知的障害者の採用を促進せよ
都市農地を増やす取組を

障害者施策

質問1
 数年前、四十代で知的障害の女性のお母さんから、グループホームに入れるなんて子供を捨てるようでできないと相談を受けました。その後、このお母さんは、グループホームで暮らす人たちが生き生きと過ごしている様子を見て安心し、新しいグループホームをつくる活動に一生懸命取り組まれました。

 残念ながら、お母さんは、完成前に亡くなられましたが、娘さんは元気に過ごされています。このことは、一人一人が自分らしく、自立して生きる大事さと、それを社会が支えることの大事さを教えてくれました。

 障害のある方々が、他の人と平等に社会に参加し、尊厳を持って生きられる東京の実現を目指し、質問をいたします。

 初めに、雇用についてです。

 私は、知的障害者に特化した正規職員採用試験を二〇〇八年から行っている愛知県を二回にわたり訪ねて、お話を伺い、現場も見学させていただきました。

 図書館で七年間働いている方は、すっかり本の場所は頭に入っているそうで、さらに新しい仕事にも挑戦していました。

 また、福祉センターで二年目という方にもお話を伺いました。大事だと思ったのは、ただ単純作業をやってもらうということではなく、どうやってより能力を発揮し、やりがいを持って働いていけるかを職場で相談していることです。

 愛知県では、各部署がふさわしい仕事を検討して採用するので、自分に合う仕事かどうかを確認して申し込むことができます。小学校卒業程度の試験と仕事内容についての実地試験を組み合わせるなど、合理的配慮もあります。どこでどんなふうに働くかも明らかにされるので安心できます。

 都として、こうした経験に学ぶことが重要です。そして、全庁で知恵を出し合い、知的障害のある方も生き生きと働けるよう、雇用を創出していくことは、都民を励ますことにもなります。

 障害者権利条約第二十七条では、雇用に関し、障害に基づくあらゆる差別の禁止を定め、さらに、公的部門で障害者を雇用することとしています。

 また、知事は所信表明において、就労を希望する方が誰ひとり取り残されることなく個性や能力に応じて働くことができる社会の実現に向けて、条例提案を目指すとされました。大事な視点だと思います。

 こうした立場を踏まえるなら、東京都の正規職員の採用においても、身体障害者、精神障害者とともに、知的障害者も含め、採用を促進することが重要だと思いますが、知事、いかがですか。

答弁1
総務局長
 障害者の採用促進についてでございますが、誰もが生き生きと活躍できる社会の実現のため、障害者がその能力と適性に応じて働くことができるよう、都が率先して取り組むことは重要です。

 都においては平成二十九年度から、身体障害者に加え、精神、知的障害者も対象とした常勤職員の採用選考を実施するとともに、非常勤職員としては、知的障害者を対象としたオフィスサポーターの採用にも取り組み、雇用の門戸を広げているところでございます。

 こうした結果、昨年の知事部局における障害者雇用率は二・七五%と着実に高まっております。引き続き、都における障害者雇用の促進に努めてまいります。

質問2
 障害者を対象とする採用選考について、東京都は、身体障害者に限定していたものを改善し、精神障害者、知的障害者も対象にしました。しかし、その後の二年間、知的障害者の採用はありません。

 試験を受けられるとしただけでは十分ではありません。知的障害者の特性に応じた雇用に取り組むべきと思いますが、都はどう考えていますか。抜本的改善を求めるものですが、いかがですか。

 身体障害、精神障害の方も、障害の内容によってはほとんど合格がないということもあります。あわせて改善を求めます。

答弁2
総務局長
 知的障害者の雇用促進についてでございますが、都においては昨年度から、知的障害者の特性に合った職務内容や勤務条件を検証するため、オフィスサポーターの雇用を開始しており、現在四名が勤務しております。

 この取り組みでは、データ入力や資料の電子化など、各種庶務事務や軽作業の一部を切り出すことにより、個々の能力や適性に応じた職務の創出を行うとともに、勤務時間について当初の週二十四時間から段階的に延ばしており、今年度からは週三十五時間勤務としております。

 今後とも、障害特性に合った職務内容や勤務条件の検証と改善を積み重ね、都における知的障害者の雇用促進に努めてまいります。

質問3
 この間、一般就労していた障害者が、不況で働ける場が縮小され解雇になったケースや、スーパーに何年も勤めていた知的障害者が、職場でつらい目に遭っていることをずっと説明できないまま抱えていて、ぐあいが悪くなって仕事をやめたなどの話をたくさん伺いました。

 そういう方たちが福祉就労に移る、あるいは生活訓練事業所に通う中で元気を取り戻しているケースも多くあります。特別支援学校を卒業したら、一般就労だけでなく、一人一人にふさわしいさまざまな進路があっていいはずです。

 教育と福祉の連携などにより、障害のある人の進路選択を十分に保障していくことが重要と考えますが、知事の認識を伺います。

答弁3
教育長
 知的障害のある生徒の進路選択についてでございますが、都立特別支援学校におきましては、生徒が企業や福祉事業所などの多様な進路先の中から、自身の適性に合った選択ができるよう丁寧な進路指導を行っております。

 具体的には、進路面談や保護者会等において、本人や保護者の希望に寄り添いながら情報提供と相談をきめ細かく行い、進路選択に向けた職場実習を実施しております。

 また、区市町村の福祉関係機関等と連携しながら生徒一人一人について支援計画を作成し、卒業後の社会生活への円滑な移行を支援しております。

質問4
 障害者権利条約では、第三十条に、文化的な生活、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加が位置づけられています。障害のあるなしにかかわらず、労働時間以外の時間も、余分な時間ではなく、生きていくために必要な時間です。

 しかし、障害のある方たちにとって、その大事な時間を豊かに過ごせる環境が整っていません。

 学齢期は、放課後等デイサービスが広がり、保護者の就労保障も含めて対応されるようになりました。しかし、学齢期が終わると、日中活動後や休みの日に安心して過ごせる居場所がなくなります。一方、地域で行われている余暇活動の場を利用している青年は、仕事の後に行って、みんなで話すのが楽しみ、やりたいことがやれると生き生きと話してくれます。

 二〇一六年三月、都議会は、障害のある青年・成人の余暇活動に関する請願を全会一致で採択しました。これを機に、東京都は補助を実施しています。

 しかし、活用している自治体は、昨年度でまだ八カ所で、清瀬市が今年度から活用するとのことです。東久留米市では、六月の市議会で、障害のある青年・成人の余暇活動への支援を求める請願が趣旨採択になっています。

 都は、障害者権利条約第三十条の意義、障害のある青年、成人の余暇活動、安心して自分らしく過ごせる居場所の重要性について、どう認識していますか。そして、都の補助制度の活用を広げる必要があると思いますが、いかがですか。制度の周知徹底、拡充もあわせて検討していくべきではないでしょうか。見解を伺います。

答弁4
福祉保健局長
 障害のある青年等の余暇活動についてでありますが、障害の有無にかかわらず、スポーツやレクリエーションなどの余暇活動を楽しむことは人生を豊かにするものでありますが、障害者の余暇活動には、障害特性や意思疎通への配慮などさまざまな課題がございます。

 都は、青年、成人期の障害者が、日中活動や就労後に、ダンスや料理など障害者相互や地域住民等との交流を楽しむ余暇活動の場を確保する区市町村の取り組みを包括補助で支援しており、昨年度は八区市が実施しております。

 今後も、包括補助の説明会等で地域の実践を紹介するなど、多くの区市町村でこうした取り組みが進むよう働きかけてまいります。

質問5
 知的障害の方が、医療機関で差別的な対応をされたとの訴えがあります。ある方は、月経不順で病院に行ったところ、どうせ子供を産むわけではないのだから問題ないなどと医師からいわれたそうです。また、ある方は、糖尿病のため、目の定期検診を受ける必要があり、病院に行きましたが、どうせ治療できないからと医師にいわれたといいます。

 こういうことが一件、二件ではなく、たくさん起きているのです。障害者やそのご家族が差別や無理解の中で悲しい思いをしていることをどう受けとめますか。

 障害者権利条約を踏まえ、また、障害者差別解消条例を制定している都として、早急に改善されなければならないと考えますが、どのように対応するのか伺います。

答弁5
福祉保健局長
 医療機関での知的障害者への対応についてでありますが、医療機関の受診に際し、障害者ご本人やご家族が悲しい思いをされたことは、まことに残念なことでございます。

 都は、障害者差別解消条例を制定し、障害者への理解が深まるよう普及啓発を行っているところです。

 都内の医療機関に対しましては、障害者への不当な差別的取り扱いの事例などを記載した国のガイドラインを周知するとともに、都の病院管理の手引には、障害者への理解促進及び差別解消の推進に関する項目を新たに設け、適切な運営を求めております。

 また、都の施設では、職員一人一人の障害者への理解と人権意識が高まるよう人権研修等を行っており、引き続き実施してまいります。

質問6
 自分の症状を訴えにくい知的障害の方にとって、健康診査やがん検診を受けることは、病気の早期発見、早期治療などのために大事なことです。

 しかし、知的障害者の場合、何をされるかわからない不安がある、なれないことをするのが難しい、注射器が怖い、レントゲンで息を吸ってとめて、しばらくじっとしていることが難しいなどの理由で、受けられない場合があります。

 知的障害の方が健康診査やがん検診を受けやすくする環境整備が必要です。知事の認識を伺います。

答弁6
知事
 知的障害者の健康診査やがん検診についてのお尋ねでございました。

 都民一人一人が健康を増進、維持するには、主体的に健康づくりに取り組むとともに、定期的に健康診査を受診し、病気の早期発見、早期治療につなげることは重要でございます。

 知的障害者は、言葉による説明を理解しづらい、また、理解できても、話す、書くといった表現が苦手な方もおられることなどを踏まえまして、実施主体である区市町村において、健康診査やがん検診を受診しやすい環境を整備していくことは必要と、このように認識をいたしております。

質問7
 その点で、すぎなみ障害者生活支援コーディネートセンターが二〇〇四年から取り組んでいる人間ドックの取り組みは大事なものです。

 驚くのは、きめ細かい配慮を行うことにより、胃の検査や採血を受けられない人はほとんどいないというのです。事前の医療従事者への研修が大きな力を発揮しています。研修の中で、どうやったら負担を軽くして受けてもらえるか知恵を出し合い、初めての場所や雰囲気になれることが難しい特性を考慮し、検査服などを事前に渡してなれておいてもらう、わかりやすいイラストで全体の流れを示す、バリウム検査では直接介助で体位変換し、複雑な検査指示は行わないなど、きめ細かく工夫されています。

 この取り組みは、国の重度知的障害者施設のぞみの園が出している高齢知的障害者の支援マニュアルでも、先駆的事業として紹介されています。

 こうした努力、取り組みに学び、都の施策に生かし、知的障害者の健康診査、がん検診の受診を促進することを提案しますが、いかがですか。

答弁7
福祉保健局長
 知的障害者の健康診査、がん検診についてでありますが、都は、区市町村が質の高いがん検診などを実施できるよう、担当者連絡会などで先駆的な取り組み事例を紹介しております。

 今後とも、こうした場を活用して、がん検診などの実施状況の共有を図るとともに、知的障害者を含めた都民が利用しやすい体制を整備するよう働きかけてまいります。

質問8
 東京都の保健所では、通所施設に通う障害者の健診を行っています。大事な事業であり、継続するとともに、怖くて採血を受けられなかったという人がもう一度別の日にできるようにする、当日生理になった場合の尿検査は別の日に受けられるようにする、歯科検診を再開するなどの改善を求めますが、いかがですか。

答弁8
福祉保健局長
 都保健所での障害者の健診についてでありますが、都保健所では、障害者施設等の利用者が地域の医療機関等で健診の機会を確保できない場合に、管内の施設からの依頼を受け、健診を実施しております。

 その際には、施設職員から受診者の情報を事前に把握した上で、障害特性に応じて実施方法を工夫しており、今後とも適切に対応してまいります。

質問9
 障害者個人が区市町村で実施している特定健診に申し込んだときの合理的配慮も必要です。区市町村ごとに対応が大きく異なっています。重度の身体障害者の方が、住んでいる地域の指定医療機関では特定健診を受けられないという問題が起きています。何らかの方法で、自己負担なく受けられるようにすべきではないでしょうか。見解を伺います。

答弁9
福祉保健局長
 重度の身体障害者の特定健康診査についてでありますが、特定健康診査は、高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、生活習慣病を予防するため、四十歳以上七十四歳以下の方を対象に、医療保険者が実施しております。

 国民健康保険においては、居住自治体以外のかかりつけ医療機関で受診できるようにするなど、地域の実情に応じた工夫を行っている区市町村もございます。

 都は、保険者協議会などを活用し、こうした事例を共有するなど、障害者を含め、被保険者が利用しやすい特定健康診査の実施体制を整備するよう働きかけてまいります。

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都市農業

質問1
 最後に、都市農業について伺います。

 現在、各区市で、二〇二二年で期限が来る生産緑地についての意向とともに、今後の農地活用についての意向調査が行われています。

 農地保全のためには、特定生産緑地だけでなく、生産緑地の追加指定を進めて農地をふやす取り組みが欠かせません。駐車場に転用した土地を農地に戻すことになった人は、高齢なので迷ったが、市の人が一緒に考えてくれて、工夫すれば農業ができるとわかり、うれしかったと話していました。

 農地に戻して営農しようという農家への東京都の支援を強化する必要がありますが、いかがですか。

答弁1
産業労働局長
 都市農地の保全についてですが、農地の減少に歯どめをかけ、東京の農地を保全していくため、都は、市街化区域において、農家が所有する宅地や駐車場を農地へ転換する際の建物の基礎や舗装の撤去等の取り組みを支援しているところでございます。

 今後とも、東京農業の発展に向け、新たな農地の創出に取り組んでまいります。

質問2
 法整備によって、生産緑地の柔軟な活用も可能になりました。担い手が少ない農家でも、農地を手放さず、生産緑地の貸借制度を活用して、農地を維持できる可能性が広がっています。地域でも、福祉通所施設などからも声が上がっています。福祉施設などと農家のマッチングを支援していくことが求められていますが、いかがですか。

 将来にわたる農地の保全のためには、営農継続の支援こそ重要であることを指摘し、質問を終わります。

答弁2
産業労働局長
農地の貸借制度の活用についてですが、都市農地の保全には新たな貸借制度を有効に活用し、福祉法人など多様な担い手とのマッチングを促進することが必要でございます。

 都は今年度から、福祉農園の開設に向け、農福連携コーディネーターの派遣制度を創設し、農業者と福祉施設のマッチングや農地貸借の手続等を支援しているところでございます。

 今後とも、こうした仕組みを活用し農地の保全を図ってまいります。