エビデンスベースの政策評価
質問1
少子高齢化や人口減少などの課題を乗り越え、東京と都民の未来を切り開くため、知事が取り組まれてきたのがワイズスペンディングです。
これまでの事業の見直しは、主に予算の執行状況の側面から行われ、評価も行政自らが行ってきました。知事は、これを大きく見直し、エビデンスベースの評価を導入するとともに、一事業ごとに評価を行い、公表するなどしてきました。
結果、所信表明でも述べられたように、事業評価により生み出された財源は八年で八千百億円にも及び、子育て支援策など直面する課題解決に向けた新しい事業への投資につながっています。
このような、知事自ら任期期間中に手がけた評価制度の改革を振り返り、都民のための事業を行うという観点を大切に、ワイズスペンディングの取組の成果を着実に上げてきた知事の思いを伺います。
答弁1
知事
評価制度についてのお尋ねでございました。
都民ファーストの視点に立ち、東京大改革を推し進めていく、そのためには事業を見直す仕組みそのものをアップグレードする必要がある。こうした考えの下で、知事就任以降、ワイズスペンディングの観点から、評価制度の充実強化に全力で取り組んでまいりました。
具体的には、全ての事業への終期、終わりの期の設定、外部有識者の知見やデータ分析を活用した成果重視の評価の導入など、都民サービスの向上につながる様々な創意工夫を積み重ねてまいりました。
こうした八年間の取組を通じまして、都財政には、新たな視点を取り入れながら、自律的に見直しを行う仕組みが着実に根づいてきております。
今後とも、公会計制度を活用し、評価制度の不断の見直しで、都民のQOL向上と着実な財源確保につなげてまいります。
アントレプレナーシップ教育
質問1
特定の事業について事後検証を求める声もしばしば聞かれますが、その事業が本当に重要であると考えるのであれば、目的に照らし合わせてどのように評価するのかまで提案するのが責任ある態度であると考えます。
特に、要因が複合的な場合は、統計的手法を用いたデータ分析が必要であり、事業の設計段階から指標や測定方法を定め、事業の実施前、またはそのさなかにデータを取得する必要があります。すなわち、あらかじめ事業に評価を組み込む必要があります。
チルドレンファーストを掲げ、都は子供政策を総合的に推進していますが、ここで私が繰り返し取り上げてきたのが、日本財団の十八歳意識調査です。この調査では、日本の若者が自国の将来がよくなると思う割合が突出して低い一方で、自ら国や社会を変えられると思う割合も低いという結果が示されており、日本の子供を取り巻く環境の在り方に警鐘を鳴らすものです。
昨年公表されたチルドレンファーストの社会の実現に向けた子供政策強化の方針二〇二三の冒頭には、本調査が紹介され、毎年行うとうきょうこどもアンケートには、本調査と比較可能な項目が入りました。少子化対策では、長期的な視点に立った効果検証が行われるなど、小池知事の都政運営の下、エビデンスベース、そして、必要とされる事業においてはEBPMの導入が進んでいます。
そして、今年度、私たちの求めに応じ、スタートアップ振興策の一環としてアントレプレナーシップ教育が強化されます。その目的は、起業家から直接話を聞くことで、自分たちの力によって世界が変えられると信じ、未来にわくわくする子供たちを育むという本質的なものであり、事業効果を高めていくためには、起業家を何校に何人派遣したという実績報告にとどめてはなりません。
例えば、さきに述べた公的な調査と比較をして、講義を受けた生徒について、その前後で意欲の伸長について評価をしたり、講義を受けた生徒のうち何名がTIBで行う学生の起業支援プログラムに参加したなど、アウトカム面での評価を行うべきと考えますが、見解を伺います。
答弁1
スタートアップ・国際金融都市戦略室長
アントレプレナーシップ推進事業についてのご質問にお答えいたします。
社会の様々な課題に対し挑戦する若者を増やしていくため、都は今年度、起業家などをサポーターとして登録し、学校現場で講演をしていただくなどにより、生徒が起業家などと身近に触れ合う機会を提供してまいります。
本事業を効果的に進めるため、どれだけの生徒が挑戦意欲を持ち、また、行動に移すに至ったかなどを把握、評価するべく、公的機関による若者の意識に関する調査などを踏まえたアンケートやヒアリングを行うほか、TIBの若者向けプログラムへの参加状況などを把握し、事業改善に生かしてまいります。希望を持ち、未来を切り開く若者が増えるよう、先輩起業家などと連携して取り組んでまいります。
教育におけるデータ利活用
質問1
GIGAスクール構想により、小中そして高等学校には一人一台端末が整備をされましたが、これによって可能になったのが、AIによる教育の個別最適化です。従来の授業では、児童生徒の理解度にかかわらず、同一の教材を提供するしかありませんでしたが、AI教材では、AIが間違いの原因を分析し、解き直すべき問題に誘導してくれます。
私は、令和二年第三回定例会の一般質問で、小学校低学年で生じた学力差が中学校でも維持され、高校入試で固定化されるという分析結果を紹介するとともに、AI教材の積極的な導入を求め、一部都立高校での導入が実現しました。
子供たちの学び直しをはじめとする個別最適な教育のために、AI教材を一層活用すべきと考えますが、これまでの成果と今後の取組について教育委員会の見解を伺います。
答弁1
教育長
AI教材の活用についてでございますが、都教育委員会は、令和四年度から二年間、都立高校七校で効果的な活用法を検証いたしました。この中で、教員がAI教材の特性を理解した上で個々の指導に活用することが効果的であることが確認できました。
今年度、都立高校における校内寺子屋実施校のうち九校、不登校生徒を対象とする校内別室の設置校十七校において、AI教材を活用し、個々の生徒に応じた学びの実現に向け指導を行っております。
今後、小中学校におけるAI教材の効果的な活用につながる取組事例を収集するとともに、情報教育の担当者連絡会において好事例を紹介いたします。
質問2
また、私は、教員の事務負担軽減とエビデンスベースの指導の推進のため、学習や保健などの、従来の学校で紙で扱ってきたデータを一元化する教育ダッシュボードの開発と、教育におけるビッグデータの活用を求めてきました。
一部の先進的なエドテック企業では、新学習指導要領で求められつつも評価が難しいとされている、主体性や課題設定能力などの非認知能力について、デジタル教材の利用状況と、先生と生徒の評価に関する丁寧なコミュニケーションを組み合わせることで、定量的かつ納得感のいく評価とフィードバックを成し遂げています。
教育ダッシュボードの開発に取り組むに当たり、データ活用に取り組んできた研究校の研究成果を公表するとともに、教育データの利活用に関する最新事例を収集し、生徒一人一人の力を最大限伸ばすことができる教育ダッシュボードにしていくべきと考えますが、見解を伺います。
答弁2
教育長
教育ダッシュボードを活用した指導法についてでございますが、都教育委員会は、令和四年度から二年間、教育DX推進校として都立高校十九校を指定し、成績や出席など各システムのデータに基づく効果的な指導法の研究成果を公表する予定でございます。
今年度は、推進校のうち研究が進んでいる四校を教育データ利活用実証研究校として指定し、本年一月から稼働しているダッシュボードの活用事例の研究を進め、年度内に新たにその成果を公開いたします。
今後、データの利活用について、国内外の最新事例の情報収集に努めてまいります。また、研究校の実践を通じ、教育的効果の観点から、取り扱うデータの種類、表示方法等を検討してまいります。
共生社会の実現
質問1
都民ファーストの政治。私は、知事が掲げたこの理念に共感して都議会議員になりました。そして、都民から相談いただける関係を構築するために七年間続けてきたのが、定例会ごとの都政レポートの発行と、週二回これを街頭でお配りすること、そして、半年に一度の都政報告会の開催です。都政報告会では、都政課題を掲げ、専門家を招き、参加者の皆様と意見交換を重ねてまいりました。
昨年春の第十一回都政報告会は、子育てしやすい東京をテーマに開催しましたが、参加者の皆様とのワークショップを通じて分かったのが、困っている人に声をかけたいと思っていても、実際にはできない人が多いことです。
都内では、援助や配慮を必要とする方が周りの方にそれを知らせることができるヘルプマークが定着をしています。障害者差別解消法の制定から十一年、施行から八年が経過し、助ける意思があることを示すマークの提案などもなされる中、啓発を超え、行動に移せる人を増やす取組が求められています。
そして、昨年第四回定例会の我が会派の代表質問で、共生社会の実現に向け、都立大学と連携して調査などを進めるとの答弁を得ています。
困っている方を見かけたときに、声がけをはじめ、行動に移せる取組を検討するべきと考えますが、見解を伺います。
答弁1
福祉局長
支援を必要とする方への理解や行動についてでございますが、都は今年度、困っている方を見かけた都民が行動しやすくするため、都立大学と連携した調査を実施いたします。
本調査では、外出先で誰かの支援を必要としたときの体験等に関するアンケートを行うとともに、都立大学と共催するイベントで、支援する意思を示す方法などを実践し、その効果を来場者にヒアリングする予定でございます。
今後、共生社会の実現に向け、この調査結果や当事者の意見を踏まえ、支援が必要な方に対して、都民一人一人が障害や障害特性を理解した上で、ちゅうちょすることなく行動できるよう、具体的な方策を検討してまいります。
緊急避妊薬
質問1
国は、昨年末に緊急避妊薬の試験販売を開始しました。歓迎すべき動きですが、一万円を超える自己負担や年齢制限など、特に問題が深刻化しやすい未成年への支援が十分ではありません。
かねてより私は、緊急避妊の診察に関する情報を得たくても、東京都医療機関案内サービス「ひまわり」では、使い勝手や、さらには情報のアップデートが十分でないことを指摘してきました。時間が限られるからこそ、早く、そして正確な情報を手に入れられる仕組みが必要です。
また、昨年の第四回定例会の代表質問では、緊急避妊を必要とする未成年者に対して、とうきょう若者ヘルスサポート、わかさぽを起点とした支援を求め、知事からは、取組を進めるとの答弁をいただきました。
未成年者の緊急避妊に対するサポート、そして、緊急避妊の診察ができる医療機関の情報提供は大変重要ですが、これらの進捗について伺います。
答弁1
福祉局長
緊急避妊に対する支援についてでございますが、緊急避妊は、速やかに適切な対応を取ることが重要であり、そのために必要な情報へ円滑にアクセスできる環境の整備と、悩みを一人で抱え込み、自らアクセスすることが難しい若者に寄り添った丁寧な支援が必要でございます。
このため、都は先月末から、緊急避妊薬を処方する医療機関について、場所や診療時間などの条件により、迅速に検索できるサイトを新たに開設いたしました。
また、わかさぽの対面相談において、緊急避妊薬の服用を希望する場合に、相談員による医療機関への同行支援を開始しており、予期せぬ妊娠への不安や悩みを抱える若者に寄り添い、きめ細かな支援を行ってまいります。
都市づくり
質問1
コロナ禍を経て、ご高齢の方を中心に、バス路線が廃止または減便され、タクシーもつかまらず、移動に困るとの声が届いております。そこで、昨年秋の第十二回都政報告会では、地域公共交通をテーマに私は取り上げました。
都内はこれまで、人口密度が高く、交通事業が成り立ちやすかったことから、民間事業者に頼りつつも都市交通が維持されてきました。ところが、コロナ禍で収支が悪化した事業者は、電車やバス便の減便やバス路線の廃止を実施、収益改善後もこれを回復していません。
事業者都合でJR京葉線の快速が大幅減便されたとの報道は皆様の記憶にも新しいと思いますが、都が約二年前に策定した東京における地域公共交通の基本方針の民間に関する記載が、活用や連携にとどまるように、事業者都合の変更に対して、現状、都は交渉できる立場にありません。
都市公共交通の維持には現状把握が不可欠であり、その基盤は交通データです。特に、市民の身近な足である路線バスの運行データのオープン化については、欧州では義務化、国内でも富山県では全路線で完了、そして、山形県では補助に当たっての要件にするなどしておりますが、都では、いまだオープン化がなされておらず、このため、都は、バス路線の廃止やバス便の減便を把握ができていません。
民間主導ではなく、公として都市公共交通網の維持に取り組むため、まずはバスの運行データのオープン化をより一層促進し、データを活用した地域公共交通政策を進めていくべきと考えますが、見解を伺います。
答弁1
東京都技監
地域公共交通についてでございます。
地域の移動サービスを確保するためには、区市町村が運行データに基づく交通政策を立案し、利用者ニーズを踏まえた効果的な交通体系を実現することが重要でございます。
都は、バス事業の運行データ共有化を促進するため、コミュニティバスにつきましては、共通データの整備費を補助するとともに、運行経費の補助要件にデータ公開を定めております。路線バスにつきましては、今後、バス事業者等との連絡会にワーキンググループを設置し、共通データの作成、公開を技術的側面から支援してまいります。
こうした取組を通じて、誰もが利用しやすい地域公共交通サービスを実現してまいります。
質問2
江戸川区では、利便増進実施計画を策定しておりまして、この中で幹線道路のバス運行回数の下限を設定し、これを下回る場合は協議を行うとしております。各基礎自治体に好事例として展開するとともに、事業者との関係構築を支援するように求めます。
そして、本来、都市公共交通政策はより大きな視点で取り組むべきものです。モーダルシフトは渋滞解消や平均旅行速度の改善など、交通システムのパフォーマンス向上と、それに伴う生産性向上、CO2の削減、さらには高齢者の運転免許証返納の推進や観光施策にまで影響することから、欧州では行政が資金を投入し、その維持に取り組んでいます。
コロナ禍や二〇二四年問題等の社会の変化を受けて、都内公共交通の劣化が認められるこの機を捉え、交通弱者に優しいサステーナブルな東京実現に向け、持続可能な交通政策に取り組むべきと考えますが、都の見解を伺います。
答弁2
東京都技監
持続可能な交通政策についてでございます。
交通政策の推進には、利用者本位で使いやすく、環境負荷も低減する総合的な交通体系の実現が重要でございます。
都はこれまで、関係機関と共に鉄道路線の整備を進め、世界トップレベルの高密な鉄道網を構築してまいりました。この強みを生かし、駅を中心にバス等の交通モードを組み合わせ、乗換え利便性の高い交通環境の充実に取り組んでおります。
さらに、バス交通につきましては、運行データの共有化等を進め、課題の的確な把握に努めるとともに、将来の適切な維持に向け、地域のニーズに合わせた自動運転バスの導入等の調査検討を開始いたします。社会の変化に適切に対応し、持続可能な公共交通の実現に取り組んでまいります。
質問3
私たちは、各種団体からいただく要望についても、都民の暮らしの影響への観点から、都に届けてまいりました。
建設業の持続性に影を落とす重層下請実態について、私たちは昨年第三回定例会において、都として実態把握をするように求め、都発注工事を対象に下請次数等に関する状況調査を行うとの答弁を得ております。
当該調査の結果はどうだったのか、通常よりも下請次数が多い案件については、その理由についても分析を行い、発注者として必要な対応を取るべきと考えますが、見解を伺います。
答弁3
財務局長
都発注工事における下請次数調査についてのご質問にお答えいたします。
昨年十一月から十二月の間に施工中の工事のうち、百四十三件を対象といたしまして、土木工事では三次、建築及び設備工事では四次以上の下請契約がある案件について集計を行いました。
この結果、五件の工事が該当いたしましたが、いずれも専門業種の分業化や特定の職種の手配などの必要性が認められるものでございまして、適切な施工体制が確保されておりました。
都発注工事は分離分割発注が原則であることから、重層化しにくい構造にあると認識しておりますが、調査の対象が一部であったため、今年度は一定規模以上で施工中の工事全件につきまして調査を行い、一層の実態把握に努めてまいります。
質問4
東京都建設リサイクル推進計画では、東京の持続的な発展を目指すためには、建設副産物の発生を抑制した上で、建築物や土木工作物などに蓄積された建設資材、これを有効に再利用するなど、環境に与える負荷を軽減することが重要であるとしています。
土木構造物や建築物の解体により生じるコンクリート塊は、再生骨材コンクリートにリサイクルすることで再利用ができます。
私は、令和四年度の各会計決算特別委員会等を通じまして、複数の団体より、百年に一度といわれる再開発が進む都内において、コンクリート塊の受入れが滞り、都外のプラントまで運ばざるを得ない一方で、再生骨材コンクリートは使いたくても、プラントと現場の距離によっては使えないという声が寄せられていることを伝えてきました。
再生骨材コンクリートの利用を促進するため、これを製造するプラントの数を増やし、都内全域で利用可能な体制を整える必要がありますが、新たにプラントをつくるに当たっては今後の見通しが重要です。
東京都だけでなく、民間工事で発注する再生骨材コンクリートを使う工事についても把握できるようにする必要があると考えますが、見解を伺います。
答弁4
東京都技監
再生骨材コンクリートの利用についてでございます。
都は、再生骨材コンクリートの利用拡大に向けて、東京都環境物品等調達方針において、環境負荷の少ない建設資材として位置づけ、公共工事での使用を推進しております。
令和五年度に、再生骨材コンクリートの製造者などに、供給範囲や利用の拡大に向けた課題についてヒアリングを実施いたしました。
今年度は、新たに民間工事の発注者に利用拡大の可能性などについてヒアリングを行い、利用促進に向けた課題の把握と整理を行います。
こうした取組を通じて、庁内関係者と連携し、建設リサイクルを推進いたします。
以上、私は、政治を都民、国民の意思決定の場にする都民ファーストの政治を実現するため、引き続き都民の皆様よりいただいた声をきっかけに、現場に足を運び、専門家の意見を聞いて、最新技術を学び、そして都政に必要な提案を行っていくことをお誓い申し上げて、私からの質問を終わります。