東京都議会予算特別委員会速記録第四号

   午後六時四十五分開議

○石井副委員長 休憩前に引き続き委員会を開会いたします。
 曽雌久義委員の発言を許します。

○曽雌委員 初めに、東京都の航空政策についてお伺いしたいと思います。
 平成十二年度の予算案では、航空関係予算といたしまして、東京における空港機能に関する調査というものが計上されておりますけれども、この調査では、羽田空港関係でどのような調査をしようとしているのか、概要をご説明いただきたいと思います。

○成戸東京都技監 平成十二年度予算としてご提案いたしております、東京における空港機能に関する調査では、羽田空港の容量拡大策や、これに伴う課題などにつきまして、都の立場から調査をするものでございます。

○曽雌委員 羽田空港における空港容量の拡大というのは、国際線の直接乗り入れを実現するためにも、極めて重要な課題であるというふうに認識をいたしております。夜間、早朝の時間帯に限らずに、昼間に国際定期便が就航できるように、ぜひ来年度の調査におきましては、さまざまな角度から羽田空港の容量拡大策について調査をしていただきたい、このことを要望しておきます。
 次にお聞きしたいのは、今後空港に関する調査を実施いたしまして、航空政策に取り組む東京都の基本的な考え方、政策、こういったものが明らかになってくるんだと思っておりますけれども、今後、東京の都市づくりの政策の中で、航空政策をどのように位置づけをしようというふうに考えておられるのか、お伺いいたします。

○成戸東京都技監 東京の活力の向上には、一貫した航空政策が不可欠でございます。
 東京都では、来年度に実施をいたします調査結果などを踏まえまして、首都圏全体を視野に置き、空港機能の充実や空港への交通アクセス強化などに取り組むための航空政策基本方針を取りまとめてまいります。この方針に基づきまして、東京構想二〇〇〇や東京の新しい都市づくりビジョンにおきまして、航空政策を重要施策の一つとして位置づけることとしております。

○曽雌委員 期待をしながら見守っていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 ところで、昨年の秋に韓国で開かれました日韓の閣僚懇談会におきまして、日韓共催のワールドカップが開催されます二〇〇二年を、日韓国民交流の年と、このように位置づけをされた、このように聞いております。その交流事業の柱として、成田―ソウル間のシャトル便を運航させることで合意をしている、このように聞いておりますけれども、私はこのような近距離国際シャトルやチャーター便こそ、羽田空港を活用すべきであるというふうに考えております。
 知事は、学生時代、サッカーもやっておられたと聞いておりますし、大変造詣が深いと思いますので、いわゆるサポーターの方たちも大変に期待していることではないかと思っておりますが、知事のお考えをお聞きしたいと思っております。

○石原知事 実は我が功を誇るつもりはございませんけれども、日韓共催のワールドカップということで、それを踏まえて、できるだけ早期に、いろんな交流もあるでしょうし、たまたま向こうの金浦空港が国内線の専用空港になりまして、国際線は仁川の方に移るようでありますから、羽田を国際化していく一つのステップとして、日中もシャトル便を飛ばしたらどうだということを、私、就任早々あるところで話しまして、ある会合で会った韓国大使にその話をしまして、それが伝わって、経団連のいろんな報告の中で、経済活性化の中の一つとしてそれも取り上げられました。
 ですから、ワールドカップの開催を待たずに、私は、できれば今年度あたりから便数をふやすような形で、わずかな距離の隣国でありますし、また非常にこのごろ、若い世代が過去の歴史を超えて日本の新しい風俗に興味を持ち、そういった文化の交流もありますので、私は、やっぱり成田経由で行けばべらぼうに時間がかかることですから、できるだけ早急に政府に持ちかけて実現したいと思っております。

○曽雌委員 大変前向きに力強いご答弁をいただきまして、うれしく思っておりますが、ぜひ今の知事の決意が一日も早く結実されるように、ご努力をいただきたいと思っております。
 知事は、今回の都議会の施政方針演説で、羽田空港の有効活用など首都圏の増加する航空需要に対しまして、都の基本的な取り組み方針を策定するということを明らかにされたわけでございます。東京から日本を変えていくんだということで、日ごろから知事は、その主張のもとで戦いを進めておられますけれども、ディーゼル車対策などのように、少しずつ苗が育ちつつあるものもあるように思っています。ぜひ羽田の国際化につきましても、積極的に取り組んでいただけるようにご要望しておきたいと思っております。
 次に、学習障害、LD児の問題についてお伺いしたいと思います。
 LDは、日本における調査研究の歴史が浅くて、確定された判定基準というものがいまだありません。LD児者は、いわば制度の谷間に置かれている状態にあるわけであります。過日、私たちは、全国LD親の会、LD親の会「けやき」、同じくにんじん村の代表の方々から陳情を受ける機会がありました。私は、LD児者の多くは、適切な教育と援助によりまして自立をし、社会に貢献できる人材となり得るものと、このように考えております。
 そこで、本日は、社会人になった後の問題と家庭における親の不理解の問題について触れておきたいと思います。
 全国LD親の会では、「ここで働かせて下さい」と題する、このようなパンフレットをつくっているわけであります。LD児が職場で抱える問題が余りにも多いということがこの中に記されておりますけれども、器用さに欠けるために、怠惰であるとか、仕事が遅い、このように叱責をされたり、環境の変化になかなか追いついていくことができない、仕事の処理がなかなかできないというような例が掲げられているわけでございます。
 そこで、現在は、教育庁を中心にいろいろと啓発活動をやっていただいておるわけでありますが、今後は、広く社会一般でのLD児問題への理解の普及を図っていく、そのような取り組みが必要だというふうに考えております。これからは、就学前、学校卒業後も視野に入れていただきまして、LD児の成長過程に応じた日常生活上の諸問題に対応するために、児童相談所、保健所、そして教育相談所、これらの強化を進めていくべきではないか、このように考えておりますが、関係局長からそれぞれご答弁をいただきたいと思います。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 子どもに関するさまざまな相談に応じます児童相談所では、学習障害児に関しましても、相談内容に応じて関係機関と連携をとりながら、その保護者に対しまして、子どもとのかかわり方の指導や医療機関の紹介などを行っているところでございます。
 今後とも、職員の学習障害児に関する理解を促進し、より適切な対応ができるよう努めてまいります。

○今村衛生局長 衛生局では、区市町村の保健医療従事者への研修等の際に、学習障害に対する正しい情報を提供するとともに、東京都の保健所等においても、直接保護者の相談に応じるなどの取り組みを行っております。また、区市町村においては、三歳児健康診査などの機会を通じまして、学習障害を含む疾病の早期発見に努めるとともに、LD児の日常生活上の諸問題等についても相談に応じております。
 今後とも、区市町村との緊密な連携のもとに、LD児への支援に努めてまいります。

○中島教育長 都教育委員会におきましては、教育研究所に設置しております総合教育相談室におきまして、来所相談やアドバイザリースタッフの派遣による学習障害児の発達段階に応じた教育相談を実施してきております。
 今後とも、電話相談や来所相談等による情報提供や助言等の教育相談体制の充実に努めてまいります。

○曽雌委員 それぞれ関係局長からご答弁をいただきましたけれども、特に医療の側面からどのような支援ができるのかなということが私、気になっておりますが、これについて衛生局で検討をしていただくことはできますでしょうか。

○今村衛生局長 学習障害児に対する医療は、現在、薬物による治療や作業療法、言語指導等により行われており、東京都におきましては、小児精神病院である梅ヶ丘病院や多摩療育園等の肢体不自由児施設で実施しております。
 今後とも、学習障害児一人一人の特性に応じた適切な医療の提供に努めてまいります。

○曽雌委員 LD児者の就労機会の拡大が今大きな課題になっていると思いますが、そのために、ハローワーク、公共職業訓練施設などの職員に対する研修、育成、そしてまた、受け入れていただく企業に対するLD児に対する理解というものが進まなければ、雇用促進につながらない、このように考えておりますが、それぞれについてどのように対応していただけるでしょうか。

○大関労働経済局長 いわゆる学習障害児等につきましては、障害の特性や就労上の問題点等が必ずしも明らかになっていないというのが実態でございます。現在、国の認可法人でございます日本障害者雇用促進協会で、この具体的な対応策のための調査研究が進められている、このように聞いております。
 お話のとおり、就労機会の拡大のためには、関係者の理解が必要であるということから、ハローワークや公共職業訓練施設等の職員に対する研修を行い、学習障害児等についての理解を深めていくとともに、企業に対しましても、雇用促進への理解が進むよう周知、啓発に努めていきたいと考えております。

○曽雌委員 今回陳情を受けました際に、ある青年から手紙を私どもは手渡されました。この青年は幼いころにLD児でありまして、その後、みずから自覚をして、くじらの会という会に入りまして、LD問題にかかわるサークルに入って頑張っている青年でございます。その青年がくれた手紙の中に、このようにあります。
 私には同じLDの友達がいますが、両親が学歴主義だったので、親の愛を受けられず、子ども時代は本当につらかったという人もいます。LDは、児童虐待の被害を受ける危険が非常に高い子どもたちですと、このように、みずからが大きくなってLDだったということがわかった青年が窮状を訴えておるわけでございます。
 親のLD問題への無認識というものが子どもの虐待につながっていくんだという、こういう私たち一瞬びっくりするような指摘があったわけでございますが、この指摘を放置しておくことはできないというふうに思っております。
 また、LDに関する講演会で、LD児を担任している教師から、親にLD児であるかもしれないと話をしても、うちの子どもは違うのでという一点張りで、子ども本人が人間不信になってしまっている、こういう報告もあったというふうに聞いております。改めて家庭における意識の啓発、普及の必要性というものが浮き彫りになっているわけでございます。
 東京都は、教育、労働、就労、福祉、医療の各分野が相互に緊密に連携を図りながら、家庭はもちろん、社会一般におけるLD問題への理解、認識の啓発に努めるとともに、検討会等を早期に設置をすべきではないか、このように考えますが、ご所見を伺います。

○中島教育長 ご指摘がありましたとおり、家庭や一般社会における学習障害児者につきまして、その理解、啓発は重要である、このように考えております。このため、学習障害児者につきましての情報交換を行う関係各局による連絡会を早急に設置し、共通理解を深めるとともに、理解、啓発のための研究会につきましても協議してまいります。

○曽雌委員 冒頭申し上げましたように、制度の谷間の中で頑張っている人たちでございますので、ぜひ温かい手を差し伸べていかなきゃならぬと思っておりますので、今ご答弁にありました研究会等についてもぜひ早期に立ち上げをしていただきたい、このようにお願いしておきたいと思っております。
 次に、大きな社会問題になっております児童虐待について触れておきたいと思っております。
 さまざまな警鐘が鳴らされながらも、警察庁の報告によりますと、昨年一年間に摘発された児童虐待事件は百二十件で、死亡者は四十五人に上っております。児童虐待への積極的な対応を図る上で中心的な役割を果たすのは、児童相談所だというふうに考えております。
 虐待を早期に発見をして、問題に適切に対応していくということが今求められておりますので、お伺いいたしますが、昨年の第四回定例会において、我が党の代表質問で、知事は、児童相談所の体制強化と専門性の向上に積極的に取り組む、このように答弁をしておられます。また、福祉改革ビジョンでは、急増し深刻化する児童虐待をなくすために、虐待に機動的に対応できる体制を整える、このように述べられておりますけれども、具体的にどのような方策を講じるのでしょうか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 児童相談所で受けております虐待に関する相談件数は、平成十年度七百十四件となりまして、平成六年度の約三倍以上増加している状況にございます。そこで、平成十二年度から、新たに児童相談センターに児童虐待対策の専管組織を設置し、迅速な対応が必要なケースや困難ケースに対しまして、より的確に対処できるよう、体制を強化する方向で現在準備を進めているところでございます。
 さらに、関係機関との連携を強化し、児童虐待の早期発見等をより促進するために、児童虐待対応協力員を各児童相談所に配置することといたしました。

○曽雌委員 しつけのつもりでいたのが暴力に変わってしまっているという父親がいます。また、自分の子どもを愛せない母親がいる。そのことによって小さな命が傷つけられたり、命そのものも奪われてしまっているという、こういう悲しい出来事が、今、東京でも日本全体でも起きてしまっているわけであります。また、幼少期の虐待経験は、その人が親になったときに虐待ということを再生産する、みずからもまたしてしまう、こういう指摘もあるわけでございます。
 そういうことを考えますと、親が家庭という密室の中でひとり悩み、虐待を行ってしまうことのないように、育児に悩んでいる親たちが気軽に相談できる体制づくりというものを、区市町村も巻き込んで早急につくっていくべきではないか、このように思いますが、いかがでしょうか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 地域におきます子育てに関する相談機関といたしましては、児童相談所や保健所を初め、教育相談室、保育所等さまざまな機関があり、それぞれの特性に応じた対応が行われているところでございます。しかし、孤立した子育て環境から親が育児不安に陥り、ストレスが高じて児童虐待を引き起こす事例も指摘されているところでございます。
 都では、子育て中の親同士が気軽に集い相談ができる子育て広場事業や、地域の子育て支援ネットワークの中核となる子ども家庭支援センターの設置促進につきまして、引き続き区市町村を積極的に支援してまいります。

○曽雌委員 知事が子育てをしておられたころは、こういった児童虐待というのはなかったのではないかというふうに思っておりますけれども、最近では非常に多くなっている、こういう実態でございますが、知事ご自身は、この児童虐待の問題についてどのような認識を持っておられるでしょうか。

○石原知事 私も物書きですから、人の作品も含めていろいろなものを読みますが、現代文学の中にかなり数多く、異常な性格を持った主人公が、実は幼児のころ受けた虐待というものによってあるトラウマをつくられて、それがその人の人生を狂わしたというような、そういう例が非常に多くございます。
 これは決して小説の上での設定だけじゃなくて、私は、やっぱり現実にそういう事例が洋の東西あるから、そういう小説がたくさんでき上がってくると思うのですけれども、いずれにしろ、虐待が、死に至らしめなくても、その後の人生を大きく狂わすというのはたくさんあるわけでありまして、人前でこれを大っぴらにやる人はいないと思うのですけれども、しかし、周囲の目がこういうものにもう少し関心を持って、そういうものの早期発見や、あるいは、それをだれかに通報することで、適切な、迅速な処置をするという、そういう体制が社会的に必要だと思います。
 やっぱりまずこういう問題に一般の市民が強い関心を持つということが必要だと思いますので、そういうことの啓蒙に都も尽くしていきたいと思います。

○曽雌委員 次に、今議会の焦点の一つでありますシルバーパスについてお伺いいたします。
 我が党は、高齢者の社会参加を促進する上で、シルバーパス制度の意義は極めて大きい、このように認識をし、存続に向けて取り組んできたところでございます。東京都は、当初六千円の発行に要する費用を考えていた、このように聞いておりますが、しかし、その後、我が党のたび重なる申し入れで、最終的に千円、一カ月にしますと八十三円ということにしたものでございます。
 また、所得制限が強化される人につきましては緩和措置を行うこととし、有料パスにつきましては従来どおり二万五百十円に据え置かれているのでございます。
 シルバーパス削減反対を叫ぶだけで、具体的提言や財源確保のための努力を何もしない、そのまま放置をしておきましたらば、シルバーパスの存続は困難であり、発行に要する費用が千円どころか、存続そのものが危ぶまれる瀬戸際の状況にあったと私は受けとめております。
 ところで、昨日の当委員会で、発行に関する費用七億円が都の歳入にならないのではないか、担保されないという話がありましたけれども、どのような仕組みでどう活用されるのか、お答えいただきたいと思います。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 七億円の使途でございますが、今回のご負担いただきますバス事業の収入につきましては、パス交付者のバス協会等に収入としては入るわけでございますが、私どもは今回、シルバーパス見直しに当たりまして、バス事業者が弾力的な運営ができる、こういうことも大きな視点の一つでございます。そして、その見直した額につきましては、新たな展開に振り向けていただくということでございます。
 したがいまして、例えばパスの交付方法を変更しまして、二百カ所のパスの交付場所を配し、そこに高齢者を活用して、そこで働いていただく。そういうことによりまして、交流とか、そういうものが大変行われるというふうに考えております。また、コミュニティバスやノンステップバスの購入など、さらには、高齢者の知識、経験を活用した社会参加の仕組みづくり、こういうものとセットで今回の見直しを、ご審議をお願いしたいというふうに考えております。

○曽雌委員 そうしますと、事業主体のいかんを問わずに、また、交付に要する費用の収入先がどこになろうとも、高齢者の雇用に活用される、このように受けとめてよろしいですね。
 ところで、先ほど答弁にありましたが、移動手段の確保については、高齢者のためのノンステップバスの導入であるとか、バスが走っていない地域にコミュニティバスを走らせる際に、包括補助等で財政支援を行うというふうに聞いております。
 そのうち、コミュニティバスについて、今日までどれだけの区市町村等から相談が寄せられておりますでしょうか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 今回の高齢施策の見直しの目玉の一つで包括補助があるわけでございますが、区市町村の方にも大変ご理解いただいておりまして、私どもが思っているよりは、交通機関が不便な地域を中心に、既に三十四区市町村からぜひ支援をしてほしいという要望が寄せられているところでございます。

○曽雌委員 かなり区市町村の関心が高いということになろうかと思います。このコミュニティバスの導入によりまして、高齢者を初めとする都民の皆さん方が、行きたいところに容易に行けるようになるということで、保健医療施設や学校などとの地域内の往来というものが非常に活発になってくるであろうというふうに思います。また、このことで商店街も活性化するなど地域にさまざまな効果というものが期待ができる、このように思いますけれども、このコミュニティバス導入によってどのような波及効果が期待できるというふうに高齢者施策推進室では考えておられるでしょうか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 コミュニティバスにつきましては、地域住民の利用しやすさに配慮しまして、バス停の間隔を短くしたり、地域内をきめ細かく走行するバスでございます。導入の効果といたしましては、高齢者が気軽に出かけることができるため、住民間の交流や地域内での買い物の機会がふえるなど、商店街の活性化や高齢者の社会参加がより促進されること等が考えられます。またさらに、運転手にOBを起用するなど、高齢者の就業の機会の拡大も期待できるというふうに考えております。

○曽雌委員 聞くところによりますと、平成十三年度から乗合バスの事業については規制緩和される。それで、バス事業者は、採算が合わなければ、その路線から撤退をしても構わないということになるというふうに聞いております。そうなりますと、ますますコミュニティバスの必要性というものが高まってくるのではないかというふうに思いますので、ぜひ取り組みをしっかりとしていただきたいというふうに思っております。
 次に、十二年度予算案に百億円計上されております特別養護老人ホーム等経営支援事業についてお伺いしたいと思います。
 一つは、この経営支援事業について、関係者とどのような合意をし、まとめたのかということでございます。私たちは、この支援事業につきまして、利用者やご家族、さらには特別養護老人ホームで働いている、障害を持つあんまマッサージの方々や施設の関係者から、このような事業を予算化してくれたということで大変に喜ばれておりますし、知事自身も、大変に優しい誠実さを持った知事だということで、そういう評価が私のところにも届いております。
 それらを考えたときに、いわゆる関係者との合意、まとめはどうだったのかということが一点。
 もう一点は、利用者サービスを向上させるための具体的な施策はどのようなことを考えているのか、あわせてお伺いしたいと思います。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 特別養護老人ホームは、介護保険制度のもとでは、介護報酬による経営が基本でございます。自立に向けて経営改革に取り組むことが求められているところでございます。このため、都では、都議会の提言を踏まえまして、特別養護老人ホームの代表者と協議会を設置し、これまで十二回の協議と二回の実態調査を実施いたしました。
 経営支援事業につきまして、本協議会では、利用者サービスの維持向上、介護保険制度への円滑な移行、設置環境の整備の三つの大きな支援策を柱として取りまとめ、特別養護老人ホームの理解を得ているところでございます。
 今後、各施設が本事業の補助額を推計できるよう、補助の基準を早急に示していきたいというふうに考えております。

○曽雌委員 次に、この予算委員会でしばしば論議されております福祉の見直し論について伺っておきたいと思います。
 今、東京都の財政は、長期の不況によりまして大変に厳しい、財政再建団体に転落をしてしまうかもしれないという非常にぎりぎりの中で都政が運営されているわけでございます。これが再建団体にもしも転落をしてしまえば、福祉はおろか、すべての施策が有無をいわさずにすべて一律に削減をされてしまうという大変な事態がやってくるわけでございます。
 そういう事態を何としても避けたいということで、知事初め理事者の皆さん方は、例えば歳入確保策の一つとして外形標準課税の導入等を考えたり、いろいろと戦っておられるわけでございます。いかにして都民のさまざまなニーズにこたえて、二十一世紀の夢と希望の持てる都政というものをつくり上げていくか、これが今、行政の皆さん、そして、私たち都民の代表として議員をさせていただいている者の果たすべき大きな役割ではないか、私はこのように受けとめております。
 そこで、具体的に、平成十二年度予算案の中で福祉関係予算はどのように編成をされ、また、見直した結果生じた財源はどのように生かされているのか、施策展開の具体的な内容とあわせて数値で示していただきたいと思います。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 今回の見直しでございますが、福祉局関係と高齢者施策関係で四百二十九億の見直しをしまして、新たな展開で四百四十一億の予算措置をしたところでございます。

○曽雌委員 見直しの中身ですけれども、今回の見直し案は、低所得者に対する配慮というものがなされていない、こういう議論がありますけれども、それは事実でしょうか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 今回の見直しによる新しい所得基準は、国において税をもって支給している特別障害者手当に準じております。その水準は、扶養家族なしで年収四百九十二万円程度、扶養家族三人の方で年収六百三十五万円程度でございます。その新しい基準は、平成八年度の社会福祉基礎調査で、都の生計中心者の平均収入は五百九十四万円、六割を超える人が年収六百万円未満で、公平性などの観点から合理的であるというふうに考えております。
 また、都の手当が受けられなくなっても、一定の所得水準までは国の手当や年金が受給できるということでございます。医療費助成の一部自己負担につきましても、老人保健制度で高齢者が負担できる水準でございます。その上で、低所得者につきましては、心身障害者医療費助成及びひとり親家庭医療費助成におきまして、これまでどおり通院、入院とも診療費負担はなしとし、入院時の食事代のみを負担していただくこととしております。
 今回の見直しの内容は、全体として合理的で妥当なものであり、一般的に無理のない範囲、負担の公平の観点からもご理解いただけるというふうに考えております。

○曽雌委員 もし仮に東京都が財政再建団体に転落をしてしまったとするならば、都民生活にはどういう影響が出てくるでしょうか。

○木内財務局長 仮に東京都が再建団体に転落した場合はどうなるかということですけれども、昨年十月に検討メモを取りまとめたわけですけれども、その中で申しているごとく、福祉、教育分野などさまざまな事業のうち、国の水準を上回るサービスや都が独自に行う事業などについて、国の強い指導監督のもとで廃止を含めて見直さざるを得なくなります。その結果、都民生活に密着した行政サービスの水準を大幅に引き下げることは避けられず、都民生活に重大な影響を及ぼすことが懸念されるわけです。
 したがいまして、財政再建団体への転落は何としても回避しなければならず、そのためには、東京都がみずから主体的な判断のもと施策の見直しを行い、新たな施策展開を行い得る財政体質をつくり上げていくことが必要であるというふうに考えております。

○曽雌委員 そういうぎりぎりの選択の中で都民生活をいかに守るかという戦いを今しているわけであります。
 そこで、皆さんごらんになったと思いますけれども、知事もごらんになったと思いますが、こういうビラが出ています。これは共産党が出しているビラです。この中で、このままでは東京の福祉はなくなるとか、福祉軒並み切り捨てとか、ここにありますが、百八十万人から福祉根こそぎ切り捨てをするとか、こういうことが宣伝をされているわけであります。
 余りに一方的ではないかというふうに私は思いますが、この点についてはどうでしょうか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 このままでは東京の福祉がなくなるということでございますが、福祉改革は、活力に満ち安心して暮らせる東京を築くための改革でございます。東京の福祉は、全体としてますます充実していくものであり、福祉がなくなるという事実はございません。
 福祉軒並み切り捨てについてでございますが、見直しで生み出した財源は、さきにご答弁しましたが、在宅サービスを中心とした福祉サービスの充実のために活用してまいります。
 百八十万人から福祉根こそぎ切り捨てにつきましては、百八十万人の根拠は必ずしも明確ではございませんが、私どもは、制度を維持した上で、一部負担を導入する対象者の人数を含めたものを単純合計したものかというふうに推測しておりまして、必ずしも適切ではないというふうに考えております。
 内容につきましても、先ほど申し上げましたとおり、所得基準の設定や一部負担の導入について、合理性の確保や低所得者への配慮にも意を用いているところでございます。一部負担は、老人保健制度において高齢者が負担し得る水準のもので、無理のない範囲の負担であり、その上で、低所得者についても、通院、入院とも従来どおり診療にかかる負担はなしとしました。また、入院したときは食事代のみとする措置を講じたものでございます。

○曽雌委員 福祉の切り捨て批判というものは全く的外れではありませんか。私、こう思います。大事なことは、今日の厳しい財政状況や、これに懸命に対応する東京都や、また私たちの努力に全く触れておらず、こうした表現は、ただ都民に不安と混乱を与えるだけであります。
 私は、これからの東京の福祉再構築に当たりまして、都民の理解の妨げになるというふうに思いますけれども、知事はいかがでしょうか。

○石原知事 まさに都政にとって、都民にとって迷惑千万なものでありまして、こういう短絡的な、意識的な、ためにする表現というのは、都民の行政に対する正確な理解を阻害して、単に一部の限られた人たちに対するおもねりとしか私は思えません。大体これを見て、根こそぎ切り捨てなどというのは、日本語に対する理解というか、能力を欠いた人々の表現でしかないと私は思います。

○曽雌委員 今回の福祉施策の見直しでは、負担水準の合理性や低所得者への配慮がなされ、新しい施策の展開がなされている事実が全く隠されているわけです。都民の限られた税金を有効に使いながらさまざまな都民要望にこたえていくためには、将来の世代に対する責任ある対応というものがなされなきゃならない、このように思いますけれども、知事のご所見を伺います。

○石原知事 おっしゃるとおりでありまして、世の中は非常に速い流れで変わっていきつつあります。そういったものに対応しながら、変えるべきものは変え、守るべきは守っていくのが私は正しい行政だと思っております。今回の福祉に関する予算も、そういうスタンスで編成いたしました。

○曽雌委員 よく聞いてもらいたいと思いますが、財政再建団体に転落寸前の状況というものは、今回だけではありません。過去に美濃部都政の時代にもあったわけであります。そのとき都は、国に頭を下げて、特別の起債許可を申請せざるを得なかった、こういう状況にあります。
 いわゆる財政健全化計画を提出し、その中で、高等学校、大学の授業料や分娩料の値上げ、そして、下水道料金二七九%、水道料金一五九%の値上げについて、当時与党であった共産党も賛成しているわけであります。
 しかるに、共産党の皆さんは、こうした都政の厳しい現状や、これから脱出するための関係者の血のにじむような努力を一顧だにすることなく、この真実を伝えるわけでもなく、むしろ事実と相反する情報を流し、都民に多大な不安を投げかけているわけであります。
 政治は責任であります。誠実であります。私は、行政の皆さんも、また私たち議員も、真実をありのままに伝える責任があると思っています。その姿勢がなければ、議員としての戦いはできないわけであります。そうした前向きの姿勢というものが全く見られないことは残念であります。
 しかも、都民の立場に立って反対をしているのかといえば、かつて自分たちが与党の時代は、都財政を破綻させ、あげくの果ては数々の料金値上げにもろ手を挙げて賛成をしているではありませんか。共産党には、都民の利益を守るという一貫性が見られません。また、財政再建のための努力も全く見られない。こういう状況では、都民の信頼を得ることはできないと思っております。
 私ども公明党も、福祉を守る党として、弱い立場の人々を守る戦いを今日まで行っております。しかし、厳しい財政状況を認識しながら、かつ、さまざまな福祉ニーズにこたえていくためには、あえて誤解を恐れず、新しい時代にふさわしい福祉の再構築に、今、全力で取り組んでいるわけであります。
 最後に、知事はどういう見解をお持ちになっておられるでしょうか。

○石原知事 何に対して……。

○曽雌委員 今私が述べたことに対しての……。

○石原知事 共産党に対するご批判だと思いますけれども、私はいかにも同感でございます。共産党の御都合主義、そのために使われるデマゴーグ、これがいかに陳腐で、かつ役に立たないものであるかということは、ソビエトなり中国の歴史が証明しているわけでありまして、私自身が、かつて……(発言する者あり)黙って聞きなさいよ。かつて、学生時代、六全協という共産党の大豹変を目にしてまいりました。
 あのころまでは、火炎瓶をつくり、パイプを切った小銃で暴力革命をしようとして、私の仲間の、気はいいけれども頭の悪い連中が党員に入党して、結局、六全協で挫折して、三人ほど寮で自殺した男がおりました。
 そういうものを振り返りますと、私はやはり、その体質が依然としてこの平時にも続いているということに、まことに憂慮を感じるものでございます。(発言する者多し)後でゆっくり議事録を読んでおいてくれ。

○曽雌委員 最後に一点だけお聞きしておきたいと思っております。
 城南島海浜公園の整備の関係でございますが、現在、大田区の臨海部には東京港野鳥公園や城南島の海浜公園などが整備をされておりまして、多くの都民に大変喜ばれております。とりわけ野鳥公園は、本年度、リニューアルオープンをしまして十年という記念すべき年を迎えているわけです。
 この公園は、知事もご案内だと思いますが、人為的に野鳥の生息環境を整備したものでございまして、大都市では先駆的な存在であり、自然環境が回復し、我が国でも有数の野鳥の楽園になっているところでございます。
 東京港野鳥公園の干潟には、毎年多くのシギ、チドリ類が渡ってきておりまして、この渡りのルートは、広くアジア・太平洋地域に及ぶというふうにいわれております。ラムサール条約締約国会議で支持されまして、東アジア・オーストラリア地域シギ・チドリ類重要生息地ネットワークが創設をされて四年になりますけれども、この間に、既に九カ国、二十五カ所の生息地が参加をして、必要な情報交換が行われています。
 国際的な協力のもと、渡り鳥の保護を行っているこのネットワークは、具体的な地球環境保護の一つのあり方として大変に意義があると思っております。
 そこで知事にお伺いしたいんですが、今や、日本を代表する野鳥の生息地となったこの東京港野鳥公園におきましても、ぜひともこのネットワークに参加をし、野鳥保護活動をさらに充実をさせていただきたい、このように思いますが、ご見解を伺います。

○石原知事 あの野鳥公園、よく存じておりますが、ラムサール条約に、東京もまた応募いたしまして、このネットワークに参加をし、そして、この公園も東京の新しい名所に仕立てていきたいと思っております。

○石井副委員長 曽雌久義委員の発言は終わりました。

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