東京都議会予算特別委員会速記録第四号

○三原副委員長 くぼた光委員の発言を許します。
   〔三原副委員長退席、植木副委員長着席〕

○くぼた委員 私は、都営住宅の減免制度の見直しについてまず伺います。
 初めに、制度の基本的な考え方について、何点かまとめて伺いたいと思います。
 まず、制度の改定による増収額は、平年度で幾らになるでしょうか。

○戸井住宅局長 減免制度の見直しに伴い、平年度ベースの増収見込み額が、四十から五十億円程度の増収となります。

○くぼた委員 次に、減免世帯の数と、そのうち免除世帯の数、さらに、制度改定によって免除が受けられなくなる世帯はどれぐらいになるでしょうか。

○戸井住宅局長 昨年三月末時点で減免を受けている世帯は約四万七千世帯、そのうち免除世帯は約四万世帯でございます。制度改正によりまして、既免除世帯のうち、減額に移行する世帯は、約三万二千世帯と推計しております。

○くぼた委員 免除が受けられなくなる世帯が三万二千世帯ということですね。
 では、制度の改定後、免除の新規受け付けはどうなるんでしょうか。

○戸井住宅局長 見直し後、新規に免除を申請する場合ですけれども、免除は、災害により容易に回復することが困難な損害を受け、生活困窮の状況に至った場合と、病気による入院加療のため、生活保護法による住宅扶助を停止された場合に適用されることとなっております。

○くぼた委員 もう一度伺いますが、免除の継続というのはどうなるんでしょうか。

○戸井住宅局長 免除が継続になるというケースでございますけれども、先ほど答弁いたしましたとおり、新規に申請する免除は、災害の場合と、それから、住宅扶助の停止された場合ということでございますが、免除世帯のうち、著しく収入が低く生活に困窮する者という方につきましては、一定要件ーー一定要件というのは、例えば五年間の期間、この満了の時点で、制度の運用状況等を勘案して総合的に見直しますという、そういう一定要件がついてございます。

○くぼた委員 新規申請者への免除は、今ご答弁がありましたように、災害の場合と住宅扶助を停止された場合だということでした。
 今、幾つか制度の根本にかかわる問題をお答えいただきましたが、これが都民にとってどういう影響を及ぼすのかということでまとめてみますと、まず第一に、制度改定の四月以降、今、都の独自の一般減免を受けている人以外は、たとえ免除を受けられる条件を満たしていても、申請することができない。つまり、門前払いになるということですね。それは、現在都営住宅に住んでいる人だけじゃなくて、今後、都営住宅にやっとの思いで、厳しい競争倍率、応募倍率の中で、やっとの思いで入居する人たちも同じで、免除の道はもう閉ざされてしまうということになるわけです。これは大変なことだと思うんですね。同じ収入水準で、同じ住宅の条件であっても、一方では免除を受けられる、一方では受けられない、こういう不公平が、同じ居住者の中で生まれるということになります。
 それでは、住宅局長は、災害と生活保護に関連する免除が残るというふうに今ご答弁なさいましたが、災害による免除、それから生活保護に関係する免除を受けている世帯は、それぞれどれぐらいいるんでしょうか。

○戸井住宅局長 災害による免除でございますが、平成十年度の場合でございますけれども、実績はございません。
 また、これも平成十年度中でございますけれども、病気による入院加療のため、生活保護法による住宅扶助を停止され、免除の適用を受けた世帯は、四百六十一世帯でございます。

○くぼた委員 つまり、災害は適用事例がない。それから、生活保護に関連する免除は、今、四百六十一件ということです。しかも、この制度は、国の法律に基づくものなわけですね。
 ここに住宅局がつくった説明用の資料がありますけれども、この三ページに、免除の廃止、すなわち、災害などの特別の事情に基づく著しい生活困窮に限定と書いてあります。今いった二つの免除が、免除の原則廃止の例外ということで紹介をされています。まさに都の一般免除とは別の例外措置なんだということなわけであります。
 そしてもう一つ、免除制度の原則廃止の例外措置として、先ほどご答弁あったように、既減免世帯のうち、七五%減額適用世帯で、かつ著しく収入が低く生活に困窮する場合ということがいわれたわけですけれども、これも、この対象になる世帯は、最初のご答弁のように、四万世帯のうち、三万二千世帯が排除される。したがって、残り八千世帯ということなわけです。
 それでは、この規定の適用期間は五年間なんですが、住宅局長は、昨日のご答弁で、期間終了の時点で、運用状況を勘案し、見直しを行うというふうにいわれました。五年後に免除を必ず継続するということを約束できるんですか、できないんですか、この点をお答えください。

○戸井住宅局長 まず、五年間は継続いたしまして、五年たちましたら、制度の運用状況ですとか社会経済情勢の変化等を総合的に判断して、見直しを決めていきたいというふうに考えております。

○くぼた委員 つまり、継続するということはいえないわけですね、今の時点でね。約束できないということなんでしょう。先ほどご答弁いただいたように、平年度の五十億円の増収というのは、この免除の五年の経過措置が終了していること、すなわち、この期限つきの例外規定が廃止されることを前提に計算されたものなわけですよね。したがって、これは財政上はもう決着がついているわけです。ですから、見直しといっても、五年後の保障は何もないということであります。もし違うというんだったら、五年後の期間など最初からつくらなければいいわけです。その方が、今免除を受けて、これから受けられる方も、本当に喜ぶんだというふうに思いますね。
 しかも、高齢者がほとんどの免除ですから、新たな受け付けを行わなければ、一定期間のうちに要するに該当者がいなくなっていくということになります。つまり、制度そのものを自然消滅する、そういうやり方であるということだと思うんですね。こんなやり方をもって、免除が存続などということは到底いえないというふうに私は思います。
 私は、そこで、今回の減免制度の改悪がどれだけ都民の皆さんに深刻な影響を与えることになるのか、そういうことを紹介したいというふうに思います。
 まず、私の住む港区の都営住宅、この場合です。
 私も、この問題が起きてから、改めて区内の都営住宅を訪問して、お話を聞いて回りました。それを聞くにつけ、本当に実態の深刻さを知らされました。それというのは、都心区の港区の場合、応能応益の家賃制度が導入された。そのもとで、基本家賃がほかのところよりぐんと高くなっている、そういう特徴が一つあるわけです。
 八十歳のひとり暮らしの女性の方は、年金収入だけで、現在免除を受けていますけれども、毎日の食費や光熱費に加えて、共益費や自治会費など、毎月、こういうのを払うために、貯金を取り崩して、やっと生活を成り立たせている、そういう状況なわけですね。まさに、この免除の制度があるからこそ生きていけるというのが実態なわけです。私は、これ実際に計算してみたんですけれども、この方は生活保護を受けられるんですよ。ところが、この方の住んでいる部屋は五十平米あるんです。収入では免除が受けられても、五十平米ですから、住宅の要件で免除が打ち切られてしまうということになります。
 しかも、この方がこの住宅に入ることになったのは、もともと住んでいた都営住宅が建てかえになった、それで、移転の際に、抽せんで外れてしまったわけですね。それで、もうしまいに、最後に残った広い住宅に引っ越さざるを得なかったということだったわけです。ですから、免除がなくなれば、ここでは毎月一万円以上の家賃を払っていかなければならなくなるという状況になります。四月からのこういう家賃の支払いと同時に、四月からの介護保険、これの保険料、こういった負担が、合わせれば本当にダブルパンチになってしまうということであります。まさに生活が成り立たなくなってしまう、こういうふうに本当に途方に暮れたお話をされています。
 そこで伺いますが、このような場合はどうすればいいんでしょうか。

○戸井住宅局長 そうですね、まず、いわゆる五年間継続して、そして見直すという制度ですよね。特定の階層ですけれども、五年は継続して、そしてその後見直して、どうするかということを決めるということについてまず申し上げます。新規の方は、そういう方はいらっしゃいませんので。
 つまり、それは、やはり現在そういうゼロの状態で、高齢者が多いと思いますけれども、そういう生活をずっと続けてきた。ですから、一気になくしてしまうというのは、いろいろ問題があるだろうということで、とりあえず五年間継続をしたということでございます。
 それから、要するに、今回の減免制度の見直しで、ちょっと誤解を招いているところがあるかと思いますけれども、確かに場合によっては最終的に家賃が比較的高くなるところはあるかもわかりませんですけれども、都営住宅は何といっても二十六万戸ございます。我々は、やはり適切な形で住みかえていただく。一人の方が三DKに入っているということは、これはどう考えても、都民の感覚から見ても好ましくないわけですね。ですから、その是正、改革も、この減免制度にはあるということをご理解いただきたいと思います。

○くぼた委員 私はとんでもないと思うんですよ。今お話ししたように、狭い部屋を希望したんだけれども、要するに抽せんで外れてしまって、入らざるを得なかったわけなんですよね。しかも、同じような条件の人はたくさんいるわけです。ほかの住宅を紹介するといっても、港区の中には、この免除の条件を満たすような住宅があったとしても、確かにありますけれども、本当にあきがほとんどないわけですよ。それでも移れということになれば、結局ほかの区や市に出ていかなければならなくなるということになるんです。
 知事、ご存じかどうかわかりませんけれども、お年寄りにとって、引っ越し自体、それによる、住環境が変わることによってどれだけ負担になるか、こういうことをお考えになったことがあるかどうかと思うんですね。
 私、実際に、この都営住宅の建てかえのとき、見ていますと、建てかえるために仮移転するわけですけれども、移って、引っ越しの過労で病気になられた方、入院された方、あるいは本当に亡くなってしまった方、そういう状況が実際にあるわけです。
 ここに「居住福祉」という岩波新書の本がありますけれども、この中で、継続居住の保障が重要だということを述べているんですね。転居が心身に与える影響は全世代にわたるが、その弊害は、居住期間が長くて、生活の地域社会への依存度、密着度が高いほど大きいんだと。だから、高齢者や子ども、主婦などに深刻な問題としてあらわれる、こういうふうに指摘しております。
 また、国際長寿米国センターの理事長、ロバート・バトラーという博士、この中で紹介されているわけですけれども、「老後はなぜ悲劇なのか?」という本の中で、老人を住みなれた環境から追い立てることは、実際に身体と感情の危険を伴う、多くの調査が、引っ越し、特に突然の引っ越しは、老人の場合に病気と死亡の起爆剤になりかねないと、お年寄りの引っ越しの弊害を説いておられるわけです。
 お聞きしますけれども、こういうさまざまな調査があるわけですけれども、それでも引っ越せということなんでしょうか。

○戸井住宅局長 引っ越しで、確かに、今までお住まいの住まいから離れることはあります。しかし、そもそも、現在、都営住宅、相当の数、年間三千戸以上の建てかえを進めております。また、スーパーリフォームを進めておりますけれども、すべて、現在お住まいのところからどこかに移転していただく。今現在は、なかなか空き家が見つかりにくくて、他の区にご協力をいただくというケースも多々あるんでございます。したがいまして、もちろんそれは地域の中でできる限り生活が存続できれば、それにこしたことはございませんけれども、やはり貴重な都民の財産でありますので、それをよりよい住宅に建てかえる以上、その程度のご協力はぜひお願いしたいというふうに考えております。

○くぼた委員 とんでもないと思いますよ。要するに、家賃を払えなければ、出ていくか、ほかに移れということですよ。移るということは、やはりそういう障害が起こるということになるわけですよ、今お話ししたようにね。
 ここに、福祉局のつくった、高齢者の生活実態を調査した東京都社会福祉基礎調査報告書があります。この中で、高齢者の住みかえに関する調査が示されているわけですけれども、そのうちの、住みかえ希望の有無について、住みかえを考えていないと答えた人が八割を超えるんですね。しかも、年齢が増すごとにその比率は高くなっていくということであります。
 それから、もう一軒、私が訪ねた、月収二十万のある五人家族の場合です。高齢世帯でも障害世帯でも母子世帯でもないために、免除は当然打ち切られる。最低でも二万四千円の家賃になるといいます。小学校と保育園に通う三人のお子さんがいるわけです。そういう中で生活はぎりぎりなんですね。この方は、本当に収入が上がれば、それなりの家賃を払うのは当然だというふうに思う、しかし、今の収入でどうやって家賃を払えというのか、こういうふうにいって絶句されてしまいました。何を削ろうかということを頭の中で考えられているんですね。で、いよいよになったら、子どもにかかるお金を削らなきゃならない、こういうふうにいっておられました。
 また、七十代のご夫婦は、ご主人が寝たきりになって、奥さんが介護をしております。収入は、老齢年金と老人福祉手当しかありません。今回の福祉見直しで、老人福祉手当が廃止される。そうやって一つ一つの生活の支えが外され、その上に介護保険の保険料や自己負担が始まると、本当にもう生活は成り立たなくなってしまう。自殺しろというのか、早く死ねというのかというような悲惨な訴えがされます。
 私は知事に伺いたいんですが、この都営住宅の免除を受けた方たちの多くは、老人医療費助成の廃止や、あるいはシルバーパスの全面有料化、老人福祉手当の廃止など、そういう影響をもろに受ける人たちなんですね。私は大げさな話をいっているわけじゃないんです。このまま免除を廃止したら、豊島区で起きたような、そういう餓死事件じゃありませんけれども、同じような事件が起きかねない、そういう警告をしている人もいるわけなんですけれども、どう思いますか、知事。
   〔発言する者あり〕

○植木副委員長 石原知事、お答えください。

○石原知事 新たな減免制度は、既減免者に対して、収入等の状況に応じ七五%まで減額することとし、さらに、著しく収入が低く生活に困窮する世帯については、一定要件のもとに免除を継続することといたしました。したがって、十分配慮したものとなっております。

○くぼた委員 いや、制度を解説されただけじゃないですか。全くその実態をわかってないと思うんですよ、私。
 いいですか。住んでいる方は、コンビニに行ってお弁当を買ってきて、夫婦で朝昼晩と分けて食べるとか、夕方五時ぐらいから電気もつけずに真っ暗な中で暮らしているとか、そういう大変な思いをしながら暮らしているわけですよ。都は、こういうふうにいうと、生活保護を受ければいいというふうにすぐいわれますけれども、これもとんでもない話だと思うんですね。
 もともと公営住宅というのは、低所得者への家賃の配慮について二つの方法を想定しています。一つは生活保護の住宅扶助、もう一つは減免ということですね。このことを建設省の住宅局が解説した本があるわけですけれども、その中では、生活保護世帯基準以下の収入しかない入居者について、生活保護制度によってすべて対応すべきという考えに立つものじゃないんだというふうにした上で、家賃の減免と生活保護が異なる手続や基準の違いがある以上、両制度が相まって入居者の居住の安定が図られるべきだ、こういうふうにいっているわけです。
 つまり、公営住宅の考え方の中には、低所得者の場合、生活保護と減免という二つの家賃の減免の仕組みが組み込まれているということですね。そして、その減免を行うかどうかの裁量は自治体に任されているということです。
 少なくとも、生活保護基準以下の世帯の人たちが免除を受けられるようにするということは、私は当然の考え方だと思うんです。生活保護の場合は、住宅扶助が支給されるので、家賃負担はゼロになります。同じような収入でも、生活保護を受けていない人については免除を認めるというのが、法の精神に合致するものだというふうに思います。だけれども、みんな生活保護を受けないで頑張っているわけですから、免除制度は、知事がいう、自立・自助を支援する仕組みになっているというふうにもいえると思うんです。
 ここで、東京都生活と健康を守る会が作成した、生活実態実例集というのがあります。これの中をちょっと紹介したいと思うんですが、例えば江東区の方は、夫は昨年の七月に退職しました。がんで、脾臓、胃も取り、食道も取り、あすはどうなるかわからない状態です。それに、これまでかかった医療費の支払いに追われ、国保料が払えなくて滞納しています。夫の年金は月十万、六十六歳の私も雑役のバイトをしながら働いています。幸いにも都営住宅に入れ、免除を受けています。石原プランでは、家賃の免除を廃止すると聞いております。これでは何のために生きているのか、わからなくなります、こういうような声が寄せられているわけです。
 私、福祉局長にちょっと伺いますけれども、国民老齢年金の平均支給額というのは幾らでしょうか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 平成十年度におきます国民年金の老齢年金の平均額は、年額で六十一万七百五十五円となっております。

○くぼた委員 要するに六十一万七百五十五円、月に直すとほぼ五万円ということです。しかも、これは平均ですから、これより低い人も多くいるわけで、本当にこういう方が免除を受けられなくなったら、死活問題になると思うのですね。
 先ほど紹介できませんでしたけれども、本当に生死にかかわる問題だということをいっているわけですよ。知事、この声をどう受けとめられるのか、そのことを私はお伺いしたい。

○石原知事 真摯に受けとめて、総括的に判断いたします。

○くぼた委員 真摯に受けとめるというんだったら、考え直すということも含まれているんですか。全く生活実態をわかっていないということじゃないですか。あなたは庶民の暮らしを本当にわかっていないというふうに思いますね。私は、今問われていると思うんですよ。都知事が、こうした低所得で頑張っておられる方々の痛みを共有できるのかどうか、それが自治体の長として問われていると思います。
 もう一つの問題は、財政難のツケを減免制度にしわ寄せしようとしていることであります。
 財務局に伺いますけれども、財政再建推進プラン、これで掲げた受益者負担の適正化の目標額は幾らでしょうか。

○木内財務局長 財政再建推進プランにおきましては、受益者負担の適正化による財源確保として、一般財源ベースで百五十億円の目標額を掲げております。しかしながら、この目標額は十五年までの目標を設定したものでございまして、どの項目について、いつ、幾ら改定するかということを明示したものでは全くございません。

○くぼた委員 五年間で受益者負担の適正化で百五十億円というふうにご答弁がありました。
 それでは、同じくこの財政再建推進プランの中で、減免制度の見直しについてどのように記述をされていますか。

○木内財務局長 推進プランの中では、使用料、手数料の関係について全体を触れた後、こういう言葉になっております。減免措置については、生活保護法における被保護者や災害の被災者など、客観的な基準に基づくものに限定する観点から、整理や見直しを行っていくという記述でございます。具体的なそれらの適用については、これは七月の時点のペーパーでございますので、その後の検討にゆだねられているものでございます。

○くぼた委員 それで減免が出てきているということですよね。つまり、減免の見直しということが出てきているということですよね。つまり、財政再建推進プランがいっていることは、財政が赤字だから、公共料金を値上げしますよと今ご答弁がありました。いろんな公共料金の値上げとあわせて、都営住宅の家賃も減免見直しますよ、こういうことなわけですよね。
 これも財務局にお伺いしますが、財源対策として、これまでにこのような減免制度を改定したことはありますか。

○木内財務局長 受益者負担の適正化の観点というのは、いわば負担の公平性、公正性、そうしたものの視点から見直すわけでございまして、結果としての財源が確保されるということでございまして、ただ金が欲しいから改定するものという判断ではないと思っております。

○くぼた委員 今、聞いたことに答えていませんよ。財源対策として減免が見直されたことがあるかと聞いたんですよ。ないってことじゃないですか。ないんですよ、これまでも。この中には、巨額の財源不足を解消することが目的なんだと書いてあるじゃないですか。結局、都の本音は、財源対策として減免制度の見直しを行いたいということじゃないですか。
 住宅局は、制度の改定に当たって、減免額の増加により適正な管理に重大な支障が出る、このように改定の理由を説明していました。
 そこでお伺いしますけれども、都営住宅の家賃の収入は幾らで、維持管理運営費が幾らなのか、このことについてお答えください。

○戸井住宅局長 そもそも都営住宅における減免制度の見直しでございますけれども、確かに財政再建プランには書いてございますけれども、住宅局といたしましては、住宅行政といたしましては、財政だから見直したということではございません。もちろん、財政と全然関係ないということではございませんで、これはやはり社会的な不公平の是正という点もございますし、それからさらに、四万世帯もゼロということは、やはり基本的に住宅政策は福祉政策と連携をしなきゃならない、住宅政策は確かに福祉政策と連携していかなきゃならない、そのために努めています。
 しかし、だからといって、住宅政策の減免制度といえども、社会的なセーフティーネットの究極のものではない。究極のセーフティーネットというのは、まさに私は生活保護制度である、そういうように思っております。住宅政策は、あくまでも住宅政策でございます。

○くぼた委員 維持管理費が幾らか、収入が幾らかということを聞いているんですよ。質問に答えないで……。

○戸井住宅局長 失礼いたしました。数字につきましては、平成十年度の決算で説明させていただきますけれども、住宅に関する経費でございますが、支出が、維持管理経費約四百三十四億円と都債の返還額約六百三十三億円とを合わせまして、約一千六十七億円でございます。

○くぼた委員 今、家賃収入はいわなかったけれども、七百九十億円なわけですよ。今のお答えをまとめると、要するに家賃収入が七百九十億円で、家賃収入を原資とする管理運営費が四百三十四億円、そこで考えれば、三百五十六億円の黒字なんですね。
 もう一つ、建設費の償還金も含めた管理に関する経費は千六十七億円といわれましたが、これはちょっと納得できないんです。
 ここに来年度の予算説明書がありますが、この中で公営住宅建設費の項目七百四十九億四千七百万円が計上されていますが、この財源内訳は、国庫補助金が三百八億円、都債が二百九十八億円となっています。
 財務局に伺いますけれども、公営住宅建設費の財源内訳に使用料、手数料は計上されていますか。

○木内財務局長 都営住宅の建設費については、国庫支出金と都債をもって充てているのは、ある意味では当然でございます。公営住宅については、当初の建設はそういうふうにした上で、起債の償還ベース、いわば減価償却みたいなものであるわけですけれども、起債の償還ベースの財源として、現にそこの住宅に居住している方々の使用料を充てるというのが大きな枠組みの考え方でございまして、そのものの建設について充てているか充てていないかをもって判断される意味が、私にはよく理解できないところでございます。

○くぼた委員 つまり、公営住宅建設費の財源内訳に使用料、手数料は入っていないということですよね。これは、当然なんですよ。公営住宅の建物や土地は、都民共有の財産なんです。だから、この建物を建てて、管理や補修をして、財産を保全する責任が東京都自身にはあるんです。国は、建物については二分の一の補助を東京都に行う。東京都は、その残りを税金で賄うということであります。
 一方、同じ公共住宅でも、公社住宅とか公団住宅の場合は、家賃収入で建設費も賄うというふうにされています。それに対して公営住宅の考え方は、都営住宅は公設であり、その建設費用は一般財源をもって充てるべきだというものなんですよ。
 今、財務局長は、都債の償還費に使われている、それは当然だといいましたけれども、家賃を管理運営費に充当した上で、余ったお金を回すというだけの話じゃないですか。大体お金に色がついているわけじゃないわけですから、何とでもいえる話なんですよ。それとも、あなた方がつくった予算書は間違っているということなんですか。
 そもそも、この減免の見直しを押しつけたのは財務局じゃないですか。東京都は、繰り返し、このままでは赤字団体に転落するなどといって、都民に厳しい痛みを押しつけようとしていますが、今日の厳しい財政状況を生み出した原因は、これまでも我が党が繰り返して指摘してきたように、バブル経済が崩壊して、税収が大幅に落ち込んでいるのに、臨海開発を初めとする大型開発に莫大なお金を注ぎ込んできたからじゃないですか。そのことを反省するということじゃなくて、その借金のツケを都民に押しつけるやり方、その一つが、この都営住宅の減免制度の改悪なんですよ。
 建設費の償還といっても、来年度は新規建設がゼロになるわけですから、都営住宅の建設費は急減してきている、これが実態です。都債をふやしているのは、大型開発の投資なんです。この都債の残金は七兆円を超えています。その借金返しのために、公債費は来年度予算で四千六百七億円にも上っている。都は、臨海副都心の有明の丘を二千二百億円で引き取る、こういう計画をしていますが、使い道を間違っていると思うんです。メスを入れるべきは、このような財政運営だということです。
 先ほども述べましたように、都営住宅の減免制度は、まさに高齢者、低所得者、所得に恵まれない人、障害者、母子世帯の命綱となっているのです。家賃制度を廃止するそうですが、そうなったら、私たちは命綱を奪われます、生きていけません、廃止をしないでくださいという声に率直に耳を傾けるべきではありませんか。
 今述べてきたように、衣食住、人が生きていく上で根本にかかわる、そういう冷たく無慈悲な減免の見直し、とりわけ免除制度の廃止はやめるべきだということを強く述べて、次の質問に移りたいと思います。
 ひとり親家庭をめぐる問題について伺います。
 ひとり親家庭をめぐる福祉の削減は、児童育成手当の所得制限強化によっても影響が出るわけですけれども、もう時間がないので、きょうはひとり親家庭の医療費助成の見直しについて伺います。
 ひとり親家庭、特に母子家庭の所得は、とりわけ両方の親がいる家庭に比べて低いわけです。都の社会福祉基礎調査、東京の子どもと家庭によると、年収四百万未満の世帯は、両親がいる家庭で一三%、母子の家庭で六五%となっています。中央区が昨年行ったひとり親家庭の調査でも、年収三百万未満の母子家庭は七四%を占めている。両親世帯収入の三割から四割の低い所得で生活をしているのが母子家庭です。
 そういうひとり親家庭に対して、二年前、国は児童扶養手当の所得制限を強化し、都はこれに倣って、ひとり親家庭の医療費助成の所得制限の強化を強行しました。これによって、一万二千二百人が助成対象から外れたわけです。だけれども、同時に導入しようとした入院食事代の自己負担に対しては、厳しい財政状況の中で導入すべきではないという都民と議会の意向で導入をやめた、こういう経過があります。
 今回出されたひとり親家庭の医療費助成の見直しの内容は何でしょうか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 ひとり親家庭の今回の見直しの内容でございますが、ひとり親家庭医療費助成制度の改正内容は、制度を存続した上で、負担の公平などの観点から、老人保健制度に準じた一部負担を導入するものでございまして、中身は高齢者が負担する水準でございます。
 特に、住民税非課税の低所得者の方には、都議会各会派の緊急要望など踏まえまして、通院、入院とも、診療にかかわる自己負担はこれまでどおり無料でございます。また、入院した場合だけ、食事代のみを負担していただくこととしております。これはひとり親家庭医療費助成の受給世帯の約八割を占めると試算しておりまして、この中身は無理のない程度の自己負担として、都民の方の理解を得られると考えております。

○くぼた委員 二年前より、さらに所得の低い層に対して、今まで親子とも無料だった医療費を、老人医療費と同じ負担にさせる、住民税非課税の世帯には入院食事代を負担させる、こういうご答弁です。今、国の方では、老人医療費については、現行の定額制から一割負担という、さらに重い負担に移行しようという検討をしているわけです。
 ところで、二年前、福祉局長は、児童扶養手当の所得制限についてという国あての文書を出して、所得制限強化に対する緩和措置を要望しているわけですけれども、そう要望した理由は何でしょうか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 前回の要望につきましては、国が母子福祉施策の再構築を進めるということで、その中身は十分理解できるものでございますが、都議会の付帯決議を含めまして、国に対して引き上げるよう要望したものでございます。

○くぼた委員 ここに要望書があるのですけれども、要望した理由が書いてあるのです。とりわけ居住費や物価が高水準である東京の母子家庭においては、経済的に大きな影響を受けることになるということが理由として書かれているわけなんですね。ひとり親家庭の家計がさらに大変になるという、都の認識をここで示しているわけですよ。
 さらに都は、来年度政府予算要望で、ひとり親家庭の所得保障の充実、医療費の助成制度の創設などを要望されていますね。その中では、ひとり親家庭をめぐる状況をどう認識されていますか。どういうふうに書かれていますか、その認識について。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 ひとり親家庭の自立支援につきましては、所得保障の充実のほか、就労や住宅を含めた総合的な施策の推進が必要であるといっております。
 また一方、今回のひとり親家庭医療費助成制度の見直しは、負担の公平や役割分担のさまざまな観点を踏まえて行うものでございます。

○くぼた委員 全然質問に答えてくれないんでーー要望書があります。今いわれた内容を出した理由は、母子家庭を含めたひとり親家庭の置かれている状況は、現下の不況の中では一層厳しい状況にあるということが認識として書かれているわけです。それで要望しているわけですね。
 私、都の社会福祉基礎調査でも、年収二百万円未満の世帯の割合が、両親世帯では、六年間に八%から三%に減っているんです。ところが、母子家庭では、逆に一九%から三〇%にふえているわけです。こういうひとり親家庭をめぐる厳しい状況があるわけです。
 あるお母さんから話を伺いました。子どもは大病しないけれども、自己負担の導入がされて、歯科とか耳鼻科とかいったように二つの科にちょくちょくかかれば、大変な額になるんだ、大変なんだということをいっておられます。そういう意味では、特に病気がちの親子や持病を抱える親子にとっては、自己負担の導入が家計に致命的な影響を与えることになると心配しています。自己負担の導入は、こうした実態からしても、ただでさえ苦しいひとり親家庭の家計を一層困難にするということであります。だから、行うべきじゃないと思うのです。
 さらに私が強調したいのは、ひとり親家庭にとって、健康を守れるかどうかということが、他の家庭と比べても特別な切実さを持っているということであります。母子家庭、母子世帯は、健康の面でも、病気を持つ率が一・五倍という東京都の調査があります。つまり、ひとり親家庭にとって、健康を害するということは致命的な影響になるわけですね。ひとり親の方がもし健康を害されれば、家庭崩壊につながるということになるわけです。働いて生計を立てている母子世帯のうち、常勤雇用は四九%です。不安定な職場なんです。そういう中で、休めば首になるかもしれない、病気で働けなければ収入も途絶える、子どもの面倒を見る人も、どうするかわからない、そういう状況に今ひとり親家庭は追い込まれているわけですね。自己負担だけの問題じゃないんだ、唯一の財産である健康が脅かされるんだというようなことをお母さんがいっておりましたが、まさに私、そのとおりだと思うんです。
 東京都の方は、ひとり親家庭の医療費の助成にかえて、新たな施策、在宅サービス、こういうものを挙げていますけれども、私は、新たな在宅サービスはもちろん充実すべきだと思います。しかし、ひとり親家庭の実態を見れば、ひとり親家庭の健康を守る医療費助成制度は、ほかの施策にとってかわれない役割を持った、ひとり親家庭の支援の重要な施策だと痛感しています。その制度をわずか二年の間に、しかも経済状況が厳しくなっているもとで、二度も切り詰めるべきじゃない。
 ひとり親家庭医療費助成、そして、きょうは質問できませんでしたが、児童育成手当の現行制度の維持を求めて、質問を終わります。(拍手)

○植木副委員長 くぼた光委員の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩いたします。
   午後六時六分休憩

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