行財政改革基本問題特別委員会速記録第二十一号

平成十五年七月十八日(金曜日)
 第四委員会室
 午後一時四分開議
 出席委員 二十三名
委員長立石 晴康君
副委員長大木田 守君
副委員長鈴木 一光君
副委員長和田 宗春君
理事富田 俊正君
理事鈴木貫太郎君
理事吉田 信夫君
理事こいそ 明君
理事内田  茂君
小磯 善彦君
近藤やよい君
新井美沙子君
遠藤  衛君
大西 英男君
大河原雅子君
河西のぶみ君
相川  博君
星野 篤功君
渡辺 康信君
石井 義修君
山崎 孝明君
松本 文明君
木村 陽治君

 欠席委員 なし

 出席説明員
知事本部本部長前川 燿男君
次長只腰 憲久君
企画調整部長高橋 道晴君
参事野口 宏幸君
参事新行内孝男君
参事岩井 壯三君
自治制度改革推進担当部長平田  章君
総務局局長赤星 經昭君
総務部長大橋 久夫君
行政改革推進室長石渡 秀雄君
IT推進室情報企画担当部長木谷 正道君
IT推進室電子都庁推進担当部長永田  元君
人事部長大原 正行君
行政部長村山 寛司君
勤労部長大塚 孝一君
財務局局長櫻井  巖君
経理部長佐藤  広君
主計部長熊野 順祥君

本日の会議に付した事件
行財政改革の基本的事項についての調査・検討
  新しい自治制度の方向性について(質疑)

○立石委員長 ただいまから行財政改革基本問題特別委員会を開会いたします。
 初めに、先般の人事異動に伴い、所管局幹部職員に交代がありましたので、紹介いたします。
 まず、知事本部長から、交代のありました幹部職員の紹介があります。

○前川知事本部長 さきの人事異動で異動のございました当本部の幹部職員をご紹介申し上げます。
 企画調整部長の高橋道晴でございます。参事で企画調整担当の野口宏幸でございます。参事で特命担当の新行内孝男でございます。自治制度改革推進担当部長の平田章でございます。
 なお、国政広域連携担当部長の野澤直明でございますが、公務出張のため、本日の委員会は欠席とさせていただいております。
 以上、どうぞよろしくお願いいたします。
〔理事者あいさつ〕

○立石委員長 次に、総務局長から、交代のありました幹部職員の紹介があります。

○赤星総務局長 去る六月十六日付の人事異動に伴いまして交代いたしました総務局の幹部職員をご紹介させていただきます。
 総務部長の大橋久夫君でございます。行政改革推進室長の石渡秀雄君でございます。IT推進室電子都庁推進担当部長の永田元君でございます。人事部長の大原正行君でございます。行政部長の村山寛司君でございます。
 どうぞよろしくお願い申し上げます。
〔理事者あいさつ〕

○立石委員長 次に、財務局長から、交代のありました幹部職員の紹介があります。

○櫻井財務局長 去る六月十六日付で異動のありました財務局の幹部職員をご紹介申し上げます。
 経理部長の佐藤広でございます。主計部長の熊野順祥でございます。
 以上でございます。よろしくお願い申し上げます。
〔理事者あいさつ〕

○立石委員長 紹介は終わりました。

○立石委員長 これより、東京の将来像を展望し、社会・経済情勢の変化に柔軟に対応する都政を実現するため、行財政改革の基本的事項について調査・検討を行います。
 本日は、これまでの論点質疑や参考人意見を踏まえ、到達点を整理するため、お手元配布の会議日程のとおり、新しい自治制度の方向性について質疑を行います。
 本件に関して資料をお手元に配布してあります。
 資料について理事者から説明を求めます。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 お手元に配布させていただきました資料についてご説明させていただきます。
 これは、地方分権に関する最近一年間の動きを簡単にお示ししたものでございます。
 まず、資料の冒頭にお示ししておりますが、平成十四年六月二十五日に、経済財政諮問会議がまとめた「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇二」の中で、いわゆる三位一体の改革案を今後一年以内を目途に取りまとめることといたしました。
 これ以降、地方分権改革推進会議を中心に改革案の検討を進めることとなり、資料の二番目でございますが、十四年十月三十日に「事務・事業の在り方に関する意見」が提出されております。
 また、資料の中ほどでございますが、十五年六月六日には「三位一体の改革についての意見」が提出されました。これは、地方分権改革推進会議における三位一体の改革案の結論といえるものでございますが、税源移譲について具体的な内容に言及しておりません。
 これに対しまして、資料の囲みの部分でお示ししているように、地方税財政改革の実現に向けて、都議会を初め多くの団体が緊急に意見表明を行ったところでございます。
 一方、上から三つ目にお戻りいただきますが、第二十七次地方制度調査会は、都道府県合併や地域自治組織など、地方自治制度に関してあらゆる角度から検討を続けており、十五年四月三十日に「今後の地方自治制度のあり方についての中間報告」を行い、さらに十五年五月二十三日には「地方税財政のあり方についての意見」を提出いたしました。今後、この秋に予定されている最終報告へ向けて議論を深めていくところです。
 こうした一連の議論を踏まえまして、一番下でございますが、十五年六月二十七日に、経済財政諮問会議がまとめた基本方針二〇〇三が閣議決定され、三位一体の改革案が示されたところでございます。
 主な内容につきましては記載のとおりでございます。ご参照いただきたいと思います。
 以上、簡単ではございますが、資料のご説明を終わらせていただきます。

○立石委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより質疑を行います。
 発言を願います。

○大西委員 我が行財政改革基本問題特別委員会が平成九年十一月に発足をしたわけでございますけれども、それ以降のさまざまな審議の経過を踏まえまして質問させていただきたいと思いますが、多少時間がかかるかと思いますけれども、お許しをいただきたいと思います。
 行財政改革基本問題特別委員会は、平成九年十一月の発足以来、一貫して東京都の行財政改革に取り組んでまいりました。とりわけ、平成十三年十月の再スタート以来、本委員会が取り組んできたのは、第二次改革と位置づけ、都政百年の計を考える行政改革であり、自治制度の根本にさかのぼり、都政を中長期的視点から改革するというものであります。
 昭和二十二年、新憲法のもとに地方自治が保障されて以来、私たちは、五十年余の時間を地方自治体と密接にかかわりながら過ごしてまいりました。平成十二年の第一次分権改革により、国と地方はようやく法的には対等、協力の関係となりました。しかし、この改革はいまだ緒についたばかりであり、実態としては、平成十二年四月の地方分権一括法成立後も、国と地方の役割分担の見直し、税財政制度改革など多くの課題が積み残されたままになっています。
 地方が、みずからの財源とみずからの責任により主体的に行財政運営を行う地方主権を確立するため、私たち地方自治に携わる者が率先して国民的な議論を巻き起こし、自治制度改革を推進していかなければなりません。
 二十一世紀は、東京を初めとする大都市が、我が国、そして世界経済を牽引していく都市の時代であります。今後、世界の人々の半数以上が、百万人を超える大都市に集中するであろうといわれています。厳しい、激しい都市間競争の時代を迎え、大都市経営の向上を図り、大都市自治の活性化を図ることがますます重要になっています。このため、都として、今後の大都市経営のあり方、大都市における新たな自治の姿を積極的に提案していかなければなりません。
 このような認識のもと、中長期的視点で国と地方のあり方を見直し、自治制度改革を進めていくことが真の行政改革であり、国と地方を通じた真の構造改革であることは、我が党がかねてから主張してまいったところです。
 本委員会では、この二年近くの間、新たな自治制度の姿を積極的に議論してきました。大都市自治のあり方、広域、基礎的自治体のあり方など、開催ごとにテーマを絞って、中身の濃い討論を行いました。また、ここ三回にわたっては、六名の学識経験者を参考人として招き、それぞれ専門的立場からのご意見を伺いました。
 今回は、これまでの質疑や審議経過を振り返りながら、三位一体の改革など最近の国の動きも踏まえ、今後の自治制度改革のあり方について取りまとめの質疑を行いたいと思います。
 そこで、まず伺います。都は、みずからが大都市自治、大都市運営を行っていく上で、その特性を含め、自治制度改革を進める必要性をどのように認識しているか、改めて伺いたいと思います。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 首都東京は、いうまでもなく日本最大の大都市であり、都はこれまでも、首都の特性を踏まえた大都市行政を行い、日本のリーダーとしての役割を担ってまいりました。しかし、人々の生活の広域化や経済活動のグローバル化といった社会状況の変化に対し、旧来の行政システムでは十分対応できなくなっております。
 首都圏の再生、日本の再生に向けた取り組みをより円滑に行うためにも、中長期的な視点から自治体のあり方、行財政運営のあり方を見直すことが必要であり、さまざまな議論を重ねながら東京の自治制度改革を進め、望ましい大都市自治、大都市経営を確立していくことが、都政の大きな役割であると認識しております。

○大西委員 ただいまのお答えを聞いて、都の自治制度改革に対する基本的な認識はよく理解ができました。今後とも一緒にスクラムを組んで自治制度改革を推進していこうと思う次第であります。
 さて、都市には人間の集積があり、企業活動や産業活動、そして、そこに住む人々の生活があります。大都市経営を進める上では、都市基盤や生活基盤の整備こそが最重要課題であり、社会資本整備を行い、都市づくりを進めることが、首都圏における大都市経営そのものであるといっても過言ではありません。
 過日、本委員会にお招きした参考人の市川宏雄明大教授からは、次のようなご意見をいただきました。今、都市再生が求められているのは、国全体に富を分配していく仕組みが崩れつつあるからである。二十一世紀は、均衡ある国土の発展ではなく、めり張りのある都市機能をつくる必要がある。まことに正鵠を射たご指摘であると思います。
 振り返ってみれば、国策としての全総、全国総合開発計画は、国土の均衡ある発展や過疎過密の解消などを合い言葉に、国土庁を中心に実施されてきました。しかし、四全総まで国が支援を続けてきたにもかかわらず、地方の拠点整備は失敗し、都市の過密は解消されるどころか、なおかつ東京に一極集中したという経緯があります。東京では交通渋滞や大気汚染などさまざまな都市問題が深刻化し、結果として首都圏全体の魅力を低下させ、さらには我が国の経済力の低迷や国際競争力の大幅な低下を招いてしまいました。
 今や我が国は、かつて経験したことのない深刻な不況の中にあり、深い閉塞感が漂っています。空港を初めとする首都圏の都市基盤整備は、国際都市として世界に大きくおくれをとり、東京は、世界都市どころか、アジアのリーダーとしての地位さえ危ういものにしています。
 今、我が国に必要なことは、首都東京及び首都圏の都市を再生し、これを我が国全体の再生につなげていくことです。その重要性は、石原知事も常々指摘をなされてきたところであります。
 このような中、国は、東京都の働きかけを受ける形で、遅まきながら都市再生の重要性を認め、平成十三年五月、小泉首相を本部長とする都市再生本部を設置しました。昨年三月には都市再生特別措置法が成立し、具体的な取り組みがようやく始まったところです。首都圏のように世界的にもまれに見る高いポテンシャルを持つ大都市圏は、この国の牽引役として最もふさわしいと考えます。首都圏の再生を図ることは、現在の我が国の危機的状況を打開する切り札となるはずです。
 都市の集積と過密とは明らかに異なるものであります。過密はいろいろな都市問題を引き起こしますが、集積は都市にとって必要なものであり、これを是とする視点に立ってこれからの都市のあり方を考えていかなければなりません。
 そこで伺います。首都圏を再生し、日本を再生していくためには、東京の集積のメリットを生かす都市づくりが重要と考えますが、いかがでしょうか。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 都市の魅力や活力は、多様な機能が集積することによって生み出されるものであり、首都圏地域を活性化するためには、人口、産業、文化などの集積が必要不可欠であります。
 そこで、首都圏自治体が広域連携を図りながら、都市基盤整備、環境改善など、東京を含む首都圏三千三百万人の集積のメリットを最大限に生かす都市づくりを行うことが重要であると考えます。こうした取り組みが、魅力と活力にあふれる世界都市東京の実現、ひいては我が国の再生につながると考えております。

○大西委員 東京の集積を生かした都市づくりについて、大都市経営を担う都として積極的に取り組んでいただきたいと思います。また、その際、国と地方の役割分担を明確にし、地方分権を着実に推進していく取り組みをあわせてお願いいたします。
 それでは、これより、自治制度改革の論点について幾つか質問をさせていただきます。
 まず、地方税財政制度改革についてお伺いします。
 地方主権を確立するには、地方自治体が、みずからの責任とみずからの財源で行政運営を行っていくことが基本となります。そのためには、国から地方への税源移譲を伴う地方税財政制度改革を行うことで自治体の自主財源の拡充を図っていくことが不可欠であります。
 国では、昨年六月に、国庫補助負担金、地方交付税、税源移譲を含む税源配分のあり方を三位一体で検討するとの方針が決定されました。この方針に基づき、一年間にわたって関係機関等での審議、調整等が行われ、ようやくことし六月に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三」において、三位一体改革の基本方針が示されました。この三位一体改革については、国庫補助負担金の廃止、縮減を行うとともに、あわせて、基幹税の充実を基本に税源移譲を実施することが明示されたという点では一定の評価をすべきものといえます。
 しかし、さきの都議会第二回定例会での我が党の代表質問に対する石原知事の答弁にもあったように、いまだ具体性に欠ける点が多く、不十分な内容といわざるを得ません。以下、主な問題点のうちの幾つかについて考えていきたいと思います。
 まずは税源移譲についてであります。
 今回の三位一体改革では、国庫補助負担金の廃止、縮減額について、おおむね四兆円程度を目途として行うとされています。この四兆円という金額自体がそもそもどういう根拠に基づくものなのか明らかでないのですが、より問題なのは、税源移譲については、廃止する国庫補助負担金の八割程度を目安として行うとしていることです。つまり、税源移譲額は四兆円を下回るものでしかないということです。抜本的な改革といえるためには、やはり国と地方の財政上の不均衡を解消するに足る十分な規模の税源移譲が行われなくてはならないと考えます。
 そこで、都は、税源移譲の規模についてどのように考えているのか、伺いたいと思います。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 現在、国と地方の歳出規模の比率はおおむね二対三であるにもかかわらず、国税と地方税との税収の比率は、逆におおむね三対二となっております。
 都としては、国から地方への税源移譲を行うことにより、国と地方のそれぞれの歳出規模に見合った税源配分を実現することが必要であると考えます。当面は、国と地方の税源配分をまず一対一にすべきであると考えております。

○大西委員 当面は一対一を実現するべきとのお答えですが、我が党の内田理事も副会長を務めておられる東京都税制調査会が平成十二年度の答申で示した税源移譲のシミュレーションによれば、国と地方の税源配分をおおむね一対一にするには、約七・二兆円規模の税源移譲を行う必要があるとされています。このようなことを考え合わせれば、今回の税源移譲は必ずしも十分な規模であるとはいいがたいのではないでしょうか。
 また、税源移譲に関しては、もう一つ重要な問題点があります。それは、税源移譲は基幹税の充実を基本に行うとしているにもかかわらず、肝心の具体的な税目が明記されていないことであります。地方税財政制度改革の根幹ともいえる税源移譲を確かなものとするには、移譲税目を早急に明らかに示すべきであると考えますが、そこでお伺いします。
 都としては、基幹税の税源移譲に当たっては、どのような税目が望ましいと考えるのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 基幹税の税源移譲でございますけれども、景気変動に対しまして税収が安定的で、比較的偏在性の少ない税源の移譲が望ましいと考えます。具体的には、消費税や所得税等から地方消費税や住民税等への税源移譲が必要であると考えます。

○大西委員 消費税については、財務省が非常に難色を示しているとの報道も見受けられるなど、移譲税目の決定には難航が見込まれますが、真に地方自治体の行財政基盤の充実強化につながるような基幹税目の移譲が実現されることを望むところであります。
 次に、地方交付税についてであります。
 地方交付税については、これまで、本来の目的を超えて財政支出を膨張させてきた結果、地方自治体の財政面での自立性を阻害し、国への依存を助長するとともに、国の地方交付税特別会計は、平成十五年度末で約四十六兆円にも上る巨額の借入金残高を抱えるなどの弊害を生み出しており、早急にそのあり方を改革することが課題であります。しかし、今回の三位一体改革では、単に交付税総額を抑制し、財源保障機能を縮小していくという方針を示したにとどまり、抜本的な見直しが何ら示されておりません。
 そこで伺いますが、都としては、地方交付税制度をどのように見直すべきであると考えるのか、お聞かせいただきたいと思います。

○熊野財務局主計部長 地方交付税制度は、一つには国による地方の財源保障、二つには自治体間の財政力の調整を図る、この二つを目的とした仕組みでございます。しかしながら、バブル経済崩壊以降、こうした本来の役割を超えて、地方単独事業の増加など景気対策や政策誘導に用いられるようになりまして、地方自治体の自主的な財政運営を妨げる傾向が生じております。
 また、ご指摘のとおり、交付税の原資が法定分では足りないことから、国の交付税特会の借入残高は、十五年度末で四十八兆円、そのうち地方負担は約三十二兆円となってございまして、将来の償還を考えると非常に重いものとなってございます。
 このように、地方交付税は制度疲労ともいうべきひずみが生じてございまして、地方公共団体のほとんどが交付団体であるということにも如実にあらわれていると考えております。
 現在議論されている三位一体の改革におきましては、お話のとおり、国庫補助負担金や税源移譲の話が中心でございまして、地方交付税制度の具体的な見直しには触れられておりません。交付税制度につきましては、自主的、自立的な行財政運営を確保する観点から、国から地方への税源移譲による自主財源の強化と一体として交付税制度が本来果たすべき役割に限定し、その総額を真に必要な水準まで縮減するなど、あり方を根本から見直すことが不可欠であると考えております。

○大西委員 さらに、我々大都市東京の自治体運営にかかわる者にとっては見過ごすことのできない問題点があります。それは、今回の三位一体改革は、国庫補助負担金の改革、地方交付税の改革、税源配分の見直しのいずれにおいても、東京を初めとする大都市特有の財政需要への配慮が全くなされていないということであります。
 以上述べてきたように、今回の三位一体改革は、その核心部分が不明確なままで検討が先送りされていることや、大都市行政の視点を欠いていることなど、多くの問題点を抱えているといえます。しかも、今後、予算編成過程で改革の内容がさらに後退し、三位一体改革そのものが有名無実となってしまうことさえも懸念されます。いわゆる第二次分権改革の行方が左右されかねない今こそ、地方自治体の側から強力にメッセージを発信し、国を動かしていくべきであると思います。
 そこで伺いますが、三位一体改革が真に実りあるものとなるように、都は国に対して強い態度で臨むべきであると考えますが、今後どのように取り組んでいくのかについて伺いたいと思います。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 このたび、ようやく税源移譲を含む三位一体改革が取りまとめられましたが、お話のとおり、具体性に乏しく、十分なものとはいえない内容でございます。国がなすべきは、国と地方の役割分担を明確にして三位一体改革を実現し、地方主権を確立することであると考えます。
 都は、これまでも、全国知事会や八都県市首脳会議などを通じまして、国に対する意見表明を行ってまいりました。今後も、八都県市を初め他の団体とも連携しながら、国に対して引き続き強く要求してまいります。

○大西委員 次に、大都市制度についてお伺いします。
 冒頭にも申し上げたとおり、日本を代表する大都市である東京を再生することが、ひいいては我が国の再生につながる重要なかぎとなります。まさに我が国の将来は、東京の都市機能をどのように強化していくかにかかっているといえます。東京が都市としての魅力と活力を高め、人、物、金、情報を引きつけることで国際的な都市間競争に勝ち抜ける世界都市となるためには、都市基盤を整備するとともに、そこに住む人々が快適に暮らせるための生活基盤を整備していくことが、大都市行政の重要な課題であるといえます。
 東京の大都市地域には、他の都市をはるかに上回る人口、産業等の集積と、それに伴う膨大な行政需要があります。このような財政需要に対応するため、都は、都制度のもと、大都市行政の総合性、一体性を確保する観点から、法令等に基づいて消防や上下水道の事務を初め、基礎的自治体の事務の一部をも担うことで首都東京の大都市経営を行ってきました。都市再生が差し迫った重要なテーマとなる中で、大都市東京の経営主体として今後都が担っていくべき役割は、より一層大きなものと考えられます。
 しかし、ここで留意しておくべきことは、東京の大都市地域における行政主体としては、都とは別に、特別区が存在しているということであります。先ほども申し上げたとおり、都市基盤の整備とあわせて、住民が快適に暮らせるための生活基盤の整備が東京再生の重要な課題であることからも、住民に身近な自治体である特別区と都が、明確な役割分担のもとに、緊密に協力して大都市の課題に対応していくことが不可欠であると考えられます。
 そこで伺います。東京の大都市行政において、都と特別区の関係はどのようにあるべきと考えるのかをお伺いしたいと思います。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 都と特別区の関係でございますが、特別区は、住民に身近な基礎的自治体として地域の行政を主体的に担っていくものと考えます。一方、特別区の区域は、複数の基礎的自治体により大都市を構成していることから、広域的自治体としての都が、大都市の総合性、一体性を確保する役割を担っていく必要があります。両者が対等、協力の関係を基本に共同して大都市の課題に対応し、効果的、効率的に住民福祉の向上を図っていくことが重要であると考えます。

○大西委員 特別区は、昭和二十二年の地方自治法施行により、原則として市と同一の機能を有する都の内部的団体として位置づけられました。その後、長年にわたる自治権拡充に向けた取り組みが行われる中で、都から区への事務移譲を進めるとともに、昭和五十年には区長公選制を実現するなど、その自立性を強めてきました。そして、平成十二年四月の都区制度改革により、特別区は、都の内部的団体としての性格を払拭し、地方自治法上の基礎的自治体として位置づけられることになりました。
 いうまでもなく、今後もさらに都との関係で解決していかなければならない課題は残されていますが、名実ともに基礎的自治体となったことで、特別区には自主性、自立性を発揮して個性的な地域行政を行っていくための一応の条件が整ったといえます。
 そこで伺いますが、今後、特別区には、これまでにも増して重要な役割が期待されると考えますが、都の考えを伺いたいと思います。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 特別区には、大都市地域における基礎的自治体として、地域の多様なニーズに応じた自主的、自立的な取り組みが求められます。今後とも、特別区におきましては、地域の特色あるまちづくりなど、住民に身近な課題について創意と工夫を生かすことで大都市行政の一翼を担っていくことが期待されると考えます。

○大西委員 なるほど、これから特別区が担っていくべき役割は大きいといえます。
 さて、このような今後の特別区に期待される役割の重要さを思うとき、それにふさわしい区の区域のあり方についても改めて考えてみることが必要ではないでしょうか。
 そもそも現在の区の区域がどのように形成されたかを振り返りますと、明治十一年に郡区町村編成法に基づいて十五区が設置されたことに始まるといえるのであります。その後、昭和七年に旧東京市の区域の拡張に伴い、二十区が新たに設置され、三十五区となりました。そして戦後、昭和二十三年に、戦災復興や区の自治権拡充への対応を図る目的で区の統廃合が行われ、現在に至る二十三区の区割りが決定されました。
 それから半世紀以上が経過し、東京を取り巻く社会経済状況が大きく変化する中で、現在の特別区は、人口、財政規模など、相互に大きな格差が生じています。また、住民の活動範囲の広域化に伴い、個々の特別区の行政区域の範囲内では、受益と負担が十分に対応しなくなりつつあります。いわゆる行政というものはサービス機関であって、質の高いサービスを提供するのが大きな役割でありますし、なおかつ、最少の経費で最大の効果をあらわす事業を行っていかなくてはなりません。
 このように考えると、将来的に特別区が基礎的自治体としてこれまで以上に大都市行政を担っていくには、その役割にふさわしい行財政基盤の拡充が求められることとなります。このため、東京の将来の大都市行政の望ましい姿がどうあるべきかという議論が必要であると考えます。
 いうまでもなく、特別区の再編は、それぞれの特別区がみずから考え、みずから判断していくべきものであります。しかし、二十三区の中の広域的行政、いわゆる基礎的自治体が担う交通や消防、上下水道といった事務を都政が担っているのですから、特別区の適正規模のあり方を踏まえ、中長期的な観点から統合再編についても考えていくことが重要であると思います。
 そこで伺いますが、区部を包括する広域的自治体である都としても、統合再編も視野に入れた検討を行っていくことが必要ではないかと考えますが、ご所見を伺います。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 特別区の統合再編についてでございますけれども、あくまでも住民の意思を尊重し、特別区みずからが自主的、主体的に取り組むことであると考えます。
 しかし、経済社会環境の変化や都市間競争の中で東京の活力を高めるために、特別区は、どのような区域でどのような事務を担うことが適切かの根本的な検討が必要であること、また、住民意思の反映と効率性の観点から、課題に応じて適切な意思決定が行われるとともに、受益と負担の関係ができるだけ明確になる範囲、区域を考える必要があること、さらに、基礎的自治体として個性あるまちづくりを進めるために、事務権限の拡大を図っていく上で行財政基盤強化が必要であること、こうしたことから、特別区のあり方を含めた統合再編について今後検討していくことが必要となっていると考えます。

○大西委員 大都市地域の基礎的自治体のあり方ということで、区部について述べさせていただきましたが、一方で、多摩地域の市町村についても、これからの分権型社会において、住民生活に密着したサービスの担い手として、地域のニーズに即した個性的な行政を展開していくことが期待されます。市町村が自主的、自立的な総合行政の主体となるには、行財政基盤の強化が不可欠であります。
 都においても、市町村合併は行財政基盤の強化を図るための有効かつ重要な選択肢であるとし、これまで各市町村の自主的な取り組みを積極的に支援してきました。一方、平成十七年三月末には、合併する市町村に対する支援措置を定めた市町村合併特例法の期限が切れることになっています。
 そこで伺いますが、現在の多摩地域における市町村合併の状況はどのようになっているのかについてお聞かせいただきたいと思います。

○村山総務局行政部長 都内市町村におきましては、平成七年九月、秋川市と五日市町が合併してあきる野市が誕生いたしまして、十三年一月には、田無市と保谷市が合併いたしまして西東京市が誕生いたしました。それ以降は合併のケースは出ておりません。
 現在、合併協議会は、法定、任意ともに設置はされてございませんけれども、西多摩地域広域行政圏協議会が合併の研究を行っているほか、幾つかの団体が自主的に研究を行っているという状況でございます。

○大西委員 東京都内では余り合併に向けた具体的な動きは進んでいないという認識を共有するものであります。
 ことし四月に第二十七次地方制度調査会が取りまとめた「今後の地方自治制度のあり方についての中間報告」においては、平成十七年三月の合併特例法の期限までにできる限り自主的な合併の成果が上がることが必要とし、その期限後の合併推進の手法についての考え方や、引き続き検討すべき事項が示されています。そして、ことし十一月には、これまでの議論を踏まえ、地方制度調査会としての最終報告が出されることになっています。
 そこで伺いますが、都としては、今後、市町村合併についてどのように取り組んでいくかについてお聞かせいただきたいと思います。

○村山総務局行政部長 先ほど先生お話がございましたように、東京都といたしましても、市町村合併というのは、行財政基盤の強化、新たな行政需要や広域的な行政課題への対応という点につきまして有効な選択肢の一つであると考えてございまして、市町村が住民意思を尊重しながら、みずから自主的、主体的に取り組んでいただきたい課題だというふうに考えてございます。
 これまで都は、市町村が行う検討や研究に対しまして、適切な助言、情報提供など必要な支援を行うとともに、ことし五月には、市町村の合併への取り組みの支援を強化するために、新たな施策を加えまして東京都市町村合併支援プランを作成いたしました。
 今後も、本年十一月に予定されております地方制度調査会の最終報告あるいは国の動きを注視しながら、引き続き市町村の自主的、主体的な取り組みを支援していきたいと考えてございます。

○大西委員 次に、首都圏における広域行政のあり方について伺います。
 いうまでもなく、我が国の地方制度は、広域的自治体である都道府県と基礎的自治体である区市町村による二層制がとられています。このうち市町村については、明治の大合併、昭和の大合併などを経て、今日まで大規模な統廃合を繰り返してきました。そして、今まさに、先ほどお話ししました市町村合併特例法によるいわゆる平成の大合併が進められているところであります。その一方で、都道府県はというと、明治以来、その区域をほとんど変えることのないまま現在に至っております。しかし、近年になって、都道府県のあり方を問い直すような議論が諸方面で活発になってきたように見受けられます。
 このような動きが出てきた背景として、一方では、市町村合併に伴い、基礎的自治体が規模を拡大し、より広範な事務権限を担うようになっていった場合に、都道府県の存在意義が問われざるを得なくなるのでないかという懸念があります。また他方では、首都圏のように大気汚染、交通渋滞など、都県を超える広域的課題が深刻化する中で有効な解決を図っていく必要性から、現在の都道府県とは異なる新たな広域行政の仕組みが求められているということがあります。
 そこで伺いますが、国、地方自治体、民間で、都道府県のあり方の見直しに向けて最近どのような動きがあるか、お聞かせいただきたいと思います。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 主な例でございますが、地方自治体といたしましては、本年三月に、青森県、秋田県、岩手県の北東北三県による広域政策研究会が中間報告を取りまとめ、三県一体化、東北州の創設等の構想を公表するなどの動きがございます。
 民間では、本年二月に、関西経済連合会が、関西州の設置を視野に入れた提案を公表するなどの動きがございます。
 また、国では、第二十七次地方制度調査会がことしの四月に取りまとめた「今後の地方自治制度のあり方についての中間報告」におきまして、都道府県合併や道州制をも視野に入れた提言を行うなど、都道府県のあり方について現在審議を行っております。

○大西委員 地方自治体や経済団体などによる検討の動きが盛んになってきただけでなく、地方制度調査会においても審議が行われるようになったということで、いよいよ広域的自治体がいかにあるべきかが本格的に議論される時代になったといえるのであります。都としても、都県を超える広域的課題の解決を図るとともに、首都圏の再生を総合的に推進していくには、現行の都道府県制度そのものの見直しをも視野に入れて、広域的自治体の将来像について検討を深めていくことが必要だと考えます。
 さて、このような中長期的な制度面での検討を行っていくとともに、一方で、自治体の責務として忘れてはならないのは、現下の行政課題に対して的確な対応を行うことであります。このため、首都圏が直面するさまざまな広域的課題に対しては、当面、現行の都道府県の枠組みの中で効果的な対応を図っていくことが重要であると考えます。その際、最も重視すべきは、八都県市の協議の場であります。例えば首都圏における環境対策、防災、社会資本整備などについても、このような場での議論を通じて総意のもとに取り組めば、大きな促進剤となり、いち早い解決が図られると考えられます。
 そこで伺いますが、首都圏における広域連携に取り組んでいくとの考え方についてお聞かせいただきたいと思います。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 都は、これまでも、首都圏全体を視野に入れまして、各都県市を超える広域的課題に関して、七都県市あるいは八都県市で連携してさまざまな取り組みを進めてまいりました。特に環境、防災などの分野におきましては、低公害車の普及促進やディーゼル車規制、さらには合同防災訓練などの共同の取り組みを積み重ね、着実に成果を上げてきております。今後さらに八都県市での連携を密にいたしまして、広域的課題の解決に取り組んでいく考えでございます。

○大西委員 本日は、自治制度改革の論点をめぐるこれまでの議論の総括として、地方税財政制度、大都市行政、基礎的自治体、首都圏における広域行政のあり方について順に伺ってまいりました。
 我が国は、明治以来、急速な近代化を図るため、中央集権的な行政システムのもとで、欧米へのキャッチアップに邁進してきました。しかし、成熟時代を迎えた今日、既にこのような行政システムは制度疲労を起こし、機能不全を来しつつあります。
 現在進められている地方分権改革は、このようなすべてにわたって国主導のシステムを大きく転換し、地方自治体の自主、自立に根差した、多様で個性的な地域行政を実現しようとするものであります。ようやく政府の三位一体改革の方針も示され、いよいよこれからが分権改革の真価が問われる正念場であるといえます。
 都を初めとする地方自治体は、改革の成り行きを単に国の議論にゆだねるのではなく、地方自治の現場の声を反映させるべく、国に対して積極的に働きかけていくことが重要であると考えます。また、このような現在の地方分権の動きに対して的確な対応を図る一方で、都は、東京及び首都圏の自治体の中長期的な将来像を見据えた、いわゆる東京の百年の大計といわれるようなものについてきちんと議論し、検討を深めていくことも重要であると考えます。
 そこで、最後に伺います。今後、自治制度改革に取り組む知事本部長の決意をお聞かせいただきたいと思います。

○前川知事本部長 これまでの議論を拝聴しておりまして、私どもは、この問題を考えるのは、やはり二つの視点があるんだろうと考えております。
 一つは、お話がありましたが、自治法の施行以来五十年以上が経過をしている。その中で都市化が進展し、またグローバリゼーションがどんどん進んでいく。そういう中で、住民の求めるいわば行政需要と行政の区域とが一致をしていない、必ずしも一致をしていない、これはもう明らかであろうと考えております。
 もう一点は、東京には、先ほどもお話がありましたが、人材、経済的な力、文化、いろんな多様な資源が集中をしているわけでありますが、この東京のポテンシャル、ひいては三千三百万の首都圏のポテンシャルを十分に顕在化して生かしていく、これが東京の再生、日本の再生にもつながるということであります。また、そういう自治制度を実現すべきであろうと。
 こういう視点に立って考えた場合に、これからどうするかということでありますが、私は、三つほどあるのかなと。
 一つは、今進んでいる、やっと進み始めた国の改革について、いろいろまだ問題はありますが、いわゆる三位一体の改革につきましても、それが本当に実現をするように、そのチャンスはまだあるわけでありますから、八都県市、さらには全国の自治体と連携をして今まで以上に積極的に働きかけていく、それが一点であります。
 次に、首都圏一体となった広域的な行政につきましては、これはどちらかといえば防災とか、あるいは環境とか、あるいは空港とか、そういった具体的な実践がいわば先行して進んでいるわけであります。この実践をさらに積み重ねていくことがむしろ必要ではないか。そういう実践の積み重ねで将来の方向が見えてくるのではないかというふうに考えております。
 三点目の特別区、市町村の再編の問題については、これは現実の利害関係がいろいろ絡んで大変難しいわけでありますけれども、やや抽象的になりますが、やっぱり現場を踏まえた大胆かつリアルな議論を、区市町村が中心となりながら私ども参加をしていわば積み重ねていく、これしかないというふうに考えております。
 いずれにしても、当委員会も含めて都議会の皆様とも力を合わせながら、都として中長期的な改革に取り組んでまいりたい、こう考えております。

○鈴木(貫)委員 私の方からも質問をさせていただきたいと思います。
 今、大西委員からさまざまな角度で質問がありましたので、ダブリングは避けたいと思いますが、私の方のきょうの質問の論点は、地制調、第二十七次地方制度調査会の四つの柱の中でも、特に地方税財政制度のあり方にごくリストリクト、いわゆる限定をした立場から問題を論じていきたい、こういうふうにきょうは考えております。
 平成十二年に地方分権一括法が施行されてきたわけでありますけれども、その根っこの部分、いわゆる中心的な、コアの部分の税源の問題が先送りにされたのが、そもそもの、いわゆるボタンのかけ違いがその中にあったものと私は思っております。そういう中から三年以上が経過しているわけでありますけれども、ここに来てようやく三位一体の問題も何となく入り口に差しかかったのかなという感がしないでもありませんけれども、何となく骨抜きにされたような感も強くいたしております。
 そういう観点の中で、私たち公明党も、都議会として片山総務大臣に、昨年ですか、乗り込んでいって、片山試案、五・五兆円の問題で頑張れと、こう激励に私たちも足しげく通い、そのときに、片山大臣から、できれば我が省の若手課長クラスとぜひ論議をしてもらいたい、そういう注文もあって、私たち代表で乗り込んで、副大臣室で優秀な官僚の皆さんと一緒に何度か論議をし合った経緯もありました。東京都に対する一極集中論だとか。
 しかし、官僚の皆さん方は、どうしても地方交付税の問題になると言葉を濁してしまう。自分たちの権益を侵されたくはない、そういう思いがありありと私たちうかがい知れましたけれども、改革の中身というものは、その中から私たちは感じ取ったことも事実でありましたし、それを踏まえて代表質問の中で私たちも訴えてもまいりました。
 そして今回、こういうことを踏まえながら、先ほど資料で冒頭説明をいただきましたけれども、きょうの、地方分権に関するこれまでの動きの中で、六月六日に東京、大阪両知事の共同アピール、地方自治体の対応というのがけいで囲んでありますけれども、六月六日からスタートしていますね。我が党は、六月十日に、ここにいらっしゃる石井幹事長、大木田さん等々、官房長官のところへ乗り込んで、三位一体改革に向けた緊急提言、じかに申し入れをしてまいりました。きょうはそんなことを私は申し上げながら進んでいきたいなと思っております。
 まず、冒頭申し上げたいことは以上でありますけれども、今回この特別委員会も、今、大西委員おっしゃったとおり、第二期目、私にとってみれば、私も第二ステップへの委員の仲間入りをしてずっと論じてまいりました。その間、我が党として、明治以来の東京、都政のあるべき姿論等々もやりましたし、それから東京に対する租税の還元率、地方と東京は、どんなに東京がバッシングを受けているのかと、そういうものも足しげく、論点を踏まえながら私たちも質問をし、また論点をえぐり出してきたことも事実でありました。そんなことを申し上げながら本題に入ってまいりますけれども、まず最初に、基本的な意義について承りたいと思います。
 それは、地方主権の確立を図る上で地方税財政改革の持つ意義、もう一度申し上げますと、地方主権の確立を図る上で地方税財政改革の持つ意義、この原理原則、原点の問題について、改めて私の立場から承りたいと思います。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 地方主権を確立するためには、各自治体が、地域の実情に応じて、みずからの財源とみずからの責任に基づき行財政運営を行うことが基本でございます。その観点から、税源移譲を伴う地方税財政制度の抜本的な改革を実現していくことが不可欠であると認識しております。

○鈴木(貫)委員 今、部長の答弁の前に、知事本部長からいろんな認識論が出ました。私たちがいら立つのは、もう認識とかそういう時代ではないということなんですよね。いわゆるアクション、行動に移さなければだめだということを私たち都議会公明党は常にいい続けてきたのであります。徹底的に動きなさいと。地方の雄として、知事を先頭にしてアクション、行動プランをつくって、全国を束ねて、そして動きなさいということを私たちは再三再四いっているんですけれども、どうもその動きがいまひとつ私たちの琴線に触れるような感じではないなという思いも、いら立ちが実は根っこにあるんですね、知事本部長、私たちは。そのことをぜひ感じていただきたいと思うんです。
 今ご答弁いただいた自主財源の強化、税源移譲による地方税収の確保が不可欠なことはいうまでもありません。今回の二〇〇三年のこの中の文章、これは先ほどから論じられているように、基幹税の移譲そのものは示された。格好だけはつけられた。しかし、東京都の主張と国の主張、それから税調石会長、みんなてんでんばらばら。特に政府の中の乖離というものは目を覆うばかりだと私は思います。そのことを私は指摘させていただきたいと、こうまず思うのであります。
 そこで、第二番目にお伺いしたい点でありますけれども、これまでも私は主張しておりますけれども、地方の自主財源を強化して、地方の自主、自立的な税財政制度を確立していくためには、課税ベースの広い、今指摘をした基幹税目の移譲が不可欠であるということは、もう論をまちません。いい続けてきたわけでありますから。
 そこで、都は、所得税、消費税、あの都税調の見解にしてもそうでありますけれども、その移譲を主張しております。その中で私が聞きたいのは、地方税体系のあり方を踏まえて--ここがポイントなんですね、地方税体系のあり方を踏まえて、都として、今私がいったその問題は、都が所得税、消費税等からの税源の移譲を主張しておりますけれども、どんな理由なのか、そしてまたその趣旨、原理原則をまずお伺いしておきたいと思います。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 地方税の望ましい税体系といたしましては、資産、所得、消費のバランスがとれた課税であること、税収が安定し、受益に応じた負担であること、税源が偏在しないことであるというふうにいわれております。税源移譲はこのような点を踏まえて行われるべきものであり、具体的には、所得税から個人住民税へ、消費税から地方消費税への移譲がなされるべきと考えております。
 先ほどお話もございましたが、平成十二年度の東京都税制調査会の答申では、個人住民税につきましては、地域住民が社会的費用の負担を分かち合い、受益と負担の関係を意識できる税目であること、地方消費税につきましては、地域振興の結果が税収に反映される税目であることなどから、これらの税が移譲財源としてふさわしいというふうにしております。

○鈴木(貫)委員 今お答えをいただいて、さらに聞きたいんですけれども、例えば都税調の方の中でも、七・二兆円という移譲があるわけですね。その中にたばこ税というのが入っているんですね、〇・二兆円。これについては何なんだろうか。たばこというのは、私がちょっと個人的に危惧をするのは、税率アップをしたりして、今までのような確たる要素が果たしてあるのかないのかという先行き不透明感が、どうしても私自身考えるものですから、この七・二兆円の中の〇・二兆円というものは、果たしてそこに、確たる数字の中にも入っているわけでありますが、その辺のご見解はどうなんでしょう。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 たばこ税でございますけれども、先ほどの税源の偏在性という意味では少ないものでございますけれども、税収規模が九千億円にも満たないものでございまして、平成十二年度の都税調の答申で示された今の数字でございますが、移譲されるべき税額七・二兆円に比べましても、極めて小さいものでございます。また、国税に占める割合も二%弱と小さいため、基幹税の充実を基本とする税源移譲において、移譲税目の第一に挙がるべきものではないというふうには考えております。

○鈴木(貫)委員 だから、基幹税目として住民税、消費税ということになるわけですよね。
 それで、たばこ税の問題は、いろんなところでいろんなふうに出されたものですから、私もざっと聞いてみたわけでありますけれども、地方分権改革推進会議のご答申では事実上税源移譲が先送りされるなどしていましたけれども、今回このような基幹税という、そういう移譲をかち取ったといえば、私はそのとおりだといえなくもないと思いますし、これだけは評価をさせていただきたいなと思いますし、石原知事、太田両知事が代表して、六月六日乗り込んでいった等々の、その中での、それからまた神野先生の生々しい、あの私たちの目の前での前日のやりとりのあの状況報告など、私は感銘を深くいたしましたし、また、残り五人の学者の先生方等々のいろんな理論づけの体系の言葉の端々から、東京のあるべき姿、また都市論等々についても、私たちはその中でいろんな分野から勉強をさせていただいたことも、この際私は高く評価させていただくと同時に、自分たちの血肉になったことも事実でありますので、諸先生方を呼んだことに対してのことを私は評価をさせていただきたいなと、こう思ってもおります。
 そういう中にあって、私たちは、今後ともやはり石原知事、先頭に立って、先ほど、東京都は全国の自治体の雄としてもう行動を起こす以外にないんだ、それ以外に選ぶべき言葉はないんだと私はいいました。ですから、基幹税の移譲、所得税、消費税等からの移譲を徹底的に、さらに工程表、ロードプランを中でつくって訴えていっていただきたいなと、これは願望にも近い言葉とはいいませんけれども、きちっとやっていただきたい、また我々もバックアップをさせていただきたい、こんなふうに私は思っております。
 そこで、第四番目でありますけれども、もう一つの大きな視点として、国、地方総体としての税収総額の枠組みの中で、地方の歳入に占める地方税の割合を広げていくという流れの中で税源の移譲は行われるべきだと私は考えています。そして、その中で考えるとするならば、税源移譲のあるべき姿論、これに対する都の基本的な考え、基本的な見解をまずお伺いしておきたいと思います。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 地方主権の確立のためには、現在生じている地方の歳出規模と地方税収との乖離を是正する必要があります。その是正を地方税の増税で行うならば、地方分権改革のために国民の税負担をふやすことになってしまいます。
 そこで、まず税源移譲を国庫補助負担金の削減や地方交付税の縮小とあわせて行うことにより、国民の税負担を全体としてふやさずに乖離を是正するべきであります。つまり、税収中立を前提として税源移譲を行うべきと考えております。

○鈴木(貫)委員 だから、部長、その中で今回の基幹税目の、その中の言葉はもう何もないわけですけれども、私たちが配慮していかなければならない視点として、先ほども論じておられましたけれども、都市再生の問題とか環境問題、それから治安対策など、東京が、大都市が当然必要とする財源、大都市特有の行政需要に対しての言及というものは、残念ながら今回何もない。これは代表質問の中でも知事がみずから答弁をなされていたと私は思います。そのとおりだと思います。
 そういうものをするならば、私は、もう一度申し上げますけれども、今回の三位一体論のこの問題については非常に不満足、そういうものでありますし、ただ、国の方が日本の国家像、国の形をどう持っていくかというものに、残念ながらまだまだ、分かれているがゆえになかなかまとまらないのかなと、百歩譲って考えてみても。そんなことが私として感じられなくもありません。
 そういう中で、もう一つ聞いておきたいんですけれども、とするならば、現行の税財政制度の中で、具体的に今度は聞きますけれども、東京都はどんな不合理な取り扱いがなされているのか、確認の意味で改めて私は聞いておきたいと思います。

○熊野財務局主計部長 都は、地方交付税の不交付団体であること、あるいは財政力が高いことを理由とした財源調整措置を受けてございます。具体的に十五年度の影響額で主なものを申し上げますと、義務教育教職員給与費等国庫負担金で百二十二億円、地方道路譲与税で四十億円などとなっておりまして、合わせて百六十三億円もの不当な財源調整措置を受けております。
 こうした極めて不合理な財源調整措置につきましては、三位一体の地方税財政制度改革をまつまでもなく、直ちに廃止するよう、国に対して強く要求しているところでございます。

○鈴木(貫)委員 それで、たしか神野先生も指摘をされておりました。課税力の高さにのみ着眼して財政力が高いというのは、大都市の膨大な財政需要を無視した誤った見方である、このように神野先生はぴしっとおっしゃっておりました。そのとおりだと私は思います。
 もう一つ考えてみますと、この中で、今、主計部長の答弁のほかに私は一つつけ加えておきたいんですけれども、負担と受益の関係を見ると、例えば今、道路財源の問題が出ていましたけれども、道路事業費の配分額を都道府県単位で比較してみますと、首都圏の一都三県や大阪などは、負担に比べ、当然事業費が小さい、いわゆる負担超過になるわけですね。渋滞を我々は急いで解消してもらいたい、しかし、必要なお金は十分に配分してもらえない、こういういら立ち。これに対して、大変申しわけないんですけれども、日本海側にある島根県、これは負担が小さい割に道路建設はどんどんどんどんと進む、大幅な受益超過という言葉が使えますね。こういう格差に我々はいら立ちを持つわけなんですね。そういうものがこれからの都市の課題の中で一つはめ込まれてしかるべきだと私は思っております。
 受益者負担というのは、いってみればこんなものは名前ばかり、地域の経済の活性化に役立つべきはずのところに税が回ってこないというところに、私は、今の状況の置かれている一つの証左がその中にあるのではないかなということを一つつけ加えさせていただきたいと思うので、紹介をさせていただきました。
 次に参りますけれども、そしてもう一つ私たちが常に気になるのは、今、東京と島根では、いみじくも首都圏、大阪圏と島根を比較いたしましたけれども、私は平成十年度の決算ベースでも承った記憶がありますし、一番新しい平成十二年度の決算ベース、一番新しい数字はそこしかないと思うんですけれども、東京と地方における租税の負担と還元の状況、一番新しいデータで実はこれ出てくると思うんですが、これをお示しいただきたいと思います。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 平成十二年度決算での住民一人当たりの租税負担額でございますが、都が全国で最も高く、百八十五万五千円であるのに対しまして、財政調整の結果、一人当たりの実質的な配分額は、租税負担額の三割程度の五十八万九千円にとどまっております。
 一方、他の道府県の中には、住民一人当たりの租税負担額三十八万五千円に対し、実質的な配分額が九十万二千円と、租税負担額の二倍を上回る県もございます。

○鈴木(貫)委員 なぜ聞くかといいますと、日本列島、いわゆるナショナルミニマムはおおむね達成していると私は思うんですね。もう一つ、新幹線がずっと通っていると、新幹線文化といわれるほど全国津々浦々に浸透しています。駅前は全くみんな同じ、こういう開発がずっと行われていることも事実だと私は思います。指摘をしておきますけれども。
 そういう中にあって、今一番新しいデータ、東京が百八十五万五千円の租税負担、一番少ない租税負担、高知県。名前はいわなかったけれども、私、はっきりいいましょう、高知県。いいますよ、今回。三十八万五千円ですか、これで東京都民は納得しないわね。単純に比較してみて、ますます、平成十年度、私も聞いたんですけれども、十二年度になると若干まだ乖離をしているという、そういうデータではないのかなと思います。
 しかし、冒頭申し上げたとおり、日本列島、成熟社会に入っている今日、ナショナルミニマムはおおむね達成しているじゃないかと。地方交付税の問題にこの後は入っていきますけれども、そういう状況を考えたときに、私たちは総務省の若手官僚と話したときに、一体あなた方は自分たちの権益をどこまで守るんですかと、彼たちは、そういう我々の問いに対して、余り私たちに都合のいい答えはいってくれません。制度はそうなっているんだからという私自身のとらえた言葉でありました。残念に思いました。
 これからもまだまだ若手官僚の皆さんと論議をしていくつもりでありますけれども、きょうはそのぐらいにしておきますが、そういう中にあって、私は、先ほどいった都市再生の問題、それから治安の問題、環境の問題エトセトラ、大都市特有の財源が一番求められている、二十一世紀の入り口に今立っているこの日本の首都である東京、また三千三百万の首都圏、それから二千数百万の関西圏にしてもそうです。みんな行政ニーズへの、私たち対応の仕方によっては、今の国の制度が制度疲労を起こしているがゆえに、こういう状況がデータ的にも出てくると、私は一つの事例としてご紹介をしているわけであります。また答弁をいただいたわけでありますけれども、問題点がここに如実に浮き彫りにされていると私は思っています。
 いら立ちを感じているということをぜひ議事録におさめておきたいと思っております。(「高知県知事に一回東京都民の前にあいさつに来いっていっておけよ、先生」と呼ぶ者あり)じゃ、みんなでやりましょう。行動、アクションが必要でありますね。賛成であります。
 この論議を踏まえながら、もう一つ重ねてお伺いさせていただきたいと思うのでありますが、先ほどからずっと私はいってまいりました税源の移譲に当たっての問題であります。大都市の税源配分のあり方について、じゃ、都はどう具体的に考えておられるのか、こういう視点の質問であります。どうでしょう。

○熊野財務局主計部長 地方交付税あるいは国庫支出金といった移転財源を通じまして国が地方の行財政運営をコントロールするという現行の制度のもとでは、地方圏に傾斜した財源配分が行われている図式となっております。先ほどの答弁の租税の負担と還元の現状の問題、こういったことでも大都市への実質的な配分が低くて、明らかに不公平が生じていることがおわかりだと思います。
 加えまして、私から申し上げたように、不当な財源調整措置、さらには法人事業税の分割基準でも七百億円近い影響額が出ておりまして、いわば東京ねらい撃ちのような措置が講じられている中で、都財政は何とかやりくりをしてきたのが現状でございます。
 しかしながら、ご指摘のとおり、東京を初めとする大都市には、首都圏の再生あるいは環境対策など膨大な財政需要を抱えていることは紛れもない事実でございまして、こうした財政需要に的確に対応して、東京など大都市に活力を呼び戻すことが日本の再生につながるものと考えております。したがいまして、そのために、各種の不利益な措置の解消はもちろんのことでございますが、国から地方への税源移譲に当たりましては、こうした大都市の財政需要に見合った財政基盤が確保されるよう適切な税源配分が行われるべきであると考えております。

○鈴木(貫)委員 そのとおりですよね、主計部長。我々はそれを常に論じてきた。
 だから、先ほどからいっているとおり、三位一体論の中で、私たちは決して東京ひとり勝ちをいっているわけではないのでありまして、ご紹介しますと、この間も財政委員会で大阪府へ視察に行ってまいりました。この問題であります。その中に、大阪府の文章の中でも丁寧にご説明をいただいたのでありますが、これが税源移譲の問題になると、東京に税が集中をするという言葉が相変わらず記載されているんですよね。だから、私は最後、あいさつの中で、何をいっているんですかと。東京一極集中論を私たちは皆さんに披瀝に来たのではありません、一緒に手をつないで、大阪とも手をつないで、大都市特有の財源確保のために闘うために我々は来たんですと、はっきり申し上げてあいさつを締めくくったんですね。いうべきことはきちっという。そのために、六月六日に石原知事、太田知事と一緒にこの問題で政府に申し入れをしたはずではなかったんでしょうかと、こういう後日談を私もご紹介しておきたいと思うのでありますけれども、東京ひとり勝ち論を満天下に示す、そういうつもりではないんだと。
 これから論点に入ってくる地方交付税の問題がこの問題に全部集約をされてくるから、私は冒頭申し上げたのでありまして、過日の財政委員会の大阪への視察は、私はそういう面では大変有意義だったと自分自身評価をいたしながら論点に入っていきたい、こう思っております。
 さて、東京都特有の問題といえば、地方交付税、これを抜きにして語ることはできないと思います。しかし、骨太の方針、今回の二〇〇三の報告の中でも、これはちょっとそばに置き忘れられたテーマになってしまったといっても過言ではないと私は思います。骨太どころではなく、骨なしというのかな、骨抜きという怨嗟の声も聞こえなくはないと私は思います。
 交付税の問題をこのまま、先ほどの大西委員の質問の中にも、主計部長の方の答弁からもありましたけれども、ほっておくと大変な事態になって、不交付団体の東京都自体にも、国全体の問題の中で放置しておくと、東京都にも何とかせいというような、国からのそういう問題が来ないとも限らないから、この問題を私たちは常にいうのであります。避けて通ることのできない関門の一つだからということで、毎回のように私たちは財政委員会の中でこれは指摘をしてまいりました。
 そういう観点から、この問題については、今回の行特委での、これからの東京都の問題の中で避けて通ることのできない関門の一つであるがゆえに、あえてまた私からも何点か突っ込んで質問をさせていただきたいと思うのであります。
 まず最初に承りたいのは、都の財源超過額、昨年度の交付算定の事例を見てみますと、五千三百二十六億円にもなっているんだそうですね。これは、東京都民がこの数字を知ったときには、東京都、財源がそんなに上回っているのと、こう単純に考えるのは、そうとるでしょう。びっくりすると思います。こうした財源超過額はなぜ起こるのか。また、それは東京都の、大都市の実態を踏まえたものではないと私は思います。その辺は東京都としての見解をはっきりいっていただきたいと思います。

○熊野財務局主計部長 地方交付税の算定は、限られた地方交付税総額を全国約三千三百の団体に配分する手法といたしまして、標準的条件を備えた仮想の団体をベースに機械的に行われるものでございまして、東京の実態を正しく反映するものとはなっておりません。
 具体的に申し上げれば、大都市算定に当たりまして、道府県の人口は百七十万人を基準として、これに現実の人口に応じた割り増しあるいは割り落としの補正を加える方式がとられております。しかしながら、人口規模だけを見ても、千二百万人を擁する都にこうした方式を適用することには限界があるといわざるを得ないと思います。
 また、この補正にも上限が設定されておりまして、例えば東京都への昼間流入人口が約三百七十二万人いるんですけれども、実際上は、交付税上、上限七十二万人として算定されているなど、非常に不合理な点が多いと感じております。
 今申し上げましたように、交付税算定上の都の財源超過額は、大都市の実態を正確に反映していない算定方式のために計算上生じているにすぎないものでありまして、ご案内のとおり、現実の都財政は、十五年度予算でも約二千五百億円の臨時的な財源対策を余儀なくされている、極めて厳しい状況にございます。
 このように地方交付税の算定結果と都財政の実態には大きな乖離がございまして、大都市の実態を踏まえている算定にはなっていないといわざるを得ないと思います。

○鈴木(貫)委員 主計部長、今答弁の中に、仮想の団体をベースにという言葉が出てきたんだけれども、仮想の団体をベースにというのをもうちょっと具体的にご答弁いただきたいと思います。

○熊野財務局主計部長 算定に当たりまして、標準的な団体、今申し上げましたように、都道府県の人口百七十万人が標準的な団体ということで、そこを出発点に算定を始めます。そういう意味で仮想の団体と申し上げました。

○鈴木(貫)委員 そこで、交付税の問題に入りますけれども、財務局が示した「途半ばにある財政再建」という小冊子の中に、七ページだったですか、「不合理なしくみの『税制改正』」という、こういう囲みでの文章が入っているんですね。「今の制度では、地方税制の基本は国によって決められ、地方の課税自主権はその枠内で認められているに過ぎません。また、税制改正による地方税の減収は、かなりの部分を『減税補てん債』という借金で賄うこととされています。」云々、全部読むことはいたしませんが、こういう六行にわたって綿々と書きつづられておりますが、この中で指摘をされている減税補てん債の償還と交付税特会、交付税特別会計の借り入れを例に、この仕組みのおかしさ--おかしいんですよ、非常に。こんなものがあっていいんだろうかと思うくらい。
 東京都からの立場を明確にお示しいただきたいのであります。

○熊野財務局主計部長 減税補てん債につきましては、国が行う税制改正によって減収となった地方税について、これを補うために、各団体が、各自治体が発行を余儀なくされている地方債でございます。減税補てん債の元利償還費は、後年度の交付税の基準財政需要額に算定される仕組みでございますが、そもそも交付税の原資は地方の財源でございますので、将来、交付税措置がされるからといって、国が補てんしたことにはなりません。
 また、それより重要なことは、不交付団体であります都は、減税補てん債の全額を将来の都税で償還しなくてはいけない、交付税をもらえない関係で、みずからの財源で償還しなくてはならない、これが重要なポイントだと思います。
 現在の交付税の状況は、交付税の必要額二十四兆円に対しまして、本来の財源である法定税分、これは十一兆円しかございません。その不足分を借入金などで賄っている状況でございますが、十五年末で交付税総額の二年分に当たります四十八兆円の借金を抱え、そのうち三十二兆円が地方の負担分となってございます。こうした状況のもとで、将来の交付税を国の税制改正の補てんに用いるということは、それでなくても深刻な地方財政の悪化に拍車をかけるものと理解しております。

○鈴木(貫)委員 ですから、こういう深刻な問題を三位一体の中できちっと論じていかない、こっちへ置いておくということ自体、私はゆゆしき問題だと思っているわけであります。
 交付税特会、交付税特別会計の借金が、今いったとおり、すごい金額になっているわけです。地方の方々、交付団体、それはいいですよ、出したらまた臨時財政対策債を出せばいいんだから。後でまた面倒を見てよ、こんな気楽なことはないですよね。こういうものがしかし崩壊していく。崩壊したときに東京都はどうなるんだろう。不交付団体といいながら、その心配を私たちは現にしなければいけない、そういうことを先ほどから指摘をしているのであります。
 交付税の先食い、言葉は悪いんですけれども、これが連綿と行われている、こういう制度を私はいかがなものかといっているわけでありまして、ですから、次の質問に入りますけれども、この交付税特会、交付税特別会計の借り入れとか交付税の先食いによる地方財政対策を、東京都の立場からどのように考えていこうとしているのか、明確にお答えしていただきたいと思います。

○熊野財務局主計部長 毎年、国の予算編成と同時期に作成されます地方財政計画は、国の施策との整合性を図りつつ、地方団体の財政運営の指針を示して、同時に地方財源を保障する役割を果たしております。この財源保障を具体的に担保するのが地方交付税制度でございますが、そういった意味では、地方交付税は長い間地方の発展に一定の役割を果たしてきたものと理解しております。
 しかしながら、近年、特にバブル経済崩壊後、交付税が景気対策や国による政策誘導の手段として使われるようになりまして、規模が肥大化するとともに、そのひずみが顕在化してきたことも事実でございます。
 お話のように、交付税特別会計の借り入れ、あるいは交付税の先食い、こういったことで、交付税特会の借り入れは、先ほど申しましたように四十八兆円も借金がございます。これは地方の将来に非常に重い負担になっていると認識してございます。

○鈴木(貫)委員 ですから、主計部長、また各局長の皆さん、また理事者の皆さん、この借金漬け体質をいわば国がより助長してきたのではないかなといったら、これは私はいい過ぎでしょうか。いい過ぎでしょうか、じゃないと思います。財政の悪循環に陥っている今こそ、改革ののろしを、先ほどからいっているとおり、自治体の雄である東京都から上げていかなければならないという、おのずからそこに今の論議が収れんをされてきてしかるべきだと私は思うんですね。そうあるべきだと私は思います。
 そのために、何度もいっているとおり、東京が中心になって、この三位一体の行動をすべきアクションプランを立てながら、動いていく時代のまず入り口に東京都は立たざるを得ないという、私はそういう論議のあれは成り立つのではないのかなと、こう思っているがゆえに今指摘をしているわけであります。
 確かに、地方財政を調整してきた地方交付税という制度、制度がある以上、我々もこのことはよくわかるわけでありますが、いってみれば制度疲労というひずみを拡大させてはいけない、こういうことを私はここで指摘しておきたいという観点から論じたわけでございます。
 何点かずっとやってまいりました。そういうことでエンディングの方に入ってまいりますけれども、こうした交付税制度の現状をとらまえて、地方財政制度の改革の方向性について伺いますけれども、東京都として地方財政調整制度の改革の方向づけについて具体的にどうお考えになっていこうとしているのか、具体的にお答えいただきたいと思います。

○熊野財務局主計部長 交付税制度の現状は、このままでは制度の維持が困難なほどに借入金が累増してございまして、見直しが不可避の状況にあると思っております。地方の財政基盤を支えてきた交付税制度が置かれたこの厳しい状況を見ますと、これまでの我が国の中央集権的な政治経済のシステム、地方行財政で申し上げれば、地方は、国の保護と監督のもとで歩調を合わせて同じ方向に進むという時代が終えんしたということを改めて認識せざるを得ないと思っております。
 こうした認識に立ちまして地方交付税制度の見直しを考えたとき、今後速やかに地方主権を確立して、地方自治体の自主的、自立的な行財政運営を確保するという観点から、国から地方への税源移譲の実現と一体として交付税制度のあり方を根本から見直すことが不可欠であると考えております。
 まず国から地方への税源移譲を進めて地方の自主財源を強化しまして、このこととセットで、交付税制度につきましては、地方の自主的な行財政運営を阻害しないよう、本来果たすべき役割に限定し、交付税総額を真に必要な水準まで縮減していくといったことなど、地方分権の時代にふさわしい見直しを行う必要があると考えております。

○鈴木(貫)委員 最後になりますけれども、今、税財政制度、そしてその中の根っこの部分を占めている交付税制度について、私は、きょうは、よりしぶとく、深く突っ込んでまいりたいと思うんですが、時間の制約もありますので、大体オーソライズされてきている問題についてのみ承りました。
 最後になりますけれども、私は思うんですが、東京都も十五年度予算編成の中で二千五百億の臨時的な財源措置を講じたり、いわゆるやりくり算段のそういう都政運営をしているわけであります。そういう中にあって、やはり三位一体の改革がきちっとしていかなければいけないこの税財政制度の問題、地制調の中での四つの項目の中の税財政制度というものを避けて通ることでは、私はこの確立はあり得ないと思っております。
 そういう中にあって、私は承りたいんですが、今まで、国対地方、こればっかりでいつも論じてくるから何にも出てこない。出てこないといえばそれはいい過ぎかもしれませんけれども、何ら動きが見られない。だから、私が再三再四いっているのは、東京都が中心になって、八都県市、そしてまた関西圏、大都市、これをまとめ上げさせていただきながら、地方を巻き込んで横の連帯感、横の軸を、縦軸対横軸で重層的、複合的な連係プレーをつくりながら、知事を先頭にして大いに国に対して行動、今はもう行動なくしてこの問題を、幾ら認識論を聞いたって出てくる言葉はそう変わらないわけでありまして、この行動をまず起こすべきだと、私たちはいつもこういう理論づけをしているわけであります。
 そういう観点から、最後、地方主権の確立において、今いった私たちの縦の関係、縦軸ではなくて、それを踏まえながら、地方を束ねていくといってはちょっと言葉が汚いんですけれども、石原知事を先頭にして、地方を、自治体の雄として、共同そして協力をしてもらいながら、東京都がまず先頭に立って国に対し改革の波を迫っていくべきだと私は常々訴えているのでありますけれども、この都の取り組みの姿勢を最後お伺いして、私の質問を終わりたいと思います。

○櫻井財務局長 国、地方を通じた税財政制度改革、これは地方分権を実現していく上で喫緊の課題というふうに考えております。地方自治体が地域特性を反映した自主的、自立的な行政運営を行える仕組みを構築することが、現在の日本の閉塞感、こういうものを打破しまして我が国に再び活力をよみがえらせる上からも重要な方策と考えております。
 また、ナショナルミニマムがおおむね達成したといわれる時代にあって、地方に権限と税源を移譲する、こういう改革は、同時に責任も地方が負うことになりますけれども、これまで以上に地方自治体が適切な行財政運営を行っていく、みずからの責任で行っていく、こういう認識も重要だと思っております。
 現在の地方財政は、道府県レベルで見ましても、国による地方交付税措置に頼らざるを得ない、こういう状況にありまして、このため、改革により地方交付税が減少するんじゃないかというようなことで、財政運営が困難になると危惧する自治体等々ありまして、都を初めとする大都市と必ずしも足並みがそろっていない面もございます。
 都は、今後とも、地方税財政制度改革の推進をリードする立場から、地方主権の真の確立のために、まずは自主財源の強化、充実が重要であるという地方に共通の土俵をつくりまして、八都県市の首脳会議あるいは関東地方の知事会、全国知事会などの会議体を通じまして国に働きかけるなど、広く地方の横の連携を図り、引き続き都議会の先生方のご支援もいただきながら、この改革に自主的に取り組んでまいります。

○和田委員 私は、新しい自治制度の方向性についてという大きなテーマのもとで、初めに地方債、それから広域行政、最後に大都市行政という三つのテーマに沿ってそれぞれ質問をいたしたいと思います。
 今、しきりに三位一体、三位一体といわれています。しかし、私どもは、自治体の財源というものを語るときに、地方債も重要な財源であるという認識を持っているわけであります。その意味で、三位一体というものの中に地方債が欠落をして今日まで議論されてきたということは、極めて不完全な形だと思っているわけです。例えば地方財政における地方債の歳入に占める比率は、ご承知のとおり、二〇%を超す多きに至っています。その地方債そのものを論ぜずして三位一体の改革ということは、私は、先ほど申し上げた、完全を失っているというふうに思うわけでございます。
 そこで、今しばしば議論に出ておりました地方分権改革推進会議では、伝わるところ、この七月下旬から、起債そのもののありようについての検討を始めるというふうにいわれております。それも、どちらかというと発行についての制約、余りに地方自治体が起債を発行し過ぎるので、少しくそれを是正しようではないかという視点に立つように思われるわけでございます。
 さきに申し上げたとおり、地方債は地方の自治体の財源という認識を持つならば、そこの蛇口を締めるがごとき会議の方向というのは、私は、自治体とすると看過できない問題だろうと思っているわけですが、当局はどのような認識を持って報道を読まれたんでしょうか。

○熊野財務局主計部長 地方債は、地方財政を資金調達の面から支える貴重な財源でございまして、極めて重要な役割を担っております。その自立性を確保することは、財政自主権を確保する上で大変大きな課題であると思っております。
 平成十二年の地方分権一括法によりまして、地方債許可制度が廃止されました。国の関与の縮小が図られることとなっております。ただ、平成十七年度までは、経過措置としまして現行の許可制度が存続している状況でございますが、十八年度以降につきましても、地方債に関するさまざまな規制がどの程度撤廃されるのか、いまだ依然不透明な状況にございます。
 今回の地方分権改革推進会議におきます意見では、地方債制度改革についても言及してございます。ただ、ご案内のとおり、今回の地方分権改革推進会議は財務省主導という形が色濃く出ておりまして、この中でも地方債の改革は、国の財源保障のあり方の見直しの一環として行うという、これを基本としてございまして、他の改革案と同様に、国の財政負担軽減の観点からのものである、地方自治体の立場に立ったものとはなっていないというふうに理解しております。
 都といたしましては、地方債制度改革は、あくまでも地方分権を推進し、財政自主権を確立する観点から行われるべきものであって、国に対して要求すべきは要求し、みずから行うべきは積極的に取り組んでいかなければならないと考えております。

○和田委員 主計部長の答弁は、会議の三位一体意見の中でも、国本位で、地方のことを配慮していない、そういう見解があるので、部長自身も不満だという言外の気持ちを私は酌み取るわけなんです。
 一方、五月二十六日、東京都における今後の都債発行のあり方というのが出されました。まだ一番新しい都債のありようでございます。その中の基本方針を見てみますと、今、部長答弁のとおり、三つある基本方針のうちの一番初めに、自己決定、自己責任というこの原則を貫徹するものであるべきだというのが都債の発行のあり方だという都の方針が確認されているわけです。その意味で、今、部長からご答弁いただいた分権推進会議の地方債の改革は、国の財源保障のあり方の見直しの一環として行うということで、あくまでも国本位だという、こういう会議の意見と、東京都が五月二十六日に出した制度改革の基本方針である自己決定、自己責任原則の貫徹というものを突き合わせたときに、どういう所感をお持ちでしょうか。

○熊野財務局主計部長 先ほども申しましたように、地方分権改革推進会議は、国の財政負担軽減の観点からという色が出ておりまして、これは具体的には、先ほど来議論になっております、景気対策なんかで地方が地方債を発行した場合に、その償還を交付税で見る、そういった関係で交付税の総額が膨大にふえまして、それを補うために国庫からも金を出さざるを得ないという状況の解消のためというふうなニュアンスが、我々は受けとめられるわけでございます。
 したがいまして、今後、そういった観点ではなくて、地方分権の観点から地方債のあり方は検討していただきたいし、その商品性を高めるための条件とか、そういったものは我々が決められるように、自立、自主の立場でそういった改革ができるようにしていただきたいと思っております。

○和田委員 三位一体の中に隠れて、地方債の議論がともすると放てきされがちな嫌いがございます。しかし、部長の今の分析答弁、とりわけ東京都の出したあり方と分権会議の方の出した意見、これをしっかり地方の立場から確認した上で、主張すべきは主張していく。そして、それはとりあえず、先ほどから出ておりましたけれども、東京都が先頭に立ってアクションを起こす際には、地方全体をまとめた意味であるべき地方債の姿を求めて行動していくというぐらいの迫力で、この地方債問題というのはぜひ東京都が先達となって取り組んでいくべきだというふうに思うわけでございます。
 申すまでもなく、繰り返しますけれども、地方債というのは自治体の財源だという認識を持つと同時に、発行シ団についても、政府系の金融機関が受けるものと市中の金融機関が引き受けるものと、それからまた市民といいましょうか、市場で調達する公募債と、三つの仕組みがあるわけですけれども、どれをとるにしても、基本的には、今まで申し上げたような地方の財源であるという基本的な観点を欠くことは許されないだろうと私は思っています。
 その意味で今東京都のあり方をお尋ねしたんですが、具体的に、七月六日に、三十年債、二十年債の発行ということが公表されました。これについて、どういう意図で発行されるのか、お伺いいたしたいと思います。

○熊野財務局主計部長 これまで、地方公共団体は、地方債許可制度のもとで、いわば国に依存しながら資金調達を行ってきたところでございます。しかしながら、地方分権の流れの中で、今後は自治体みずからが自己責任に基づいて、みずからの信用力で資金調達を行うことが求められていると思っております。こうした観点から、都は、個人向けの東京再生都債、こういったことを試みでやってまいりまして、商品開発あるいは投資家向けの広報活動、いわゆるIRを充実させるなど取り組みを行ってまいりました。
 ご質問にございました超長期債につきましても、発行年限を多様化いたしまして新たな投資家層の開拓を行う、しかも主幹事制で東京都がみずから条件を決めていく、そういった自立的かつ安定的な資金調達を目指すものでございます。

○和田委員 さきに私は、個人向けの再生債については評価をし、過去、二百億を二度ほど政策課題別に出しましたよね。三多摩の方の里山の保全なんかにも有効なんじゃないかなんていうことを申し上げたことを覚えておりますけれども、そういう、ある意味で借金なんですけれども、前回も申し上げましたけれども、個人向けの都債などについては、都債の発行の枠を別にして、都民に、これに二百億、これに二百億、またこれに三百億というふうに、政策課題が外側から透けて見えるように、二百億を都民の皆さんから公募してこう使いましたよという資金の流れ、それから政策的に生かされている事業の進みぐあいというものが素通しできるような、そういうことでますます都民は、東京都が呼びかけるこの種の都債に対しての理解が深まるし、協力方もしていただけるのではないかなと、こういうふうに思っているわけでありますので、参考までに、そのようなアイデアについてもご提案を申し上げさせていただきたいと思うのであります。
 さて、この二十年債、三十年債の超長期債なんですけれども、今、部長答弁のとおり、私が冒頭に申し上げた、地方債そのものをもっとバラエティーに富んだ、多面的に出していくという、そういう地方の自治体財源だという認識からするのは、当然これは私は歓迎するところなのです。これについても三百億円程度というふうに一応数字は出していますけれども、場合によっては、この三百億という問題、この金額についても、前回二百億を二回出しましたけれども、もっとバラエティーに富んだ、変化に富んだ形での応用というものはあり得るんでしょうか。

○熊野財務局主計部長 年限を多様化して新たな投資家層を開拓する意味で今後もトライは続けたいと思いますが、ただ、重要なのは、マーケットの状況というのがございますので、今回の三十年債、二十年債についてもまだ発行できていないんですが、今、金利が上昇局面にございまして、こういうときはなかなか投資家が買ってくれないというふうなこともございますので、何百億円発行するかというロットの問題も、それから発行時期の問題も、いかんせんマーケット次第というところがございますので、今後研究を重ねてまいりたいと思います。

○和田委員 金利変動のリスクも当然そこに伴うわけですから、何でも出せ、出せと決して私はいっているわけではありません。ただ、臨機応変に地方債というのは活用していく時代になってきているし、先ほどの部長答弁のとおり、自己責任の原則を貫いていくならば、当然それは都民も我々議会も理解を示すところでありますから、発行などについての経緯、過程についての透明度を増していただくということなどを含めて、この件については要望しておきたいと思うんです。
 次は、広域行政に入りたいと思うんです。
 四月三十日に地方制度調査会の中間のまとめが出されました。ここに中間報告があります。その中に、お持ちならば二一ページなんですけれども、都道府県合併と道州制についてと書かれてございます。私どもが都道府県の合併というようなことを耳にすると、昭和三十八年の阪奈和の合併--阪は大阪の阪ですし、奈は奈良ですし、和は和歌山ですけれども、それが関西の経団連が主導して一時盛り上がりました。すなわち、新幹線が東京とその地域を結んだものですから、それに勢いをつけて、阪奈和合併というような動きが随分ありました。しかしながら、いろんな事情からこれは途絶するわけでありますけれども、それ以外にも岐阜とかいろんなところに合併の動きはありましたけれども、今日まで日を見ることはありませんでした。
 そこで、この調査会の中での二一ページには、都道府県の合併やその後の道州制の導入が検討の対象になるというふうに明確にここにうたい上げているわけでございますけれども、これについての評価はどういうふうにお持ちでしょうか。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 都道府県の合併につきましては、地方制度調査会の中間報告、今の報告でございますけれども、各都道府県の発議により合併手続に入ることができない現行地方自治法の定めを見直す必要があるとしまして、都道府県が自主的に合併する道を開くことを検討すべきとしておりまして、手続としては、地方分権の観点から望ましいものと考えます。
 他方、道州制につきましては、この報告の中でも、そのあり方について幅広く論議を行い、国民的なコンセンサスの形成といったものを含めて検討を進めるべきというふうに示されておりますように、今後なお議論を深めていくべきものと考えます。

○和田委員 私は、予算委員会でも、北東北三県の合併についてお聞きをしたところです。その北東北三県の合併につきましては、ことしの三月二十八日に北東北広域政策研究会中間報告というのが出されまして、そこにはもう完全に、平成二十二年、二〇一〇年に北東北三県合体の実現を図って、合体後五年ないし十年程度で道州制に持っていく、東北州と名乗っているというふうに、こういうチャートができているわけでございます。それに至る過程でどういう共管事業をやったらいいのか、それから、これまでの地方自治体のあり方がこういうことだったというようなことの反省も踏まえ、財政調整のことも踏まえ、ある意味ではシミュレーションがここにもうでき上がっている、そういう東北三県のありようもございます。
 そういう中で、私どもは、一足飛びにここに行けとは決して申しませんけれども、ただ、同じ自治体の中で、北東北三県が一〇年に三県合体、それから五年ないし十年後には道州制に行くということがそれぞれ公に確認をされて作業されているということに驚嘆をするわけでございますけれども、ここまで行く過程の中で、どういう広域行政、広域の連合も含めて考えられるんでしょうか。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 今後どう進むかということでございますけれども、都は現在、首都圏全体を視野に入れまして、各都県市を超える広域的課題に関しまして、七都県市あるいは八都県市で連携してさまざまな取り組みを進めております。この中で着実に実績を上げてきているところでございまして、こういった取り組みを進めることが必要であろうというふうに考えております。

○和田委員 この東北三県の合体、それから五年ないし十年の道州制というプロセスは、私どもは目に見える形で研究課題に値するものだろうと思っているんです。党としても、国全体を道州制に持っていくという政策を私どもは掲げておりますけれども、東北三県がそれの先駆けとして、具体的に一つの目的を確認して進み始めているということでありますから、当然、東京都も八都県市を一つの、将来的にはこのために持っていくんだという目的意識なくして、ただ、目の前の競合できる、お互いに分散できる事務をやっていこうよということではなくて、東北三県が描いているような図式も、東京都が主導権を持って提案していく時代が来ているんではないかなと思うんでありますけれども、もう一回ご答弁をお願いいたします。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 地方自治法上には、例えば広域連合という制度もございますけれども、この中では、例えば課税権がないこと、あるいは調整に時間がかかることなど、構成自治体から独立した広域行政を総合的、機動的に展開するためには、依然として多くの課題があると思っております。したがいまして、先ほど申し上げましたように、現実的、具体的な取り組みを八都県市との連携を通じて進めることが、現実的には今後大切なことだろうというふうに思っております。

○和田委員 いつまでもならし運転をしていると、東北三県が先に東北州なるものの姿形をあらわして、東京都が追随するというような形になる可能性も十分ございます。少しく研究をしていただいて、何ゆえに三県がこのようにまとまりができてきているのかという歴史的な背景も含め、東京都は、八都県市あるいは七都県市でもいいんですけれども、そこで何か共通のリンクをするようなものを求めていく必要があるだろうと思っているわけです。
 細かな例を申し上げるんですが、ゴルフ場利用税が一部免除になりました。七十歳以上ですとか、十八歳以下ですとか、体の不自由な人とかですね。それについては、一千三百万ゴルファーがいるといわれておりますから、その十分の一、百数十万が東京にいると見ていいようでありますけれども、その減免の申請手続が、東京都の場合と神奈川と千葉と埼玉と、その手続の軟弱というんでしょうか、強弱が違うんですね。例えば個人の証明書をコピーで持ってこいという県と、いや、それは免許証なり提示だけでいいですよというところがばらつきがあります。こんなこと一つを例えば七都県市でお互いに確認し合えば、東京のゴルファーが埼玉に行こうと、埼玉のゴルファーが東京に来ようと、その意味では全くバリアがなく通用する。
 一つの経験則としてそういうことの中から積み重ねていって、今いう東北の三県が、ああいいよと、二〇一〇年にこうしましょう、ああしましょうというようなプログラムが出てくるのと同じように、一つの小さな試みかもしれませんけれども、そういうところの積み重ねで八都県市の壁をとっていくというようなことなども、目に見える形では必要なんだろうというふうに私は思うんです。したがって、すぐに地域通貨とか通貨高権まではいかないまでも、共通の何かでくくれないだろうかという試みは常にしておくべきだろうというふうに思っているわけでございます。
 それから、具体的にお尋ねをするんですが、先ごろ神奈川県の松沢知事から首都圏連合という話がここでまた出てまいりました。これを都はどのように受けとめていらっしゃるんでしょうか。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 お話しの首都圏連合でございますけれども、神奈川県知事を座長とする二十一世紀の県政を考える懇談会が設置されて、この中で首都圏連合を中心とした議論を行うというふうに聞いております。
 先ほど副委員長の方からお話が出ましたけれども、東北三県の合併構想を初めとして、全国に県境を超えたさまざまな動きや取り組みが顕在化しつつありますけれども、この首都圏連合の提唱もそのような動きの一つであろうというふうに理解しております。

○和田委員 東北三県も含め、松沢知事のこういう構想も含め、あちらこちらから、連合といいましょうか、あるいは合併といっても合体といってもいいですが、そういう機がぽつぽつと出始めてきています。まさにそれは機運が熟してきているので、東北とか関東を問わずにそういう構想が出てくるだろうというふうに思っているわけです。何事につけても東京からすべて発信していくという姿勢であるとするならば、東北三県なり、あるいは松沢さんの後塵を拝さずに、進取の精神でこのような構想については東京都が取り組んでいくべきだと思うのでありますが、東京都の考えはいかがでしょうか。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 現在、神奈川県の議会でもいろいろ議論されているところのようでございますけれども、都といたしまして今その動きの方に加わるというふうなことは特に考えてございません。

○和田委員 加わらないということであれば、それはそれなりに精神的には結構なんですけれども、しからばどういうような取り組みを具体的に行っていこうとされるのでしょうか。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 先ほど申し上げたことと同じになりますけれども、八都県市の連携の中で、先ほどゴルフ場のお話が出ましたけれども、具体的な問題というのを一つ一つ共同で積み重ねていくということが大切であろうというふうに思っております。

○和田委員 こつこつと日常的に積み上げるという姿勢は大事だと思うんですけれども、あるときは大胆に切り込むということも必要かなと思います。最後にまた繰り返しますけれども、東北三県などのこういう日程を区切った構想が出てきて、学者先生方も評価をし始めてきているとき、東京都も決しておくれることのないような積極的な姿勢を求めておきたいと思います。
 最後に、大都市行政についてお伺いしたいと思うんです。
 平成十二年に都区制度改革が行われました。私ども区部の生活者とすると、これで一定の到達点が出たと思っているわけでありますけれども、中長期的には、先ごろも各議員から特別区の合併の問題などについても検討すべきだという話が出ましたけれども、大都市行政のあり方という点から、どういうふうな中長期的な視点を考えていらっしゃるのか、お尋ねいたしたいと思います。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 大都市行政のあり方の中長期視点ということでございますけれども、現在の大都市地域における基礎的自治体間の人口規模、面積等の格差が大きく、今後、大都市行政を担う基礎的自治体の規模等を検討する必要があること、また、大都市制度が適用されている特別区の区域を越えて市街地が拡大していること、こういった視点があると考えております。

○和田委員 先ごろ参考人との学習会の中にでも、都市再生の動向ですとか、社会環境の変化、そういうものをしっかり見据えていく必要があるだろうということと、大都市圏形成が今起こってきているというようなことがございました。まさに新しい都市問題といってもいいような住民の都心回帰ですね、リターンが始まってきているというふうに思っているわけでありまして、今抱えている都市問題とは違った新しい角度からの都市問題の発生というふうに私どもは考えているわけでありますけれども、都市の再生ですとか、あるいは都心回帰現象というものと、今東京都が手を染めている大都市行政、これはどのように影響を受けると考えているんでしょうか。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 都市再生あるいは都心回帰現象といった社会経済環境の変化は、東京の活力を維持させ、あるいは居住環境の変化をもたらすものであり、それらに伴いまして、住宅や福祉、教育など、さまざまな行政需要に変化を及ぼすものと考えられます。
 大都市地域におきましては、広域自治体である都と基礎的自治体である特別区が連携、協力して大都市行政を担っておりますので、今後とも大都市経営の観点からこうした動向を注視していく必要があろうと考えております。

○和田委員 地方債から広域行政、それから大都市行政というふうに具体的な事例も申し上げながら質問を続けてまいりました。私ども都議会民主党は、地方分権というやわらかな発想ではなくて、地方奪権、地方に権利を奪い取るというような迫力で国とぶつかっていかないと、さきの地方債の見方についても、推進会議の方は国サイドで物をいう、東京都のあり方については東京都のありようを報告しているという中で、立脚点をしっかり明確にしながら、やはり国と対決すべきところはしっかり対決をしていく、対峙をしていく。そういうところの姿勢をこれからも打ち出していくという意味で、地方分権ではなく地方奪権だというような姿勢で厳しく国と対決すべきところは対決してほしいということを申し上げて、私の質問を終わります。

○立石委員長 この際、議事の都合によりおおむね十分間休憩いたします。
午後三時八分休憩

午後三時二十二分開議

○立石委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○木村委員 きょうは、石原都政二期目のスタートに当たっての最初の行財政改革基本問題特別委員会の質疑に当たるわけであります。したがいまして、石原都政一期四年というのは都民にとって何だったのかということをしっかり踏まえて、東京都のこれからの自治体としての方向性、行財政改革の基本的な方向を議論するというのが非常に重要だと私は思います。
 その上で、この四年間というのは国民はどういう状況のもとで暮らしたのかということがあります。それは、もういうまでもなく、深刻な不況、リストラの嵐、そして職に就いている人も年々所得が低下していく。その上に、国政の問題としての改革と称する連続的な社会保障の改悪の推進、それによる負担増、こういったことの中から暮らしに不安を持つそういう人たちの割合は、日銀の調査ですが、国民の七割、八割を占めるというのが出ていました。
 こういうときに、住民の福祉を増進するということを本来の使命とする自治体のあり方として、都政は何をやってきたのかということが問われると思うんです。それは、この四年間の石原都政は、私からいわせれば、本来の自治体の立場を投げ捨てて福祉切り捨てに奔走すると。一方で、もっぱら超高層ビルと大型幹線道路中心の都市再生に血道を上げるという姿じゃなかっただろうか。
 実際、福祉と保健だけを見ましても、シルバーパス、老人医療助成制度、老人福祉手当、三事業の切り捨てで、六十四万人の高齢者が影響を受けていますし、母子保健院、成東児童保健院の廃止、慢性肝炎などの通院医療費助成の打ち切りなどが実施されました。これに加えて、八王子や清瀬の小児病院の統廃合問題や多摩の保健所の統廃合問題が加わろうとしている。さらに、特別養護老人ホームや児童養護施設などのいわゆる都立福祉施設の廃止、民間移譲、社会福祉法人へのサービス推進費の切り下げなどがこれに続こうという状況に今なっているわけですね。
 教育を見ても、都立高校の統廃合、三十人学級は実施しないという姿勢を崩しておりませんし、何よりも社会教育施設が次々と廃止される。私の地元の青年の家もとうとう廃止が決まったというようなことがあります。住宅を見ても、新規の都営住宅の建設は一戸もないし、東京都として公社住宅や都民住宅からの撤退と。こういうことを挙げれば切りがないという四年間だったんじゃないか。
 一方、都市再生の方はどうなのか。メガロポリス構想から始まって都市再生十兆円プロジェクト、都市づくりビジョン、そして都市再生特別措置法が制定されて、直ちにアセスの条例が改悪される。都市再生緊急整備地域が指定される。もう矢継ぎ早に二年間進んできた。確かに投資のための経費はバブル期に比べれば抑制されているといえますけれども、それでも私どもがよく指摘する投資型経費、経常経費の中に組み込まれているものも含まれれば、毎年一兆円は優に超えるという状況になっており、しかもその中身は、生活道路や公園や住宅などの分野は後退して、首都高速道路や環状道路や区画整理や再開発などに大きく偏っている構造にこの四年間変化が起こっているという問題があります。
 つまり、石原都政の四年というのは、自治体本来の立場に背いて、そしてこの四年間、全国で生まれた新しい流れ、長野県の脱ダム宣言などにあるような大型公共事業の見直しなどという流れにも逆らって進められてきたというふうに私は思います。こういう都政をこれからも進めていけば、都民の暮らしは守れないというだけでなくて、都財政の再建という展望も切り開けないんじゃないか。二期目のスタートに当たって、都民の立場からどうしてもそういう立場からチェックをするということが今求められているのではないかというのが私の問題意識であります。
 そこで、きょうは、先日、財務局が発表しました「途半ばにある財政再建-第二次財政再建推進プランの策定に向けて-」という冊子に即してお伺いをしたいというふうに思います。
 まず現行の第一次財政再建プラン、今年度までという計画になっておりましたが、これの財源確保策などの到達状況はどうだったでしょうか。確認です。

○熊野財務局主計部長 第一次の財政再建推進プランでは、四つの柱を掲げて取り組んでまいりました。内部努力、施策の見直し、歳入確保、それから税財政制度の改善でございます。それぞれに達成率を申し上げますと、内部努力で一〇四・三%、施策の見直しで一〇一・二%、歳入確保で一三四・二%、税財政制度の改善で六一・一%、合計で、十五年度にあると推定されました六千三百億の財源不足に対しまして、九三・七%の達成率となっております。

○木村委員 九三・七%の達成と。もうほぼ一〇〇%に近いと。内部努力や施策の見直し等でも一〇〇%超えているという状況ですよね。そういうふうに財政再建プランの目標が事実上達成されたというのに、なぜ第二次財政再建プランをすぐつくるということが必要なのか、なぜそうなのかということをお願いしたいと思います。

○熊野財務局主計部長 今申し上げましたように、第一次の財政再建推進プランに基づきましてこれまで懸命に取り組みを進めてまいりました結果、財政再建団体への転落は当面何とか回避することができた状況にございます。しかしながら、この間、プランの見込みを大幅に税収が下回ったこと、それから税源移譲が一向に進まないことなどから、プランの最終年度でございます本年度予算でもなお二千五百億円もの財源対策を講ぜざるを得なかった状況にございます。
 都の赤字限度額が二千七百ないし二千八百と推定されている状況の中で、このままでは十六年度以降も毎年度三千から四千の財源不足が見込まれておりまして、今後いつまでもこうしたやりくりを続けることは不可能であることを考えますと、財政再建はまだ「途半ば」であり、第二次財政再建推進プランの策定が必要であると考えております。

○木村委員 そこがわからぬところですよね。現行プランは財政再建の基本的な考え方の策定の目標として、財政再建団体への転落を回避するともに、十五年度までに巨額の財源不足を解消することという目標を掲げて策定され、そして取り組まれたものなんですよね。さっきいいましたように、そういう目標を掲げて具体的に内部努力では幾ら幾ら、財源不足を解消するための財源確保額幾ら幾ら、施策の見直しについては目標幾ら幾らと、一つ一つ数字も挙げてつくられてきたわけです。
 施策の見直しは一〇〇%以上、超過達成したわけですけれども、財源確保の目標は二千四百億だった。そのうち経常経費の目標が千八百億だった。実際どうできたかというと、達成額は千八百十六億、これ、超過達成しているんですね。しかも、千八百十六億のうち、八百八十六億は福祉局関連ですよ。そうやって一つ一つ掲げられた目標が目標どおり到達してほぼ達成されたにもかかわらず、何で--いうなれば、四年間用意ドンで行って、第四コーナーを回っていよいよゴールだと思ってゴールヘ来たら、幻のゴールだったということになるんじゃないでしょうか。そういうことを最初から考えておったんでしょうか。

○熊野財務局主計部長 確かに当初目標としておりました財源確保は、税財政制度の改善を除いては達成をいたしております。しかしながら、一方で歳出面で見ますと、やはりこの間新たな都民ニーズに対応してまいりましたし、何と申しましても大きいのは、やはり当初四兆七百億程度推進プランで見込んでおりました税収が、実際には本年度の当初予算三兆九千ということで大きく落ち込んでいる。しかも、この三兆九千は、この間の徴税努力であるとか、あるいは銀行税であるとか、そういったプランに盛り込んだ努力を行った後ですら、やはり見込み額よりも一千六百億程度落ち込んでいる。ここら辺が大きな原因だと感じております。

○木村委員 税収が落ち込んだというふうにいいますけれども、四年トータルしたら当初のプランよりも上回っているじゃないですか。やっぱりみずから掲げた財源不足の目標額が達成されたにもかかわらず、第二次プランが必要だと。しかも、この冊子によれば、この第二次プランというのは、第一次プランにも増して厳しく、かつ踏み込んだことになることは必至であるというふうに書かれていますよね。ですから、これじゃ、第一回は幻のゴールだったけれども、そういう改革を進めりゃ進めるほど財政再建は厳しくなっていくということになるわけですね。
 ともあれ、要するに石原都政四年を通じて実行された現行の推進プランは、さっきいいましたように、過酷な福祉切り捨てなどを柱にして、巨大な財源不足解消の目標額は達成したわけです。税収が落ちた落ちたといいますけれども、見込んだ四年間のプランが、四年間トータルで見込んだ都税収入よりも、四年間合わせれば六千七百六十七億円も上回っているんですね。我々、税収がふえたときに、これは第一年度からそういうふうに税収がふえたんだから、都民の暮らしのために使えと、福祉を切るんじゃなくて、切った福祉をもとへ戻すべきじゃないのかという問題提起しましたけれども、これは東京都は耳を貸しませんでした。
 結局、税収がふえた年の補正予算など見ますと、税収増を当て込んで、国の景気対策に見合う公共事業の支出を積み増ししたり、汐留などの開発や首都高への貸し付けや国直轄事業負担金など、あげくは、臨海会計にまだ統合される前の羽田沖埋立会計に、借金を前倒しで払ったというような補正予算がありました。いうならば、そうやって貴重な税収増を使ってしまった、食いつぶしてしまったということがあると思うんです。
 私がいいたいのは、そうやって財政運営を進めながら、さらにこの四年間を見ますと、土地開発基金も含めて中小企業振興基金や、あるいはほかの基金も含めて、約二千五百億円取り崩して使っているわけですよね。そうして都債も四年間で五千五百六十七億円ふえている。だから、四年前の、これだけやれば財源不足解消だという目標を達成して、なおかつ、四年トータルすれば見込んだ税収よりも六千億円以上ふえていて、しかも、基金は二千五百億円取り崩している。その上で借金はふえている。だから、今まだ「途半ば」である、すぐにもっと厳しい第二次プランをつくらなきゃならないということになるわけですから、私は、決して都民の福祉や何かが、水準が高いから財政が厳しいというんじゃなくて、やっぱり石原都政の都政運営そのもの、財政運営そのものの中に、こういう事態をつくり出した原因と責任があるように思うんです。
 このことに関連してちょっと聞きますけれども、そういうことはこの前の代表質問で我が党はいったんですよね。いいましたら、知事はどういう答弁をしたかというと、そんなのは典型的なデマゴーグだ、三百代言だというような答弁をされたんですよ。正直いって、これはたまらないと思いましてね、秋田かくお議員が再質問に立ちました。石原都政四年でもって都債が五千五百億ふえたのは事実じゃないかというふうに聞きましたら、知事は、再答弁に立って、こういったんですよ。都債云々の数値の問題ですけれども、これは相対的な問題でありまして、それをどうとらえるかということは価値観の問題だというふうに答弁したんですよ。いや、私は正直驚きましたね。やっぱり都財政運営の責任に最も重くかかわっている人が、数字を挙げて聞いても、それは相対的な価値観の問題だと。こういう状況のもとでの財政再建論議というのは、私は正直いってむなしいと思いますね。
 財務局長ね、そういう質問は、代表質問ですから事前に通告をして知事答弁の作成に局長もかかわっておられたと思うんですね。で、ああいう再答弁という経過の中で、私はそういう感想を持ったんですけれども、局長は何か感想をお持ちでしたか。

○熊野財務局主計部長 まず、十二年度から十五年度までの四年間、税収を面積的に計算すれば、財政再建推進プランで見込んだ税収よりも六千七百億程度増収であったと、これは事実でございます。しかしながら、財政再建推進プランで見込んだ税収は、先ほども申しましたように、徴税努力あるいは銀行税等の取り組みを行う以前の税収でございますので、そういった徴税努力あるいは銀行税のトータル五千六百億を引きますと、わずか千百億程度の増収にしかすぎない。しかも、この増収に合わせて区市町村に交付します税連動経費が約二千百億円ございましたので、むしろ減っている。その使い道についても、確かに補正予算で景気対策等を行いまして、その時点の都民のニーズにこたえたわけですけれども、それ以外のほとんどの経費は、将来に備えた基金の積み立て約二千五百億円、それから隠れ借金の返済三千億に使って財政再建に努めたところでございます。
 それからもう一点、基金の取り崩しを確かに行いましたが、これは十二年度から十五年度までの期間中は、毎年度財源不足が生じることは当然のことでございまして、それを臨時的な財源対策で埋める、その一つとして使ったわけで、これはやむを得ない対策だ、投資措置だと思っています。
 それから、都債の残高、これも確かに、知事が就任する前の十一年度と十五年度を比べますと、約五千億ぐらいふえておりますが、これは平成三年三月から縁故債、それから平成四年四月から公募債、これの満期一括償還を導入しました。それ以前は、皆さんご承知のように、十年債を出せば、三年据え置きの七年償還で四年目から六%相当を抽せん償還しておりましたので、起債の残高は当然減る。しかしながら、満期一括を導入してからは、償還するかわりに減債基金に積み立てるという仕組みになっておりますので、当然のことながら減債基金は六%相当ふえますが、起債残高は減らない仕組みになっておりますので、平成四年から平成十四年までは実際の起債の償還がございませんでしたので、その間、残高が積み上がってふえるのは当然でございます。
 ちなみに、発行額を申し上げますと、平成四年から十一年までの新規債の発行は平均七千六百億円でございますが、知事が就任して以降のここ四年間の平均は三千九百億円ということで、明らかに起債は抑制してございます。

○木村委員 税収はふえているということも、それから都債も積み増ししたということも、事実としては認めましたよね。それはいろんなやりくりが当然内部としてはあるでしょう。しかし、第一次再建プランというのは、巨額の財源不足を解消するということを目標に掲げて、そのための目標数字も掲げて、それを到達させたんですよね。だから、それだけでも、現時点ではこういう成果があり、再建の方向に向かったということの総括があって当然だと思うんです。
 ところが、今年度で終わろうというのに、第二次はもっと徹底的に厳しくなるぞということは、僕は、石原都政四年の財政運営に責任がある。税収だって、それは確かにそういう事情でスポット的にふえたとか、いろいろあると思うんですよ。だけど、全体としては、使った金は税収増の部分もあり、そして基金のやりくりもあった。
 起債のことをなぜいうかといえば、石原知事は、この前の選挙のときに、真っ先に借金財政ノーという公約を掲げた人なんですよ。その人が一期終わって、借金財政ノーと掲げた人のもとで東京都の借金が現実には五千億円以上ふえているということについて聞かれて、それは相対的なものだということはないだろうと思うんです。現に、そのために公債費などが高どまりしているわけですから、現に今都財政を圧迫しているわけですからね。
 私は、そういう意味で、第二次再建プランというのは、第一次のプランの到達というものを、一〇〇%やりましたというだけでなく、しっかり総括して立てるべきだというふうに思います。
 これを読みますと、最初から、第二次はもっと徹底してやるぞと書いてあるんですよね。そういう構えでいいのかというふうに私は思うんですが、財政再建を目指す取り組み、二一ページにこういうくだりがありまして、今度は財源不足の解消という量的改善だけではなくて--第一次の場合は、財源不足の解消という目標で、それ、ということになったわけですね。今度は、財政の弾力性を回復させる質的改善への取り組みが不可欠だというふうになってきているわけです。そのために何をやるかということで、そのために、施策の見直し、スクラップ・アンド・ビルド、それから対象の増が見込まれる施策については総額抑制ということがうたわれています。
 施策の見直しのところは、新発想、新しい発想で都政を変えるということがゴチックで強調されておりますが、これは具体的にはどういうことをイメージしているんでしょうか。

○熊野財務局主計部長 施策の見直しのお答えの前に、先ほどの都債の残高ですけれども、これはやはり定時償還から満期一括に変わったための現象でございますので、明らかに、先ほど申しましたように発行額は減少しているわけでございますので、従来の制度であれば残高は明らかに減少していたものと思っております。
 それから、今後を考えるときに、確かに四年間で増収部分、ITが好況だった部分で増収はあったんですが、今後を考える際には、現時点の税収三兆九千、今後それが右肩上がりに上がるということは考えられませんので、それを基盤に今後の再建計画を考えていかなければいけないということは、私どもは自明の理だと思っております。
 そこで、第二次再建推進プランは、さらに厳しいということは当然のことでありまして、第一次再建推進プランの四年間で各局皆さん一生懸命施策の見直しをやっていただきました。ここまでやっていただいて、さらに、税収というか収入に合った、入るをはかって出ずるを制するためには、さらにもう一段、施策の見直しをやっていただかなきゃいけない。それは、当然のことながら今までやってきたものよりも厳しくなるだろうという意味でございまして、ここで書いてある施策の見直しにつきましても、今後新たないろいろなニーズが出てまいります。それにこたえていくためには、施策の見直しが必要であることはいうまでもないと考えております。
 その際に、ここで申し上げているのは、これまでにない新たな発想で見直しを行う必要があるという方向性をお示ししたものでございまして、特段、個々の事業についてこういう方向性ということをお示ししたものではございません。今後、一義的には、現場を持つ各局においてすべての事業について新たな目で見直していただいて、予算編成過程の中で調整をしていきたいと考えております。
〔委員長退席、鈴木(一)副委員長着席〕

○木村委員 新たな発想で都政を変えるというのは具体的にはどういうことかというのは、一般論しかお答えにならなかったけれども、この冊子では、その何ページか後に、「国主導から脱却し、新たな事業手法を考案した例~認証保育所」というのがわざわざ囲んで書いてある。強調されていますね。つまり、これは、そういう意味合いで、ここに施策の見直し、新発想で都政を変えるということの例としてわざわざ強調されているというふうに感じられますけれども、それはどうなんですか。

○熊野財務局主計部長 ここでお示しした認証保育所は、国主導の従来の事業から脱却いたしまして、国の規制を飛び越えて大胆な発想の転換を図って、都民ニーズに合った東京都独自の事業を展開している事例としてお示ししたものでございます。
 今後、新たな発想でということで例をということですので、あえて一例を申し上げますと、仕事のやり方を新たな発想で変えていくという例で、例えば今、汐留のまちづくりで進んでおります道路の管理とか街灯とか、将来的には清掃とか、あるいは警備とか、そこら辺を地元の方々自身、地域でやっていただく。そこで、地権者であるとか、あるいはテナントであるとか、そういった方々が負担金を出し合って、もちろん公共団体も手助けをするんですけれども、そういった地域でのまちづくりというか、まちの管理というか、これまでになかったような新たな発想で仕事のやり方を変えていって、スリムな行政を目指す、そういったことが個人的には考えられていると思っております。

○木村委員 認証保育がそうだという話はなかったんですね。まあ、いいです。これはこれからの議論でしょう。
 それからもう一つ、スクラップ・アンド・ビルドの徹底というのは、これは読めばわかる話ですが、対象の増が見込まれる施策について総額は一定の水準に抑制ということが、これからの財政の弾力性を回復させる質的改善の取り組みの三つの柱の一つに挙げられていますが、この総額抑制というのはどういう考えでしょう。

○熊野財務局主計部長 これも一定の方向性を示しただけで、これはまた各局が自主的に考えていただきたいと思うんですが、これまでは、例えば規模がふえる、対象がふえるということで、それぞれ当然のごとく歳出総額が単価を掛けてふえてまいりましたが、やはり歳入が伸びない中にあってはそれではいけなくて、総額を抑制した中でいろいろ工夫をしていただきたいというふうに考えております。
 これも、実現性はちょっと度外視しまして、あえて例えばということで例を申し上げますと、公園の管理を週三日やっていたけれども、公園の面積がふえたから、じゃ、ふえた分総額をふやそうということじゃなくて、例えばボランティアの方々に地域で手伝っていただいて総額を抑制していくとか、そういう工夫をやっていただきたいということで、ここには方向性として掲げさせていただいています。

○木村委員 どうも油断ならない答弁だなと思って聞いているんですが、ここは、対象の増が見込まれる施策とわざわざ書かれているんですよね。それは将来にわたって総額を抑制するよということになれば、これはだれしもが考えますが、高齢化社会が進行する、高齢福祉に対する対象がふえていく中で、それにかかる経費を一定に抑制するという意味合いじゃないかというふうに思うんです。それは違いますか。

○熊野財務局主計部長 先ほど申しましたように、一定の方向性を示しただけで、具体的な事業に触れているものではございません。

○木村委員 例えばこの冊子を読みますと、補助金のカットの問題が主題になっていますよね。そして補助金についての調査が別紙で資料としてついていますが、ほとんどページごとにシルバーパスなどという文言があるんですよね。これは、例えばそれを総額抑制ということに当てはめればどういうことになると思うか。七十歳以上の人口は二〇一〇年には現在の一・三三五倍というふうに推計されています。二〇〇三年は、東京では七十歳以上が百三十六万九千百四十六人。これが一・三三五倍になると、七年後、百八十二万八千二百二十三人ということになるわけです。一方、例えば、対象がふえても抑制するというふうにして今年度の予算を見ますと、シルバーパスでいうと、〇三年度予算額は百二十九億円、想定交付枚数が七十九万五千人、そのうち千円でもらっている人が六十八万人です。だからこの数字を、例えば二〇一〇年、対象者が一・三三五倍にふえていくということになると、本来ならば百二十九億円掛ける一・三三五ということですから、百七十二億二千万と、四十三億円予算はふえるということに仮になります。
 いや、数字は聞かないですからいいですよ。交付枚数が、ことしのまま、例えば一・三三五倍になるとすれば、これは百六万一千人ということになるわけなんですが、もし総額抑制という進軍ラッパがかかって、今年度の額で抑制するんだということにしますと、二〇一〇年、ことし千円でもらう人の想定が六十八万人ですが、計算すると二〇一〇年は数が九十一万人になります。四十三億円がもしふえなかった、総額抑制されたということになりますと、六十八万から九十一万にふえる新しい二十三万の人は、今の制度で行けば千円、ですから千円負担するということは当然考えられますから、四十三億円から二十三万人分の千円分は引いた上で二〇一〇年で千円で買うだろう九十一万人で割るというふうにすると、幾らになるか。四千四百七十三円になります。千円が四千五百円ぐらいになってしまう。
 つまり、主計部長は、公園の掃除とか、なかなか想像しにくいような例をおっしゃったけれども、財源不足の解消の量的改善のほかに、質的改善で財政の弾力性を回復させる、その方策の三本柱として、対象はふえても総額は抑制するんだというやり方を持ち込むと。もしこれを高齢福祉に持ち込むということになると、例えばシルバーパスでいえばそういうことになるというふうに私は思いますけれども、私はあえてそういう想定をして聞いているわけですが、どういう感想といいますか、お持ちですか。

○熊野財務局主計部長 今回、量的改善、それから質的改善というふうに二本柱で掲げております。前回の第一次財政再建推進プランでも、量的な問題としては財源不足を解消すること、それから、質的な問題として経常収支比率を九〇%に落とすということを掲げておりますので、本質的な考え方は私どもは変わっていないつもりでおります。
 そうした中で、やはり財政の弾力性を回復するためには、ここに掲げてあります施策の見直し、これまでやってきましたけれども、これ以上やるためには、新たな発想でいろいろな知恵を出してくださいということ。それから、スクラップ・アンド・ビルドもやはり優先順位をつけて、私どもが予算に組んでいる事業はすべて重要だと思っておりますけれども、やはりそういった中で重点的に財源を配分するために、スクラップ、ビルドを進めてくださいと。それから、これまでやってきた、単純に、対象がふえるから単価をぶっ掛けて総額はふえていきますよということではなくて、やはり工夫をしてくださいと。そういうことを一般論として方向性を申し上げているだけで、再三の同じことにはなりますけれども、具体的な事業を想定したものではございません。

○木村委員 これを率直に読むと、対象増がふえても予算の総額は抑制しますとかいうことになって、それが高齢福祉の施策に適用されれば、一例としてはこういうことが考えられる。それは、そのとおりやりますとはなかなかいえないでしょうけれども、もしこういう方向でやれば、こういう手法を質的な改善だと称して追求していけば、もう自治体のあり方の根本にかかわるような問題だと思います。
 高齢福祉についていえば、これからずっと対象者はふえていきますよね。シルパーパスもそうですが、いろんな高齢福祉でも、知恵を出せとか何とかいったって、当然増の経費はふえていくというのは避けられないと思うんですよ。いくら知恵を出せといってもね。そういう場合に、自治体としてはどうするのか。これまで都単独事業でこういう福祉施策をやってきた。しかしもう、このままふえていったのでは、自治体の財政としてはもたないということはあり得ると思うんですよ。ともかく、あるところまでいって、もうもち切れないからもうやめじゃ、あるいは値上げだと。現にシルバーパスも利用者はどんどんどんどん減りつつありますね。実際には想定枚数よりも下回っています。多くの都民から、今、数の上ではやっぱり遠い存在の施策になりつつある。
 そういうときに、もうここまで来たらだめじゃということではなくて、あるいは総額抑制でもって値上げしていくんだということではなくて、私は、国に対して、高齢化社会にふさわしいナショナルミニマムをつくっていくという方向で国に働きかけるというのが本当の自治体の改革であるべきだというふうに思うんですね。
 しかし、残念ながら東京都は、シルバーパスを国制度にしなさいという働きかけはしたことはありませんでした。しかし、私はやはり、これから新たな自治体像、高齢化社会に向かっての自治体像を追求していく上では、こういうふうに総額抑制しますよというだけじゃなくて、国に働きかけてナショナルミニマムとしてこういう制度は必要じゃないかという方向こそやっぱり追求すべきじゃないかと思うんですが、その点はどうでしょうか。知事本部長、どうですか。

○前川知事本部長 議論を拝聴しておりまして、大変恐縮でありますが、一つ、議論の前提としまして、これは再三お話をしたことがありますが、福祉施策が切り捨てられている、あるいは福祉予算が減っているというのは、私どもは事実ではないというふうに考えております。公平に見て、美濃部都政のときと比べてもはるかに福祉施策は充実をし、介護保険も含めて充実をしている。そのために、この何年間か最大の努力をしてきたつもりであります。
 ただ問題は、今お話がありましたように、財政の問題というのはもちろん重要であります。行政の目的は都民サービスの充実でありますから、都民サービスの充実こそが目的であって、財政は手段であります。ただ、現実に財政が大変厳しいという現状があるときにどうすべきか、それが一番の論点であろうというふうに考えております。
 その場合に、私どもは、例えば福祉であれば、一方では行政がやるべきことはきちんとやる。例えば児童相談所の児童福祉士は約二割ほど昨年度ふやしましたけれども、そういったことはちゃんとやる。一方で、民間施設等という形で移譲した方が入所者のサービス向上につながるものは、むしろそういう方向をとっていく。そういう形でめり張りをつけながら、福祉全体として、あるいは都民サービス全体として、東京の豊かさ、日本の豊かさを実現できるような方向へ工夫を凝らしていく。その過程で、当然ながら、国がすべきことは要求していくというふうに考えております。

○木村委員 私はまず、これは見解の相違だといえばそうかもしれないけれども、切り捨てた事実はないなどという、聞きもしないことで答えられたことは大変心外ですよ。さっきいったように、第一次プランで経常的経費一千八百億円削減達成の過半は福祉局関係だということは事実です。そして、この四年間、福祉局予算が三百三十億減った。これは、この間介護保険の都道府県負担などがあったわけですから、どこでも四年通せば予算はふえているのに、東京だけが減ったという事実を私たちは本会議でも提起しましたけれども……。
 そういう意味で、知事本部長は福祉局長だったから、該当する責任者として認めたくないのかもしれないけれども、私は今、シルバーパスを例に挙げて、そして、例えばこの「途半ば」の冊子から見れば、対象増が想定されるものはこういうふうにしていくということが一つだということがわざわざ書いてあって、なおかつシルバーパス事業について何カ所もこのパンフで触れているから、もしそういうことであるならば、これはナショナルミニマムとして国に働きかけるというのが自治体本来の立場でないのかということを聞いたわけですよ。私が聞いたことについてはほとんど答えていない。
 やっぱりそういうことでは、石原都政第二期に向かって、都民の暮らしを守る、福祉を増進させるという自治体の本来の立場に立って改革するということは、まことにおぼつかないといわなきゃならないと思うんですね。
 今度のこの冊子は、読めばわかるように、補助金の見直しということが非常に大きなテーマとして取り上げられています。高どまりしていると。知事が記者会見などで、まだ自治体と一言半句も協議していないのに、削減されるというのはもう避けられないというようなこともいって大きく報道されました。しかし、果たして市町村補助や特別区の都市計画交付金やその他手当は高どまりというふうに一概に決めつけていいものかどうかということは大きな疑問があります。
 例えば特別区都市計画交付金一つとっても、この財源は、都民の納めている都市計画税ですよ。都へ入ってくる税収としては二千億オーダーですけれども、特別区に交付される金額はその一割程度でしょう。高どまりじゃなくて低どまりなんですよね、現実には。都区制度改革によって特別区も都市計画事業をやれるようになったから、それで都市計画交付金も見直されたというのがここ数年の経過だったと思うんですね。ですから、そういう意味で、私は、そういう補助金を高どまりというふうに決めつけて抜本的に改革をするというのを、市町村との協議もなしにどんどん先行させる、立ち上げるということは大変問題じゃないかと。
〔鈴木(一)副委員長退席、委員長着席〕
 本当に高どまりしているのは何なのか。借金返しの公債費が高どまりしたままなのは事実ですけれども、首都高速道路公団への出資金や無利子貸付金、国直轄事業負担金、これらも高どまりしているんじゃないかと思いますが、この四年間の推移をちょっと。

○熊野財務局主計部長 まず首都高への出資金でございますが、十二年度百十三億、それから十三年度百八億、十四、十五は当初予算ベースでございますが、十四年度百十一億、十五年度八十八億。それから貸付金の方は、十二年度二百四億、十三年度二百六十一億、それから十四年度が六十二億、十五年度百八十七億となっております。
 また、国直轄事業負担金ですが、道路、河川、公園、港湾合計で十二年度五百五億、十三年度五百四十七億、それからこれも当初予算ベースですが、十四年度百九十七億、十五年度百七十八億となっております。

○木村委員 首都高への無利子貸付金とか国直轄事業負担金というのは、私も予算委員会で何回か取り上げまして知事ともやりとりをしました。その時点では、知事の答弁も、無利子貸付金もあるいは国直轄事業負担金も大いに問題ありという認識を示しました。国直轄事業負担金については何とか変えなきゃと、強く要求するというようなことを私自身に答弁をしたこともあります。しかし、実際は、それらはほとんど解決する道筋は四年間立っていないし、そのまま、十五年度などはまだ当初ですから国直轄事業負担金は多くありませんけれども、補正になると必ず組まれてくるというようなことがこのところ続いています。そして、これらの分が経常経費の中に実は分類されていて、そして経常経費の中にある投資型のこういう費用が高どまりしたままになっているということが一つの問題だというふうに思うんですね。
 したがって、こういうのを全部合わせますと、投資型経費は今日でもまだ年間一兆円を優に超えるということであって、ここにやっぱりメスを入れなければ、財政再建というのは本格的に前進はしない。なぜメスが入れられないかといえば、やはり今の石原都政の持っている都市再生最優先という路線、ここに最大の問題がある。ここを本当に、これもこのまま進んでいっていいのかどうかということをよく検討することなしに、第二次プランというものを進めるべきじゃないというふうに私は思います。
 もう一つ重大なことは、少額補助金ということが見直される中心になって挙げられています。一四ページです。一事業当たり補助金が一千万円未満という少額の補助制度が二百十事業あるけれども、こういうものもさまざまな課題を抱えたものだというふうに指摘されています。
 これは、少額ではありますけれども、それぞれ切実で具体的な行政目的によってつくられてきたという経過があると思うんですね。それは、例えば障害者の補助金、委託金だとか、いろんな形でお金が出ていますけれども、さまざまな問題があります。
 例えば、オストメイト社会適応訓練事業、これは百十九万ですよね。十四年度の施策の概要によりますと、非常に小さいものです。だけど、人工肛門をつけた人が社会復帰するために必要な事業ということで、該当者にとってみれば非常に切実な事業です。
 それから、例えば喉頭摘出者発声訓練事業、これは委託事業だそうですが、喉頭がんなどで声帯を失う人は都内で約二百人いるんだそうですが、対象に年間百回練習をすると。一年で習得することになっているけれども、一年で習得できない人もいる。一対一で教えて、そして食道などで声が出せるように訓練していく。これも二百三十四万円の事業ですよ。
 こういうのは挙げていけば切りがないんですけれども、これは少額かもしれないけれども、ただ区市町村の事業だというふうにすれば、一自治体で一人とか三人とかというふうになるから、事業として成り立たない。やっぱり広域行政としてやって初めて補助事業あるいは委託事業として成り立つ。だから、そういう意味で、こういうものにメスを入れて--オストメイト社会適応訓練事業も喉頭摘出者発声訓練事業も、委託先の組織や協会に聞いてみたんですけれども、これまでもどんどんどんどん削られてきているんですね。これ以上削らないでくれというのが共通して出る。それがまたこの少額補助金というふうに一くくりで見直しの対象の中に入る。自治体としては絶対やってはならない手法じゃないかと思うんです。
 少額補助金という一くくりの概念というのは本当に必要なのかというふうに私は思いますけれども、その点はどうでしょう。

○熊野財務局主計部長 補助金には多種多様いろいろございまして、それ一つ一つその時々の社会情勢あるいは政策目的を踏まえてつくられたものでございます。しかしながら、今回、聖域なき見直しということで、補助金に限らず、すべての施策について見直してほしいということで、補助金について申し上げますと、時代変化から見て必要性が薄れていないか、あるいは区市町村や民間との役割分担が適切かどうか、あるいは事業効果が上がっているのか、財政負担の均衡の確保から補助率が適正なのかどうか、そういった観点からもう一度見直してくださいということを申し上げて、一般論として申し上げております。
 少額補助金ということで、特段そういう概念をつくること自体どうだというお話もございましたけれども、ただ、一般論としては、少額補助金が多数設定されている場合なんかでは、やはり、この小冊子に書いてございますけれども、事務手続がふくそうして事務効率が落ちるとか、そういった問題点があるケースもございますので、そういったことも含めて見直していただきたいという方向性をお示ししているものでございます。
〔「委員長、ちょっと議事整理してよ、自治制度を早くやってくれよ」「自治体のあり方の問題としていってるんだよ。だから自治制度の問題だ」と呼び、その他発言する者あり〕

○木村委員 私は、第二期石原都政のスタートに当たっての再建の方向、これは自治制度の根本の問題なんだと。それに当たって具体的に出されているこの冊子が、財務局のこの「途半ばにある財政再建」、そして「途半ば」になっているということのこれからの方策として、こういうやり方で事業を見直していきますということが一々列挙されているけれども、特に重要なのは、こういう少額補助金というのを一くくりにして、事務手続上効率が悪いとか、そういう次元で一くくりにして見直しの対象にするというようなことをやると、それは一つ一つが自治体として具体的な行政目的に沿ってつくり上げたさまざまな事業、しかも、受けている対象者は、非常に数は少ないけれども、非常に切実なもの、これをどんどん切り捨てるということになりかねないということで問題を指摘しているわけです。これはもう自治体の根幹にかかわる問題です。全部合わせて二百十事業、しかも、全部合わせて七億円なんです。
 この七億円という金額に関連するんですけれども、例えば最近新しい銀行を立ち上げるというので、出納長室が税務協会に調査を委託した。その委託費用が四億八千万だと。七月四日の財政委員会でその問題が取り上げられて、財源はどうなんだと聞いたら、予備費を充当する予定でございますという答弁があったと。四月に新年度の予算が発足してまだ何カ月もたっていないのに、何億という予備費充当を議会で言明するというのは異例の話でありますけれども、これも既に契約が交わされていて、東京都の職員が二十三人、民間の専門家が約五十人来る予定だそうですが、この第一庁舎の三十五階でもう仕事をしている、こういうことであります。
 そこで、予備費流用については財務局の担当だと思いますが、予備費を充当するというのはどういう手続でやるんですか。

○熊野財務局主計部長 まず予備費でございますけれども、予算外の支出あるいは予算を超過する支出に当てるためにあらかじめ予算の中で使途を特定しないで予算措置をするものでございまして、議決後は執行機関にその使用がゆだねられております。
 その後実際に予備費を支出する場合には、予備費として支出することはできませんで、一たん、その必要とする費目に移しかえる必要がありますが、その際には、財務局長あてに予備費充当請求書を提出し、財務局長がこれを適当と認めた場合に充当を行うこととされております。

○木村委員 その手続はもう行われているんでしょうか。

○熊野財務局主計部長 予定している新たな銀行に対して、本日時点で予備費充当は行っておりません。

○木村委員 手続は行っていないけれども、議会ではもうそういう質疑で答弁しているんですよね。それで、例えば五億近いお金が、予算にもなくて、それからそういう手続もなしに、しかし既に契約は進んで、都の職員は出向して作業は進んでいるというような財政運営のやり方、私は問題だと思いますけれども、それでもそういうやり方で五億、六億動いていくわけですね。
 少額補助金というのは、二百十事業で七億ですよ。こういうやり方をもっと厳しく、いわばきちんとしていけば、少額補助金などを切っていく--行政上見直すというのは、事務上いろいろ必要があって見直すことはあるでしょうけれども、財政を建て直す、財源不足を解消するという方向でこの少額補助金なども一括して見直していくというようなことはやらなくても済むわけですね。そういう意味で、少額補助金に対する見直しについて重々注意をしていただきたいと思います。
 いろいろな問題を指摘し取り上げてまいりましたけれども、第二期石原都政スタートに当たって、新たな方向づけとして東京都が出した冊子というのはこれが最初だというふうに思います。ですから、そういう意味で非常に注目をして読みました。二十五日には中間のまとめというのが出るというふうにも伺っています。
 しかし、こういう方向に進んでいったら、果たして東京都政、東京都は自治体として、本来の意味での自治体として続いていくのか、成り立っていくのかどうかという危惧があります。少額補助金のことを書いてある一四ページに、全体の七割を占めるのは任意補助だというふうに強調されています。任意補助というのは、要するに都単でしょう。東京都単独の補助事業で、これが全体の七割だと。ここにメスを入れなきゃならない。しかし、都単の補助というのは、いわば東京都が自治体としてのアイデンティティーといいますか、そういうものになる意味があると思うんですね。
 次のページに枠で書いてありまして、東京都の補助金は、国基準の中に国見合いの負担は四分の一とか書いてあって、あとは上乗せだとか単独事業だとかなっていますね。さらに枠の外に補助金がある。要するに、ここにメスを入れたい、こういう意味合いだと思うんですね、この図面は。
 しかし、さっきから三位一体の話が出ていますけれども、三位一体で結局一番具体的になっているのは、国の補助金の削減ですよね。これが先行していく。そうすると、国の補助に見合う東京都の補助も全体としてこれは縮まっていく。しかし、残さざるを得ない、こっちはうんとメスを入れていくということになっていくわけですね。そういうことを徹底的にやらなければいけないんだというのがこの冊子だと僕は思う。それは、果たして自治体が自治体であり得るという精神がずっと続くだろうか、そういう思いがこの冊子を見るとします。
 東京都政がオリンピックで破綻した東都政の時代に逆戻りするのかなという気もしますが、一番最初にいいましたように、今、全国の地方政治では新しい流れが起きています。長野県の脱ダム宣言のように、公共事業の大幅な見直しによって福祉や教育を充実しようという県もふえています。そういう中にあって、東京都が、何が何でも都市再生という方向で高どまりしている、本来、問題だと知事自身がいっている直轄事業負担金などにやっぱりメスが入らないということをこのままずっと続けていけば、これは自治体のあり方の問題として、また、第二次財政再建プランの成否の展望からいっても非常に問題ではないかということを最後に私の意見として申し上げて、質問を終わります。

○大河原委員 新しい地方自治制度の方向性ということですので、さきの地制調の中間報告の内容に沿ってまず伺っていきたいと思います。
 昨年の十一月に地方制度調査会の専門委員会で、いわゆる西尾私案が出されました。またここから自治制度のいわゆる市町村のあり方についての議論が盛んになったわけですけれども、こうした中では、地域の自治制度のあり方が議論されるようになり、浮上してきたということです。
 そして、この議論の中身ですけれども、二つに分けられると思います。一つは、合併対策として旧市町村を地域自治組織として残そうというような考え方、そしてもう一つは、現在の市区町村のままでも、住民自治の観点からこの地域自治組織を必要とするという視点があるわけです。まず、東京都としてこの二つの考え方をどんなふうに見ておられるのか、お考えを伺いたいと思います。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 お話しの地域自治組織あるいは市町村における狭域の自治単位といわれるものにはいろいろなものが考えられます。今、二つの視点ということでございますけれども、今後、市町村合併が推進するに伴いまして、住民自治の実効性ある仕組みとして狭域の自治単位を設けることが一つは重要な課題になると考えております。
 他方で、今の地方制度調査会の中間報告におきましても、地域自治組織について、合併の有無にかかわらず基礎的自治体における一般制度としても必要な地域に任意に設置できる制度を検討する、このように提案されておりますように、現在の市町村を前提とした議論というものも考えられると思っております。

○大河原委員 今、東京都は、西東京市の合併が終了して、都域の中では合併の懸案というものがない状態にあるわけです。今のお答えの中にもありましたように、合併を前提としないで、現行の中で住民自治の視点からこうした地域自治制度を考えるということがもっと盛んに議論されてもいいんじゃないかと思いますし、ただいまのお答えももっと歯切れよく、歯切れのよい立場に立ってもいいかなというふうにも感想として持っております。
 そして、同様の問題として、西尾私案では、基礎的自治体の存続要件として最小人口規模を明示することが提案されたわけで、しかし、これに対しては多くの市町村からの反対があって、中間報告の中では見送られたという経緯があります。このような基礎的自治体の存続要件を人口規模にのみ求める考え方について、東京都はどのようなご所見をお持ちでしょうか。

○村山総務局行政部長 基礎的自治体にとって人口規模というものが重要な要素であるということは確かだと考えております。しかし、自治体は、それぞれ培ってきた歴史とか文化、地形、面積など人口以外のさまざまな要素から成り立っているわけでございまして、人口規模のみによってその自治権を制限するというのは問題があるというふうに考えております。
 都内にも山間島しょ地域が存在するわけでございますけれども、それぞれの自治体は、地域特性を踏まえて歴史をこれまで刻んできているわけでございますので、これらの地域について、人口のみによる機械的な基準を自治体の存続条件とすることは現実的ではないということだと思います。基礎的自治体のあり方につきましては、こうした点を十分踏まえた上で慎重に検討していく必要があるというのが私どもの考え方でございます。

○大河原委員 ほんとに、お答えにありますように、それぞれの地域に、自治体に歴史、文化がありますし、地勢状況などもほんとに違ってくるので、西尾私案についてはややひとり歩きをした嫌いがありますけれども、東京最大の自治体として、ただいまのご答弁は最後まで立場を貫いていただきたいというふうに思います。
 そして、この地制調の中間報告では、合併特例法の期限切れに伴って、現行法の財政支援措置はとらないとしながら、都道府県に合併についての構想の策定ですとか、あるいは地域自治組織の設置など、こういうものも勧告できるという提案をしているわけです。しかし、これは、一見しますと、都道府県の役割が従来よりも多くなって、むしろ基礎的自治体の自治権を侵害しかねないんじゃないか、このようにも思われます。ご所見はいかがでしょうか。

○村山総務局行政部長 まず前提として、市町村合併というのが、行財政基盤の強化あるいは新たな行政需要への対応、広域的行政への対応といったものに自治体が対応していく上で有効な選択肢の一つであるというふうに考えてございます。その場合には、市町村が住民意思を尊重しながら、みずから自主的、主体的に取り組んでいくというのが基本になろうかと思います。都道府県があっせん、勧告をするということは、一般的には市町村に直接義務を課するものではございませんので、直ちに自治権を侵害するものというふうにはいいがたいというふうには思っておりますが、具体的には制度がどのような内容になるのかということによって判断されるべきものだというふうに思います。
 現在、地方制度調査会で検討中であるということでございますので、今後私どもとしては議論を注視していきたいと考えております。

○大河原委員 ご答弁にあったように、中間報告の段階ですけれども、報告の内容は、あるべき住民自治というところから考えれば、やはり人数を多くして財政需要にこたえるというような、ちょっと一時代古い発想だというふうに思います。東京都としても、やはり鮮明に基礎自治体の立場に立って、今後もその立場を維持していただきたいというふうに思います。
 分権改革の意義というのは、やはり市民と自治体の自己決定権を強める、このことにあると思います。そのために、基礎的自治体の優先、補完性の原理を中心軸としてぶれない、このことが大事です。中間報告の地域自治組織、こうした仕組みが提案されること自体は私は大いに評価されるべきだと思いますけれども、実は住民自治の観点といいながら、行政区タイプ、また特別地方公共団体タイプ、こういうタイプが出てきておりますけれども、いずれにしても行政色が強いというふうに感じられます。こんなふうな思いを持つのは私だけではないと思います。
 あるべき二十一世紀の姿の中には、その地域社会には市民があり、行政があり、NPOがあり、企業の社会貢献がある、こういう将来像が見えてくるわけで、当然、政策の主体も多様になってくると思います。こういった意味では、地域自治組織の制度設計に当たっては、枠組みのみにとどめてシンプルな形にしていく、中身は地域でしっかりと議論をして決めていくということが大事ではないでしょうか。
 地方が、地域の実情に応じた多様な制度設計ができるようにすべきと考えるわけですけれども、この点どのようなお考えでしょうか。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 地方制度調査会中間報告で提案されている地域自治組織の制度でございますけれども、同報告でも、法律で定める事項は最小限にとどめ、地域の自主性を尊重し、地域において活用しやすいものとなるような制度とする必要があることが示されております。今後ともさまざまな角度から検討を進め、それぞれの地域で活用が図れるような制度とすべきだと考えます。

○大河原委員 繰り返して申し上げますが、ぜひとも都として自治優先の立場で進めていただきたいと思います。
 中間の報告については、マスコミなどの取り上げ方も、合併をかなり前に置いたものになっておりまして、合併や自治、地域自治組織についても話題となりましたけれども、大都市制度のあり方についてというところでは、注目度は相対的にかなり低かったというふうに評価をしなければなりません。さきの都区制度改革の経過が二〇〇五年までであるということもありまして、確かにこれまでの都区制度改革の評価は別といたしましても、特別区制度の改革については言及されていないわけです。
 大都市制度のあり方について、本報告までに東京都として提言をしていくご用意はあるのかどうか、その点についてはいかがでしょうか。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 地方制度調査会の中間報告段階では、大都市に関する制度につきましては、政令指定都市、中核市、特例市に関する記述にとどまりまして、都制度までには及んでおりません。東京は首都であり、他の政令指定都市の規模をはるかに上回る、高度に人口が集中している大都市であり、かつ複数の基礎的自治体が一体となって大都市を形成しているという特殊性がございます。今後とも地方制度調査会の議論の動向を注視するとともに、都みずからが中長期的な視点から大都市制度のあり方を検討していくことが重要であると考えます。

○大河原委員 動向を注目する、注視していくということですけれども、今の答弁はビジョンⅢの公表ということを条件、前提としていることだと思います。私としては、さきの都区制度改革については強い不安を持っているものですので、立場は異なると思いますけれども、東京都として大胆な提言をしていく必要はあるんじゃないかというふうに考えています。
 同じく中間の報告では、都道府県合併あるいはまた道州制について、現行の法律事項から、都道府県の発意によることから始まるという方向性が提言されております。道州制に向けた議論によくありますように、道州の形、大きさ、またその分け方、こうしたことを先行議論するのは大きな疑問を感じているところです。確かに自治体を超える課題があって、そして、そこに広域自治体のあり方が問われる、ここに理由があるわけですけれども、その点については、もっと市民が解決すべき、具体的に課題が見えやすい現行の広域連合を活用すること、充実させることを優先するべきではないかというふうに考えております。
 このことは市区町村の合併問題についてもいえることだと思いますが、制度自体が一部事務組合を原型にしているとか、また運用として長や議会を直接選挙で選んでいないこと、いろいろ課題はございます。しかし、まず現行の広域連合制度の活用、充実、こうしたことを図っていくことが必要であるというふうに思っておりますけれども、都として広域連合制度についてどのような課題を考えておられるのか、その点についてはいかがでしょうか。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 広域連合制度でございますけれども、国等から事務権限の委譲を受けることも可能になるなど、他の広域連携の制度と比べますと、多様化した広域行政需要に対応できる仕組みとなっております。しかしながら、課税権がないこと、あるいは調整に時間がかかることなど、構成自治体から独立して広域行政を総合的、機動的に展開するためには、依然として課題があるものと考えております。

○大河原委員 広域連合の制度的な不備については、実は意外に共有化されていないというふうに思います。東京都として制度改善を提案すべきであると思いますので、一言つけ加えさせていただきます。
 八都県市で広域連携を、環境対策、ディーゼルや、また防災などでこれまで進めてきた経緯がありますけれども、私たち生活者ネットワークは、これに常設の事務局を提案してきました。そして、これも徐々に実現される方向にあるんじゃないかというふうには思っております。この広域連携、内容としては、例えば食の安全問題といったものも、首都圏FDAなどというふうに私ども提案いたしましたが、このようなものも加えつつ、八都県市の構成による広域連合制度の設置を構想することが重要であるというふうに思いますが、見解はいかがでしょうか。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 都はこれまでも、首都圏全体を視野に入れまして、各都県市を超える広域課題に対しまして、七都県市あるいは八都県市で連携してさまざまな取り組みを進めてまいりました。特に、ディーゼル車規制を初めとする環境や防災の分野では共同の取り組みを積み重ね、着実に成果を上げてきたところでございます。今後さらに八都県市での連携を密にして、広域的課題の解決に取り組んでいく考えでございます。

○大河原委員 広域的な連携でやれることはたくさんあると思うんですよね。ですから、道州制の是非を議論するなら、立場を超えて、先に広域連携を進めることが必要であるというふうに重ねて申し上げておきたいと思います。
 そして最初の議論に戻るとすれば、東京都としてまず何をやるかが重要になってくるわけなんですが、地域の自治組織を考えるにせよ、東京都として地域内の分権、広域自治体や基礎的自治体、また、この委員会で私は近隣政府といういい方をしたと思いますが、地域自治組織の課題というものもたくさんあると思います。こうした地域内分権について東京都としてどのようにお考えでしょうか。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 地域内における分権のあり方でございますけれども、基礎的自治体は住民生活に密着した事務事業を担い、広域的自治体は基礎的自治体では対応が困難なものや広域的に処理する方が効率的なものを担い、それぞれが権限と責任を持って地域における行政を行うことが基本であると考えます。
 他方で、地域の課題解決に向けまして、自治体と住民の協働を一層進めることなど、住民自治の活性化を図っていくことも必要なことと考えております。

○大河原委員 第二次分権計画が途中であることは認めるわけですけれども、率直にいって、石原知事になってから、分権というところについては力が入っていないんじゃないかというふうに感じます。国と都という対立関係はよく見せられるわけですけれども、自治体と東京都というところでの将来のあり方の議論をもっと強く進めていかなければならないというふうに考えています。
 先ほど東京都の補助金問題がありましたけれども、都の単独の補助のあり方、これも包括的なものに見直していくこととか、基礎自治体を尊重した自治のあり方など、分権のあり方など、ぜひとも新たな分権計画の策定に着手していただきたいと強く求めておきたいと思います。
 分権改革の意義からいえば、市民と自治体の自己決定を強化することが重要ですし、基礎的自治体を優先すること、そして補完性の原理をきちんと明確にし分担をしていくことが重要で、あくまでも市民が地方政府をつくるという考え方で地域の自治、また行政の仕組みをつくっていくことが重要かと思います。
 そういった意味では、再度、東京都として自治基本条例を検討すべきだというふうに私は強調したいと思います。むろん、そのためには、現行の自治法の改正を行わないと無理だという課題もあるわけですけれども、また一方では、自治をめぐる新しい課題である参加の仕組み、行政評価、現行制度を前提としても整備するという必要性は存在します。広域の連合を含めて、他の自治体との関係、連携のルール化、この検討を要請されているのが、この時代、二十一世紀を見通す東京都の責任でもあるというふうに思います。
 これまでの質疑でも触れてまいりましたけれども、地域自治組織は一般制度としても構想されておりまして、これが導入されれば、当然、現行の東京都と市、都と特別区、こういう関係に当然の影響があるわけです。かつて分権改革の中で東京都が東京都地方分権推進基本条例ですか、この検討もされてきたというふうに聞いておりますけれども、基礎自治体と東京都の関係性をルール化していくことがまず求められるんじゃないでしょうか。
 自治体をめぐる原則的な課題について、中間報告で提起されている課題を踏まえて、東京都の基本的な考え方を伺って、質問を終わりたいと思います。

○平田知事本部自治制度改革推進担当部長 お尋ねの趣旨は、自治基本条例を制定するなど、住民自治組織の住民自治推進の観点から自治体の基本的なルールを整備すべきということと思われますけれども、いわゆる自治基本条例につきましては、既に制定した自治体や検討を進めている自治体が見られます。その条例の内容はさまざまでございますけれども、おおむね自治体の目指すべき理念や住民参加、情報公開、行政評価などについて定められております。しかしながら、法令で自治体の事務について詳細に規定している現行法制度のもとでは、自治体が独自に基本的な事項を定める余地は少ないとの意見もございます。
 したがって、この問題につきましては、お話しの他の自治体との関係や連携のあり方の観点も含めまして、現行法制度の抜本的な改革とあわせて検討していくべきものと考えております。

○大河原委員 今、自治体が独自に基本的な事項を定める余地は少ないという意見もあると、わざわざこの中に答弁をしてくださったわけなんですが、地域で自治基本条例をつくる自治体が出てきているということがあるわけですから、それだからなおさらのこと、東京都と基礎自治体との役割をしっかりと議論し、分けていく。そして、それは補完性の原理で、地域でできないことを東京都が担う、そういう議論をしていかなければならないことだと思うんです。
 わざわざ、こういう余地は少ないというご意見もあるということまでつけ加えていただきましたけれども、ぜひとも東京都から自治体への内なる分権を進めていただきたいと強く求めまして、質問を終わります。

○立石委員長 この際、お諮りいたします。
 まだ発言があることと思いますが、この程度にとどめ、後日の委員会において質疑を続行いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○立石委員長 異議なしと認め、そのように決定いたします。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後四時五十四分散会