行財政改革基本問題特別委員会速記録第二十四号

平成十六年二月十七日(火曜日)
第十五委員会室
 午後一時三分開議
 出席委員 二十二名
委員長山本賢太郎君
副委員長和田 宗春君
副委員長大木田 守君
副委員長遠藤  衛君
理事富田 俊正君
理事鈴木貫太郎君
理事松原 忠義君
理事曽根はじめ君
理事山崎 孝明君
小磯 善彦君
臼井  孝君
野島 善司君
大河原雅子君
相川  博君
河西のぶみ君
野村 有信君
田代ひろし君
渡辺 康信君
大西 英男君
内田  茂君
青木 英二君
吉田 信夫君

 欠席委員 一名

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事福永 正道君
副知事浜渦 武生君
副知事竹花  豊君
知事本部本部長前川 燿男君
次長只腰 憲久君
企画調整部長高橋 道晴君
参事野口 宏幸君
参事新行内孝男君
参事岩井 壯三君
国政広域連携担当部長野澤 直明君
自治制度改革推進担当部長平田  章君
総務局局長赤星 經昭君
総務部長大橋 久夫君
行政改革推進室長石渡 秀雄君
IT推進室情報企画担当部長木谷 正道君
IT推進室電子都庁推進担当部長永田  元君
人事部長大原 正行君
行政部長村山 寛司君
勤労部長大塚 孝一君
財務局局長櫻井  巖君
経理部長佐藤  広君
主計部長熊野 順祥君

本日の会議に付した事件
 行財政改革の基本的事項についての調査・検討
  新しい自治制度の方向性について(質疑)

○山本委員長 ただいまから行財政改革基本問題特別委員会を開会いたします。
 まず、議席について申し上げます。
 本日の議席については、ただいまご着席のとおりといたしますので、ご了承をいただきます。
 次に、知事並びに副知事の出席について申し上げます。
 本日の委員会には、過日の理事会の申し合わせにより、石原知事並びに福永副知事、浜渦副知事及び竹花副知事に出席をいただいております。ご了承をお願いいたします。
 知事並びに副知事におかれましては、本日は、ご多忙のところご出席をいただきまして、ありがとうございました。
 これより、東京の将来像を展望し、社会・経済情勢の変化に柔軟に対応する都政を実現するため、行財政改革の基本的事項について調査・検討を行います。
 本日は、これまでの論点質疑や参考人意見を踏まえ、到達点を整理するため、お手元配布の会議日程のとおり、新しい自治制度の方向性について、前回に引き続き質疑を行います。
 なお、本日の委員会は、お手元配布の運営方法に従いまして運営してまいります。委員の皆様には、円滑かつ充実した審議が行われますよう、ご協力をお願い申し上げます。
 なお、質疑持ち時間につきましては、振鈴で五分前に一点、時間満了時に二点を打ち、お知らせいたします。質疑持ち時間はお守り願います。
 これより質疑を行います。
 発言を願います。
 山崎孝明理事。

○山崎委員 この行財政改革基本問題特別委員会は、平成九年の十月に設置されました。この間、幾多の委員会においてさまざまな都政にかかわる問題を議論してまいりましたが、要は、目的としては、二十一世紀を展望する時代の変化に柔軟に対応する都政を実現するため、行財政改革の基本的事項について調査・検討するという目的であります。
 平成十一年十月には、石原知事にご出席をいただきまして、知事と我が党の、今議長をされております内田理事との間で、東京の大都市経営のあり方について率直な議論が交わされたところでありました。その際、今日的な行財政の再建や行革については、理事者側が執行権限の中で進めていくべきだ、しかし、中長期的な東京の百年の大計ともいうべきものについては、議会と理事者が議論し合って積み上げていこうということで、知事と我が党の内田理事との間での意見の一致を見たわけであります。
 以来今日まで、設立されてから六年余りにわたり、とりわけ都議会改選後の平成十三年十月に本委員会が再スタートして以降より、集中的に東京をめぐる自治制度改革の諸課題について、我々と理事者の間で真摯な議論を重ねてきたところでございます。
 きょうは、今日までの総括というような、そうした立場から質問をしたいと思いますが、私の持ち時間の範囲で、まず自治論、次に国と地方、そして大都市と地方、それらをめぐる問題点を列挙し、これを議論していきたいと思います。その後、大都市行政、これは東京都と特別区の関係、そして最後に広域行政、都市機能論から自治制度のあり方という形で議論を進めていきたいと考えております。
 本日は、本委員会に再び知事をお招きして、東京における自治制度改革の意義や自治制度改革を進めていく上での考え方などについて議論をしていきたいと思います。
 まず最初に、我が国の自治制度をめぐる基本的な論点について幾つかお尋ねしたいと思います。
 そもそも日本の現在の地方自治制度が発足したのは、ご存じのとおり、戦後間もない昭和二十二年、地方自治法が施行されたことによりスタートします。それからはや半世紀以上が経過しましたが、その間、我が国を取り巻く経済社会状況というのは大変大きく変わりました。とりわけ都市と地方は、自治法が施行された当時にはだれもが想定していなかったほど、大きく異なった発展を遂げてきたわけであります。
 ところが、このような地方自治をめぐる環境の著しい変化にもかかわらず、地方自治制度自体は、小規模な変革は繰り返してきたものの、何ら抜本的な見直しが行われておらず、もはや現在の我が国の社会実態に十分対応し切れなくなっているといえます。
 そこでお伺いしますが、地方自治法施行後五十数年が経過し、この間、日本の社会実態は当初の想定を超える大きな変化を遂げましたが、現在まで続いている自治制度についてどのように評価するのか、知事のご所見をお伺いいたします。

○石原知事 敗戦の後、六十年近く、この日本にも随分大きな変化がございましたが、その戦後の間もなく、昭和二十二年に一応地方自治法というものが施行はされました。しかし、そういう法律ができようができまいが、実質、日本の中央と地方のかかわりというものは、明治憲法が発布される前の、明治政府なるものができて、一応暫定的に太政官制度ができた。あのときにほとんど四十七都道府県というような区分ができまして、殿様のかわりに県知事が勅令で赴任していって、すべて中央の指令のままに地方を牛耳ってきた。実質、それ以来全然変わっていないという気が強くいたします。
 しかし、この東京に限っていえば、東京に非常にたくさんあります企業、産業にとっても、日本の産業そのものも非常に変質もしましたし、一方、社会を構成する人口の配分、年齢の配分も変わりまして、少子化が極めて進みましたし、また、家族というものの形態も変わってきましたし、あるいは住居に関していえば、三多摩のニュータウンのようなものを講じながら、それが完成する前に、既に今度は中心にまた人が戻ってくる非常に皮肉な現象も到来しております。
 いずれにしろ、そういったものに日本の政治全体が対処し切れずに来たと思いますし、繰り返して申しますけれども、自治制度についても基本的な構造は本当に変わっていない。太政官制度以来の、知らしむべからず、よらしむべしという本質的なかかわりは変わっていないと思います。
 いずれにしろ、こういった歴史的な大きな誤謬というものを、私たちここら辺でしっかりとらえ直すことをしませんと、地方自治の確立もあり得ないし、東京の問題も本質的に解決されていかないと思います。

○山崎委員 他方で、東京及び首都圏はというと、その変化は相当激しいものがありまして、既に三千三百万人の人口集積を擁する、世界にも例を見ない、類を見ない大都市圏へと発展しました。とりわけその中枢となる東京は、アジアの金融、経済の一大拠点へと成長し、名実ともに日本を代表する国際都市としての地位を得るまでに発展したわけで、その変貌ぶりは、ほかの都市の追随を許さないものであります。
 我が党はこれまで、本委員会において、二十一世紀が都市の時代であるということを基本認識として繰り返し強く主張してまいりました。今後、人類の過半数が百万人以上の大都市に住むであろうとまでいわれています。まさに都市こそが人々の活動の中心であり、活力の源泉であり、大都市が世界経済を牽引し、人類の福祉に貢献していく責務を有するといえるでしょう。国家というよりも、大都市が引っ張っていくんだということだと思います。
 このような時代状況の中、我が国の最大の都市、そして首都でもある東京の興亡が、我が国全体の興亡に直結するといっても過言ではありません。日本を再生するには、東京の都市機能を一層強化し、世界じゅうから人、物、金、情報を引きつけ、世界的な激しい都市間競争に勝ち抜けるような魅力と活力あふれる都市にすることが不可欠であります。
 そのためには、首都圏三千三百万人の集積のメリットを生かしつつ、国際空港や三環状道路などの産業活動を支える都市基盤とともに、住民の暮らしを支える生活基盤の整備を強力に推進していくことが何よりも重要であり、これらを効果的に実現できる大都市自治、大都市経営の確立が切実に求められているといえると思うんです。
 これまで東京は、政治、経済、文化の中枢管理機能と産業立地が相まって大きな求心力を持つことで発展を遂げてきたわけでありますが、他方で、東京・首都圏への過度の集中が、交通渋滞あるいは大気汚染あるいは廃棄物など、過密に起因する都市問題を深刻化させてまいりました。このような過密問題を解消しながら、集積のメリットを最大限に発揮していくことこそが、大都市経営の根幹をなす重要課題であろうと思います。
 このようないわば首都圏に特有の行政需要は、ほかに類を見ないほどの量的な膨大さと広域的な広がりを特徴としていると思いますが、そのため、先ほども申したように、戦後の地方自治制度と社会実態とのそご、食い違いは、この東京・首都圏においてこそ最も顕著にあらわれているといえます。自治法の施行当時に念頭に置かれていたであろう自治の姿をはるかにしのぐ巨大な都市圏を前にして、現行の自治制度のもとでどのように都市経営を行っていくのか、あるいは制度そのものをどう見直していくのか、その考えが問われていると思うんです。
 そこでお伺いしますが、三千三百万人のメガロポリスに成長した首都圏や東京において、当初の想定を超えて、今の権限では処理し切れないほど事務事業が発生するなど、その内容は大きく変化していると考えますが、知事のご所見をお伺いいたします。

○石原知事 ご指摘のように、日本にとっての首都は必ずしも東京だけではございませんで、隣接して人的な交流も含めて構成している神奈川、埼玉、千葉といった、いわゆる首都圏を構成している自治体によって運営されていると思います。
 ちなみに、東京に限っていいましても、東京の日本全体に対するGDPの比率は一七・六%、一八%近い。また、首都圏全体のGDPの割合は三一%でありまして、これはもうイギリスに匹敵する、また、東京都プロパーの予算もカナダに匹敵する巨大なものでありますが、それに見合う仕事が山積し、それを支える集中、集積というものも現にあるわけですけれども、これが、ご指摘のように、例えば環状線のようなものの完備がおくれているため非常に阻害されているということで、たまたまゆうべ、神奈川県の松沢君と埼玉県の上田君と三人で、あることで会合しまして、小泉政権は何か北海道全体を一種の特区に構えて云々といっていますけれども、それはそれで結構でしょうが、それよりもっと大きな意味合いがあるのは、やっぱり首都圏を構成する東京、神奈川、埼玉、そして千葉の四県を合わせた首都圏というものを特区として構えて、これを活用、運用する手だてというものを、当然担当の省は国交省でありましょうから、国交省のイニシアチブということだけではなくて、我々が積極的に素案をつくって踏み込むことでつくっていこうじゃないかという相談をしまして、担当を決めまして、近々四県の素案をつくるつもりでおりますけれども、いずれにしろ、そういうことでもしませんと、今のやり方では、この首都圏の問題というのはとてもスムーズに解決されてはいかないと思いますので、画期的と、大げさでありますけれども、発想を変えた仕組みでの展開が必要だと痛感しております。

○山崎委員 道州制の話題とかいろいろなものが出てきておりますし、また、北海道道州制特区というような議論も、小泉さん、この間の予算委員会ですか、あのときにいろいろ答弁されておりましたけれども、後ほどまた道州制については入っていきたいと思います。
 まず、自治制度改革の論点について、大きく国と地方をめぐる問題と、大都市と地方をめぐる問題、このように二つに分けて考えていきたいと思いますが、まず、国と地方の関係をめぐる問題について伺います。
 去る平成十二年の地方分権一括法によるいわゆる第一次分権改革では、従来からの国と地方自治体の関係を抜本的に改めて、新たに対等、協力の関係として位置づけるため、機関委任事務の廃止、国から地方への事務、権限の移譲などが図られましたが、その成果はというと、真に地方自治の行政運営を自主的、自立的なものにするにはいまだ不十分であるといわざるを得ません。
 具体的に挙げれば、国から地方への事務、権限の移譲については極めて小規模で、その後も移譲ははかばかしく進展しておりません。これでは、国の役割を国家の存立に必要な事務などに限定し、地方自治体は幅広く地域の行政サービスを担っていくという改正地方自治法の趣旨とは、本当にほど遠い状況であります。
 また、国による地方支配の象徴ともいえる機関委任事務が廃止されるとともに、地方の事務に対する国の関与については、基本原則の明確化が図られたにもかかわらず、今でも依然として自治体の行政運営に対する国の強い関与が存続しているのが実態であります。
 さらに、これら地方の事務について、国と地方自治体の責任と経費負担のあり方が未整理のまま放置されていることが、地方自治体の自立をさらに困難にしているわけですが、そこで、現行の地方自治制度において、地方自治体の事務と財源の配分にはどのような問題があるのかについてお伺いいたします。

○前川知事本部長 地方自治体の事務につきましては、ただいまお話もありましたが、さきの第一次分権改革の後、現在でもなお、本来であったら例外とすべきであった法定受託事務が数多く残され、国と地方の役割分担が不明確となっております。また、各自治体の自主的判断にゆだねるべき自治事務につきましても、不要あるいは不合理な国の関与や義務づけが残されております。
 一方、財源配分につきましても、法定受託事務の中には、国が適正に経費を支出、負担していないものがあり、自治事務の中には、国庫補助負担金を通じた事実上の国の統制が行われ、地方の裁量の余地がほとんどないものもございます。
 このように、現行法における国と地方の事務区分と財源配分の現状は、地方分権の観点から見て不徹底であり、自治体の自主性発揮を阻害していると考えております。

○山崎委員 今お話しのように、国による理不尽ともいえる関与について徹底的な見直しが行われなければ、たとえ国から地方への税源移譲が進んでも、地方自治体がみずからの裁量で事務を執行することができず、地方主権は全く有名無実化してしまうことになると思うんです。
 関与については、その後、地方分権推進会議が平成十四年十月に取りまとめた事務事業のあり方に関する意見においても、自治事務に対する関与の見直しが多数指摘されましたが、改善は遅々として進んでおらず、早急な見直しがなされるべきであると考えます。
 このような国と地方自治体の責任と経費負担のあり方を整理し、国による補助、負担がいかにあるべきかを明確化していくことが必要であると思いますが、このような国と地方の事務と財源の配分の問題について、知事の基本的なお考えはいかがでしょうか。

○石原知事 よく大ざっぱに、国が行政全体に使うお金のうち、地方に回すものが四で、それに比べて、国との対比で仕事は六だと。国の方は、お金の全体の部分の六〇%を動かし、仕事は四〇%もしていない、こういうギャップというんですか、アンバランスがあるわけで、これをきちっと埋めるということが必要だと思いますし、いわゆる三位一体の中の国家からの補助金の仕組みなども、非常に国の制約、指図を受けまして、同じ東京なら東京にある国道の補修にしたって、現場感覚からいえばこの部分を直すべきなのに、国はこっちを勝手にいってくる、そういう矛盾があちこちにあるわけでして、小渕総理の時代にやっと地方分権一括法ができましたけれども、税財源の分与は中長期であるという付記までついているおかしな法律でありましたが、やっと仏に魂が入るかなと思ったら、今度の三位一体も有名無実なもので、そういう点では、非常にまだまだ道が遠いなという感じがいたします。
 いずれにしろ、地方の事務や税財源配分への国の不合理な関与を排さない限り、地方主権の確立はありませんし、また、地方に住む国民としての一人一人の幸せも満足もかち得られないと私は思います。

○山崎委員 以上のような地方の事務をめぐる問題点を踏まえて、今後の地方税財政制度改革の進め方に関する都の考え方についてお伺いしていきたいと思いますが、国と地方の事務分担及び経費負担の問題の本質は、こういうことだと思うんです。
 (パネルを示す)ちょっと小さいかもしれませんが、国民の租税、大体約八十五兆円ですけれども、国税が五十兆円で五八%、地方税が四一%ということで、国は三、地方が二、こういう構図です。そして仕事の量でいきますと、国民へのサービスの還元は、国と地方の歳出総額でいきますと、国が二で地方が三ということになります。これだけの、三対二が二対三というふうに逆転しているわけですが、その間を国は地方に地方交付税を流し、国庫支出金を流しという形で、地方の仕事をなしているわけです。
 そこで、こういう三対二というような逆転現象になっているわけですが、その結果、税収と歳出のギャップを埋めるために、今いったように、地方交付税とか国庫支出金という形で国から移転財源が流れるわけですが、それによってやっと地方自治体は仕事ができるという形であります。
 こういったところが地方自治をめぐる問題の根源であると思うんですが、国は補助金を通じて地方自治体に対する統制を続け、地方の実情に合わない、例えば画一的な事業の押しつけが横行し、地方の自主性がこれによって損なわれてしまうわけです。その一方で、地方自治体は国への依存体質から抜け出せなくなってしまう。そればかりか、国も地方自治体も、こうした財源の配分あるいは確保といった非効率的な、非生産的な業務に仕事の大半が費やされてしまっている。当然、それに必要な職員の給与や事務経費は国民が支払った税金で賄われている。このような金とエネルギーをまちづくりや福祉や教育に、本来やるべき地方自治体の仕事にもっと振り向ければ、もっともっといい仕事ができるはずです。何とも壮大な税金のむだ遣いといえると思うんです。いいかげん、このようなあしき状態から抜け出していかなければならない。国庫補助負担金や地方交付税の見直しは、まさにこうした行革の視点からもなされるべきであります。
 地方税財政問題のかなめともいえる国庫補助負担金の廃止、縮減、税源移譲、地方交付税制度の見直しについては、国において、一昨年、三位一体改革の名のもとに検討が進められてきました。そして、昨年六月に閣議決定された経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三に基づいて、平成十六年度予算編成においては、まずは来年度に実施する三位一体改革の取り組みが示されました。
 この改革案の検討の過程では、総務省、財務省を初め、関係各省の激しい利害対立が繰り広げられ、一時は改革そのものの実現が危ぶまれたわけですが、そういった厳しい状況の中で、曲がりなりにも改革の第一歩を踏み出した点は一応評価できるとは思いますが、その内容については、本当に地方主権の確立という改革本来の趣旨にのっとったものかというと、大変そこで疑問を感じるわけでありますが、そこで、国の三位一体改革の現状はどうなっているか、改めてここでお伺いをしておきます。

○前川知事本部長 三位一体の改革につきましては、ただいまお話もありましたいわゆる骨太の方針が出されまして、平成十八年度までにおおむね四兆円の国庫補助負担金の廃止、縮減、基幹税目による税源移譲、地方交付税の総額抑制を行うこととされたわけであります。
 これを受けて、今月初めに政府は三位一体改革関連法案を閣議決定し、改革の初年度である平成十六年度に実施する内容をまとめております。これを見ますと、国庫補助負担金につきましては、四兆円のうち一兆三百億円程度を廃止、縮減し、税源移譲につきましては、所得譲与税約四千二百億円及び税源移譲予定特例交付金約二千三百億円を創設して、一般財源化して地方に配分することとされております。
 また、地方交付税につきましては、地方財政計画上の人員や歳出を見直すことにより、一兆二千億円程度を減じることとされております。

○山崎委員 今お答えのあったとおり、一兆円を超える国庫補助負担金の廃止、縮減を行う一方で、財源措置はわずか六千億円余りにすぎません。しかも、注目されていた基幹税による税源移譲は先送りされまして、そのかわりに、税源移譲とは全く異質な所得譲与税というのを創設したり、これは、それこそ国庫補助負担金あるいは交付税と全く同じようなものだと思うんですが、あるいは税源移譲予定交付金、そんなものをつくってお茶を濁したといわざるを得ません。自治体運営にかかわる我々の立場からすれば、あきれてどうなっているんだというような感じさえいたします。
 特に、東京のような大都市自治体にとって容認しがたいのは、大都市の財政需要に十分に配慮しないまま、地方偏重の財源措置の具と化しているなど、極めて問題の多い地方交付税制度について、抜本的な見直しを先送りするなど、都議会自民党が主張してきた都市再生の重要性という観点を全く見ていない、とんでもない問題だと私は思います。
 国が示した三位一体の改革について、その内容についてはどのように知事はお感じになっているか、お答え願いたいと思います。

○石原知事 私としては全く評価をいたしておりません。一兆円余の国庫補助負担金の削減だけを先行して、肝心の基幹税目の移譲は先送りされたわけでありまして、それから、昔からいわれている制度的なひずみが生じている地方交付税制度の仕組みの見直しについても、全く触れていないわけであります。
 私もこの問題余り詳しく知りませんので、先般、問題のある地方交付税の基準財政需要額あるいは収入額というのをどうやって決めるかという方程式があるようですが、こんな厚い何冊かの資料が来まして、読む気もしなかったんですが、一部にあれはブラックボックスといわれているそうですが、理路整然としているようで、実は根底から狂っているというか、そういう見直しが絶対に早急に必要だという気がいたします。
 いずれにしろ、今の日本の危機の本質は、正当な歴史認識のないがゆえに政治が停滞して、国家全体の利益を見据えて総合的に調整するという機能が働いていないということにあると思いまして、今回の三位一体の改革についても、現況では、国と地方を通じた既得権益の擁護の構図をただただ温存するだけのものとしかいえないと私は評価しております。

○山崎委員 結局、三位一体改革の初年度は、地方自治体、とりわけ大都市自治体にとって、成果といえるものはほとんどないということだと思うんです。小泉さんは、平成十八年度までの改革と展望の期間を通じた三位一体改革の全体像をことしじゅうに示すといっております。しかし、ことしの改革の内容を見た限りでは、今後も、各関係省庁の利害のぶつかり合いの中で、結果として地方の自立性の向上につながらない、骨抜きの改革になってしまうおそれすら少なくありません。まさに改革の成否がかかった正念場といえる今こそ、地方自治体が一致団結して、国に対して改革の断行を強く働きかけていくことが最も重要だと思います。
 このような観点からすれば、全国の都道府県知事を構成員として成り立っている全国知事会は、地方の代表として国に対峙し、地方自治体の意見を国政に反映させていく上で、最も形の上では強力な組織の一つであると思いますが、全国知事会では、今、三位一体改革の内容についてどう評価しているか、お伺いいたします。

○前川知事本部長 事実経過を申し上げますと、全国知事会は、昨年の末に、国庫補助負担金の削減につきまして、一兆円を目指して廃止、縮減を行うとした内閣総理大臣の指示に触れまして、三位一体の改革に向けて強力なリーダーシップを発揮されたことに敬意を表するとする会長談話を発表いたしております。引き続き、税源移譲につきましても、平成十八年度までに所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を実施することに加え、暫定措置とはいえ、平成十六年度において基幹税である所得税の一部を所得譲与税として地方に税源移譲することについて、評価するものであるとの会長談話を公表いたしております。
 しかし、今月の初めに、先ほど申し上げました来年度の地方財政計画で地方交付税が削減されることが明らかとなりますと、今度は、国庫補助金の見直しや税源移譲が不十分な中、地方交付税の削減のみが突出して行われることは、地方公共団体の財政運営に致命的な打撃を与えるものであり、極めて遺憾であるとの一転した緊急コメントを会長名で公表いたしております。

○山崎委員 今聞いた限りでは、全国知事会は、国の一挙一動に翻弄されてしまっている、目先の損得勘定だけで場当たり的な態度を表明するばかりの軽佻浮薄な団体といわざるを得ないと私は思うんです。
 このような全国知事会の三位一体の改革に対する姿勢について、知事は、昨年末に開催された全国知事会の席上で、他県の居並ぶ知事たちを前に、極めて厳しい批判をされました。
 そこで伺いますが、知事は、三位一体改革に対する全国知事会の評価についてどう思われておるのか、お答えいただきたいと思います。

○石原知事 余り個人的なことを申したくありませんけれども、何といっても、梶原さんは全国知事会にみずから名乗って出て就任された会長でありますから、その責任はあると思いますが、今限りにおいては、私は、非常に恣意的な行動ばかり目立って、もともと全国知事会というのは非常にセレモニアスなもので、本当の勘どころのことはどういうふうに処理されたかわかりませんが、いずれにしろ、前会長でありました土屋さんは、首都圏の問題など持ち出しましても、自分は一応全国知事会の会長であるから、余りこの問題について強く発言できないから、君やってくれとか、だれにやらせてくれとか、非常に公平な態度をとっておられましたが、幾つか私的な諮問機関も、しかも全国知事会の局内じゃなしに、何県でしたか、あそこは、あの県庁の中につくって、それに各地に呼びかけて参加するかしないかなどと問い合わせをしていまして、いっていることも、今、前川本部長から説明がありましたが、最初は国の取り組みを評価するなどという会長談話を発表しておきながら、今度は一転して国を批判するなど、彼の個人的資質か知りませんけれども、非常にジグザグしておりまして、あの人も国家の官僚出身の知事でありますから、そういう過去の余韻というのは非常に強く持っていらっしゃるかもしれませんけれども、いずれにしろ、その後の全国知事会の総意として発表された談話なるものは私は非常に不服ですし、多数決で決まるものでもないと思いますし、むしろ、つまり、国がいっていることよりも退嬰的、逆行的といいましょうか、時代錯誤の部分がございまして、東京はこれに強く抗議をいたしまして、場合によっては立場を変える、つまり、複数の県知事と諮って、彼が代弁していると称する全国知事会の意向なるものは、必ずしも我々の意向とは沿わないものだということの表明もする必要があるかと思っております。

○山崎委員 地方の自立を唱えながら、実際には地方交付税制度を守ろうというような、みんなで大きな声を上げているだけで、国の地方支配の構図に何らメスを入れないで、旧態依然たるばらまき行政を温存しようという、そうした意図を露呈してはばからない、このような全国知事会の恥知らずな態度は、もうどうにもならない。私どもも、この間のいろいろな報道を聞いていまして、全く知事が怒るのは当たり前だというふうに思います。
 そうした全国知事会の発想の基本には、税源移譲が行われると、必然的に大都市に税源が偏っていってしまうんじゃないか、地方の財源が減ってしまうんじゃないか、そういった大都市に対する不信感が根強くあるのではないか。つまり、そういった大都市対地方というような構図の中で、大都市と地方との格差を取り戻すための強力な手段として地方交付税の堅持ということに彼らは至ってしまうんじゃないかと思うんです。あたかも大都市と地方を対立的にとらえて、その中で、それぞれの地方の既得権益をどのように維持し続けるかというようなのが、そうした知事たちの考えではないかと思います。
 ただ、そうした大都市対地方というような対立軸でとらえる考え方は、私は大きな間違いだと思います。大都市対地方という構図でとらえるのではなくて、大都市の活性化が日本全体の再生にとって重要であると考えますが、いかがでしょうか。

○石原知事 全くおっしゃるとおりでありまして、何もひがみとかそねみとかいう言葉を持ち出すつもりもありませんが、何か東京がひとり勝ちしているじゃないかというような言葉もよくあちこちで聞かれます。
 ただやっぱり、日本の社会工学的なひずみというものが今日のこういうものをもたらしていると思いますけれども、これを、かつて田中角さんがいったみたいに、日本じゅうにローラーかけてどこもここも同じような国につくり直すなんてことはできっこありませんし、また、それは非常に間違った方法だと私たち反対いたしましたが、いずれにしろ、仄聞しますと、神奈川県のかつてのある幹部が、自分たちも相当頑張ったけれども、ついに交付金をもらうようになってしまったら、これは実は楽なものですなという述懐をしていましたけれども、そういう、一回飲んではいけない薬を飲んでしまうと抜け出せなくなる。そういう経験を踏まえた上での、国に対する甘えといいましょうか、この時代にそれをさらに助長して生き延びようとするのは、私は本当の政治家じゃないと思いますし、行政官としても責任のある姿勢じゃないと思います。

○山崎委員 とにかく、真に必要な財政需要が存在するところにきちっと財源配分がなされなければいかぬということだと思うんです。
 この点をちょっとわかりやすいように、高速道路を整備するということについて例に挙げて考えたいと思いますが、高速道路の整備をめぐっては、道路公団の民営化の議論とあわせて、将来の高速道路整備についての議論が昨年相当なされたわけです。将来の整備計画九千三百四十二キロメートルを計画どおりつくるか、それとも凍結するかという議論があったわけですが、このとき全国知事会は、高速道路整備に関する緊急提言を発表し、その内容は、採算性を顧みることなく、おくれた地方に対する公平性の確保を基本理念として法定予定路線の整備を進めよ、こういう驚くべき主張をいたしました。知事は、この件についても、全国知事会の席上で痛烈な批判をされたという報道を私どもも伺っております。
 今こそ、高速道路整備の持つ意味合いを基本的に立ち返って考えるべきだと思うんです。よく知事は、タヌキしか通らないところに道路をつくってどうのこうのというご意見をかなりやっておられまして、我々も実際に地方に行ってみると、下の道路はちゃんと車が走っていて上はめったに車が走っていない、そういう高速道路がたくさんあるわけですね。そういったことを見ると、全国知事会で、自分の田に水を引くことしか考えていないような知事たちがいっぱいいるということは事実であります。
 そういうような知事会というのはどういうものかなというふうに感じるんですが、現在東京都としては、首都圏三環状道路の整備促進を行っていますし、首都圏高速道路構想も発表しました。当然、毎回知事がおっしゃるように、首都圏の交通混雑を解消することは、経済波及効果あるいは環境の改善ということで非常に大事なことだと思うんですが、知事もよくおっしゃっていると思うんですが、(パネルを示す)これは、世界の主要都市、ロンドン、パリ、ベルリンの高速道路。ロンドンの場合には完全に市内を一周していて、一〇〇%の整備率です。それからベルリンも九六%できている。パリですら七四%。それに比べて、東京は二〇%しか環状道路ができていないわけです、高速道路の環状道路が。
 こうやってみますと、いかに世界の大都市が、その首都である、あるいは大都市があるがゆえに、しっかりとした高速道路の整備を、首都圏あるいは都心というか、そういう大都市はみんなもう既にやっている。ところが、日本はいまだに、首都圏というか東京圏の高速道路の整備率というのは二〇%しかいっていない。これでは大都市の機能が全く損なわれてしまうことは事実であります。そうした意味で、東京の道路整備と地方の高速道路とどちらが重要性が高いかということは、本当に火を見るよりも明らかだと思うんです。
 こうしたことを考えていくと、財政力というものに対する本質的な無理解は、単に地方交付税制度や高速道路整備に対する料金プール制などの基本的枠組みを温存して、国費の効果的な配分を妨げるのみにとどまりません。
 全国知事会は、昨年十一月に三位一体改革に関する提言なるものを公表しまして、都の猛反発があったにもかかわらず、知事会の総意として強引に、今知事おっしゃるように、発表しました。その中で、財政力格差への対応策として、地方交付税による対応とあわせて、地方譲与税の配分調整や法人事業税の分割基準の見直しなどによる財政均てん化策の必要性を全国知事会は訴えています。これらはいずれも大都市自治体にとって不利益な財源調整の強化を求めるものでありますが、とりわけ問題となるのは、法人事業税の分割基準の見直しであります。ちょっとパネルを出します。
 これは、分割基準の改正が、昭和四十五年以前、平成元年以前、現在と、何回かに分かれているわけですが、証券会社の場合には、都内に本社がある場合、従業員数千人、それからほかの県に三つ支店があったとしますと、この千人の--当初四十五年以前は、従業員数によって税額が決まっていたわけです。千人、それからこちらが百、百、五十とすると、都への支払い税額は、人数分で、従業員数で当時はやっていたから、八〇%都に入っていた。ところが、平成元年以前になると、都内ですと、本社の従業員数は二分の一として算定すると。千人いても五百人しか算定しない。そのことによって、都に入る税額は六七%に減った。そして現在では、何と、従業者数と事務所数を併用して計算することによって、かつて八〇%あった、次には六七%入った税金が、四六%しか現在は都に入っていない。
 これは証券会社の場合ですが、製造業の場合は、昔は従業者数によって、都内の本店が三百人で、地方のある県の工場に七百人の従業員が働いているとすると、三〇%と七〇%になっていたわけですが、平成元年以前からは、本社の従業員数は二分の一として計算すると。百五十人で計算して、地方の従業員の七百人は七百人として計算するから、都内に入る、東京都に入る税金は一八%に落ちてしまう。現在では、工場従業員数は、七百人を今までは七百で数えていたのが、一・五倍で考えるということになりますから、七百人の一・五倍ですから千五十人ですか、と計算するので、ついに地方に入る税額は八八%、東京都には一二%しか入らないというようなことになってしまったわけです。
 ですから、財源調整等の主な例によると、法人事業税は、何と都への影響額というのは四百八十三億円、義務教育教職員給与等国庫負担金についてはマイナスの百二十二億円、地方道路譲与税についてはマイナスの四十億円。このように、東京というか大都市に本社のある企業、そこで大都市に入る税額というものが、どんどん、改正されてというか改悪されて、減っていくわけです。
 これは、東京都に対しては非常に大きなダメージを受けるんですが、明らかに大都市をねらった財源調整ともいうべき不合理な税制の見直しについて、知事、いかがでしょうか。

○石原知事 いろいろご指摘ございましたが、私、全く同感でありまして、私が議員のころ、例の重量税とガソリン税、揮発油税ですか、あれが田中内閣のときに一種の目的税として決まりましたけれども、その後の配分を見れば、東京の売り上げに比しての、東京への目的税の配分というのは非常に少ないていたらくであります。
 今おっしゃったのも、とにかく金持ちから取れるだけは取れというふうな魂胆がありありという感じがしまして、何も私、坊主丸もうけ、東京丸もうけを決して是とするものではありませんけれども、非常に致命的な機能というものを背負っているこの首都あるいは首都圏にしては、致命的に欠落しているものは、おっしゃったとおりの環状線もそうでありますけれども、こういったものの補てんというのは、時間が空費されればされるほど金もかかるわけでありますが、いずれにしろ、美濃部都政時代、東さんのころ計画されていた多摩川に沿ってのバイパスなどが、調査費もついていたのに、立川の共産党が何か四百人ぐらい署名を集めたらばっさり切られてしまって、それっきりになりました。今、扇さんの時代にやっと凍結解除してもらいました圏央道や中央環状線も、凍結がそのまま見送られてきた。
 これはやっぱり、ずっと自民党が政権をとったわけですけれども、都市に対する関心度というのはいかに低いか、そういう認識がいかに文明工学的にないかということの恥ずかしい例でありますけれども、そういったものを私たちはこれから声を大きくして是正していきませんと、何といっても頭脳的、心臓的機能を果たしている首都圏というものがその役目を果たし切れなければ、国家全体が疲弊していくということになりかねない、そういう強い自覚を持っております。

○山崎委員 今お話のあった分割基準については、これは大都市にとっては大打撃でありますから、こうしたことが繰り返されないように、我々も重大な問題として認識していかなければいけないと思うんですが、全国知事会による提唱のわずか二週間後には、総務大臣の諮問機関である地方財政審議会が十六年度の地方財政についての意見を取りまとめ、そこには、知事会の提言をそのままに、地方譲与税の譲与基準と法人事業税の分割基準の見直しが、財政力格差拡大への対応策の中に列挙されているわけです。これではまるで、全国知事会が総務省と結託していわゆる大都市たたきをしている、そう思わざるを得ません。
 特に全国知事会は、先ほど知事がおっしゃったように、会長初め半数以上が中央官僚出身の知事ですから、口先ではうまいこといいますけれども、実際にはやはり自分のところへおいしい水を引っ張るんだというようなことばかりで、いわゆる国家観とか、日本をどうするとかいうようなことは全く考えていない。いってみれば、次の選挙に当選するには、いっぱい予算を引っ張ってくればいいんだというようなことしか考えていないのが、私は、全国知事会の大方の知事の考えであるだろうというふうに思うんです。
 今こそ、地方対大都市の財源の奪い合いというような低次元のことではなくて、本当に日本全体がどうしたらしっかりとした国家になるのかということで、そういう観点からこれから考えていく、あるいは全国知事会もしっかりと、そうした点をどうやって変えたらいいか、なかなか難しいと思うんですね。だけれども、我々大都市、東京に限らず大阪府にしろ、みんなで理解を共通にする。先ほど知事がおっしゃるような、何人かの知事と結託して、思い切り国に対してアピールしていかないと、そう簡単に全国知事会をひっくり返すというようなわけにもなかなか私はいかないと思うんです。だからこそ、我々がこうやって都議会で特別委員会をつくって、そういった点も、我々も地方の議会に対しても発信していかなければいけないというふうに考えております。
 国と地方、あるいは大都市と地方ということを今話してまいりましたが、戦後政治を考えてみたときに、本当に分権改革が進んできてはおりますが、なかなかこれも容易ではありませんで、平成十二年の第一次分権改革も、これも道半ばといったような状況であります。しかし、国から地方分権は与えられるというものではなくて、地方主権の担い手となるべき自治体みずからが、三位一体の改革を含め、地方分権の流れを前進させ、真の地方主権をかち取っていくんだという強い姿勢で国を動かしていくことが必要であろうと思います。広域自治体としての都道府県の果たす責務は、私は大きいと思うんです。
 そこで、都道府県の役割は今後もますます重要になると思いますが、知事のご所見をお伺いいたします。

○石原知事 おっしゃるとおりだと思います。やはり地方分権というものの主体者は地方自治体でありまして、それが今日的な歴史意識をきちっと持って政府に物もいうということが必要だと思います。
 現に、どういう反省でしょうか、どういうニーズでしょうか、東北の青森、山形、秋田ですか、この三県が道州制で合併するという、そういう意向もあるようですけれども、これはやっぱり私たちが眺めれば、あと宮城県のようなのが加わらなければ実が上がらない。そこら辺の調整というのはだれがするのか。やっぱりこういうものは、国も相まって、太政官制度以来続いているこういう区分というものを現代的に合理化していく必要があると思います。
 いずれにしろ、地方分権の主体者は地方自治体でありまして、おっしゃるとおり、我々がしっかりしなければ、本当の分権はあり得ないと自覚しております。

○山崎委員 これまで五十年以上の実績を踏まえれば、自治制度改革は国主導で行うべきではなくて、自治体、とりわけ都道府県の側から国に対して発信していくべきだと考えますが、改めて知事のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

○石原知事 おっしゃるとおりだと思います。繰り返しになりますが。ただ一方的に地方が声を上げても、国が聞く耳持たなければしようがないので、そういう点で、国自身も、つまり、この時代における明治以来続いている行政区分がいかに非合理なものかということの認識を持たせる、そのためにも、東北の問題は別にしまして、私は、現に実を上げております、首都圏を構成する四都県による一種の広域行政というのは実を上げていますので、こういったものを踏まえて、私はやはり強い声、大きな声が国に向かって発せられるべきだと思います。

○山崎委員 ありがとうございました。
 それでは続いて、大都市経営を担うための自治制度のあり方について伺います。
 私、区議会時代に、たしか昭和六十一年だと思いますが、ロンドンを区議会議員として何人かで視察をいたしたときに、ちょうどサッチャー政権で、ロンドンの広域行政機関であるグレーター・ロンドン・カウンシル、GLCがまさに廃止される直前でありまして、その市庁舎に、あと何日でという数字が出ているわけですね。あと、たしかあのころは百何十日で大ロンドン市はなくなって、その市内にある三十三の区が独立するんだと。国と、中間の大ロンドン市がなくなって、直接、東京でいう二十三区、そういう形になるというその直前に行って、いろんな話を、視察をしてまいりましたが、そのときに、区の人々は、おれたちはこれからいっちょ前になるんだということで、非常に盛り上がっているのを覚えています。いってみれば、三十三区の独立の直前でありました。
 その後、私また行って視察をしたいと思うんですが、なかなか世の中がうるさくなって視察できなくなってしまいまして、見ていないんですが、このGLCの廃止後、ロンドンは中間的自治体の存在しない期間がしばらく続きましたが、二〇〇〇年になって再度グレーター・ロンドン・オーソリティー、いわゆるGLAという形で広域的行政機関が設置されたわけです。そのロンドンにおけるGLC廃止からGLA設置に至るまでの経緯について、簡単に、知事本部長、教えていただきたいと思います。

○前川知事本部長 一九八六年の、今お話があったGLCの廃止がされた後、その事業はそれぞれ、国や公社、基礎的自治体である三十三の区、各区の代表による委員会など、約百の団体に移管されたわけであります。このGLCの廃止は、二重行政の非効率性を理由として行われたわけでありますが、実際にやってみると、市民になかなかわかりにくい複雑な仕組みとなった。その上、大気汚染や交通渋滞など、大都市の複合的な課題について各団体の連携した取り組みが行われず、例えばロンドン全域で調整すべき都市計画などの分野では、各区の利害調整がなかなか進まなかったというふうにいわれております。
 こうした状況に対して、ロンドン全体についての戦略的機能を持った広域的自治体が待望されるようになりまして、二〇〇〇年に改めてGLAが設置されたものというふうに理解しております。

○山崎委員 このロンドンの事例を見ると、大都市行政というものは、国と直接、また基礎的自治体のみで役割分担をやっていくというのは非常に難しいというふうに思います。やはり広域的な行政主体が存在して、それがしっかりと責任を持って、大都市全体を見据えた一体的な行政サービスを展開していかなければいけないのではないかなというふうに思うんです。大都市東京の広域自治体である都の関係者、皆さんもそうですが、我々も、ロンドンのGLCからGLAに至るまでの、これは非常にいい社会的資料というか実験というか、そんなものだと思いますので、あえてこれを取り上げたわけですが、こういう事例を見ても、都市の時代のリーダーとして東京がその役割を果たしていくには、都としても、大都市制度のあり方について検討を深めていく必要があると思います。
 東京特有の行政システムとして都制度というものがあるわけですが、他方で、同じ地方自治法には、大都市に関する特例的な制度として、政令指定都市、中核市、特例市の制度もあります。東京だけに都制度、いってみれば都区制度といいますか、都制度がありまして、東京以外の日本有数の大都市である大阪市、名古屋市、横浜市などについては、これは政令指定都市制度が適用されていて、東京だけですよ、都制度というのがあるのは。
 この都制度の趣旨とはどんなものかについて、まずお伺いいたします。

○前川知事本部長 東京都制は、ご案内のとおり、昭和十八年に戦時体制下での効率的な行政運営を進めるということで、東京府と東京市を一体化して発足したものでございます。
 戦後になりまして、皆さんよくご存じのとおり、昭和二十二年の憲法、地方自治法の施行に伴いまして、区を特別地方公共団体である特別区として位置づけ、その後数次の制度改正を経て、現在に至っております。
 これは、区部という狭隘な地域に数百万人規模の人口が集積するという東京の大都市地域の実態に即しまして、行政の一体性の確保を図る観点から設立され、維持されているものでございます。

○山崎委員 都制度は、まさに他都市をはるかに凌駕する規模の大都市である東京の都市実態に対応するために、都と特別区という二層の地方自治体が、一定の役割分担のもとに大都市行政を担う仕組みといえると思うんです。東京特有の大都市制度としての都制度を考えることは、必然的に都と二十三区との関係を考えることにほかなりません。我々東京都が、先ほど前段で話したように、国に対していろいろ意見をいい、こうすべきだ、ああすべきだという主張と同時に、東京の中で考えれば、二十三の区が東京都に対してこうあるべきだといってくるのと全く同じ構図だというふうに私は思えてなりません。
 特別区が住民に身近な基礎的自治体として多様なニーズに的確にこたえて行政サービスを担っていくとする一方で、都の役割としては、特別区の区域は複数の基礎的自治体で大都市を構成しているわけですから、広域的自治体として、大都市の総合性、一体性を確保するというのが東京都の担うべきものとされています。
 このように、都制度においては、広域自治体である都が、他の道府県にはない大きな役割を担うこととされていますが、将来に向けて東京の大都市経営をさらに効率的、効果的なものとしていくには、都と特別区の担う役割がどのようにあるべきかについて、多角的に検討していく必要があると思います。
 現在の都制度における役割分担を見た場合、都に独特の役割とされているものとして、いわゆる法令留保事務が挙げられますが、これは本来市町村事務とされているわけですが、上下水道とか消防など一部の事務については、区部全域を通じた一体的な処理を行う必要から、個別の法令に基づき、特別区ではなく都の事務とされています。平成十二年の都区制度改革によって、二十三区は基礎的自治体と位置づけられましたが、このような法令留保事務を除いて市町村が担うべき事務については、基本的には、都から特別区への事務、権限の移譲が着々と進められております。
 一律に特別区に事務、権限の移譲を進めていくことが必ずしも適切であるとはいえないケースも中にはありますね。例えば清掃事業が移管されましたけれども、これも、自区内処理の原則を唱えながら、まだ工場ができていない区があった。これについてはもういいだろうというような、そんな状況にもなってしまって、今の清掃事業を考えれば、何もあのときに清掃事業を二十三区に移管することが本当に必要だったんだろうかということも、いろいろこれは議論のあるところだと思います。
 例えば街路整備などについても、都市基盤の整備とか市街地の再開発、密集市街地整備など、まちづくりの分野については、やはり区がそれぞれでやるというよりは、広域的自治体である都が一体的に整備していくことで、適切な都市マネジメントの実施が可能になるというふうに思います。
 そうやって考えると、大都市経営を実現するには、都と特別区が担うべき事務、権限の配分がどうあるべきか、また、それに合った適正な経費負担はどうあるべきか、東京独自の視点で明確な整理を行っていくことが私は重要だと思いますが、今後のことも展望しながら、知事は、都制度についてはどのように評価されているか、お伺いしたいと思います。

○石原知事 これはかなり重要な、東京の近未来にとっても非常に大きな意味を持つ問題だと思います。そう先送りして済むことでもないと思います。
 今ご指摘ありましたように、清掃事業というものを各区が分担し、主体性で行うということは、私は非常に疑問を議員のころから感じていましたけれども、今日のカラス対策の渋滞を見てもそれが感じられますが、いずれにしろ、その前提に、今ある例えば二十三区の行政区分というのは果たして妥当なものかどうか。東京という首都というものの機能運営のためにも、あれが本当に合理的なものかどうかということもやっばり考えなくちゃいけないと思いますし、こういう点もやっぱり私はこれからの、しかし焦眉の非常に大事な問題だと心得ております。
 ただ、神奈川県なんか見ますと、横浜と川崎という政令二大都市を持ってしまい、その権限というものの抵触いろいろありますと、ああ、神奈川県の知事なんかはかないなという感じがしまして、これまたやっぱり、そういう実態を踏まえながら、東京のこれからのあり方について、本当に急いで考える必要があるんじゃないかと思っております。

○山崎委員 このように、特別区そのもののあり方については、やはりこれから我々も真剣に考えなければならないというふうに思います。
 特別区の行政運営における自主性、自立性をより一層まず充実させていかなければならないと思いますが、将来、財政調整制度を含め、特別区に関する税財政制度がどのようにあるべきかについて、抜本的な再検討を行っていかなければいけないというふうに思います。
 その中で、いろいろ今日まであるんですが、特別区の区割りについてもよく話題に上がります。昭和二十二年の統合再編以降今日まで、特別区はそのまま二十三区で続いてきたわけですが、社会状況が大きく変貌しているわけですが、区割りについては何ら見直しが行われておりません。特別区のあり方を再検討するに当たっては、そのような特別区そのものの統合再編も視野に入れていく必要があると思います。
 いろいろ、再編案の方向としては、人口とか面積とか財政規模、地理的な結びつきを勘案しながら、数区ずつが合併するとかいろいろなパターンが出されていて、それについてもまだまだ十分な議論まで至っていないというのが現状だと思います。場合によっては、幾つかの区が集まって政令指定都市になろうよというような区も意見としてあるようですが、現状の法体系のもとではそれも非常に難しい状況であります。そうやって考えてくると、特別区を政令指定都市並みの自治体に衣がえするというのは、やっぱりこれも難しいのかなと。
 先ほどいったように、ロンドンにおけるGLCの廃止後の状況に端的に見られるように、大都市において高度かつ複雑な行政需要に対応していくには、国と基礎的自治体のみでは大きな混乱を招いてしまうと思う。その中で、やはり現在あるこの東京のような形で広域行政機関の存在というものがなければいけないというふうに私は思います。
 統合再編を考える場合においても、大都市行政の一体性、統一性の確保と住民自治の両立を実現するには、都制度を前提とした上で、都市の実情に即した合理的な区割りを模索することが検討の基本になると思いますけれども、いろいろな二十三区の統合再編、そういったことを考えた場合に、知事は、先ほど少しお話しいただきましたけれども、二十三区の統合再編について知事のご所見をお伺いしたいと思います。

○石原知事 二十三区に限ってみましても、東京というのは江戸以来続いてきた代表的な首都でありまして、地域、地域がかなり個性を持って、その個性にのっとった機能を独特に果たしているわけでありまして、それを無視して乱暴な統廃合をするわけにもいかないと思いますが、ただ、今の区分を見ていますと、ちょっとやっぱり無理じゃないかなという感じは否めません。これは、議会も含めて、都民の意見も聞きながら、広範囲の事情を聴取しながら合理的な仕組みがえをする、そういう時代ではないかという気が私はいたします。

○山崎委員 知事のおっしゃるように、非常に難しいと思います。
 特別区のあり方については、かつて平成十二年の都区制度改革のときにも、いろいろな、各区が町会長だとか、いろんなのを集めて運動をやりました。しかし、実質考えてみますと、本当に自治という、地方自治というものの原点というのは、やはり地域住民の意向というものが大事だと思うんですが、そういった意味では、区と区の統合再編なんということについて一体区民があるいは都民がどれだけ考えているかというと、全然考えていませんよ。今の中で十分だと思っている人ばかりだと私は思うんです。ただ、制度としては今後は検討を加えていかなきゃならぬし、また、これは二十三区の方から、下から積み上げて都の方にぶつけてくるべきものだと私は思っていますが、そうした中で都と区が協議しながらいい道を見出していくものだというふうに思います。
 平成十二年の都区制度改革も、私も随分いろいろやっておりましたのでよく覚えておりますけれども、どうしても基礎的自治体になりたいから、自治省がいう清掃事業ぐらいはおまえらやれよということであえてやった。大変なあれも苦労があって、その後、現在の清掃事業がどうかというと、これもまだそれぞれの区がばらばらで、一部事務組合がやっているわけですから、そうやって見たら、清掃局がやっていたって同じだったんじゃないのというような議論にもなってしまう。ただ、基礎的自治体に位置づけられんがために清掃事業を請け負ったということだと私は感じております。
 それでは、二十三区の方はこのくらいにいたしまして、今度は都市機能論からする自治制度のあり方について、いわゆる広域行政についてお伺いしたいと思いますが、東京・首都圏においてはいろいろな問題がいっぱいあります。交通渋滞、大気汚染、東京湾の水質汚濁、産業廃棄物対策その他、数え上げると切りがないのでやめておきますが、大都市特有の行政課題が山積しておりますが、このことが都市としての魅力と活力を著しく損なってきているわけです。このようなことでは、東京や首都圏は、世界の大都市との国際競争に勝ち残っていくことは到底できることではありません。一日も早い課題解決が求められますが、個々の都や県だけでは解決が困難な状況になっています。
 今、一都三県あるいは横浜、川崎を含める政令指定都市、それらが、それぞれの地域特性に応じて、みずからの創意工夫で行政手腕を発揮して都市を発展させてきたわけですが、しかしながら、首都圏は行政都市であったといえますが、個々の自治体の努力の結果として、今日の首都圏というか、そうした成熟した首都圏というものが生まれてきたわけですが、その圏域を構成する自治体同士が図り合って、互いに機能的に連携し合って都市運営あるいは都市づくりを考えていくことが必要だと思います。
 まさに都市は機能によってつくり上げられていかなくてはならない時代になったと思いますが、こうした観点からすれば、首都圏の広域的課題の効果的な解決を図るには、関係する大都市自治体が緊密に連携し合って政策、施策を展開していくべきことが何よりも重大だと思いますが、これまでの首都圏における広域的取り組みに対しどのように評価するか、知事のご所見をお伺いいたします。

○石原知事 行政における広域連携は、今までどちらかというと理屈ばかりが先行していたような気がしないでもございませんが、この数年間、最初は七都県市、今は八都県市になりましたが、連携して行ってきた広域行政はかなり実を上げてきたと思います。これは、何といっても、先輩であります前の土屋知事が、寡黙ですけれども、黙って勘どころを聞いて胸におさめてくださいましたし、また、非常に現場感覚の鋭い前の横浜の高秀市長が呼応して、私と三人でいろいろな話をしながら、みんな周りに持ちかけて、とても実を上げてきたと思います、代はかわりましたけれども。
 例えば、ディーゼル車の排気ガス規制もそうでありますし、不正軽油の撲滅作戦もそうですし、環状道路の整備や防災対策あるいは首都機能移転のこぞっての反対、それから、九・一一のときはたまたまワシントンにおりまして、その経験を披露して、これは本当に図上の組織でありますけれども、動かしてみますと非常に効果のあった首都圏のFEMAのようなものも本当にすぐ立ち上がりました。そういう点では目に見える実績を上げてきたと思いますし、また、これは第三者でありまして、もう引退されましたが、同じ知事でありました大分県の平松さんなんかは、九州から眺めておられて、あの人も一種の広域行政の主体論者、道州制九州ということだったんですけれども、かなわないうちに引退されましたが、同業の第三者が眺めて評価してくださるような実績を上げてきたと思います。
 これは、今までの地方行政に先例のないパターンを首都圏の首長さんたちが協力してつくり上げつつあると思いますし、これをさらに強化して、もうちょっと強い圧力も国にかけられるような、そういう存在にしていきたいと思っております。

○山崎委員 我々も、ディーゼル車の規制とか不正軽油あるいは道路の問題にしろ、本当にそういった意味でこの首都圏の連携というものが非常に効果を上げてきている、かつてなかったことでありまして、石原知事の大きなそれはお力のおかげだというふうに感じておりますが、八都県市首脳会議で、事務局が持ち回りでやっていたのを常設にしようというようなご意見も知事の方から出されていると思いますし、こうした取り組みというのは本当にありがたいことだと思います。
 ただ、東京があるいは首都圏がこれだけ発展して、外国からもいろいろな企業が来たりするということは、都市の形成の中で、東京は安全であるという、治安がよかった、それによって発展した部分も大きくあると思うんですが、今日の状況を考えると、これは非常に大変な状況になっておりまして、治安対策元年、昨年そう銘打って、治安対策の今回十六年度予算も大変予算をとって頑張るわけですが、今後、治安対策を、東京都のみならず、八都県市での連携というものをどうとるかということが私は大事だと思うんです。
 そこで、治安対策の、治安強化こそ都市の発展に不可欠だと思うんですが、広域的な治安対策の取り組みの必要性について、知事のご意見を伺いたいと思います。

○石原知事 かつて私、レーガン大統領の就任式に呼ばれて行きましたときに、ついでに家内と一緒に、知人もおりまして、ニューヨークへ行きまして、白昼、マジソンアベニューというとかなり大きな有名な通りですけれども、そこで人が無残に殺されるのも目撃しましてあ然といたしましたが、東京があそこまで落ち切る前に何とかしようということで、警察庁に頼んで竹花さんを副知事に迎えて、これも非常に大きな引き金になって、国も重い腰を上げて動くようになりましたし、特に在日の不法滞在、不法入国の外国人に対する対処は、法務省も従来になく機敏に動いてくれまして、既に歌舞伎町に一カ所、これからあと二カ所、三カ所出張所を設けて、警察との協力でそういう不法滞在している外国人の摘発にも努めるようでありますが、こういったものが伝わりますと、すぐ連中は移動して姿を隠す。
 この間、横浜の中田市長が、東京が余り歌舞伎町で頑張ると、黄金町、日ノ出町にそんな連中が来ると話しましたが、それはどんどんまた動いてやったらよろしいので、最後はとにかく水際からみんなたたき出せばいいんだといって合意をいたしましたが、いずれにしろ、こういった問題は、こういう時間的、空間的に世界も日本も狭くなってきますと、そういった犯罪の要因というのは簡単に首都圏の中で動きます。こういったものをまず首都圏として連携を保ちながら抑制し鎮圧していくことが私は国の名誉にもかかわることと思っておりますので、機動隊も、かつての時代とは違って大分人も減っているようですが、今NHKでやっている「新選組!」みたいに、市中見回りを、時々、東京に限らず首都圏でやってもらいたいということを申し入れておりますので、ご期待に沿うように努力いたします。

○山崎委員 ありがとうございます。
 さて、先ほど道州制の話がありましたので、このことについて少し触れたいと思うんですが、道州制については、近々、道州制基本法の制定に向けた検討が開始されるというような報道も聞いておりますし、先ほどのお話のように、北東北三県で、各地で合併や道州制導入を志向する動きが、そんな動きがあります。
 このような国や地方での動きの背景として考えられるのは、一つには、先ほど述べたように、市町村の再編が進行する中で、都道府県が広域行政を効果的に展開していくには、国からのさらなる権限移譲が必要だ、その受け皿となるために、合併等により行財政基盤の強化が求められているということにあるようです。
 もう一つは、交通網の発達に伴って、住民や企業が、その活動範囲が広がりますから、県境を越えて広域化する行政課題に対応していくには、やはり都道府県の区域の拡大が必要ということもあるようです。
 しかし、このような都道府県のあり方の見直し論議が、国や一部地域の主導でいわばなし崩し的に加速していく一方で、我々の議論の主眼とすべき首都圏に目を転じた場合に、このような議論をどのように受けとめていくべきであろうかと。再三述べているように、首都圏においてはさまざまな広域的課題が山積しておりまして、従来の都なり県なりの枠内での施策では有効性を持ち得なくなってしまっている状況があります。このような広域行政需要は、恐らく質、量ともほかの地域をはるかにこの首都圏は超えている大きなものだと思います。
 このようなことから、主として広域課題への対応を図るため、一都三県での都県連合や道州制導入を目指すことが必要ではないかという意見も一部では主張されておりますが、こうした問題について、我が党もかねてより、首都圏の都市機能が都県境を越えているという特性を踏まえて、一都三県を首都圏という一つの圏域としてとらえて、一体的な広域行政、大都市行政を展開していくことが必要であると訴えてまいりました。直ちに都県合併とか道州制を実現すべしという結論に直結するものではないとは思いますが、現実にはまだまだ大きな問題があると思います。
 まず実効性の面を考えても、例えば一都三県が統合するとなると、人口三千三百万人という超巨大自治体が、一人の首長のもとで本当にそれが地方自治体として機能するかというと、これはちょっと考えられません。いうまでもありませんが、自治体運営の基本は住民自治ですから、地域住民の意向を抜きにして自治体のあり方を論じることはできませんし、先ほど二十三区のときにもいいましたが、都民とか埼玉、千葉、神奈川県民が、一緒じゃなきゃ嫌だよなんというような意識も全くこれはありませんから、それはちょっと、今この道州制を議論するには早過ぎると私は思います。しかし、今後の二十年、五十年先を考えたときに、問題意識としては、我々はこうした問題を持っていないといけないというふうには思います。
 そこで、国などで道州制が議論されている中、首都圏においてはどう考えるか、先ほど来、ちょっとまた繰り返しになるかもしれませんけれども、首都圏が一体になるということについては知事はどのようにお考えでしょうか。

○石原知事 これはかなりの大問題でありまして、実現したら国にとってもゆゆしき問題だと思います。多分相当の時間もかかるでしょうし、それまで私生きているかどうかわかりませんが、仮にこの首都圏が一つの自治体になって、さっきいった日本の人口の四分の一強を持つ、しかも三分の一強のGDPを持つという存在になりますと、これは--それに付随して九州が一つになる、四国が一つになるという形の現象になってくるのかもしれませんが、そういうものが付随して実現していけば、また日本の国土全体の合理化が進むと思いますけれども、首都圏だけが先行して一つの自治体をつくってしまうというのは、なかなかいろいろな問題が想像されて、かなり物騒なことも想定されたりしまして、私は国家的な大問題だとは思いますけれども、繰り返して申しますが、もしそれと並行して東北圏、首都圏、関東圏あるいは中部圏、大阪を中心にした一つのゾーン、中国というようなことになりますと、私は日本の行政というのはかなりテンポアップされて合理化されていくのではないかと思いますけれども、大分先の話でしょうな、これは。

○山崎委員 ありがとうございました。
 きょうは、自治制度改革の論点をめぐるこれまでの質疑の総括として、都市論、そして国と地方、大都市と地方、大都市行政、そして広域行政、このように伺ってまいりました。
 国では、三位一体改革の全体像の年内提示に向けて、政府内で詰めの検討が急ピッチで進められていくこととなります。我々は、まさに地方分権の真価が問われようという重大な局面を迎えつつあります。今こそこの機を逸することなく効果的に行動を起こしていくことが必要だと思います。また、現下の三位一体改革への対応だけでなく、中長期的な視点に立って、将来の自治制度のあり方、自治体像を構想し、広く発信していくことも重要であると考えます。いずれにせよ、新しい改革のリーダーシップを担っていくのは自治体の側からであるということを基本に、変革のうねりを巻き起こしていくことを望むものであります。
 そこで、最後にお伺いいたしますが、大都市東京の立場から、地方主権の確立に向けて今後具体的にどのように取り組んでいくおつもりなのか、知事のご所見をお伺いいたします。

○石原知事 私もかなり長く国会におりましたがゆえにも、国会の持つ限界のようなものを非常に痛感しておりますが、いずれにしろ、国会を動かしている国会議員、さらにそれを実は実質的に動かしている国家の官僚が、さしたる現場感覚もなしに、書類の上の操作だけで、地方の命運も左右しかねない大きな問題を、ソフトにしろハードにしろ、上から命ずるような形で左右していく、この国家のスキームというのは私は決して好まない、許せないものだと思います。
 それを、せっかく地方分権一括法ができましたから、ああいったものも一つ機軸にして、ごく健全な、つまり、国あって地方あり、地方あって国があるという、そういう均衡のとれた行政の仕組みに持っていく努力を、議会のご協力もいただきながら懸命にやっていきたいと思っております。

○山崎委員 ありがとうございました。
 我々都議会としても、他の府県や政令指定都市など大都市自治体の議会と連携を密にとり合って、国への働きかけに尽力していく決意であります。ぜひ、議会と知事がともに手を携えて、力を合わせて真の地方主権をかち取っていきたい、こう考えております。
 さて、我が都議会自民党は、これまで、本委員会の場で、二十一世紀を迎えるに当たり、世界都市としての東京、三千三百万人の人口集積を誇る首都圏の中枢をなす大都市東京のあるべき姿、そしてそれにふさわしい大都市自治のあり方について、自治制度の根本にまでさかのぼって、中長期的視点から議論を重ねてまいりました。本委員会を通じて、東京の大都市経営をめぐるさまざまな課題、そして、それを解決していく上でふさわしい大都市自治のあり方とそれに向けた改革の方向について、我々都議会と理事者の間で真摯な議論が交わされてまいりました。事項によっては、さらに時間をかけて議論を深めていくことが必要なものもございますが、総じて一定の方向性を見出すことができたのではないでしょうか。
 本委員会での議論は、今後の大都市自治、東京の自治制度のあるべき姿を考える上で貴重な資料となるものでありますし、我々は、執行機関とも力を合わせながら、都民生活の一層の向上を目指して、あるべき自治の姿の実現に向けて改革を進めていくべきと考えます。
 本日は、これまでの審議を締めくくる総括質疑として、知事にもご出席いただき、ご意見を伺いました。この質疑をもって本委員会における質疑は一応の到達点を見たものであり、今後、国を動かしていくため、我々はこれまでの議論の成果を取りまとめていきたいと考えております。
 最後に、石原知事には、お忙しい中、本日の委員会にご出席を賜り、心からお礼を申し上げます。今後、知事には、現下の改革論議への取り組みにとどまらず、中長期的な視点での自治制度改革のあり方について、これまでの本委員会での議論を通じて示された論点を踏まえ、庁内に推進体制を整えられるとともに、国、他団体、都民をも巻き込んで広く議論を喚起していくことを望む次第であります。
 長時間ありがとうございました。

○山本委員長 これをもって山崎孝明理事の発言を終わります。

○山本委員長 次に、富田俊正理事の発言を許します。

○富田委員 それでは、引き続き質問をさせていただきたいと思います。
 知事並びに副知事の出席を感謝申し上げながら、幾つかの点について質問をさせていただきます。
 これまで行財政改革基本問題特別委員会では、東京の将来像を展望し、社会・経済情勢の変化に柔軟に対応する都政を実現するための一層の都政改革の推進について検討してまいりました。
 この間、都政を取り巻く社会状況を見ますと、少子高齢化といわれる大きな人口動態の潮流を初め、IT化や産業のサービス化、ソフト化、また、近年では都心回帰といわれるような現象など、さまざまな側面で構造の変化が生じてきていると思います。
 ところが、国内の状況は、こうした構造的な変化に対応し切れず、国民も企業も自信を失い、リスクを覚悟して問題解決に当たり、道を切り開こうとしていく気概を失っているのではないでしょうか。その結果、国全体としての危機突破力が大幅に低下してしまうという悪循環に陥っていると思います。
 東京は、日本最大の都市として、これまでも日本の経済成長を支えてまいりました。現在の日本の置かれた危機的状況をいかに突破できるかは、まさに東京いかんにかかっていると思います。しかも、国際化、グローバル化の進展に伴い、今世界で都市と都市が競争するという都市間競争の時代になっています。東京は、我が国最大の都市として世界的な都市間競争に打ち勝ち、日本を牽引していく役割を担わなければなりません。
 このことは、先ごろ都議会の派遣で海外調査団に参加をさせていただきましたが、イギリスのロンドン、スウェーデンのストックホルム、そしてドイツのベルリン、フランクフルトと回ってまいりまして、そして実感したところでございますが、特にドイツのベルリンにおいては、この都市間競争に打ち勝つための努力というのが非常に見えたところでございます。後ほどこの点については触れさせていただきたいというふうに思います。
 さて、もともと東京は、政治、経済、文化などの広範囲にわたる巨大な集積を持ち、高いポテンシャルを有しております。ところが、社会の構造的な変化への対応のおくれによって、そのポテンシャルを十分に発揮し切れていないのが現状ではないでしょうか。東京のポテンシャルを開花させることが、日本再生の牽引車として、日本が直面する危機的な状況を克服し、日本を再び世界の表舞台で活躍させることができる道ではないかと強く思っております。東京を再生し、魅力あふれる、活力に満ちた大都市東京を取り戻すためには、東京という大都市を支える大都市行政をどのように展開していくかが重要なかぎになると考えています。
 そうした観点から我が国の大都市制度を見てみますと、昭和三十一年の地方自治法改正により指定都市制度が創設されたのを初め、平成六年には中核市制度が、平成十一年には特例市制度が創設され、規模、能力に応じた基礎的自治体の権能の強化が図られてきております。
 他方、東京における大都市制度は、ご承知のとおり都区制度がしかれており、広域的自治体である都が、大都市機能の一体性及び統一性を確保するために市町村の事務の一端を担っているという、いわば特殊な制度となっております。
 そこでお伺いさせていただきます。東京に大都市制度が導入され、今日の都区制度に至るまでの経過はどのようなものであったのか、ここで改めて簡単に整理をしていただきたいと思います。

○前川知事本部長 明治二十二年に全国に市制町村制がしかれたわけでありますが、このときに東京市も誕生しております。しかし、このときは、大阪市、京都市とともに市制特例の適用を受けまして、東京市長は東京府知事が兼務するなど、自治権が大きく制約されておりました。明治三十一年にようやく市制特例が廃止され、東京市も一般市へと転換が図られたわけであります。
 昭和十八年になりまして、戦時体制下の効率的な行政運営を進めるため、東京府と東京市を一体化して東京都制が発足をいたしました。戦後、昭和二十二年の憲法、地方自治法の施行に伴い、区は特別区という名称で特別地方公共団体として位置づけられ、現在の二十三区となったわけでございます。
 その後、昭和五十年に区長公選制が復活をし、さらには平成十二年の都区制度改革を経て今日に至っております。

○富田委員 地方自治法の第二百八十一条の二第二項の規定に「特別区は、基礎的な地方公共団体として」とあるように、平成十二年度の都区制度改革により、特別区が都の内部団体から基礎的自治体として位置づけられ、清掃事業が都から区に移管されました。
 私は、地方分権の目的は、事務事業の分担関係の適正化を図ることであると考えています。そして、分権改革に当たっては、当然ながら、全国画一的ではなく、地域性や規模、能力などからも照らして、事務事業の担い手として真にふさわしい行政主体が責任を持って担えるよう見直しを図る必要があるとも考えています。東京のような高度に集積する大都市地域においては大都市経営の強化が求められており、そうした観点からも、行政主体間の役割分担を考える必要があるのではないでしょうか。
 今、都区制度改革を振り返ると、清掃事業の区移管などは、当時の第一次地方分権改革という時代の潮流にのまれた面があったのではないかと思います。果たして、以前都が一体的に行ってきたときと、それよりも効果的というふうにいえるのかどうか、本当に結果としてよかったのかどうかということが改めて考えさせられるというふうに思います。
 また、環境対策に対しても、行政区域ごとに対応し切れる課題ではないということもありますし、都市計画においても、本来一体的に整備を進めるべき地域が細分化されて、きちんと事業を展開できないケースが現実に生じてきているのではないかとの懸念もございます。もしそうした状況が頻発するようであれば、東京の大都市行政の担い手である都と区の関係に多少無理があるのかもしれません。
 そこでお伺いいたします。現行の都制度について石原知事はどのように評価されているのでしょうか、ご意見をお聞かせいただきたいと思います。

○石原知事 現行の都制度に対する評価は、この制度のもとに、都民を対象にする行政がどういうふうに行われ、どういう効果を上げているかということの集積にしかないと思います。
 ご指摘のように、非常に狭隘な地域に非常に多大な人口が密集し、しかも、いろいろな機能というものが集中、集積しているわけでありまして、こういった大都市というものを、今の都制度は一体として経営をしようとしているものでありますが、いずれにしろ、戦後の東京の発展のためには大きな貢献をしてきたと思います。
 ただ、これからいろいろな問題も派生して出てくるでしょうし、それに対応するために、区長さんも選挙で選べるという体制も十数年前にも確立したわけですが、それなりに区というものの自立性、主体性というものは私たちは当然そんたくいたしますけれども、東京全体が持っている大きなエネルギーというものを行政に表現していくときに、私も先ほど山崎さんの質問にもお答えしたし、山崎さんも同じような印象をお持ちのように受けとめましたが、清掃事業は私は必ずしも成功した例ではなかったような気がいたします。特に、治安が問題になる以前、日本にあって東京にいる外国人の友人からいつもいわれることは、清掃事業というものが一貫していなくて、地域によってばらばらだと。例えば三鷹市ですか、あそこなどは必ず全部夜にやるようにしていますけれども、ほかへ行くと全然違ってごみが散乱するという、こういったものも一つ反省の素材になると私は思っております。

○富田委員 次に、首都圏における広域行政という観点からお伺いをいたします。
 東京の将来像を考えるに当たっては、東京都の範囲内だけで考えればいいというものではございません。現在、東京の都市圏は都の区域をはるかに越えています。例えば通勤通学を見てみましても、都以外の地域に住む約三百万人の人々が毎日都の区域に通っていますし、もちろん、統計上あらわれにくいショッピングやレジャーに都の区域を訪れる人々も数多く、都県の区域を越えた人々の移動は至極当然となっています。それに伴い、都の区域だけの対応では解決できないさまざまな課題が広域的に発生をしています。
 そこで、広域的な視点から、三環状道路を初めとした都市基盤整備、防災・危機管理対策や治安対策、環境汚染対策など多くの課題が発生することになります。こうした課題の多くは、隣接県である埼玉、千葉、神奈川県の区域にも及んでおり、一都三県による対応が必然的に求められています。現在、八都県市首脳会議では、各都県市の区域を越えた広域的な行政課題に対して連携してさまざまな取り組みを進めており、とりわけ、昨年十月に開始された八都県市によるディーゼル車規制は最大の効果があったとだれもが認めるところだと思います。
 また、首都圏の都市構造、都市機能を考えても、速やかにさまざまな課題を解決し、首都圏の再生を図らなければなりません。活力ある、魅力に満ちた圏域づくりを行い、この圏域で引き続き首都機能を担っていくことから東京の再生が盤石となり、国家の一層の発展にもつながるものであります。
 このように考えると、現在の都道府県区域がもはや時代の要請に見合っていないのではないか、そうした考え方もあるというふうに思います。広域の圏域における戦略的かつ効果的な展開が必要ではないのでしょうか。
 民主党は、地域のことは地域で決められる地域主権型社会を目指しています。そのために、国の権限や財源を思い切って地方に移す必要があり、その受け皿として現行の都道府県では小さ過ぎることから、国の政権をお任せいただくということになるならばということでございますが、十年後を目途に道州制への移行を目指しております。こうした考え方から、昨年行われた衆議院選挙においても、自治と地域の経済力を培い、道州制も展望した分権改革の推進をマニフェストに示したところでございます。
 そこでお伺いいたします。現在の道州制の議論の状況はどのようになっているのでしょうか。

○前川知事本部長 現在、全国各地で自治体の広域的な連携が行われているわけでありますけれども、その中で、特に当事者が道州制を意識した取り組みとしては、北東北三県の産業廃棄物対策などにおける広域連携の例がございます。また、現在国においては、地方制度調査会や地方分権改革推進会議において道州制の検討が進められようとしております。
 ただ、いずれにしても、道州制については、いまだ具体的な議論については入り口に立ったばかりの段階ではなかろうかというふうに認識をいたしております。

○富田委員 一口に道州制といっても、過去に民間団体などから道州制なるものが提唱されたと思いますが、道州制という言葉がひとり歩きをしている感も否めません。道州制の導入については、その役割や権限、税財政制度を初めとして、さまざまな角度から検討するべき課題が多いことと認識しております。十分に論議を積み重ねてまいりたいと考えています。
 昨年八月、小泉首相が自民党内で、北海道で道州制を先行実施する道州制特区構想の検討を指示いたしました。同月下旬には北海道の高橋知事が首相官邸に呼ばれまして、小泉首相が道州制で何ができるか具体的に考えてほしい旨のことを伝えたというふうに聞いております。
 また昨年十二月には、首相の諮問機関、経済財政諮問会議が道州制を議題として議論し、同席した高橋知事が道州制の実現を要望するプレゼンテーションを行ったというふうにも聞いております。
 そこでお伺いいたします。独立してブロックを形成し、他府県と合併なしに道州制に移行できる北海道において、構造改革特区により道州制を先行的に適用するという方向性が進められているわけでございますが、東京都として、この国の取り組みはどのようなものと認識されているのでしょうか。

○前川知事本部長 今お話ございましたが、国の新年度予算案に道州制北海道モデル事業推進費百億円が計上された、これらは承知をいたしております。
 このモデル事業を見ますと、まず北海道が支庁の区域を越えた広域的課題に対応する事業計画を策定する、そして、その計画に基づいて実施する道路、河川、下水道、農林水産、廃棄物処理等の事業に対して、国から通常の枠とは別に一括して補助金が交付されるものとなっております。
 このモデル事業は、これを見る限りでは、新たな補助手法を追加しただけでありまして、道州制で想定される国からの抜本的な権限移譲が伴っておらず、道州制の先行的な適用とはいいがたいのではないかというふうに考えております。

○富田委員 確かに、従来の域を出ない取り組みといえるかもしれませんが、北海道は、その広大な土地、他県とも隣接しない地理と極めて特色がある地域ですから、こうした北海道の地域特性を生かした取り組みへと発展していかないものかと期待をしているところでございます。少なくとも道州制に向けた取り組みの第一歩ではないかと思うわけですが、そこでお伺いいたします。
 石原知事は、こうした道州制の動きについてどのような所見をお持ちなのでしょうか。

○石原知事 戦後間もなくでありますけれども、本気で九州独立運動を唱えるグループがありました。それから北海道のケースでは、これは、今般の各省庁の統廃合で北海道開発庁というのはなくなりましたので、その見返りということで、あるイニシアチブを北海道に与えるという意向のようですが、しかし、殊さらの特権というものが付与されたということは聞いておりません。
 いずれにしろ、いかなるゾーンを仕切って道州制を確立していくかというのはいろいろ論もございますけれども、ただ、今の県がもっと大きな形として存在するというだけでは済まないことでしょうし、それは、社会の流れ、政治の流れの中で、国全体というものを管轄している最高責任者の総理大臣、そしてそれを支える政府、かつまた政府の行き方を決める国会というものが大きな視点に立って決めることではないかと思います。
 ただ、東京都に限って申しますと、繰り返して申したことですけれども、東京だけが首都ではない、まさに首都圏というものを他県も一緒になって構成して機能しているという観点で、県境を越えた行政というものの必要から幾つかの広域行政をやってきましたし、それはそれなりに実を上げたと思いますし、これまたこれから先の道州制の進み方に一つの大きな暗示を与えるものではないかと思っております。

○富田委員 道州制の問題で私が懸念するところは、導入いかんはまさにみずからの地域、圏域のことであり、みずから考え、よりよい制度設計がなされるように、国に対してきちんと意見を述べていくべきではないかということでございます。とりわけ、この首都圏という圏域を考えると、他の圏域とは人口、経済集積の規模などが全く異なるわけでありますし、道州制の議論の着地点がまだこれからであるならば、首都圏みずからが手がけていこうということも考えておかなければなりません。
 恐らく同様の観点からだと思いますが、昨年の十一月、八都県市首脳会議の席上で、神奈川県の松沢知事より首都圏連合の提案がありました。その首都圏連合は、首都圏における広域課題の解決に向けて、八都県市の中で広域連合の制度を活用し、首都圏連合を設置するというものです。
 そこでお伺いをいたします。昨年の八都県市首脳会議において松沢知事から提案のあった首都圏連合について、石原知事はどのように受けとめられているのでしょうか、所見をお伺いいたします。

○石原知事 松沢さんが岡崎さんにかわって神奈川県知事に登場されてくる前から、既に幾つかの広域行政というものを、先ほど申しましたようにやってまいっておりました。そういうものも松沢さんご自身が非常に評価された上で、より徹底して広域行政を行うために首都圏連合ということを提唱されましたが、これは確かに自治法の中にはうたわれているんですけれども、その自治法にのっとってやると、これはこういうところでいうべきかいわざるべきかわかりません、かなり事務的に厄介なことも出てくるんですよ。ですから、そこまでやると、一々つまり何か事務的に詰めをして、つまり、必ずしもすべてトップダウンでやろうということじゃありませんけれども、責任者、最高責任者の合議、合意で事が移っていく前に、また三つ、四つ、五つの手続を必要とするんじゃないかなということで、私は、地方自治法上の広域連合にのっとる必要はないんじゃないかということを申しました。
 趣旨としては私は賛成でありますし、現にやってきたことでありますし、これからもやり続けることでありますし、昨晩も松沢さんを含めて三人の知事で具体的な話もいたしました。

○富田委員 将来を見据えると、道州制の実現も一つの姿として見えてくると考えますが、なかなか実現は難しいというのが現状であるかとも思います。一足飛びではなく、さまざまな検討を積み重ねていくべきものでしょう。
 まずは八都県市の広域連携のもと、現にある個別の広域行政課題の解決に向けた、まさに地に足のついた着実な取り組みを進めていただきたいと思っております。今後、新たな広域連携の強化を検討していく中で、事務局の常設化などにより次のステップが見えてくるのではないかと期待をしているところでございます。
 最後になりますが、冒頭に触れましたように、私は都議会派遣の海外調査団に参加をし、今月三日から十二日までヨーロッパを視察、調査してまいりました。ロンドン、ストックホルム、ベルリン、フランクフルトを十日間で回るという慌ただしい日程ではありましたが、得るところの多い海外調査でありました。
 訪問地の一つでありましたベルリンですが、自治制度上、東京との類似性を感じましたので、少しお話をさせていただきたいというふうに思います。
 ベルリンは、戦後長らく東西に分断されていましたが、一九九〇年に東西ドイツが統一した後には再び首都機能が戻って、現在も企業の建設ラッシュが続いております。非常に活気がありました。人口は約三百五十万人を抱え、ドイツで最大の大都市であることから、ベルリン市は州と同格の都市州でありまして、いわば一層制により都市経営が行われています。連邦制をしくドイツにあっては州が大きな権限を有しており、ベルリンは特別な地域として、一元的な権限のもと、大都市行政を展開していることになっています。
 そして、その中には区がありますが、この区は行政区であって、都市州の一体性の確保の観点から、条例制定権や課税・起債権などは持っておりません。さらには、行政改革の一環で、二〇〇一年に二十三区あったものが十二区に統合再編しております。これは、市が一体的に行うのに比べて区の行政効率が悪く、経費をむだ遣いしているという判断から断行したものだと聞きました。そのダイナミックな改革には驚かされたところでございます。
 ヨーロッパは今、EUのもと、大都市だけではなく、中規模の都市も含め、各都市が企業投資の誘致や新しい文化発信などでしのぎを削っています。その中で、東西ベルリン市に分断されていた名残の地域性も抱えながら、大都市経営の観点から見たときに、ベルリン市が全域の行政を一体的に担おうとしていることは、東京にも参考になるのではないかと思います。
 そこでお伺いをいたします。こうしたベルリンの取り組みやありようについて、東京の大都市経営の責任を担う石原知事としてどのような感想をお持ちなのかお伺いし、私の質問を閉じたいと思います。

○石原知事 私は、お聞きした限り、ベルリンの実態を余りつまびらかにいたしませんが、ベルリンはベルリンの事情があると思いまして、特に、この間シティーセールスに浜渦副知事が行きましたら、相互にシティーセールスするどころか、国が余り何もしてくれないので東京が何とか助けてくれという陳情を受けて、辟易して帰ってまいりましたが、なかなかベルリンの実態というのも大変だと思います。特に、半分は五十年間社会主義にさらされてきて能率というものを考えない市民でありますから、非常に市全体の運営にも能率が上がらないし、そういう点で非常に懊悩しているようでありますけれども、そういう状況の中で発生してきた新しい制度の組みかえということなんでしょうが、私、その限りで、それをもって東京の参考にするかしないかという判断まではちょっと及びません。

○富田委員 引き続き河西のぶみ議員にバトンタッチいたしまして、都区財政調整制度などについて深めてまいりたいと思います。
 それではよろしくお願いいたします。

○山本委員長 河西のぶみ委員、発言を願います。

○河西委員 私からは、富田理事の質疑を受けまして、さらに何点かお伺いをさせていただきたいと思います。
 先ほど富田理事は、都区制度の意義や東京都の役割についてお伺いをしたところですが、ここではさらに都区財政調整制度についてお伺いをしたいと思います。
 平成十二年度の都区制度改革で、特別区は東京都の内部団体から基礎的自治体へと位置づけが変えられましたが、調整三税を東京都が徴収して特別区に交付するという都区財政調整制度の基本的な仕組みはそのまま残されました。
 都区財政制度のあり方については、過去に制度の抜本的な改正を行うべきとの議論がなされたこともあったと聞いております。また、都区財政調整制度の改正に当たっては、調整三税の都区の新たな配分を決めるに当たり、都区双方が行う大都市事務の役割分担に応じた配分割合について協議を行いましたが、最終的には、当時の配分割合を基礎に移管事業費や将来需要等を加算して定め、この決定に際しては、引き続き協議事項として五項目が確認されたとのことでございます。
 そこで、まず、この都区財政調整制度の意義についてどのようなご見解か、お伺いをさせていただきます。

○赤星総務局長 お答え申し上げます。
 特別区の区域には、都区間におきます事務配分及び税配分上の特例があるほか、特別区相互間におきます昼夜間人口の著しい格差、税源の地域的偏在など特有の実態がございます。
 都区財政調整制度は、こうしたことを踏まえまして、都が固定資産税、市町村民税法人分、特別土地保有税等の一定割合を特別区財政調整交付金として各特別区に交付することを通じ、都と特別区及び特別区相互間の財源の均衡化を図り、並びに特別区行政の自主的かつ計画的な運営を確保することを目的とする制度でございます。

○河西委員 現在、平成十二年度の都区制度改革時の五項目の確認事項について、都区間の協議が行われていると思います。
 五項目の確認事項は、一つは清掃関連経費のうち、都区間配分に反映されなかった経費の扱い、小中学校の改築需要急増への対応、また、大都市事務の役割分担を踏まえた財源配分のあり方、都市計画交付金のあり方などとなっておりますけれども、現在の検討状況はどうなっているのでしょうか。また、今後どのように検討を進めていらっしゃるのか、お伺いいたします。

○赤星総務局長 平成十二年度の都区制度改革時に引き続き協議すべき課題とされました五項目につきまして、昨年三月、都区財政調整協議会の幹事会のもとに、大都市事務検討会、清掃関連経費検討会、小中学校改築等検討会の三つの検討会を設置いたしました。これまで各検討会におきまして、それぞれの検討課題について、都区双方が基本的考え方を示しながら論点の整理を行ってまいりました。
 清掃事業の区移管に伴います特例的対応が十七年度末に終了いたしますので、今後、清掃関連経費や小中学校改築需要の検証等を行いながら、具体的な議論を進めてまいります。

○河西委員 今回の都区協議が開始されましたのは、平成十五年の三月と聞いております。今後、平成十七年を目途に議論を進めていくということのようでございますが、東京都はこの協議にどのような姿勢で臨んでおられるのか、この基本的な姿勢についてお尋ねいたします。

○赤星総務局長 引き続き協議すべき課題とされました五項目につきまして検討していくことは、都区財政調整制度を適切に運用していく上で極めて重要な課題でございます。特別区の区域で都区双方が担っております行政を円滑に進めていくため、今後とも対等協力の関係のもとで真摯に議論してまいります。

○河西委員 次に、先ほどの富田理事の質疑の中で、清掃事業の区移管について、本当に結果としてよかったのかどうかという疑問が付されたかと思います。
 例えば、本来市町村の事務である多摩地区の水道事業についても、昭和四十八年以降、順次東京都の水道事業に統合されてきており、平成十五年度から十年間で東京都が直接事業運営を行うとされています。消防行政につきましても、多摩地区のほとんどについて東京消防庁が受託をしています。このように、これまで市町村の事務とされていた事務であっても、大都市事務に取り込んだ方が効果的あるいは効率的な事務もあろうかと思います。
 先ほどは都区制度の中での大都市経営についてお伺いをしましたが、今後、こうした役割分担の見直しも含めて、あるいは踏まえて、東京都が果たすべき役割や基礎的自治体との役割分担を整理していく中で、改めて東京都における大都市行政のあり方を検討していく必要が十分あると思います。いかがでしょうか、ご見解をお聞かせください。

○前川知事本部長 今お話にございましたように、東京における行政制度、区部については都制が採用されているわけでございますが、これは、一般的な広域的自治体としての府県と基礎的自治体としての市町村、そういう関係ではなくて、大規模な人口や高度な業務機能が集積をしている、そういう大都市地域の特性に着目をして、行政の総合性、一体性と効率性を確保しようという観点に立ったものでございます。
 今お話もございましたが、大都市地域において、具体的にどういう事務を分担してどういう制度をつくるかにつきましては、社会情勢の変化にも応じながら柔軟に対応していくことが必要と考えております。

○河西委員 基礎的自治体は、地域において行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う、この最も中核的な主体だというふうに考えています。その主体が果たすべき役割を十全に担うためには、市町村合併を通じた行財政基盤の強化が必要な選択肢の一つにもなると思います。
 しかし、東京都内では、西東京市の誕生以来、市町村合併の動きはございません。確かに、合併しないというのも選択肢の一つだろうと思いますが、その結果、基礎的自治体が果たすべき役割を果たせずに、東京都が肩がわりをするというのであれば、分権改革には逆行することになろうかと思います。
 東京都と基礎的自治体との役割分担の整理を通じて市町村合併を促していく必要があろうかと考えますが、東京都として、今後この市町村合併にどのような取り組みをされていくのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

○赤星総務局長 市町村合併でございますけれども、ご指摘のように、新たな行政需要への対応や行財政基盤の強化などの方策といたしまして重要かつ有効な選択肢の一つであると考えておりますし、市町村が住民意思を尊重しながら自主的、主体的に取り組むべき課題だと考えております。
 都はこれまで、東京都市町村合併支援プランを策定するなど、市町村の自主的な合併への取り組みを支援してまいりました。今後とも、市町村や住民の間で合併についての議論が活発に交わされるよう普及啓発に努めまして、市町村の自主的、主体的な合併への取り組みを積極的に支援してまいります。

○河西委員 次に「機能するバランスシート」についてお伺いをしたいと思います。
 東京都では、石原知事の誕生以来、「機能するバランスシート」の作成に取り組んでおいでになりました。平成十四年七月には事業別バランスシート作成マニュアルも取りまとめられたところです。
 これを受けて教育委員会では、平成十四年から学校別バランスシートの試行作成に取り組み、十六年度には全校で作成する予定と聞いております。こうした取り組みは、都民への説明責任を果たし、また、職員のコスト意識を醸成していくためにも大変有効なものであると思います。我が党としましても高く評価しており、さらに広げていくべきだと考えています。
 しかしながら、残念なことに、各局の事業別バランスシートの取り組みは、今のところ教育委員会以外には行われておりません。事業別バランスシート作成に向け、現状にはどのような課題があるとお考えなのか、お伺いさせていただきます。

○櫻井財務局長 事業別バランスシートは、各事業にかかわるコストや資産、負債の状況などを明確に示し、職員のコスト意識の醸成や、都民に対して事業の財務状況をわかりやすく説明するツールとして非常に有効であるというふうに考えております。
 しかしながら、一方、事業別バランスシートを作成するためには、普通会計決算のデータや資産、負債などのデータを現行のまま単純に使うことができませんで、データをもう一度組み直しましてやるというようなことで、手間や時間が大変かかります。そういうことで、なかなか残念ながら取り組みが進まないというのが現状でございます。
 こうした課題に対応するために、十八年度を目途に、都の会計処理に複式簿記・発生主義を導入することとしまして、財務会計システムの再構築を行い、自動変換で、事業別も含めましたさまざまなレベルの財務諸表が容易に作成できるように取り組みを進めてまいります。

○河西委員 今のご答弁で、平成十八年度の新財務会計システム稼働、これ以降は本格実施ということだろうというふうに思いますが、これらはただ作成するだけでは意味がないと思います。それを今後どのように活用していくのかが問題だと思います。
 例えば水道局では、経営の一層の効率化と財政基盤の強化を図るために、平成十六年度からABC分析、アクティビティー・ベースド・コスティング、活動基準原価計算というんでしょうか、をモデル導入するとしています。このような管理会計的な取り組みは、官庁会計方式の一般会計や特別会計においては現状では限界があるかもしれません。しかし、平成十八年度以降は新財務会計システムによって事業別バランスシートの作成が容易になりますから、ABC分析を積極的に導入するということが可能だと思います。
 どう取り組もうとされているのか、お考えについてお伺いいたします。

○櫻井財務局長 事業別バランスシートの作成は、事業の効率化などマネジメントへの活用も重要な目的の一つでございます。十八年度の複式簿記・発生主義会計の導入に当たりましては、こうした観点から、いかに具体的に活用していくかが重要な課題と考えております。
 お話のABC分析を初め、民間企業で導入されております管理会計的手法も参考にしながら、具体的な分析手法や活用方策について今後鋭意検討してまいります。

○河西委員 最後の質問になります。
 行財政改革の一つの柱であります行政改革、このために行政評価制度を採用してまいりました。これに加えて「機能するバランスシート」が導入され、さらに事業別のバランスシートが作成されるということは、行政運営を客観的に評価し、また改善していく上でも、また都民にわかりやすく行政運営コストを示していく上でも大変大きな前進だと思っています。こうした公会計改革の取り組みは、地方分権が進展していく中では、新たな自治制度のインフラともなり得るものと考えております。
 「機能するバランスシート」の導入に主導的役割を果たされた石原知事に、これまでの取り組みに対する評価と、今後の公会計改革に対する決意をお伺いさせていただきます。

○石原知事 現行の官庁の会計制度は、資産や負債の全体像や事業の正確なコストが明らかにならないなど、さまざまな弊害が存在するにもかかわらず、これまで何の改善も行われなかったわけでございます。
 例えば、今東京の地下鉄に都営と営団と二つございますけれども、営団の方は一歩先んじてこの四月から民営化ということのようですが、本来なら、この二つの会社が合併した方がユーザーにとっても非常に都合がいいんですけれども、つまり、営団の方が、都営のような経営状態のよくない貧乏人とは結婚したくないといういい分なんですが、調べてみますと、これは必ずしもちょっと、都営の方のアセット、資産の保有量というのは、今までの会計制度と違って新しい視点で眺めますと、そんなに悪いものでもないんです。
 そういう事実認識というものを重ねていくことで、行政も、合併も含めて合理化されていくと思いますが、いずれにしろ、中地さんという当時の公認会計士協会の会長にお願いして「機能するバランスシート」をつくっていただきました。これは非常にわかりやすいもので、一部分の幹部に発表しましたら、うれしいことに中堅幹部の諸君からも手が挙がりまして、ぜひ自分たちもそのレクチャーを受けたいということで、予定の数倍の人たちにもブリーフィングをいたしましたが、いずれにしろ、現行会計制度を前提にしたバランスシートでは限界がありますために、国に先駆けて官庁会計制度を根本から改め、都の会計に複式簿記・発生主義会計を導入する取り組みに着手したわけでございます。
 平成十八年度の本格実施に向けて、解決すべき問題もいろいろございますけれども、全庁を挙げて取り組むとともに、新しい公会計のモデルを発信して、法改正の実現など国を動かしていきたいものだと思っております。
 いずれにしろ、先進国の中で単年度会計方式なんという古色蒼然たるものをやっている国は日本だけであります。

○河西委員 用意した質問は以上なんですが、私も個人的な問題であれなんですけれども、公会計制度を考える市民の会というのが、数年前といいますか十年近く前に立ち上がりまして、ある一人の地方議員が朝日新聞に投書をして呼びかけて、それに集まった税理士あるいは会計士、地方議員、市民合わせて運動を始めたのがもう十年近くなりましょうか、そんな中で、東京都におきましてもこの公会計改革をどうされるのか、注目をしてきたところです。
 ぜひ、手がけた今回の改革、形としてしっかりと確立させていただく、そのことによって、市町村の会計、財政も自主的な強固な基盤をつくっていくということに大きく貢献すると思いますので、ぜひそんな気概を持ってお進めいただきたいと思います。
 最後に、行財政改革基本問題特別委員会がこの間議論をしてまいりました成果をしっかりお受けとめいただきまして、行財政改革が大胆に前に進みますようにお願い申し上げて、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。

○山本委員長 河西のぶみ委員の質問は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
午後三時二十九分休憩

午後三時五十二分開議

○山本委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 まず大木田守副委員長。

○大木田委員 石原知事には、お忙しいところ出席をいただきまして、ありがとうございます。
 当委員会といたしましては、大都市自治のあり方につきまして、種々今日まで議論をしてまいりました。きょうは、その締めくくり的総括質疑というような形で、今日までの一定の成果をこれで取りまとめていくという方向になると思います。したがいまして、順次質問をさせていただきます。
 まず初めに、私の郷里の先輩であります中曽根康弘先生が総理になったときに、中ちゃんと呼ばれたい、こういわれて、国民に親しまれる宰相を目指すというような形でそういわれたんだと思います。私は、鈴木知事のときに本会議で、当時こういうことを話しましたら、鈴木知事にも大変喜んでいただきましたけれども、きんさん、ぎんさん、鈴木さんというような形で、その後、鈴木知事も、金銀鈴っていいだろうというような話でよくいわれていたということを聞いております。
 石原知事につきましては、熊を倒した足柄山の金太郎、そしてまた、鬼退治をした桃太郎、そして今は、東京から国を変える慎太郎ということで、金太郎、桃太郎、慎太郎と。呼び捨てにするんではまずいものですから、金ちゃん、桃ちゃん、慎ちゃんというようなことですね。
 初めての知事選のときに、東京から国を変えると。今回の知事選のときに、東京は日本の頭脳と心臓だといわれて、今のような話のこの閉塞状況を打ち破るには石原知事にぜひということで、三百八万という、投票に行った方の七割が投票したという、本当に今日においてはまれに見る現象が起きたわけであります。
 石原知事が一期四年ずっと行ってきたその政策を検証させていただきますと、今まで、鈴木知事までは、首都三千三百万の中心である東京の位置づけと、その一つの集約として世界都市博覧会というような展開をしたわけですけれども、石原知事は、首都機能は三千三百万のこの首都圏、いわゆる大東京圏で担ってやっていくという大きな政策転換をいたしまして、さまざまな分野で連携をとりながら、今政策を遂行しているというふうに私は思っております。
 したがって、これからの時代は、東京から日本を変える時代から、今度は、東京から日本をリードする時代というような一つの転換に入ると思いますけれども、その首都東京は、一千二百万の生活都市東京という顔があります。それから、首都圏三千三百万の連携をとってやっていくという東京、あるいは世界都市東京という、首都を抱える東京という、こういうようないろんな要素があるわけでありますけれども、知事が知事に就任したとき、ある人が私のところへ来まして、石原知事にどういう言葉を贈りますかと、五年前、私、いろいろと聞かれまして、当時「忍」という言葉を贈った気持ちを覚えております。
 刀をとどめて心で耐えるということで、三カ月は都政全体を掌握していただきたいというようなことを私は申し上げまして、仏とは能忍なり、能忍とはよく耐えるなりという話をした記憶がありますけれども、二期五年目になるわけでありますけれども、今日までの石原知事の都政改革、この行ってまいりました感想をまず伺いたいと思います。

○石原知事 早くも五年たっちゃったわけでありますが、五年というのは長いようで短い、短いようで長い時間帯だったと思います。いろんな方々のお知恵もかり、協力を得て幾つかのことをやってきたつもりでありますが、就任当時、一種のタブーにされていたようなことが幾つかございました。これは人によって意見も違うでしょうけれども、大都会にとっての、環状道路も含めて、そういったインフラというものを凍結から解除して積極的につくっていくということも一種のタブー視されていましたし、外国人の犯罪がだんだんふえつつあるときに、これを口にするのもはばかるような時代もありました。
 それから、日本は世界最大の火山脈の上にある国でありますから、当然災害はやってくる。関東大震災並みの災害が、鳥取県ですか、島根県で起こっても、人は一人も死にませんでしたが、あれが日本で東京で起これば大変なことになりますし、そういうときの対策も含めて、嫌がらせ等もありましたが、陸海空三軍の協力を得て、画期的な演習を今でも繰り返しております。
 幾つか新しい問題にも手がけてまいりましたが、まだまだ道は半ばでございまして、これからも日本の頭脳部、心臓部である東京の活性化のために、ひいては国家の活性化のために、皆さんの議会のご協力、理解をいただきながら、すべき仕事を手がけていきたいと思っております。ただ、やっぱり国が相手だと、いかにも時間がかかり過ぎまして、いらいらすることがございますけれども、まさにおっしゃったように我慢をするつもりで、刀は抜きたくないと思っております。

○大木田委員 今はやっぱり豊かさの停滞で、この停滞を打破できないジレンマにみんな浸っておりまして、石原知事の大胆な発想と、また、非常にきめ細やかなセンスをもっていろいろと発言されることが、今、注目をされているわけであります。
 今、話がありましたけれども、東京発都市革命ということで、治安対策、雇用促進、新しい銀行構想、それから大気汚染対策は成果を上げておりますし、都市機能の充実につきましても、羽田空港の拡張、横田空域の返還、これは私も全く賛成でございまして、また、外環道路の整備、認証保育所、行財政基盤の強化と、次々取り組んでおりますけれども、一期四年、石原知事の副知事としてやってまいりました青山やすしさんが、最近「石原都政副知事ノート」という本を出されまして、私も先日
、拝見をいたしました。石原知事が読まれたかどうかわかりませんけれども、青山さんが書かれた本
についての感想があれば伺いたいと思います。

○石原知事 非常に才気にあふれたすばらしい人材で、私もいろいろお世話になりました。本も、熟読はいたしませんでしたけれども、大体乱読の方ですから、ざっと読ませていただきましたが、一番印象的だったのは、ともかく苗は植えたと、何本か。これを、どこまで育てて、花をどこまで咲かせるかがこれからだと書いてありましたが、まさにそのとおりだと思います。

○大木田委員 次に、知事が当選されたときに、知事公館に入居しなかったわけですね。私は、鈴木知事の時代、あれが古くなって、耐震構造で、建設過程とできたときと、特に世界都市博覧会等成功させたとき、要人がいっぱい来るときに、そういう公館というのは大事だということで、建てかえ等には賛成をした中で、そういう完成をしたところに--災害時のときの初期対応は可能だという判断のもとで、知事はあそこに入らなかったわけですね。
 イタリア年、日本年がありましたものですから、そういう形で、月三百万という形であそこを貸したわけですけれども、あれは、やっぱり一千二百万、あるいは大きな災害があるときに、我々も財政委員会で何回もあの内容を検討いたしまして、都庁全体が指揮所でありますけれども、知事がいるところが、あそこで対応できるようにということで、相当いろんな角度から検討して建てた建物であるわけでありますけれども、あの現状は今どうなっているのか伺います。

○櫻井財務局長 旧知事公館についてでありますけれども、都の財産の有効活用を図る観点から、平成十二年度より民間への賃貸を行ってまいりました。賃貸の期間としましては、知事の任期等の関係から十四年度末までとし、年度末に施設を原状回復の上、貸し付けを終了したところでございます。
 その後、新たな賃借希望もありまして、さまざまな折衝を行ってまいりましたけれども、貸付期間などの条件面から調整がつかず、現在のところ施設利用に至っていない状況にございます。

○大木田委員 現在は、結論からいうと、あいているということであります。したがって、今後、施設をどう有効活用していくのか。
 それから、今、行財政改革が大きく行われておりまして、例えば私の住んでいる北区においても、都の出先の二つの出張所が一つになるとか、そういう形で片方の建物があくというようなことも含めて、そういうあいた都の施設をどう有効的に利用していこうとしているのか、この見解を伺います。

○櫻井財務局長 現在、都におきまして、第二次財産利活用総合計画に基づきまして、活用を図るべき財産の洗い出しを進めております。
 旧知事公館につきましても、このような点検、検討の一環として、都がみずから利用することも含めまして、有効利用策を幅広く検討してまいります。

○大木田委員 聞くところによりますと、維持費だけで月に三十万かかるともいわれておりますし、ぜひいろいろと早い時期に有効活用ということを図られるべきだと思いますが、知事は、今後あそこに入られるおつもりがあるのかどうか、知事公館にですね。

○石原知事 人間にもプライバシーがありまして、選ぶ権利もございますが、私、ああいう趣味の悪い建物はとても住む気がしません。大体公邸って、まあ私邸ということでしょうが、迎賓するといったって、そこらじゅうにホテルがたくさんあるのに、あそこで何をするのかわかりませんが、私邸であるべき建物に会議室が四つも五つもあって、あんなもの、あそこへ蚕棚でもつけて、若い職員をあそこで泊めてやったら、有効に使えるんじゃないですか。中を改造すればユーティリティーは随分出てくると思いますし、都庁からも近いし、私はそういうことに使ったらいいと思いますよ。別にそれほど、ダイヤモンドがちりばめてあるような大した建物でもないし、私は、趣味の問題でとても住む気がいたしませんから、若い人に大いに活用してもらいたい。

○大木田委員 私は、あれだけの施設でありますので、ぜひ有効利用を検討されて、知事の意向はそういうことでありますので、されたらいいと思います。
 次に、かつて私が新聞の編集をやっているときに、世界の中の日本ということで、当時、これから日本が国際社会でのいろんなということで、各界の人に、十二回にわたってそういう一つの出版もした記憶があります。今、世界の中の東京ということで、東京は一千二百万ですけれども、先ほど、主な世界の都市の人口はどのぐらいかということで調べてみましたら、インドのムンバイで九百九十二万、ジャカルタが九百三十七万、ソウルが一千二十三万、トルコのイスタンブールが八百二十六万、あるいはカラチが九百二十六万、ニューヨークが七百三十八万、メキシコシティーが八百二十三万、サンパウロが九百九十二万、ペルーのリマが七百二十万、ロンドンが七百万、カイロが六百八十万、モスクワが八百四十万というような、東京はまさに世界の東京ということで、首都圏を含めた大東京圏合衆国構想というような構想も聞いたことがありますけれども、世界の中の東京という位置づけ、いろいろと知事も幅広い観点から見ておりますけれども、どんな感想を持たれているか、伺います。

○石原知事 国の繁栄、国の力というものを何をもってはかるかは人によって違うでしょうが、大方が経済ということなんじゃないんでしょうか。軍事力ということになれば、見えない部分もございますしね。
 今、非常に経済的にも台頭の著しい隣の中国が、日本からODAをもらいながら有人のロケットを飛ばし、余っている部分は東南アジアにODAで配っていると。そういった国が、数字に出てくるだけの経済力かどうかということはよくわかりませんが、いずれにしろ、ボリュームからいったら、世界第二のまだ依然として経済力を持っている日本でありまして、しかも、日本人自身が、自分に対するそういう認識評価を欠いていますけれども、やっぱり文明を変えていく一つの大きな引き金になる先端技術というものの開発の総量は、日本はヨーロッパ全体を上回っている。アメリカは日本の十数倍ありますけれども、いろいろ企業によって経営の問題があって、せっかく開発した技術を製品化することもできないという足踏みも随分見られますが、私は、やっぱりそういう日本のポテンシャルを踏まえれば、識者は日本に非常に注目しておりますし、日本にいろんなビジネスも想定しております。ただ、やっぱり何か航空路一つとってみても、間口が狭くなりつつあって、世界の耳目を集める条件というものをだんだん相対的に欠いてきたという、私はうらみがあると思います。
 しかし、これは、その気になって整備すれば回復の可能なことでありますし、この東京湾という、周りに四つの県がひしめき、すぐ向こうには中京があり、そして大阪、阪神がある、この比類ない東海道軸という経済ベルト地帯というものの東端の大事な中枢港の東京湾というものも、合理化すればすばらしい吸引力になると思いますけれども、残念ながら、日本で開発したソフトとハードを全部使ってシンガポールがそれを上回っているというのは、一体どういうことなんでしょうか。あそこを見れば切歯扼腕せざるを得ないんですけれども、そういった問題を含めて、私は、政治というものが、正当な人口認識を持ってすれば、おっしゃったように、世界が再び、世界の中の東京として東京に注目する将来は必ずあり得ると思いますし、また、その努力をしたいものだと思います。

○大木田委員 まず、世界の人が日本を見たときに、日本には二つの国家があると。日本国と東京国という表現をよく使います。一ドル百二十円で東京の予算を換算いたしますと、G8の中に入るというような数字も出ておりますし、今、国連が百九十一カ国加盟しておりますけれども、東京の一千二百万という人口は五十一位であります。その意味においてはまさに国家的な規模でありまして、私は、日本国と東京国が並行して、この国際的な視野の中にあって、これから進んでいくことが非常に大事だという視点を、競り合うような気持ちでいくことの方が大事だと。
 いろんな議論の中において、日本の国内だけの議論というのはすごくあるんですけれども、世界的な視野からもう一回そういう東京の位置づけを見直して、東京の、今さまざま知事も指摘されておりましたけれども、これを首都圏も一体となった三千三百、あるいは拡大首都圏を入れると四千三百ぐらいになるんですけれども、その辺の力量を示しながら、国際社会の中における東京の使命などというものを考えていくことも大事だなと思っております。
 それから、知事が就任しまして職員の皆さんに三つのことを呼びかけたことは、大変私も感銘しておりますが、一つはコスト意識、二つはスピード意識、三つは危機意識であります。私は毎年キーワードを決めながら、それなりに自分なりの対応をしているわけですけれども、ことしは、私は三つのキーワードを決めまして、一つは変化、スピード、危機。二つは知事のあれとも重なるんですけれども、このキーワードについて、知事の感想を。

○石原知事 キーワードに改めて変化を据えられたのは、非常に私は炯眼のお言葉だと思います。お釈迦様が変化というものを哲学の一つの命題として悠久の昔に説かれた。以来、いろんな人がいろんなことをいっていますけれども、いずれにしろ、色即是空、空即是色でありまして、人間というのは、やっぱり物の変化というものを一番恐れます。また、なかなか変化についていけない。銀行をつくろうとする、大学を変えようとすると、肝心の人たちがみんな反対する。全部保守、退嬰、保身ですね。
 ですから、変化というものを恐れたら、私は、人間には進歩はないと思います。そういう点で、こういう激動の時代に、副委員長が変化というものをキーワードに据えられたというのは、とっても大事なことだと私は思います。

○大木田委員 ありがとうございます。私は「沖縄の心の原点」という本を出したときに、変化、変化、大変化という、この書き出しから書いたんですけれども、まさにそういう時代に入っているなという感じであります。
 それで、先ほど地方制度調査会の内容とか道州制については種々議論がありましたので割愛をさせていただきまして、首都圏メガロポリスの中心として東京が日本を牽引していくということで、先ほどの首都圏の三千三百の中におけることで、先ほど聞いておりますと、昨日、知事は、松沢知事と上田知事といろいろと打ち合わせをしたということでありますけれども、どんなところを話をされたのか、もう少し何かありましたら。

○石原知事 きのう、松沢さんから、かねての首都圏連合の少し進んだ形の構想のペーパーももらいましたが、やっぱりこれは、いかに首都圏を構成している四県が、人口の数も誇り、GDPも誇っても、やはり国とのかかわりは、国と地方という本質を外れることはできませんし、それを無視して事が進めるものでもございません。
 ですから、所管の国交省とも、逆にこちらが引っ張り込むつもりでいろいろ根回しをしながら、首都圏の構想というものを生かした再生案というのをつくっていこうということで、国交省に詳しい浜渦副知事に今その書類も渡しまして、もう少し専門性のあるスタッフで事を進めていこうと思っておりますが、それは、今までやってきました産業廃棄物にしろ、ディーゼルエンジンにしろ、治安のあれにしろ、いろんな形で連携をとらざるを得ない、もう本当に境を一つ越せば埼玉県であったり、神奈川県であったり、千葉県であったりするわけですし、まして東京湾という閉鎖水域は、埼玉県は海がありませんけれども、不法に入国してくる、不法に滞在する外国人の犯罪ということになれば、埼玉県はさいたま市という膨大な都市を抱えておりますし、そういう点でもそういう認識を持ち合おうということで、これをどういうふうにさらに具体的な政策提案としていくかはこれからのことで、何かまた逆に、こういうものこそ少し共通の問題として取り上げろという案がございましたら、ぜひお聞かせ願いたい。
 これは何も知事だけでやる仕事じゃない、理事者だけでやる仕事じゃない、やっぱりお互いに議会を持っているわけですから、そういう努力をしたいと思いますので、お気づきのことがございましたら、ぜひお知恵をかしていただきたいと思います。

○大木田委員 今、知事の話されたことは全く同感でありまして、ぜひ、さらにそれを首都圏を中心に進めていただきたいと思いますし、我々もまた、いろいろとご意見があれば申し上げたいと思っております。
 いわゆる東京圏合衆国構想というのは、これは今の首都圏が一体化した一つのものなんですけれども、この首都圏が一体化してさまざまな課題に対応していくという、道府県は残すんですけれども、その一つの中において広域的な行政を詰めていくということが非常に大事でありますし、これが要するに国際社会から見たときに、神奈川も埼玉もというよりも、東京圏の枠で勝負した方が、いろんな経済的なあれができるわけですね。
 したがって、そういう意味においては、そういう東京圏のような一つのものの中で、東京のどこというような形で国際的な対応もできますし、そういうものをもっと使っていけば、さらにいい知恵も出てくるのではないかなと思っております。
 それで、今までも、首都圏において広域的な問題を解決する課題として、いろいろと都は取り組んできましたけれども、今、知事もそのいろんな課題のことをいわれまして、ダブった質問になりますのでこれは割愛しまして、そういう意味では今の構想を進めていただきたいと思いますし、首都圏構想の一つの締めくくりとして、都としても、時代の変化に対応した広域的な行政運営を行うために、首都圏全体を視野に入れた自治のあり方ということを示すべきだということを申し上げます。
 それで、今、知事の話されたこととちょっとダブるような気もしますけれども、また所感があれば伺います。

○石原知事 きのう、三人の知事でちょっと会合しましたときに、やっぱり一番問題になりましたのは治安の問題でありました。それから、青少年の育成の問題でありました。今度、東京都は議会に諮って、青少年健全育成条例をかなり思い切って、踏み込んで変えるようでありますが、実は比べてみますと、東京の周りの県の方がはるかに厳しい規制をしているんですね。
 これは、逆に話をしてインスパイアされましたが、こういう問題あるいは治安の問題、これはもうおっしゃるとおり、県境など無視して、向こうは勝手に動き回ってけしからぬことをしているわけでありまして、自治体を守る、それを構成している市民、都民、県民の財産と生命を守るということは、県がばらばらにやって済むことじゃございませんから、とにかく神奈川県も東京のまねをすぐしまして警察関係の副知事をつくりましたし、そういう動きもあちこちにございますので、やっぱりそういうエキスパートの連帯というものの上で、最低限、要するにこの首都圏の治安対策というものは、日本に範を示すような形で徹底していいモデルをつくっていきたいと思っております。

○大木田委員 私も、昨年暮れに、治安担当の竹花副知事に出席をいただきまして、治安と青少年問題についての話をしていただきました。そうしましたら、終わった後、出席の皆さんから聞きましたら、非常に新鮮な感じで、今までなかなかそういう機会、聞くことがなかったということで、非常に感銘をしておりまして、ぜひこれは、非常にこれから大事なことでありますので、一緒になって取り組んでまいりたいと思っております。
 次に、都区のことにつきましては、先ほども話が出ておりました。確かに東京が十五区ありまして、それから、三十五区から昭和二十二年に二十二区になりまして、二十二年の八月に板橋から練馬が独立したんですね。そのときは練馬が十三万の人口だったんです。それが、今、練馬が六十五万で、板橋より上回っているという、こういうような状況ですね。
 したがいまして、先ほど来話が出ておりますけれども、大きく都と区の状況も変わっております。二十三区、千代田区の四万弱から世田谷の八十万を超えるところ、あるいは青ヶ島村の二百三名のところから、東京全体の一千二百万近い、これを集約した、まさに日本の縮図みたいなものが全部東京にはあるわけでありまして、それが先鋭的にあらわれているというのが東京の現象であるわけでありますけれども、先ほども清掃事業のことについてもいろいろと出ておりまして、私も全くあれは、知事の考え方と同じ考え方であります。
 この都区制度のさまざまな課題の中で問題になっていることをちょっと私挙げてみたいと思うんですけれども、一つは、例えば私の住んでいる上中里のところで調べましたら、昭和四十六年に容積率が三〇〇、そして、昭和四十八年に容積率を逆に二〇〇におろしているんですね。昭和五十六年に一五〇におろしているんです。平成八年にまた一五〇にして、今度は素案の見直しをやるようでありますけれども、三〇〇に戻すんですけれども、その戻し方が、その容積率の公園の部分を外して戻すというような、どういうことになっているのか、今、地元からもいろいろと要請を受けておりますけれども、一貫性のない一つのものが現実問題としてあります。
 それから、例えば、国は現場を知らないという、そういうことにおける一つの象徴的なあれで、これは選挙制度であるんですけれども、私十二区で、北区と足立区の五分の一が入るんですけれども、足立区は、西新井栄町の三丁目が十二区で、一丁目と二丁目が十三区なんですね。それから、谷在家二丁目、三丁目が十二区で、一丁目が十三区というような、東京も五つの区が区が分断されているのもけしからぬと思っているわけでありますけれども、今度は丁まで分断をして、数合わせかどうかわかりませんけれども、現実はそういう部分があって、私自身は、十年間この選挙制度をやってきまして、中選挙区でやるべきだという考え方を持っておりますけれども、こういうような部分。
 そのほか、挙げてみるといろいろと幾つかまだあるんですけれども、これだけやっていてもあれでありますから、例えばもう一つだけ申し上げますと、駒込駅が私の家の近くにあるんですけれども、豊島区と文京区と北区なんです。そうすると、区をまたいでいると、駅を中心に接点していると、それぞれの区は区の中のことはやっているんですけど、全体の映像がどこもかけないと。例えば板橋の駅が、板橋区と北区側の滝野川七丁目で、近藤勇の墓のある方が北区側なんですけれども、そこのところも、双方は、自分の区の方のことは一生懸命やりますけれども、駅を挟んでそういうことができていない。いろいろとあります。
 したがいまして、効率的な行政運営を図る立場から、東京全体の自治のあり方を、今後、先ほども出ておりましたけれども、見直して、そういう解決する課題が数多くありますので、そういう視点で解決すべきであると思いますが、いかがでしょうか。

○前川知事本部長 お話がありました自治体の行政区域がどうあるべきかというのは、なかなか難しい問題でありますが、一般的に申し上げれば、当然人口だけではなくて、社会経済活動の実態であるとか、地勢的要因とか歴史的沿革などを総合的に勘案して決めるべきであろうと。
 そういう意味で、東京の二十三区につきましては、例えばでありますけれども、大都市経営の一体性の確保を両立させる観点から、都区制度が採用されているのであろうと思います。
 ただ、お話もありましたように、現在の二十三区が今のままでよいかどうかというのは、先ほど来るるご議論もありましたように、既に戦後、制度発足以来六十年近くを経ておりますので、必ずしも実態に合わない面もあるのではなかろうかと。ご指摘があったいろんな課題等も、きちんと整理しながら検討すべきであろうと考えております。

○大木田委員 確かに区市町村の場合なんか、私も新聞の編集のときに、「地域のこころ」という連載をしたんです。そのときには、その地域には歴史があり、文化があり、風土があり、さまざまなその地域、地域の成り立った形成があります。したがいまして、そういうものを大事にしながらいろいろと考えていかなければならないということは当然なんですけれども、これだけあらゆる面で小さくなってきた場合に、もう一回そのことを整理する必要があるのではないかと思っております。
 次に、新しい銀行構想は、東京発金融革命にまさになるんだろうと私は思っております。先日、スキームを見たところ、宝くじ、今、主計部に公債課がありまして、宝くじ係が三人いるわけですね。それで年間七百五十億前後の収入が入ってくるわけです。したがいまして、当然新銀行東京は宝くじを取り扱うべきであると思いますが、いかがでしょうか。

○櫻井財務局長 新銀行における宝くじの取り扱いについてでございますけれども、新銀行の経営に当たりましては、中小企業へ生きた資金を供給するため、まずは業務領域の選択、経営資源の集中によりまして、その健全性及び安定性を確保することが最優先だろうと考えております。
 宝くじの受託につきましては、相当な受託能力が必要でございます。販売管理等の専門的なノウハウに加えまして、多数の要員の確保が必要になることから、将来的な検討課題と考えてございます。
 一方、宝くじを発行する側としましては、宝くじの収益アップを図るため、売り場を拡大することは重要な課題でございまして、宝くじの売上増大方策につきまして、今後検討してまいります。

○大木田委員 私は、かつて予算委員会で、宝くじの益金が一千億になることが大事だということを、知事ともいろいろとやったことがあります。それで、最近はナンバーズとかロトとか伸びているわけですね。したがいまして、今度、新しい新銀行東京もやって、信金、信組も拡大をしてそういう販売ができるような対応をすれば、一千億ぐらいになっていくのではないかというふうに思っておりますので、ぜひ検討をしていただきたいというふうに思います。
 それから、新銀行のスキームを見ますと、平成十七年四月を目途にということで、四月スタートということを明確にはうたっていないんですね。来年の四月は、二年間延期したペイオフの時期になるわけです。ペイオフの時期と重なりますと、これは私が持っている懸念なんですけれども、知事がネーミングをつけて東京再生都債三年物を出したときに、すぐ売れて、また出したら、またすぐ売れて、やっぱり皆さんにいわせると、慎ちゃんが出したものだから安心だというので買っているということで、今度ペイオフになりますと、千三百八十兆の今預金があるといわれて、東京にその中のどれだけあるかということの中で、ご年配の人が持っているんですけれども、やっぱり一千万単位で分けるんですよね。そうするとやっぱり安心だということで、新銀行東京に、当初、預金が一兆六千億程度の予定で、最終段階で五兆となっておりますけれども、私は、相当な勢いで集まってくるのではないかという予想は立てております。
 それともう一つは、七月の参議院選挙が終わって、十一月初めに大統領選挙があります。その大統領選挙が終わった後、いろいろと今幾つかの金融機関の、危機までいかないかどうかわかりませんけれども、いろんなことがいわれている。それで、世界経済、アメリカ経済が大統領選後どうなるかと。ちょっと下がるんだろうといわれているわけですね。
 そういう中で、来年の四月というこの時期、ペイオフ--一部のところから、ペイオフをもう一回延ばしてもらえないかという要請も来ておりますけれども、これはどういう判断があるかということはこれからの段階でしょうけれども、近づくと、必ずいろいろとこの議論は再燃してくると思います。しかし、国際公約の中でこれは進めておりますから、何回も何回もそういうことはできないんじゃないか。
 そうなってきますと、来年の四月、私は、スタートは、こういうような要素も入れて最終決定は当然今後されるんだろうと思いますけれども、そんな懸念を持っておりますけれども、知事はどんな感触でございましょうか。

○石原知事 これは、お答えの言葉を相当選んで話しませんと、妙な余韻がつきますとえらいことになりますんですが、いずれにしろ、ペイオフという制度を構えざるを得ないぐらい、つまり日本の金融機関というのは信用を失墜したわけです。そういう背景について、預金者、公的な預金者は別ですけれども、個人の方々も含めて、どういう、どこまで突っ込んだ認識を持っていらっしゃるか、人によって違うでしょうが、大木田さんおっしゃったみたいに、ペイオフの時期に、新銀行が預金が集まり過ぎるといううれしい悲鳴を上げる事態は、銀行にとっていいのか悪いのか、それは別にしても、日本の金融全体にとってはいろんな波紋を広げるでしょうから、そういうものも私たちはやはり十分考慮して、新銀行の開業時期については、経済環境や金融環境の流動的な要素を十分勘案して適切に判断したいと思っております。
 他の銀行に比べて、ここで改めて宣伝するつもりもございませんが、不良債権は一銭もございませんし、そういうものが、その時期に重ねて預金者の方々にどういう評価を受けるかということはわかりませんが、いずにしろ、先ほど申しましたように、経済環境や金融環境を十分考慮して開業の時期を決めるつもりでございます。

○大木田委員 ペイオフにそのまま重なった場合、一番影響を受けるのは、信金、信組が蓄えているところが新しい銀行に移行する場合の弱体化とか、これは今いろいろといわれておりますけれども、まだ一年以上あるわけでありますので、これだけの情勢変化というのは、まだどういうふうに変化が起こるかわからないということもありますので、その辺も十分勘案して、私は、この銀行は大成功させなければならない、こういう一つの立場でありますので、そのことを申し上げました。
 それから、先日、銀行のことで東京法人会の若い方々と話をしたときに、ぜひ我々とも連携をとってやっていただきたいということがありましたので、このことは申し上げておきます。
 それから、三位一体改革でありますけれども、三位一体改革のまず全貌が見えない。先ほども話がありましたけれども、とりあえず今年度一兆円。私も、全くこの考え方、知事の考え方と一緒で、都税調で七兆二千億の税源移譲のことをうたって、それは大きなインパクトにはなったと思います。それで、片山総務大臣が五兆五千億の案を出しましたけれども、今回四兆というような、しかも三年ということの中で、しかも、その内容がまだ全然見えないというような部分であります。ただ、現実問題でありますから、これが今年度、十六年度予算にはどういう影響が出るのかということと、今後、三位一体改革は、十八年までどういう展開になるのか、これを伺っておきます。

○櫻井財務局長 三位一体の改革に伴う十六年度政府予算では、国庫補助負担金が約一兆円削減されておりますけれども、これと十五年度に一般財源化されました義務教育費に係る国庫負担金の二千三百四十四億とを合わせました約一兆三千億に対しまして、新たに所得譲与税四千二百四十九億円、税源移譲予定特例交付金二千三百九億円が創設されまして、合計で六千五百五十八億円が措置されるということになってございます。
 そういう中で、都への影響でございますけれども、義務教育費に係る国庫負担金が十五年度分も含めて約二百三十三億円削減される一方で、所得譲与税が二百四億円、税源移譲予定特例交付金が約九十二億円配分されると見込んでございます。
 しかしながら、公共事業等に係る国庫支出金等の削減が現時点で明らかでないということでございまして、お話にもございましたように、都への影響全体については、現時点ではまだ不透明だと、こういう状況でございます。
 それと、これの今後でございますけれども、この改革につきましては、国は平成十八年度を目途に国庫補助負担金を、お話のようにおおむね四兆円廃止、縮減するということで、あわせまして地方交付税制度の見直し、税源移譲を行うとしておりますけれども、今後の具体的な取り組みについては、いまだ明確に示されておりません。
 都としましては、地方の自主性、自立性を高める方向で三位一体の改革が行われるよう、引き続き、都議会のご支援もいただきながら、国に対して強く働きかけてまいります。

○大木田委員 以上で終わります。
 ありがとうございました。

○山本委員長 大木田守副委員長の発言は終わりました。

○山本委員長 次に、曽根はじめ理事の発言を許します。

○曽根委員 きょうは、自治制度の方向についてということがテーマですが、道州制とか首都圏の構想なども出されましたけれども、先ほどどなたかからもありましたように、自治制度も最終的には住民の意向で決まってくるということと、我が党は一貫して、首都東京も、一つの自治体として、そこに住む都民の総意に基づく運営が第一義的に追求されねばならないし、そのための諸制度でなければならないという観点から、都民の目線から都政を論じてまいりました。
 同時に、今、東京都という自治体にとって、今後どのような自治制度のあり方を目指すのかということを考えていくためには、石原知事になってから間もなく五年と、この経過した今日までの都政のあり方を検証し、その上に立って今後の方向を論ずることが必要だと考えております。きょうは、その観点から、幾つか知事並びに各局長に質問をさせていただきます。
 この五年間の石原都政の特徴という点では、何といっても、この基本である東京構想二〇〇〇に基づいて、どの分野についても改革が盛んに唱えられてきました。これは何を目指してきたのかと。同時に地方自治法では、自治体の使命として住民福祉の増進ということが掲げられておりますが、都民生活世論調査でも、やはり都民要望の最も強いのが、高齢者対策と医療衛生対策です。この分野で都政がどう都民要望にこたえてきたかが、今問われているところだと思います。
 都の目指す福祉・医療のあり方、これをまず私は問題にしていきたいと思うんですが、これを最もわかりやすくあらわしたのが、高齢者対策、そして福祉・医療などについてのこの図であります。(パネルを示す)これは東京構想二〇〇〇からとったものです。資料で今お配りしております。
 ここでは、福祉サービスについて、企業や公益団体が中心となりサービスを提供するとされておりまして、行政はその仕組みをつくること、また、市場原理や地域の自主的活動だけでは提供できない分野を担うとされて、福祉サービス提供の中心から撤退をしていくという方向がわかりやすく打ち出されております。私は、まさにこのパネルのように、福祉の民間市場化の仕組みを目指して進んできたのが石原都政の最大の特徴ではないかと思うんですが、結果、どういうことになったかということをまずお聞きしたいと思います。
 石原知事にお聞きしますが、この五年間で、自治体の使命として住民福祉の増進と、この地方自治法に掲げられた課題で東京都政はどのように前進したと考えておられるのか、お聞きしたいと思います。

○石原知事 福祉という言葉が人口に膾炙してから非常に長い時間がたっておりますが、今なお大方の方々が、非常に狭い意味の福祉として福祉の問題を矮小化していると思います。我々が考えなくちゃいけない福祉は、基本的には、だれもが安心して快適に暮らせる東京の実現でありまして、そのためには、狭義の福祉だけではなく、治安、医療、環境、雇用、インフラの整備など、さまざまな施策を複合的に実施することが必要であります。
 狭義の福祉についても十分に努めてきたつもりでありますが、現金給付と入所施設中心の画一的なサービスから、利用者が地域の中で必要なサービスを選択し、自立した生活を送ることのできる、利用者本位の福祉への転換を進めて成果を上げてきたと考えております。

○曽根委員 治安とか、それから環境ですか、それから知事の過去の答弁では、都市再生も福祉なんだというような、知事の文明工学とでもいうべきものはいろいろ聞いてきました。もちろん、治安や環境、都市基盤もそれぞれ施策が必要なのは当然ですが、知事が、あれも福祉これも福祉といいながら、結局、都民要望が一番強い高齢者対策や医療衛生などの課題を大きく切り込んだと、そしてそこを犠牲にしてきたからこそ、我が党は問題にしてきたわけです。
 例えば、知事が、利用者がサービスを選択し、自立した生活を送ることができる福祉への転換というものをおっしゃいましたが、実際には福祉でどういうことが行われたか。この東京構想二〇〇〇のもとで、二〇〇〇年度から財政再建プランによる経済給付的事業、先ほど現金給付とおっしゃいましたが、この切り下げが始まりまして、昨年度で老福手当が全部なくなりました。それから、重度障害者手当も経過措置が終わって、今残っているのは老人医療費助成、マル福がごく一部の年齢に残っているだけです。
 この経済給付を中心に切り下げが、福祉局予算では八百八十五億円、これは第一次プランに基づく経常経費の削減の千八百十六億円の実に半分を占めています。なぜ第一次プランの中で経常費の施策見直しの半分が福祉でなければならないのか、この点についてお答えいただきたい。

○櫻井財務局長 都が進めております福祉改革は、高齢化の急速な進展や福祉ニーズの多様化、高度化の流れの中で、都民ニーズに十分こたえられるよう、都の福祉施策を新たな発想で見直し、大都市東京の特性に合った利用者本位の施策に転換していくため、再構築を図っているものでございます。
 お話しの施策の見直しが福祉局の予算においても進められていることは、福祉改革が進展しており、それだけ福祉施策が都民ニーズに合った、利用者本位の施策へと転換されてきたことを示すものというふうに考えております。
 福祉施策につきまして、単純に予算額の多寡だけを問題にするのは意味のない議論であると思いますけれども、あえて申し上げれば、福祉局の経費について、十一年度予算と十五年度予算とを比較しますと、区市に移管しました児童扶養手当の支給分を除けば増額となってございます。

○曽根委員 今、児童扶養手当の移管があるから福祉予算は当然減なんだというようなお話でしたが、この姿勢こそ私は問題だと思います。ほかの道府県の多くは、区市に移管された児童扶養手当の分を子育て支援のほかの福祉施策に回して努力をしていて、一部を除けば、児童扶養手当の減があっても福祉費全体としては減らしていないわけです。しかし、東京は大幅にこれを含めて減らしているということを問題にしています。
 それから、先ほど、都民ニーズに合ったという、合ってきたんだというお話ですが、私、とんでもないと思うんです。手当だとか医療費助成制度を切られたのは、高齢者とか障害者の中でも、特に介護保険や支援費制度だけでは医療面、経済負担などで利用が困難な人が多いわけです。だから、新たな制度をやるのであれば、同時に経済給付も必要だという人が非常に多いということは、繰り返し私たち指摘してきました。
 例えば重度障害児の場合、私も何年か前に取り上げましたが、重度手当と育成手当、医療費助成を所得制限ですべて同じ基準で切られた家庭で大変大きな被害が出るわけです。あるご家庭では、重度手当で七十二万円。この重度障害児の方は、余り病院にはかからなくて済むということで、医療費はそれほどかかっていませんが、それでも年間では八万円以上など、全体では百万円近い負担増と収入減が現に起きています。
 そうするとどうなるかというと、支援費で介護を頼みますと、この家庭の場合は中堅所得層だということで、一時間に千円の費用がかかります。この費用が、一時間で千円ですから、やはり非常に負担が大きくて、しかも手当がどんどん切られていますから、結局利用できない、家族介護で見るしかないというふうになってきているわけです。ご主人の給料も不況で目減りして、将来に展望が全く持てないというふうにお話しになっています。
 それからもう一人の重度障害児の母親の方は、障害者医療費助成は残ったけれども、一割負担になっている、今、老人医療と連動で。タクシーを利用したり、点滴を受けたり、長期の入院もある、その子の場合はということで、支援費も利用できず、入院期間は支援費が利用できないということで、出費が非常にかさんでいるというふうに訴えていて、いずれの場合も、新しい制度のもとでも経済給付が必要だということが共通していえるわけです。
 私は、こういう問題は、福祉の問題に限らず、一人の重度の障害児というのは、それは一人の問題ですが、万人を照らす鏡だと思うんです。一人の、最も生きることが困難な障害児の問題を、その子どもにいわば行政の手を差し伸べる力を持っていながらやらなかった、やっていないということが、ほかの万人の方々の施策に大きく影響するからこそ私は取り上げているわけです。これはまさに自治制度の、住民自治の基本があるかどうかの問題だと思うんです。
 しかも、切られたのは予算だけじゃなくて、都立の病弱児の成東児童保健院だとか都立の母子保健院など、大切な役割の施設も廃止になりました。まさにこの図のとおり、東京都の、都立の福祉施設からも、福祉サービスの提供、医療サービスの提供が撤退しているという状況です。
 私、率直にお聞きしたいんですが、成東児童保健院や母子保健院の施設の廃止の影響について、都は調査をしているんでしょうか。

○櫻井財務局長 お話しの施設は、医療技術の進歩による転地療養のあり方や地域における医療機能の連携、さらには法律改正等の時代変化などを踏まえ、必要性が薄れたと判断したため、廃止したものでございます。これらの施設につきましては、所管局において地元や利用者などとの協議を行い、廃止の影響などについて十分検討され、所要の対策を講じた上で廃止に至ったと理解しております。

○曽根委員 母子保健院も成東の児童保健院も、関係者の理解など最後まで得られていなかったのは明らかであります。しかも、その後の子どもたちの様子も大変深刻なものです。行政として、こういう施設を廃止した場合、しかも、三十人ぐらいの子どもたちがその施設を卒業するまで待てなかった、ほかの施設に散り散りばらばらにさせたわけですから、当然追跡調査をして、その影響はどうだったのかというのを検証することは最小限の責任だと思いますが、行政のこの基本的な責任を果たしたのかどうか、この点を改めてやるべきじゃないかと思いますが、いかがですか。
〔発言する者多し〕

○山本委員長 それでは、財務局長、答えられるところがあったら答えてください。

○櫻井財務局長 お話しの趣旨をよく所管局にお伝えして調整してまいります。

○山本委員長 速記をちょっととめて。
〔速記中止〕

○山本委員長 再開いたしますが、ちょっと委員長から曽根理事にご注意を申し上げます。
 きょうは、基本問題について、これからのあり方、東京都のこれからの未来、それについてお話をしたいということでありますので、どうぞひとつその点お含みおいて質問をされるよう希望いたします。
 以上です。
 どうぞ始めてください。

○曽根委員 先ほどもちょっと申し上げましたが、一人の、最も生きることが困難な都民の問題をきちんと解決しなければ、知事は、木を見て森を見ないとよくいわれますけれども、一つの都民の問題を解決しなければ万人の問題がやはり大きく損なわれるという観点から私取り上げております。
 東京都が、例えば成東からほかの施設に行かなければならなかった子どもたちを、手だてを打つ力を持っていながらそれをしなかった、置き去りにしたということがもし事実ならば、これは多くの都民の同じような問題に波及する問題なんですよ。私、この母子保健院や成東の旧職員の方、それからこの問題を取材したジャーナリストの方、これは都政の大問題だということで、いわば地方自治体の根幹にかかわる問題だということで、ずっと追跡調査をしている団体があるんです。その方々に教えてもらったんですが、また私自身もそういう施設に行ったことがありますが、例えば、ある子は、児童養護施設に行ったけれども、満杯で、大変な思いをしていると。自宅に戻った子どもは……(発言する者あり)この問題、最後にやらせてくださいよ。自宅に戻った子どもは、成東では学校に毎日通っていたんだけれども、自宅では結局、何とか通えるかと思ったけれども、病気、病弱児ですから、学校に行けなくなって、結局不登校になってしまったというふうに、一人一人の子どもたちにとって大きな試練がその後も続いています。
 私は、行政は、基本的課題としてこうした施設の廃止、子どもたちのその後についてきちんと調べて、誤りがあれば正すという立場をとるべきだということを申し上げておきたいと思うんです。
 次に、これら含めて、余り個別の問題をやるとあれだというので……。経済給付的事業が経常経費事業の半分を占めて、八百八十五億円も削られた。こうした第一次財政プランのこの四年間の流れの中での都民のいわば痛みですね、この問題についてどのように知事は受けとめているのか。こんなのしようがない問題だというふうに考えているのか。これは、福祉の問題に限らず、第一次財政再建プラン、財政再建の名であれば、この問題はどうでもいいのかということを基本問題としてお聞きしたい。

○石原知事 基本的なお話をいたしますが、昭和四十年代から大きく見直されることのなかったこれまでの福祉システムは、高齢化の急速な進展や福祉ニーズの多様化、高度化にこたえることができずに、もはや制度疲労を来しております。
 私は、長期的、歴史的視野に立って、見直すべき事業は見直し、必要な施策には財源を集中投入し、改革を進めてまいりましたが、一連のばらまき、経済給付的な事業の見直しと再構築は、利用者本位の福祉の実現を目指す福祉改革の一環として、真の意味での都民福祉の充実に資するものであり、既に都民の理解を十分得ていると確信しております。

○曽根委員 今、知事は、都民理解を得ているというお話ですが、私は、経済給付を対象に受けた、切り込みの対象になった、大体百万人以上の高齢者、障害者を中心にした方々だけではなく、今新たに第二次財政再建プランで切り込まれようとしている分野というのは、これは補助金を中心にしたものです。
 例えば福祉、教育の団体で、私学助成とか、こういうものが名指しで挙げられています。それから、市町村の補助も幾つも対象に挙げられていて、既に幾つか合意されたものとして予算化もされつつある。また、継続協議でありますが、広く障害者が利用している、全都で二百カ所ぐらいになるんでしょうか、小規模作業所の補助金、これは市町村を通じて、市長会などに提案されていますが、補助が高率だということで切られようとしている。
 高率の東京都による、市町村などを通じての補助、率が高いということが、例えばそれを受けている当事者のコスト意識を弱めてしまうだとか、それから自主的な取り組みがこれじゃ出てこないというような理屈をいっていますが、それぞれの分野で果たしている施設の役割、それから補助を受けているそれぞれの団体の活動、これはいずれも不採算の分野なんです。不採算の分野だからこそ、涙ぐましい努力で、補助を受けながらもかつかつで運営していて、例えば小規模作業所の方々も、これはどちらかというと重度よりは中程度または軽度の障害者の社会参加の一つの貴重な場になっているわけですが、こういうところの活動が事実上困難になってしまう。
 市町村の方は、じゃあ補てんできるか。市町村の方の自治体としても、それでなくても障害者福祉全体としては膨らんでいるので、とても賄い切れないんだということをいっていて、私は、東京都が一方的に市町村それぞれの自治体を通じての補助金をこういうふうに上から切っていくというやり方は、断じて許されないというふうに考えます。
 こういうふうなことを本当に東京都がやっていくと、改めてこの図に戻っていうと、ここに目標として掲げられている、都民の住みなれた地域で自立した生活ということが達成されるのかということなんです。実際には、重度の障害者の問題も先ほどいいましたが、そうでない方々も障害者全般について見ても、これで本当にサービスに応じた適正な負担ができるのか。それから、サービスの提供主体から東京都が撤退した後に、民間企業が、もうからないこの不採算の分野に一体だれが乗り出してくるのか、それを支えるのは一体だれなのか、全くその保障がないというふうに私は思うんですが、いかがですか。

○石原知事 だれもが地域で自立して生活できる、ごく当たり前な世界をこの東京で実現するために、都はこれまでもさまざまな手だてを講じてまいりました。痴呆性高齢者や障害者のためのグループホームの増設、里親制度の充実、駅前での認証保育所の創設、ホームレスの自立支援、バリアフリー化の推進など、多岐にわたる施策に取り組んでまいりました。また、その担い手として多様な事業者の参入を促進するとともに、サービスの質を確保するため、都独自の第三者評価制度を導入しました。当然ながら、高齢者や障害者の入所施設の増設、子どもを虐待から守る児童相談所の充実などの取り組みも、ゆるがせにはしておりません。
 こうした取り組みは着実に成果を上げ、都民の理解を得ているものと確信しております。

○曽根委員 知事は、民間企業にどんどん参入させる今のやり方が、着実な成果などというふうに答えていますが、全くこれまでの取り組みが果たしてきた役割をきちんと見ていないと思うんです。
 私申し上げましたように、東京都が行ってきた都民サービスのそれぞれの分野では、やはり民間ではできないからこそ都立の施設が運営され、都立病院にしても、それから最も重い状態の子どもたちの施設にしても、また、地域での小規模作業所は民間の方々の力で成り立っているんですが、それを支えるのがやっぱり行政であったというのは、そういう公的な役割がほかにかえられないからこそ、これが確立をしてきたんだと思うんです。
 それが、サービスの主体が、一番中心に民間事業者が来る、企業が来る、適切な負担をすれば企業がやってくれるんだという考え方では、適正な負担ができない多くの都民がいるという現実のもとでは、お金がない人は受けられないということになってしまうわけで、今お話のあった児童相談所や里親制度など、これらのものは都としてきちんと責任を持ってやるのは当然ですが、私が問題にしているのは、民間企業がサービスの中心になっていく、これは福祉に限らずですよ、今後どの分野でもそういうふうになっていくということが、都民の住みなれた地域で自立した生活を支える保障がなくなっていくことじゃないかということを申し上げているので、この点について知事からもう一度きちんとしたお答えをいただきたいと思います。

○石原知事 東京が進める財政再建は、都民ニーズの変化にこたえ、東京の活力を呼び戻す施策の財源を生み出すための、将来を見据えた積極的な取り組みであります。そのためには、都のあらゆる施策及びその執行体制について大胆な発想で見直し、都の実情に合った新たな施策を自主的に展開できる財政基盤をつくっていくことが重要であります。自治体が住民に対しどのようなサービスを提供すべきかは、それぞれの地域の特性によるものでありまして、いろいろ例を挙げられていることもありますが、他の自治体の施策をそのまままねしても意味がないと思います。
 都はこれまで、認証保育所やディーゼル車規制など、都民のニーズに的確に対応した施策を先進的に進めてきたものと自負しておりまして、これからも都民の立場に立って必要な施策を積極的に展開してまいります。

○曽根委員 民間企業参入の例として今認証保育所のことを知事はいわれましたが、認証保育所について、知事は盛んに企業参入の一つの大きな典型としていわれているんですが、率直にいえば、保育料の高さ、それから施設面でも、都のほかの、都内の認可園に比べて大体五分の三ぐらいの保育室の広さ、保育士の労働条件についても、やはり認可園に比べると劣るという大きな弱点を持っていて、預けている保護者の方々は、認可園にあきができればそちらに移っていくというのが大半を占めているということは、いろんなマスコミの調査、報道でも明らかなとおりです。
 大体、新しい福祉の、企業参入でつくるというときに、そこで働く保育士さんなど労働者の賃金が今の認可園よりも劣っているということ自体、私は非常に大きな問題だと思うんです。これでは経済の活性化の点からいっても逆行だと思います。同時に、多くの圧倒的な多数の保護者にとっては、負担の問題や保育の質の問題で不安があるという声は事実として上がってきていますので、やはり民間企業参入の問題点を改めてえぐっていく必要があるというふうに私は強調したいと思うんです。
 それから、知事は、ほかの地域のことをそのまましゃくし定規にまねしてもしようがないというふうにおっしゃっていますけれども、福祉や医療の基本にかかわる問題というのは、どの自治体でも財政、確かに財政難もありますが、そこに悩みながらもいろいろ頑張っているわけです。
 一例だけちょっと紹介したいんですけれども、私たち、最近、宮城県の方に調査に行ってまいりました。宮城県、私たち別に与党じゃないんですけれども、ここでもやっぱり福祉の分野についての、その部分についての努力をしているんですね。宮城県では、日本一の福祉先進県づくりを目指すという、浅野さんという知事の七年間の努力があるんですよ。「みやぎの福祉・夢プラン」というんですが、ここにも「日本一の福祉先進県づくり」というふうに掲げてあります。具体的にいろんなことをやっているわけですが、例えば、今後求められる考え方というところで、行政は、重い障害があるなど、最も支援を必要とする人々が今何を求めているのかを掘り起こし、把握し、それにこたえることができるよう、効果的に施策を推し進める必要があるということを強調しています。そして、お聞きした担当者の方は、要するに、重度障害者に一人当たり行政コストが幾らかかるのかというようなやり方は絶対にやらない、こういうやり方から脱却するためにこのプランをつくったといっているんです。
 私はこれを聞いて、これはたしか四年前ですか、東京都広報にまで重度障害者の一人当たりのコスト、これが一千万円近いんだという、実際にはその制度を全部利用できない、架空の計算をしてまで東京都広報に数字を載せた東京都の姿勢と対照的だと思うんです。これはまさに自治の、自治体としての基本姿勢の問題です。
 じゃ、具体的に何をやっているかというと、この考え方のもとに、筋肉が萎縮していく難病中の難病であるALS、筋萎縮性側索硬化症というんですが、最後は呼吸器まで動かなくなっていくという難病の患者さんのトータルなケアのプランをつくっているそうです。こういうやり方こそ東京都がきちんとやっていくべきじゃないか、この姿勢に学ぶべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
〔発言する者あり〕

○山本委員長 ちょっと待ってください。速記をとめて。
〔速記中止〕

○山本委員長 速記を始めてください。
 曽根理事、発言をしてください。
〔発言する者あり〕

○曽根委員 いや、今私が質問したところなんですけれども。
 私は、だから、これを一つの例としていっているわけですが、先ほどから一貫して私申し上げているように、自治体として、最も困難な状態にある住民の立場に立った行政を行うということが基本姿勢でなければならないと、このことをいっているわけで、別に福祉だとか医療だとかに限っていっているわけじゃないんです。
 こういう自治体が現に県段階でも取り組まれている、取り組んでいる自治体があるということに東京都としてやはりきちんと学ぶべきではないか、そういう姿勢に立つべきではないかと申し上げているんです。いかがでしょうか。

○前川知事本部長 私は、事実をもってお話をされた方がいいと思うんですが、東京都がやっている福祉は、例えば心身障害者の施設については緊急整備をやるとか、あるいは早朝保育であるとか深夜保育が必要な人については駅前に認証保育所をつくるとか、まさに今いわれたように、困っている人々が必要なサービスを受けられるように最大限の努力をしている、それが東京都の福祉であります。

○曽根委員 緊急整備は私たちも当然のことだと思いますし、これが提案されたときから、もっと充実、拡充をと……。(発言する者多し)

○山本委員長 静かにしてください。

○曽根委員 実際にはこの緊急整備計画は目標どおり進まなかったので、追加して延長したわけですよね。そのことは私たち求めてきたわけですよ。それは当然必要だと、基盤整備は。しかし、基盤整備をやる必要があるということを理由にして、これまで営々と行ってきた経済給付的事業を打ち切ることでどうなったかということを先ほど申し上げたわけです。
 私たちは、制度や施設整備、必要なものはやらなきゃなりませんが、それと同時に、それを支える、利用する方々の経済的な困難をきちっと埋め合わせる、軽減するための経済給付的事業はどうしても両方必要だという立場で申し上げているわけです。宮城県は、このような重い状態の人をきちんと行政がフォローするということが、県民全体、住民全体の福祉や医療の全体のレベルを底上げすることになるんだという確信を持ってやっているそうです。私は、東京都に、こういう姿勢に立ってきちっとやっていただきたいということを改めて強く申し上げておきたいと思うんです。
 石原知事が進めてきた福祉改革は、東京の自主的取り組みとか改革とかいうことでやってきましたが、宮城のような姿勢とやはり大きく異なっているというふうにいわざるを得ません。しかも、一方で、先ほども財政の問題をおっしゃいましたが、都市再生には新たな負担まで国に約束して、大盤振る舞いを進めているわけです。財政の問題で先ほど、自治体の財政が限界があるということでお話がありましたが、確かに、財政再建プランで財政問題を解決するということで、投資的経費について減ったのは事実です。しかし、いまだに知事の都市再生構想に基づく都心のオフィスビル開発や、また首都高速道路、国直轄事業への都の負担も全然減っていないわけですよ。
 私、計算してみましたが、知事の四年間で、例えば一例として、国の直轄事業負担金、それから首都高速道路公団への財政支援、これが四年間で三千二百七十八億円ぐらいある。一年の平均で八百二十億円ですよ。これはちょうど経常経費の半分を占めた福祉関係の削減額とほぼ同規模です。
 したがって、財政難を理由にした第一次プランによる切り下げが、一方ではこうした国直轄事業や首都高速道路への出資、これは知事も問題があるというふうに発言をされたことがあるわけで、本気でもって改善を国に働きかけるとか、それこそ国にきちんと物をいうとかいうふうにやっていれば、もっと改善の余地があったはずであります。こうした取り組みをきちんとやらないで、都市再生にさらに羽田空港の再拡張など新たな負担を約束するという姿勢こそ問題だと思います。
 知事が進めていこうとしているこれからの都市再生の方向は、昨年私も予特で申し上げましたが、一つは、都の財政負担がこれからどこまで拡大するかわからないという大問題があります。それから、環境問題でも、ヒートアイランド問題もありますし、それから地球の温暖化の問題でも二酸化炭素の発生を抑制できないという問題など、環境問題も深刻になります。何よりも東京都の都市計画として、都心を中心に車交通が、大変な量の自動車交通が発生してしまう。大気汚染その他の環境問題も一層深刻になるという問題を抱えているわけで、都市再生による、都心のいわばコントロールされていない拡大については、改めてこれについてのコントロールが必要だ、都市づくりはコントロールが必要であるということは、多くの専門家が今いい始めているところで、この点についても見直しが当然必要だと思います。
 一例をいえば、昨年、NHKの「あすを読む」という夜遅い番組がありますが、ここでも、斎藤さんという解説委員の方が、都心の都市再生問題について、まちは生き物である、経済的側面で推しはかることはできないんだ、都市の主人公は建物や施設ではなく、そこに暮らし、そこに活動する人である、何よりも生活者の視点を大切にしてほしいということを述べているわけで、こうした声にきちんと耳を傾けて進めることが必要だと。
 知事のやり方に対しては、多くの都民から、都立大学の問題とか銀行の新構想の問題とか、やっぱり乱暴だという声が出ています。こういう声も聞いて、改めて都民の要望に基づく都政に立ち戻ることを求めて、質問を終わります。

○山本委員長 質問はないようですので、曽根理事の発言を終わります。

○山本委員長 次に、大河原雅子委員の発言を認めます。
〔発言する者多し〕

○山本委員長 静かにしてください。

○大河原委員 新しい自治制度の方向性を議論してまいりました本委員会のまとめに当たって、与えられた時間は非常に短いわけですが、生活者ネットワークとして、これまでの議論を踏まえるとともに、今日的な視点を加味しながら総括的な質疑を行っていきたいと考えております。
 昨年十一月に、第二十七次地方制度調査会の最終答申が出されました。ここでの議論は、今後の地方自治制度のあり方に関する答申ということで、平成十七年四月以降の合併促進や地方自治組織、都道府県合併、道州制についてでございました。
 二〇〇〇年の分権一括法の施行に集約される、機関委任事務の廃止を基本とする分権改革で棚上げされてしまった課題があると思います。これは大きく分けて二つあるというふうに私は考えます。一つは、今も進行形、INGの形でございますけれども、これまでの、税源移譲、国庫補助負担金、地方交付税といったいわゆる三位一体の改革問題です。そしてもう一つは、現行の二層制を前提とした自治体組織のあり方でございます。
 これらの進行状況の感想を述べさせていただくとすれば、変化や改革の動きは遅いながらも、事実としてあるというふうに思いますし、それがよりどころとなると私は思います。一つ目の財源問題も、これまで質疑がありましたように、極めて不十分ですが動き始めております。そして二つ目の組織論については、例えば、私ども生活者ネットワーク、本来の住民自治であり、将来的にも目指されてしかるべき、価値あるというふうに思いました近隣政府論、日本都市センターの研究などもご紹介させていただいておりますけれども、この近隣政府論が答申に盛り込まれました。これらの動きを指摘することができると思います。
 しかし、これまでの改革や議論を私なりに総括いたしますと、同じ制度について、あるいは同じ現象について議論してきてもなかなかしっくりいかない。どこか私には違和感がございました。それは、どこを起点として発想しているか、その点だと思います。その違いが大きく明らかになったのではないかというふうに思うわけなんです。この間の財源移譲にせよ、また組織改革にせよ、分権、自治が語られても、国にある発想の起点は、市民や自治体を起点とするのではなくて、国と役所を起点としてどう仕事をおろしていくかという、そういう発想でしかなかったのではないか。ここに国における分権論の限界があるというふうに思っております。
 私はまた、自治体合併論、道州制、そして広域自治体にかかわる議論においても、ある意味で国の分権論はやはり上から発想する傾向が顕著でして、とりわけ道州制などについては、枠や形を先行させるのではなくて、広域連合などの制度を活用して、まさしく具体的な自治体の共同行動を積み上げること、こうしたことが非常に重要であると考えてまいりました。市民との協働という、これを積み重ねることも同様に重要なことでございます。
 例えば、八都県市における常設事務局の設置の提案ですとか、また課題として、食品安全問題についても首都圏FDA構想ともいうべきものを提案してまいりました。食品の分野でいえば、首都圏の自治体が連携を図れば国の仕事を凌駕するものになるであろうということは、どなたにもご承知いただけることかと思います。このような事柄は、実は食品の安全に限らず、他の分野でも可能であり、極めて有効であると考えておりますので、一つ、水の分野でお話をさせていただきたいと思います。
 さきの十二月の都議会で、八ッ場ダムの事業費改定への同意については、残念ながら十分な議論があったとは私には思えません。実は、これを水の分権の視点で考える、事業費の改定問題に対する是非の立場を超えて、新たな視点を見出すということが重要ではないかと思います。
 知事は、さきの議会では、ダムについての都の独自調査についてはやぶさかではない、そんな旨ご答弁されておりますけれども、肯定的な姿勢を示されることについては、私は評価をしたいと思います。しかし、実現はいたしませんでしたので、これから先もこの可能性はぜひ残しておいていただきたい。そして、その際に当たっては、他の自治体と共同して、国のデータに頼らず、再調査を行うべきだと考えております。
 実は、埼玉の上田知事にお目にかかる機会もありまして、このこともお話ししましたが、上田知事も、データが何しろ同じものなので、同じ結果が出てしまうのではないかと、その懇話会を設置された折にお話をされておりました。先日、この懇話会の最終的な報告が出まして、知事がおっしゃっていたように、ゴーサインが出るような結果ですが、非常に疑問に満ちた、委員の方たちの悩み方というのも、その報告書から読み取れるものでございました。
 時代は高度成長期を過ぎて、低成長の少子高齢化の時代となっておりまして、補助金漬けの上に、どんぶり勘定である国直轄の公共事業としてのダム事業は、見直しの制御システムもなくて、百害あって一利なし、そのように思うわけなんです。自治体の水需要は伸びどまり、減る方向にすらありますのに、国がつくった治水計画では、例えば利根川上流に八ッ場ダムのような大きさのダムをあと五つも六つもつくらなければならないような治水計画なんですね。事業費の精査、市民への説明責任、環境との調和といった現在から将来への課題を考えますと、国に一元化したダム事業の限界が明らかになっている、そのように思います。
 国に一元化した事業であるからこそ、省庁の縦割りの弊害は明らかです。相変わらず、農業用水を前提とした水利権が、柔軟な水の運用を邪魔しているのではないでしょうか。むしろ、水源や流域ごとに広域連合を形成して、水源開発事業を国からもぎ取ってくる、このぐらいの積極的な検討をすべきだというふうに私は考えております。
 そこで、知事に伺いたいと思いますが、国のもとで、ダム、河川水、農業用水、地下水、水道水、雨水、これらの縦割り行政の弊害に、ある意味で水の分権というものが大きな課題になっているというふうに思うわけなんですが、現行制度の基本問題について、知事のご認識を伺いたいと思います。

○石原知事 水の問題でありますけれども、昔から、国を治める者はまず水を治めなくちゃならぬといわれているように、国民の生活の基本にかかわる水の問題は、国家にとっても自治体にとっても百年の大計に属するものだと思います。水利権の問題一つとりましても、上流と下流では、ともすれば利害が対立しがちでありまして、広域連合だけで調整できるほど簡単なものではなくて、基本的には国がその責任を、調整も含めて果たすべきであると考えております。
 ただ、経費を負担するなど関係する自治体としても、国に一切を任せていいという話ではありません。必要な説明も求めまして、すべき主張はしていって、住民に対する責任を果たしていきたいと思います。
 これはちょっと場所が違いますけれども、東京は東京なりにある調査もいたしておりまして、それは予算委員会でも質問があったら答えさせていただきます。

○大河原委員 群馬県にある古いダムですが、それは建設費に二百五十億円。できて水をためて活用しておりますけれども、地すべりが起きて、国は、三百八十億円、国直轄で地すべり対策に使っております。本当に疑問のあるダムというのは、最初からきちんと精査する必要があるというふうに思っています。
 広域行政への対応というところでは、青森県、岩手県、秋田県の三県から成る北東北地域においてさまざまな取り組みが行われております。本委員会でも紹介がありましたけれども、平成十二年の二月には、ここ北東北広域連携推進協議会を設立し、海外出張所の共有化や専門研究機関同士の人事交流など、具体的な交流、連携を進めていると聞いております。こうした取り組みについて、東京都としてどのようなご見解をお持ちでしょうか。

○前川知事本部長 北東北三県では、お話しの点のほか、産業廃棄物対策など種々の広域的な連携に努めていると聞いております。これは今、全国各地で自治体が、それぞれの地域の実情に応じて連携を進めているその一例であろうかと思いますが、首都圏においては既に、ある意味では全国の先頭を切って八都県市で広域防災対策、ディーゼル車規制などにつきまして具体的な成果を着実に上げてきており、今後とも努力してまいりたい、こう考えております。

○大河原委員 次に、地制調の議論の二つ目に入りたいと思いますが、さきにも触れましたが、今回の答申が触れた近隣自治組織について、これは私どもも近隣政府論を踏まえた議論を支持しているわけで、一定の評価をするものでございます。しかし、冒頭意見を申しましたように、この答申にも色濃く官僚的なところ、上からの分権的なところが散見されます。そのままでは使えないというふうに思うわけなんですが、この組織の制度設計に当たって、各地域で、市町村だけでなく、住民やNPOなどとも多元的、重層的に議論しながらつくっていかなくてはならないのではないか、そのように考えております。
 今後、近隣自治組織が一般的な制度として導入が図られれば、都内の基礎的自治体でも活用すべきだと考えております。この点のご見解はいかがでしょう。

○前川知事本部長 さきの第二十七次地方制度調査会答申で示された地域自治組織でありますが、これは、今進められている市町村合併の推進とも関連をして議論されているものでありますけれども、行政と住民との協働の推進などを目的として、基礎的自治体が任意に設置できるとされております。お話しの一般制度としては、住民の意見を反映させるための地域協議会などを設けることとなっております。
 現在、国でその具体化に向けた検討を行っていると聞いておりますが、今後制度化された場合には、それぞれの基礎的自治体において自主的に検討すべきものであろうと考えています。

○大河原委員 住民に身近なレベルの自治を充実することは、大都市地域においても重要な課題です。きょうの委員会でもなかなか、東京都から地域への分権というところでこの住民自治の問題が出てきませんでしたけれども、例えば私が住んでおります世田谷区は、人口八十万人を超えます。しかし、これまで、地域の特性に合ったまちづくりを進めるために、全国に先駆けての市民参加のまちづくりを進めるというところで他の自治体に先んじているというふうに考えてきましたし、区内にも五つの支所がありまして、その総合支所からさらに分派した出張所というところを持っています。行政サービスを住民に近いところで行うというところですけれども、これはドイツなどに見られる地域事務所というものに考えられるのではないか。そして、今の近隣政府論を考えれば、こういった地域に細かく住民が議会をつくっていく、こういったことが考えられるのではないかと思っています。それぞれの区においても、近隣自治組織の活用が求められている、そういう時代ではないかと考えます。
 これまでこの委員会でも特別区のあり方が議論されてきましたが、将来の区と都のあり方を検討するに当たっても、こうした住民自治の活性化の観点が必要であるというふうに考えます。この点の見解はいかがでしょうか。

○前川知事本部長 大都市におきましても、基礎的自治体における住民自治が重要であると、これはお話しのとおり、だれしも異論のないところであろうと思います。ただ、一方、東京は、千二百万人の都民が暮らす生活の場であるとともに、政治、経済、文化などの諸機能が高度に集積した、他に類を見ない大都市でございます。したがって、将来の都と区のあり方を検討するに当たっては、ご指摘の住民自治の活性化という視点はもちろん重要でありますが、大都市の総合性、一体性の確保という観点を堅持することも必要であろうと考えています。

○大河原委員 大都市の総合性、一体性の確保と、それから住民自治の活性化という両方の観点で進めるというご答弁なんですが、やはり自治体から見る東京都というのは大変大きな壁でございます。ぜひ住民自治の活性化というところにも、自治体の優先権といいますか、補完性の原理でいえば、自治体優先の原理、これをぜひお忘れなきようとお願いしておきます。
 最後に、最初の議論に戻りたいと思うんですけれども、分権改革の次のステップは、改革を市民や基礎的自治体に起点を置いて考えていくべきだというのが、私とまた生活者ネットワークの考え方でございます。そして、東京都は世界最大の自治体としてこのことを行い、また推進していく力もありますし、また大きな義務というのもあるんじゃないかというふうに考えます。こうした基本を明らかにするのが、これまで何度も主張してまいりましたが、自治基本条例の制定であるというふうに思うわけなんです。
 東京都も積極的に検討すべきではないかと思うわけですが、こうした中で、東京都内多摩地域では、市民と自治体が自治基本条例をつくっていこうという動きが活発でございます。もちろん、こうした動きは高く評価すべきだと思いますが、知事は、この東京にこうした自治基本条例をつくる自治体がたくさんふえてくる、また東京都自身も自治基本条例をつくるといったようなことをどのようにお考えなのか、伺わせてください。

○石原知事 おっしゃったような多摩における動きの具体的な内容については、私よく存じませんが、地域の住民が属する自治体に積極的に参加し発言する、その意思を自治体の行政がそんたくするというのは非常に大事なことだとは思います。ただ、それが具体的にどういうふうにあらわれてくるかも問題だと思いますけれども、いずれにしろ、今、地方分権ということがいわれて、国は国で足踏みしておりますし、国と地方の関係はまさに今混沌として、これから何が生まれてくるかという段階でありまして、三位一体改革の無内容もそれでありますけれども、これがどういうタイムスパンでどういう形に収れんされていくかは、なかなか予断を許しません。
 いずれにしろ、繰り返して申しますけれども、例の地方分権一括法で、税財源の分野は中長期である。中期というのは、国会でどんなに早くても五年、長期になると半世紀かかってもできないというのが実態でありまして、こういう時期にただ漫然と国の動きを待つのではなくて、地方の主導によって真の地方主権を確立していかなければならないと思っております。しかし、今、拙速に個々の自治体が幾ら理念的な条例をつくっても、それが果たしてどういうふうに束ねられて大きな連帯になっていくか、まあ、でき上がってきたものにもよるんでしょうけれども、いずれにしろ、条例あるなしにしろ、自治体というものが歴史的な連帯感を持って国に働きかけていくことは必要だと思っております。

○大河原委員 知事がおっしゃるとおり、私も、理念ばかりの条例では何の役にも立たないというふうに思います。自治の基本を定めるということは大変重いことでございますので、本当の意味での改革を国に向けても進める、そしてまた自治体に向けても進めていくこと、このことをまずやっていかなくてはなりません。
 また、よく国を治める者はまず水を治めるという言葉のご引用でしたが、これもまた真理だと思います。ずさんな治水計画があって、政・官・業癒着の利権構造の集積が、集約がこういったものになっております。そして、もし知事の構想にある人口三千三百万人の首都圏メガロポリスといったものが、水を治めることについて、このことについて国に依存したままで進めるというのであれば、それはやはりもう一度考え直していただきたい。
 昨日、群馬の小寺知事が記者会見で、八ッ場ダムの変更案は二月の議会に出さない旨を発表されておりますけれども、何が自治なのか、何が国と戦うべき課題なのか、その中にぜひとも、古い制度ですけれども、水利権の許可制度、このがんじがらめの制度があるわけですね。ぜひ新たな枠組みで、新しいデータで科学的に検証をしていただきたいというふうにお願いさせていただきまして、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

○山本委員長 大河原雅子委員の発言は終わりました。
 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○山本委員長 異議なしと認めます。よって、本件に対する質疑は終了いたしました。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後五時三十九分散会