東京都議会予算特別委員会速記録第二号

○清原委員長 これより参考人から意見を聴取いたします。
 本日は、都の安定的税収確保の具体的方策として提案されております外形標準課税の導入に関して、全国銀行協会会長の杉田力之さん、東京大学経済学部教授の神野直彦さん、宮城大学事業構想学部教授の糸瀬茂さんから順次意見を聴取いたします。ご了承願います。
 それでは、杉田参考人、発言席にお移りください。
 ただいまご着席いただきました参考人をご紹介いたします。
 全国銀行協会会長の杉田力之さんでございます。
 本日は、ご多忙のところご出席いただき、まことにありがとうございます。
 外形標準課税導入に関して、おおむね三十分程度でご意見をお伺いしたいと思います。
 なお、杉田参考人には、ご着席のままご説明していただきたいと思います。
 それでは、よろしくお願い申し上げます。

○杉田参考人 全国銀行協会の杉田でございます。
 本日は、東京都の新税構想にかかわる条例案のご審議に当たり、銀行界を代表いたしまして意見を申し述べる機会をちょうだいいたしまして、まことにありがとうございます。
 委員長からのお言葉もございましたので、恐縮ですが、座ったまま意見を陳述させていただきたいというふうに思います。
 東京都が、二月七日に銀行業等に対する外形標準課税の導入について発表して以来、都民の皆様を初めといたしまして、多くの方々から、銀行界に対する意見が寄せられました。そして、それらの大半が、銀行界への極めて厳しいご批判でございました。
 確かに、バブル経済の一端を担ったことなどにより、銀行界は、この十年余りの間に、長年にわたって培ってきた国民の皆様からの信頼に傷をつけてしまいました。私どもは、その反省に立ち、本質的な原因が何であったのか、そのようなことを二度と起こさないためにはどうすればよいのかを考え、改善に向けた対応に努めてまいりました。
 しかしながら、今回の件に関連して寄せられた銀行界へのご批判を謙虚に受けとめるにつけ、失ったものは余りにも大きく、一朝一夕に取り戻せるものではない、一日も早く国民の皆様からの信頼を取り戻すべく、銀行界としてさらなる努力をたゆまず続けていかなければならないと、改めて痛感しているところでございます。
 まずは、本題に入ります前に、このことを真摯な気持ちでお話し申し上げた次第でございます。
 では、本題に入らせていただきます。
 私どもは、都の新税構想に対し、強く反対しておりますが、これは、納税しなければならない理由について、どうしても納得感が得られないからであるということをまず申し上げたいと思います。
 都の新税構想が発表されてから本日まで、一カ月余りしかたっておりませんが、こうして、都議会におかれては、既にご審議が開始されております。それにもかかわらず、.多額の納税者になるかもしれない当事者の私どもは、なぜ銀行だけなのか、なぜ一部の大手のみなのかなどについて、いまだ都から十分な説明をいただいておらず、したがいまして、納得することはおろか、基本的な理解さえまだできかねている状況にあります。
 私どもは、新税構想の発表直後から、都に対し、納税者である私どもが十分に理解し、納得できるような説明をしていただくよう求めてまいりましたが、都の職員の方がお越しになられたのは先月の二十一日と、発表後二週間もたってからであり、しかも、その一回きりでございます。せっかくの機会ではありましたが、そこで私どもが理解し、納得のできるようなご説明はいただけませんでした。その際のご説明の中には、全く説明になっていないと感じられたものが幾つもございました。
 例えば、銀行の中でも、特に課税対象を大手三十行に絞った理由の一つとして、納税者の事務負担があるとのご説明をいただきました。しかし、私どもからいたしますと、都の案によれば、納税は申告によるものであり、かつ課税標準も業務粗利益とされる以上、これまで毎期やってまいりました通常の決算事務を何ら変更しなくてもよいわけであり、新たな事務負担が発生するとはとても考えられないのであります。
 本件につきまして、都の職員の方に、その理由はおかしいのではないかと問いただしましても、何もご返事はいただけませんでした。
 これはほんの一例でありますが、このような一方的かつ部分的な説明のみをもって、来期から多額の納税をしなければならないことを私どもに理解し、納得せよというのは、もともとの筋道や道理から見ても無理があります。
 私どもにとって新税構想を一層理解しづらいものとしているのは、石原知事のご発言や都の説明の内容が、時間の経過とともに変化していることであります。二月十三日、日曜日の午前中に、知事がテレビに出ておられるのを拝見いたしましたが、知事は、新税の対象業種を今後拡大するとも受け取れるご発言をしておられました。ところが、先月二十九日の都議会代表質問におかれては、銀行業以外に拡大することは考えていないとお答えになったように伺っております。
 私どもは、新税の対象業種を拡大すべきであると考えているわけでは決してありませんが、例えば、今後、対象業種を拡大するとも受け取れるご発言が、何週間か後に、銀行業以外に拡大することは考えていないという内容に変われば、このような今回の新税の本質にかかわるような重要なポイントで説明がこうも簡単に変わるものなのか、果たして本当にきちんとした真剣な議論がなされたのであろうかというふうに受けとめざるを得ないのであります。
 また、先月二十一日の都の説明の中でも、五年間の時限措置に関しまして、五年後も所得課税には戻すつもりはないとされたり、五年たってから考えるとされたりで、全く不明確でありましたし、さらに、資金量五兆円以上の銀行に限定する理由の一つとして、当初は盛んに徴税コストについて言及されていたのが、二十一日の都の説明では、それについて全く触れられなかったというのもございます。
 いずれにいたしましても、直接的には十分な説明がない、間接的な情報も刻々と変わるという中で、新税構想について理解し、納得することは、到底無理というものであります。
 なお、明確なご説明がいただけないため、銀行界といたしましては、都に対し、今回の新税構想を導くに当たって用いられたであろう検討資料をご提出いただくよう、大きく十二項目にわたる具体的なリストも作成し、依頼しております。にもかかわらず、こうして都議会でのご審議が始まっている現時点においても、まだ何もお示しいただいていないに等しい状況にあります。こうした基礎的な検討資料が出てこないこと自体、この提案は果たして十分な分析や検討を経てなされたものであろうかという疑念を私どもに抱かせるのであります。
 次に、今回の新税構想は、私どもにとって余りにも唐突なものであり、その点からも納得感が得られないということを申し上げたいと思います。
 今回の新税構想は、事前に漏れるとつぶされかねないので、一部のメンバーにより密室で検討を行ったとされております。そして、都議会の審議を経るわけであり、民主主義のプロセスは踏んでいるともされております。
 しかしながら、一方で、この構想の発表から一週間たった時点、すなわち条例案が公表される前の時点において、都議会の多くの会派は新税の導入に全面的に賛成し、条例が成立する見込みであるとされ、発表から二週間も経ない時点において、知事が小骨一本抜かないとご発言されるなど、私どもといたしましては、本当の意味で民主主義のプロセスが踏まれるのか、危惧を抱いてきたところであります。
 一部の人間が密室で構想を練って、突如公表し、納税者に周知、納得させるに十分な時間も与えず、勢いに乗じて畳みかけるように短時間で決めてしまうといったアンフェアで非民主的なプロセスを肯定することは、まさに民主主義そのものを否定することになりはしないかと危惧せざるを得ないのであります。
 知事は、都民に聞いてほしいとおっしゃっております。冒頭申し上げましたが、銀行界が国民の皆様から厳しいご批判を受けていることは、謙虚に、かつ重く受けとめております。しかし、誤解を恐れずに申し上げますが、銀行がけしからぬからといって、銀行に新たな税を課しても構わないということであれば、それはまさに懲罰であり、税本来の目的を逸脱するもの、つまり、税そのもののあり方にもとるものではないでしょうか。
 地方自治は民主主義の学校という言葉がありますが、税の世界にも、税は民主主義の学校という言葉があると聞いております。この言葉の持つ意味に思いをいたしていただきたいと切に願うものであります。
 次に、純粋に税制として今回の都の新税導入構想はどうなのか、問題はないのかという点について申し上げたいと存じます。
 税は、個人から企業にまでわたるすべての納税者にとって大変大きな影響を持つものであることは申し上げるまでもございません。税金のかけ方が少しでも変われば、企業の活動や個人の消費活動などは敏感に反応するものであります。だからこそ、新税の導入に際しては、洋の東西を問わず、慎重かつ十分な議論がなされているわけであり、導入に伴う影響等も、事前に十分に検討されることが不可欠であります。しかしながら、今回の新税構想につきましては、税とはそもそもどういうもので、どうあるべきかという原理原則に照らしても、また法的視点から見ても、疑念を抱かざるを得ない点が多くございます。
 本日は、時間の関係から、そのうち二つのポイントに絞って申し上げます。第一は、租税公平主義という税の大原則に反するのではないかという点、第二は、地方税法の解釈と適用の仕方に問題があるという点であります。
 まず、第一のポイントは、租税公平主義という税の基本原則に反するのではないかということであります。
 租税公平主義とは、各種の租税法律等に関して国民は平等に取り扱われなければならないという原則のことであり、これにより租税の公平ないし中立性が求められるのであります。この公平性の原則は、憲法第十四条一項の法のもとの平等に由来するものであります。
 今回の新税は、都から受ける行政サービスの対価、つまり応益の観点からいわゆる外形標準課税を導入し、その対象を銀行だけ、さらには資金量五兆円以上の銀行だけに極めて狭く限定しており、結果として、今回の新税の対象となるのは大手三十行のみとされております。都から行政サービスを受けている法人が五十万社以上ある中で、新税の対象はわずか三十行なのであります。
 導入の唯一の根拠を地方税法第七十二条の十九の課税標準の特例に求め、今回の新税を外形標準課税と位置づけているにもかかわらず、これほどまでに課税対象を限定するからには、それを妥当とする明確な根拠と合理的な理由がどうしても必要であります。しかしながら、都がいかなる行政サービスを行っており、この利益を受ける側がどのようにこのコストを負担すべきであるか、そういった都としての基本的な考え方すら、明確な説明はいまだに何もありません。
 資金量を三兆円以上に拡大しても、増収額は二億四千万円にすぎないとの説明がございますが、このこと自体、都は増収のみに目を奪われ、税の公平性という最も基本的な原則を踏み外しているということを雄弁に語っているものと受けとめております。
 お断りしておきますが、新税の対象を拡大すべきであると申し上げるつもりは毛頭ございません。ただ、これまでの都の説明では、なぜ銀行だけ、なぜ資金量五兆円以上の銀行だけという疑問がどうしても払拭できず、公平性という観点からは、どう見ても問題があるといい続けざるを得ないのであります。これで、法のもとの平等という基本的な原則に果たして本当に従っているといえるでしょうか。これが第一のポイントであります。
 第二のポイントは、地方税法の解釈と適用の仕方についてであります。
 都の条例案は、繰り返しになりますが、地方税法第七十二条の十九にある課税標準の特例を適用して、銀行のみに外形標準課税を導入するとしています。この地方税法第七十二条の十九では、事業の状況に応じ、課税標準の特例を設けることができるとなっております。
 皆様ご承知のとおり、電気、ガス、生保、損保の四業種に対しては、四十年以上の長きにわたり、収入金額が課税標準になっております。この理由は、電気、ガスについては、料金が認可制で低く抑えられていること、また、生保、損保については、所得の計算上、益金不算入とされる配当が、利益のうちの大きなウエートを占めていること、及び契約者への配当が、事業税の課税標準の計算上、損金の額に算入されること、こうしたことから、所得を課税標準とした場合、事業規模に比較して事業税が少なくなり過ぎてしまうためとされております。銀行業には、このような四業種にある事情は存在しておりません。
 ここでさらに重要な点は、この四業種は、そういった制度上、収益構造上の事業特性から、こうした課税標準を適用することが望ましいとの判断のもと、地方税法において明確に規定されているということであります。したがいまして、これらの業種以外の法人に対して課税標準を変更するに当たっては、特例があるから何でもできるということではなく、だれから見ても納得できる、制度上、収益構造上の合理的な理由が必要なのではないかと強く思うわけでございます。果たして、都の掲げる事由は、この特例を適用するに足るものでありましょうか。
 都の説明によれば、銀行は、税収動向が不安定であることや、繰越欠損金控除により今後も税収が見込めないこと等が銀行特有の事業の状況であるとしております。さらに、知事は、銀行の役員の数が多いこと、給料が高いこと、歳費カットの例がないことも事業の状況であると判断したと答弁されております。
 しかしながら、税収動向が不安定なのは、所得を課税標準とする現在の法人事業税そのものの特徴であり、銀行という事業に限った特徴ではございません。大手銀行と同程度に、所得、すなわち税収が変動している業種は、他に幾つも存在しているのであります。都が説明するような収益の変動とは、事業の状況ではなく、むしろ経済の状況というべきものであります。これをもって事業の状況と解するのは、まさに恣意的といわざるを得ないのであります。
 また、繰越欠損金控除についても、銀行業だけではなく、税制上すべての企業に認められているものであり、これも銀行特有のものではございません。
 役員数や給料、歳費カットといった点につきましては、そもそもこの法律でいう事業の状況とは全く筋違いのものではないかと思う次第であります。
 さらに、今回の新税は、地方税法第七十二条の二十二第九項に抵触するのではないかという疑義があるといわざるを得ません。ここでは、現行の税負担の場合と著しく均衡を失してはならないと規定されておりますが、今回の新税の対象となる全銀協会員銀行二十四行を対象とした試算では、新税導入後の向こう五年間の税額は、現行の場合と比べ著しく増大するものであり、特に導入初年度では六十倍にもなります。また、直近の納税実績との対比で見ましても、新税導入による負担は著しく増加することになります。
 都の説明では、税額が急増したバブル期を含む過去十五年間の平均値を持ち出して、過重ではないとしております。しかしながら、新税導入に当たっては、現行制度に基づく今後の納税見込み額や直近の納税実績額と比べるべきであります。都が説明に使った過去十五年間という期間のとり方は、税額が急増したバブル期という特殊な時期を含めており、極めて恣意的なものであります。
 知事は、ご答弁の中で、銀行業に対して外形標準課税を適用する理由については、何よりも初めに東京都の財政危機ありきであって、これをどう克服するかということで独自の財源を考えたわけであるとご発言されております。このご発言は、都側が、まず増税することから考え、その対象として銀行業にねらいを定め、このアイデアについて法的問題点の検証を十分にせず、そのまま一気に実施案に移そうとしているということを、これまた雄弁に物語っているのではないでしょうか。
 本日、私からは、今回の都の新税構想について、唐突かつ納税者に対する説明が十分になされないまま今日に至っており、納税の当事者である私どもはどうしても納得感が得られないということを申し上げました。加えまして、新税構想は、法律面においてもさまざまな疑義があるということを申し上げました。
 最後になりますが、これからのご審議に当たり、都議会の皆様にぜひともお願いしたいことがございます。それは、公平かつ十分なご審議をお願いしたいということであります。
 外形標準課税自体、専門家による深く掘り下げた議論が長きにわたり続けられてきたにもかかわらず、これまで導入に至らなかったことは、しかるべき問題点が一つならずあったからだと考えられます。そのような重要かつ根源的な税制の変更が、公表から二カ月も経ないうちに公布され、施行されるということは、通常では考えられないことであります。
 しかも、今回の都の条例案には、先ほどから申し上げてまいりましたとおり、税の公平性の観点から見た問題を初めとして、種々問題点がございます。これらは、私どもが税金を払わなければならなくなるという理由だけで問題点と申し上げているのではございません。新税構想に関しましては、銀行界のみならず、多くのマスコミや有識者からも同様の問題点が指摘されております。したがいまして、まず導入ありきではなく、新税が税制として適切なものであるかどうか、税の原理原則に照らして適切なものであるかどうかという観点から、公平かつ十分なご審議をお願い申し上げたいのであります。
 最後に、繰り返しになりますが、税は民主主義の学校という言葉にどうかもう一度思いをいたしていただきたいと存じます。
 ご清聴ありがとうございました。

○清原委員長 ありがとうございました。
 杉田参考人には、大変お忙しい中、貴重なご意見をお伺いすることができまして、心からお礼を申し上げます。
 これをもちまして杉田参考人の意見聴取は終わらせていただきます。ありがとうございました。

○清原委員長 それでは、神野参考人、発言席にお移りください。
 それでは、ただいまご着席いただきました参考人をご紹介いたします。
 東京大学経済学部教授の神野直彦さんでございます。
 本日は、ご多忙のところをご出席いただき、まことにありがとうございます。
 外形標準課税導入に関して、おおむね三十分程度ご意見をお伺いしたいと思います。
 なお、神野参考人には、ご着席のままご説明していただきたいと思います。
 それでは、よろしくお願い申し上げます。

○神野参考人 東京大学の神野でございます。
 私、目が不自由なものですので、原稿の文字すらよく見えません。お見苦しいところがございましたらお許しいただきたいと思います。
 私は、財政学の立場から、東京都の安定的税収確保の具体的方策について意見を述べさせていただきたいと存じます。
 ここにご列席の皆様は、今、東京都財政の深刻な危機的な状況を目の前にして、苦渋に満ちた選択を迫られているというふうに判断させていただきます。東京都は、全国一厳しい給与の削減を初めといたしまして、公共事業、それから社会保障福祉関係費の経費を大幅に削減しようとしております。しかし、経費を削減しなければ、東京都の財政は破綻してしまい、財政再建団体に陥ってしまいます。さりとて、経費を削減いたしますと、必ず恵まれない人々にしわ寄せが行きます。そうした恵まれない人々の悲しみに心を痛めながら、皆様は、経費を大幅に削減するか否か、苦渋の選択に日夜思い悩んでいらっしゃることとご推察申し上げます。
 競争原理で営まれる市場経済と相違して、財政は、お互いに助け合う協力の原理で運営されなければなりません。恵まれない人々が大幅な経費削減で痛みを受けるとき、恵まれた人々の責任は、税を負担することで痛みを分かち合うことだと思います。恵まれない人々は経費で、恵まれた人々は税で痛みを分かち合うこと、これが東京都の財政再建の原則にならなければならないというふうに考えています。
 しかし、東京都民が協力し合いながらお互いに税を負担していこうとしても、残念ながら、現在の中央集権的制度の枠組みの中では、東京都が歳入面でできることの権限は限られているのです。単に財政が赤字だからといって、増税をすることも、新税を創設することもできません。増税をしたり、新税をつくったりするには、特別の財政需要が必要だからです。しかも、新税を創設するには国の許可が要るということはご存じのとおりでございます。
 限られた権限の中で東京都のできること、それが、事業税の税収が落ち込まないように安定化させることなのです。つまり、これまで、事業税については、電力、ガス、生保、損保という四つの業種に外形標準化が適用されてまいりましたけれども、それに、適切な根拠があれば、外形標準で課税する事業を加えて、法人所得、つまり法人の利潤に課税するのではなくて、他の課税標準に課税することによって税収の落ち込みを抑えること、これが東京都にできる残された道だというふうにいっていいだろうと思います。
 つまり、銀行業に外形標準課税を導入することは、新税の創設でもなく、増税でもなく、ほころびた旧税の繕いでしかありません。東京都が、限られた権限の中で一筋の光明にすがる窮余の一策、それが、銀行業に外形標準課税を導入することなのだというふうにいわざるを得ないと思います。
 そもそも東京都が財政危機に陥っている最大の原因は、道府県税が、変動の激しい法人利潤に法人住民税と法人事業税という二つの租税がかけられ、その法人住民税と法人事業税という二つの税に税収を依存せざるを得ないことに根本的な原因があるわけです。
 どうして道府県税として法人利潤に法人住民税と法人事業税という二重の課税が行われるというような異常な事態が生じているのでしょうか。極端にいえば、国で法人税をかけ、道府県で二つの税金をかけ、また市町村税でも法人住民税をかけますので、四重にかけているわけですね。一つ脱税をすれば、四倍脱税できてしまう、こういう異常な事態が生じているわけです。なぜこういう事態が生じているのかというと、法人住民税の方は、生まれながらにして法人利潤に課税される税金ですけれども、法人事業税の方は、生まれながらにして法人所得、つまり、法人利潤に課税される税金ではないにもかかわらず、法人利潤に課税しているからなのです。
 法人事業税は、本来、事業活動規模あるいは事業活動量に応じて課税される租税なのです。お手元に配ってありますレジュメにシャウプ勧告の言葉を引いてございますけれども、シャウプ勧告の言葉で申しますと、事業及び労働者が、その地方に存在するために必要となってくる都道府県の施策の経費の支払い、これが法人事業税なのです。
 利潤にかかる法人住民税では、わずかな従業員を抱えて、そして小規模な事業活動を営んでいるような企業も、それから、多くの従業員を抱えて大規模な事業を営んでいる企業も、仮に百万円という利益を上げたといたしますと、同じ税負担をするだけなんですね。しかし、応益原則、つまり、公共サービスの利益に応じて課税するという公平性の観点から考えますと、大規模な事業を展開している企業の方が、小規模な事業を展開している企業よりも、警察とか、教育とか、それから道路とか、港湾とかいうような社会資本などの都道府県の提供する公共サービスの利益を多く受けているということは明らかです。そこで、法人住民税の方は利潤に課税するけれども、法人事業税は事業活動規模に課税するという建前になっているわけです。
 ところが、法人事業税の方が、現在では、法人事業活動規模を示す指標としては好ましくない利潤に課税されることになってしまっています。しかし、本来は事業活動規模に課税すべき税金でございますので、先ほども申しましたように、電力とか、それからガスとか、生保、損保というような四業種に利潤以外の外形標準が、つまり、利潤以外の課税標準である外形標準が導入されているわけですね。
 さらに、地方税法七十二条の十九で、この四業種以外の事業についても、地方自治体の判断で、事業の状況に応じて利潤以外の課税標準に課税することが認められているわけですね。では、この事業の状況に応じてというのはどういう場合かということでございますけれども、私の考えでは、法人の利潤という課税標準でもって課税することが、事業税の本来の性格、つまり、事業活動の規模に応じた課税という本来の性格にとってふさわしくないような租税負担の状況が生じてしまったというような場合には、地方自治体の判断でもって、利潤以外の課税標準、つまり、外形標準が導入できるというふうに考えています。
 今回の銀行業の場合でございますが、これは、皆様ご案内のとおり、石油ショックのときに千葉県が石油精製業について導入しようとしたわけですが、今回の銀行業の場合、本来の事業活動で銀行業が利益が上がっているということからも明らかなように、事業活動の方は、警察やーー警察の立ち寄りサービスまで受けているわけですし、それから社会保障、さまざまな都道府県の施策によって社会秩序が維持され、そういう社会秩序を維持するような都道府県のサービスを受けて事業の活動規模は活発に、つまり、事業活動規模という観点からすれば、活発に事業活動を行っているにもかかわらず、不良債権という過去の負の遺産が存在するために法人事業税を納税していない、こういう異常な事態が生じているのだというふうに考えられます。
 こうした場合には、東京都の判断で、銀行業に外形標準課税を導入することは認められるんではないかというふうに考えております。この場合が認められないというと、一体どういう場合が認められるのかというのは、私、ちょっと考えあぐねるということになりますので、この場合には認められるのではないかというふうに考えております。
 このように、今回の銀行業の外形標準化というのは、東京都が、現在の地方税法の枠の中で、ただ単に課税標準を変えたというだけにしかすぎないわけですね。国の方でも、ご存じのとおり、法人事業税を本来の姿に戻そう、つまり、事業活動規模に課税するという本来の性格から考えて、外形標準を導入して、地方税法そのものを改正しようという動きが現在あることは、皆様もご存じのとおりでございます。
 こういうふうに、法人事業税を外形標準化する場合に、どういう課税標準が適当かといいますと、私は、付加価値、つまり、その企業が新たにつけ加えた価値、仕入れてきた商品に対して、利潤と賃金と、それから支払い利子と支払い地代、こういったものをつけ加えて販売するわけですので、新たにつけ加えた価値、それに課税するということが適切ではないかというふうに考えております。
 ところが、銀行業の場合には、何をもって付加価値とするかという問題が生じてまいります。というのは、先ほどいいましたように、付加価値に課税しようとしますと、利潤に賃金、それから支払い利子を加えなければいけませんので、銀行の場合の支払い利子というのは、これは預金利子が入っちゃうわけですね。そういたしますと、銀行業の場合には、どうやって付加価値を確定したらいいのかということが問題になってきます。
 そこで、銀行業というのは、これは金融商品という特殊な商品を取り扱う企業なんだ、こういうふうに考えますと、預金の支払い利子というのは、商品の仕入れ価格だというふうに考えられます。それから、企業に貸したお金が戻ってくる、それは受取利子でございますが、これは商品の販売価格だ、こういうふうに考えられるわけですね。そうすると、販売価格と仕入れ価格との差、これは付加価値になるわけですので、いわゆる利ざや、スプレッドに課税するということが、スプレッドが付加価値なのではないかというふうに考えられると思います。
 今回の東京都のこの提案は、このスプレッドを軸に、つまり、利ざやを軸に、これに手数料を加えたもの、これは粗利益というふうにいっているようでございますが、これに課税しようという提案だというふうに考えられると思います。
 現在、日本と同じように、世界各国が地方分権に取り組んでおります。地方分権に取り組んでいる国としてイタリアがあるわけですが、このイタリアが、一九九八年、今から二年前に、事業税の外形標準化に当たる付加価値税、つまり、生産活動税という税金を導入いたしました。今回の東京都のスプレッドに手数料を加えたものを課税標準にするという提案は、このイタリアの生産活動税をモデルにしたものというふうに位置づけられると思います。この方式は、先ほどもいいましたように、全国で付加価値を基準にした外形標準化をやった場合にも、銀行業に対してはどういう課税をするかというのは問題になりますので、この今回の東京都の提案、つまり、外形標準を導入するためには、今回のスプレッドに手数料を加える、つまり、スプレッドを基軸にして銀行業に課税していこうという提案が、全国的に外形標準化を全業種に導入する際にも参考になるものというふうに考えております。
 もちろん、これは全国的に展開されている金融政策とそごを来すのではないかというようなことがあるかと思いますが、これを理由に、私は地域の課税自主権を抑圧すべきではないというふうに考えています。
 集権的だというふうにいわれているフランスでも、地方で勝手に地方税を上げたといたしますと、それが全国的な経済政策の観点から見て国が好ましくないという場合には、国がその分負担します。それから、逆に地方税をある地方が引き下げ過ぎて、全国的な経済政策から見て非常に好ましくないという場合には、逆に国が課税をするというようなことを調整いたしますので、そうした金融政策とのそごを調整するのは、私は国の責任だというふうに考えています。
 しかし、今回の銀行業の外形標準化は、窮余の一策であるがゆえに問題がないわけではありません。緊急避難的の窮余の一策ですので、早期に導入するということが重視されますから、租税抵抗を少なくして導入を容易にしようという政策意図が感じられます。そういう政策意図は、先ほど申し上げてきましたような法人事業税の本来の性格、つまり、応益課税という原則から考えて、公平性とどうやって折り合いをつけていくのかということを、皆様方が政策的な判断を下さなければならないだろうというふうに思います。
 つまり、五兆円以上の大銀行に限定するということが、応益原則に基づいて事業活動規模に課税するという租税の法人事業税の本来の性格から考えて妥当かどうか、それから、五年間の時限的措置とすることについて合理的な根拠があるかどうか、それから、外形標準化することは増税をすることではありませんから、導入の前と後とで負担に著しい不均衡が生じないようにするということがうたわれているわけでございますけれども、これについても、十五年間の平均的な税収実績を基準とするということは妥当かどうか、こうしたことについての政治的な判断を下していくことが必要だろうと思います。
 その際、重要なことは、木を見て森を見ずという弊害に陥らないことだと思います。あくまでも重要なことは、地方自治体が財政の自治を確立するということを目指すのであって、大銀行たたきではないのだ、それは目的ではないのだということを、つまり、大銀行たたきが目的だというふうに受け取られないように、地方自治体の財政自治の確立を目指してやるんだということを明らかにするような観点からご審議いただければというふうに考えております。
 皆様は今、歴史的な判断をしようとしています。先ほども全銀協の会長からお話がありましたように、民主主義の学校というふうに地方自治はうたわれておりました。地域の民主主義が今試練に立たされている、こう申し上げていいだろうと思います。それだからこそ、皆様には、住民に身近な政府が、つまり、住民の身近な政府で行われる民主主義のすばらしさを、誇りを持って示す歴史的な使命があるというふうに考えています。
 ただ、そうした観点からいって、あえて苦言を申し上げれば、このプランが作成されてくる過程でもって、課税される銀行業の方々の声に十分に耳を傾けられてきたでしょうか。そして、何よりも、決定するのは東京都民ですから、東京都民に、またその東京都民の代表者である皆様方に、決定のプロセスがオープンにされていたでしょうか。決定さえよければ、つまり、結果さえよければそれでいいというわけにはいかないだろうと思います。必ず決め方のプロセスというのは結果に含まれます。
 繰り返すようでございますけれども、財政の原理というのは協力の原理です。東京都はこれからも、銀行業を支えるような公共サービスを提供して発展していかなければならない、いわば金融の都なのです。理を尽くして銀行業の方々に説得をすれば、銀行業の方々からも必ず協力が得られるはずです。国税というのは、国が国民に負担させる税だというふうにいわれますが、地方税というのは、地域社会の参加者がお互いに負担し合う租税です。
 銀行業の方々も、利潤が上がっていないにもかかわらず、市町村税として固定資産税を負担しているというふうにおっしゃるかもしれません。しかし、失業して途方に暮れている人も、固定資産を所有している限り、固定資産税を負担しているのです。そればかりではありません。失業して子どものあすのミルクにも事欠いている人々の目にするもの、口にするもの、そして身にまとうもののすべてに消費税、そして道府県税として地方消費税がかかっているわけです。確かにそうした人々の負担する額はわずかかもしれません。しかし、貧者の一灯は長者の万灯にまさると申します。こうした貧しい人々が歯を食いしばって東京都の租税をお互いに負担し合っているときに、理を尽くせば、銀行業の方々から協力を求められないということはないだろうというふうに信じております。
 皆様は、住民の身近な政府における民主主義のすばらしさを示す使命を帯びています。したがって、住民の身近な政府で行われる民主主義というのがどんなにすばらしいものかということを見せなければならない。その使命を帯びたる者が民主主義的な手続を怠れば、地方分権を否定して国民を絶望のやみの中に閉じ込めようとしている人々に絶好の口実を与えかねないということを、私は、深い悲しみを込めて危惧いたします。
 最後に、もう一度、この銀行業に対する外形標準化というのは、東京都が限られた権限の中で行われた窮余の一策であるということを強調しておきたいと思います。こうした窮余の一策では、東京都の財政再建の本質的な解決にはなりません。下手をすれば焼け石に水になりかねない。来年度もまた、皆様が今年度味わう苦渋の選択と同じような、つまり、今年度の苦渋の選択を、生きたる昔日としてほうふつとしなければならないような選択を来年度も行わざるを得ないということに迫られることを私は心配をしております。
 東京都の財政を再建させる王道、本来の道筋というのは、一刻も早く国から地方に税源を移譲することです。東京都は、仕事に応じた地方税を課税する権限が認められていないわけですね。同時に、もう一つは、事業税の外形標準化が、全業種にわたって全国一律に行われ、道府県の税収が安定的になることです。つまり、地方への税源の移譲、それから外形標準課税の一般化、この二つがきちっと行われない限り、東京都の財政再建というのは難しいというふうに考えられなければならないと思います。つまり、地方への税源の移譲と外形標準化の一般化、これが実現しなければ、東京都民が安心して生活できる強い財政は実現できないのです。
 ところが、残念ながら、これを実現する決定権限は、東京都民にもなければ、その都民の代表である皆様方にも与えられていないのです。現在の中央集権的な枠組みの中では、国が決定するしかないということになっております。
 しかし、希望の光をかちとれるときは、協力をするときだということを忘れてはならないと思います。東京都民としては不可能でも、他の地域社会の人々と国民として協力すれば、必ず税源移譲と外形標準化の一般化を実現することができると思います。
 協力は、交渉力を増すだけでなく、人間の尊厳を呼びさまし、希望への道を必ず開くのだということを訴えて、私の意見陳述を締めくくらせていただきます。
 どうもご清聴ありがとうございました。

○清原委員長 ありがとうございました。
 神野参考人には、大変お忙しい中、貴重なご意見をお伺いすることができまして、心からお礼を申し上げます。
 これをもちまして神野参考人の意見聴取は終わらせていただきます。ありがとうございました。

○清原委員長 それでは、糸瀬参考人、発言席にお移りください。
 それでは、ただいまご着席いただきました参考人をご紹介いたします。
 宮城大学事業構想学部教授の糸瀬茂さんでございます。
 本日は、ご多忙のところをご出席いただき、まことにありがとうございます。
 外形標準課税導入に関して、おおむね三十分程度ご意見をお伺いしたいと思います。
 なお、糸瀬参考人には、ご着席のままご説明していただきたいと思います。
 それでは、よろしくお願いいたします。

○糸瀬参考人 ご紹介いただきました宮城大学の糸瀬でございます。
 東京都議会に宮城県民を呼んでいただきまして、この懐の深さに心からお礼申し上げます。かといって、宮城県知事浅野史郎さんの回し者でもございませんし、私は、出身は第一勧銀なんですけれども、杉田さんの回し者でもございません。一応金融の専門家の立場から、幾つか意見を述べさせていただきたいと思います。
 先月でしたか、アメリカにムーディーズという格付の機関がありますが、ここが、日本の国債の格付を引き下げる方向で検討するということを発表しました。一昨年までは、ムーディーズによる日本の国債の格付はAaa、一番いいクラスだったんですが、一昨年これがAa、Aが二つしか並んでいないAaの、その中で一番上ですけれども、Aa1というところに下がったんですが、これをもう一ランク下のAa2に下げるかもしれない、そういった発表をしました。
 このきっかけとなったのが次のようなニュースじゃなかったかというのが騒がれております。といいますのは、アメリカの大きな新聞に、レジュメをお手元にお配りしておりますが、二十一兆円、それから十三兆円、それから八兆円、こういった数字が大きく躍りました。これはどういう意味かと申し上げますと、地方交付税で回すべきお金が、二〇〇〇年度二十一兆円必要なわけですね。ところが、税収で賄える分が十三兆円しかない。八兆円足りないわけです。この八兆円をどうするかというのを、何と民間の銀行から借りなきゃいけない。このことが日本の新聞に載りまして、それが海外ででかでかと報じられたわけです。そこで、日本の財政はそんなにひどいのかというのがアメリカで大騒ぎになったわけですね。
 ご記憶のとおり、その直後、円が急落しました。たしか百二円とか百三円だったのが、一挙に百十一円ぐらいまで、それぐらい大きなニュースだったわけです。事ほどさように、日本のこの地方交付税交付金制度というのは、もう危機的な状況を通り越えて、ほぼ破綻しているわけですね。
 そういった状況の中で、今回の石原都知事の提案は、非常に大きな意味があると思います。よくマスコミのコメンテーターは、一石を投じたといっていますけれども、一石どころじゃないですね。石が大き過ぎて、池の水が飛びはねて、周りの人がもうびしょ濡れになったというのが実感だと思います。一番濡れたのは越智通雄さんですけれども、彼は別の理由でやめちゃいました。
 全銀協の反論、これが聞いていて非常にーー先ほど杉田さんが帰っちゃったので非常に残念なんですけれども、全銀協にとって納得的じゃないとおっしゃっておられましたが、逆に、我々から見ていて、全銀協の反論がまた納得的ではないんですね。余りにも正論で反論し過ぎじゃないかという気がします。石原都知事の今回の提案は、ストレート超豪速球ですね。百六十キロぐらい。全銀協も直球で返すんですけれども、これが百キロぐらいしかないんで、どうも力負けしている感じがするんです。
 もし私が全銀協の会長だったら、禁じ手かもしれませんけれども、さっきの八兆円、貸すだけですよね。これに二%金利を上乗せすれば千六百億円取れますから、これで帳消しにするんですが、半分冗談、半分本気なんですけれども、そういった入れ知恵は置いておきまして、外形標準課税に対する反対意見を述べる前に、ちょっと腹の虫がおさまりませんので、全銀協に対する批判を先にやらせていただきたいと思います。
 この間、全国紙を使って大きな反論広告が出ました。当然仙台の新聞にも出るかと思っていたんですけれども、出ていませんでした。広告料をけちったんだと思いますけれども。家内がファクスで送ってくれて、一通り読んでみたんですけれども、そこに触れてあったかどうか記憶は定かじゃないですが、ちょっと難しい反論が一つありました。税効果会計の掛け目が減るので当期利益が下がる、そういった反論がありました。たしか千五百億か千六百億か下がる、そういった反論があったと思います。
 これが実は非常に説得力がない反論なので、そのことをざっと、今後の議論のご参考にご説明をさせていただきたいと思います。
 お手元のレジュメに表をつけてきました。これは、昨年の五月の日経新聞から拾ってきた表ですが、九九年三月期の大手銀行の税効果会計によって得られた繰り延べ税金という金額を羅列したものです。この繰り延べ税金というのが、この税効果会計のマジックの一つなんですが、ちょっと別の例で説明をした方がわかりやすいと思います。
 例えば、皆様が住宅を買ったとします。仮に五千万円のマンションを買ったとします。その後、地価の下落を受けて、その五千万円のマンションの時価が三千万円まで下がってしまったとします。そうすると、皆さんの状態はどういう状態かというと、二千万円の含み損を抱えているわけですね。二千万円損しているわけです。この二千万円は表に出てきません。
 この含み損の一部を取り戻す方法があります。どうすればいいか。これは簡単なことですけれども、五千万で買った不動産、マンションを、時価三千万円で売ればいいわけですね。そうすると、当然その時点で二千万円損するんですけれども、話はそこで終わりではなくて、この損失の二千万円を、皆さんの給与所得と相殺することができます。都議会議員の皆さんの中で年収二千万という方はいらっしゃらないと思いますが、仮に二千万もらっておられるとすれば、その給与所得の二千万とマンションを売った損失の二千万を相殺することができて、本来払うべき税金を払わなくていいわけですね。例えば、仮に税率が四割だとすると、給与所得二千万に対して八百万円の税金を払うべきところを、全く払わなくていい。
 これが住宅の売却に絡む控除で、損益通算という仕組みなんですが、税効果会計というのは全くそれと同じ仕組みなんです。今まで銀行は、有税の償却、有税の引き当てというのをやってきました。当期利益の中から、税金を払った後のお金から不良債権の引当金を積んできたわけです。この部分について、将来、銀行が不良債権を最終処理、つまり、バランスシートから外すことになれば、その時点で払うべき税金が減らされる、それが税効果会計なんですね。ですから、繰り延べ税金というのは、もしかすると将来戻ってくるであろう税金をここに計算しているわけなんです。
 ところが、これが本当に戻ってくるかどうか、実際のところは、これは絵にかいたもちにすぎないわけですね。先ほどのマンションの例と全く同じなんですが、ここに書いてある合計六兆六千億円というお金を本当に取り戻すためには、不良債権の最終処理をする必要があります。具体的には、取引先を倒産させる必要があるわけですね。
 それから、これは払うべき税金を払わなくていいということですから、銀行が将来にわたってきちんと収益を計上して、もうかっている状態で、税金を払う状態であったら一部払わなくていい、そういったことなんです。そう考えると、これは戻ってくるかどうか、本当に大きなクエスチョンマークがついているのが現実だと思います。
 金融監督庁は、そういった制約がありますから、ここに計上していいお金というのは、向こう五年分の利益の範囲内、そういったガイドラインをしいていました。ごらんいただくと、これは自己資本に対する比率をパーセントで書いておいたんですけれども、七割を超えている銀行とか四割を超えている銀行がありますね。全体の平均で二九・一%、およそ三割、これは明らかに計上し過ぎですね。これは絵にかいたもち。
 もっというと、今はやりのやまんばギャルというのがいますけれども、厚底サンダルと一緒ですね。これは、大体自己資本の三割ぐらいを占めています。この恣意的な三割の部分が、計算方法がちょっと変わるから銀行の収益が減りますよ、この反論はほとんど説得力がありません。もともとのこの前提がおかしいわけですね。
 それと、初年度は、確かに厳密に計算するとかなり当期利益は減るのですけれども、翌年には計算方法はもとに戻ります。それで、五年後にもし外形標準課税をまたやめるとなると、初年度で払い過ぎた分が戻ってきますから、これは結局ほとんど影響がない。銀行の反論のこの部分にはほとんど影響がありません。
 ただ、あえて指摘しておきたいのは、それほど銀行の自己資本というのは実は傷んでいます。この三割を除くとーー今、銀行の自己資本比率というのは一二%とか一三%とかいわれていますけれども、この部分を除くと、実は七%しかない、八%しかない。銀行の財務状況が非常に脆弱であるというのが、一方の事実として覚えておいていただきたいことであると思います。
 次に、銀行は十分なリストラ努力をしているのかどうか、その部分なんですけれども、先ほど全銀協の会長としての杉田さんがこの点についてはるるお話があったんですけれども、銀行が十分なリストラ努力をしているというのは、これは真っ赤なうそです。
 まず、給料。銀行の窓口に行くと、テラーと呼ばれる人たちがいますね、窓口でお金を計算して手渡してくれる。大体の場合、日本では女性がやっておりますけれども、四大卒の人、短大卒の人、高卒の方もいらっしゃいますが、大体三十近くの方の年収がどれくらいかというと、大体六百万ぐらいもらっておられますね。仙台には、これはセクハラめいた発言で非常に恐縮なんですけれども、非常にお年を召した女性のテラーが居座っておられて、彼女の年収は一千万円を超えているそうです。
 では、アメリカのテラー、これは小さな銀行じゃないですよ。アメリカの大きな銀行のテラーの方、年収はどれくらいかというと、大体二万ドルですよね。円換算で二百二、三十万、そんなものだと思います。大体三倍違います。それくらい日本の銀行員の年収は高過ぎます。もっと高くていい職種の方もいるんですけれども、一律に高過ぎる、これが非常に大きな問題だと思います。
 それから、次に、銀行は十分なリストラ努力をしているかどうかに関してですけれども、経営責任の問題があると思います。
 昨年の三月に大手の十五行、横浜銀行を含めてですが、七兆四千五百九十二億円の公的資金が投入されました。ところが、公的資金を投入されて責任をとった経営陣というのはほとんどおられません。従業員に対しては、割り増しの退職金を払って早期退職をするようなことをいっておりますけれども、七兆円以上のお金をもらうような銀行というのは、まず経営陣が退くべきですね。これをやっている経営陣というのはほとんどおりません。これは、経営責任をとったとはとてもいえないことです。
 七兆四千五百九十二億円、我々、兆円単位のお金に最近麻痺してきていますけれども、例えば、失業者の職業訓練に大盤振る舞いをして一人百万円かかったとしますね。七兆四千五百九十二億円使えば、何と百万円を七百四十五万九千人の方に配ることができる、それぐらいの大金なんですね。この経営責任をとらない日本の経営陣の態度、これを日本語で何と呼ぶかというと、責任逃れといいます。
 次に、もっと本質的な問題なんですけれども、リストラをしているかどうか。
 リストラという言葉の本来の意味は、リストラクチャリングですね。すなわち、事業の再構築。再構築、これは前向きでなきゃいけないわけですね。ところが、みずほグループ、第一勧銀と富士銀行と興銀が今度つくる銀行ですけれども、ここのリストラプラン、うたわれているのは、人員カットの話、それから店舗削減の話、前向きな戦略がほとんど見えておりません。
 日本の銀行アナリストで有名な方で、マッキンゼーに川本裕子さんという女性がいます。彼女、この間「銀行収益革命」という本を出しました。なかなか売れている本なんですけれども、そこで、もし日本の銀行が欧米の銀行並みの収益力を生み出すためには何をしなければならないか、三つのことが必要だといっています。まず、利益を三倍にすること、それから、コストを二五%カットすること、それから、資産を五五%圧縮すること、これぐらいやってやっとリストラといえるんですけれども、日本の銀行は前向きな戦略をほとんど出していないのが現状です。
 ここでご反論があるかもしれません。先ほどのみずほグループもそうですけれども、大型合併が相次いでいます。さくら、住友の合併もそうです。あれは前向きな再編ではないかとご理解されている方も多いかと思いますけれども、これも、私の目から見ると非常に生ぬるいとしか思えません。
 例えば、みずほグループの場合、将来は個人向けのビジネスに特化したリテール専門銀行をつくるとか、法人ビジネスに特化したホールセールの銀行をつくるとか、証券業務に特化した投資銀行をつくるとか、そういった非常に大層なプランを立てています。ところが、それをいつやるか、何と二〇〇二年の三月ですよね。発表してから二年半も先の話です。これは遅過ぎます。
 ドッグイヤーという言葉をお聞きになったことがあると思います。今、ITのスピードが非常に速くなったものですから、犬の寿命が大体人間の七分の一ですね。逆にいうと、犬は人間の七倍生き急いでいるわけですけれども、ドッグイヤー、それほど非常に速いスピードで世の中が変わっている、そういった言葉です。
 最近は、マウスイヤーという言葉もあります。ハツカネズミ。二十日でもうサイクルが変わる。これもはやりの言葉なんですけれども、このみずほグループの頭取たち、杉田さんも入っているわけですけれども、ドッグイヤーはおろか、あえて英語でいうと、タートルイヤーでしょうね。カメ。ツルは千年、カメは万年。余りにも遅過ぎると思います。
 先週、もと世界第一位の銀行、ドイチェバンクですけれども、これが、ドイツでも最大の銀行ですが、ドイツ第三位のドレスナー銀行と合併するのを発表しました。これの合併の実現、ご存じですよね、七月ですね。三月に発表して七月、わずか四カ月でやる。これぐらい焦ってもらわなきゃいけないんですけれども、非常にそういった危機感がないのが今の銀行の状況だと思います。
 前置きが、半分使ってしまったんですけれども、参考人としての反対論を一応述べさせていただきたいと思います。
 ポイントは三つあるんですけれども、先ほどの神野先生のお話と少しダブるところもあるんですが、話の持っていき方がちょっと気になるところがたくさんあります。あえて申し上げますと、今回の問題提起のされ方が、どうも銀行イコール悪者、そういったニュアンスが非常に強く感じられるんです。ここが、特に議会の中ではきちんと整理をしておいていただきたいそのポイントです。
 例えば、民間企業は公的資金ももらわずに倒産が相次いでいるのに、公的資金をもらった銀行はのうのうと生き延びているとか、これは非常に庶民感情にやっぱり訴えますね。
 それから、この間テレビで都知事とご一緒させていただいたんですが、長銀みたいなところに三兆六千億もつぎ込んで、アメリカのわけのわからぬ会社に持っていかれる。確かにそのとおりなんです。あの会社はわけのわからぬ会社なんですけれども、ただ、こういった発言が相次ぐと、いかにも銀行が悪い、それから、公的資金を投入したのは銀行を救うため、そういった誤解を招きかねないんですね。それでなくても、日本の国民のほとんどは、公的資金は銀行を救済するためにつぎ込んだんじゃないか、そういうふうに思い込んでいます。
 ところが、実は日本の金融政策の本質は、銀行救済ではないわけですね。銀行を救済したのはなぜか。銀行が倒産してしまうと、その銀行からお金を借りている借り手が倒産してしまうからなんですね。ですから、銀行救済の目的は、その銀行の裏にある借り手の保護、つまり倒産防止にあるわけですね。なぜ借り手を保護するか、なぜ倒産をできるだけ出さないようにするか。その裏に何があるかというと、失業者をふやすことを何とか食いとめたい、これが一連のこれまで一年半に及ぶ日本の金融政策の本質的なねらいにあるわけですね。
 これからの金融政策を論じる上では、国民すべてがこのことを知って議論をしなきゃいけないんですけれども、このことも、私は私の立場で、銀行救済はその裏の借り手保護、その目的は失業防止、これを変えないと構造改革ができませんよということを主張してきた者の一人なんですけれども、この銀行が悪いというところだけで議論をくくられるというのが、非常に不満といえば不満なところです。
 ここに、今回の提案の、政治的には非常に鮮やかだと思うんですけれども、あえていうと庶民迎合型の論理構成があるわけですね。これだと、やはり都民の七割以上の方が賛成するのも当然だと思うんです。ただ、こういったちょっと乱暴なくくり方で庶民の気持ちをあおるようなやり方は、あえていうと危険なポピュリズムといいますか、そういったにおいがしないでもありません。この辺を、特に都議会の中では、きちんと理論、整理をしていただきたいと思います。
 本来、外形標準課税がどういう経緯で議論されてきたかというと、日本の受益と負担の関係ですね、日本の全法人の中で、社数にして大体〇・六%の会社が、全法人税収の六割を払っているわけですね。それから、逆にいうと、全法人のうち、およそ六割が赤字法人で、税金をほとんど払っていないわけですね。そうすると、外形を標準化した課税として外形標準課税の議論が出てきたわけで、ということは、裏返せば、もっと広く浅く、中小企業も含めて、それから赤字企業も含めてというのが本来の考え方だったわけです。
 ですから、とりあえずは取るところから取って私は構わないと思うんですけれども、やはり将来のスパンを見ると、中小企業を含めて、さらには赤字企業を含めて取るような方向で議論をすること、これが政治の責任として一番大きいのではないか、そういうふうに考えております。
 それから、次のポイントですけれども、私は一応これは増税だと見ています。増税はあくまで増税です。外形標準課税といえども、増税は増税ですね。本当は都の資料があれば一番よかったんですけれども、ちょっと私も調べる時間がございませんで、参考資料の〔1〕のところに、国の財政状況の簡単な表をつくってきました。
 国の財政状況を見ると、国と地方を合わせると六百数十兆といわれていますが、国債だけで見ると三百三十五兆円の赤字、歳出は何と八十五兆円も使っています。うち、既に発行した国債の金利とか償還にかかわる費用が、国債費と呼ばれますけれども、これが二十一兆円、それから、その一方で税収が五十一兆しかない、大体これが国の状況ですね。
 これを家計に例えると、下に簡単な表をつくってきましたが、例えば、ある家計が年収が五百十万円しかない。一般的な家庭、平均値よりはちょっと多いぐらいですか、そのお宅が、住宅ローン、自動車ローンもろもろで三千三百五十万円の借金が既にあります。ところが、八百五十万円毎年使っているわけですね。そのうちの二百十万円が借金の返済。これは全く自転車操業で、明くる年の借金がさらに三百万近く膨らんで三千六百四十万、これが国の状況です。東京都もこういった表をつくってみるとおもしろいと思うんです。
 それで、こういった財政が危機的な状況にある国あるいは地方、これを解決するには何があるかというと、これは三つの方法があるわけですね。増税をするか、あるいはインフレ政策に持っていくか、あるいは歳出をカットするかのどれかですね。このインフレ政策、残念ながら、地方自治体はとることができません。これは今、永田町で非常に大きな話題になっていて、インフレに持っていきたい国会議員の方がたくさんいるように聞いておりますけれども、これは地方ではできないわけですね。そうすると、増税をするか、歳出カットをするか、あるいはそれを組み合わせるか、そういったことですね。
 ちなみに、国がもし増税で今の状況を片づけようとすると、何と、消費税でやるとすれば、消費税を二八%ぐらいまで上げないといけない、そういった状況、それほどひどい状況だそうです。
 やはり王道は歳出カットのところですね。これをきちんとやった上で、その部分で説明責任を果たした上でないと、増税、外形標準課税といえども、筋道としてはちょっと順序が違うんだと思います。かといって、東京都がやっていないというわけじゃありません。東京都は、客観的に見ても、他の道府県に先駆けてかなり努力をしておられることは素直に認めます。
 既に先ほど控室で待っているときに、この東京都の広報紙を見せてもらいましたけれども、ここに財政再建の推進プランもきちんと書いてありまして、費目もきちんと区分されておって、進捗状況もうたってあります。それから、職員の給与カットについても、他の道府県に先駆けてやっておられます。それから、この間新聞で知ったんですけれども、都の外郭団体に社外取締役を導入する、そういった画期的なプランも立てておられます。それから、都立大学を統合化するという話も進んでおるように聞いております。そういった意味では、他の道府県に先駆けて努力をしておられることは素直に認めたいと思います。
 ただ、それでもまだ、これからもし本当に外形標準課税を導入するのであればなおさらのこと、さらに大胆な発想で、極端な話、例えば二十三区の統合を含めて、それくらい大胆な歳出カットのところまで踏み込んでいただきたいと思います。
 先ほど、都議会の議員の方、何人おられるんですかと聞いたら、百二十七人が定数だと伺いました。区議会を合わせるとどれくらいなんでしょうということで、区によって違うそうですけれども、三十人強だとすると、七百人ぐらいいらっしゃるんじゃないかということなんですが、東京都、区議会を含めて八百人以上の議員さんが必要なのかどうか、その辺もやはり聖域にせず議論していただきたいところだと思います。
 それから、第三点、外形標準課税、これは行政サービスに対する対価ということになっているわけですね。そうすると、対価というのは一応値づけをしたものを対価と呼ぶわけなんですけれども、銀行から取りたきゃ取ってもいいと私は思います。その後広げていただかなきゃ困るわけですけれども、銀行から取るのであれば、やっぱり杉田さんちょっとかわいそうだと思うのは、何も説明してくれないといっていましたから、やはり説明責任は果たさなきゃいけない、そういう気がします。
 逆にいうと、都は銀行からサービスを受けているのも事実ですね。恐らく都の送金の手数料なんかはかなり減免されているんじゃないかと思います。そういった受けているベネフィットもあるはずですから、そういったこともきちんと含めて、何ゆえ今回大手銀行を対象に課税をするのか、この説明責任はきちんと果たさないと、やはりフェアプレーとはいえないんだと思います。
 それから、行政サービスの評価という意味でもう少し話を広げますと、東京都は、この四月から、都の教員に対して評価システムを導入されるという話を聞きました。これは非常にいい試みだと思います。私の大学でも、我々教員は、学期が終わるごと、学生から評価をされます。非常に腹が立つんですけれども、いわれてみると、なるほどもっともと思って、やはり教育の指導方法も変えることが多いんですけれども、これは非常に好例だと思うんですが、こういった仕組みをさらに広げていただいて、行政サービスにおける自己点検とか、それから評価システムとか、こういったのをトータルプランをしていただきたい。住民サービスの対価をどうやって値づけをしていくのか、そういったところにさらに話を広げていっていただきたいと思います。
 私、三年前までずっと東京に、出身は九州なんですけれども、その後二十年間東京におりました。それで、学校の教員になる前は、第一勧銀がスタートですけれども、その後外資系の金融機関にいたりしまして、納税者の一人であったわけですが、東京都に住んでいるときに、税金を払っている感覚は非常にひしひしと、実際払っているわけですけれども、それがどこに使われているのか、非常にぴんと来なかったんですね。
 それで、三年前、地縁も血縁もない宮城県の仙台というところに、宮城大学の開設で行ったわけですけれども、町を歩いていたらびっくりしました。いろんな立派なものがあるんですね。スタジアムもあるし、音楽堂もあるし、県庁も立派な建物ですしーー都庁はもっと立派ですけれども。それを見て思ったのは、ああ、ここに地方交付税でお金が行っていたんだという気がしたんです。では、地方の人はその受益と負担の意識があるかというと、ほとんどないわけです。お金はどこかから回ってくるものと思っているわけです。これにはやっぱりメスを入れなければいけません。
 そういった意味で、今回の大きな一石は、その意味で非常に評価するんですけれども、それがゆえに、手順として幾つかのところをさらに議論を深めていただきたいというのが私の切なる願いでございます。
 予定の時間を若干下回ったんですが、いいたいことは全部終わりましたので、ご清聴ありがとうございました。

○清原委員長 ありがとうございました。
 糸瀬参考人には、大変お忙しい中、貴重なご意見をお伺いすることができまして、心からお礼を申し上げます。
 これをもちまして糸瀬参考人の意見聴取は終わらせていただきます。ありがとうございました。
 以上で参考人の意見聴取を終了いたします。
 参考人の皆様、どうもありがとうございました。
 それでは、ご退席願います。
   〔参考人退席〕

○清原委員長 この際、外形標準課税に関して、Eメール、ファクス等でお寄せいただきました都民の皆様のご意見を取りまとめましたので、報告させていただきます。
 お手元配布の資料をごらん願います。
 三月十日までに都議会及び執行機関へ寄せられた銀行業等に対する外形標準課税についての都民の声は、合わせて二千二百二十八件となっております。このうち、導入に賛成の意見は千七百四十四件で、全体の七八・三%を占めております。一方、反対の意見は二百五十三件、全体の一一・三%で、また、その他の賛否が不明確な中間的な意見などが二百三十一件、一〇・四%でございます。
 次に、賛成、反対及びその他の意見の主な例について申し上げます。
 まず、賛成意見ですが、バブルの責任をとらず、莫大な公的資金を受け、貸し渋りを行い、預金金利をゼロにして高齢者の生活を狂わせた銀行の責任は重い。課税は当然。また、制度疲労を起こし、改善の速度が遅い政治機構に条例案が速度を上げたことを高く評価するなどがございました。
 次に、反対意見ですが、不況時に税を確保するには外形標準課税がふさわしいが、新税を銀行だけに導入するのは不公平。中小企業などを保護の上、広くあらゆる産業に導入すべき。また、税制のあり方として問題ないかを議論するとともに、国や他の自治体との整合性を考慮すべきなどでございます。
 最後に、その他の意見として、国、財界、金融業界と十分時間をかけて協議し、都議会でも徹底した議論を行うべきなどがございました。
 以上で報告を終わらせていただきます。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後二時四十五分散会