介護と仕事の両立支援の強化を
若者が抱く気候不安受け止めよ

都政運営

質問1
 初めに、職務に関する働きかけに関して伺います。

 小池知事は、就任されて間もない時期に、適正な行政執行等に向けて、働きかけの記録制度をつくられました。

 しかし、二〇一六年度は百六十一件、一七年度は百四十二件が記録、公表されていたものの、その件数は年々減少し、二一、二二年度とゼロが続いています。この二年間においても、都民の要望や意見等は、執行機関側に数多く伝えられたのではないかと推察いたしますが、一件も記録されておりません。

 開かれた都政のためには、この記録制度が形骸化しないことが重要であると考えますが、知事の見解を伺います。

答弁1
知事
 職務に関する働きかけへの対応についてでございます。

 社会が刻々と変化している今日、広い視野と前例にとらわれない新たな発想を得ることが重要でございます。

 一方で、都民から誤解を受けるようなことがあってはならないことから、職務に関する働きかけにつきましては、記録し、概要を公表することといたしております。

質問2
 続いて、計画行政について伺います。

 都は、様々な計画を定め、それらに基づいて施策を進めておりますが、国の過剰な関与とも表現されるように、法令等によって、全国一律に計画策定やその内容などが義務づけられることは、地域の自主性や自立性を損ない、過度の負担にもなると、歴史的に問題視されてきました。

 しかし、地方六団体のかねてからの要請が実を結び、骨太の方針二〇二二から二三にかけて、効率的、効果的な計画行政の推進が明記され、地方分権改革における提案募集方式でも、計画策定等が重点テーマに設定されるなど、具体的な改革の検討が進んでいます。

 首都東京という極めて大きな特徴を持つ自治体として、実情に応じた施策を推進できる体制が望ましいことはいうまでもありません。こうした機に、さらに簡素で効率的な計画行政を推進すべきと考えますが、見解を伺います。

答弁2
政策企画局長
 計画行政についてでございますが、都は、質の高い行政サービスの提供に向け、法令等に規定されるもののほか、各局が自主的、自立的に策定した計画等に基づき、地域の実情に応じた施策を推進してまいりました。

 今後とも、計画策定を規定する既存の法令等の不断の見直しを国に求めつつ、社会構造の変化や都民ニーズを踏まえ、効率的、効果的な行政運営を行ってまいります。

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都民の健康増進

質問1
 次に、都民の健康問題です。

 東京モデルとしての新型コロナ対策によって、感染症による死者数は一定程度抑えられたかもしれませんが、全体の死亡数が大きく増えています。

 高齢化等の影響もあり、そもそも都内の死亡数は年々増加しておりますが、例えばコロナ流行前、二〇一九年までの十年間の平均増加数が二千二百五十七人であったのに対し、流行当初の二〇二〇年は三百四十九人と減少した後、二〇二一年は六千四百三十、二二年は一万千六百十五と激増しています。

 これはコロナによる死亡増加を含みますので、例えばここから老衰だけを取り出してみると、コロナ前の十年の平均増加数が七百五十人であったのに対し、二〇二一年は二千三百六、二二年は二千九百三十二と大幅に増えています。

 これはコロナ禍で高齢者の健康が損なわれた可能性を示唆していますが、にわかには断定できません。だからこそ、我々が繰り返し求めているコロナ対策の検証が必要なのです。感染症への直接的な対応のみならず、こうした事象も含めて検証しなければ、新たな感染症が流行した際に再び、感染拡大は抑えられたが全体の死亡数は増加したということになりかねません。

 そこで、これまで都が発してきた自粛要請や行動制限による影響を検証すべきと考えますが、見解を伺います。

答弁1
総務局長
 自粛要請等に関する検証についてでございますが、都はこれまで、都民や事業者の皆様にもご協力をいただきながら新型コロナ対策に取り組み、そこで得られた知見や経験を次の対策に生かし、東京モデルを確立させ、幾度も感染の波を乗り越えてまいりました。

 今後とも、専門家の助言を踏まえつつ、国や各局等と緊密に連携し、新たな感染症に備えてまいります。

質問2
 また、こうした中において、都民の健康維持を図ることは非常に重要であったと考えます。特に高齢者の心身機能低下が課題となっておりましたが、流行期における都の取組を確認することは、検証の一環として有用であると考えます。

 そこで、コロナ禍における介護予防や社会参加の活動を継続し、健康状態の維持を支援してきた取組について伺います。

答弁2
福祉局長
 コロナ禍における高齢者の健康状態維持に関するご質問にお答えいたします。

 コロナ禍では、外出自粛の長期化や交流機会の減少により、高齢者の心身機能の低下が懸念をされておりました。

 このため、都は、高齢者の健康状態の維持を目的として、感染症対策を講じた対面での通いの場などの活動をはじめ、オンラインツールを活用して行う体操や趣味活動に取り組む区市町村を支援してまいりました。

質問3
 ところで、住民の生命や健康を守ることは、行政にとって極めて重要な役割ですが、これらが、事医療費の抑制につながるかというと、必ずしもそうとは限りません。むしろ、健康寿命の延伸や予防医療的な施策は医療費を増大させる可能性があることは、医療経済学の分野では常識であるとの指摘もあり、厚生労働省の研究班による議論の整理でも、医療費との関係を明確に示すことができておりません。

 今年度、医療費適正化計画の改定が行われる見込みですが、そもそも都民の健康に向けた施策の目的は、どこまでもQOLの向上であって、医療費の抑制であってはならず、施策の方向性を誤ってはなりません。

 そこで、健康増進や予防医療と医療費の相関について、都の見解を伺います。

答弁3
保健医療局長
 医療費適正化に関するご質問にお答えいたします。

 国の基本方針では、医療費の急増を抑えるには、生活習慣病の発症や重症化の予防対策を進め、住民の健康保持を推進することなどが重要とされております。

 都は、これに基づき医療費適正化計画を策定し、特定健診や生活習慣病の重症化予防等の取組を推進しており、今年度改定予定の計画策定に向けて、医療関係者等の意見も踏まえ、より効果的、効率的な取組を検討しております。

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ビジネスケアラー

質問1
 続いて、介護の問題です。

 経済産業省は、本年三月、働きながら介護をするビジネスケアラーが二〇三〇年に三百十八万人に上るとの予測を発表しました。介護離職と合わせた経済損失額は九兆円を超えるとされており、見過ごせない問題となっています。

 多くの企業において、介護休業などの制度が整備されてきているとはいえ、介護を個人や家族の自己責任としないマインドチェンジも含めて、さらなる対策の推進には一刻の猶予もありません。

 多数の企業や労働者を抱える都として、介護と仕事の両立支援をさらに強化していくべきと考えますが、都の取組と見解について伺います。

答弁1
産業労働局長
 介護と仕事の両立に向けた支援についてのご質問にお答えいたします。

 都は、介護に直面しても安心して働き続けることができるよう、介護のため休業や休暇を取得できる制度の充実等に取り組む中小企業に支援を行っております。

 また、介護による離職を防止するための先進的な事例に関し、経営者に紹介する取組も行っているところでございます。

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子どもの事故予防

質問1
 ここからは、私のライフワークである子供の事故予防について伺います。

 まず、学校の安全点検です。

 窓からの転落やゴールポストの転倒など、学校施設または設備に起因する事故が繰り返し発生していることを受け、消費者安全調査委員会は、本年、調査報告書を公表しました。

 この中では、文部科学大臣への意見として、安全点検に関する外部人材活用の促進支援を求めています。これに呼応するように、日本技術士会登録、子どもの安全研究グループは、現場の技術的な課題に対するアドバイスやリスクアセスメントを行うかかりつけエンジニアという手法を提案しています。

 私は先日、横浜市立のある中学校で試行中のかかりつけエンジニアとなっている技術士の方からお話を伺い、点検に同行いたしましたが、専門家のチェックによる安全確保に加え、教職員の負担軽減にもつながる取組として、大きな可能性を感じました。

 こうした取組を参考に、学校の安全点検における外部人材の活用を推進すべきと考えますが、見解を伺います。

答弁1
教育長
 都立学校における安全点検についてでございますが、都立学校は、法令に基づき、毎学期一回以上、施設及び設備の安全点検を実施しています。

 都教育委員会は、消費者安全調査委員会の提言などに関する文部科学省からの通知を受け、各都立学校に対し、事故等の防止に向けて取り組むよう、既に通知をしております。また、文部科学省による学校安全の推進に関する実態調査も行われています。

 都教育委員会としても、引き続き適切に対応してまいります。

質問2
 次は、公園遊具です。

 都立公園の遊具の安全点検は、国土交通省の指針に基づいて実施されておりますが、この指針は、幼児の利用について保護者の監視を前提とするものとなっています。

 一方で、都が推進する子供政策における事故予防においては、ずっと子供から目を離さないことは不可能という考え方を踏まえ、科学的、客観的な予防策を講じるべきとしており、従来よりも一歩踏み込んだ都の姿勢については、子ども安全管理士の資格を持つ私としても高く評価しております。

 そこで、都立公園の遊具における子供の安全確保に当たって、都の認識を伺います。

答弁2
東京都技監
 都立公園における遊具の安全確保についてでございますが、都は、遊具の設計や整備、維持管理など、各段階において公園管理者が取り組むべき事項を定めた国の指針等に基づき、遊具の整備や維持管理を実施しております。このうち維持管理においては、日々の安全点検や専門業者による年二回の精密点検等を行い、遊具の不具合や劣化などの早期発見に努めているところでございます。

 今後とも、子供が安心して楽しむことができるよう、遊具の安全確保に取り組んでまいります。

質問3
 また、公園遊具は、子供の育ちを最大限に後押しするものであってほしいというのが保護者の願いです。

 ヨーロッパを中心に五十か国以上が使用し、遊具の基準の国際規格となりつつあるEN1176は、子供の動きを考慮した性能規格となっており、子供のベネフィット、すなわち成長、発達、学びの機会を提供できる遊びの価値を重視する一方で、国交省の指針はあくまで構造規格、つまり構造物としての安全を確保するものにすぎず、子供が遊具からどれほどのベネフィットを得られるかという視点が欠落しています。設置者や点検者が子供の遊びの特性を理解しているのか、児童発達学の知識があるのかも問われません。

 都の子供政策の方針では、子供の遊びを、大人目線ではなく子供目線で捉え直し、子供の意見を反映した遊び場を整備するとしていますが、都立公園の遊具においても、安全確保だけではなく、ベネフィットの向上を子供目線に立って図るべきと考えますが、見解を伺います。

答弁3
東京都技監
 都立公園の遊具の整備についてでございますが、子供が自主的に楽しく遊べるよう、遊具の整備に子供の意見を反映することは重要でございます。

 これまで都は、汐入公園や木場公園等の遊具広場の改修において、周辺の小学校や保育園などの子供たちに設置してほしい遊具等についてアンケート調査を実施するなど、子供の意見を設計に生かしてまいりました。

 他の公園においても、こうした取組を推進してまいります。

質問4
 次に、子供向け製品の安全です。

 本年五月の政令改正に伴い、マグネットセットと水で膨らむボールは十二月から販売できなくなります。さらに、今後は、新たな区分を設ける形で、子供向け製品の事前規制を導入する法改正の検討が進められています。

 また、六月には経産省と事業者が共同し、オンラインマーケットプレースにおいて出品、販売される製品の安全を確保する製品安全誓約がスタートしました。

 しかし、この誓約の対象外となる製品を含め、特に消費者間の取引において、安全でないものが売られている事例が散見されます。例えば、少し検索すれば、ひもの垂れ下がった子供服など、JIS規格に適合しない商品がすぐに見つかります。

 そこで、いわゆるフリマアプリやネットオークションで扱われている子供向け製品の安全性について、消費者側への啓発を強化すべきと考えますが、見解を伺います。

答弁4
生活文化スポーツ局長
 子供向け製品の安全性の啓発についてですが、都はこれまでも、消費者に向け、安全に関する認定マークを参考に商品を選ぶことを推奨するなど、普及啓発を実施してまいりました。

 現在、国は、ネット上で販売されているものも含む子供向け製品について、規格に適合しない製品の販売禁止などの事前規制を検討しております。

 今後、国の動きも注視しながら、子供向けの商品に関して、ホームページ、SNS等により、安全性についての普及啓発や事故防止に向けた注意喚起を行ってまいります。

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気候不安

質問1
 最後に、気候変動対策に関連してお聞きします。

 近年、若者を中心に、地球環境が破壊される恐怖や将来への不安から、喪失感や罪悪感、怒りなどの心理的なストレスを慢性的に抱く現象が確認され、気候不安、エコ不安などと呼ばれており、WHOやIPCCも、気候変動によるメンタルヘルスへの影響を指摘しています。

 日本でも本年三月、民間シンクタンクが国内初となる調査報告を公表し、一定数の方々が、気候変動によって、日常生活へのネガティブな影響を感じていることが明らかにされました。故事成語の杞憂ではなく、気候変動は、まさに現実の心配事として、人々のメンタルヘルスにも負の影響を与えているのです。

 都が気候変動対策を進めていることは承知しておりますが、施策の推進に当たっては、こうした気候不安といった若者などの思いも含め、幅広い都民の声を受け止めながら取り組んでいくべきと考えますが、都の認識を伺い、私からの質問といたします。

 ご答弁のほどよろしくお願いいたします。

答弁1
環境局長
 気候不安など都民の声への対応についてでございますが、都はこれまでも、未来を担う若者等からのヒアリングをはじめ、シンポジウムや勉強会など様々な機会を通じて都民の声を聞きながら施策を推進してまいりました。

 引き続き、多くの主体の参画を得て、共感と協働を呼びかけながら、二〇三〇年カーボンハーフを実現してまいります。

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