東京都議会予算特別委員会速記録第三号

   午後三時三十一分開議

○植木副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 渡辺康信委員の発言を許します。

○渡辺委員 私は、知事の基本姿勢について、まず伺います。
 去る八日に発生しました帝都高速度交通営団地下鉄日比谷線の脱線衝突事故は、死者五人、重軽傷者三十五人という悲惨な事故となりました。
 初めに、亡くなられた方のご冥福をお祈り申し上げます。
 そこで伺いますが、営団地下鉄日比谷線の衝突事故については、都は、状況と事故原因についてどのように把握しているのでしょうか。

○成戸東京都技監 事故発生直後から、東京都では、出資者の立場から、事故の状況等について、可能な限りの状況把握に努めております。
 事故の原因につきましては、現在、運輸省の事故調査検討会及び警察において調査中でございまして、現時点では判明いたしておりません。

○渡辺委員 状況把握といっても、運輸省にお伺いを立てるようなやり方ではなくして、都民の安全にかかわる問題ですから、運輸省にも営団にも乗り込んでいって、正確な情報を集めるというのが、最低限必要ではないでしょうか。
 この質問に当たって、都が関与する営団、第三セクター、都営交通などで、過去どのような事故が報告されているのかをお調べいただいておりますか。まず、都営交通について報告をいただけますか。

○横溝交通局長 交通局では、営団日比谷線の脱線事故の重大性にかんがみまして、事故当日、直ちに都営地下鉄全線の軌道及び全車両の緊急点検を実施した結果、異常はございませんでした。
 その後、運輸省の緊急点検の通達を受けまして、九日から十日にかけて、さらに綿密な点検を行いまして、全路線の軌道や車両に異常のないことを確認しております。

○渡辺委員 今、車両に関する事故は、車どめ破損事故一件ということで私たちはお聞きしているのですけれども、何か重大な大変なことを落としていないでしょうか。
 昨年五月に、十二号線の車両の台車に亀裂が入る事故があったのですけれども、私、今資料をお配りいたしますので、見ていただきたいというふうに思います。
 委員長、配らせてください。

○植木副委員長 はい。資料をお配りください。

○渡辺委員 私どもが入手した資料によれば、昨年五月に、都営地下鉄十二号線で、車両の台車に亀裂が入って、レールの間に敷設されているリニアの板に傷をつけていたことがあるんです。しかも、この傷は、新宿駅から光が丘まで断続的に続いているというものであります。
 交通局長にお伺いしますけれども、これは事実と違いますか。

○横溝交通局長 事実でございます。

○渡辺委員 この事故は、運輸省とか都知事に報告されていましたか。

○横溝交通局長 運輸省には報告しておりません。
   〔渡辺委員「知事は」と呼ぶ〕

○横溝交通局長 知事にも報告しておりません。

○渡辺委員 とんでもない話だと私は思うんですよ。いいですか、台車に亀裂が入っていたのですから、レールの間のリニアの板に傷がついていたということは、台車が落ちて引きずって走っていたのじゃないですか。
 資料をお配りしたから、ちょっと説明させてもらいますが、資料の二枚目を見てください。そこには、大とか、特に大とか、連続とか、点在と、これは全線ですよ、傷がついているのはね。
 そういうことでお伺いしますけれども、この車両を製造しているメーカーはどこでしょうか。

○横溝交通局長 住友金属工業でございます。

○渡辺委員 住友金属工業といえば、今回の営団の車両をつくっているところと同じですよね。しかも、同じように乗客を乗せていたのです。十二号線の事故は、一歩間違えば、今回と同じ大惨事になっていたかもしれない。どうしてこんな重大なことを隠していたんですか。
 さらに重大なことは、この事故を起こした車両は、その前の年、つまり九八年の十月にも、同じ台車の亀裂事故を起こしている。このときは、乗客から、異常な振動が発生していると通報があったじゃないですか。しかも、驚くことに、その車両に異常を発見しながら、光が丘と新宿の間を一往復、お客を乗せたまま走ったんです。
 「一二―〇〇〇形車両台車枠不具合について」という報告書には、これは資料四枚目を見ていただきたいと思うんです。この不具合という報告書には、高さ調整弁からの異常な漏気、つまり空気漏れがあり、原因車両を一二―〇九五号車と断定したと。運用の都合上、光が丘から新宿間一往復営業運転をしたと書いてあるんですね。これを見てもわかりますように、長さ二〇〇ミリ、幅二八ミリの亀裂が入っていたと。
 資料をもとに戻りますが、一枚目になりますけれども、また、もっと重要なことは、亀裂事故を起こした台車の点検、補修を行った住友金属工業は、再溶接で三十年はもつと、こういうことだったのに、補修を行った台車が、翌年再び同じ亀裂事故を起こしたという問題であります。このときの補修がいかにずさんであったかは明白ではありませんか。
 台車の亀裂は、それだけではありません。十五列車のうち九列車、四十四カ所にもこの亀裂が入っているのです。修理をした住友金属工業の補修の報告書では、そのように書いてある。
 そして、昨年、これはまた資料の一枚目の右下ですが、補修した台車にまた亀裂が起きたということで、交通局は、同一箇所で再溶接を行った台車に異常が出た以上、検査方法を再検討し、暫定補修の方法も考え直すこと、とまでいっているんですね。事は、台車の亀裂という、一歩間違えれば大惨事につながりかねない、都営地下鉄の安全にかかわる重大な問題。
 事故報告書が、今後、検査方法を再検討し、暫定補修の方法も考え直すと提案しているように、交通局はどのように考え直しているのか。
 また、メーカーである住友金属工業に対してどのような対応を要求しているのか、明確にしていただきたいと思います。

○横溝交通局長 本件につきまして、事の重大性にかんがみまして、すぐ住友金属工業に全車両の点検を行わせました。その後、亀裂を発見した台車につきましては、直ちに補修を行い、また全台車の改良につきまして指示を行い、全台車の改良を完了しております。

○渡辺委員 そんなことで、よくわからないんですけれども、知事に最後にお尋ねしたいのですが、この問題は重大な問題だというふうに私は思うんです。本当に一つ間違えれば、もう大惨事になりかねない、そういうことでございますので、この問題を直ちに調査して、調査の結果と、東京都としての対応方針を当委員会に報告していただきたい、こういうふうに思いますけれども、よろしいでしょうか。

○石原知事 これは、事故の発生した日時を見ますと、私が就任してからのことでございまして、私にも責任のあることでございます。
 今後、こういうことは当然報告されるべきことと思いますし、修理の手抜きでボーイングのジャンボが御巣鷹山で大惨事を起こしました。あるいは、海を行きます船舶ですと、沈没したり漂流しかねませんが、地上を走っている車両だからということの、こういうずさんな措置は絶対に許されないと思いますので、厳しくチェックし、また、正確な報告を要求いたします。

○渡辺委員 知事から調査を約束していただきました。この委員会に報告がされるように、理事会でご協議をしていただきたいと思いますけれども、どうでしょうか。

○植木副委員長 理事会で取り扱いを協議したいと思います。

○渡辺委員 ぜひひとつ、しっかりとした調査内容を報告していただきたいというふうに思います。
   〔発言する者あり〕

○植木副委員長 協議するといったんです。協議するといったからいいんです。
   〔渡辺委員「協議でしょう。協議をしてもら
   うということで要求したのですから、いいじゃないですか」と呼ぶ〕

○植木副委員長 決めたわけじゃないです。協議をすると。

○渡辺委員 この問題の最後に、都民の安全を確保するために、少なくとも都が関与する営団、第三セクター、都営交通など公共交通について、緊急に安全点検を行うことを要望して、次に移りたいと思います。
   〔発言する者あり〕

○植木副委員長 ちょっと速記をストップしてください。
   〔速記中止〕

○植木副委員長 では、再開をいたします。

○渡辺委員 次に、福祉の切り捨て問題であります。
 石原知事が提案した高齢者、障害者、母子父子家庭、乳幼児の医療費助成と福祉手当、シルバーパスの全面的な有料化や廃止、切り下げ案は、東京の福祉のあり方を根本から転換するものであります。知事は、福祉の切り捨てでなく、改革だといいますが、その中身は、都民にとって極めて深刻かつ重大なものであります。
 私はまず、知事の福祉見直しの方向がいかに間違ったものか、幾つかの角度から検討したいと思います。
 一つは、国民、都民の将来への不安を増大させている国の社会保障改悪と軌を一にしているということであります。最近の各種世論調査の結果は、どれを見ても、国民、都民の将来への不安が非常に大きくなっていることを示しています。
 例えば、先月発表された政府・経済企画庁の国民意識に関する調査では、老後に明るい見通しを持っている人の割合は二割を切り、過去最低を記録しました。老後に十分な年金が得られないなど、収入に関する項目について満たされていない人の割合が高いというのが経済企画庁の分析であります。さらに、これからの生活にとって重要なことは何ですかとの質問への回答の一番は、医療と保健であります。社会保障充実のために、税金など個人の負担が増加することに否定的な考え方の人は五二・六%と、過半数を超えていると報告しております。
 ここに示されているのは、負担が重い介護保険、老人医療費の大幅値上げ、年金の切り下げなど、今国が進めている社会保障の相次ぐ後退に対する当然の声ではないでしょうか。
 そこで知事にお伺いしますが、政府・厚生省が進めている福祉、社会保障の見直しの方向と、石原知事の福祉ビジョン、福祉のあり方は、本質においてどこが違うのでしょうか。
   〔神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務発言を求む〕
   〔渡辺委員「知事にお聞きしていますから」と呼ぶ〕

○石原知事 国は国で、この時代の流れに沿って、福祉の考え方というものを、介護保険制度に象徴するように、かじ取りをかえたわけであります。私はこれは極めて妥当な発想だと思いますし、当然東京都も、それと関連で、従来の福祉を、システムとしても考え直さなくてはいけない時期に来ていると思います。
 ただ、私は、先ほど申しましたように、福祉というのは、しょせん最後は心の問題でありまして、安らぎ、安心、満足というものをいかに講じるか、その手段の一つとして金もございましょうが、しかし、やはりシステムなり、あるいはその他この他、複合的に施策を講じることで、単に弱者、老齢者、ハンディキャップを負った方々だけではなくて、都民全体、国民全体が、例えば環境問題であるとか、それに非常に関係の多い都市基盤の整備であるとか、教育であるとか、あるいは治安であるとかという問題を通じて、やっぱりある満足、ある安心というものを得ることが正当な福祉だと私は思っております。

○渡辺委員 一つ一つ反論するということになりますと、時間の関係がありますので、なかなかできませんけれども、いろいろといわれますが、福祉に関して石原知事が現にやっていること、話してきたことは、基本は国と全く同じなんですね。
 今回の福祉見直しも、その中心は、経済的支援の切り捨てと負担増であります。これは、先ほど一例として紹介した経済企画庁の調査に示されている国民、都民の要望と、ことごとく逆行しているのではないでしょうか。知事は、都民の将来への不安をなくすための改革だといいますが、逆に将来への不安を拡大することは明白で、個人消費をますます冷え込ませ、景気の足を引っ張る結果にもなるのではありませんか。
 福祉見直しの論拠として、知事は、自助、共助、公助という福祉の考え方をよく口にします。しかし、これも一番目が自己責任で、二番目が助け合い、それでも足りずに、どうしても助けが必要な人に限って公的支援をするという、福祉に対する国と自治体の責任を小さくするための、厚生省お気に入りの言葉の受け売りであります。
 次に、知事の見直し案は、都民の生活実態と余りにもかけ離れている問題であります。
 高齢者の一人当たりの可処分所得は、他の世代と比べ遜色がない、平たくいえば、高齢者は結構お金を持っているという話も、知事は何度も口にしています。しかし、これも厚生省の受け売りです。厚生省はこういう見方に沿って介護保険制度をつくって、保険料も利用料もどんどん負担させようとして、実態と合わないことが明らかになり、慌てて保険料、利用料軽減の臨時措置をとらざるを得なかったのであります。
 ところが、知事は、失敗が既にはっきりしている厚生省と同じ考え方にしがみついて、高齢者は結構お金を持っているから大丈夫だと、こういってシルバーパスの有料化、マル福、老人福祉手当の廃止、こういうものを推進しているのであります。
 しかし、現実を見てください。(パネルを示す)このパネルですが、東京都が平成七年に行った高齢者の生活実態調査で明らかになった東京の高齢者本人の所得分布であります。
 お金を持っているというふうにいわれますけれども、ここに見えるように、ゼロから五十万、百万円。ここが二百万ということですけれども、圧倒的に百万円以下という数字になるんですよね。それで、年収で五十万円未満、百万円未満が一番多い。月収では、四万とか八万円ということになるわけです。一方で、ヨットも別荘も持っているような高額所得者の方々もおりますから、平均値を出したら、そこそこの数字になるんですが、非常に低い所得層に集中しているのが高齢者の特徴なんです。
 知事、こういう所得の状況が、他の世代と比べて遜色ないといえるでしょうか、お尋ねいたします。

○石原知事 専門的なことでございますから、担当の局長から答弁し、足りなければ、私が答えます。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 今のデータでございますけれど、男性と女性を合計した表だというふうに理解しておりますが、男性だけで見ますと、そういう数字ではないということでございます。
 それから、収入でございますが、収入につきまして、今のような状態と、それから生活保護基準等とを照らし合わせて見ますと、それから、ご本人の所得と資産の状況を見ますと、今回の見直しは十分に対応していただけるという範囲だというふうに考えております。

○渡辺委員 本当に何をいってるんですか。そういう実態も調査もしないで、そんなことをよくよくいえるなというふうに私は思うんですよ。東京都自身が行った本格的調査、その結果をちゃんと生かして、都民生活の現実に沿った政策決定を行うべきなんですよ。低所得の高齢者の多くは、女性を中心とした国民年金のみの人たちです。国民年金の平均額が五万円程度ですから、極めて現実的な調査結果なんです。わかっていますよね。
 しかも、こうした人にも介護保険の保険料は容赦なくかかる。大体千五百円の十二カ月で、年収五十万円の人でも、そこから一万八千円が介護保険料だけで出ていく。それに加えて、知事が提案している福祉見直しの大きな負担がかかる。大変な問題じゃないんですか。
 さらに、もう一つ問題なのは、知事は、昭和四十年代に骨格ができた経済給付的事業中心の東京の福祉は、時代おくれだから見直すといいますけれども、これは全く見当違いという点であります。
 第一に、さきに紹介した国民、都民の要望や高齢者の所得状況を見てもわかるように、経済給付的事業の役割はいささかもなくなっていません。
 第二に、昭和四十年代の革新都政が取り組んだ福祉の充実は、シルバーパスや医療費助成、福祉手当など経済給付的事業だけを中心にしたものではないのであります。
 例えば、介護券を独自に考案して、全国一のヘルパー派遣事業を実現しました。ポストの数ほど保育所をと増設を推進し、今日の児童福祉の基礎をつくりました。また、無認可保育室や学童保育、障害者共同作業所への補助にも初めて道を開きました。社会福祉振興基金で、地域に密着した住民参加型団体への支援にいち早く取り組んだのも、昭和四十年代の革新都政であります。いずれも、東京の福祉を支える土台として、かけがえのない役割を今日果たしているのであります。
 どれもこれも、石原知事の財政再建推進プランで予算削減の矢面に立たされているのであります。その中でも、とりわけ経済給付的事業に矛先を集中して、都民の生存権、生活権保障の切り捨てにまで踏み込もうとしているのが、今回知事の提案している福祉の抜本見直しであります。
 そこで、次に、具体的な施策の見直しについて伺います。
 まず、シルバーパスであります。
 我が党の代表質問でも紹介しましたが、老人福祉法は次のように基本理念を掲げています。老人は、多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として敬愛されるとともに、生きがいを持てる健全で安らかな生活を保障されるものとする、老人は社会的活動に参加する機会を与えられるものとする。シルバーパスは、こうした高齢者の生活と社会参加の権利保障と敬老の精神を具体化したものであります。だから、無料制度が基本とされ、高齢者に喜ばれ、すべての政令都市のほかに、全国の自治体に今なお広がっているのであります。
 それだけに、青島都政以来のシルバーパス見直し計画に対し、多くの都民からシルバーパスを守ってほしいとの声が上がり、運動が広がり、七二%の都議会議員が、現行のまま存続、拡充と明確に公約して、都民の負託を受けたのであります。
 その中で知事が提案した見直し案は、二重、三重に重大なものであります。まず、現在の所得制限を強化し、若干の経過措置の後、住民税課税者全員が二万五百十円の高額有料パスとなる問題であります。
 これにより、どれぐらいの人数の人が影響を受けるのかということでありますが、現在無料パスで、来年度経過措置の対象となる人は何人でしょうか。また、そのうちパスを実際に利用する人は何人ですか。推計をお示しいただきたい。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 無料パスの方でございますが、経過措置の対象者の方は十万一千人でございまして、そのうち、交付される方は今八万五千人と見込んでいるところでございます。

○渡辺委員 実に十万一千人が、無料パスから、来年度は五千円、三年後には二万五百十円の高額有料パス、こういうふうになるわけですね。
 念のため伺いますが、ことし七十歳で初めてシルバーパスの交付を受ける住民税課税の人は、経過措置の対象で五千円のパスとなるんでしょうか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 十二年でございますが、ことしの十月一日以降に七十歳になられる方は今度の制度の対象になります。しかし、九月三十日までに七十歳になる方は、現行の制度のもとで申請されれば無料パスが交付されます。そういうことでございます。

○渡辺委員 要するに、十月以降七十歳になって初めてパスの交付を受ける住民税課税の人は、経過措置が適用されず、全員がいきなり二万五百十円になるということですね。そんなことが今までわかっていましたか、多くの皆さんが。私、正直いって本当に驚いたんですけれども、例えば九月生まれの人は一カ月間無料パスがもらえて、十月以降は経過措置の五千円、十月生まれの人はいきなり二万五百十円、何日間かの誕生日の違いで大変な不公平を生み出すということになるのであります。(発言する者多し)
 さらに、経過措置が終わる三年後の影響はどうでしょうか。予特資料の一一〇号で、平成十五年度の交付者九十七万八千人と推計していますが、そのうち、二万五百十円の対象者数と交付者数を示してください。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 済みません、もう一度お願いします。ちょっと聞こえなかったもので、申しわけありません。

○渡辺委員 では、もう一度いいますよ。経過措置が終わる三年後の影響はどうでしょうか。予特の資料にも書かれておりますが、平成十五年度の交付者数九十七万八千人と推計しておりますけれども、そのうち、二万五百十円の対象者と交付者数を改めて示してください。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 二万五百十円の対象者でございますが、四十万八千人のうち、交付者数は十四万六千人と見込んでおります。

○渡辺委員 高額パスの対象者が四十万八千人、そのうち、わずか三六%の十四万六千人しか実際には買わないという計算であります。これは、我が党代表質問で指摘したように、住民税が均等割のみに軽減されているような人まで高額パスになることで、高くて買えなくなる人がいかに多く生み出されるか示した数字であります。しかも、私が心配するのは、実際はもっと少ない人しか買えないのではないかということです。今の高い所得制限を超えている二万五百十円の有料パス対象者のうち、実際にパスを購入している人は、わずか二割弱であります。それほど二万五百十円の高額パスは人気がないんです。
 聞きますが、所得の高い人が二割弱しか買わない高額有料パスを、どうして、もっと所得の低い人も含めて三六%が買うという推計が成り立つんでしょうか。実際にはもっと少ない人しか買えないという結果もあり得るのではないですか。知事にこれはお伺いします。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 現在七十歳から七十四歳の方が、年齢が上がっていくわけでございますから、そういうことを含めまして現在試算してございます。また、高齢者の状況も人数も変化するということから、そういう推計をしているものでございます。

○渡辺委員 この問題は、住民税を払っている人の六四%、あるいはそれ以上がシルバーパスから除外されてしまう結果になる。今まで無料パスの対象だった所得層の人の多くが、シルバーパスを持てなくなることを意味している重大な問題なんです。知事が提案した見直しは、しかもその上、住民税非課税の人は、先ほど見た、年収五十万円未満というような人まで含めて、一切の減免なしの一律千円の全面有料化であります。
 お尋ねしますが、千円は事務手数料だという説明も当初ありましたけれども、提案されている条例では、費用負担についてはすべて規則で定めるとしています。規則には、千円は手数料と明記されるんでしょうか。
 さらにもう一点、有料パスの代金は都に入るのでしょうか。条例案によれば、バス協会かバス会社の財源になるのではないですか、あわせて簡潔に答えてください。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 今提案中の条例では、パスの利用及び発行する費用として規則で定めることにしております。また、都の歳入には計上してございません。

○渡辺委員 確認はしましたけれども、これまで持って回った答弁ですが、手数料という規定は条例にも規則にも明記されていない、二万五百十円と千円の二種類の有料パスができる、簡単明瞭な話でありますけれども、また、知事は、有料化による新たな財源は高齢者の雇用の確保などに使うともいっています。
 答弁がありましたように、この財源は東京都の歳入にはなりません。それでは、どこへ行くのか。東京バス協会か各バス会社の収入になるんでしょう。いかにも都の新たな財源になり、何か施策拡充に使うような誤解を招くいい方は慎むべきであります。しかも、来年度予算案では、労働経済局の高齢者の就業対策予算というのは、シルバー人材センターへの支援も含めて、九・五%の大幅削減じゃないですか。千円は事務手数料だとか、高齢者の雇用確保の財源に使うとか、いろいろといいますけれども、全面有料化の道理は全くありません。六千円の当初案が千円になったからいいというものではないのであります。
 それでは、次に移りますけれども、全面有料化と並ぶ今回の見直し案のもう一つの重大問題についてであります。
 制度改定後の事業主体は、これまでどおり東京都ですか、それともバス協会ですか。また、パスを発行するのは、これまでどおり都知事ですか、それともバス協会あるいは各バス会社でしょうか、お聞きします。
   〔発言する者多し〕

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 まことに済みません。ちょっと聞こえなくて、もう一度よろしくお願いします。

○植木副委員長 皆さん、静粛にしてください。
 ちょっととめてください。
   〔速記中止〕

○植木副委員長 では、再開します。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 まことに申しわけありません。もう一度お願いしたいと思います。
   〔発言する者多し〕

○植木副委員長 ちょっととめてください。
   〔速記中止〕

○植木副委員長 では、再開します。

○渡辺委員 では、時間がないから次に入ります。
 手数料という規定は条例にも規則にも明記されていない、二万五百十円と千円の二種の有料パスができる、簡単明瞭な話だということを先ほどいいました。また、知事は、有料化による新たな財源は高齢者の雇用の確保などに使うといいますけれども、答弁がありましたように、この財源は東京都の歳入にはなりません。それでは、どこへ行くのか。東京バス協会か、各バス会社の収入になるんです。いかにも都の新たな財源になり、何か施策拡充に使うような誤解を招くいい方は慎むべきだといったわけでしょう。それで、人材センターへの支援も含めて九・五%の大幅削減じゃないかと。
 そこで、ではもう一回聞きますが、制度改定後の事業主体は、東京都ですか、それともバス協会ですか、こういうことをお聞きしたんですけれども。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 東京都シルバーパスにかかわる事業につきましては、その行う者及びパスを発行するのは、ご提案中の東京都シルバーパス条例第二条によりまして、知事が指定する団体でございます。

○渡辺委員 都知事が指定する団体は、具体的にはどこを予定しているんでしょうか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 現在のところ、社団法人の東京バス協会を予定しているところでございます。

○渡辺委員 都知事が交付してきたこれまでの事業のあり方を大転換させて、今後はバス協会が行う高齢者向け割引乗車証の発行に対して東京都が補助金を出す、利用者はバス会社からそれを買う、ただし、東京都シルバーパスという名前は残る、それが今回の条例案の内容であります。ですから条例案は、費用負担の問題や、発行事務を民間事業者に委託できるといった条文の挿入などの部分改定でなく、第一条の事業目的から始まる、文字どおり全面的な全文改定であります。
 伺いますけれども、具体的な影響について一点だけ、パスをなくしたような場合の再発行の扱い、これはどのようになるんでしょうか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 現行の制度では、規則に基づきまして一回限り発行の申請が可能でございます。しかし、見直し後、これからの取り扱いにつきましては、交付場所だとか、あるいは返還の場合だとか、いろいろな課題がございますので、そういうのとあわせて現在検討を進めておるところでございます。

○渡辺委員 検討中というのはそのとおりでしょうけれども、二月二日に東京都が特別区に対して行った説明資料、私持ってきましたけれども、ここにはちゃんと出ているんです。都が特別区に対して行った説明資料によりますと、定期券と同じ扱いになるので、法律上再発行は困難なため、再発行については困難である、こういうふうに明記されているんです。
 現在の再発行数は、月平均百件、年間千二百件ほどあると聞いておりますけれども、結構多いんですね。それが今後は定期券と同じ扱いですというと、今回の制度改定の本質がここに示されていると私は思うんです。今までシルバーパスは東京都知事が一人一人に発行するからこそ、これを受け取った高齢者は、東京都は私たち高齢者のことを忘れずに大事にしてくれていると、そういうことで元気で長生きしようということで励みになっていた。毎日大事にシルバーパスを利用してきたんですよ。
   〔発言する者多し〕

○植木副委員長 静かにしてください。

○渡辺委員 そういう事業の趣旨、あり方の大転換について、都民的な徹底的な議論を尽くすことなしに決めるということは許されないんじゃないでしょうか。
 以上見てきたように、提案されているシルバーパスの見直し案は、どこからどう見ても、現行のまま存続とはいえません。七割を超える都議会議員の公約に照らして、到底認めることができないものではないでしょうか。公約は政治家の生命であり、多くの都民が、公約に対する各都議会議員の態度を注視していることを改めて指摘しておくものです。
 公明党さんもそうですよ。ここにありますけれども、昨年の知事選挙であなたたちもそういう……。(発言する者あり)
 次に、老人医療費助成の廃止であります。重大な問題ですが、時間の関係で、きょうは若干の質疑にとどめさせていただきます。
 初めに、現行制度を継続した場合、平成十二年度と平成二十二年度の対象者数と必要となる助成額の推移を教えてください。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 マル福の対象でございますが、予特の資料としてお示ししてございますが、現行制度を維持した場合、平成十二年度の対象者数は四十三万人、助成額は二百七十二億円となり、平成二十二年度の数は四十九万人、二百八億円と推計されております。

○渡辺委員 このままでは制度が維持できないとか、高齢者がふえて大変だといいますけれども、十年後の推計も、びっくりするようなものではないんですね、今の数字を聞いても。十年後にふえる必要額が三十六億円、大変だといっても、都の財政力をもってして、現行制度が維持できないはずがないじゃないですか。
 しかも、マル福は、六十五歳から六十九歳の早期高齢者の方々の健康保持、病気や介護予防のためになくてはならない制度であり、これから本格的な高齢社会を迎えるからこそ、その役割はますます重要になると私は思います。だから、我が党だけでなく、東京歯科医師会を初め多くの医療関係者と都民が、マル福制度は必要だ、継続してほしい、こういう声を上げているのであります。
 また、公明党本部も、先ほども示しましたけれども、ここに持ってきましたけれども、九十八年の十一月、一斉地方選挙の前に発表した基本政策ですよ。二十一世紀東京改革プラン、ここでは、都独自の事業である老人医療費助成制度の所得制限の緩和及び一部負担金の軽減に努めますと、はっきりと公約しているではありませんか。これは二十一世紀の初めの十年間をめどにした政策だともされています。
 マル福が廃止されたら、都の試算で一人当たりの一年間の医療費負担が二万五千七百七十六円から九万二千五百二十円に、六万七千円近くはね上がります。年間所得が五十万、百万未満という高齢者が東京にたくさん暮らしているんです。六年間の経過措置があるといいますけれども、六年後に、国民年金の支給額が大幅に改善されたり、医療費負担が大幅に軽減される見通しがあるのですか。
 そういう点で、知事にお聞きしますけれども、マル福廃止で、お金がなくて医者にかかれなくなるという問題が生まれてくると思いますけれども、どうでしょうか。
   〔傍聴席にて発言する者あり〕

○植木副委員長 傍聴人に申し上げます。
 ご静粛に願います。

○石原知事 詳しくは担当の局長からお話しいたしますが、共産党の皆さんと話していると、基本的に福祉に対する認識が違うという感じが強くいたしますね。二度、三度申し上げましたけれども、あなた方は、どうも狭義の福祉行政というものが自治体の行政の柱であるように主張していらっしゃいますけれども、自治体存立の使命というのは、もっと広い意味での住民の福祉の向上にあるわけでありまして、例えば先ほど申しました環境問題、これに非常に影響のある都市基盤整備(「簡潔に答えてよ」と呼ぶ者あり)ーーいや、いいたいことはいうんだよ。(発言する者あり)やめろというなら、やめますよ。やめようか。

○植木副委員長 石原知事、委員長の指示に従ってください。

○石原知事 せっかく共産党の迷妄を開いてあげようと思ったら、長過ぎるとかヘチマといわれても、かかるべき時間はかけなかったら、意は通じないんだから。
 ですから、環境問題とか、それに関係のある都市基盤の整備とか、治安とか教育とか医療とか、さまざまなニーズにこたえて、安心、満足していただくのが、私は要するに行政の福祉の大眼目だと思います。
 憲法二十五条にも、国民に対して、健康で文化的な最低限の生活を保障すると。しかし、これはむしろ国の責任でありまして、やはり国も財政を行っていますし、地方自治体も財政を行っておりますが、財政の果たす機能というのはいろいろありますけれども、例えば資源の適正な配分、あるいは所得の再配分、あるいは景気の安定化、こういったもののために要するに財政が行われている。しかし、公的扶助のような社会的再配分、要するに所得の再配分というこういった機能は、本来は国がやるべき仕事であります。そして地方財政というのは、主として資源の適正な配分機能というものを担うものだと私は思います。
 しかし、それで済みませんから、できることは各地方自治体がやってきているわけでありますけれども、いずれにしろ、一方には国が構えているナショナルミニマムというのがあるわけでありますから、これも一応承知していただきたい。そして、やはり福祉の分野で、現金給付的な事業というものを中心に、国の制度の枠を超えた単独事業や、国制度に上乗せした事業も確かに東京が行ってきました。しかし、やはりそれは結果として、そういう経費の増大が人件費とともに財政の硬直化というものを大きく招いた。そして、いろいろな点でひずみが高じてきたわけであります。
 ですから、共産党のおっしゃるみたいに、要するに狭義の福祉というものを盾にとって、これが地方自治体の軸であるような、そういう発想というものは、木を見て森を見ない、こういう基本的な認識の違いがあると私は思います。だから、もしあなた方が考えているこの福祉というものを実現しようと思うなら、しょせん都議会も国会も、全部選挙による代議制なんだから、せいぜい頑張って与党になられたらいいじゃないですか。
   〔発言する者多し〕

○植木副委員長 静かにしてください。

○渡辺委員 今話がありましたけれども、地方自治体の本旨というのは、地方自治法で定められているように、住民の安全と健康、これを保持するということが基本でなければならないということで、はっきりしているわけです。
 それからもう一つは、現金給付事業ですけれども、これは時代おくれだといいますけれども、この現金給付事業というのは、今や福祉のかなめになっているんですよ。これは日本だけじゃない、世界的に見たってそうなんだ。そういう点から見たら、見解の違いはあるかもしれない。しかし、やはり法律に基づいて、地方自治法の立場に立って明確な、住民を基本とする、そういう都政というものを運営していってもらいたい、こういうことであります。
 まともな調査をして、後ではっきりさせていただきたいと思いますけれども、そこで今申し上げましたように、マル福というのは、本当にお年寄りにとっては命綱になっている。そういう意味で、このマル福そのものを廃止をするということでなくして、もう一度再検討する、そして都民にこたえる、こういうふうに取り組んでいただきたいと思うわけであります。
 次に、老人福祉手当の廃止についてであります。
 知事は、介護保険が始まるから老人福祉手当は必要なくなるといって、廃止を提案しました。しかし、読売新聞の全国調査によると、今まで介護手当を実施してきた全国の自治体のうち七割が、介護保険実施後も制度を継続する方針であると回答しています。東京都のように、ばっさり廃止するというのは本当に乱暴な話だと私は思います。
 それで伺いますが、廃止方針を決めるに当たって、老人福祉手当の受給者の実態調査はやったんでしょうか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 昨年の四月から五月にかけまして、各区市町村に対しまして状況を聞いております。

○渡辺委員 区市町村に聞いているということでは、やっていないということじゃないですか。まともな実態調査をやっていないんでしょう、いずれにしたって。それで廃止だけ先に決める、とんでもない話だ、私はそう思うんですよ。
 我が党は、手当受給者の二百一名から聞き取り調査を行いまして、せんだって発表いたしました。その結果、九九%の人が、介護保険が始まっても手当は必要と答えています。
 知事、この調査結果をどう思うでしょうか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 大変高額な手当でございまして、他の府県にも例を見ないということですから、受給される方については、当然欲しいといいますか、当然そういうお考えと、お答えとしてはそういうお答えになるのだろうというふうに思っております。

○渡辺委員 お金が欲しいとか欲しくないとかという、そういう次元の問題じゃないですよ。(発言する者多し)ちゃんと聞きなさいよ。
 調査の結果、改めて明らかになったことは、介護保険が始まっても、老人福祉手当は必要だということ。寝たきりの高齢者や介護をしている方から寄せられた声というのは、実に生々しく説得力がある。介護保険が始まっても、介護をしている家族の重い負担が直ちになくなるものではないんです。
 実際に、都の計画で、ヘルパー派遣は、平成十二年で、介護を必要としている高齢者の四〇・八%、手当が完全に廃止される平成十四年末で四九・五%をカバーできるにすぎません。これでどうして廃止の結論が出てくるのでしょうか。
 我が党の調査の結果は、介護者の七割近くが介護に専念しています。介護のために仕事をやめたなど、就業に影響を受けた人は四割に達しています。また、重い寝たきりや、徘回する痴呆高齢者の場合は、特に、ヘルパー派遣などの在宅サービスを受けていても、家族による介護や見守りが常時必要という実態が報告されております。多くの方々から、東京都は、介護保険が始まれば働きに出ることができると思っているのですか、あるいは、収入がふえないのに手当が切られて、どうやって生きていけというのでしょうか、あるいはまた、介護保険で二十四時間、三百六十五日見てくれるのでしょうかと、いろいろな切実な声が寄せられたわけであります。
 知事、都として実態調査が必要というふうに思いませんでしょうか。

○神藤高齢者施策推進室長福祉局長兼務 老人福祉手当につきましては、制度創設時の状況で、施設に入所されている方との差があることから、手当を創設しまして、その後拡大してきたところでございます。
 しかしながら、ご案内のように、ことしの四月から介護保険制度ができるということで、特別養護老人ホーム等の施設に入所されている方と在宅でいらっしゃる方が、金額にしてほぼ同額のサービスが受けられるということから、この制度の目的は達したということから、今回見直しをさせていただくものでございます。

○渡辺委員 どこが達したと、そういうことがいえるんですか。調査も全然しないで、内容も本当につかもうともしないで、何がそういうことがいえるんですか。
 知事、いいですか、介護保険では、逆に経済負担はふえるんですよ。そのときに老人福祉手当を切るというのは、まさに弱者に追い打ちをかけるものではありませんか。寝たきり高齢者本人も介護者もみんな、一人当たり年間一万八千円から三万六千円程度の保険料がかかります。それに加えて利用料です。我が党調査では、手当受給者の約五割が、要介護度五です。介護保険のサービスを受けようとしたら、今まではほとんど無料だったのが、月に三万円以上負担がふえる、老人福祉手当があっても利用料は二万円しか払えない、その上手当が切られたらどうすればいいんですか、こういう訴えがたくさん来ているんです。
 我が党調査では、深刻な、いわゆる老老介護の実態も浮き彫りになりました。手当受給者の平均年齢は八十五歳で、九十歳以上が三割を占めていました。ですから、同居している子どもが介護者という場合も、その子どもというのが七十歳代という場合が少なくありません。当然のことながら、介護者も、限られた年金収入や預金の取り崩しなどにより、ぎりぎりの生活をしていることがわかりました。調査結果では、同居家族の月収十万円以下が二七%に及びます。それだけに、負担なければ介護なしの介護保険が始まるからこそ、経済支援を強めることが必要なんです。
 改めて聞きますが、知事、老人福祉手当の廃止案は凍結して、介護保険実施後の受給者と家族の生活実態、介護の実態を調査し、十分に分析した上で今後の方向を検討すべきと思いますけれども、どうでしょうか。

○植木副委員長 石原知事、考え方について聞いているんでしょう。

○石原知事 東京にもいろいろな方がおられまして、それぞれ生活の条件が違う。しかし、本当にお困りになっている方は、私はやはり配慮しなくちゃいけないと思いますが、しかし、あなた方が所論に都合のいい事例を挙げられても、そうじゃないケースもたくさんあるわけでありまして、ですから、政治というのは、バーズビュー、つまり鳥瞰図でしょせん仕事をせざるを得ない。それは個々の政治家は、自分の身の回りの方に配慮して、虫瞰図、いわゆるインセクトビューで物をおっしゃるかもしれないけど、それにこだわり過ぎると、政治が政治にならないんですよ。
 やはり行政というのは、ある場合には、非情といわれては困るけれども、やはり切るものは切らなかったら、全体が生きてこない。そういう観点で私は今回の予算を組みました。福祉も、その考えにのっとって、要するに切るべきものは切ったかもしれませんが、しかし、新しいシステムを講じて、新しい予算も組みまして、新しい時代の新しいシステムで福祉を運営するように行うべく予算をつくったわけであります。

○渡辺委員 都民一人一人の生活を守るべき知事としての答弁、そういう点でいうと本当に情けない、そういうふうに私は思いますよ。
 新たな展開ということで組んだということをいわれますけど、きょうは時間がありませんから、その問題は後に回しますけれども、その中身は本当にないということと全く同じですよ。
 なぜ切ったかということについて、一つだけ申し上げておきます。私は足立区出身ですから、足立区の人の例一つだけ申し上げます。
 ご主人が寝たきりで、夫婦二人の生活ですが、月収、年金だけの七万円。介護保険が、足立区の場合は三千六百円。夫婦二人で七千二百円でしょう。そういうことで、この人たちが、本当にここで福祉手当が廃止される、こういうことになったら、どういうことになるのか、本当に生きていけるのか、こういう問題も問われるわけです。
 そういう意味で、改めて私は、先ほども要求しましたけれども、再検討する、こういうことでひとつ要求しておきたいというふうに思います。
 時間もありませんから、先に進みますが、次に、臨海副都心開発の中で焦点となっている、有明北地区の埋立問題について伺います。
 有明北地区の埋め立ては、自然を破壊する問題、臨海目的が破綻している問題、都財政への負担の問題という三つの点から、今日の時点で立ちどまって再検討することが求められている公共事業の一つであります。
 第一に、自然を守るのか、公共事業を優先するのかという問題です。
 この七日には、釣り愛好者、釣り船業者、屋形船業者、自然保護運動の人々などが、五十九隻の船を繰り出して、有明の貯木場を残せの海上デモを行いました。また、続いて十一日には、専門家も含めたシンポジウムが開かれ、このシンポジウムを機会に、仮称貯木場を存続させる会が発足したわけであります。
 この二つの取り組みは、マスコミでも大きく報道され、都民の関心を呼んでおります。それは、この埋立問題が、たとえ人の手が入った自然であっても、吉野川可動堰や愛知万博、千葉県の三番瀬などと同じように、環境を守り二十一世紀に伝えていくのか、開発のための公共事業を優先するのかという問題を鋭く提起するものだからであります。
 そこで、まず伺いますが、知事が、東京港全体から見れば、マハゼは十分生息していけるといわれる根拠でありますけれども、これについてお伺いしたいと思います。

○石原知事 先日の代表質問に対しても答弁いたしましたように、マハゼは、東京港のほぼ全域において生息する魚でありまして、成長に従ってあちこち移動する魚でもあり、貯木場であった有明北地区だけが唯一の生息地ということでは決してございません。環境影響評価に当たっての調査結果で述べているように、有明北地区の生息孔の密度は、多摩川河口域等と比べて甚だ小さく、東京港の奥部の周辺水域と同様な生息環境であります。
 以上のことから、東京港全体から見れば、マハゼは十分、あちこち移りながら生息していけるものと考えております。
 なお、反対を唱える雑誌を初めとして、各種の釣り新聞や釣り雑誌で、東京港に多くのハゼの釣り場があることが既に紹介されており、こうした事実からも、以上のことが明らかであります。

○渡辺委員 東京都が埋め立てに当たって行った環境影響評価と、その原資料となった、港湾局が委託して九六年から九九年にかけて行った環境調査報告書がここにあります。持ってまいりました。それを見ますと、評価書の二八八ページでは、埋立区域でも生息孔が確認されているけれども、羽田沖や多摩川河口付近と比べ、その密度は低く、湾奥の周辺地域と同様な生息環境にあると考えられると述べています。知事の本議会での答弁は、この環境影響評価と港湾局環境調査を根拠にされていることは明らかであります。
 そこで、この論点を整理しますと、一つは、羽田沖、多摩川河口付近と比べて有明北地区の場合はハゼが少ない、もう一つは、有明北地区を含む東京湾の一番奥の地域と比較しても、有明北地区のマハゼは多いわけではないという、そういう二点に絞ることができると思います。
 まず、羽田沖、多摩川河口との比較ですが、それは、有明北地区を初め臨海副都心の周辺は、隅田川の河口になっております。多摩川とは水系がまるで違う海であること、さらには、江戸前といわれる海と京浜工業地帯に属する羽田沖の海では、都民にとってのなじみも、レクリエーションの場としても全然違う海であることなど、同じ東京港などといって、まぜこぜにするのは間違いだということをまず申し上げておきたい。
 しかも、羽田沖の方がマハゼが五十倍も多いという港湾局長の答弁も、二つの点で説得力に欠けるものがある。
 それは一つは、五十倍違うという根拠となる調査は、環境影響評価の資料編の一八〇ページに紹介されているものを使われているのですが、この調査は、九七年の三月に行われた際の、マハゼの生息孔の数を比較したデータを使用しています。そして、その根拠を、三月期が、マハゼが生息孔を掘る最盛期といわれるからだとしています。これは、マハゼの産卵期が三月が最盛期とは限らないという点で、まず信憑性が疑われる。それは、マハゼの産卵は、十二月から四月までの長い期間にわたっているのは常識だからであります。だからこそ、環境アセスの原資料である港湾局調査でも、生息孔の作成及び産卵として、その時期を十二月から四月までとしているのではありませんか。勝手に都合よく三月だけを産卵時期と決めて比較するのは間違いであります。とりわけ、有明北地区のマハゼの産卵時期は、一番早く、十二月なんです。生息孔も、この十二月に一番多く発見されているのであります。
 このことについては、同じ調査報告の九六年版では、こういっています。有明北貯木場は水深が浅く、十二月には外気の影響で水温が低下するので、マハゼの産卵の最盛期を早めているといっているではありませんか。つまり、あなた方の依頼した調査自身でも、有明北地区の産卵は十二月であると認めているのではありませんか。専門家の方も、この見解を支持して、有明北のマハゼの生息や産卵について調べるなら、十二月を基準とすべきだといっているのであります。
 伺いますが、三月を調査時期に選んだのはなぜでしょうか。

○浪越港湾局長 調査結果によりますと、有明北地区では巣穴の数が十二月にピークとなりましたが、マハゼの生殖腺が未成熟であったことや、巣穴の延長も短く、産卵のための部屋もできていなかったことから判断して、十二月期については産卵期でないと判断しております。

○渡辺委員 専門家も、生息や産卵を調べるんだったら十二月に基準を合わせるべきだ、こういっているんですから、それはもう納得できない。十二月で比較すれば、九七年データで、羽田沖と有明北との比較は二対一なんですね。
 もう一つの問題は、羽田沖や多摩川河口の場合は、年によってマハゼの数が激変するということなんです。実際に、本会議で港湾局長が多摩川河口が五十倍といった九七年の生息密度は一八・二ですが、その翌年はこれが五・一に激減して、さらに翌年の九九年には三・二、いわゆる六分の一にまで減っているんです。この数字ならば、三月期で比較して有明北の六倍程度、十二月期ではほぼ同じにすぎません。
 なぜこんなことが起きるのかというと、多摩川の場合には、大雨の後、水質の汚濁が起き、それが原因でマハゼが生息できなくなることが明らかです。大雨のときには、都内の合流式雨水下水道から未処理の汚水も一緒に川に流れ込む。こうして、汚れた川の水が多摩川河口や羽田沖に流れ込んでくると、マハゼは生息できなくなるからであります。
 もう一つ、有明北地区周辺の江戸前の海での比較も問題があります。
 環境アセスでは、三月期の生息孔の密度が、お台場海浜公園や東雲運河などの埋立区域周辺の水域とほぼ変わらないと結論づけていますが、これも、十二月期の調査で比べると、周辺平均と比較して有明北地区が四・七倍と、有明北地区の方が断トツに多いということがはっきりしているわけであります。
 それがこれですね。(パネルを示す)いかに有明貯木場のところが比率が高いか、数字でもはっきりしている。後でよく見ていただきたいと思います。
 以上の点から考えますと、環境アセスと、その原資料は、有明北地区の産卵が少ない三月を基準にしたり、全く離れたところの多摩川河口などと比較したり、生息孔と産卵孔は違うものだとか、恣意的といわれても仕方がないように思うわけであります。ある専門家の方は、科学性に疑いを持たざるを得ない、こういうふうにいっているのであります。そういう点から調査をしっかりやる、こういうことがやはり必要だというふうに思うわけであります。
 また、十二月に調査をやっても、都合が悪いので排除してしまった、こういうことも、やはりいわれても仕方ない。二月の、まだマハゼが成長過程の稚子魚では、有明がその周辺で一番多く見られることや、九月の成魚の数も有明北地区が群を抜いていることなども無視しているのはだれかということがいえるわけであります。
 大体、環境アセスそのものが、工事を行う業者がやることになっているんですから、都民から見れば、合わせメントとまでいわれているように、本当に第三者機関で調査を行う、これくらいのことが最低限必要なんだ。
 有明北地区にハゼが多く生息するのは、この地区が、堤防で囲まれた閉鎖的な空間で、波も少なく、海流の影響も受けにくいからであります。釣り人や釣り船、屋形船が、この十六万坪といわれるところに集まってくるわけがここにあるのであります。まさに江戸前のハゼの絶好の生息地という実感の背景に、このような裏づけがあるわけであります。
 十二月の早い時期に産卵する有明北地区から、二月、三月という順序に産卵が行われ、羽田沖では三月が最盛期となることは、一方で絶滅の危機に瀕しても、他方で生き残れるという、まさに自然が生み出したマハゼの生き残り戦略といわなくてはならないわけであります。
 知事、重ねて申し上げますけれども、東京湾は、かつての高度成長期に海が汚れ、六〇年代半ばころから十年間、ハゼが全くいなくなることもあったんですよ。東京湾のどこかにハゼが生息しているからいいんだということではなくして、今都民が求めているのは、あの東京湾の最も奥深い場所、かつて江戸前といわれた場所、しかも、見上げれば都心のビルが林立しているところ、都会のど真ん中ともいうべきところにマハゼが生息している貴重な海を二十一世紀に引き継ぎたいという、こういうことであります。
 開発を優先するのではなく、ここまで開発を進め、自然を壊してきたからこそ、立ちどまってストップをかけることが必要なのではないでしょうか。
 第二に、開発目的の点からも、立ちどまって再検討が必要だということです。
 有明北地区は、もともと土地利用の目的が住宅系とされ、おおむね臨海副都心の住宅の六分の一の一万四百戸を受け持つことになっていました。そして、その中で、有明北埋立地は住宅市街地とされていたものであります。九七年の青島前都知事のもとでの、臨海副都心開発の見直しによっても、民間と協議とされましたが、この場所が、公的住宅が中心であることは変わりはないのです。
 伺いますが、九〇年に作成された住宅マスタープランでは、有明北地区の住宅の構成はどのようになっていて、この事業化の方針ではどのように決められているんでしょうか、簡潔にお願いいたします。

○浪越港湾局長 平成二年、九〇年策定の臨海副都心住宅マスタープランにおける有明北地区の住宅計画では、居住人口三万三千人、計画戸数一万四百戸、住宅供給主体の考え方としては、有明北一区域及び三区域については、供給主体比率をおおむね、その他主体五%を含む公共主体八五%、民間主体一五%としています。民有地の有明北二区域については、計画策定時点での事業主体別の供給割合を特定するのが困難であるが、方向としては民間による供給を前提としながらも、部分的には公共主体の参画があることも想定することとしていました。
 事業スケジュールは、平成六年度から始まる創設期に有明北三区域、平成十年度からの発展期には、有明北一区域及び二区域の事業化を図るとしております。

○渡辺委員 もともと有明北地区の開発は三つの区分に分けられ、それぞれ開発時期も異なっていて、埋立地は、そもそも公的住宅が八五%の住宅市街地とされていたんです。これは最初の開発計画の住宅が予定された用地ですが、副都心内で何らかの住宅が予定されていた土地で、今もって遊休地になっているのがいっぱいある。
 例えば、暫定利用されているパレットタウンでは、もともと住宅との複合地、また来年度から一般会計が二千二百億円かけて引き取りを始める有明の丘自体、公的住宅地だったんですね。もし区画整理を行うとしても、少なくとも有明北埋立地域の分を切り離して他の未利用地に建てるというのは、埋め立てに十年近くかかることを考えても、現実的な考え方ではありません。本来、住宅を建てるべきところを遊ばせたり他に転用しておいて、有明北だけは譲れませんというのは筋が通らないのではありませんか。
 それは、有明北地区の埋立地が公的住宅を中心としているにもかかわらず、肝心の公的住宅を供給する仕組みがなくなってしまったということです。まず、国の住宅・都市整備公団が都市整備公団に変わって住宅建設から撤退してしまったこと、さらに、都の住宅供給公社が新築から事実上撤退し、都営住宅も来年度予算で新規建設ゼロとなるなど、供給主体がなくなっていることであります。開発目的が崩れ、計画そのものを揺るがしかねない問題を重要でないというのは信じられません。
 都は、公的住宅がだめなら民間住宅を誘致するなどとすぐいい始めますが、臨海の周辺で幾らでも民間住宅が建てられているのではありませんか。例えば、有明のすぐそばの東雲の三菱不動産の計画もありますし、大体、知事が危機突破・戦略プランで紹介している東京臨海地域に主なプロジェクトを見ると、有明周辺で十八カ所の開発があります。面積のわかる十四カ所だけでも四百七十八ヘクタールにもなるんです。
 結局、住宅が必要といいながら、都が何が何でも埋め立てなければならない理由は見当たらないではありませんか。この点でも、冷静に立ちどまって計画を見直すことも求められているのではないでしょうか。
 第三の問題は、埋め立てに伴い巨額の資金が投じられることであります。従来、埋立会計は、埋立地を処分することで資金が蓄えられてきました。今、臨海会計に貸し付けられている三千億円もこうして蓄積されたものだったんです。
 有明北地区の埋立後の価値については、港湾局長が、本年度の基準地価、平米当たり三十八万五千円で試算して、千三百五十億円と答弁されています。埋立後、基盤整備が行われることで地価が上がりますから、とりあえず計画で予定されている臨海副都心の地代の二分の一、この平米で計算してみますと五十一万円になりますが、そうしますと、約二千億円の売り上げになるわけであります。この三十五ヘクタールの埋立地の三分の一を処分することで、埋立費用や水面占用権の補償、基盤整備七百六十億円を捻出するわけであります。
 そして問題は、残りの三分の二の土地です。通常では、残りの土地も売却され、その分が利益となるのであります。今回は、単純にいえば約一千二百四十億円が埋立会計に残る計算ですが、埋め立ての後になぜ埋立会計に一円も残らないのですか、示してください。

○浪越港湾局長 一円も残らないんじゃないかというお話でございますが、埋め立てにつきましては、埋立造成費や護岸整備費などを埋立地の処分収入で賄うこととしてございます。埋め立て後、広域幹線道路の整備などのため一定の開発者負担をするが、その他埋立地からの処分収入は埋立会計に収入され、埋立造成費などに充てられてございます。
 この埋め立てにより、税金を投入することなく、親水公園、あるいは防潮護岸、幹線道路などの公共施設が整備され、職住近接の住宅地がつくられるなど、価値ある都民の財産が生み出されることとなります。
 例えば、レインボーブリッジの例を一つとってみてもご理解いただけるとおり、国費と埋立会計、臨海会計のみで約八百七十億円の橋を建設したものでございます。都税は一切使ってございません。
 こうしたことから、本事業は極めて意義の高い事業であると考えております。

○渡辺委員 そんなことは認めるわけにいかないですよ。
 そもそも、臨海開発の当初の基本計画では、この埋立地を一千億円で臨海会計が引き取ることになっていたはずであります。少なくとも一千億円ものお金があったとしたら、これは全国の都市では一般会計に戻しているところが多いんですね、こういう埋立会計からですよ。埋め立てて、そして一般会計に戻す、これは、全国でもそういう方法でやっているんです。東京でもそうすれば、福祉など削らなくても済むんじゃないですか。私はそう思うんですよ。
 百歩譲って、道路が必要だとしても、臨海開発自体が計画どおりに進んでいないんですから、三本一緒につくらなければならない理由は見当たらない。新交通の豊洲接続が急がれるというのなら、それこそ時間のかかる埋め立てでなく、単独でやる方が早いんじゃないですか。財政的にも、道路街路事業でやることで国庫補助金も確保できて、都の負担も軽減される。違いますか。
 都はまた、埋め立てを行うことで、土地の価格が、価値が上がるといいますけれども、問題は、上がるとされる価値を一体だれが受け取るのかと、こういう問題です。はっきりしていることは、埋め立て後、自分のところには何も残らない埋立会計や、区画整理事業をやる建設局でもないことです。
 伺いますが、従来の有明北二地区といわれていた民間事業者が所有する土地の減歩率、現行計画では幾らで、埋立地を編入した後の減歩率は幾らになるのか、お答えいただきたい。

○浪越港湾局長 現行計画では、有明北地区全体の平均減歩率は約一八%となっておりますが、現時点では個別の宅地ごとの減歩率を定めていないので、有明北二地区の減歩率については算出してございません。
 埋立地を区画整理事業へ編入する場合には、所定の都市計画手続を経て行われることになります。これらの手続がなされず、区画整理事業計画が作成されていない現段階では、減歩率は確定されておりません。

○渡辺委員 減歩率が確定してない、あるいは決まってない、こういうことをいっても、我々信じることはできませんよ。
 これも百歩譲って、埋立地ができていないんですから、区画整理事業に編入されていないのは当然だ。しかし、この有明北地区は、既存の土地と埋立地を合わせて一体として大街区方式で行うということになっているんじゃないですか。当然、住宅に使う土地、道路用地、公園用地、保留地など、計算した上で認可申請だってやっているんでしょう。そういう点で、埋立地を含んだ大街区区画整理の計画は現にあって、地元地権者にもそれらを前提に説明されているんじゃないですか。
 都民の共有の財産であるべき埋立地の是非が問われている。なぜいえないんですか。いえないのは、内容が、到底胸を張っていえるようなものではないからです。
 現行の減歩率が一八%というのは、あなた方が出している区画整理のパンフレットの計画を計算すればわかる。埋立地を入れた後の減歩率も、埋め立て後の保留地や公共部分を差し引きすれば計算できるんです。
 先ほどもちょっとお話ありましたけれども、これでやると現行で一八%、埋め立て後が五から六%になるんです。皆さん、否定できないんですよ、これは。これは大変な優遇ですよ、五%、六%の減歩というのは。普通は、二割から、場合によっては三割減歩ということになっている。連続立体化事業が行われる京王線の沿線の調布市地域でも、何と減歩率は二五%だ。だから、住民の反対で何年かかっても進もうとしない。それが有明では五%というんですから、こんな話をきょう聞いたら、だれも都の区画整理事業などに協力してくれないじゃないですか、これでは。
 しかも、この減歩の利益を受けるのは、ゼネコンや大手不動産だということも重要です。私どもが承知しているのも、ゼネコンでは大林組、竹中工務店、清水建設、デベロッパーでは住友不動産、東武百貨店などが土地を取得しており、その中には、この埋め立てが具体化した後に土地を購入したところもあるんです。この土地を所有している清水建設、大林組、竹中工務店などの五社には、これまで十年間に、都の局長を初め二十人が天下っていることもわかっている。
 以上、私は、自然を守るのか、開発を優先するのか、開発目的が崩れているのか、そしてこの財政難の中、たとえ将来清算されるとしても、千三百億円もかけて埋め立てを進めることが必要なのか、大企業、ゼネコンのぼろもうけに手をかしてよいのかなどについて知事の見解をただしてきましたが、埋め立てがどうしても必要という納得できる答えはいただけません。
 代表質問でも紹介しましたが、環境庁の東京湾水域環境懇談会の報告の、東京湾が限られた貴重なオープンスペースであり、かけがえのない自然環境であることにかんがみ、今後臨海部における新たな空間需要に対しては、この未利用地の有効活用により対応し、開発空間確保のための埋め立ては抑止することを基本とすべきである、こういう環境庁の内容も謙虚に受け入れるべきと考えます。
 こういうことについて最後に答弁をいただきますが、時間がなくなりましたので、銀行への課税の問題、あるいは財政の建て直し問題、あるいはまた、臨海の開発問題については、後の予特や常任委員会にあわせてただしていきたい、こういうふうに思っております。

○浪越港湾局長 いろいろなご意見ございましたが、一言でお答え申し上げますと、現在の臨海部を含めた有明北地区の埋め立てを初めいろんな計画は、これまで、例えば平成七年九月から平成八年四月までの臨海副都心開発懇談会で、当初の計画を見直すということで十七回、その小委員会では十二回開催されて議論されるとともに、当都議会においても、臨海副都心開発特別委員会が平成七年九月に設置されまして、平成九年五月までの間に二十三回の委員会が開催され、議論に次ぐ議論をされ、それらの議論を踏まえて平成九年に見直しを行って、地元地権者や区の合意を得た上で今回の埋め立てを進めているわけでございまして、当初計画に比べましても海面を三分の一残すなど、自然環境にも十分配慮した計画になってございます。
 そういうことで、私どもは、着実にこの事業を推進していきたいと考えております。

○植木副委員長 渡辺康信委員の発言は終わりました。

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