地はだれのものか」というコラムを載せておられます。この記事の中で、青山副知事は、鉄道や道路などの公共的な事業において、ほとんどの人が用地買収に応じたが、あとわずかな人が拒否をする。本来であれば、事業の計画決定の段階で済んでいるはずの縦覧、意見陳述などの手続を、土地収用という事業の最終段階でまた繰り返す。わずかに残った未買収地に、もともと権利者でなかった数千人の人たちが新たに共有者となって財産権を主張する。これに対応するための手続に膨大な税金と長い年月が消費されるという、現行の土地収用法のもとでの多数当事者に対する手法の矛盾を述べておられます。
 そこで、公正中立の立場である収用委員会事務局長に何点か事例をご報告していただきたいと思います。過去に裁決のあった事例で、わずかな未買収地に多くの権利者が集まって事業の促進に反対した事例がありましたら、その事件の内容、事業地全体の広さとその中の未買収地の広さ、そして、その未買収地に集まった権利者の数をご報告いただけますか。

○斉藤収用委員会事務局長 ご指摘の多数当事者を伴う案件として、二つの事例がございます。
 一つは、昭和六十二年に裁決を行いました半蔵門線事件でございまして、営団地下鉄半蔵門線の延長工事にかかわるものでございます。当事業に要する全体の土地の面積は、約二万坪でございます。このうち、未買収地ーーこれは買収できなかった土地という意味でございますーーは、約一坪でございます。その未買収地を共有する権利者は、二百八十九名でございます。
 もう一つの事例は、平成十一年に裁決を行いました二ツ塚処分場事件でございまして、多摩の二十七市町の出す廃棄物の最終処分場建設にかかわるものでございます。この事業に要する全体の土地面積は、約十八万坪でございます。このうち未買収地は約百四十坪でございまして、その未買収地を共有する権利者は、約二千八百名でございます。

○大山委員 一坪に二百八十九人、百四十坪に二千八百人という、極めて細分化された共有の所有形態であり、通常でいわれる民法上の私的所有権の実態とはかけ離れた、つまり、使う目的のないような土地の所有であると思います。
 それでは、補償額がなるべく現在に近いという点で、平成十一年裁決の二ツ塚処分場事件を例にして述べていただきたいんですが、この事件の未買収地、百四十坪ぐらいだったと思いますが、それを二千八百人で分けたとすると、共有者の持ち分によって大きさは異なると思いますけれども、一番人数の多い共有パターンで、何人くらいの人々が共有しているのでしょうか。また、一人当たりの面積はどれくらいになるんでしょうか。かなり小さくなると思いますが、何か具体的なものの大きさに例えてお示しいただきたいと思います。さらに、一人当たりの補償額は幾らになりますか。

○斉藤収用委員会事務局長 ご指摘の百四十坪を共有する方々のうち、一番数の多い共有パターンは、約千四百名の方々が所有する一人当たり〇・〇一五平方メートルの土地でございます。この〇・〇一五平方メートルの大きさを物に例えますと、はがき一枚の大きさに相当するものでございます。その補償額は、一人当たり約二百五十円でございます。

○大山委員 何と千四百人の共有地の一人当たりの面積がはがき一枚の大きさで、一人当たりの補償額は二百五十円であるということは、全く驚きであります。
 この二ツ塚処分場の起業者である三多摩二十七市町がつくる処分組合は、現在、裁決に基づく各権利者への代金の支払いを、実際に権利者のもとに出向き行っているようですが、この千四百人の人々のうち、関東近県以外にお住まいの方の人数はどれぐらいいらっしゃいますか。また、遠方の人々のために行くための旅費は、おおむねどのくらいですか。

○斉藤収用委員会事務局長 裁決の時点で、関東以外の地域に住む権利者の数は、約四百六十人でございます。おおむね全体の三分の一を占めております。
 この方々に出向く旅費でございますが、北海道、沖縄等に行くための旅費は五、六万程度かかるというふうにいわれております。東北、関西方面では、二、三万円程度が必要になると伺っております。

○大山委員 これは、遠く離れていれば、例えば一件でそれぐらいかかるということですから、旅費だけでも大変な金額でございます。
 補償金の支払いについては、旅費だけでなく、事務経費、通信費など必要になってくると思いますが、そこで、補償金の総額と、その支払いに係る費用はどのくらいかかるか、明らかにしてください。

○斉藤収用委員会事務局長 当該百四十坪の土地に係る補償総額は、約五千七百万円でございます。
 この補償額支払いのために要する費用は、処分組合の見積もりによりますと、旅費、事務費、郵送料等含めまして、約七億円と伺っております。

○大山委員 一人当たりわずか二百五十円の土地代金支払いのために何万円もの旅費をかけ、総額五千七百万円の補償金の支払いのために七億円を超える費用を使う。何と不合理な税金の使い方でしょうか。
 それで、もしそこまで行って、土地代金の受け取りを拒否した場合はどうなるでしょうか。

○斉藤収用委員会事務局長 補償金の受け取り拒否がありました場合には、土地収用法並びに供託法によりまして、供託の制度がございます。収用しようとする土地の法務局の供託所に補償金を供託することができることになっております。この制度の利用によりまして、補償金を支払ったことと同じ効果が出てまいります。

○大山委員 そうなると、供託となると、それまで使った出張費用はまるでむだになってしまうということですね。
 次に、この例となった二ツ塚処分場の収用事件は、収用委員会が申請を受けてから裁決までどのぐらいの期間がかかっていますか。他の事件と分類、比較してみてください。

○斉藤収用委員会事務局長 当収用委員会は、多い年で年間百件ほどの案件を取り扱っております。そのうち、案件処理日数の短いものはおおむね六十日程度でございます。また、一件当たりの平均処理日数は、平成三年度から九年度のものを平均いたしますと、約百八十日でございます。
 二ツ塚事件の処理日数は、平成八年十二月の裁決申請から丸三年近くなりまして、約千日を要しております。

○大山委員 どう考えても社会的常識に合わない不合理なことだと思いますが、先ほど声があったように、例えば、現地まで赴く前に供託してしまう等の、収用委員会としてのその運用面で何とか解決できないものでしょうか。

○斉藤収用委員会事務局長 運用面で解決できないかということでございますが、収用委員会は、土地収用法という極めて詳細な収用手続に基づきまして、行政委員会として中立公正な立場から準司法的な判断を行うものでございます。したがいまして、極めて裁量の余地の少ない、法に覊束されました仕事をしているわけでございます。
 ご指摘の運用面での解決を図れる場面といいますのは、極めて限定されたものになろうかと存じます。

○大山委員 今までの質問で明らかになってまいりましたが、はがき一枚の大きさの権利者のために膨大な経費と時間がかかるとしたら、事業の早期実現を願う人たちの思いはどうなるでしょうか。はがき一枚の反対のための所有権はどこまで保障されなければならないのか。
 収用委員会が、現行法に基づく手続を踏み、公正中立に準司法的判断を行わなければならないことはわかりますけれども、現行土地収用法は、多数当事者が未買収地に集中した場合、極めて不合理な制度的側面を持っているといわざるを得ません。今知事が考えていらっしゃいます交通の分散化という環状道路の提案をもししたときに、これと同じ問題が起きてくると、大変事業執行がおくれると思います。
 そこで、知事に伺います。憲法第二十九条の所有権の問題もありますけれども、当面、土地収用法の改正を国に強く要請していただきたいと思います。同時に、国会における憲法論議も始まったことですから、さらに踏み込んで、公共事業促進の見地から、時代に合った新しい土地収用法のあり方を東京都案として提起してはいかがかと思います。
 また、収用法という、何かお上が土地を召し上げるような、そういう文言も今の時代には合わないのではないか。例えば、土地は国民共有の財産であることから、名称を土地収用法でなく、国土利用法とでも変えて、事業開始後に多数の人が土地の共有者になった場合には、一人一人ではなく、その代表者だけを相手に手続をとる制度にする、こういう制度をつくるために、国に向かって法改正を訴えていくべきだと思います。
 そうしたことで、こうした取り組みが、まさに知事がいわれている制度改革に向けた首都東京からの挑戦になると思いますが、知事のご所見を伺います。

○石原知事 おっしゃるとおりでございます。今、あきれた事例について二つ聞かされましたが、私、国会におりましたときの記憶に、成田を開港する前に、某党の代議士たちがあそこに一坪地主になりまして、熾烈な反対運動をやりました。それを激励するために日本にやってきた孫平化とか廖承志という男たちが、成田に出向いて、金をばらまいて、君たちの反対はまことに結構だといって勇気づけ、あれが開港したら、とにかく台湾の飛行機はよこすなと。中共の飛行機こそ優先権があるんだといって、台湾の飛行機はいまだにあそこに入ることができず、羽田を行き来しているわけでありますが……。
 調べてみますと、現行の土地収用法なるものは、もともと権利者でなかった者が事業の開始後多数当事者となる場合などというものを想定していないわけで、まことに不合理な側面がございます。そもそも事業が開始される前にはそこにおらずに、それが決まった後にわかにやってきて、土地を今のような形で買って、その権利を主張する、これが果たして正当な所有者であり、正当な財産権であるか、非常に疑わしいわけでありますが、こういった事例が特に東京の周辺に多いということは、私たち東京の責任において、こういう事例が全国に及ばないように、法の改正なるものを国に強く求めていくべきだと思います。
 調べてみましたら、今までそういう要望が国に対してどこからもなかったというのも驚きでありまして、イギリスには、いつのころからですか、イギリス全体の土地は王の土地だという、そういう一つの箴言というのがあるようでありますけれども、これは全くこっけいな話で、日本の場合には、逆に、だれの所有地であろうと、そもそも狭小な国土の土地は国民の潜在的な主権があるんだというようなことを、私は、今度の憲法の論議の中でも徹底して行われることで、収用法も、形を変え、名前も変えて、もっと国民の全体が納得する形でスピードもアップし、また、土地の収用に係る価格も低価に抑えられて、もっと合理的な社会資本の整備というのが推進されていくべきだと思います。
 その一つの前提として、この不合理な現行法というものを改正するという要望を、東京の責任においてもすべきだと銘記しております。

○大山委員 ぜひ東京からの改革を進めていただきたいと思います。
 次に、区部周辺環状公共交通について伺います。
 私たちは、これまで、放射線方向に比べて整備のおくれております環状方向の鉄道整備が、これは鉄道かどうかは別といたしまして、必要だと訴え続けてまいりました。とりわけ区部周辺環状公共交通の整備が必要であると、都を初め関係機関に強く働きかけてまいったところであります。
 本路線を整備することにより、交通不便地域の解消や都民の利便性の向上、また、都市機能の分散化や沿線地域の活性化など図られることから、区部周辺公共交通は、二十一世紀の東京になくてはならない路線であると考えます。
 そこで、本路線に関する都の取り組みについてまず伺います。

○成戸東京都技監 都では、平成三年度から五年度にかけまして、基礎調査をまず行いました。六年度から七年度に計画調査を行い、八年度から十年度には計画検討委員会を設置して検討を行ってまいりました。その後、平成十一年三月に、都から運輸政策審議会に対しまして、鉄道網充実のため整備すべき路線として要望を行いまして、本年一月の答申に位置づけられたものでございます。

○大山委員 行政の方も頑張っていただいたんですが……。
 そこで、忘れてならないのが、実は私たち都議会で超党派でつくった議員連盟もありますし、また、地元区、区議会、そして、地域住民の皆さんが果たしてきた役割も大切でありました。本構想の推進母体として活発に議員連盟が働いてまいりましたけれども、今回の運政審に当たって、昨年、議員連盟役員から運輸大臣に直接要望活動を行っております。今回の結果によい影響をもたらしたものだと自負いたしております。
 そこで、区部周辺環状公共交通における東京都議会の役割について、都の方はどのようにお考えでしょうか。

○成戸東京都技監 本路線が今回の運政審答申に位置づけられましたことは、都議会超党派によります促進議員連盟のお力添えによるところが非常に大きいと考えております。この機会に厚く御礼を申し上げます。

○大山委員 その運政審の答申で、本年一月に、東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画についてと題された答申が出されました。そこで、この答申の性格と、具体的に区部環状はどのようなランクに位置づけられたのか、伺います。

○成戸東京都技監 今回の答申全般のことでございますが、鉄道の混雑緩和、空港等へのアクセス機能の強化、また、交通サービスのバリアフリー化の推進、こういったことを基本的な考えといたしておりまして、二〇一五年を目標年次とした東京圏における交通網の基本計画として取りまとめられたものでございます。
 また、お尋ねの区部周辺部環状公共交通は、今後整備について検討すべき路線としてBランクに位置づけられたところでございます。

○大山委員 区部環状がBランクといえども答申に位置づけられたことは、国も、二十一世紀の東京にとって必要不可欠な路線であるということを認めたと理解いたしております。
 そこで、この整備について検討すべきとされた区部環状の実現に当たっては、現在どのような課題があるのか、お伺いいたします。

○成戸東京都技監 この路線の整備に当たりましては、事業主体の確立とか、膨大な事業費の確保とか、事業採算性の向上などが極めて大きな課題でございますが、そのほかにも、沿線のまちづくりとの整合などが課題として挙げられるところでございます。

○大山委員 今挙げられた課題のうちで特に重要なのは、事業費の確保、つまり、二兆円を超えるといわれる財源問題であります。今の東京都政の厳しい財源のもとでは、都も地元区も、約七十キロメートルに及ぶ長大路線であるこの路線の整備について、新たな投資を行うことは極めて厳しい状況であると認識をいたしております。
 そこで伺いますが、この膨大な事業費についてでありますが、どのような整備手法を前提とした金額が出ているんでしょうか。

○成戸東京都技監 冒頭にご説明させていただきました都が平成六年度から七年度に実施いたしました計画調査におきましては、地下方式の新交通システム、ないしは小型地下鉄を想定して事業費を試算したものでございます。

○大山委員 東京の今の財源問題を考えますと、この膨大な事業費を考えた場合に、今までの財源と同じものを考えるんじゃなくて、また、路線の問題でも、上下分離方式やPFI法とか、新たな手法により整備をすることが重要だと考えますけれども、ご見解を伺います。

○成戸東京都技監 本路線を整備するに当たりましては、先ほどもお答えさせていただきましたように、膨大な事業費の確保を初め、多くの克服すべき課題がありますことから、国の支援はもとより、関係区等の積極的な支援が不可欠でございます。
 現在、運輸政策審議会鉄道部会におきまして、整備運営主体、建設資金の確保のあり方などに関しまして審議がされております。
 都といたしましては、こうした検討の動向などを踏まえまして、今後、重要な内容を含みますご指摘の点も含めまして、整備手法などさまざまな課題について取り組んでまいりたいと考えております。

○大山委員 この区部環状が持つ交通機能の中で何よりも重要なのが、羽田空港へのアクセスの機能であります。今回の運政審の答申においても、今後の鉄道整備に当たっては、空港アクセス機能の強化を重要な課題といたしておりますけれども、現に羽田空港利用者は増加する一方であります。
 そこで、羽田空港へのアクセス機能の強化に対する都の考え方をお伺いします。

○成戸東京都技監 羽田空港へのアクセス機能を強化することは、羽田空港国際化への対応とか、利用者の利便性向上を図る上で極めて重要でございまして、重点的に取り組むべき課題の一つと認識いたしております。

○大山委員 実は、今回の運輸政策審議会の答申の中で、わけのわからない答申が一つ出ておりまして、この区部環状の田園調布南側は、羽田方面としか記述が区部環状には書いてございません。さも早期に実現しそうなもう一つのルートも書かれておるんですけれども、その実現性は、私はまるでないと考えております。
 そこで、考えておかなければならないことは、区部環状を実現するに当たっては、どうしても考えなければならないのが車両基地の問題であります。例えば、路線の西側の環状八号線の沿線を見ますと、車両基地が可能な大規模な用地は、羽田空港の跡地利用を除いてほかにはありません。つまり、公共交通機関の整備には車両基地の整備が不可欠であり、区部環状西側の場合は、空港跡地利用しかないということであります。
 先ほど述べました羽田空港アクセス機能の強化と空港利用者の利便性の向上の観点からも、東京モノレール、京浜急行に続く第三の路線として、区部環状の羽田空港への乗り入れが必要だと思います。
 私は、このことを強く指摘いたしておきまして、区部環状の公共交通に対する今後の取り組みの姿勢について所見をお伺いいたします。

○成戸東京都技監 本路線は、広域交通ネットワークの形成など、東京の均衡ある発展に大きく寄与する路線でございます。本路線の整備につきましては、この場でも何回もご答弁させていただいておりますように、採算性など事業上の課題に加えまして、沿線地域のまちづくりとの整合など、多くの克服すべき課題がありますことから、国の支援を初め、関係区等の積極的な取り組みが不可欠でございます。
 このため、今後とも国と連絡調整を深めますとともに、関係区との連絡会を通じまして、協議、調整を進めてまいります。

○大山委員 知事、ここまでが今までの予算委員会の質疑でありまして、運輸政策審議会の確認でありました。
 さて、私は、知事が運輸大臣のころ、成田空港の地下に駅舎があって、線路もある、それを何とかしなきゃならぬということで、かなりの力で、成田エキスプレスですか、あれを実現したと知事から伺っておりますが、行政が行政の中で提案していくものというのは、先ほど地下方式という言葉がありましたけれども、実はあれは区長会の中から、環八の地下をそれこそ大深度で通してくれないかというような要望が運輸省に上がりまして、それが議論となって二兆四千億という値段が出てきて、これはとても運輸省としても実現不可能だと。現に、エイトライナーを提案したある一人の責任者の方が、自分の親戚の人に、おれの目の黒いうちにできるわけないと。いつになったらできるかわからない路線を今地元の住民に宣伝しているということは、私は行政の中ではあってはいけない姿ではないか。今発表するならば、実現可能で、しかも、早期にできるものを提案していかなければならない。
 実は、私自身が個人的に勉強してきた一つのシステムがあります。それは、今述べられたように、この問題には、事業主体の確立の問題、採算性の問題、導入空間の問題、こういう問題点があると運政審ではいわれております。その中で、まず最初に、私自身は、自分の提案として、HSSTという新しい交通システム、今、リニアといいますと、山梨で実験線のある、JRがやっている、あのリニアが大変マスコミにも登場しておりますけども、実は、同時進行的に民間のレベルででき上がってきた一つのリニアのシステムがございます。それは、日本航空が飛行機の技術を活用して開発してきたシステムでありまして、既に運輸省でも、実験線ではなくて、実用になってもいいというお墨つきも出ております。
 そこで、私は考えたんですが、環状八号線を利用した場合に、例えばこのシステムでいいますと、導入空間というのは、地下ではなくて、地上、空中であります。そして、なぜHSSTに固執したかといいますと、それは、ピアといいまして、立てる足、あれの幅が一メートルで済むんです。今までのモノレールですと、かなり強固なものをつくらなければなりませんでしたけれども、このシステムの場合には、一メートルという、いわば環状八号線でいえば、中央分離帯の導入部分ででき上がっていく。しかも、先ほど、地下鉄でやった場合には二兆四千億円かかるという試算でございましたけれども、このHSSTでいきますと、七十キロやって約一兆一千億、半分以下で済むという計算もできております。
 また、事業主体におきましても、先ほど申し上げたとおり、今までどおりに都の財源を使っていくという方式ではなくて、民間の会社を中心にしたPFI形式をとって、多くの民間の力を利用して都民の財産を築いていく、そういう手法を用いれば、私は、石原知事がもう一期やっていただけましたら、必ずその任期が終わるまでに実現するのではないかと思う次第であります。
 つまり、先ほどいいましたとおり、行政が安閑と二十年、三十年かかりますよということでは、今は都民は納得しない。おれの目の黒いうちに見せろというぐらいまで感覚が来ております。どうぞその辺のことを踏まえて、知事にこの区部周辺交通網のことについてご答弁をいただけましたらありがたいと思います。

○石原知事 エイトライナーあるいはメトロセブン、私が議会におりましたときから話題に上っておりました。大山さんなんかと一緒に現場を見に行って、ここへ駅をつくったらなんていう話をしたことがありますが、都も国もこういう財政状態でありますけれども、もしPFIということで民間が調査して、採算ベースでやれると踏み切るんだったら、これはありがたいことでありますから、むしろ民間の合理性に任せて、それが実現すればこれにこしたことはないと思います。
 私は、もう片一方のリニアに今でも関係しておりますけども、日本が世界に誇る技術でありまして、浮上するクリアランスはHSSTの方がちょっと低いですけども、十分、速度というものを考えれば使用にたえるわけであります。
 ですから、これは公共事業というよりも、PFIという形でそれができれば、これにこしたことはないと私は思います。

○大山委員 ありがとうございました。今後も私個人としても勉強を重ねて、何とか実現の方向に都に向かって提案してまいりたいと思いますので、都市計画局もよろしくお願い申し上げます。(「おれが生きているうちに乗ろうよ」と呼ぶ者あり)賛成。
 続きまして、私のライフワークでもあります羽田空港の問題について伺います。
 今月末にはすべての滑走路の沖合展開が完了し、羽田空港の処理能力の拡大が期待されております。空港容量の拡大は、国際線の直接乗り入れを実現するために極めて重要であり、さらなる航空容量の拡大を検討する必要があるという観点から質問いたしたいと思います。
 現空港における対応でありますが、このたび、地元の大田区でも、三月七日、これも大田区議会で全会一致で、左側旋回という今まで認められなかった新しいルートが認められました。隣の川崎市も原則的に受け入れております。品川区においても、新A滑走路から北側へまっすぐ上っていく進入路についてもほぼ調整がつきつつあると聞いております。
 新A滑走路の離着陸の左旋回離陸については、B737などの中型低騒音機を使って新ルートの飛行を認められるということでありますが、私はこれを機会に、今、世界で大変活躍しておりますビジネスジェット機をもっとふやしてもいいと思っております。近年のビジネスジェット機は、プロペラ機よりも航空機騒音が小さく、市街地への影響は少ないわけであります。新A滑走路を使って左側旋回や北からの進入を認めれば、伸び続けている航空需要にこたえるだけでなく、航空容量の拡大にもつながります。しかも、東京を中心としたビジネスチャンスも大きく拡大し、経済の活性化にもつながります。
 今後、羽田空港におけるビジネス機の利用枠の拡大を国に働きかけるべきでありますが、いかがでしょうか。

○成戸東京都技監 近年、企業活動のグローバル化などを背景にいたしまして、ビジネス機の利用が増大し、国内はもとより、海外からも羽田空港への乗り入れ要望が高まっております。都心に近い羽田空港におきましてビジネス機の利用枠を拡大することは、東京の経済を活性化していく上で極めて重要であると考えております。
 都は、ご提案いただきました新A滑走路の有効活用による空港容量の拡大という点も踏まえまして、羽田空港におけるビジネス機の利用枠拡大について国に要請してまいります。

○大山委員 ここに平成九年に運輸省がつくった航路の軌跡の地図があります。先ほど知事にもお渡しいたしましたが……。これの航路を見ますと、平成五年九月十三日十二時から十四日十二時までということでありますけれども、一番黒い線、濃い線、ここは川崎の東扇島から出てくる線、扇島から出てくる線、また、多摩川から出てくる線、これが一番重なるところが、実は私が提案する羽田空港の四本目の滑走路をつくるべきところだということで、これはできないよという運輸省がつくった地図でございます。
 しかし、その第一航路というのは、そのはるか横の方を通っておりまして、羽田の第一航路については余り影響がない。私は、本来もう一問やって、それから行くはずでしたけれども、この航路のために、海老取川の拡幅をこれから長期構想の中で置き込んでいって、この錯綜するたくさんの小型船舶を運河沿いに通して、第一航路を確保しながら、第四の滑走路を羽田空港につくるべきだと思います。
 私は、今までいろいろな滑走路のことを訴えてまいりましたけども、新しい滑走路については、例えば埋め立てをするのではなくて、あそこの滑走路をつくる沖合展開のときに、実は浅場というものをつくってありまして、それは魚介が生息しやすいようにということで、本年度で事業が終わるはずであります。しかし、それをむだにすることなくやるためには、例えばあそこに浮かべていく方式、また桟橋方式、そういうものも含めてやっていって、今の技術であれば、桟橋方式にしてやった場合に、暗くなった部分に、上から光ファイバーで例えば光を落としてやれば、今、魚、貝がすんでいるところの自然環境も守れますし、また、その環境を守った上で、将来的にもし透明度が高くなったら、新しい名物にするために、中に人が見て入れるような海底牧場のようなものをつくってもおもしろいんじゃないかな、そういうふうに思っております。
 きょうは、最後、時間がなくなってしまって、羽田空港のことについては舌足らずになりましたけれども、つまり、第四の滑走路をつくるために、新しい技法で今後検討していったらどうかということを国に強く訴えていくべきだと思います。
 そして、申しわけありませんけれども、もう一点だけ話させてください。実は、なぜそんなことをいうかといいますと、さっきお話をしましたワシントン・ダレス空港をつくるのに、候補地選定から開港まで四年間でつくっております。また、ダラス・フォートワース空港では、候補地選定から十年で完成いたしております。しかし、成田では二十三年間、場所選定に六年、調整に十年、建設に七年、そして、関西空港では二十八年かかっています。
 つまり、首都圏の第三空港をこれから検討していったとしても、二十数年かかってできるのでは、今の日本の置かれている立場、東京の置かれている立場、そういうものを考えたときに、首都圏第三空港は、確かに将来的には必要かもわかりませんけども、どうしても羽田にもう一本四千メートル級の滑走路をつくれば、世界の国際空港として立派に羽田が通用すると思いますけれども、知事のご所見をお伺いします。

○石原知事 私も、大山さんがおっしゃった既存の羽田の横に次の滑走路をつくる案について考えました。行ってみましても、航路の整備というのは、部分的に掘ったりすることで十分賄えると思います。
 ただ、その前提で今ある羽田というものをもっと活用することも必要でありますし、大田区が非常にいい決定をしてくれました。仮にこれから北からの進入ということも可能になるにしても、そこら辺が、都政なりの整合性がまだ欠けておりまして、聞きますと、まだ都市計画局は承知していないようですけれども、渋谷のあたりに超高層の建物を某ディベロッパーが考えているようですが、そういうものができますと、羽田というのは、非常に機能が阻害されてしまいます。
 そういうことを今から考えても決して早過ぎはしませんから、そういうものを勘案して、私は、今ある羽田というものを徹底して充実していくことがまず肝要だと思っております。

○三原副委員長 大山均委員の発言は終わりました。

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