東京都議会予算特別委員会速記録第四号

○三原副委員長 吉田信夫委員の発言を許します。
   〔三原副委員長退席、植木副委員長着席〕

○吉田委員 私は、障害者施策の軒並み削減の問題について質問いたします。
 東京都は、今回、所得制限を新たに導入し、さらにまた強化することによって、在宅生活の支えとなっている重度障害者手当、心身障害者福祉手当を、都の発表でも一万二千人の障害者の方々から取り上げる。また、命の支えとなっている医療費助成制度については、これも所得制限の強化によって三万六千人の方々をこの対象から排除し、引き続き助成を受けることができる方からも新たに自己負担を導入するということを進めようとしています。その一つ一つが極めて重大な内容です。
 ただ、時間が限られていますので、きょう特に取り上げたいのは、所得制限の見直しに係る問題です。関係者からも大変悲痛な叫び、声が寄せられているのは、とりわけその中でも、二十歳未満の障害児を抱える家庭にこの削減の影響が集中するということがあるからです。これは、二十歳以上の障害者本人に適用される所得基準額を、二十歳未満の場合には、その扶養者である親に適用するということによって生じるものです。
 まず、基本的な確認をしますが、この見直しによって、扶養家族三人、つまり、世帯主合わせて四人家族の場合に、所得基準は幾らでしょうか。それを年収に換算をすると幾らになるのか、まず説明をお願いいたします。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 重度心身障害者の方で、年収は六百三十五万で、所得にしまして六百三十五万でございまして、所得限度額で四百……(吉田委員「年収で」と呼ぶ)年収換算で六百三十五万でございます。

○吉田委員 年収換算で六百三十五万、所得で四百六十二万、これは実際、月々の手取りということになれば、三十万円台という方になります。
 昨日の答弁で、今回の所得基準は都民の理解を得られる妥当なものだと考えているというふうにいわれましたが、果たしてこれが、都民の理解だけではなく、何よりも当事者にとって本当に妥当なものかどうかということが問われております。
 そこで、お聞きしますけれども、東京都は、平成九年度の社会福祉基礎調査で、子育て世帯の実態調査を行いました。その中で、子育て家庭の経済状態、そして、その負担感についてどのように分析をしているのか、ご答弁をお願いいたします。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 東京の子どもと家庭の調査でございますが、その中では、やや苦しい、普通、ややゆとりがあるということでございまして、普通の方を含めまして、何とか生活できる方が、五〇・九と七・五ということで約六〇%ございまして、それが年収の高い方に行きますと、さらにその率が高くなっているというふうに認識しております。

○吉田委員 もっと、胸を張っていえるなら、ちゃんと答えるべきですよ。私が聞いている話では、平均でいっても三割を超える方々が苦しいというふうに訴えておりますし、さらに、その中で、六百万から八百万の方々について見れば、これも三割を超える方々が苦しいと。これは一般的、標準的な場合ですよ。
 しかも、手当や医療費助成の対象の重度の障害者を抱えているご家庭というものは、通常の方々とは違う特別な苦労もあり、出費も抱える、こういう問題があるわけです。ましてや、他の方の場合には共稼ぎもあり得ますが、重度を抱えた方の場合には、ほとんどが、どちらかといえば母親は二十四時間介護に専念せざるを得ない。したがって、パート収入も全く望むことができないという状況の中で暮らしているわけです。
 次に、いささか唐突ですが、ちょっと総務局長にお願いしたいのですが、都民の所得状況を最も系統的に調査している資料として、総務局の東京都生計分析調査があります。その中で、勤労世帯四人家族の平均年収とその世帯主の平均年収はどうなっているのか、お答えをお願いいたします。

○横山総務局長 総務局の統計部で調査している資料でございますが、直近の平成十年版の調査で申し上げますと、勤労者世帯の世帯人員別一世帯当たりの平均収入は、四人家族で見ますと、月額六十九万三百七十五円でございますので、年平均にしますと八百二十八万四千五百円で、世帯主の平均年齢は四十四・四歳となっております。

○吉田委員 今も説明がありましたが、世帯主が平均年齢四十四歳、まさに二十歳以下の重度障害児を抱えるに近い平均年齢で、年間で八百二十八万円ということになるわけです。その上、先ほどもいいましたけれども、重度の障害児を抱えた場合には、特別の財政的な負担は避けがたい状況です。これでは、その世帯の方の生活を考えたときには、世間並みのですよ、世間並みの平均的な生活は維持できないということになりますが、それはもう当然だということですか、福祉局長。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 生計中心者の年収で申しますと、約、年収六百万円未満の方が三分の二でございますね。それで年収七百万円以上の方が三分一ということでございますので、現在の基準はおおむね妥当というふうに考えております。
   〔吉田委員「私の質問にちゃんと答えなさいよ」と呼ぶ〕

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 今申し上げましたとおり、生活できる妥当な線だと思っております。

○吉田委員 具体的に東京都総務局の資料を使って、四十四・四歳で八百二十八万円と。それよりあなた方は低いところに設定をしているんですよ。そうしたら、平均的な生活を維持しないことを承知で設定したということになるじゃないですか。
 さらに、今いわれましたけれども、それはあくまでも平均で出されましたよね。じゃ、四十代の場合はどうなりますか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 今、私どもの申し上げましたものは、生計中心者ということの収入でとらえておりますので、先ほどの総務局長の答弁に加えると、これにさらにプラスされるものがあるというふうに考えております。

○吉田委員 あなた方が、生計中心者ということで、きのう自民党に答えられた数も、二十代の生計中心者や八十代の生計中心者を含めた数の平均をいわれたんですよ。その中で、例えば四十代の生計中心者の平均所得は幾らかということになれば、七百万ですよ、それだけとって見ても。それから見たって、あなた方の水準は低いんですよ。もうこれは、これ以上いってもしようがありませんから……。
 いいですか、しかも、今回の見直しのひどいところは、重度手当も、児童育成手当も、医療費助成制度も、すべて同一の所得基準を導入したということです。四人家族の場合で、年収六百三十五万円を超えたら、この三つの制度を一気にすべて打ち切るということになります。
 今までは、児童育成手当の所得基準を超えても、その先まで受ける制度として医療費助成制度がありました。その収入を超えたとしても、さらに重度手当がありました。そういうふうに何段階かのいわばセーフティーネットがあったにもかかわらず、それが今度は一遍に転落をする、一遍になくなってしまうという状況になるわけです。
 それで、まずその影響について次にただしますけれども、障害者医療費助成の所得制限見直しによって、それから排除される方々のその影響と金額、平年度の影響人数と影響額の推計を示してください。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 心身障害者医療費でございますけれども、所得基準の適正化で一万一千人でございまして、額で二十億でございます。

○吉田委員 一万一千百人が排除されて、その結果、二十億円の金額に相当する。これを単純に一人当たり一年間で割りますと、一人当たり十八万円、今まで医療費助成を受けていた金額がゼロになるというふうになります。これはもう当たり前のことです。さらに、児童育成手当の支給額が、今、月一万五千五百円ですから、年間で十八万六千円、その上、重度手当月六万円、これで計算をいたしますと、合わせて一年間で百八万六千円もの負担増が、あるいは現在の得ている経済的な給付から百万円を超える金額がえぐり取られるということになるんです。
 私は、後でもまた詳しくいいますけれども、本当に今ぎりぎりのところで、重度の障害児を抱えて、多くの方々は暮らしているんですよ。どうやってこの百万円を削ることができるのかという思いです。
 このように所得制限を導入した場合に、重度手当が削られるだけではなくて、三つ一気に削られて、その影響額たるや、一年間で百万円を超える、こういう問題が生まれることを初めから承知の上で提案をされたんですか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 お答えします。
 先生のお話では、何か全員が全部それだけとられるというようなご説明でございますが、実は、重度の方は今まで所得制限はないわけでございますから、アッパーでございますよね。ですから、その所得制限で入る方というのはすごく数が少ないわけでございます。(傍聴席にて発言する者あり)おおむね、私どもとしては四%程度というふうに想定しております。

○吉田委員 その問題については後でまた詳しくやりますけれとも、結局、あなた方は、こういうことが起きても何ら問題はないというふうに判断をされているわけですか。しかも、きのう自民党に対する答弁の中で、東京都の手当がなくなったとしても、いや国の手当がありますから大丈夫なんですというような旨のことをいわれました。
 そこで、これは委員会でも一度質問をさせていただきましたけれども、そもそも国に来年度予算要望としてーーこれは石原慎太郎知事名ですよ、今の国の所得保障あるいは医療費助成制度で十分であるというふうに出したんですか。
   〔傍聴席にて発言する者あり〕

○植木副委員長 傍聴人に申し上げます。
 ご静粛に願います。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 国に引き上げるよう要望しているところでございます。

○吉田委員 ですから、きのう、国があるじゃないかといわれましたけれども、国が不十分だから、障害者児の所得保障、医療費助成制度を充実されたいということをいっているんですよ。そういうことを片方でいい、もし都の手当を見直す場合には、国に対応して見直すんだというのが、障害者の基本計画を定めたノーマライゼーション推進プランの明記をされていることなんです。そういうことからいって、あなた方の昨日の自民党に対する答弁も、全く実情、あるいは自分たちのこれまでの経過からも外れるものだということを述べておきます。
 いずれにしても、こういう事態が生まれるということをもし初めから承知の上でということならば、本当に東京都の福祉局は、障害者の福祉をどう考えているのかということが問われる事態だというふうに思います。
 私も、こういういい方はしますけれども、じゃあ、すべて初めから承知をしていたのかといえば、決してそうではありません。やはり多くの方からさまざまな手紙、あるいは直接会ってお話を聞くということがありまして、本当に事の重大性に気がついたというのが正直な実態です。ですから、もし今の時点でそういう状況が明らかになったならば、一度提案を決めたことであったとしても再度検討するという勇気を持つことが、後で知事にもお伺いしますけれども、私は、都政に求められていることだと思うんです。
 それで、重度障害児を抱えた方々、二十歳未満の重度障害児者を抱えた方々の状況がどうなっているかということで、幾つか問い合わせをし、状況についてファクスで協力をお願いいたしましたが、本当に全く一度もお会いしていない方々も含めて、四十人の方々から回答を寄せていただきました。
 知事に、そこに記載された内容をお渡しさせていただきます。
   〔吉田委員、石原知事に資料を渡す〕

○吉田委員 知事に今お渡ししましたけれども、突然で恐縮ですが、ぜひこの報告書を読んでいただきたいと思います。
 二十歳未満で今重度手当を受けている方々は、今回出された資料でも三千五百三十七人というふうにありますから、四十という数は、絶対数では少ないという印象を受けるかもしれませんが、これだけの中からすれば一%を超えるものです。
 それで、知事にお渡しした今の方々からの声のところを、ちょっと読ませていただきます。
 例えば、六ページに、人工呼吸器を使用している八歳の障害児を持った方が、知事にどんなことをいいたいですかという項目について書かれた内容です。
 私の子どもは、知的にも身体的にも最重度、超重度といわれる障害を持って在宅しています。医療的にも二十四時間介護を必要とし、生活のすべてが全介助です。備える医療機器も高額ですが、生命を維持していく上で不可欠なものです。精神的にも体力的にもぎりぎりのところで生活しています。これ以上追い詰めることはしないでくださいと、知事への声として書かれております。
 次に、七ページにありますけれども、脳性麻痺による障害を持つ子どものお母さんの訴えです。
 都の訪問看護サービスを受けていますが、時間も回数も確実に減っており、納得できません。二十四時間の介護を続け、くたくたになりながらも、やはり他の兄弟と一緒に手元で育てたい。しかし、在宅介護には、一般家庭では支出することのないような金額がかかる。共稼ぎもできない。この上、手当がカット、ましてや医療費が、上がるようなことになれば、まだ六歳の障害児を抱え、何十年も生きていくことを考えると、明るい未来など全く見えてこない。
 これが、あなた方がやろうとする、当事者の方々から寄せられている声なんですよ。
 このほかにも、自閉症や重度知的障害の子どもと日々格闘している姿など、私にとっても初めて知ること聞くことの連続であり、想像を超えるものがありました。
 この中で、ある方は、都が十分な調査をして熟考して出した結論とは思えないということを書いてあります。
 実はきょうも、これも知事のところに行っておりますし、福祉局にも行っていると思うんですが、ファクスが寄せられました。その中では、なぜ二十歳以下の家庭にこれほどの集中的削減を行うのか、障害者の生活をどれほど把握し、何を根拠にこの案が作成されたのか、この政策が障害児の家庭にどのような影響を与えるのか、どれほど真剣に考えているのかという訴えなんですよ。
 当事者の方々は、削減されることはつらいことです。あわせて、自分たちの実態もまともに聞いたり調査をしないで削減をするという東京都の姿勢に、本当に怒りを持っております。
 そこで知事にお伺いいたしますけれども、私は、提案した現時点でも遅くはないと思うんです。改めて実態調査はしていないんですから、もし私以上の調査をしているなら示していただきたいと思いますけれども、重度障害児を持つ家庭の実態調査をまず行うというのが、行政としてのイロハじゃないですか。

○石原知事 十全な調査が行われたか行われないか、その内容について局長から答弁いたします。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 私どもといたしましても、関係団体を初め多くの方々からお話を聞いて、今回判断をして、提案させていただいたものでございます。
   〔傍聴席にて発言する者あり〕

○植木副委員長 傍聴人に申し上げます。
 ご静粛に願います。
   〔「退場だよ、退場」と呼び、その他発言する者あり〕

○植木副委員長 ちょっととめてください。
   〔速記中止〕

○植木副委員長 それでは、再開をいたします。
 傍聴人に申し上げます。
 ご静粛に願います。
 なお、委員長の命令に従えないときは、東京都議会委員会傍聴規則第十二条第一項第二号の規定により退場を命じますので、念のため申し上げておきます。
 続けます。

○吉田委員 今の福祉局長のご答弁は、何か調査をしているかのような理解を生むような答弁でしたけれども、私は、団体から話を聞いたか否かいうことを聞いたわけじゃないんですよ。実際に重度の障害児を抱えたご家庭の、例えば年収がどうなのか、重度の障害を抱えることによってどれだけの費用がかかるのか、そういうことの実態調査をご家庭に対してやったのかと聞いているんですよ。
   〔発言する者あり〕

○植木副委員長 ご静粛に願います。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 私どもといたしましては、手当の認定に当たりましても、状況を調べながら、状態を団体からも十分聞いて、それぞれの団体の構成員の方からも聞いて、今回判断したものでございます。

○吉田委員 手当を受給するときに提出してもらうカードというものは、所得や経費などは一切書かれておりません。施設に入っているのか、病院に入っているのか、在宅なのか、手当の支給に値するかどうかを確認するだけの、極めて実務的なものなんですよ。あそこから、重度を抱えた方々の生活実態が何がわかりますか。いいかげんなこといわないでください。私、調べているんだから、全部。
 知事、いずれにしても実態調査はされていないんですよ。すべきだと思いますが、いかがですか。

○石原知事 だから、今、局長が、そういう方々が属している団体を通じて個々の例を聞きましたといっているじゃないですか。

○吉田委員 いや、これはいろいろ考え方が違うことはありますよ。しかし、やはり事実に基づいて、提案が適切か否か、あるいは、もしそのことを行った場合にはどういう影響が起きるのか、そういう影響が起きてもやむを得ないという判断をするのかどうかということが、客観的に問われなきゃだめですよ、行政としては。
 それは別に私どもだけではなくて、例えば本会議の代表質問でも、我が党以外の会派からも、要するに、医療費助成制度の所得制度の引き下げに関して、果たして生活の実態はどうだろうか、よもや受診抑制ということにならなければいいが、かような疑問を確認すべく都に実態報告を求めましたが、障害児を持つ保護者の収入分布、実態調査等は行っていないというのでは、議会の判断材料としては甚だ乏しいといわざるを得ませんというふうに、他の会派だって当然問題にするのが当たり前だと思うんですよ。
 そこで伺いますが、二十歳未満の重度の障害児を抱えた方に対して、今回の見直しによって対象から外れる方々は何人になりますか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 平成十二年度の予算べースでございますが、二十歳未満の受給者のうち、約千百人程度が、所得制限の導入によりまして制度の対象から外れると推計しております。

○吉田委員 対象の約三割に相当する数で、それ自身大変大きなものですけれども、一体、しかし、重度障害者を抱えた親の所得というものを把握して、その上でこういう推計を出したんですか。どういう方法をとったんですか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 推計でございますが、一つは、受給者に占める二十歳未満の人数は、平成十一年十月現在の受給者の実態から推計しました。また、二十歳未満の対象者がいる家庭の世帯主の収入状況は、平成八年度東京都社会福祉基礎調査の中の生計中心者の収入から推計したものでございます。

○吉田委員 平成八年度の基礎調査を持ってきましたけれども、ここに、障害者を抱えた大体四十代以下の方々の所得というのは出しているんですか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 平成八年度の社会福祉の基礎調査の中で、生計中心者の平均収入は五百九十四万になっておりますが、これは、単身世帯、高齢世帯などさまざまな層を含む平均でございます。

○吉田委員 もしそれを使って、例えば六百万ないし七百万を超える方々が何割いるのかというふうに調査をしたとしたら、あなた方の、三割排除される、影響を受けるというのは間違いです。例えば、さっきもいいましたけれども、それは文字どおり、生計中心者が二十歳未満の方から八十歳の方から含めた平均を出しているんですよ。しかし、この中にはちゃんと、四十代の生計中心者の場合の所得分布だって出しているんですよ。私の計算では、そうすると五割の方が影響を受けるということになるんですよ。私の方が比較的リアリティーがあるでしょう、だって、平均じゃなくて四十代でとっているんだから。ということは、三割以上ふえる可能性もあるということですよね。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 私どもの方は、ちなみに、子育て世代と思われる二十代から四十代の生計中心者の方の平均収入は五百七十一万円程度でございますから、この六百三十五万円は、それよりは高いというふうに考えています。

○吉田委員 もう一々いいませんけれども、別な調査で、児童を抱えた世帯の収入というものもあるんですよ。それで見れば、八百万を超えるという方が、そういう調査報告があります。いずれにしても、あなた方の三割の影響ということ自身は、極めて大ざっぱなもので、もっとふえる可能性があるんだということが非常にはっきりしているというふうに思います。
 いずれにしても、重度手当を切られる人は、先ほどいいましたけれども、医療費助成、児童育成手当、そして重度手当と、三つ一遍に切られるということになるんです。あなた方が極めて平均で出した数であっても、その三割が、今、重度手当を受けている方々が外れるというふうになりました。やはりその影響というものは大変なものなんですよね。
 そういう重大な影響を、全く詳細に調査もしないでこういう結論を出したわけですけれども、それで、福祉局が、実は手当の見直しに関して報告書をまとめておりますね。その中ではどういうふうに書いてあるかといいますと、これは、平成十年、福祉局長のもとで置かれた福祉局福祉施策研究会が発表したものです。その中で、今後行政において手当のあり方を具体的に検討するに当たっては、各手当ごとに詳細な分析を重ねていくことが必要となろう。その際、手当の性格や効果の分析などについて、十分な調査や評価を行うことが不可欠である。そして、検討に当たっては、都民の十分な理解が不可欠であり、十分な情報提供を行い、都民とともに考えながら取り組むことを期待すると。
 自分たちが、こういう手当類を見直すときには、少なくともこういう努力をしなければならないというふうに書いてあることと、やっていることは違うじゃないですか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 手当の見直しでございますが、今回の見直しにつきましては、今まで所得制限のない方に一定の負担をしていただくという観点から、所得制限を下げたものでございます。大変高い額でございまして、東京以外の他府県では実施していない額と、こういう、神奈川県の方も埼玉県の方もないという手当でございますので、今まで所得制限がないということで、いってみれば青天井と、どなたでもいいというのを、今回、合理的な基準である国の手当を準用しまして入れさせていただくものです。
 また、それによって生じました財源につきましては、障害者のホームヘルプサービス、特に新規の二十四時間の巡回型ホームヘルプサービス、そして、重度身体障害者グループホームモデル事業、あるいは重度生活寮の本格実施と、こういうものに充てさせていただきたいというふうに考えております。

○吉田委員 まあ、余計なことをいわれましたけれども、これがあなた方のつくった報告書ですよ。ここに、詳細な調査分析を行わなければならない、それも、一回に決めるのではなくて、その情報を都民に示し、都民の理解を得て行わなければならないということを、福祉局自身が書いてあるんですよ。それに反する態度をとられていることはもう明らかです。
 知事、こういう在宅で重度手当を受けている障害児の方々というものは、知事が見学をした府中療育センターに入っている方々よりももっと重いという方が少なからずいらっしゃるんですよ。この子どもたちの在宅生活の支えになっているのが、手当であり医療費助成制度なんですよ。それがカットされたら、在宅重視、在宅重視ということがいわれますけれども、その報告書には書いてありますが、もう在宅生活は維持できない、施設か病院に預けるほかないというような声まで、今回の見直し案について出されているんです。
 重度障害児の家族の日々の生活は、精神的にも肉体的にも経済的にも大変なものです。気管切開をして、しかも人工呼吸器をつけた場合には,常に日常的に吸引でたんをとらなければなりません。たんが出せないんですよ。もしたんが詰まったら、窒息死ですよ。もちろん、症状によって、一時間ごとの方もあれば、時によっては、十分、十五分ごとに母親がたんをとるんですよ。そして、体位を変えて、しかも、普通の食事では対応できませんから、ミキサー、フードプロセッサーで、そしてそれをチューブで与え、おむつをかえるという、まさに一人の母親が、いいですか、看護婦さんでもあり、介助者でもあり、あるいは栄養士のような仕事を、文字どおり二十四時間、三百六十五日続けているんですよ。
 知事は、府中療育センターの視察をめぐる発言に関連して、第三回定例会で、重度の障害を持つ入所者と触れ合い、懸命に介護する医師や看護婦と意見を交換して感じたことは、人間の生きることの意義と奥深さであり、これに携わる仕事の崇高さでありますというふうに述べました。そして、この視察で感じたことを、知事としてしっかり胸に受けとめ、福祉の問題に取り組んでまいりたいと答弁をしました。それがこういう結論なのかというふうに、多くの方は見ているんですよ。その手紙にも書いてありますけれども、底辺で生きる子どもたちから、知事、目をそらさないでくださいと、私たちの現状をご存じでしょうかと訴えているんですよ。
 ぜひ、少なくとも、今、実態調査のことはいいましたけれども、知事自身が直接こういうお母さん方、ご家族の方々に会って話を聞くということは、あなたが心を強調するならば、その心で実現できることではないですか。どうですか。

○石原知事 重度の障害児を抱えるご家庭では、必ずしも在宅サービスが充実されているわけではありませんで、そういう障害を持つお子さんを抱えた、ご当人だけじゃなしに、家庭全体が大きなハンディキャップをしょっているということは十分承知しております。
 ただ、私が行います、知事として行います福祉は、必ずしもこういうケースだけではなしに、昨日も申しましたように、都民全体の健康にかかわる環境の問題であるとか、教育の問題であるとか、治安であるとか、その他たくさんの問題を、やっぱり福祉という形で行政の基軸に据えるべきものと思っております。

○吉田委員 改めて、きょうここでご答弁できないかもしれませんが、ぜひ直接当事者の方々に会って話を聞いていただきたいということを、改めて要望させていただきます。
 時間がなくなりましたので、予定したものを若干はしょらざるを得ないんですが、ただ、在宅重視ということでいろんな施策をしているじゃないかということをいわれました。その中で、例えば二十四時間巡回型のホームヘルプサービスを行うということをいいましたけれども、先ほど例に挙げたような、気管切開をして人工呼吸器をつけ、あるいは人工呼吸器をつけていないにしても、常に吸引をするという行為は、ヘルパーさんはやってはいけないんですよ、もちろんご承知と思いますが、医療行為ということで。看護婦さんであっても、医師の指示がない限りできないんです。もちろん二十四時間巡回はいいでしょう。しかし、そのことによって家族の方々の負担を大幅に軽減することや、あるいは手当を削ることの理由には、成り立たないんです。そのことを強調して、先ほど実態調査の質問のときに、団体から話を聞いているからいいじゃないかという旨のお話がありました。
 私は、これについてもただしておきたいと思うんですけれども、福祉施策を推進するに当たって、立案や推進に関して東京都が公式に意見を求める機関として、東京都障害者施策推進協議会及び東京都障害者団体連絡協議会があります。今回の提案について、説明はもちろんしたでしょうけれども、この両団体との合意あるいは大方の賛成というものを得ているんですか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 私どもといたしまして、今お話しの推進協議会や、それから障害者連絡協議会に対しましては説明しております。しかしながら、そこでは各団体からいろんな意見をいただいているということで、すべて賛成とか反対という話じゃございません。
 それから、そのほかに私どもはいろんな部会もやっておりまして、専門部会で常日ごろから意見を交換しているところでございます。

○吉田委員 もう一度確認しますが、大方の合意、賛成を得ているのか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 多くの団体からそれぞれの意見をいただいているところでございます。

○吉田委員 私は、十一月二十九日だと思いますが、団体協議会に参加をされた方のメモ、極めて粗っぽいものですけれども、メモをいただきました。もちろん詳細についてはわかりませんが、少なくとも、それでもどういう結論を各団体が述べられたかはわかります。例えば、医療費助成、手当の見直しは容認できないとか、ぜひ撤回してほしいとかーーぜひ撤回というのは二つあります。あるいは医療費助成こそ必要だ、基本的に反対である、もっと負担能力を考えた所得制限を導入すべきだとか、納得できる所得保障をすべきであるとか、少なくとも参加をされた団体の半数以上が、明確にこれに反対の意を表明されました。他の方々も、賛成というものはありませんでした。
 私は、これは単なる手続の問題ではないと思うんです。やはり障害者施策というものは、障害者当事者がどういう施策にするのか、どう変えるのかということに意見を述べ、その意見が反映される権利を持っているというのが国際障害者年以降の国際的な常識です。
 しかも、それは、ノーマライゼーション推進東京プランの中でも明記をしています。その中で、例えば都民とのパートナーシップという項目があります。どういうふうに述べているかといえば、いわゆる自己決定権ということが盛んに強調されますが、どのサービスを欲しいかという自己決定権だけではなくて、障害を持つ人々が施策の点検、評価に参加できるようにするとともに、施策の形成、決定に障害者の意見や提案が十分反映されるよう、障害者と都政のパートナーシップを築いていきますと書いてあるんですよ。今度の見直しに、障害者団体の意見がどう反映されたんですか。いかにパートナーシップとして扱われているんですか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 私どもといたしましては、障害者団体と常日ごろから話し合いをしているわけでございますが、そういう中で、私どもの局案を含めましていろいろ議論している中で、やはり低所得者への配慮や、それから激変緩和措置など、ある一定の配慮をいたしましたのは、そういう状況の中で生まれてきたというふうに考えております。

○吉田委員 いずれにしても、障害者の意見がまともに反映されていないということは、障害者施策の基本理念に反するものです。
 その知事にお渡しした中にも、つらい話ですけれども、こういう子どもを産んだ私が悪いのかという気持ちになるときもあるという悲痛な叫びがあります。私は、やはり社会全体が安心して重度の方々が生きていける状態を進めるというのは当然のことですし、この手当や医療費助成制度は削減すべきではない。それ以前の段階として、まず、実態調査や知事自身が直接聞かれるということを改めて要望いたしまして、質問を終わります。(拍手)

○植木副委員長 吉田信夫委員の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時十二分休憩

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