東京都議会予算特別委員会速記録第四号

○石井副委員長 矢部一委員の発言を許します。
   〔石井副委員長退席、委員長着席〕

○矢部委員 先日の本会議におきまして、憲法の誤訳についての指摘が知事からありました。
 その誤訳のことで思い出したのでありますけれども、私の渋谷区にお住まいで、日本でも草分けのイラストレーターでございまして、また、スクラッチボードの作者として有名な方でございますけれども、登村ヘンリーさんという方がおられます。「日本人のデモクラシー」、こういう本を書かれた著者でもございますけれども、その方がアメリカでイラストレーターとしての修行中に、下宿のご主人と夜を徹してデモクラシーという言葉について議論をして、そしてその結果、体得をして、こういうものかと感じ取ったようでございます。そして、改めて見ますと、日本の民主主義と、そのもとであるデモクラシーとがこんなにも違うものかと。百八十度違うとおっしゃっているわけでございますけれども、というお話がありました。
 結局のところ、本来、デモスという人々という言葉と、クラティンという統治という言葉、人々が統治すると本来訳すべきでございますし、もし強いて訳すならば民主制と訳すべきであったものを、民主主義と訳したために、考え方の違いが出てしまって、それが今日までいろいろなところに影響をしているというものであります。
 先ほど申し上げましたように、デモクラシーは、いってみれば利他主義、民主主義は、ややもすると利己主義になっている、もう百八十度違うというものでありますけれども、そういうことをいわれ、私もその説明をよくお聞かせいただいて、ようやくとわかってきたような気がしております。
 知事は、このことについてどうお考えか、まず冒頭にお聞かせいただきたいと思います。

○石原知事 仄聞でございますけれども、アメリカの小学校に新入生が、一年生が入ってきたときに、学校の担任の先生が必ずいうことがあるそうです。
 それは三つありまして、第一は、お父さんとお母さんのいうことと先生のいうことと違ったら、お父さん、お母さんのいうとおりなさい。これは、やはり教育の主体者が親であるということ。第二は、町でお巡りさんが困っていたら、子どもでも助けられることがあったら助けよう。これは、やはりコミュニティというものに対する責任感。もう一つが大事でありまして、みんなで決めたことは、自分が多少嫌でもとにかく従おうと。私は、これがデモクラシーの原則で、それをわかりやすく教えていると思います。
 かつて、一人の人間が反対する限り橋をかけないんだという知事がございましたが、あれは後段がありまして、反対した人間は冬でも川を泳いで渡れというスペインのことわざでありますが、あれが典型的なデモクラシーの履き違えだと思います。

○矢部委員 大変考え方として一致をしているということで安心をしておりますし、私も、そういう考えのもとにこれからも都政を歩ませていただきたいと思うわけでございます。
 次に、言葉のことばかり恐縮でございますが、言葉の専門家に対して申しわけないと思うんですけれども、少子高齢化という言葉を、知事もこの間の所信表明でも使われておりました。前に厚生委員会でも議論をしたところでありますけれども、少子化というものと高齢化というものは、本来、まるきり別のものだろうと。異質のものでございます。それが一つになっているために誤解が生じてしまっているんですけれども、まず国が使い始めたようでございまして、その辺、いつごろから使われて、どんなふうに使われてきたのかをお尋ねしたいと思います。

○柿沼政策報道室長 国におきまして、お尋ねの少子・高齢社会という言葉が初めて使われましたのは、平成六年に高齢社会福祉ビジョン懇談会により報告されました「二十一世紀福祉ビジョン」の中においてであると認識をいたしております。
 また、報告書におけるそのときの表記は、少子というものと高齢というものの間に中点が入っているものでございました。

○矢部委員 今お話がありましたように、少子と高齢の間に中黒、ポツがありまして、分けて使われておりましたが、いつの間にか、これは印刷をしているうちになくなってしまったのか、今、東京都では、少子高齢化あるいは少子高齢社会というふうに、一つの熟語として使われているわけです。
 このことによって、イメージが余りよくなくなってしまうのではないか。要するに、高齢化というのは悪いことというか、両方まずいことをくっつけ合わせて、両方ともよくないと。そうすると、そんな社会に子どもを産み育ててもしようがないんじゃないかと、ますます少子化になってしまう、ますます高齢化になってしまうというような結果が生じてしまっているような気がしてならないんです。
 そのことについて知事はどうお考えでございましょうか。

○石原知事 私は、望ましいのは、多子・高齢化社会だと思いますが、その中のポツを取って少子高齢化という形でつなげて使いますと、あたかも、高齢化が進むがゆえに少子化が進み、少子化であるがゆえに高齢化していくという妙な誤解を生じかねない。
 これはやはり、心して、間にポツを打つなり、あるいは分けて使った方が、これからの対策のためにも望ましいのではないかと思います。

○矢部委員 ぜひこれから、この言葉の使い方、極めて大事だと思っておりまして、慎重にお使いいただきましたり、東京都として統一をした方向でお使いいただきますようにお願いしたいと思います。
 次に、区部環状線の一つであります環状第五号の一、通称明治通りといっておりますけれども、副都心である池袋、新宿、渋谷を結んで、区部の道路ネットワークの骨格を形成する重要な幹線道路でございますけれども、そして、そこには地下鉄の十三号線の導入空間としての予定もされております。
 この早期完成に向けて、危機突破・戦略プランの中でも、重点解消策として極めて重要であるとうたっております。
 この路線の現在の事業中の様子、あるいは、さらには現道がない区間もあるようでございまして、それらの場所、延長について、まずお尋ねしたいと思います。

○古川建設局長 環状第五号の一は、渋谷区恵比寿から北区滝野川に至る延長十三・九キロの幹線道路です。
 そのうち、渋谷―広尾間など九・八キロが完成または概成し、現在、雑司が谷、千駄ヶ谷地区など三・八キロで事業を行っています。
 残る現道がない区間は、新宿御苑付近の〇・三キロです。

○矢部委員 現道がなく、未整備のところ、未着手のところが〇・三キロ、これは新宿御苑と新宿高校との間のところになるわけでございます。
 その計画線の中に、行ってみますと、樹齢百年を超えます落羽松といいますーー落羽松というものですから、松かと思ったら、これは杉の仲間だそうですけれども、何とも不思議な樹木があります。これは、原産地はカナダのようでございまして、湿地に生えて、そして根が水平に張って、湿地なものですから、空気を吸うために気根がぽつぽつと出ているんですね。その様子が何とも不思議な光景でありまして、幻想的な雰囲気をかもし出しております。
 見た人はほとんど、この木は大事にしなくちゃいけないな、ここは計画線だけれども、これは何としても残さなくちゃいけないというところで一致をしておりますし、私もそう思っております。
 そして、これは御苑の中にあるものですから、皇室との関係もありますし、いろいろ複雑な条件もあるようでございますけれども、かつて、放射五号線の御苑トンネルの工事に当たっては、大変スムーズに交渉して折衝されて工事が終わった経緯もあります。
 今現在、どのようになっているか、お尋ねしたいと思います。

○古川建設局長 新宿御苑付近の事業化につきましては、ご指摘の落羽松の保護を初め、御苑の自然環境に十分配慮する必要があります。現在、苑内の植生や地下水などの調査について、環境庁と調整を進めています。
 今後、その調整結果を踏まえ、道路の位置や構造について、環境庁など関係機関と協議を行い、事業化を図ってまいります。

○矢部委員 ぜひ積極的に交渉をしつつ、それぞれが納得できて、なるべく早くに道路が完成できますように要望をしておく次第でございます。
 次に、市場関係についてお尋ねしたいと思います。
 今回、条例改正で、今まで商物一致が原則であったものがなくなりましたり、競りから相対ということで、量販店が有利ではないかと思われてしまうようなイメージで改正があってはならぬというふうに思っております。
 そうしたことから、市場を取り巻く環境の中で、産地の大型化による圧力や量販店からの圧力等の問題が市場関係者から指摘をされていますけれども、それはどのようなものなのか、お尋ねしたいと思います。

○大矢中央卸売市場長 青果物においては、農協の合併等により、出荷形態の大型化、系統化が進んでおります。
 このため、出荷団体としては、生産物を少しでも有利な条件で販売させるため、販売力のある卸売市場及び卸売業者を選別する傾向を強めております。また、量販店の台頭は、早朝の時間帯における納入、品ぞろえに対する厳しい注文、安定的かつ廉価な価格の設定、代金の支払いサイトの長期化等、仲卸業者にとってもかなり厳しい条件が要求されております。

○矢部委員 なかなか厳しい状況のようでございますけれども、最近の競り売りの状況は、十年前ぐらいと比べるとどういうふうに変化していますでしょうか。

○大矢中央卸売市場長 平成十年における競りの割合は、取扱金額でいいますと、水産物は二五%、平成元年に比べ一四ポイント減少しております。青果物は三四%で、平成元年より二二ポイント減少しております。食肉は八九%で、三ポイントの増加となってございます。

○矢部委員 水産、青果物ともに競り取引が減少している傾向が出ているわけですが、私は、市場の取引の需給バランスをとっていく価格形成がされるのには、競りが一番いいというふうに思っております。
 そういう中で、最近の都内の生鮮食料品を扱う小売店の数はどんなふうに推移をしていますでしょうか。

○大矢中央卸売市場長 小売店数の推移についてでございますが、商業統計によりますと、平成三年を一〇〇とした場合の平成九年の指数は、水産物が七七・四、青果物が七六・八、食肉は七四・四と、いずれも減少してございます。

○矢部委員 長寿社会、これからますます進行していくわけでございまして、二〇二五年がピークだともいわれておりますけれども、そういう高齢化社会を迎えるに当たって、遠くのスーパーよりも近くの商店街という傾向が強くなっていくのではないかというふうに思っております。
 そういうことを念頭に置いたときに、市場としてはどのように対応しようと思っていらっしゃるでしょうか。

○大矢中央卸売市場長 長寿社会においては、高齢者にとって、地域に密着した小売業者の役割は一層大きくなるものと考えております。
 また、買い物に行けない高齢者の比率も高まると予想され、これらの方々に対する食材の宅配や給食サービス等の需要は大きくなるものと考えられます。
 小売業者が地域ごとの共同仕入れや共同配送を行うなど、地域社会の要請にもこたえられるように、業界を通じて指導してまいります。

○矢部委員 いずれにしましても、間違いなく到来いたします長寿社会に対応しつつ、町の小売商店が、今回の条例改正のために、やる気を喪失するようなことが決してあってはならないと考えております。そういうことがないように強く要望しておきたいと思います。
 昨年の十一月九日に、築地市場再整備推進協議会で、あたかも四十ヘクタールの用地が確保できるような前提で、移転の方向が望ましいとの取りまとめが行われました。
 しかし、移転先と目されております豊洲の地域には、東京都が所有する土地は十四・四ヘクタールしかありません。そういう中で、とても確保できないのではないかというふうに思っておりますが、いかがでございましょうか。

○大矢中央卸売市場長 東京都においては、現在、移転整備の候補地である豊洲地区における市場用地確保の可能性につきまして、各種計画との整合性なども考慮しながら検討しております。移転の方向となった場合には、関係者と十分協議を進めてまいります。

○矢部委員 まあそういうことなんでしょうけれども、現実的には、東京都が策定をした豊洲・晴海開発整備計画、これが平成二年につくられて、九年にまた改正をされているわけですが、こういうものを東京都がつくったわけで、それに基づいて道路、交通機関等の整備もされているわけですし、地権者もそれに備えて計画、準備を進めてきているわけです。そういう中で、突然のような話をされたとしたときに、その地権者はとても信じられないと思うのは当たり前のことじゃないかというふうに思うんです。
 こういう中で、地権者は東京ガスあるいは東京電力と限られたところしかないわけでありますが、どういう態度をとっているのか、知事、いかがでございましょうか。

○石原知事 向こうがですか、地権者が……。

○矢部委員 地権者との関係がどうなっているか、見通しです。

○大矢中央卸売市場長 豊洲地区の地権者の方々とは、市場として、移転問題についての経過や市場の役割などについて説明を行っているところでございます。
 豊洲地区への市場移転について、地権者によりそれぞれの考え方はあると思いますが、今後とも誠意を持って対応してまいります。

○矢部委員 そういうことなんですけれども、東京都がつくったプランがあってのことだから、これを改めるなり、それぞれ関係する人たちと協議をする中で改定をするなり、手続をとっていく必要があると思うんですね。そういう立場で知事にお尋ねしたいと思うんです。

○石原知事 たまたま今、東京ガスの社長が私の後輩でございまして、それから、この問題の担当の重役兼傍系の会社の社長もそのさらに後輩で、同窓なんですけれども、彼らにしてみると、自分たちプロパーの計画を立てていた、そこへこういう計画があるということを知らされて、私たちは何も聞いておりませんぞというクレームを、個人的にはもらいました。そのことを大矢市場長にも取り次ぎまして、その後、綿密なコンタクト、接触がとられたと思いますけれども、その後の経過については詳細を存じておりません。
 いずれにしろ、こういった問題について、都はやはり誠意のある対処をすべきだと思っております。

○矢部委員 相手のあることでございますし、交渉ですから、それぞれ話し合いを続けるしかないというふうに思っておりますが、ともかく関係者それぞれが八方丸くおさまれば一番理想的でありますが、そういうことを模索しつつ、努力をしていただきたいと思う次第でございます。
 次に、都区財調のことについて、何点かお尋ねしたいと思うのです。
 昨日も、我が会派の大西理事の質問に対して、移管経費等を含めてのお話がありましたが、そういう中で、二十三区それぞれに様子が違うわけです。人口を一つの物差しとしているのはわかるのですけれども、現実的に昼間人口の多い区、あるいは繁華街や何かを抱えていて、ごみが大変多い区等々があるわけでございますし、また、中継所の問題等々もあるわけでございます。
 こうしたことを念頭に置いて、各区ごとの事情にどういうふうに反映できるのか、どんなふうにしたらスムーズにいくのか、すぐにというわけにいかぬでしょうけれども、今の様子をお教えいただきたいと思います。

○横山総務局長 お話のように、清掃事業経費につきましては、財調算定上の測定単位でございます人口をとっておるわけですが、この測定単位である人口だけでは捕捉し切れない要因が当然あるわけでございまして、これにつきましては必要な補正を行うこととしております。
 例えば、収集ごみ量に影響を与える昼間人口であるとか、あるいは繁華街等の状況については、直近のごみ量をもとにした補正を行います。また、収集作業形態に影響を与える清掃工場等の施設の有無につきましては、作業形態をもとにして補正を行う予定でございます。
 こうしたことによりまして、ご指摘の各区ごとの事情は財調算定に反映できるものと考えております。

○矢部委員 今日まで百年の長きにわたりまして、東京府の時代から都が実施してきた清掃事業が特別区に移管されるわけでありますから、それはそう簡単にいかないものも多くあるというふうに思うのです。そういう中で、財政的な裏づけを確実にしつつ、また、それこそ一滴の漏れもなく円滑に引き継ぐことが重要であると考えております。
 そういう中で、清掃局は、清掃事業を移管するに当たりまして、ごみ収集運搬作業のテストランを実施しているということをお聞きいたしておりますけれども、その内容と実施状況をお知らせいただきたいと思います。

○安樂清掃局長 毎年四月の新年度を迎えますと、ごみの収集作業体制が大きく変わります。これは、ごみの発生量が年ごとに地域単位で変化するため、これに合わせて清掃事務所の職員や車両を配置がえしたり、ごみの収集ルートや収集曜日を変更する必要があるためで、新しい作業体制に落ちつくまで、ほぼ一カ月を要しております。
 ことしの四月は、これに加えまして、区移管のために清掃事業の事業主体が清掃局から区に変わります。このため、円滑な移管を実施するために、まず第一段階で清掃事務所や清掃工場などの、いわば実践部隊を一カ月前倒しで新しい体制に移行させ、しかる後に事業主体を交代することとしたものでございます。この第一段階を、現在テストランとして行っております。
 これによりまして、新しい作業体制が安定する四月までは、清掃局がこれまでの経験を生かしまして不測の事態に対応することができます。今のところ、テストランは順調に進んでおります。

○矢部委員 仕事を初めて区へ移管するわけでございますから、今後ともに、アドバイス等々をよろしくお願いしたいと思います。
 次に、NPOについてお尋ねしたいと思います。
 厳しい財政状況の中で、これからは、行政がすべての公共サービスを提供するというのではなくて、NPOやボランティアを活用し、公共サービスをいかに効率的に提供していくかが、都政運営の大きな課題になるのではないかというふうに考えております。
 NPO法案が施行されてから一年たつわけでございますけれども、東京都においても、既に三百を超えるNPOが誕生しております。いろいろな活動をしているようですが、うまくいっているところ、そうじゃないところ、いろいろあるようでございます。そういう中におきまして、NPOと行政とどういうふうにかかわれるのかということを、まずお聞かせいただきたいと思います。

○今沢生活文化局長 NPOは、本来、自主的あるいは自発的に活動するものであるというふうに認識しておりますが、都では、これらの団体の活動がより促進されますよう、運営に関する相談、あるいは情報提供、さらには専門的な人材育成などに対し支援を行っております。
 また、NPOと協働いたしまして、介護などの地域福祉サービス、エイズ対策の普及啓発など、多様化するニーズや行政が直接提供しにくいサービスの分野におきまして、さまざまな取り組みを行っております。

○矢部委員 行政とNPOの協力関係を構築する上でというと、大変大上段に構えちゃうわけですが、BID、ビジネス・インプルーブメント・ディストリクトというものがアメリカで進んでおります。これは、一九八〇年代、アメリカのレーガン政権のもとで減税政策等々行われた中で、民間の活力を生かして都市経済を再生しようということだったようでございます。全米で七百五十以上ものBIDが民間のNPOとして、治安や環境美化、商業施設のテナントの誘致など、いろいろな活動を行っておりました。
 昨年、私は、ニューヨーク市に、ニューヨーク事務所の協力のもとで視察調査をしてまいりました。その一つが、グランドセントラルステーションのところのBIDでございましたけれども、これは駅をリフォームして、また、近隣のホームレスを雇用して駅周辺の環境美化に努めた結果、かつてスラム街だったところが大変きれいになって、そして地下鉄も一人では乗れないなんていわれたものも、落書きもなくなって安全性も増したというようなことまで、波及効果があるようでございました。
 これはアメリカだけのことではなくて、よくよく聞けば、日本の商店街組織等々も見習う中でできた組織のようでございますし、日本でも、江戸時代にはおかっぴきや町火消しなど、江戸の治安、消防は地域住民が担う、いわばBIDの先駆けのような組織であったような気がしております。江戸の町は、現代にも通用する先進的な都市運営の仕組みが存在した、世界に誇れる都市であったと思います。
 東京都としても、NPOの自主性、自立性を生かしつつ、各局がNPOとの協働関係を積極的に築いていけるよう、全庁的なシステムをつくっていくことが大変重要であると考えております。知事の所見をお伺いいたしたいと思います。

○石原知事 東京都下にも非常に数の多いNPOが既にありますし、また、さらに幾つかの組織がアプライ、申し込みをして申請してきております。その組織の性格にもよりますが、確かにおっしゃるとおり、活力のある東京を実現するために、そういう方々と協働していくことは非常に有効な方法だと思います。
 そのために、この十二年中に、都とそういう組織と、どういうふうな形で協働を推進するかという具体的な方策などを、指針として決めたいと思っております。

○矢部委員 さらには、ニューヨーク市ではもっと積極的でございまして、グランドセントラルBID、そのエリアに加盟をした方々の固定資産税を上乗せしてニューヨーク市が徴収をしているのです。一一%といったと思うのですが、それを今度市からBIDに交付する、それを運営資金にするというような形で、積極的に協働する仕組みができているわけでございまして、そこまで日本ではなかなか、法的な制約があるかと思うのですけれども、NPOの税制優遇措置等がつくられながら、またその上をいく、東京都とのうまいタッグマッチができるような形になると、いろいろなことができるのではないかなというふうに思っております。知事、いかがでございましょうか。

○石原知事 NPO法も発足したばかりでありまして、まさに揺籃期でありますから、これを健全で有効に育てていくために、税制についての検討も確かに必要だと思います。これは、これからの課題として心得て、せっかくのそういうグループの活動が広域に及んで効果を上げますように、できることならそういう点でも援助もしたい、検討の課題として受け取らせていただきます。

○矢部委員 先ほどでしたか、東京都において税調をつくったらどうだというお話もありましたから、そういうことも含めて、課税自主権を確立するというようなことも含めて、戦略的な課税自主権を目指していただきたいというふうに思っております。
 次に、建築行政のことについて、幾つかお尋ねしたいと思うのです。
 昨年の五月から、民間の指定確認検査機関による建築確認、検査制度ができるようになってきました。なかなか見えてきませんものですから、実際どうなっているのかなというふうに思っております。現時点での民間指定機関の活動状況等々についてお教えいただければと思います。

○成戸東京都技監 これまで行政だけが行っておりました建築確認あるいは検査業務へ民間機関が参入したことによりまして、建築主にとっては、それらの手続に当たっての選択の幅が広がることになりました。
 このため、例えば迅速な建築確認や検査業務が期待できるなど、建築主のニーズに即したサービスの選択が可能になるというメリットがございます。
 また、活動の状況等でございますが、東京都内で建築確認や検査業務を行います、いわゆる指定確認検査機関でございますが、この二月末現在、建設大臣指定機関が三機関、東京都知事指定機関が一機関、合わせて都内で四機関でございまして、これら四機関での建築確認の実績は九十四件ございます。

○矢部委員 四機関九十四件、まだまだ少ないなという感じを持ちます。また、一年にも満たないという中では、やむを得ないのかなという感じもしていますけれども、これからさらに指定確認検査機関がふえていくのか、ふやしていかなければいけないというふうに思うのですが、その辺についてはいかがでございましょうか。

○成戸東京都技監 これから予定されております指定確認検査機関といたしましては、新たに財団法人の住宅金融普及協会などが指定申請の準備をしているというふうに聞いております。今後も、こうした指定確認検査機関が、その特色を生かしながら業務を行うことによりまして、さらに増加していくことを期待したいと思います。

○矢部委員 こうした民間の機関がふえていくに伴いましてといいますか、建築行政、今、実際の実務からいいますと、午前中は書類審査、午後は現場の検査というような形で、実質半日しか仕事ができないというような状況のようでございますし、そういう中で、役割分担をしっかり、はっきりしていくと、もっと効率が上がっていくのではないかと思っております。
 今後、都においてどういうふうにこれらのことを進めようとされるのか、お考えがありましたら、お聞かせいただきたいと思います。

○成戸東京都技監 建築行政も大きな転換期にあると認識しておりまして、官民の役割分担の見直しを行うなど、的確で効率的な執行体制を整備していく必要があるというふうに考えております。
 都といたしましても、建築確認や検査業務を、ただいま説明させていただきました民間の指定確認検査機関と協働して行うことによりまして、行政の内部でも効率的かつ効果的な執行体制の整備を図りまして、そうした余力をもって、中間検査でありますとか、完了検査の受検率の向上を図るなど、安全で快適な建築物の確保にも努めてまいりたいと思っております。
 また、地方分権が進む中で、区市町村とも密接に連携をいたしまして、福祉のまちづくり、あるいは地域のまちづくり、こういった方面の中で、建築行政の効果的な展開を図っていきたいというふうに考えております。

○矢部委員 技監の積極的なご答弁をいただいて、ちょっとほっとしてはおりますけれども、いろいろと天下り機関だ何だと、こういわれているときであります。現実的に、建築主事の資格を取ろうとするとなかなか大変なものでありますし、そうした資格を持った都庁OBが、願わくばNPOのようなものをつくって、そういう中でうまく民間と協調したり、また、東京都を補完をしてくれるといいなというふうなことを思っておる次第でございます。
 次に、人事政策についてお尋ねしたいと思います。
 資料をご提出いただきましたが、都庁全体で、五十歳以上の職員が三〇%を占めております。中でも、五十歳以上の職員が四〇%以上を占める局が九つあり、主税局に至っては五一%にも達しております。
 そこで、年齢構成の不均衡を是正し、安定した組織力を確立していくためには、これまで人事政策面においてどのような取り組みがされてきたのかをお尋ねしたいと思います。

○横山総務局長 年齢構成の不均衡につきましては、かねてから人事政策上の大きな課題となっておりますことから、これまでも、その是正に向けまして、経験者採用の実施でありますとか、大量採用世代の早期退職の促進、それから新規職員の計画的採用の実施、こういったことに取り組んできたところでございます。

○矢部委員 年齢構成の是正のためには、長期的な視点に立って、職員の計画的な採用が必要でありますし、新入職員は、組織を変える新しい血としても必要であります。しかし、現実的には、財政再建のために大幅な採用の抑制をしなければならない状況にあります。
 そこで、来年度以降の採用はどうしていくつもりなのか、お尋ねいたします。

○横山総務局長 お話のように、間もなく大量退職を迎えることを考えますと、ご指摘のとおり、年齢構成の是正、組織活力の維持のために、職員の採用をできる限り計画的に行っていくことが望ましいところでございますが、ただ一方で、財政再建に向けての内部努力として定数削減という課題がございます。こうした課題に取り組んでいくためには、十三年度以降も、十二年度に引き続きまして採用の抑制を行わざるを得ないと考えております。
 また、具体的な対応につきましては、退職者数や事業の動向等を十分に精査した上で判断してまいります。

○矢部委員 昨日ですか、知事は三分の一でいいというお話もありましたが、そこまで一気には行けませんけれども、この年齢構成をうまく利用すると、首を切るということではなくて、自然に退職があって、そういう中で組織を再編していくことができるのではないかと思う次第でございます。
 国においては、官民交流の制度の法制化の動きがあるようですけれども、そういう中において、都では民間からの人材をということでお話がありましたが、それらについて、どういうふうにお考えでございましょうか。

○横山総務局長 国におきましては、行政の課題に柔軟かつ的確に対応するために必要な知識及び能力を有する人材の育成、及び行政運営の活性化を図るために、昨年十二月に国と民間企業との間の人事交流に関する法律、これが制定されたところでございます。
 その内容は、官民癒着の防止など、公務の公正性、信頼性が損なわれないように十分配慮をしながら、民間企業への職員の派遣、あるいは民間企業の人材の採用を柱とする、国と民間企業との人事交流の基本的な枠組みを定めたものでございます。
 東京都におきましても、これまでも民間の人材を附属機関等の委員や行政実務研修員として受け入れてきたほか、人事委員会の基準に基づきまして、幹部職員または一般職員として採用してきたところでございます。

○矢部委員 今後、大量退職期を迎える中で、組織の活力を維持するために、やる気があって、経験、知識が豊富な退職職員を大いに活用していく必要があるというふうに思います。
 それらのことについて、検討はされているというふうに思いますが、具体的にお聞かせいただければと思います。

○横山総務局長 東京都におきましては、行政運営の簡素効率化及び住民サービスの向上を目指して、昭和六十年度から再雇用制度を導入しまして、健康で働く意欲と能力のある退職職員の有効活用に努めてきたところでございます。
 今後も大量退職が見込まれる中で、組織活力の維持向上を図っていくためには、退職職員を即戦力として、より一層活用していかなければならないと考えております。
 退職職員の活用の制度につきましては、昨年七月に地方公務員法等が改正されまして、国家公務員に続き、地方公務員にも新たな再任用制度が導入されることとなりました。
 この新たな再任用制度は、退職職員を定年前の職員と同様の職務に従事させることによりまして、本格的に活用する制度でございまして、東京都におきましても、国や民間における退職者活用の動向等踏まえながら、その制度導入の具体的な課題について、現在、鋭意検討を行っているところでございます。

○矢部委員 大量な退職者が出る時期になってきますと、当然のごとく、退職手当の支給総額が大変ふえていくわけであります。
 財政再建に陰りが生じては困るなというふうに思っております。このことを最後にお尋ねして、質問を終わりにしたいと思います。

○木内財務局長 退職手当につきましては、職員の年齢構成の大きな山である五十二歳前後の職員が退職を迎えるまで増加を続けまして、十九年度には、現在の二倍近い退職手当の支払いが発生すると推計されております。
 財政再建推進プランでは、退職手当など今後増加する経費を見込んだ上で、十五年度までに巨額の財源不足を解消することを目的としております。
 今後とも、さらなる内部努力や施策の見直しなど、プランに掲げた目標達成に向けて取り組んでまいります。

○清原委員長 矢部一委員の発言は終わりました。

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