偽装請負問題は都自ら公表を
子育て応援未登録家庭へ対応を

都政運営

質問1
 都政運営について伺います。

 まず、都市の発展を支える人材についてです。

 気候危機やエネルギー問題、人口減少、少子高齢化等による社会構造の変化など、日本、東京は厳しい環境に取り巻かれています。

 「未来の東京」戦略において、都市の発展に不可欠な推進力は人の力であると掲げており、多様な人が交わり、そこから生まれるイノベーションこそが、直面する諸課題の解決へつながるものであると考えます。

 東京には、様々な分野に強みを持つ大学や研究所が数多く存在しており、その人材や研究力は、何物にも代え難い財産です。一方で、日本では、若手研究者のキャリアパスが脆弱で、優秀な学生が研究の道に進むことをちゅうちょする傾向もあり、知の裾野を広げる取組が急務と考えます。

 危機に立ち向かい、都市の成長に向けて、大学や研究者などの知を最大限生かしていくべきと考えますが、知事の見解を伺います。

答弁1
知事
 大学などの知を生かした取組についてでございます。

 複雑化、多様化する社会課題を解決し、持続的に発展していくためには、東京の強みである知の集積を生かすことが鍵となります。

 そのため、都内大学との定例懇談会を設置しまして、様々な課題に関する議論を行うとともに、大学研究者による事業提案や、ファンドを活用した大学発スタートアップの成長支援などの取組を推進いたしております。

 今後とも、大学など多様な主体と連携を図りながら東京の成長につなげまして、世界をリードしてまいりたいと考えております。

質問2
 都は、令和六年度に向けて、都立大学並びに都立高専の授業料を一部無償化する準備を進めており、家庭の教育費負担の軽減にとどまらず、経済力の多寡にかかわらず広く優秀な人材を集め、より質の高い研究、教育へつなげるという意味でも、社会的意義は大きいと期待をします。

 都立大学においても、博士課程修了者、いわゆるポスドク等を百名弱受け入れていますが、雇用関係にあるのは半数程度にとどまり、残りは雇用関係のない無報酬の状況です。

 文科省の調査では、ポスドクの少なくとも四人に一人が無職またはアルバイトで、経済的、精神的に追い詰められ、研究を断念せざるを得ない人も少なくないといわれています。

 都立大学は、率先して若手研究者の支援に取り組むべきと考えます。都立大学におけるポストドクターに係る認識と併せて見解を伺います。

答弁2
総務局長
 若手研究者の支援についてでございますが、国においては、いわゆるポストドクターを研究に不可欠な存在として、処遇や受入れ環境の確保に取り組んでおります。

 このことを踏まえまして、東京都立大学ではこれまで、若手研究者を研究プロジェクトの一員として採用するほか、幅広い分野の研究者に研究環境を提供しております。

 引き続き、中期計画に基づき、若手研究者の育成などにより、大学の研究力向上を図ってまいります。

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ガバナンスの強化

質問1
 次に、都政のガバナンスの強化についてです。

 今年三月、東京都交通局が、いわゆる偽装請負の疑いで厚生労働省東京労働局から是正指導を受けたことが判明しました。偽装請負は労働者の不利益にもつながる違法行為です。本日の毎日新聞のネットニュースでも、交通局の現場の課題が詳細に報じられ、問題が構造的なものであることをうかがわせました。

 過去にも、二〇二〇年には東京都が出資する「ゆりかもめ」、二〇一七年には都立高校図書館でも、偽装請負で是正指導が入りました。いずれも指摘を受けた各局や東京労働局による公表ではなく、報道によって明らかになったものです。

 今回、一般質問をするに当たり、過去の事例を確認しようとしたところ、全庁的に把握している部署はなく、過去の件数や同様の事例の有無さえ分からないとのことでした。何らかの端緒をもって報道されなければ事案が埋もれてしまうというのは、再発防止や危機管理の面からも望ましい状態とはいえません。

 当該局の中で事案が埋もれてしまうことを避けるため、今後は、まずは都庁内で把握、共有できるようにすべきと考えます。見解を伺います。

答弁1
総務局長
 都庁内の情報共有についてでございますが、東京労働局による調査等の結果につきましては、各局で適切に対応することとしておりますが、契約事務手続に当たって、適正な仕様書作成に向けた留意事項を毎年各局に通知するとともに、問題事例等につきましては、各種の研修を通じて全局に周知啓発してございます。

質問2
 偽装請負に係る是正指導、勧告を受けた際には、都は、今後は自ら都民に示すべきと考えますが、見解を伺います。あわせて、再発防止策も伺います。

答弁2
総務局長
 事案の公表の取扱いについてでございますが、偽装請負について、都ではこれまでも、東京労働局からの調査等があった場合、その結果に応じて各局が公表を判断してございまして、今後も適切に対応してまいります。

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子ども・子育て

質問1
 次に、子育て、教育についてです。

 コロナ禍での出産、子育てを応援する趣旨で始まった東京都の出産・子育て応援事業は、令和三年一月から今年三月末までに出産した都内の世帯に対し、十万円分のクーポンを送るものです。

 約二十一万三千世帯にIDカードが配布されましたが、四月末までに登録を済ませたのは約十九万二千世帯で、約一割に当たる二万一千世帯が未登録です。未登録世帯の中には、ウェブ申請の機器を持たない、心身の不調がありながら十分なケアを受けられていないなどの背景を持った家庭も多く含まれていると考えられます。

 未登録者こそ、より困難を抱えた家庭である可能性が高く、きめ細かい対応が必要と考えますが、対応を伺います。

答弁1
福祉保健局長
 出産・子育て応援事業についてでございます。

 本事業では、育児用品等を提供する専用サイトへアクセスするためのIDカードを、区市町村を通じて対象家庭に配布しており、令和三年一月一日から本年三月三十一日までに出生した子供を持つ家庭は、十月一日が登録期限となっております。

 未登録家庭に対しましては、区市町村の協力を得て、早期の登録を促す通知をこれまでに複数回送付し、登録方法等の問合せに対応するコールセンターも案内しております。

 引き続き、区市町村と連携しながら、未登録家庭への個別の働きかけを行ってまいります。

質問2
 医療的ケアを必要とする子供が増え続けています。学齢期の医ケア児支援に都が努力していることは評価しますが、この子供たちが数年後、大人になったときの環境づくりは追いついておらず、保護者の方々から先行きへの不安の声が寄せられています。

 小児医療から成人医療への移行にも、診療科が多岐にわたり継続が難しいなど、各種施策の構築と充実は喫緊の課題です。都内の重症心身障害者施設の入所は五百人待ち、医ケアに対応できるグループホームには、都は上乗せの補助制度を設けていますが、利用しているのは三自治体のみにとどまっています。

 増加する医ケア児の成長を見越したグループホーム等の設置の加速化に、さらなる支援策が必要と考えますが、見解を伺います。

答弁2
福祉保健局長
 障害者グループホームの設置促進についてでございます。

 障害者の高齢化、障害の重度化に加えまして、医療的ケアに対するニーズが高まっていることから、都は、職員を国基準以上に配置し、重度障害者に対応するグループホームを支援しております。

 また、看護職員や福祉職等を配置し、医療的ケアが必要な障害者を受け入れるグループホームに助成を行う区市町村を支援しており、今年度から、看護職員を配置した場合に補助単価を引き上げるなど支援を拡充しております。

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教員確保

質問1
 教員不足です。

 公立学校、特に小学校での教員不足は深刻です。教育庁でも教員確保に努力されているのは承知しておりますが、一方で、小中学校の教員負担を増加させるような施策が突然下りてくるというちぐはぐな状況もあります。

 外部の専門家や区市教委、民間の協力も得て、教員不足の実態把握をはじめ、メンタルヘルス対策、学校文化を踏まえた業務の見直しなど、一元的に議論する専門家会議を立ち上げ、都教委全体でこの問題に立ち向かうべきだと考えますが、教育長の見解を伺います。

答弁1
教育長
 教員確保策の検討についてでございますが、教員確保は喫緊の課題であり、既に個々の課題に対し、庁内関係部署や区市町村教育委員会等の関係機関が連携し、取組を進めており、引き続きスピード感を持って対策を行ってまいります。

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英語スピーキングテスト

質問1
 英語スピーキングテストの都立高校入試活用も、その理不尽さと準備不足ゆえに、学校現場に大きな負担を与えました。

 これまで繰り返し指摘してきた申込手続や運営、採点等、各場面での混乱に加え、個人情報の取扱い、障害のある生徒や不登校の生徒に対する取扱い、家庭の経済力などによる不公平など、様々な問題が現実のものとなりました。

 課題を整理した上で、都立高校入試での活用は見送り、アチーブメントテストとして再出発するべきであると考えますが、教育長の見解を伺います。

答弁1
教育長
 スピーキングテスト実施の意義についてでございますが、本事業は、中学校における話す力の学習成果を的確に評価するアチーブメントテストとして実施するものであり、指導の充実を図るとともに、結果を高校入試に活用することで、高校での学習に円滑に接続し、生徒の学ぶ意欲を向上させることを目的としております。

 スピーキングテストは適切に実施されており、都教育委員会は、引き続き、都立高校入試において、その結果を活用してまいります。

質問2
 テスト当日も、機器の操作方法が分からなかった、周囲の声がうるさくて音声に集中できなかったなど、生徒たちからは様々な声が保護者や教師たちに寄せられました。しかし、都教委は、実施業者や市区町村教委から報告を受けていないとして、その声に向き合わないままです。生徒たち一人一人の声は、改善のための貴重な資料のはずです。ぜひ子供たちの声に耳を傾けていただきたい。

 スピーキングテストの実施直後に、受験生一人一人に対し、音声の聞こえ具合をはじめ、実施上気づいたことについてアンケートを実施し、改善に役立てるべきであると考えますが、教育長の見解を伺います。

答弁2
教育長
 スピーキングテストの確実な実施についてでございますが、音声の録音については、開始前に一回、開始後にも二回の計三回録音テストを実施し、生徒からの申出があった場合には、速やかに機器を交換するなどの対応を行っております。

 昨年度実施したテストでは、事業者及び配置した都職員からの報告、区市町村教育委員会への聞き取りなどにより、適切に実施されていることを確認しております。

 今年度の実施に当たっても、昨年度の状況を踏まえ、万全の準備を進めております。

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STEAM教育

質問1
 デジタル化が急速に進む現代、教育分野ではSTEAM教育が注目をされています。このうちSTEM、いわゆる理数分野では、都立学校でも多様な取組をしているものの、A、すなわちアート教育への具体的な取組が見えてきません。

 AIの進化を受けて、エンジニアはクリエーティブ職になるといわれる中、多様で斬新な発想を生むアートの重要性をどのように認識し、どのように取り組んでいるのか、伺います。

答弁1
教育長
 STEAM教育の推進についてでございますが、都教育委員会は、生徒の理数、芸術分野での活躍につながるよう、今年度から、都立高校生の希望者を対象に海外に派遣する事業を新たに開始いたします。

 現地では、世界トップランキングの大学で、最先端の科学技術に関わる講義を受けるほか、美術館等で一流の芸術に触れるなど、STEAM教育を直接体験する機会を設定いたします。

 こうした取組を通して、生徒の論理的、創造的思考力を高め、将来の日本を支える人材を育成してまいります。

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不適切指導

質問1
 私立学校における不適切指導並びに指導死について伺います。

 指導死は、いじめ死のような個別の法的根拠がありません。特に、私立学校に対しては、行政として調査、指導、再発防止を求める根拠が曖昧です。とはいえ、不適切指導は、教育的指導の枠の外にある人権侵害であり、学校や教師という生徒を守り育てる責任を持つ者による不法行為という意味では、重い責任が問われるべきものと考えます。私立学校の建学の精神や教育内容の自主自律は十二分に尊重されなければなりませんが、生徒への不法行為があれば、それを放置することは許されません。

 国も、本年度から問題行動調査に不適切指導の項目を入れるなど、取組への姿勢を見せています。私立学校を所管する東京都として、指導死を含む不適切指導について、一定の枠組みの下、調査、学校名公表などの対応をルール化する必要があると考えますが、見解を伺います。

答弁1
生活文化スポーツ局長
 私立学校の生徒指導の取組についてでございますが、私立学校は、建学の精神に基づき、それぞれ特色ある先進的な教育を行っており、教育の実践に当たりましては、教育内容の充実とともに、生徒指導についても、個々の生徒の特性や発達の段階等に応じて適切に対応していくことが学校の責任として求められております。

 都は、日頃より学校に対し、関係法令及び基準、通知、指導提要等について周知を図っております。

 また、学校や保護者から意見、相談があった場合には、丁寧に聞き取りを行い、助言するとともに、保護者等からの意見については学校に対して情報提供を行うなど、適切に対応しております。

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航空機事故対策

質問1
 最後に、航空機事故についてです。

 羽田空港新ルート直下の住民からは、航空機の騒音だけでなく、万が一の事故に対しても不安の声が上がっています。落下物だけではありません。本日行われた宮瀬議員の一般質問では、近年中に、太陽フレアの影響で航空機の安全にも支障が出るおそれがあるということも指摘がされました。

 航空機の墜落事故については、東京都の地域防災計画でも触れられていますが、万が一の事態に備えて、計画と想定を深化させる必要があると考えます。

 都の見解を伺い、再質問を留保して質問を終わります。

答弁1
総務局長
 航空機の事故対策についてでございますが、航空機事故など大規模事故等への対応につきましては、東京都地域防災計画大規模事故編に定めてございます。

 本計画では、大規模事故等に係る予防、応急対策及び復旧の観点から、消防活動、医療救護、避難などにつきまして、都、区市町村の役割や連携等を記載してございます。

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再質問

質問1
 ガバナンスの強化について、総務局長に再質問をいたします。

 偽装請負に関するさきの答弁のみでは、全庁的に把握せず、公表もしてこなかったこれまでの対応と、結局、何ら変わるものではないように聞こえました。

 結局、従来の対応のままということなのでしょうか。あるいは何らかの問題意識を持って対応を強化するのか、また、そうであればこれまでと何が違うのか、端的にご説明ください。

答弁1
総務局長
 偽装請負に関します情報共有等に関する再質問でございますが、東京労働局による調査等の結果等の具体的な対応につきましては、各局において適切に履行すべきものと考えてございます。

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