行財政改革基本問題特別委員会速記録第七号

平成十四年二月十二日(火曜日)
 第四委員会室
 午後一時五分開議
 出席委員 二十三名
委員長川島 忠一君
副委員長大木田 守君
副委員長古賀 俊昭君
副委員長和田 宗春君
理事富田 俊正君
理事鈴木貫太郎君
理事吉田 信夫君
理事樺山 卓司君
理事内田  茂君
山下 太郎君
長橋 桂一君
真鍋よしゆき君
松原 忠義君
相川  博君
遠藤  衛君
河西のぶみ君
新藤 義彦君
田島 和明君
山崎 孝明君
大河原雅子君
渡辺 康信君
石井 義修君
木村 陽治君

 欠席委員 なし

 出席説明員
知事本部本部長田原 和道君
次長三宅 広人君
企画調整部長渡辺日佐夫君
特命担当部長南雲 栄一君
企画調整担当部長荒川  満君
参事熊野 順祥君
自治制度改革担当部長幡本  裕君
総務局局長大関東支夫君
総務部長高橋 和志君
行政改革推進室長島田 健一君
IT推進室長木谷 正道君
人事部長山内 隆夫君
行政部長反町 信夫君
勤労部長尾井 幹男君
財務局局長安樂  進君
経理部長佐藤 兼信君
主計部長松澤 敏夫君

本日の会議に付した事件
 行財政改革の基本的事項についての調査・検討
  報告事項(質疑)
  ・自治制度改革をめぐる状況について

○川島委員長 ただいまから行財政改革基本問題特別委員会を開会いたします。
 これより、東京の将来像を展望し、社会・経済情勢の変化に柔軟に対応する都政を実現するため、行財政改革の基本的事項について調査・検討を行います。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、報告事項に対する質疑を行います。
 報告事項につきましては、既に説明を聴取いたしております。
 その際、資料の要求はいたしておりませんので、これより質疑を行います。
 発言を願います。

○田島委員 この行財政改革基本問題特別委員会が昨年の十月に前期に引き続き設置されて以来、四カ月が過ぎました。この間、東京及び首都圏における地方自治の問題、課題や、首都東京を再生し、我が国を再生するための新たな広域的自治体のあり方について議論してきました。また、前回、十二月二十一日には、大都市制度や特別区制度の沿革、海外大都市の自治制度などについて理事者側から資料が提出され、説明を受けたところであります。
 このように、本委員会は、これからの時代に即した新しい自治制度のあり方について議論を深めていくわけでありますが、私としては、やっと議論の第一歩を踏み出したにすぎないというのが率直な感想であります。
 というのも、自治制度の改革というのは、この国の形を大きく変えるものであり、都政の将来像や東京という大都市の将来像をじっくり見据えた、幅広い、かつ骨太の議論をした上でなければ、軽々に提言できるものではないと考えるからであります。そのためにも、単に机上での制度論を展開するのではなく、過去の都市づくりに対する考え方や、これまでの自治制度をめぐる議論を十分に踏まえ、さらにはしっかりとした歴史観、文明観を持ちながら、本委員会でより活発な議論を展開していくべきであります。
 とはいうものの、まず、これまでの議論を踏まえ、私の考えの一端を披瀝いたしますと、確かに近年、東京で生活し働く人々の生活圏、行動圏というものが格段に広がっていることを感じます。明治二十三年に府県制度が発足したときはもちろん、昭和二十二年に地方自治法が施行され、現在の都道府県の枠組みが構築されたときにも、恐らく今日のような人々の活動範囲の広域化は想定されていなかったのではないか。そういう意味では、都道府県の区域というものが今のままでよいのかという率直な疑問を抱くわけです。
 また、首都圏メガロポリス構想などにも触れられていましたが、環境問題や交通問題、防災の問題など、東京都と近隣の自治体とが連携し、戦略を練らなければ十分な解決が図れない問題が山積しています。
 このような状況の中、都を初めとした首都圏の広域的自治体が今後どのような役割を果たしていくべきかについては、都市再生、日本再生のためにも、さらに議論を深めていかなければなりません。しかし、都市再生、日本再生という点で考えますと、広域的自治体のあり方を見直すことはもちろんですが、やはり首都東京の自治制度そのものを見直すことが不可欠であります。
 失われた十年とも呼ばれた九〇年代が過ぎ、二十一世紀という新しい時代を迎えたにもかかわらず、我が国の低迷ぶりは目を覆うばかりです。この状況を打破するためには、首都圏の中でも、特に東京が本来持っている力をいかんなく発揮することが急務です。その点からも、東京という大都市が持つ力を十分に生かせるような自治制度のあり方について真剣な議論をしていかなくてはなりません。
 その際大切なことは、東京という都市にどのような機能を持たせるかということをしっかりと議論することです。東京の特色は、政治、経済、文化の中枢機能として、都市としての産業経済の立地が一緒になって大きな求心力を持ち、これが発展につながってきたことにあります。我が国の再生のためには、何があってもこの特性を維持していかなくてはなりません。
 そのためにはどのような機能を東京に付加していくべきなのか、非常に重要な観点であります。これまでの全総のような単純な機能分散論ではなく、東京を初めとした首都圏の各都市、各自治体が、ネットワークを構築しながら、それぞれ特色ある機能を果たしていくべきではないか。また、首都として都心政策はどうあるべきか、このような点を十分に議論しながら東京の自治制度を改革していかなくては、無用な制度改革になってしまいます。
 前回の説明にもあったように、この東京の自治制度については、既に明治初頭からさまざまな議論がなされ、他の都市とは違った制度が適用されてきました。
 また、海外においても、首都のような大都市には、その国の実情を踏まえながら、特徴ある制度を適用しております。このような点も大いに参考にしながら、東京については、他の都市とは一線を画し、世界の大都市として、また日本の首都としてどのような自治制度が最も適しているのかということを改めて議論しなくてはなりません。
 これまでも我が党は強く主張してきましたが、二十一世紀は都市の時代、都市間競争の時代です。その意味では、この大都市東京の興亡が我が国の興亡にもつながるといっても、全く過言ではありません。
 国においても、このような考え方のもと、都市再生ということにやっと力を入れ始めてきましたが、大切なことは、これからの都市づくりに向けた明確なビジョンをしっかりと持つことです。
 繰り返しになりますが、これからの時代、都市、特に大都市の重要性は一層増します。一都三県から成る首都圏をどうとらえ、どのような都市づくりを行っていくべきか、また、首都圏の心しんである東京にどのような都市機能を持たせるか、そのためにはどのような政策を実行すべきか、首都の行政を預かる我々が真剣に考えていかなくてはならない時代を迎えているのです。
 加えて、先ほども述べたように、この東京のような大都市の行財政制度のあり方について、今のままでよいのか、何か改革すべき点があるのではないかということを議論、検討していかなくてはなりません。
 そこでお伺いしますが、この大都市東京の位置づけや特性を踏まえ、その行財政制度はどのようなものであるべきと考えているのか、伺います。

○幡本知事本部自治制度改革担当部長 東京及び首都圏は、人口のみならず、経済や文化という点でも高度な集積を有しており、首都として我が国を代表して世界的な都市間競争に打ち勝つことが期待されております。また、一方では、一千二百万人の人々が生活しており、さらには三百万人を超える人々が日々通勤通学している東京は、他に類を見ない世界最大の生活都市ともいえます。
 このように、さまざまな側面を持つ東京をさらに発展させていくためには、行財政制度のあり方も、他の地域とは違った、首都圏を視野に入れた、東京特有の制度というものを検討する必要があるのではと考えます。

○田島委員 確かに東京のような大都市の行財政制度については、東京特有の仕組みが不可欠だと思います。大都市の行財政制度については、地方自治法は、政令指定都市制度や特別区制度を規定しております。現在東京都は、全国で唯一特別区制度をとっているわけですが、皆さんがご存じのように、この特別区制度は、先人のさまざまな議論や努力の結果、大都市の一体的運営を確保する中で、地域の自治を実現するために発展してきた制度です。その結果、特別区は、行政サービスの面で全国的に見ても非常にすぐれた水準を誇っております。住民福祉の向上にも大いに寄与してきました。
 そして、平成十二年四月には、特別区は都から清掃事業などの移管を受け、ついに市並みの基礎的自治体に位置づけられたわけであります。
 しかしながら、今回の改革は、まだ一里塚であると思います。現に地方自治法において特別区はいまだに特別地方公共団体に位置づけられており、さまざまな特例措置が残されています。このことは、特別区が行政課題に的確かつ迅速に対応し、住民福祉を向上させるという点で問題があるのではないか。特別区の自治権をより一層拡充させ、税財源の確保も図っていくことが必要ではないか、このように考える次第です。
 聞くところによりますと、先般、大阪府、大阪市が大都市自治システム研究会なるものを立ち上げ、府市統合により都のような形態に再編する構想や、大阪市を大阪府から独立した、かつての特別市のような形態に再編する構想などについて検討を開始したとのことです。
 私は、このような大阪の取り組みは、非常に大切なことであると考えるわけです。例えば、政令都市と県との関係、政令指定都市に設けられている行政区と東京都の特別区との対比などを含め、現在の社会状況等に照らし、改めて特別区制度という大都市制度のあり方、意義について考えるべき時期に来ているのではないでしょうか。
 そこで伺いますが、現在の社会状況等に照らし、大都市行政制度として、都区制度、特別区制度が果たしている意義についてどのように考えているのか、お聞かせください。

○反町総務局行政部長 特別区の区域におきましては、人口が高度に集中するとともに、特別区間には、昼夜間人口の格差や税源の著しい偏在といった実態があり、それぞれの特別区の区域は、その役割を担いながら、一つの大都市を形づくっております。
 こうした社会経済的な実態の中で、都区制度においては、大都市地域における行政の一体性、統一性を確保するという観点から、住民に身近な事務は、基礎的自治体である特別区が自主的に処理をする一方、市町村事務の一部を都が行っております。
 また、税財政面でも、都区間の財源配分及び特別区相互間の財源の均衡化を図るための財政調整制度が定められております。
 このように、都区制度は、特別区の区域における広域的な対応が必要となる市町村事務が効果的、円滑に処理されるとともに、住民に身近な行政の分野では、各特別区が地域的な特性を踏まえつつ、一定の水準の行政サービスを提供する体制を確保しているという点で、極めて大きな役割を果たしていると考えております。

○田島委員 これまで、特別区制度については、一つの大都市行政システムとして大いに機能してきた、このことは非常に喜ばしいことです。しかし、時代の流れは急であり、これから長期的に考えて東京の再生、繁栄を図るためには、現状に甘んじることなく、抜本的にそのあり方を議論することは、決してむだなことではありません。
 例えば、確かに清掃事業の移管などの制度改革が行われ、特別区も基礎的自治体に位置づけられましたが、本来、基礎的自治体が担うはずの消防や水道、下水道などは、一体的な大都市行政として都が実施しております。また、政令指定都市では、県ではなく、市が地下鉄を運行しているのに対し、東京では、都の交通局と営団地下鉄が担っています。
 このように都が基礎的自治体の事務を行っていることは、都民の立場、企業の立場からすると、何か瑕疵があるのか、そういう検証もこの委員会において議論すべきだと思います。
 東京は、大都市であるがゆえに、他の自治体とは違い、大事業、大供給という大きな特徴があるわけで、そういう中での効率性や経済性などを含めて、やはり特別な制度が必要なのではないかと考えるわけです。その点からすると、都と区との関係は、制度上このままでいいのかどうか、行政はサービス機関であって、質の高いサービスを提供することが使命であり、なおかつ、最少の経費で効果を出す、こういうことを考えながら、他の道府県とは違う大都市制度のあり方を、区市町村も交えて真摯に議論を重ねていくべきだと思います。
 また、最近、特別区の再編という議論も耳にします。歴史をひもといてみますと、特別区の現在の区割りは昭和二十二年に決まったわけでありますが、その当時は、都の人口を四百万人と仮定し、各区の人口を二十万人、また、面積は十平方キロメートル以上という考え方に基づき、当時の三十五区が現在の二十三区になったという話も聞いています。
 しかし、今や生活圏は広域化し、また、都市づくりといった観点、そして、先ほど述べましたが、質の高いサービスを提供するという点から見ると、現在の区割りは、今日の東京の現状を十分踏まえていないのではないかというようなこともいえるのではないでしょうか。
 例えば、特別区の自治権を拡充し、市に位置づける場合、現在の二十三区の区割りのままということにはいかないと思います。一方、幾ら何でも八百万という人口を有するこの東京二十三区を一つの自治体にするという方向もあり得ない。やはり自治体としての適正規模というものがあり、人口規模や区域の問題は避けて通れない問題であります。
 そういう中、昨年三月の予算特別委員会の場で、石原知事は、特別区の統廃合についても検討をしていくべきという趣旨の発言をしておりました。
 そこで伺いますが、都政改革ビジョンⅢの中では、特別区の具体的統廃合についても提言していくつもりなのか、所見をお聞かせください。

○幡本知事本部自治制度改革担当部長 特別区の統廃合等の問題は、住民の意思を尊重しながら、特別区みずからが自主的、主体的に取り組むことが必要です。
 しかしながら、特別区のあり方につきましては、広域的な行政課題が増大する中で、特別区が今後どのような事務や権限を担うべきかを考慮するとともに、大都市行政の一体性にも留意しながら、その再編についても視野に入れていく必要があると考えております。
 都政改革ビジョンⅢにおきましては、本委員会での議論などを踏まえ、住民の福祉の向上、首都東京の発展という目的に照らし、現行制度に必ずしもとらわれない幅広い観点から検討し、問題提起をしていく必要があると考えます。

○田島委員 この特別区の問題は、相手のあることであり、都民、区民にも重大なかかわりがあることです。単に理事者側だけで検討するのではなく、我々議会との議論を十分に尽くした上で提案すべきものであると考えています。
 一方、市町村については、都は、昨年一月に、市町村合併に関する検討指針を策定、公表していますが、新聞報道にもあるように、全国的に合併の機運が非常に高まってきています。総務省の調査結果でも、合併に向けた研究会などは、設置予定も含め、全国で約四百四十組織に上り、全市町村の六三%に当たる二千二十六市町村が参加しています。このような動きにおくれることなく、都も市町村合併に向けた具体的な取り組みを進めていくことが必要です。
 また、長野県と岐阜県の町村では、県境を超える合併のための研究会も発足しています。県境を超えるという点では、東京においても、町田市と相模原市の問題などが一部でいわれています。今後、自治制度改革を検討していく中では、このような状況も踏まえ、市町村のあり方についても、どのような姿がその地域、住民にとって最もよいのか、広範な議論を重ねていくべきであります。
 さて、大都市行政について改めて考えてみますと、そもそも東京における大都市というのはどこまでの範囲を指すのかという疑問を抱かざるを得ません。今やいわゆる大都市の範囲は拡大し、杉並区と隣接する武蔵野市、三鷹市との間に制度的差異を設ける必然性があるのか、この点は、今後の東京という大都市の行政のあり方を考える上で十分な議論をすべき課題と考えます。
 そこで伺います。都政改革ビジョンⅢで特別区制度のあり方について検討していく際には、現在の二十三区の区域を前提として議論していくつもりなのか、所見を伺います。

○幡本知事本部自治制度改革担当部長 大都市の範囲の拡大ということでございますが、都制度が施行された昭和十八年から既に半世紀以上が過ぎ、その間、東京の市街地は、特別区の区域をはるかに超え、以前は農村であった多摩地域にまで連檐して広がるようになっております。こうした市街地の拡大、連檐という点からは、特別区と市との間で画然とした違いが見られなくなっております。
 都政改革ビジョンⅢにおいて中長期的視点から特別区のあり方について検討していく際には、現在の二十三区の区域に必ずしもとらわれる必要はないと考えております。

○田島委員 今お答えにもあったように、都制度が施行された時代とは大きく社会状況が変わってきており、区部とその周辺との違いがほとんどなくなってきています。また、特別区同士を比較しても、例えば人口八十万人を超える世田谷区と四万人に満たない千代田区が、同一の制度のもと、行政運営を行っています。しかし、千代田区の昼間人口は世田谷区の人口を凌駕し、他の地域からの通勤、通学者により九十万人を超えている状況があらわれています。
 そこで伺いますが、特別区のこのような地域的な違いは、行財政運営にどのような影響を与えるのか、考えをお聞かせください。

○幡本知事本部自治制度改革担当部長 特別区内部の地域的な違いということですが、昼間人口が多いいわゆる都心区などの地域は、一般に人々が働きにやってくる業務集積地といえ、法人税や固定資産税などの高い税収が得られる地域であります。したがって、そのような地域の自治体は財政力に富むわけですが、同時に、昼間人口に対応するさまざまな行政需要が発生すると考えられます。
 一方、昼間人口が夜間人口を下回るような地域は、一般に財政基盤が都心区などに比較して弱いと考えられます。
 また、通勤通学などによる人々の生活や活動範囲が基礎的自治体の区域をはるかに超えて広域化していることは、行政サービスにおける受益と負担が対応しないという問題が生じているといえます。

○田島委員 確かに昼間人口や夜間人口の格差などによる財政基盤の問題を含め、大都市における行財政制度というものは、時代の変化に十分に対応できず、ほころびが見え始めているのではないでしょうか。このほころびが致命的なものにならないうちに、東京という大都市の行財政制度について、しっかりとした時代認識に基づいた広範な議論、検討をしていく必要があります。
 その際、前回の提出資料にもあるように、海外の大都市制度などについて一度検証してみることも有意義ではないかと思います。例えば、一時期、かつての栄光を失い、斜陽の国とも呼ばれていたイギリスについて見ると、現在は堅調にその経済を拡大させています。このイギリスの発展を力強く牽引しているロンドンにおいては、皆さんもご存じのように、昨年地方制度の大きな改革が行われ、ロンドン全体を包括するGLAと呼ばれる新しい大ロンドン庁が設立されています。
 ロンドンの地方制度の歴史を振り返りますと、一九六五年四月には、ロンドンの広域化に伴う行政需要へ対応するため、現在の三十二のバラとシティーを合わせた、初めて広域自治体として大ロンドン庁、GLCが創設されました。
 しかし、効率的行政運営を目指すサッチャー政権のもとで、政治的な思惑も背景にしながら、一九八六年にはGLCが廃止され、ロンドンは基礎的自治体のみから成る一層制の地方制度を採用することになったわけです。
 しかし、その結果、ロンドン全体の利益を代表する機関が存在しなくなり、交通や土地利用など大都市におけるさまざまな広域的課題に十分に対応することができない状況になりました。
 そこで、ロンドンの行政を総合的に実施するため、また、ロンドンが世界の大都市の一つとして一層の発展をすることを目的に、再び新たな広域自治体であるGLAが設立されることになったのです。
 東京において国際競争力の低下、魅力の低下が指摘されている一方で、ロンドンは世界都市として魅力を引き続き保ち続けています。私は、歴史や文化の異なる海外の制度を我が国にそのままの形で適用すべきとは思いませんが、広域行政課題への対応といった制度改革の視点などは、大いに参考になる点もあるのではないかと思います。
 そこでお伺いしますが、ロンドンにおけるGLA設立という制度改革は、この東京の自治制度の改革について検討していく上でどのような点が参考になるか、ご所見をお願いします。

○幡本知事本部自治制度改革担当部長 ロンドンにおいて広域的課題に対応するため、一度は廃止された広域的自治体が再び設立されたことは、大都市としての機能の確保を考える広域的自治体が必要であることを示したものであり、今後、東京という大都市の地方自治のあり方を考えていく上でも示唆に富むものであると考えます。
 しかしながら、GLAは設立されて間もないこともありますので、今後も引き続きその動向等を見守っていく必要があると考えております。

○田島委員 確かに、大都市の行政制度というものは、大都市が抱える課題の多さからしても、どれが最もよいかというのは非常に難しい問題だといえます。そのためにも、今後ともこの委員会の場でさらなる議論が必要であると考えます。
 そこでお伺いしますが、東京という大都市の行財政制度について、今後どのような視点で検討していくべきと考えているのかお聞かせください。

○幡本知事本部自治制度改革担当部長 首都東京が、都市間競争を勝ち抜き、世界を代表する魅力あふれる都市となるよう、また、そこに住み、働くすべての人々が安全かつ生き生きと活動できるような都市となるよう、首都圏における広域化の状況、分権改革の動向、大都市としての機能確保などを総合的に考慮して、東京の特性に最も適した行財政制度を構築していかなくてはならないと考えております。
 具体的方向につきましては、現行の制度や仕組みの有効性についても十分に検証した上で、本委員会を初めとした都議会でのご議論等を踏まえ、検討してまいります。

○田島委員 本日は大都市東京の自治制度を中心に議論してきましたが、冒頭にも申し上げたように、制度改革というものは、一見地味なようですが、社会に対する影響も大きく、非常に難しいものです。現実を直視しながらも、将来を見据え、また、人々に希望を与えられるものでなくてはなりません。
 そのためにも、大都市制度や広域自治制度のみならず、税財政制度や住民自治のあり方なども含めて、多様な論点を整理し、じっくり議論していかなくてはなりません。
 そこでお伺いしますが、この際、今後の議論の素材として、理事者側で自治制度をめぐる論点といいますか、現在問題となり議論されている点などを整理したものを示すべきと考えますが、いかがでしょうか。

○幡本知事本部自治制度改革担当部長 自治制度をめぐる論点や問題につきましては、国においても検討を始めたところですが、国と自治体との役割分担や税財源配分のあり方を初め、広域的自治体や基礎的自治体のあり方など、さまざまな議論がなされております。 
 先生ご指摘のように、今後、自治制度全般について議論を深めていくためには、現行制度や将来の制度構築に当たっての問題点や論点などを把握し、整理することが不可欠であると考えます。
 今後、これまでの当委員会の議論も踏まえまして、問題点や論点を整理した資料を作成し、できるだけ早い時期にご報告をしたいと考えております。

○田島委員 来年は、一六〇三年に徳川家康が江戸に幕府を開府してから四百年目を迎えますけれども、この間の長い歴史の積み重ねにより、東京は世界を代表する都市にまで発展してきました。
 しかしながら、今日、首都東京の低迷が大きな問題となっているわけなんですが、我が国の再生のためにも、都市の時代を迎えた今、東京のこれまでの蓄積を生かし、さらに新しい時代の流れを切り開いていかなくてはなりません。
 そこで、都政は今非常に重大な局面を迎えています。世界における東京の地位を再び確固たるものとし、都民が安心して暮らせるためには、都政が解決すべき課題は山のようにあります。現状を打破するための新たな政策を立案し、実行することに加え、旧態依然とした制度や時代に合わなくなった仕組みを抜本的に見直していく必要があると思います。 
 そこで、最後に知事本部長にお伺いしますが、東京を再生し、我が国を再生するためには、都市再生のための政策を着実に実行することと同様、大都市行政のあり方など自治制度そのものを改革することも重要な取り組みの一つだと思います。
 この点に関する知事本部長のお考えをお聞かせください。

○田原知事本部長 現在、都におきましては、国や関係自治体とも連携をしながら、東京の再生及び首都圏の再生、さらには我が国の再生ということになろうかと思いますが、このために、さまざまな施策に取り組んでおるところでございます。
 自治制度の改革につきましては、社会状況の変化に対応し切れなくなっている現行の地方自治制度を変えるとともに、首都圏の再生、それから日本の再生に向けての施策をより円滑に、効果的に実施できるための自治体のあり方、行財政運営のあり方を実現するためにも、非常に重要な取り組みであると考えております。
 本委員会を初めといたしまして、都議会でのご議論、関係者のご意見を参考にさせていただきながら、改革の具体的な方向をお示ししてまいりたいと思っております。

○田島委員 今のお答えにもあったように、我々議会側と執行機関側とで、東京の再生、そして、さらなる時代に適応した自治制度のあり方を示していくことが、今求められています。
 今後、当委員会において、都民のため、そして東京の将来のため、お互いに知恵を出し合い、真摯な議論をさらに積み重ねていくことの大切さを訴え、私の質問を終わります。

○和田委員 大きくは二点にわたってお尋ねいたします。
 まず初めに、七都県市首脳会議を中心にしたものと、その後に、ただいまもお話が出ました市町村合併に関する検討の指針に関連して、大きくお尋ねしてまいりたいと思います。
 まず初めに、七都県市の首脳会議があります。これは、しばしば、石原知事も出られて、他の知事とも意見交換をしながら、新聞紙上、マスコミ紙上に大きく報道されるわけでありまして、そのことで東京都の政治あるいは首都圏の政治がどのように変わるのか、どう変えようとしているのかという、都民、国民の耳目をそこに集中する効果は十二分に私どもは評価をするものなのです。
 さて、そこで、この七都県市の首脳会議というものの性格などについてこれから伺っていきたいと思うんですが、この広域的な連携の仕組み、そしてまた広域行政を効果的に展開していく上で、どのような問題がこの七都県市首脳会議の中に内在をしているのか、まずお伺いいたします。

○幡本知事本部自治制度改革担当部長 七都県市首脳会議のような広域的な連携の仕組みについてお答えしたいと思いますが、首都圏で発生しているさまざまな広域的な課題を解決するため、七都県市首脳会議は、防災や環境などの行政分野について協議、取り組みを進めて、一定の成果を上げてきました。しかし、各都県市の利害や実情が異なるため、調整が困難で時間もかかるなどの問題が指摘されております。
 また、現行の広域連携の制度には、協議会や一部事務組合、広域連合などがありますが、いずれも構成団体の負担金により運営されるものであり、課税権がないというような根本的な限界があります。

○和田委員 要するに、うたい上げる活字の大きさですとか、報道されるテレビでの時間の長さというものは、それなりに華々しいものがあるのですが、今、幡本部長の答弁のとおり、肝心な課税権、それを動かしていく税金を課する力がない組織であるということでありますから、いうならば、見ばえはいいのですけれども、動かすエンジンのない自動車のようなものといっていいかもしれませんが、それが七都県市の首脳会議の実態であるということだと思うんです。
 さて、この七都県市の首脳会議が、それでは一つ合意に達したといたしまして、課税権はともかくとして、それぞれの自治体に持ち帰って、我々はほかの六の自治体とこのような取り決めを交わしてきたので、それをどうぞ都議会の皆さん、あるいは都民の皆さん、そういう形なので取り決めに従ってほしい、それに理解を示してほしいというような拘束力というものをこの会議は持っているんですか。

○熊野知事本部参事 七都県市首脳会議におけます合意は、原則として全会一致でございます。ご質問のような法的拘束力はないということでございますが、各自治体におきましては、これらの合意を尊重して、施策の実施など行財政運営を行うことが当然のことであろうと考えております。

○和田委員 要するに、さきに申し上げたとおり、見ばえはいいけれども、エンジンが入っていない車だと。なおかつそれを運転するルールもまだ確立されていない、法的拘束力もないということです。
 したがいまして、七都県市首脳会議そのものの華々しさというのはよくわかるのですが、全く実体がそこに込められていない。ましてや、そこで合意に達したものであっても、では議会との関係はどうなるんだろうか。大統領ひとりで決めて、肝心な都民から選ばれている議会の存在はそこではどういうふうに連携をしてくるのかなという問題についても、いまだにはっきりはしていません。
 ただひたすらに新聞の活字上あるいはテレビの画面上に華々しく登場して、こんなことを話し合ったよ、こんなことを決めようとしているよということだけでありまして、実体が何もない。こういうことが七都県市首脳会議の実情だろうと思っています。
 そこで、実体を持っている我々議会との関係をどういうふうにつくっていくのかということも、この七都県市首脳会議のこれからに向かっては必要だろうと。我々議会の方から知事に提案して、それをほかの六つの自治体に持ちかけるということももちろんあり得ましょうし、知事がほかの自治体の方と話をして、それを議会の方に、このような方向で今動きがあるけれどもどうだろうかという説明もあって、相互にそれぞれが持っている権能なり機能というものを生かし切って、都民のためにあるいは首都圏の住民のために、この七都県市首脳会議を動かしていかなければならないというように思うんです。
 今私が申し上げたとおり、議会と知事との関係、相互補完作用といいましょうか、権能といいましょうか、機能と申しましょうか、これについてはどのようにお考えでしょうか。

○熊野知事本部参事 先生ご指摘のとおり、提案に関しましては、行政サイドから提案する場合もあれば、議会の先生方からご提案になる場合もあろうかと思います。
 いずれにしましても、最終的に七都県市で合意を得た事項につきましては、議会の先生方のご理解を得た上で実施に移していくという手はずになろうかと存じます。

○和田委員 よくサミット会議などということで華々しく報道されますが、あくまでもそれは、議会なり議決の対象になる機能、権能をしっかり把握をした上で、サミット会議、それは国レベルも自治体レベルもそうですが、行われるべきものでありまして、何か七都県市の首脳会議ですべてが動いているような錯覚を都民に与えるということはいかがなものかというふうに思いますから、時に応じてきちっと議会の方に報告する、あるいはこういう方向であるというような情報の提供なども、これから七都県市の首脳会議をより生かす意味では、ぜひ心して当局は取り組んでほしいということを要望いたしておきます。
 それから、この七都県市の首脳会議についてでありますけれども、構成団体の間で、先ほど説明がありました、利害対立があったりしてなかなか事が運ばない事例もあるということでありましたけれども、そうとするならば、あえて利害が余り対立しない課題、分野を選別して、それをお互いに達成していく過程の中で、連携あるいは広域的な連帯の体制強化をしていくべきだというように思うのでありますが、これについてはどのようにお考えでしょうか。

○熊野知事本部参事 先生今おっしゃったように、また幡本部長からご答弁申し上げましたように、広域的な連携を図る上でお互いの利害や実情が異なる、そういったことから調整が非常に困難である事項が多くございます。また、調整が可能な場合であっても時間がかかるといったような問題点があることは、否定できないことだと思います。
 したがいまして、私どもといたしましては、連携強化を図るためにできることから一つ一つやっていく、着実にそれを積み重ねていくということが重要であろうと考えております。

○和田委員 今、総論的には熊野参事の方からご答弁ありました。具体的には、大気汚染ですね。大気汚染というのは、まさに七都県市が、全体に浮遊して動き回る大気の汚染の、どのように対策を練ったらいいかというようなことでは、広域行政の最もモデル的な問題であっただろうと、過去にあっただろうと思うのですが、どのような連携を七都県市を中心にして首都圏で図ってきたのか、また、障害があるとすれば、どのようなものが障害であったのか、さらにその成果については、ほかの課題や障害の解消にどのように生かされようとしているのか、これについてお伺いいたします。

○熊野知事本部参事 七都県市首脳会議におきましては、首都圏におけます大気汚染の問題の解決を目指しまして、特に自動車公害の対策に重点的に取り組んでまいりました。
 その過程におきましては、根底にあります財政問題であるとか、あるいは道路や物流などの置かれた条件の相違によりまして、必ずしも足並みがそろわなかった経緯もございますが、この間、冬期の自動車利用の抑制、あるいは七都県市低公害車指定制度の創設、さらにはディーゼル車の排出ガス規制におきまして、他県も共通の内容の条例を定めるなど共通の取り組みを実施して、大気汚染対策に一定の成果を上げてきたと考えております。

○和田委員 今のご答弁のとおり、大気汚染については相当に連携が保たれて、なおかつその成果が都民の健康被害の減少にも着実につながっているという、いい例だろうと私は思うのです。
 このように、かみ合う問題からまず手を染めていって、そして、そのことで首都圏というものの持っている、置かれている共通の都市環境といいますか、そういうものにつなげていく、リンクしていくというトレーニングの一つの課題として、一つ一つのテーマを取り上げて提起をし、そして実現方を図っていくべきだというふうに思います。
 その意味で、もう一つ私どもの方から提案したいのですが、例えば環境対策というときに、しばらく前にも取り上げましたけれども、東京湾という、これは水でありますが、今ここにある水は必ずとどまっておりませんで、東京湾の中の神奈川地域の海水は、いわゆる東京のエリアにも来るし、千葉の方にも行く、あるいは太平洋に出ていくというような、そういう流れがあるわけでございますけれども、この東京湾の自然環境の保全という意味では、大気汚染に引き続いて、共通のテーマとして七都県市が取り組める可能性の高いテーマではないかと思うのです。
 第四回定例会で私どもの質問でも取り上げましたが、風の道構想などという、ヒートアイランドの対策として、東京湾の風というものを、もっと東京のヒートアイランドの減少に向けて利用すべきだというようなことを提起し、当局の方もモニタリングをするなどというような具体的な答弁も返ってきましたが、東京湾そのものを七都県市共通のテーマに取り上げて、環境の汚染もそうでしょう、あるいは海上交通の安全の問題もそうかもしれません、あるいは石油コンビナート、石油基地といいましょうか、保管している場所もありますが、そういうことの安全、災害対策などの問題も含め、七都県市が極めて共通認識を持ちやすい課題だと思っておりますので、東京湾の環境の保全などの問題が、大気汚染に引き続く新しい七都県市の共通のテーマになり得るのかどうなのか、それについてお伺いいたしたいと思います。

○幡本知事本部自治制度改革担当部長 広域的課題の取り組みということでお答えいたしますが、東京湾のような広域的課題についてでございます。
 これにつきましても、例えば、東京湾は首都圏共通の海であるとの認識のもとに、さまざまな課題について、国や首都圏の自治体と連携、協調しまして、共同して取り組んでいくことが重要であると思います。
 東京湾を取り巻く課題を総合的に解決していくためには、法令上の課題や国との関係、都県市間の役割分担など、解決するべき課題は多岐にわたっておりまして、関係者間で調査検討を深めていくことが重要と考えます。

○和田委員 積極的に東京湾の自然環境というテーマに沿って、七都県市が共通のテーマにしていくという明言ではなく、あるところ法令上にいろいろ障害があったりするので、それを一つ一つ丁寧に克服しながら検討調査をしていくというような、そういう前提づきの重要課題だという認識だと思うのです。
 ただ、これにつきましても、国の考えている、国の持っている東京湾にかかわる法律が何本かありますけれども、できれば七都県市、自治体の問題でもあるわけでありますから、そういう隘路を縫って、できる限り東京湾の保全という問題について努力をしてほしいということは、強く要望しておきたいと思うのです。
 さてそこで、今出ましたが、法令上のいろんな拘束が国に依然として保持されているというようなことから、国が自治体の考えている広域行政に大いに支障になっているということがあると思うのですが、具体的にはどういう問題が今、東京プロブレムとしては考えられるのでしょうか、お答えいただけますか。

○幡本知事本部自治制度改革担当部長 国が広域的課題に対応する場合の問題ということでございますが、地方自治体の場合には、長のリーダーシップのもとに、各部局を束ねた総合行政を行うことができるわけですが、国におきましては、省庁再編後も依然として縦割り行政の弊害が残っている。例えば環境行政におきましても、幾つもの所管に省庁が分かれているというようなことで、調整がなかなか難しいという問題がございます。そのように、総合行政が困難であるといわれております。
 また、国の場合には、地方自治体とは異なり、直接請求制度がないなど、地域の住民ニーズを的確に反映させる仕組みがございません。こうしたことが、首都圏の広域的な課題に対し、国が対応する場合の問題点と考えております。

○和田委員 確かに中間的に自治体がありますから、直接請求も含め、住民が国に向かって物を申すという機会はほとんどないわけです。したがって、それだけに住民の意思の直接受け皿となる東京都なり、他の自治体の存在が大変重要になるわけでありますから、単に国の縛りがこうだからという形ではなく、地方分権という時代でもありますだけに、与えられた権能の中でいろいろな知恵を出して、住民の直接請求制度がない国に向かっての言葉を東京都がすくい上げて、国につなげていく、国を変えていく、そういう意気込みをぜひ持って、これからも対処していただきたいというふうに思います。
 さて、そういう一つ一つの障壁があるわけでありますけれども、これを私ども民主党としては、一つ解決する方法としては、抜本的に広域行政を稼働させるためには、道州制の導入が一つの解決の糸口ではないかなというふうに思っているわけでありますが、これについては、広域行政の進展と道州制の導入をどのように当局はお考えになっていらっしゃるのでしょうか。

○幡本知事本部自治制度改革担当部長 首都圏で生じているさまざまな広域的な課題を解決するためには、現行の都道府県制度にとらわれることなく、道州制論も視野に入れて、新たな広域的自治体のあり方について検討していくことが必要であると考えます。
 その場合、現行制度を活用し、その改善も含めて着実な取り組みを一つ一つ積み重ねていくことが重要であります。そのため、七都県市首脳会議などの場を通じて、首都圏自治体の共通の取り組みをさらに強化していくことが、広域課題の当面の解決には不可欠であると考えております。
 また、広域連合などの仕組みを活用し、首都圏において、総合的かつ計画的に広域行政を推進していくことも検討していくべきであると考えます。

○和田委員 今、幡本部長の方からご答弁のあったいわゆる広域連合ですね、その仕組みの活用も必要だということだったのですが、その限界といいましょうか、それについてはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。

○幡本知事本部自治制度改革担当部長 広域連合は、他の広域連携の制度と比べまして、国等から事務、権限の移譲を受けることも可能となるなど、多様化した広域行政需要により的確に対応できる仕組みとなっております。
 しかし、課税権がないことや調整に時間がかかることなど、広域行政を構成自治体から独立して総合的、機動的に展開するためには、依然として課題があるものと考えております。

○和田委員 これまた広域連合のよさを認めながらも、やはり課税権がないこと等も含め、完全なものではもちろんないということで、限界を幡本さんも今述べられたところです。八方ふさがりなこういう状態の中で、私たちは何か、どこかに足がかり、手がかりをつけていかなきゃならないと思うのですが、例えば、道州制と、さきに触れましたこの制度について、七都県市、いわゆる首都圏にだけこれを導入していくというような先駆的な着想、発想といいましょうか、これについてはどのような感想をお持ちでしょうか。

○幡本知事本部自治制度改革担当部長 画一から多様へというのが時代の大きな流れでありまして、各地域がそれぞれの実情に基づいて個性豊かな発展を目指していくことが大切であります。自治制度のあり方につきましても、地域ごとに異なることもあり得るものと考えております。
 また、首都圏の再生は日本の再生の早道であり、首都圏の抱えるさまざまな課題の解決を図るため、他の地域に先駆けて、新たな広域的な自治制度の導入を検討することも必要であると考えております。

○和田委員 当然、全国的な一つの制度導入ということは理想ではありますけれども、その必要に迫られている首都圏、とりわけ広域行政が今一番求められているこの大都市東京を中心にした首都圏に、道州制というような、先ほども出ましたけれども、区域の変更、行政区域の拡大というような問題も含め、そのような検討にぜひ入っていただけるかなと思っているわけであります。
 さて、首都圏で道州制などを導入した場合、とりわけ広域的自治体を設けた場合、現在東京都が持っている、実施している水道行政ですとか消防行政、これは基礎的自治体の仕事といわれておりますけれども、これについてはどのような形に取り扱われるというふうに想定されるでしょうか。

○幡本知事本部自治制度改革担当部長 仮に首都圏で道州のような新たな広域的自治体を設けるとした場合に、基礎的自治体との間の役割分担、先生のご指摘のありました水道や消防行政を含めまして、その役割分担につきましては、将来的に大都市制度や基礎的自治体のあり方がどうあるべきかということとあわせて検討することが必要と考えます。
 基本的には、住民に対し最少の経費で最も良質なサービスを提供するため、効率性の観点を踏まえることが重要ですが、あわせて、ご指摘のあった水道や消防など個別の事務の首都圏における具体的状況を勘案しまして、役割分担を検討することが不可欠であると考えます。

○和田委員 戦後もここまで成長したり、今停滞したり、経済だけにとどまらず、行政や政治の流れも起伏が激しい時代になりました。その中で、私たちの生活範囲あるいは活動範囲というものが極めて広がってきているわけでありますから、当然のことながら、生活をする範囲の区域の一つであります自分たちのコミュニティを含めた町、区、市、東京都のエリアというものも含めまして、可変、変えることは可能なわけでありますから、私たちが、いつまでも同じ旧態依然とした制度の中で新しい生活を営むというよりも、新しい生活にふさわしい行政区域なり活動範囲というものをその都度積極的に取捨選択をしていく、そういう時代が今目の前に迫っていると私は思うわけであります。
 したがいまして、今まで触れてまいりました七都県市の首脳会議の実態のもたらすそういう動き、あるいは今申し上げた道州制の問題を含めまして、これから、都民の目の前に迫っている行政の焦眉の急のこの課題につきまして、この委員会を通じ、私どもは積極的に発言をすると同時に、理事者側の方の真剣な検討もそのつど点検をさせていただきたいというふうに思います。
 次の質問に移らせていただきます。
 次の質問は、市町村合併に関連をする問題であります。ここに平成十三年、二〇〇一年一月に東京都から出された市町村合併に関する検討指針というのがございます。これをつぶさに見てまいりますと、特別区や島しょを外して三十一市町村に限ってゾーニングをしようというふうに、ここに具体的に書かれています。では、なぜ特別区を、あるいは島しょを外すのか、これについてまずお伺いいたしたいと思います。

○反町総務局行政部長 特別区につきましては、ご案内のとおり、大都市制度が適用されておりまして、事務あるいは税財政においても特別の仕組みになっておりまして、現段階で市町村と同様な合併の指針を示すということは適当でないということで、現在、特別区につきましては、検討指針の策定に向けまして検討中でございます。
 それから、島しょ地域につきましては、地理的な条件から、市町村と同じような合併の指針で適用していくことが難しいということから、現時点ではそれを外して、その他の市町村についての検討指針というものを策定したということでございます。

○和田委員 昨年一月のこの検討指針では、確かに市町村の三十一自治体を検討なんですが、今、特別区については検討中ということでありまして、この指針によりますと、目安は大体人口二十万といっているのですよね、この中でも。
 それから、市と区が話し合って区が市に入る分には構わないということまでは、検討指針の中では報告されているのですが、区区間の合併とか連合といってもいいかもしれません、それについての検討を今されているやに聞いておったのですが、いつごろの報告になりますか。

○反町総務局行政部長 特別区につきましては、さまざまな事情がございまして、大都市事務の実態であるとか、あるいは住民の意識の問題、それから税財政上の財源の偏在の状況とか、そういったものを現在調べておりまして、その調査結果を待って、それらを踏まえて指針をつくりたいと思っておりますので、現時点でいつというふうにちょっと申し上げられないので、ご容赦いただきたいと思います。

○和田委員 私も昨年一月の検討指針を読んで、特別区を、今おっしゃったような税財源のいろんな偏在の問題などを含め、まだ解決する問題があるからということで、これには盛られなかったと思うのですが、当然行政区域の可変はあっていいわけでありますし、市町村にとどまらず、区区間の、あるいは区市間もあっていいと思います、区村間もあっていいと思いますけれども、そういうことがダイナミックに検討されるべきだろうと思うのです。
 それについても、この去年一月に出されたものから余り時間を置いて区市あるいは区区間の問題も含め指針を出されるということよりも、できるだけ早く出されて、東京都全体の、二十三区も、あるいは今ここに出されている三十一市にとどまらず、トータルでいろいろな合併や連合というものを考えやすい材料は提供すべきだというふうに私は思うのです。
 それを受けとめるのは住民であり、各当該自治体それぞれが考えるべきことでありますが、メニューといいましょうか、考え方というのは東京都がまず出してみるということでありますので、その方向づけでもう一度確認をさせていただきたいと思います。

○反町総務局行政部長 繰り返しになりますが、現在、特別区の行財政運営の状況、あるいは特別区の地域的な特性、それから区民の生活行動圏、こういったものの調査を行っておりまして、できるだけ早くこれらをまとめた上で指針という形でお示しできるようにしたいと考えております。

○和田委員 わかりました。できるだけ早くという言葉に期待をかけさせていただきたいと思うんです。
 その区区間の合併、連合ということの前に、十二年四月一日の自治法の改正によって、廃置分合が可能となりました。要するに合併以前の区域の変更ですね。これについて、その手続などについてはどのようになるのか、改正されたのか、お伺いいたしたいと思います。

○反町総務局行政部長 特別区の廃置分合につきましては、従前はその発議権は都知事にあり、各特別区には発議権はなく、同意のみとされておりましたが、お話のとおり、地方自治法の改正によりまして、特別区の自主性、自立性を高める観点から、基本的には市町村の廃置分合と同様、特別区が発議権を有することになりました。各特別区の申請に基づくことになってございます。
 また、境界変更につきましても、従前は関係特別区の申請を要せず、都知事が発議するとされておりましたが、同じく地方自治法の改正によりまして、その手続は市町村と同様になり、関係する特別区全部の申請に基づき、都知事が行うこととされております。

○和田委員 市町村の合併特例法が、二〇〇五年までの間にやる分には十年間の特例公債の発行を認めるとか、相当インセンティブをつけて国が動いてきています。しかしながら、千の自治体に変えたいというところを、まだまだそのような動きにならずに、全体の二割ぐらいが今動き始めたのかなという方向も出されてきています。
 しかし、その特例法の中で動くものとは別に、東京都としても、やはり合併に関する検討指針というものをそれ以前に打ち出して、昨年来来ているわけでありますから、これについて、まず東京都の基本的な指針についての姿勢についてお伺いいたします。

○反町総務局行政部長 国につきましては、平成十七年三月までに合併したところにつきまして、合併特例法による優遇措置等ございますけれども、東京都につきましてはそうした期限を設けておりませんので、それとは別に、東京都の合併指針に従って合併ができていった場合、それついて東京都としては独自の支援を行う、そういう考え方でございます。

○和田委員 それでは、具体的にこの中にも書かれておりますけれども、既に行われました西東京市のケースの場合、国からの財政支援は、今申し上げた合併特例債の元利償還にかかわる十年間の六十一億九千六百万円ですか、それが予定されている。東京都の場合には、交付金として、十二年度分として四億五千八百万円というような形で、財政支援で合併を応援してきたわけであります。
 この具体的なモデルは西東京市にもう既に存在するわけなのですが、これについて手短にご説明いただければと思うわけであります。

○反町総務局行政部長 田無市と保谷市が合併に至った経緯についてご説明させていただきます。
 両市は、保谷市が田無市を包み込むような地形となっていることもございまして、両市の住民の生活行動が市域を超えて行われていたことから、地域的な一体性がございました。そのため、昭和四十年には合意に至らなかったものの、保谷町、田無町二町合併協議会が設置されるなど、過去幾度か合併に向けた検討が行われた経緯がございます。
 今回の合併は、平成十年二月に両市の間で任意の合併協議会が、平成十一年九月には法定の合併協議会が設置され、平成十二年七月三十日に行われました住民意向調査結果を踏まえまして、昨年一月に実現したものでございます。

○和田委員 今申し上げた国の六十一億九千万円余は、十カ年にわたっての数字ですから、これを十分の一にしなければならないし、東京都の方も四億六千万円余ということでありまして、大きな自治体となった西東京市にとって、どれほどのカンフル剤になったかなという、財政支援の問題ですけれども、思うわけなんです。
 したがって、これから西東京市の声などを聞いて、国はともかく、東京都の財政支援のありようについては、より合併を促進できるような財政支援の方向をぜひとも強く検討いただきたいということを要望して、私の質問を終わります。
〔委員長退席、大木田副委員長着席〕

○鈴木委員 私の方からは、既にお二方から質問が出ておりますので、重複しない形で行いたいと思います。
 私も、当委員会で、理念としての広域行政のあるべき姿論、そしてまた、何をもってその核となる行政を行っていくべきなのかということはかつて行ってまいりましたし、それも、私の主張としては、首都圏版FEMA等々、積極的にかかわっていくべきだという、その種の質問をさせていただいた経緯があります。
 きょうは、さらに東京の持っている固有の都区制度、先ほどロンドンの問題等々、田島委員からもお話ありました、大都市にあっては、必ずそういう異なる特別の自治制度というものがしかれている例が、世界のあまた大都市圏にあることは、このいただいた資料等々、私たちもロンドンに視察に行って、いろんな経験もしてまいりました。参考になったことも確かであったと思っております。有意義でありました。
 そこで都区制度の問題でありますけれども、いただいた十二月二十一日の資料の一〇、一一ページに、明治十一年から平成十二年に至るまでの東京二十三区の区の淵源、十五区から始まって三十五区、それが二十二区になってすぐ二十三区になったという歴史的な経緯は、この中にコンパクトにまとめられているので大変参考になりますし、頭の中にこれはたたき込んでおいてもいいのではないかなと思っております。
 そこで、戦後地方自治法の施行によって、区は特別区とされたわけであります。原則として市と同一の機能を認めつつ、区長は公選とされましたけれども、それもつかの間、昭和二十七年の自治法の改正によって、特別区は都の内部団体とされた経緯もありました。区長は都知事の同意を得て選任することとなった経緯もありました。
 それ以後、特別区の自治権獲得の運動が続いてきたわけであります。私も区議を経験しておりますから、その運動の事の重大さ、やはり一番基礎的な自治体にいますと、何なんだろうというその経緯を私自身もつまびらかに経験をしてまいりましたし、その運動のあり方にとっても大変参考になったと私自身思っております。
 そして、平成十二年に都区制度改革がようやく実現して、特別区、私は荒川区でありますけれども、基礎的自治体として法的に位置づけられることになったというわけであります。これは、私たちが住んでいる自治体、団体として地域のニーズを一つ一つ反映していく最末端の行政運営をしていく、その中にどうあるべきかというこの姿を私たちはこれからも見守っていきたいと思っております。
 そこで、こういう制度というものは、変えてはならないということはあり得ないんで、私は万古不易論に立つわけでありません。この時代、社会経済の流れの中において、今申し上げたとおり、時代状況をきちっと察知しながら変えていく、適宜適切に変えていく、それが必要ではないのかなと、これからも思っております。
 そこで、この広域的自治体としての都が、ちょっと論をはしょってまいりますけれども、性格を変えていくとするならば、私たちの住んでいる、私の住んでいる特別区のあり方も、先ほど田島委員からもありました、現状のままでいいのかという問題、これは当然だと私は思います。
 都の内部における基礎的自治体である特別区との役割分担の問題、どちらが何を担当するのか、この問題が大変に重要になっているということを申し上げておきたいと思っております。
 こういうことを踏まえながら、都区制度について論議するわけでありますけれども、この論議をする上に当たって、二つの大変重要な視点があると思います。
 対内的には東京の抱えるこの都区制度、それから地方分権という対外的なこの二つの問題をどう整理していくか、そういうことを踏まえながら、きょうはこの二つからアプローチしていきたいと思っております。
 最初に、都区制度の方、対内的な、私たちの抱える都区制度の問題でありますけれども、都区制度改革のその後の状況についてまずお尋ねしたいと思うのであります。これを検証することが大事であると私思うんですね。この都区制度、基礎的自治体として、平成十二年、これを我々は待ちに待ったわけでありましたけれども、行政サービスがどれだけ地域住民に行き渡ったのか、目に見える形であらわれたのか、その辺もやはり一つこういう場所で検証しておくことも私は重要ではないのかと思います。
 そこでお伺いするわけでありますが、第一番目でありますが、都区制度改革によって特別区の行政サービスは、いろんな問題がありますけれども、具体的にどんな変化がそれぞれ自治体に見られたのか、具体的にお答えをいただきたいと思います。

○反町総務局行政部長 今回の都区制度改革によりまして、特別区は基礎的な地方公共団体として位置づけられ、それぞれの地域の実情を踏まえ、創意工夫を凝らして事業運営に積極的に取り組んでおります。こうした中、例えば教育の分野では、小中一貫教育を目指すなど、特色ある学校づくりに向けて、各区でさまざまな取り組みが展開されております。
 また、今回の都区制度改革において移管された事務の代表ともいうべき清掃事業について申し上げますと、戸別収集や、高齢者それから障害者の家庭を訪問する触れ合い収集をふやしたり、ごみの集積所の看板に目安となる収集時間を掲示するなど、地域の実情に応じたきめ細かな対応が行われております。さらに、来年度からは、一部の繁華街地域では夜間収集の導入を決定する区があるなど、これまでになかった動きもございます。
 今後も、各区において、それぞれの地域の実情に即して、より一層の行政サービスの充実に取り組んでいくものと考えております。

○鈴木委員 大変すばらしいやはり検証の結果だと私は思いますね。東京が抱えていたら、そこまでいかなかったでしょう、ごみ収集一つとってみても。今の反町行政部長のお答えの中で私は率直に感じます。夜間収集がこれから始まる区も出てくるでしょう。また、小中一貫教育も報道されていましたし、荒川区なんかは、いわゆる習熟度別授業をすべての小中学校でやろうということまでいい出している。これはすごいことだと思いますね。それだけ行政サービスが自分たちの地域のコミュニティから発していくという、私は大胆なやはり成果ではなかったのかと、評価したいと思っております。二十三区間競争、それがひいては日本の都市競争の時代のやはり先兵役となっていく一つのあかしとして、私はこれを評価しておきたいと思っております。
 そこでもう一つ伺いたいんですけれども、清掃事業の話は今出ました。いろんな具体的な事例を今お答えいただいた。それともう一つ気になるのは、都営住宅、百戸以下の都住は地元の区市に移管するという話も出ておりますけれども、この施設の移管なんかも、都区制度におけるやはり最重要課題ではないのかと私は思うんですね。この辺なんか、具体的に移管の今日における進捗状況、また、これからどのようにその移管が進められようとしているのか、おわかりになる範囲でお答えをいただきたいと思います。

○反町総務局行政部長 公営住宅、道路の事務など、都区双方で実施している事務につきましては、特別区が今回の都区制度改革によって基礎的な地方公共団体となったことを踏まえまして、都区の役割分担を明確にした上で、都区間で具体的に区へ移管すべき施設等の確認を行っております。この移管については、一律に進めるのではなく、それぞれの地域の実情などを踏まえながら、協議の調ったものから順次移管を行っておりまして、既に都営住宅で二十五団地、九百七十七戸、特例都道で五路線が移管されております。
 今後とも各区と協議しながら、その移管を着実に進めていきたいと存じます。

○鈴木委員 これは、今のお答えの中で、各区等地域の実情はそれぞれ異なっていることはよく私も存じ上げておりますし、それはお互いの話し合いの中で進められるべき問題だと私は思います。
 例えば私の住む荒川区でありますけれども、そう簡単にはいかないんですね。公営住宅法に規定された都営住宅と改良住宅、問題はこの改良住宅なんかもあるわけですよ。そうなると法的な存在位置が全然違ってくる。こうなると全然移管は進まないという、こういうこともあり、法的には整備をされていますけれども、地元ではノーサンキューという形になっていきますから、その辺もよく精査をしていかないと、ただただ受けろ受けろ、嫌だ嫌だという、このお互いのミスマッチであっては私はいけないと思っているんですね。
 やはり地元区に渡すのであれば、それなりの何かをつけてあげなければいけないんだろうし、ただただ受けろ受けろだけでは事は進まないと思って、一つの事例を私はご紹介申し上げました。
 その辺をよく見詰めていただきたいし、都住宅局もその辺はよくわかっていると私は思っております。そういう問題があり、一つ底辺に横たわっているということをぜひ私たちは指摘をしておきたいと思います。
 そして、論を進めたいと思うんですけれども、都区制度のあり方を考えていきますと、今の二つ、清掃事業といろんなもの、住宅の問題とやっておりましたけれども、この権限もさらに拡大していく、拡大してほしいというこの都区制度改革にとどまらず、それを上回って、やはりさらに地方分権というものがその上にかぶさってくると私は思っています。
 東京都においても、十二年の八月でしたか、第二次東京都地方分権推進計画が策定されているはずですね。区市町村への事務移譲を進めているところであると承っておりますけれども、このことについて伺いたいと思うんです。
 二次分権計画で提案をしている事務、それから権限の特別区への移譲、これらについて今日どのような進捗状況になっているのか、具体的にお答えをいただきたいと思うのであります。

○反町総務局行政部長 平成十二年八月に第二次東京都地方分権推進計画を策定いたしまして、区市町村への権限移譲を進めているところでございますが、この第二次地方分権計画の中で、特別区への権限移譲に関しまして、個別法による権限移譲制度と条例による事務処理特例制度とあわせて、二十五項目についての提案を行っております。
 このうち、十三年四月には、食品製造業等取締条例における食品製造業等の営業許可の取り消し処分などの四事務を特別区へ移譲いたしました。また、平成十四年四月の移譲を予定しているものといたしましては、租税特別措置法における優良住宅及び優良宅地の認定等の事務がございます。
 今後とも、特別区と十分な協議、調整を行った上で、着実に権限移譲を進めてまいります。

○鈴木委員 これはもう、進められるべきものは着実に進めていただきたいなと、私からも要望しておきたいと思うのであります。
 そのように、やはりこれは住民第一、住民の生活をより向上させるための手法でありますから、当然のことだと私は思います。
 そこで、最後にこの項目についての局長の決意を伺いたいのでありますけれども、この特別区の、今ずっと質問してきて、自主性、自立性を高めていくために、今後とも事務権限の移譲が大切であるということは、今のご答弁からもよくわかりました。これら大都市事務を含めた、特別区への今後ともさらなる事務権限の移譲について、局長としてのご見解をお示しいただければありがたいと思います。

○大関総務局長 建前の面からの答えと、実際に移譲する場合の問題があろうかと思っております。
 建前論から申し上げますれば、第一義的に責任を持つ特別区、これが基礎的自治体になったわけですから、基本的には積極的に移譲させるということは当然だと思っております。
 いざ具体的に移譲する場合に何が問題になっているかといいますと、やはりこれ、二十三区それぞれ、体力差といいますか、大変あろうかと思います。それから、地方自治法で規定されております市町村事務が自己完結的に実施できる特別区、これは非常に少ないわけであります。
 そういう意味では、大都市における地方自治法の事務といいますか、これをもう一度検討し直していただいて、その中で、いわゆる大都市の中の基礎的自治体で自己完結的にできる事務を基本的に積極的に移譲する、財源も含めて移譲するという考え方、それから、同時に、広域的にやった方がいいもの、これは逆に都道府県レベルで、首都圏レベルで実施していく、こういう方向で処理していきませんと、なかなか、建前論が先行していきまして、いざ受けろといったときに、本当にそれが受けられるのかということもございますので、これは、その辺、両面からの検討が必要か、このように考えております。

○鈴木委員 局長、率直なご答弁だと思います。やはり本音と建前、これはもちろんあるのはわかっているわけですからね。
 ただし、この二十三区にとっても、やはりお金をつけて--これなんですよ、やっぱり。これは当然ですよね。これがなくてやれやれといったって、そんなの受けるわけがないのでありますから。その辺の仕切りの問題、これは今、総務局長、本音で、これはやっていかなきゃいけない問題だと私は思っております。ぜひ、我々もバックアップいたしますし、また局長も、その辺、行政部長等々、がっちりと取り組んでいただきたい、こう思っております。
 かつて、こんなことがありました。一つの例なんですけれども、荒川区なんかは、私、荒川区だからいうんだけれども、いろんなまちづくりの手法をどの区よりいっぱいやっていた。やりたいと。しかし、どうしても、それは予算面の制約があってできなくなる。それは、一件算定方式といういろいろなものもあるんだろうと。そういう手法なんかもやはり弾力的に入れ込んでやれば、そういう面でそれぞれ体力がついてくるだろうという論議もかつてしたことがありますし、おかげさまでその辺クリアできたことは、この席をかりて厚くお礼を申し上げたいと思うのであります。余談になりましたけれども。
 次の論議に移っていきたいと思うのでありますけれども、都区制度改革とか地方分権改革ですべて大都市問題の整理が解決をするわけではあり得ないということは、私たちもよくわかっております。
 今、和田副委員長からも合併の問題も出ておりました。この問題は和田委員がやりましたので、私は避けますけれども、この東京都にしても、国を挙げて市町村合併を推進している今日であります。よくわかっております。
 承るところ、神奈川県なんかは、湘南市、藤沢とか平塚市を中心にして湘南市なんかという構想もあるやに聞いております。結構なことだと私は思いますけれども。そういう動きの中に、ただそれだけに矮小化されるのではなくて、首都圏全体も視野に入れた中長期的な視点からの制度のあり方論というのかな、そういうものもやはり私たちは検討していく委員会ではないのかなと私は思います、この委員会も。
 そう考えたとき、東京というこの大都市地域における都区の特殊な役割分担が存在をしていることは、先ほど都区間のこの構造等、述べたわけでありますけれども、このそれぞれの事務の分担をこれから中長期的にしていくことが、やはり我々に課せられた、この委員会に課せられた問題点を整理していく上での基準になるのではないかなと思います。
 そこで伺うのでありますけれども、特別区の区域における広域的自治体と基礎的自治体間の役割分担を、今までは、短期的な検証をして成果はどうだったか、こう聞いてまいりました。それから、本音、建前もあることはよくわかりました。
 それじゃ、中長期的にどんな方向づけを持ってこの問題提起をちゃんとしていくのか、こういうことをやはり考えておかなければ、私は論をなすことはできない、こう思っております。この辺はいかがでございましょうか。

○幡本知事本部自治制度改革担当部長 大都市としての特別区の区域における基礎的自治体は、将来的に地域における行政を広く担うため、大都市行政における一層大きな役割を担っていくことが期待をされます。
 一方、特別区の区域は一体となって一つの大都市を形成しているため、東京という大都市の総合性、一体性を確保することが重要であります。
 このような観点から、都政改革ビジョンⅢにおきましては、行政区域のあり方も含めて、大都市における広域的自治体と基礎的自治体の適正な役割分担について検討していく必要があると考えております。

○鈴木委員 幡本部長、これは抽象的なご答弁になるのはよくわかりますけれども、そういうものをきちっと理念として都政ビジョンⅢの中に織り込んでいくということでありますから、了としたいと思います。それをこれから我々がまた論議をし、お互いに議会と行政との車の両輪でこれをつくり上げていくということであろうかと私は思います。
 そうして、事務の分担、表裏一体のものでありますから、それにはやはり財源の問題が必ずついて回ると私は思います。
 そこで、この財源の問題をどうクリアするか、これをほったらかしにおいて、ただただ言葉だけを先行させたところで、これは何の役にも立たないわけでありまして、こういう場合の財源を含めた将来のあり方像、これもやはり明らかにしておかなければ役に立たないのではないかと思いますけれども、この辺は、東京都としてどう具体的に取り組もうとなさっているのか、お答えをいただきたいと思います。

○幡本知事本部自治制度改革担当部長 将来のあり方ということでは、基本的に大都市としての総合性、一体性を確保するという観点から、広域的自治体と基礎的自治体の役割分担を明確化し、それに応じた大都市における税財政制度を検討する必要があると考えます。
 そのためにも、広範かつ真摯な議論を重ねつつ検討を進めていくことが重要であり、都議会の皆様を初め、関係者の意見、助言も受けながら取り組んでまいりたいと思います。

○鈴木委員 最後、要望等、私の意見を踏まえておきたいと思いますけれども、財源の問題なのでありますけれども、東京都も、都版税調で、この辺の大都市税源のあり方、地方税財源のあり方等々、意見、要望をつけて、これから政府に物を申すわけであります。我々議員の中にも、その辺の、内田委員長を中心として税を考えるいろんな議員の集いもありました。集まりもありました。
 この問題を踏まえていくのに、私たちは、過日、八日でしたか、関西、中部、それから関東、このエリアの我々同志の議員が集まりまして、大都市税源を考える集いもやりました。行政のみに任せるのではなくて、我々政党人としても動こうじゃないか、積極的にということ、これは動きました。その夕刻、福田官房長官あてにも申し入れをして、皆さんの貴重な意見を踏まえていくという、こういうご答弁も福田官房長官からも--石井幹事長、今座っておりますけれども、中心になって、我々は動いてきたわけです。やはり個々の我々の役目として、そうやらなければ、この地方税源の充実、確保の問題は、ただただ東京都の石原知事にお任せというだけの段階のレベルではないと思います。
 過日の小泉総理の施政方針演説の中にも、そのくだりが入っておりました。六月までに基本的方針を示したい、こういっているわけですから。施政方針の中できちっと示したいといっているわけですから、我々はその実をとらなければいけないのではないかと思いますよ。経済財政諮問会議とか政府税制調査会等で検討の上、本年六月ころをめどに基本的方針を示すとおっしゃったわけでありますから、これは大きなチャンスだと私は思いますね。これだけに、やはりチャンスのときに我々が動かずしてということになる。動かなければいけない。
 ですから、理事者の各位におかれましても、ただ机上だけの言葉ではなくて、もぎ取る、こういう執念で、お互いに車の両輪でありますから、進んでいかなければ、この問題、税財源を確保しますという言葉だけの遊びに--こういう言葉は使いたくありませんけれども、遊びに終わりたくはありません、我々は。もぎ取るという、そのぐらいの決意で我々は戦っていきたいし、そのための特別委員会だと私は思います。
 そのことを最後申し上げて、きょうの私の都区制度改革の、実際の今までに行ってきた検証の問題、それから中長期的な事務分担、それから財源をどう確保するかというその決意等々、それぞれ私からも申し述べさせて、この論議を終わりたいと思います。
 以上です。

○吉田委員 それでは質問させていただきます。今期、行財政改革基本問題特別委員会が始まりまして、私、初質問でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 冒頭、自民党の田島委員からも、広域行政、自治制度のあり方を検討するに当たっては、単なる制度論ということではなくて、やはりこの東京というものをどういう都市にしていくのか、都心はどうあるべきなのか、そういう問題と一体に検討することが求められているのではないかというご指摘がありました。
 私も、その限りでは本当にそのとおりであると思いますし、かなりダブる点もありますので、きょう私は、そういう点では、今の広域行政の土台として今東京都が進めようとしている環状メガロポリス構造、今日、政府の景気対策とも相まって都市再生という言葉が盛んにいわれておりますけれども、こうした問題について若干議論をさせていただきたいと思います。
 その前に、先ほどから市町村合併の話がありました。新聞報道も出されておりまして、二〇〇五年の特例法の期限までにさまざまな動きがあるというふうにいわれておりますが、まずこの問題だけ、ダブらない範囲でちょっと確認をしておきたいんですけれども、この市町村合併をめぐる政府、国の動向、そして、それを受けて都下の市町村の動向が今どのような状況にあるのか、まずご説明をしてください。

○反町総務局行政部長 最初に、国の市町村合併に関する動向についてでございます。
 国は、平成十三年三月に都道府県知事に対し指針を示しました。そのポイントは、平成十三年中のできるだけ早い時期に知事を長とする全庁的支援体制を設置すること、二番目に、平成十三年中のできるだけに早い時期に、少なくとも数ケ所を、あらかじめ関係市町村の意見を聞き、合併重点支援地域として指定するというものでございます。その後、八月になりまして市町村合併支援プランを発表いたしましたが、ここでは自主的な市町村合併を強力に促進する必要があるとしてございます。
 次に、都内市町村の合併の動向についてでございますが、昨年一月に誕生いたしました西東京市について見ますと、長年の経緯の中で、両市が住民の意向を踏まえ自主的に協議を積み重ねてきた結果、実現したものでございます。
 その後の都内市町村の状況につきましては、合併へのステップとなる法定協議会や任意協議会を設置しておりませんで、多くの市町村では、市町村合併を今後の検討課題としている段階であると思っております。

○吉田委員 今、お話もありましたし、新聞でも報道されておりましたけれども、政府はさまざまな意図を持って進めておりますが、必ずしも、全国的にいってもそのような状況になり得ていませんし、まして東京の場合には、西東京市以降、具体の問題として、この市町村合併の問題が直接検討されていない状況だということだと思うんですね。
 私は、やはりあくまでも、原理原則の話に立ち返りますけれども、この合併というものは、それぞれの当事者である市町村の自主的、自発的意思が大前提であって、政府、ましてや東京都から、これを上から押しつけるようなことがあってはならないと思うんですけれども、東京都としての基本的な姿勢についてご説明、ご答弁をお願いいたします。

○反町総務局行政部長 市町村合併につきましては、住民意思を尊重しながら、市町村が自主的、主体的に考え、取り組むべきものでございます。
 都といたしましても、広域的団体として合併機運を醸成し、より積極的に合併の検討が行われるよう普及啓発に努めるとともに、市町村に対して適切に助言はしてまいりたいと存じます。

○吉田委員 今いわれました自主的、主体的に取り組むべきものであるという原則は、本当に貫かれなければならないということを改めて申し添えていきたいと思います。
 さて、冒頭申し上げましたように、私が議論したい問題は、この広域行政等の前提として進められようとしているメガロポリス構想、都市再生の問題であります。
 さまざまな要素があると思いますが、既に皆さん方ご承知のとおり、このメガロポリス都市再生戦略の最大の特徴は、自然発生的に進んできた都心への業務・商業機能の集中というものを、政策誘導でより積極的に推進をすると。しかも、従前の千代田、中央等の都心だけではなくて、新たに都心、副都心、それに秋葉原などを新拠点として、中央環状新宿線の管内全体をセンター・コアという新しい都心と位置づけるという、いわば都心部の拡大ともいえる計画だと思うんですね。そして、その周りに三環状幹線道路を通すというものだと思うんです。
 問題は、こういう形を前提として進めたときに、例えば東京が抱えております、先ほども東京湾の水環境の保全の問題が指摘されましたけれども、今都民の非常に関心の高くなっている地球環境の保全、地球温暖化防止、こういう点で果たしてどうなのか、また、従前から東京が抱えている大きな問題である交通混雑、遠距離通勤、こういう問題が本当に解決される方向なのかというような点について、限られた時間で議論をしたいと思うんです。
 最初に、地球環境の問題、温暖化防止の問題です。
 これは、京都議定書の批准問題もあり、東京の今の経済力からすれば、世界的に見ても、他の中堅の国家並みのCO2の排出量を東京都だけで担うという非常に責任の重さがあると思うんですけれども、それをまずお聞きいたしますが、この都市再生の戦略において、地球温暖化を防止するというような観点というものは、どのように配慮し、取り組まれようとしているのでしょうか。

○荒川知事本部企画調整担当部長 都市再生における地球温暖化防止策、あるいは環境対策についてでございますけれども、本年一月でございますけれども、環境局の方から環境基本計画が出されましたけれども、その中にも出てございますように、例えば事業活動に伴いましては、大規模事業者の地球温暖化対策計画書を事業者の方に義務づける、あるいは自動車などを使う場合には、自動車使用事業者に環境負荷低減対策について東京都の方から指導をしていくなど、数々の環境対策を進めているところでございます。
 今後とも、こうした計画に基づいて環境対策を進めていく、こういったことと都市再生とを同時に進めていくという考え方でございます。

○吉田委員 今、同時にというふうにいわれましたけれども、東京において、CO2の排出量に占める業務ビル及び自動車交通の比重というのは最も高い分野を示していると思うんですが、そのことを事実認識としてどうとらえていらっしゃるのか。
 もしそうだとすれば、都市再生の方向というものは、都心の業務ビルの新たな集中更新であり、それに伴って、当然自動車交通の新たな発生の増大という相矛盾したものになると思うんですが、どのようにお考えでしょうか。

○荒川知事本部企画調整担当部長 ただいま申し上げましたように、東京都がことしの一月に出しました環境基本計画によりますと、今後CO2が増加していく部門といたしましては、業務の部門あるいは自動車といったようなことが東京都全体として高まっていくというような見通しは環境基本計画で立てているところでございますけれども、これは、先生が今おっしゃっているようなセンター・コアといったようなものではございませんで、東京都全体でのとらえ方でございます。
 そして、業務は、確かに主としてオフィスであろうと思いますけれども、これはなぜ増加するかといえば、やはり最近のIT化によって電気量の増大が見込まれるので、こういったことで増加していく。あるいは自動車につきましては、道路整備自体が大変おくれておりますので、その結果、交通渋滞などが起こりまして、それによって自動車交通に伴う排出量がふえている、こういったようなことが考えられるというふうに思っております。

○吉田委員 極めて抽象的なお答えでしたけれども、私、具体的に聞きますけれども、業務がふえていくのはセンター・コアだけではないという旨のご答弁がありました。しかし、この都市再生メガロポリス構想というのはこれからスタートするわけですけれども、既にこの間の事実上の新たな都心への誘導策によって、センター・コア内の事務所あるいは商業というふうに分けることはできないかもしれませんが、相当膨大な新たな床面積が現時点で既に発生するというふうに私は認識しているんですけれども、どうですか。

○荒川知事本部企画調整担当部長 事務所床等についてでございますけれども、ちょうど一年前の予算特別委員会に都市計画局から提出いたしました資料によりますと、都市計画制度は四種類ございますけれども、市街地再開発事業、それから特定街区、総合設計制度、再開発地区計画、この四つの都市計画制度に基づいて開発事業者の方から平成十三年二月末現在において許認可の申請がなされている、そういった計画に基づく数値で申し上げますと、延べ床面積が八百ヘクタール、そしてそれに伴って就業人口が約十八万、それから自動車交通量が二十二万台見込まれているということで数値が出されております。ただし、これは純粋にこれだけふえるのでなくて、従来からその地域において都市活動を行っていたものも含めまして、こういった数字になっております。

○吉田委員 もちろん、すべて新規で更新されるものではなくて、事前の別な建物に入っていた事務所あるいは人々が新規の事務所に移るという側面はあるでしょう。しかし、丸の内の開発そのものを見ても、床面積は、従前と比べたら大幅に引き上がるわけですよね。今のお話でも、床面積総数で八百ヘクタール、これは多分新宿の事務所床の現在の到達点と同じか超えるぐらいの規模だと思うんです。就業人口十八万人、自動車交通二十二万集中発生ということになる。これが既に決定されて、動いている事業ですよ。
 その上に立って、さらにもっとこれを、センター・コアを中心にして業務・商業機能をより更新させていこうというのがメガロポリス都市再生戦略ですから、今でもこれだけ新たな過剰が進むときに、さらにこれを進めて、なぜ地球温暖化あるいは環境の立場からの都市再生といえるのかということは、もう明確だと思うんですよね。
 しかも、ご答弁がありましたから、参考までにいわせていただきますけれども、これは東京都環境白書です。東京の環境悪化と都心における業務ビルの集中がどういう関係にあるかということを明確に書いているんです。どういうふうにいっているかといえば、排出ガス規制の緩さとともに、東京の大気汚染を深刻化させているもう一つの理由は、東京、特に区部に大量の自動車が集中していることであるという構造を指摘しているんです。
 それだけではありません。さらに、では東京の区部の人たちが自動車が好きなのかという個人的な嗜好の問題かといえば、そういうライフスタイルの問題ではないと。そして、高密な自動車交通が区部に集中する理由は、この地域に密度の高い都市機能の集積があることにほかならないというふうに、東京の環境悪化の要因をずばり分析しているんです。
 今でも高密度なところに大きな原因があるところに、さらにそれを加速する、こういう点でいえば、私はやはり今まさに国際的な課題ともなっている地球温暖化防止、CO2の抑制、こういう点と都市再生が進める方向というのは、明らかに逆行するものではないかということを指摘させていただきたいと思います。
 次に、もう一つ具体の問題で、都心居住が進むんだということが都市再生メガロポリスの構想の中で共通していわれていると思うんですが、なぜ都心居住を促進しなければならないかということの背景には、多分、住職接近、遠距離通勤じゃなくて、身近なところに、仕事の近くに住める状態をつくろうよということがあると思うんですが、この基本的な見解といいますか、どうでしょうか。

○荒川知事本部企画調整担当部長 まず、都心居住についてでございますけれども、都心居住につきましては、一つの都市のあり方としまして、中心業務地区、いわゆる都心と、その周辺に産業地区あるいは住宅地区というふうに都市構造として分かれるのが通常でございますけれども、都市が小さいうちにはそれで一つの効率的な都市ができたわけでございますが、交通機関の発達によって都市が拡大したことによって、例えば朝方は都心に集中する、夕方になるとその反対になるということで、一方通行の交通の流れが起きると。そのために都市全体が非効率化する。特に交通の混雑が進むということで、これらを回避するためには、やはり一方通行ではない都市のあり方ということで都心居住を進める、あるいは業務については、都心だけでなくて、各周辺地区の業務核都市に分散配置するということが現在とられている策でございまして、今回の都心居住についてもそういった考え方が背景にあるわけでございます。
 なお、先ほどの先生のお話の中で、区部に自動車が集中しているということで、環境基本計画の中で書いている記述を、例えば都市機能の集積が都心にあるからだということをおっしゃいましたけれども、それだけではなくて、やはり東京を通る通過交通が区部を中心にして通過している、あるいは区部自体の道路がボトルネックを抱えている、こういったことによって交通渋滞が起こって車がなかなか動かないといったようなことがございますので、いろいろなとらえ方があるわけでございまして、環境基本計画書そのものは一つの分析でありますけれども、同時に、もう少し幅広いとらえ方が必要ではないかというふうに考えております。

○吉田委員 今、反論のつもりでいわれたことを、私も聞き過ごすことはできませんから、いっておきますけれども、私が述べたのは、私の個人的見解なり、一見解を述べたわけじゃなくて、東京都が発行して、冒頭あけてみればわかるとおり、別に石原知事の権威にすがるわけじゃありませんが、わざわざ知事のごあいさつが載っている環境白書がこういうふうに指摘していますよというふうにいったんですよ。
 しかも、さらにいわせていただきますけれども、通過交通が多いんだということについても、この環境白書は指摘しているんです。若干うろ覚えですから、細かい数は違うかもしれませんが、私の認識が正しければ、大ざっぱにいえば、区部を通過する交通のうち、区部から発生し、区部に帰着するための自動車は全体の九五%。要するに、九五%は区部を出発点とし、区部に帰着する。だから、五%が通過であって、九五%は、区部からスタートし、区部に帰る車なんだというのが、実はこの環境白書ですよ。では、首都高速だけを見たらどうかといえば、通過は三割、七割は区部を出発とし、区部に帰着するということまで、あえてそういう議論があるから、この環境白書は指摘しているんだということをいっておきます。
 それで、本題は都心居住だったわけですけれども、だから、やはり都心居住という点では、住職接近の実現というのが前提だと思うんですよね。ところが、この都市再生の一つの具体的な箇所である汐留、ここでは、住宅施設も整って完売されたというようなことが一時期新聞でもにぎわいました。もちろん、決して安いものではないと思うんですが。
 この汐留一つをとってみたときに、今の計画のフレームでの就業人口と居住人口というのはどのような配分になっているかご承知ですか。

○荒川知事本部企画調整担当部長 汐留地区の開発に伴う従業人口及び居住人口でございますけれども、従業人口につきましては約三万五千人、居住人口につきましては約四千人という計画になっております。

○吉田委員 ですから、汐留の場合には比較的居住機能を備えているというのは事実です。しかし、今いったように、就業人口が、現在の建設の到達点で、就業人口三万五千に対して居住人口が四千である、一割ちょっとですよね。もともとの計画は、たしか就業人口六万、居住人口六千というフレームで出発したというふうに聞いておりますけれども、結局その地域で住として賄うのは一割強である、強にしかすぎないというのが住職接近といっても現実であって、残りの九割近い方々は、引き続きそれ以外の地域からの通勤という構造には基本的に変わりがないというのが状況だと思うんです。
 同時に、普通の勤労者が住めるような住宅供給、要するにそこで仕事をしている一般サラリーマンが住めるような住宅供給となり得ているのかということも見ておく必要があるかと思うんです。例えば大変具体な話で恐縮ですけれども、汐留の分譲住宅の一般的な家族世帯といいますか、家族形成期といいますか、そういう方を対象とした価格はどの程度だったというふうに認識されているんでしょうか。

○荒川知事本部企画調整担当部長 都心居住でございますので、一般ファミリー世帯だけに限らず、専門職の方々なども住むということが想定されますけれども、現在汐留開発の中で住宅供給をしようとする計画を見てみますと、その中で、これはインターネットからとった情報でございますけれども、汐留の、これは昨年度分譲販売された民間住宅でございます東京ツインパークスというのがあるようでございますけれども、床面積が七十平米、二LDKタイプの部屋で六千八百万という表示がございます。

○吉田委員 私も実は同じ資料を見ているんですけれども、多分今比較的安いものを紹介されたと思うんですけれども、私もあわせて紹介させていただきますが、七十一平米で八千万円、八十五平米で一億円ちょっとという状況です。東京都の職員の方の平均年収がどのぐらいか確認しておりませんけれども、多分一般のサラリーマンが入手するという点では、やはりちょっとか、相当か、金額的には高いものだというのは事実だと思うんです。
 もちろん、さまざまな人が住まわれることも事実なんでしょうけれども、私はやはり住職接近という観点から見たら、必ずしもこういうやり方が満たすものでもないし、同時に、後から秋葉原の例に触れますけれども、汐留の場合にはこういう住宅施設が附置されていますが、秋葉原の場合には、住宅施設の附置は逆に免除というものもあるわけですよね。
 ですから、本当に都心居住ということならば、やはり都営住宅や公団住宅を初めとする公的な住宅の供給というものがきちんとフォローされない限り、一般庶民にとって本当に都心に住める、あるいは住職接近というものは実現し得ないと思うんですが、こうした都心居住を進める上での公的住宅としての供給計画なり、供給目標なり、あるいはその誘導策なりというものはおありなんでしょうか。

○荒川知事本部企画調整担当部長 都心居住についての東京都としての施策についてでございますけれども、現在東京都では、都心居住を推進するために、例えば総合設計制度等の手法によりまして、住宅床の割り増しを行っているところでございます。また、都心共同住宅供給事業等によりまして、都心部の集合住宅の立地を支援する施策を進めているところでございます。
 今後ともこうした計画を推進することによって、一層の都心居住を進めていきたいというふうに考えております。

○吉田委員 それは否定しませんけれども、やはり本当に必要な公的な住宅の普及支援策というものは、結論的にいえば、結局ないということなんですよね。
 同時に、結局再開発で一定の住宅を附置するということになれば、汐留はあくまでも一つの例ですけれども、どうしても高価な住宅しか提供できないということから見れば、量的な面、価格的な面からいっても、私は、盛んに都心居住、都心居住というふうに宣伝されるけれども、決してそんなに一般都民が入れるような状況じゃないんだということを指摘しておきたいと思うんです。
 最後に、この問題で、政策誘導型の都市づくりなんだということをいわれますけれども、私は、本当に都民が安心して暮らせるような東京という点でいえば、やはり都心部への業務・商業機能の集中あるいは交通の集中というものを本当に抑制するような政策誘導というものがない限りは、それはできないと思うんです。もう既に現在の計画で過剰状態になっているわけですけれども、どの程度に例えば抑制するかというふうな目標というものはおありなんでしょうか。

○荒川知事本部企画調整担当部長 自動車交通にかかわるご質問でございますけれども、現在、東京都では、都市構造全体の改変をするために、先生冒頭おっしゃいましたように、環状メガロポリス構造というものを実現することを目指そうとしているわけでございます。この実現のためには、単に都心だけではなくて、周辺、東京全体を、首都圏全体をにらんで都市構造をとらえていく必要がある。単に都心だけではなくて全体をとらえていく、また、それを都心対周辺という方向で見るのではなくて、環状方向に着目して、それぞれの都市が環状方向にも相互に連携していく、それによって都市の効率性や快適性を確保していく。
 それから、単に業務機能だけの配置を考えるのではなくて、居住、商業、文化なども含めた多様な都市機能を集積させていくという考え方に立って、環状メガロポリス構造を進めているところでございます。
 お話の都心の車の抑制につきましても、こういった都市機能、さまざまな都市機能を適正配置することによって、都心に集中しないように努めているところでございます。また同時に、そのためには、ボトルネックとなっております道路をきちんと整備すること、あるいは、それとあわせて、ソフト面としまして、TDM交通需要管理政策を進めることによって、都心部へ過度の車が集中しないように今後政策を展開していきたいというふうに考えております。

○吉田委員 ご答弁いただきましたけれども、実際としては、都心部に集中しないようにするといいながら、都心部での業務・商業機能というものを、国際ビジネスセンター、都市間競争に打ち勝つためにということで促進をしているというのが実態であり、本当に政策誘導というならば、そういうものをきちんとやはりコントロールするというのが本来求められていることだと思うんです。
 次に、汐留に続いて、秋葉原の問題について具体で議論をさせていただきたいんですけれども、汐留は鈴木都政時代からの経過で進められてまいった。今都政のもとで新たに進められようとしているのが秋葉原の開発であり、秋葉原ITセンター構想だと思うんです。
 そこで、まず、この秋葉原地区というもの、あるいはITセンター構想というものは、都市ビジョンや東京構想二〇〇〇、そして重要施策の中でどのように位置づけられているものかということを確認したいんです。

○佐藤財務局経理部長 秋葉原の開発につきましては、平成十二年に発表されました東京構想二〇〇〇及び東京都産業振興ビジョンで記載をされておりまして、秋葉原地区について、IT関連産業の世界的な拠点を形成していくということにされてございます。

○吉田委員 世界的な拠点にするということですけれども、都市政策上も、副都心と同時に新たに新拠点という概念を打ち出して、秋葉原はそれに当たるというふうになって進められているわけですよね。
 きょう私が改めてただしたい点は、そういう政策的意図に基づいて進められようとしている秋葉原のITセンター事業なんですけれども、もう先輩の皆さんご承知のとおり、旧神田市場の移転後の跡地約一万六千平米、現都有地を、ITセンターをつくろうという民間事業者に売却をする。売却によって、民間の力によってITセンターをつくるんだと。こういう民間の力で都市再生というものを進めていく一つの代表的な例というのが秋葉原だと思うんですね。
 しかし、この秋葉原、現都有地なわけですけれども、まさに都心部では、規模としては最大規模の跡地ですよね。しかも、これ常磐新線がここからスタートするんですか、そういう意味では今後非常に大きな意味を持った地域、当然、これを売却するということになれば、その資産価値というものも非常に大きなものがある。それだけに、こうした都有地の売却というものは、あるいは売却すべきかどうかということも含めて、本当に今真剣な検討というものが求められていると思うんです。
 ちょっとパネルを紹介しますが、これは産業労働局が三月に調査書というものを作成したときに、例えばITセンターというものはこのようなものですよというふうにつくったものなんですね。ITセンターといいますから、ITセンターだけをつくる業者に都有地を売却するのかというふうに私などは思っていたんですけれども、この産業労働局が作成した調査報告書を見ればわかるとおり、建物は二棟です。片方は十四階建て、片方はたしか三十九階建てです。ITセンターというのはこれなんです。ITセンターと書いてあります。こちらは、一部ショールームがありますけれども、ほとんど、これは見えませんでしょうけれども、これ全部オフィスなんですね。
 だから、ITセンターのために都有地を売却するというふうになっていますけれども、実態的に建つものは、ITセンターは量的には一部、大半は業務ビルがつくられるという仕組みになっているんです。
 ちなみに、全床面積における、あくまでも試算的な参考例ですけれども、ITセンターが占める床面積は二割にすぎない。
 こういうものなんだということを、私はちょっと事前に、ご承知の方もいるかもしれませんが、説明しておきたいと思うんです。
 そこで、ちょっと確かめたいんですけれども、要は、民間に土地を売り払って、民間がITセンターつきの業務ビルをつくるわけですよね。民間ですから、一体ITセンターとしてはいつまで拘束されるのか、東京都は拘束できるのか、将来にわたってなのかどうなのかという問題が出るわけですが、これはどうでしょうか。

○佐藤財務局経理部長 ITセンターの民間事業者への義務づけでございますけれども、一応五年間と考えてございます。

○吉田委員 ですから、ITセンターのためだといって、本当に都心に残された貴重な一等地を売るんですけれども、ITセンターとして民間事業者、今コンペでされておりますけれども、義務づけられるのはたった五年間ですよ。都有地は売ってしまえば終わり、もう取り戻せません。しかし、ITセンターとしての拘束性があるのはわずか五年間、もともと業務ビル主体の建物ですけれども、さらにそれ以降はITセンターとしての拘束性はない、民間事業者は自由に営業活動を行っていいということになりますけれども、何か違いがありますか。

○佐藤財務局経理部長 東京都といたしましては、ITセンターを秋葉原地区に設けるということによりまして、当面、期間については五年間でございますけれども、この間に世界的な拠点となり得べく、そういった状況づくりをするということで考えられたというふうに聞いております。

○吉田委員 いずれにしても、五年間だけだということが改めて確認されたわけです。
 次に、売却の仕組みについて基本点を確認させていただきたいんですが、都有地を売却する場合には、知事の諮問機関ですけれども、財産価格審議会というものにかけて、そこで下限、最低少なくともこれ以上でなきゃだめだよという価格が決められるという仕組みになっておりますよね。それで、財産価格審議会で決めた下限を状況によっては下回ったような場合でも売却を認めるということがあり得るのか、それとも絶対下限以上であるというふうに保障できるのか、まずそこはどうですか。

○佐藤財務局経理部長 最低価格というものを決めますので、それを上回っていることが必要であります。

○吉田委員 なぜそのことを私が質問したかといえば、募集要項の中にある買い受け人の決定についてという文書では、どういうところを決定するかという条件が書いてあるんですが、この中で、資力、信用、当たり前のことですけれども、そして事業計画、こういうものを総合的に勘案するんだ。極端なことをいえば、安くても、事業計画がよければそこに売却いたしますという旨の趣旨なんだという説明を受けた経過があります。
 そこで、さらに関連してお聞きするんですけれども、この財産価格審議会に対して、この程度で売りたい、売却価格はこの程度にしたいということは、所管局がいわば起案をして諮問するという仕組みだと思うんですが、これは間違いないと思うんですよね。
 それで、この神田市場跡地は、財務局の普通財産になっていたわけですから、当然財務局が、この程度ではないですかという諮問を財価審にかけたものだと思うんですが、いかがですか。

○佐藤財務局経理部長 本件につきましては、産業労働局が提案をしてございます。

○吉田委員 いつから、財務の普通財産から産業労働局に変わったんですか。

○佐藤財務局経理部長 昨年の十二月三日に財務局から所管がえをしてございます。

○吉田委員 そうすると、十二月三日というと、募集要項を配布する本当に直前なんですよね。それは若干奇異な印象を受けますけれども、問題は、そうすると、下限価格の設定においては、産業労働局の意思が原案としては出されているということですよね。
 問題は、そのコンペの選定はどういうメンバーで行われるんですか。

○佐藤財務局経理部長 審査委員会のメンバーは、現在非公開とされております。

○吉田委員 それは議論しませんけれども、どういうメンバーによって構成されているのか、それは説明できないんですか。

○佐藤財務局経理部長 審査委員会の委員でございますけれども、学識経験者三名、都職員四名の合計七名で構成をされております。

○吉田委員 その都職員の中には、財務局関係者及び産業労働局関係者、それぞれ入っているんですか。

○佐藤財務局経理部長 現段階では具体的には申し上げられません。

○吉田委員 それぐらいいいじゃない。なぜ私そういうことにこだわるかといえば、私は財務局の味方をする発言をしているつもりなんですけれども、貴重な都の財産なわけですよ。それはやはり適正で厳正で本当に都民の共通利益にならなきゃだめなんです。特定の企業の利益のようなことに万万万が一なっては絶対いけません。
 そういう意味で、財価審にかけるときには、財務局がちゃんと、少なくともこれぐらいの価格ですよというのかなと思ったら、いやそれはITを担当している産業労働局ですよと。じゃあ審査するのはだれですか、財務局がきちんとやるんでしょうねといったら、それははっきりいえませんと。そうすると、産業労働局の関係の方が入っていらっしゃるのかなというふうになるんですが、それでもお答えできませんか。
〔大木田副委員長退席、委員長着席〕

○佐藤財務局経理部長 審査委員会の審査でございますけれども、審査に当たりましては、外部からの影響を排除し、あるいは自由闊達な議論をしていただくということで非公開とさせていただいております。

○吉田委員 この問題の最後にもう一つだけただしておきたいんですが、それは、応募期間が短かかったんじゃないかという議論があるわけですけれども、これは一体どうだったのか。あるいはそれが適正だという判断があるとしたら、どういう理由からなのか、まとめてお答えください。

○佐藤財務局経理部長 秋葉原駅前都有地の売り払いにおける公募期間でございますけれども、募集要項の配布から事業計画の受け付けの締め切りまでおおむね二カ月間でございます。この期間につきましては、産業労働局におきまして適正な設定がなされたものと考えております。

○吉田委員 適正な設定だといっても、根拠もなくてご説明されたので、私もちょっと戸惑ってしまうんですけれども。やはりITセンターというかつてない施設、しかも広大な、規模的にも大きい。それを、詳細な設計を行って、財政計画を立てて、それも一企業じゃなくて複数グループで行うということになれば、二カ月というのは余りにも異常で短い。ちなみに南青山のプロジェクトの場合には、そういう極めて限定的なものであっても少なくとも四カ月間はあったということから見ても、余りにも短過ぎるというのは極めて当たった指摘だと思うんですが、どうでしょうか。

○佐藤財務局経理部長 それぞれの東京都の事業内容によりまして、事業ごとに期間につきましては適正に設定をされているというふうに考えております。

○吉田委員 適正の根拠がまたも説明がありませんでしたけれども、これ以上いっても水かけ論ですけれども、幾つかの問題点を出しましたけれども、やはりITセンター、秋葉原の開発というそもそものコンセプトという点で見ても、また、貴重な、本当に都心に残された広大で都民にとってかけがえのない都有財産の処理のあり方から見ても、極めて重大な疑問点というものを改めて痛感せざるを得ません。
 この委員会ではこれにとどめておきますけれども、さらに引き続き適切な場でこういう問題が解明されるべきだと、私は、これは都議会としても課題だというふうに思います。
 さて、都市再生及び秋葉原の具体例に基づく問題点を指摘させていただきましたけれども、問題は、結局この都市再生を重視するという都政運営が、都財政あるいは都民施策、福祉施策に対して大きな影響を及ぼさざるを得ないという問題を、最後に締めくくり的に発言をしておきたいのです。
 ちなみに、時間節約のために(パネルを示す)これは、発表された来年度予算の重要施策に占める分野別の比率を、円グラフで分けてみました。出典はもちろん東京都の文書ですけれども、これを見てもわかるとおり、重要施策の中の約六割近い、五七%は、首都再生という事業によって占められている。
 ちなみに、今一番切実、緊急ともいえる雇用、産業分野というのはどれだけ重要施策の中で金額的に占められているかといえば、わずか一%。現実に知事本部が策定した重要施策がどのように金額的に配分をされているのかといえば、これが冷厳な現実なんですよね。(発言する者あり)ご異論のある方もいらっしゃるようですけれども……。
 来年度の予算についても、入り口論だけちょっとやらせていただきたいんですけれども、例えばシルバーパスやマル福を初めとする福祉施策の十事業の削減というものは、都民の皆さんに大きな影響を及ぼしておりますけれども、これは来年度予算案では引き続き継続と、継続的に削減が盛り込まれているというふうに理解してよろしいんでしょうか。

○松澤財務局主計部長 まず質問の前に、全体的な十四年度予算の考え方をちょっとお話しさせていただきたいと思いますけれども、非常に厳しい財政状況の中でございますが、首都再生並びに都民の今抱えている雇用、中小企業対策も含めまして緊急課題に重点的に財源を配分しまして、予算を編成しているところでございます。
 そうした中で、ただいまシルバーパス等のお話がございましたが、これにつきましては、ご案内のとおり、福祉改革の見直しの一環の中で今淡々とやっているところでございまして、あわせまして、一方で、福祉と保健につきましては、今回構成比が過去最高の一二%まで達するというような形で、都市再生あるいは都民福祉を合わせた極めてめり張りのある予算、こういうふうにしたところでございます。

○吉田委員 淡々というふうにいわれますけれども、例えば老人福祉手当、かつて五万五千円、これが段階的に削減されて、多分ことしからは一万三千七百五十円ですよね。これは、当事者にとってみれば、淡々となんていわれたら、腹の虫がおさまらない。ましてや介護保険の対象にならなくて、老人専門病院に入ることが余儀なくされ、月々二十万からの諸費用がかかっているという方が現実にいらっしゃるときに、そういう痛みを伴っているんだと。
 ふやしたふやしたといいますけれども、前回の行財特でも指摘しましたけれども、十二年度決算をあけてみたらば、三百億からの未執行が残されていたというような結果だってあるわけです。
 その一方、投資的経費が削減をされたというふうにいわれているんですけれども、これはどうでしょうか。

○松澤財務局主計部長 十四年度予算案における投資的経費でございますが、六千二百三十六億円ということで、前年度に比べまして一二・七%減という形になってございます。
 ただ、都営住宅等事業会計の設置に伴いまして一般会計からの移行があるため、この分を都営住宅建設関係分六百三十九億円を除いて比較をいたしますと、実質的には四・二%の減ということで、昨年同様マイナスということでございます。

○吉田委員 だから、冒頭の金額は、大幅に減ったような印象を与えますけれども、住宅局の特別会計に移行した分をあわせて考えれば、本当に微減だということですよね、今の説明は。
 しかも、それに私が強調したいのは、今度の来年度予算とあわせて補正予算が提案されておりますけれども、補正予算の投資的経費を合わせれば、逆にマイナスにはならない。
 さらに、前から私ども指摘していますが、例えば首都高速道路をつくる、その事業費の五分の二を無利子貸付で当てなきゃならないという仕組みになっていますよね。首都高速道路のための貸付金あるいは出資金、これは投資的経費か経常的経費かといえば、東京都の予算の枠組みでは経常的経費に入っている。こういう経常的経費に入っている投資的経費の実態、これをすべて勘案すれば、私たちの試算では、優に一兆円は超えるというのが冷厳な事実だと思うのです。
 このように、先ほど重要施策についていろいろご意見がありましたけれども、これは東京都の発表したものをそのまま振り分けて示したものですが、現実に来年度予算の大きな枠組みにおいても、こうした問題が示されている。
 しかも、福祉の十事業の削減だけではなくて、例えば都立病院、具体的には今年末には世田谷にあります母子保健院の廃止ということが盛り込まれておりますし、また医療の分野でいえば、慢性肝炎を難病指定から外す。さらに、多摩を中心とするさまざまな社会教育施設の廃止というものが軒並みに示されているというのが、これから論議をする来年度予算の一つの特徴であり、その大前提として、どんなに財政悪化が起ころうとも、都市再生のために重点的に財源は確保するんだという、そこの大枠があることが否めないと思うのです。
 以前の委員会でも我が党の議員が指摘をしましたけれども、都政運営の前提には、都民要望というものが深く考慮されなきゃならない。昨年末発表された世論調査の、都政に対して何を望むかというものの第一位は、断トツで高齢者対策、二位が医療衛生対策で四〇%、そして地球温暖化防止を初めとする環境対策、こういうものこそ前提の下敷きに置いて、広域行政や地方自治のあり方というものが検討されるべきだという意見を申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

○大河原委員 私からも大都市制度についてもう少し議論を進めたいと思います。
 地方分権一括法による分権改革は、地方分権推進委員会を中心にして、機関委任事務などの廃止を打ち出して成果を一定上げてきたというふうに認識をしております。しかし、この改革は、違う角度から見れば、現行の都道府県と市区町村という二層制の制度を前提としたものであって、この点については変更がないわけです。
 私は、分権プロセスの議論をしていく、その順番といいますか、その選択は正しかったというふうに考えておりますけれども、大都市制度という視点から見ると、課題は大変大きく残されていると思います。
 一方では、今、区市町村レベルの合併論の中でこの大都市制度の問題が取り上げられるようになってきました。この点東京都としてどのようにとらえられているのか、まず伺っていきます。

○幡本知事本部自治制度改革担当部長 大都市制度の代表的なものには、都区制度と政令指定都市制度がございますが、都区制度は、府県が市の事務の一部を担うという方式であり、政令指定都市制度は、市が府県事務の一部を担うという方式であります。
 大都市におきましては、大都市特有の行政需要に対応するため、府県と市町村から成る一般の二層制の自治制度の例外としまして、このような特別な制度が置かれたものでございます。
 今回の分権改革では、現行の都道府県制度が前提となりまして、大都市制度については大きな見直しがなされませんでしたが、このため、これから検討する都政改革ビジョンⅢでは、大都市の実態や歴史的経緯なども踏まえ、東京特有の制度である都区制度はもとより、他県における政令指定都市制度なども含め検討していきたいと考えております。

○大河原委員 今ご説明があったように、政令指定都市制度というのは、大都市課題を解決するために自治の拡充を行おうというふうにするものです。その後、中核都市や特例市の制度を生み出してきたわけですけれども、こうした既存の制度については、政令市の制度発足当時にかなり顕著に議論がありました。それは、自治の拡充を望む市と、率直にいってこれを嫌う府県との妥協の産物じゃないかという議論でした。すなわち、二層制を前提とすることの制度の限界といいますか、こういう指摘があったことははっきりしております。
 東京都として、現行のこれらの諸制度の限界あるいは問題点というものをどのようにとらえられているのか、次に伺います。

○幡本知事本部自治制度改革担当部長 政令指定都市につきましては、国や府県からの事務権限の移譲が不十分であることや、大都市行政需要に対応した地方税財政制度となっていないことなどが指摘されております。
 また、規模が巨大となるため、住民自治をどのように充実確保していくかも課題となっています。
 中核市、特例市につきましては、権限移譲に伴う財源は交付税措置のみであり、十分とはいえないこと、特に不交付団体にとっては権限移譲のインセンティブが働きにくいことなどが挙げられます。

○大河原委員 東京都内では八王子市が中核市の要件を満たしているわけですけれども、中核市への移行を八王子市として真剣に検討してきたし、東京都も積極的にこれに対応してきたというふうに聞いております。しかし、現実問題としては、八王子市の中核市への移行はまだないわけで、ここにはどんな問題があったのか、非常に疑問に思うところがございます。
 東京都としてどのような課題が存在しているんでしょうか、次に伺いたいと思います。

○反町総務局行政部長 中核市の要件を満たす八王子につきましては、平成十二年四月の中核市への移行を目指しまして、平成十年四月から東京都との協議を行ってまいりました。しかし、その過程で、中核市となった場合に都から権限移譲される事務の経費についての財政負担の考え方に、都と八王子間で大きな隔たりがありまして、最終的には八王子市において、財政上の理由から、中核市への移行について凍結の判断が行われたものでございます。
 また、中核市におきましては、法令による権限移譲事務だけではなく、これと密接に関連する事務についても、権限移譲に伴い、みずから責任を担い、みずからの財源で行うべきことが基本でございます。
 こうした中で、中核市が円滑に住民サービスを提供できるよう、所要の財源を確保することが最大の課題であると考えております。

○大河原委員 財政負担の考え方に大きな隔たりがあったということで、先ほどの論ではありませんけれども、本音と建前の世界なんだなというふうに実感いたします。
 ところで、都と特別区との間の都区制度、これも大都市制度の一つですが、議論としては、政令市などにも、例えば公選首長と議会がある特別区の制度を一定のモデルとするような議論もございます。しかし、特別区の改革制度について、これが目指されたものは、いかに特別区が東京都の内部団体から抜け出すか、脱却するか、そういう点であったと思います。こうした点では、主要な課題は財政調整制度であるというふうにだれもが思います。
 特別区間の水平財政調整制度の議論は少し置いておくとして、本当に特別区が自立するためには、いわゆる東京都と特別区との間の垂直財調は基本的に廃止すべきじゃないかというふうに思うわけなんですが、こうした議論を十分に行うべきだと考えております。
 東京圏の自治体のあり方を検討していく場合にも、こうした財政調整制度をどのように位置づけるのか、考えていくのか、その点についてはどうでしょうか。

○幡本知事本部自治制度改革担当部長 都区制度のもとでは、大都市行政の一体性、統一性を確保するという観点などから、東京都が市町村事務の一部を行っております。都区財政調整制度は、都と区の事務の役割分担に応じて、市町村税である固定資産税等を都区間で配分するものでございます。
 この制度を、将来的には、広域的自治体と基礎的自治体の役割分担を明確化し、これに対応したより安定的な財源配分が確保されるような税財政制度を考えていくことが必要というふうに考えるところでございます。

○大河原委員 都区制度のあり方を検討していく場合に、今ある二十三区、特別区の再編というのは議論せざるを得ません。しかし、現行ある税財源の偏在というところからは、財政調整制度が不可欠だということが出てきているわけです。それならば、これをなくすための再編案というのもあり得るんじゃないかと思うわけなんです。
 例えば、税財源の偏在を克服するために、現行の特別区の境界をある意味では無視して、都心と周辺をつなげて再編する、例えば特別区内を扇型にといいますか、ショートケーキのように三角にするというのはどうかというような大胆な議論も実はあるというふうに聞いています。もちろん、当該の区民、区の意向を十分に踏まえるということはいうまでもありませんけれども、水平財政調整の解決に向けた議論というものも必ずしていかなければならない問題だと認識しておりますけれども、この点については東京都はどのようにお考えでしょうか。

○幡本知事本部自治制度改革担当部長 一般的には、特別区が、大都市の基礎的自治体としてより自主的、自立的に地域のニーズに応じた行政運営を行っていくためには、各団体の自前の財源で運営されることが望ましいといえます。
 また、住民にとって受益と負担の関係を明確にしていくことも重要であります。このため、依存財源である水平的財政調整の幅はできるだけ少ない方が望ましいと考えます。
 特別区の再編などを考えていく場合にも、ご指摘のあったような税財源の偏在を克服するということは、視点の一つと考えられます。

○大河原委員 ちょっと乱暴なことを申し上げましたけれども、やはり水平的な財政調整の存在をただ置いておくわけにはいかないということで、やはり税財源の偏在を克服する何らかの議論は必要だというふうに思っております。
 むろん、都区制度にしても、大都市制度を検討していく場合に、広域自治体との関連は不可欠なわけですけれども、道州制を検討していくという場合には、この大都市制度との関係をどういうふうに整理をしていくのか、道州制論には、大きな問題として、屋上屋を重ねるのではないかという疑問が絶えずつきまとっております。
 いわば道州の規模との関係で、適正な大都市の規模を考えるということはどういうことなのか、伺っておきます。

○幡本知事本部自治制度改革担当部長 仮に道州制が導入されますと、現在の都県が解消されることになります。それに伴いまして、必然的に都区制度も消滅することとなるわけです。このため、大都市制度のあり方につきまして根本的に検討する必要があるということになります。その際には、住民自治のあり方や狭域行政の充実確保についてもあわせて検討することが必要であると考えております。

○大河原委員 昨年秋の意見開陳のときでも述べさせていただきましたけれども、今回の分権改革の理念で私が最も重要だと思っているところは、自治体は市民がつくり、自己決定していく、市民が設立する自治体というところじゃないかと思っています。そして、もちろん大都市制度や広域自治体を検討していく際にも、この立場を貫くべきだと。今まである制度に縛られず、もっと住民が望む、例えば議会の仕組みも、あるいは自治体の組織のあり方も、二十一世紀は変わっていくべきじゃないかというふうに思っています。
 そこで探しましたらば、昭和六十三年に、十一政令市の市長さんたちが懇談会をつくって、市民の暮らしから明日の大都市を考える懇談会、略称明日都市懇というんでしょうか、懇談会を持って、二十一世紀型の自治体のあり方、これまでの国との関係の対等性を確保していくにはどうするかとか、いろいろ議論なさっていまして、最終報告では、憲章都市制度というのを提唱しています。
 この制度は、大都市特例法という根拠法を設けて、憲章都市が行うことができる事務のメニューから自主的に選択してみずからの権能とすることができる、こういう仕組みをつくっていくというものです。いわゆるチャーターですね。これは明らかに、アメリカの州法において、都市自治体の組織形態や事務、権限を、都市みずからが住民投票で決めていくというホームルールチャーターを学んだものだというふうに思います。
 このような制度も検討すべきではないか、今後のまちづくり、今後の自治体のあり方を検討する上では必要性を感じておりますけれども、いかがでしょうか。

○幡本知事本部自治制度改革担当部長 米国におきましては、自治体は、住民の発意に基づき州が創設するものとされています。その際、自治体の区域、権限、組織形態など自治の基本的な仕組みを定める、お話のようなホームルールチャーターを、自治体みずからが起草、採択、修正することが、州憲法や州法によって認められているところです。
 ご指摘の憲章都市制度は、自治体の基本法ともいうべき性格を持つものとされ、新たに設ける大都市特例法のもとに、自治体と住民の選択により、自治体の多様なあり方を認めることをねらいにしております。
 自治体が、自己決定、自己責任の原則に基づき、行政執行や組織運営等のあり方について決められるようにすることが重要でありますので、今後、こうした提案や米国のホームルールチャーター制度も参考にしながら、新たな自治の仕組みについて検討することも有益であると考えております。

○大河原委員 地方自治制度を議論する場合に、これまでは、どうしても議会や行政主導という形で、肝心の市民参加ということがなかなか確保されず、その市民の側から見た自治体のあり方というものも議論が進まなかったというふうに思います。
 今ご紹介した十一政令市の市長さんたちの懇談会の中身を考えますと、政令市のない東京都の非常に特殊な立場といいますか、都市像を持つ自治体のありようを、私たちは疑ってかからなきゃいけないんだというふうに改めて思います。
 特に環状メガロポリス構造は、各自治体のそうした思いというもの、各自治体が持っている計画、そうしたものとのかかわりを委員会の中でも疑問視する声が上がっていましたけれども、より一層そのような思いを強くするわけです。
 ぜひともこの地方自治制度、ここを議論する場合に、主役である市民の存在をしっかりととらえた議論をしていきたいというふうに思いますし、行政サイド、また議会サイド、この点忘れてはならない点だということを強調させていただきまして、質問を終わります。

○川島委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○川島委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 これをもって本日の委員会を終了します。
   午後三時五十四分散会