障害児の移動支援格差取り除け
特別支援学校の蔵書十分でない

障害児の移動支援

質問1
 障害児の移動支援について質問します。

 初めに、私が出会った障害のある二人のお子さんのお母さんの声を紹介します。

 私の子供は非常に手がかかるけれども、とてもかわいい。外出することで、そのことをみんなに知ってほしい。まちを歩いていて、突発的な行動をする障害者への理解があるとはいえない。小さい頃から、ヘルパーを使ってまちにもっと外出できるようになれば理解が広がるのでは。

 そのお母さんの二人のお子さんは、毎朝、学校に行く前に、学校近くの公園で遊ぶというこだわりがあり、雨の日もびしょぬれになって遊んで特別支援学校に通っていました。その公園に連れていくのがお母さんの日課です。毎日、公園で遊んでいると地域の人から声がかかり、名前も覚えてくれて、かわいがってくれたそうです。しかし、このようなお子さんの生活は、保護者の献身的な、必死な努力がなければ支えられない現実があります。

 私は、市議会議員時代、保護者の皆さんからお聞きしたお話の中で衝撃を受けたのは、お母さんが熱を出しているときも通学に付き添わなくてはならず、付添いができないときは、子供が元気でも学校に通えなくなるというお話でした。

 また、学童保育に通わせようと思うと、学校が終わる時間に親が仕事を抜け出すか、仕事を辞めざるを得ない、小学生の兄弟に送りをお願いすることもある、このような実態でした。

 八王子市は面積が広く、特別支援学校のバス停まで車で送迎をしなければならない方もいます。そのため、移動支援を通学にも使えるようにしてほしいというのが保護者の皆さんの切実な願いです。

 そこで伺います。移動支援は、障害児、障害者にとって生きていく上でなくてはならない制度です。そして、子供たちの学ぶ権利の保障のために通学に使えることが重要です。知事は、この重要性についてどのように認識していますか。

答弁1
知事
 障害のある方への支援についてのお尋ねです。障害のある方とない方が学校や職場、地域の中で共に暮らし、支え合う共生社会の実現が大切です。

 都は、障害のある方が必要とするサービスを利用しながら、希望する地域で安心して暮らせるよう様々な施策に取り組んでおります。

質問2
 私は、八王子市で子供たちに移動支援が認められるよう繰り返し求め、中学生以上を対象にした移動支援が開始されました。しかし、通学には原則使えませんし、小学生は対象外です。

 都内区市町村の障害児の移動支援の実施状況を調査したところ、多摩地域と二十三区では大きな格差があることが分かりました。障害児の通学に移動支援が使えると回答した自治体は、二十三区の中では二十一区に上る一方で、多摩地域では四市しかありませんでした。

 八王子の保護者からは、通学にはシッターを雇うこともあるが、朝一回二千円で毎日は使えない、通学の付添いのために仕事はパートでしか働けないという切実な願いが寄せられています。

 そこで伺います。国連の障害者権利委員会は、日本に対し、移動支援などについて自治体間の格差を取り除く措置を取ることを勧告しています。

 障害児の大切な制度である移動支援を多摩地域ではほとんど通学に使えない実態があります。同じ都民でありながら、住んでいる地域で受けられる支援に大きく差があるのは問題ではないですか。どこでも使えるべきではないですか。認識を伺います。

答弁2
福祉保健局長
 移動支援事業についてでございますが、本事業は、区市町村が独自の判断で支援内容を定めて実施する地域生活支援事業に位置づけられております。

 都は国に対し、本事業が単独での外出が困難な障害者等に必要なサービスであることを踏まえまして、全国一律の基準に基づいて実施する自立支援給付として位置づけることを提案要求しております。

質問3
 なぜ、このような地域間格差が生まれるのか、それは区市町村の財政負担が重いからです。移動支援などの地域生活支援事業は、国が二分の一以内、都道府県が四分の一以内を補助すると定められていますが、実際は、国の予算が二分の一を大きく下回り、東京都も国補助額の半分までしか補助しないため、区市町村に大きな超過負担が生じています。

 一方で、秋田県、京都府、鳥取県、島根県、長崎県は、国の補助が不足していても、府や県としては実績額の四分の一を補助しています。東京都市長会も、都に移動支援などの実績額の四分の一を予算措置するよう求めています。

 都としても十分な予算を確保し、区市町村の実績額の四分の一を補助するべきです。いかがですか。

答弁3
福祉保健局長
 移動支援事業における補助額についてのご質問でございます。

 都は、本事業におきまして、国が補助を行う基準額に対し、四分の一の負担をしております。また、自治体に超過負担が大きく生じている実態を踏まえ、国に対して十分な予算措置を講じるよう提案要求をしております。

質問4
 ヘルパーの確保も課題であり、そのためには処遇の改善が必要です。しかし、処遇改善のために事業者に支払われる金額を上げると自己負担も増えるというのは、多くの区市町村に共通する課題です。自己負担軽減を併せて行うことが重要です。

 私がお話を聞いた多摩地域の市の担当者は、住民税非課税世帯の負担軽減には東京都の補助があるが、課税世帯も含めて補助があるとよいと話されていました。

 都として、住民税課税世帯も含めた負担軽減のための補助を行うことを求めますが、いかがですか。

答弁4
福祉保健局長
 移動支援事業における利用者負担についてでございます。

 都は、低所得者の利用者負担を軽減し、サービスの利用を促進するため、住民税非課税世帯の負担軽減を行う区市町村を包括補助で支援しているところでございます。

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障害児の学童保育

質問1
 次に、学童保育での障害児の受入れについてです。

 障害児は、放課後等デイサービスに通っているお子さんも多くいますが、地元の学童に通うお子さんも少なくありません。しかし、自治体によっては障害児の受入れを制限しているところもあります。

 八王子市では、待機児の少ない一部の学童では全員が六年生まで入れますが、大半の学童では、障害児は四年生までとなっており、それ以外の子供も年齢制限があります。

 四年前、障害児の保護者の方から、障害児が六年生まで学童に入れるように求めた請願が市議会に提出され、可決されました。その保護者の方は、議会で、特別支援学校は自宅から遠く、放課後はバスで放課後等デイサービスに行くため地元の友達がいなかった、学童に通わせるようになって初めて地元のお友達を遊びに家に連れてきたときはとてもうれしかったと涙ながらに話されていました。しかし、その後も遅々として受入れが進まず、この方のお子さんも四年生までしか利用できませんでした。

 特別支援学校は、自宅から遠いケースが多く、地元のお子さんとの交流は学校との副籍交流のみとなってしまい、機会が少ない状態です。障害児が地元の学童に通う意義についていかがお考えでしょうか。

答弁1
福祉保健局長
 障害児による学童クラブの利用についてでございます。

 学童クラブは、障害の有無にかかわらず、保護者が就労等により昼間家庭にいない児童が日中を安全・安心に過ごす居場所であり、児童の健全育成を支援するものでございます。

質問2
 このように、地元の学童が六年生まで受け入れておらず申込みもできない場合、待機児としてカウントされません。そのため、潜在的な待機児童になってしまいます。

 児童福祉法では、学童保育の対象は小学六年生までとされています。都は、「未来の東京戦略」で、学童保育の待機児童の解消を位置づけていますが、この待機児童には、六年生まで、また障害児も含まれていると思いますが、いかがですか。また、潜在的な待機児童も含めて解消することが重要と思いますが、いかがですか。

答弁2
福祉保健局長
 学童クラブの待機児童についてでございます。

 国の定義では、学童クラブの待機児童は、障害の有無にかかわらず、保護者が就労等により昼間家庭にいない児童のうち、利用申込みをしたものの利用できなかった児童とされております。

 都は、引き続き学童クラブの待機児童解消に向け取組を進めてまいります。

質問3
 定員が百人近い学童も都内には少なくありません。八王子市では、現在の学童保育の多くが既にたくさんの子供たちでいっぱいの状態であり、障害がある子にとっても、ない子にとってもよい環境とはいえません。そのため、六年生までの受入れが難しくなっています。六年生までの受入れを進めるためにも、都の学童保育新設、増設費等の補助制度を充実させ、継続するべきではないですか。

答弁3
福祉保健局長
 学童クラブへの補助についてでございます。

 都は、令和六年度までを実施期間として、学童クラブの待機児童対策の計画を策定した区市町村に対し、整備費の区市町村負担分等を補助しておりまして、待機児童の解消に向け区市町村を支援しております。

質問4
 職員の配置も重要です。障害児を受け入れる際の指導員配置のための加配制度を国が実施していますが、都内の十二区五市では、国制度を上回って加配をしています。都の加配制度もあり、三自治体が活用していますが、さらに実施を広げていくべきではないですか。

答弁4
福祉保健局長
 学童クラブにおける障害児の受入れについてでございます。

 都は、学童クラブが医療的ケア児や重症心身障害者等の障害児を受け入れる際に専門職を増配置するなど、国の障害児受入れ支援を上回る取組を行う区市町村を支援しておりまして、引き続き本事業の活用を区市町村に働きかけてまいります。

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特別支援学校の図書室

質問1
 次に、学校図書館の充実についてです。

 特別支援学校の図書館がない、蔵書が少ないということが報道されています。特別支援学校の子供たちにとっても、調べ学習などとともに図書や絵本などを通して世界が広がるなど、学校図書館は大事な役割を果たしています。

 そこで伺います。特別支援学校に通う子供たちにとっての学校図書館の重要性についてお答えください。

答弁1
教育長
 特別支援学校の学校図書館についてでございますが、特別支援学校における図書館は、児童生徒の豊かな心や想像力を育む読書活動の場であるとともに、学習への理解を深めたり、自ら必要な情報を収集し活用する能力を身につけたりする場として重要でございます。

質問2
 文科省は、学校種や学級数に応じた蔵書数の目標である学校図書館図書標準の全国達成状況について公表しました。特別支援学校の小学部で一五・五%、中学部で三・六%となっています。都内公立特別支援学校における図書標準の達成状況はどのようになっていますか。

答弁2
教育長
 学校図書館図書標準の達成状況についてでございますが、都内公立特別支援学校における令和元年度末時点の学校図書館図書標準の達成状況は、小学部が一二・五%、中学部が二・二%となっています。

質問3
 都内公立特別支援学校の図書の購入費の総額は一千八百四十五万円、一校当たりおよそ三十万円程度で公立小中学校の半分以下です。都立特別支援学校の図書の購入費を都として増額して図書標準を満たしていくべきではないでしょうか。

答弁3
教育長
 図書の購入についてでございますが、都立特別支援学校では、他の都立学校と同様に、校長の裁量権限による自律経営推進予算を活用し、図書を含む教育活動に必要な物品を各学校の実情に応じて購入しております。

質問4
 蔵書が十分でない原因の一つとして、教室不足により図書室が普通教室などに転用されていることが考えられます。

 そこで伺いますが、特別支援学校で図書室がない学校は何校ですか、転用や、もともとないなどの理由の内訳もお示しください。

答弁4
教育長
 図書室の設置状況についてでございますが、現在、図書室が設置されていない都立特別支援学校は五十八校中十校であり、内訳は、教室等への転用が五校、工事中が一校、学校設置当初からの未設置校が四校でございます。

 なお、文部科学省が特別支援学校設置基準において図書室を含む校舎に備えるべき施設を定め、令和五年四月から施行されております。いずれの図書室未設置校とも、共用スペース等に図書コーナーを設置しております。

質問5
 国は一昨年、特別支援学校の設置基準を定め、図書室を備えなければならないとしました。既存施設では経過措置が認められていますが、図書室がないままでは、子供たちの教育環境に大きな格差が生まれてしまいます。転用教室、間仕切り教室を解消しながら図書室も確実に設置していくべきではないでしょうか。

答弁5
教育長
 図書室の設置についてでございますが、東京都特別支援教育推進計画等に基づく特別支援学校の新設、改築や増築等による教育環境の改善の中で、図書室も適切に配置してまいります。

質問6
 学校図書館に子供たちに合った蔵書を増やし、調べ学習などを進めるには司書が必要ですが、特別支援学校には配置されていません。学校司書の配置を進めるべきではないでしょうか。

答弁6
教育長
 特別支援学校の司書についてでございますが、都教育委員会は、全ての特別支援学校で国基準以上の数の司書教諭を任命しており、司書教諭は全教職員の協力体制の下で学校図書館の活用に取り組んでいます。

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学校体育館へのエアコン設置

質問1
 最後に、学校体育館のエアコン設置について伺います。

 八王子市の学校体育館エアコン設置率は一四・三%と大変低い上、防災目的の設置だとされ、日常の授業で子供たちが使うことができません。学校体育館のエアコン設置の目的と、エアコン設置が進んだ自治体や都立学校での効果についてお示しください。

答弁1
教育長
 学校体育館における空調設備の設置についてでございますが、体育館の空調設備の設置は、良好な教育環境の確保や災害時における避難所としての環境整備を目的としており、設置を進めることにより、こうした目的が実現されております。

質問2
 学校体育館は教育活動の場であり、猛暑時に使えないとなれば子供たちの活動が制限されます。政府は先月末、熱中症対策の一つとして、学校のエアコン設置支援を閣議決定するなど健康面からも重要な課題です。

 多摩地域では、トイレの洋式化など他の事業を進めていたため、まだ体育館のエアコン設置が進んでいない自治体があります。ところが、東京都の補助は今年度末までとされ、補助率についても、昨年度から二分の一に引き下げられました。補助率を元の三分の二に戻し、補助の延長をすべきではないでしょうか。答弁を求め、質問を終わります。

答弁2
教育長
 学校体育館における空調設備の補助についてでございますが、公立小中学校の施設整備の経費は、原則として設置者である区市町村が負担することとされております。

 都教育委員会は、体育館等の空調設置について早期に良好な教育環境等が確保されるよう、平成三十年度から令和五年度まで計画的に区市町村を支援しております。

 引き続き区市町村に早期の設置を働きかけてまいります。

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