保育施策
質問1
小池知事就任以来、矢継ぎ早に講じてきたさまざまな施策の効果が数値としてあらわれ始めており、待機児童の減少やペット殺処分ゼロといった実績は目をみはるものがあります。だからこそ、ここで一度立ちどまり、この数値の先にある東京の未来を思い描くことが必要です。
まずは、待機児童ゼロの取り組みについて伺います。
AIにより社会課題の見える化を行うインサイトテックの調査によると、いまだ七割が待機児童は深刻であるとしていて、今の預け入れ先が希望どおりかどうかという問いに対して、二割は希望どおりではないとしています。つまり、預けられたイコール、ゴールではない状況があるように見えます。
知事の所信表明においても、安心して子供を預けられる質の向上を推し進める旨の考えが示されたところです。その際、持続的な保育行政という観点から、公費負担の大きい認可保育所増設ばかりではない真の保育改革に取り組んでいただくことを要望するものです。
その鍵を握るのは、東京都独自の制度である認証保育所制度であると考えます。認証保育所制度は、そもそも石原都知事時代に、ほかの地域と比べ、多様な保育ニーズを抱える都民の状況を鑑み、制度疲労を起こしている国の保育行政に対して、保育サービスの供給の変革を迫るものでした。
特に、認証ならではの直接契約の仕組みは、かつて国の規制改革会議でも、認可保育所が目指すべき形として示されたもので、求職中の保護者やパートタイマ―、フリーランス、専業主婦でも入りやすいことや、在住する区市をまたいで申請することも容易で、親が保育所を選び、保育所は選ばれるために努力をするという市場原理も働きます。
このように多様かつ柔軟なサービスの実現を可能とする認証保育所をさらに生かしていくべきと考えます。改めて、都として認証保育所の強みをどのように捉え、支援をしていこうと考えているのか伺います。
答弁1
福祉保健局長
認証保育所への支援についてでありますが、大都市特有の保育ニーズに対応するため、ゼロ歳児保育や十三時間開所等を義務づけた認証保育所は、利用者との直接契約により、利用者本位のサービスを積極的に提供するなど、都の保育施策の重要な柱の一つでございます。
そのため、都は、開設準備経費や運営費を補助するほか、保育士等のキャリアアップに向けた取り組みや、障害児やアレルギー児などに対応するための取り組みへの支援などを行っております。
今年度からは、保育ニーズに柔軟に対応できる認証保育所の特徴を生かし、保護者が夜間にも安心して保育サービスを利用できるよう、午後十時以降の運営費を補助する事業を開始するなど、今後とも、区市町村と連携しながら認証保育所の取り組みを支援してまいります。
質問2
一方で、認証の経営をめぐっては厳しさがあるのが実情であり、最近では運営補助が多くなる認可への移行を目指す認証が多く、認証自体の数は減少傾向にあります。ゼロ歳児を認可で預かると、一人当たり平均月額四十万円の運営費用がかかります。つまり、今の手法で待機児童対策を進めるほどに、恒久的な公費負担がふえていくということでもあり、持続可能性の観点からは危惧すべき状況にあると考えています。
都政改革本部で顧問を務めた鈴木亘氏は、そもそも認可と認証においてはイコールフッティングがなされていない、つまり対等な条件下での競争が行われていないと指摘をしています。私たちは、対等で健全な競争こそが保育サービスの質向上にとって重要な要素であり、待機児童ゼロの先にある保護者と児童にとっての満足度や幸福度の向上を実現するために必要不可欠なことであると考えます。
東京都では、保育利用料のイコールフッティングを進めるべく、保護者負担額の軽減策である認可外保育施設利用支援事業を行っていますが、本年十月から開始される幼児教育の無償化にあわせ、事業が再構築されるとのことですが、その内容を伺います。
答弁2
福祉保健局長
認可外保育施設利用支援事業についてでありますが、都は、平成二十八年度の緊急対策において、認証保育所のほか、職員配置や設備等の基準を満たす認可外保育施設等を利用する保護者の負担を軽減する事業を開始し、区市町村が行う保育料補助の取り組みを支援してまいりました。
本事業につきましては、本年十月の幼児教育の無償化の開始に合わせて、認証保育所を利用する場合の負担額が、認可保育所を利用する場合と同水準となるよう見直しを行うこととしており、今後とも、認証保育所等を利用する保護者の負担軽減に取り組む区市町村を支援してまいります。
動物愛護
質問1
次に、ペット殺処分ゼロについて伺います。
各区市町村や譲渡団体やボランティアの皆様のご尽力によりまして、ペット殺処分ゼロが達成され、その功績に敬意と感謝を表するものです。
一方、小池知事の目指す、人と動物の真の共生社会を実現するには、いまだやるべきことは山積しています。八週齢規制や虐待厳罰化を盛り込んだ改正動物愛護法がきょうの午前中、成立をいたしました。悲しい命を生み出さぬように蛇口を閉めるとともに、ボランティアの善意に頼り過ぎないような出口戦略を実行していかなければなりません。
きのうの代表質問で、殺処分のガイドラインを策定することについては年度内に行うと答弁がありました。現場では、譲渡不適応の動物も譲渡団体が過剰に抱え込んでしまうという事態が起きています。ぜひ早急に進めていただきたいと要望いたします。
東京都の動物愛護センターは、施設の老朽化と殺処分のイメージもあり、一般的に都民が訪れにくいという課題がございます。センターの抱える動物で殺処分対象が出れば、譲渡団体が引き取りに行き、センターの外で譲渡先を探しているのが日常です。
神奈川県では、動物保護センターを動物愛護センターへと名称を変更し、処分するから生かすへセンターの機能を転換させることを目指して施設を改修しました。東京都もぜひ早急なセンター改修と機能転換の方針検討を進めていただきたいと考えます。
一方で、施設が改修されるまでの間にソフト面での努力で変革を起こすことも可能です。
動物愛護センターをさらに都民に開かれた場所へと変換していくため、飼養者向けの啓発事業やセミナーを開催することや、センターをオープンにし、一般の方々が来やすい場所にするべきと考えるが、都の見解を伺います。
答弁1
福祉保健局長
動物愛護相談センターについてでありますが、センターは、都の動物愛護施策の中核を担う施設として、その専門性を生かし、普及啓発や保護した動物の譲渡、事業者の監視指導、動物に関する危機管理など、さまざまな施策を展開しております。
都民を対象とした普及啓発の取り組みといたしましては、啓発行事の開催や小学校での動物教室の実施等のほか、センターで保護した動物の譲渡を希望する方を対象とした講習会や、親子を対象に動物の接し方などについて学ぶ夏休み動物セミナーを開催するなど、センターに来所いただき、動物について学んでいただく機会を設けております。
今後とも、動物愛護に関する催し等を開催することを通じまして、センターが都民にとってより親しみやすい身近な施設となるよう努めてまいります。
文化施策
質問1
次に、都の文化施策について伺います。
文化の祭典でもある二〇二〇東京大会に向けて、さまざまな文化プログラムが開催されています。文化を二〇二〇年以降のレガシーにすべく、文化の持つ価値の最大化を図るべきです。
来年度、上野駅が改修され、東京文化会館の上野の顔としての側面がより大きくなります。トゥーランドットの会場でもある東京文化会館は、歴史的建造物として価値の高い施設であるとともに、クラシックやオペラ愛好家からも大変評価の高い施設ですが、プログラムの内容からも、日本人客の利用者が圧倒的に多く、海外観光客からは足を向けにくいという現状があり、さらなる施設の活用には課題がございます。
さらに、大ホール五階建ての客席へのアクセスが階段のみであるなど、二〇二〇大会を迎える東京都として、バリアフリーの面でも不安を感じざるを得ません。
東京都オープンデータカタログサイトを参照すると、文化会館のエレベーター情報が出てきますが、これらは一般客が利用することができないものです。東京都歴史文化財団の長期ビジョンにおいても、都立文化施設や事業におけるバリアフリー化が必要とされており、ソフト面の対応も含め、改善に向けて検討を進めていただきたいと考えますが、見解を伺います。
今後、上野駅周辺は世界から人の集まる一大観光地となる可能性が高いエリアです。文化会館前にオープンカフェを設置するなど、エリア全体の価値向上に向けて、地域や民間企業と連携した組織横断での取り組みを期待するところです。
答弁1
生活文化局長
東京文化会館のエレベーター設置についてでございますが、建物の構造上、エレベーターを設置する場所の確保の困難性、建築基準法などの法規制、加えて文化的価値のある建築意匠の保存などの課題があり、設置は困難でございます。
障害のある方などに対しましては、ホール一階に車椅子席を設けるとともに、係員が来館者の状況に合わせて声をかけ、ホール内への誘導補助を行うなどの対応を行っております。
今後とも、障害のある方などのご利用に際しては、細やかな対応を行ってまいります。
教育施策
質問1
次に、教育施策について伺います。
未来の東京を切り開くのは人であり、全ての人に十分な教育の機会を確保することが重要です。都内公立中学生の不登校出現率は実に三・七八%に上り、不登校児童の支援は喫緊の課題といえます。
東京都には、高尾山学園と分教室型のはしうち教室という二校の不登校特例校が存在します。先日、高尾山学園を視察し、多様な形での生徒支援が進んでいることを確認することができました。これまで学校復帰が目標といわれてきた不登校児童への支援ですが、もといた学校に戻ることではなく、柔軟な授業形態の中で学びを深めていくという選択肢を提示したことは大きな一歩であったと考えます。
そこで、各区市町村において不登校特例校の設置を推進していく動きがあれば、力強く支援するべきであると考えますが、都の見解を伺います。
答弁1
教育長
不登校特例校の設置に向けた支援についてでございますが、不登校特例校は、子供の実態に配慮した特別の教育課程を編成する学校であり、不登校の子供の学びの機会を確保する場として重要な役割を果たしております。
これまで都教育委員会は、区市町村教育委員会に対し、施設整備等に係る負担が小さく、速やかに設置が可能な分教室型の東京版不登校特例校の設置を全国に先駆けて働きかけてまいりました。また、設置に当たっては、都の配置基準に基づき正規教員を配置し、初年度に必要な物品の購入費用の一部を補助するなどの支援を行ってきております。
今後とも、区市町村教育委員会に対し教育課程の編成や文部科学省への申請手続について助言するなどして、東京版不登校特例校の拡充を図り、不登校の子供たちの豊かな学校生活の実現に努めてまいります。
質問2
一方で、各区市町村単独では財政面の課題などから、特例校の設置は困難であるとの見方もあります。現在は八王子市民しか高尾山学園に通うことができないということで、家族で引っ越しをされる方もいらっしゃると伺います。区市町村境を越えて広域的な利用を進める方策はないか、ぜひ検討を進めていただきたいと要望しておきます。
同じく不登校児童への支援を行う場所として、それぞれの地域で支援する教育支援センターがあります。東京都は三年間のモデル事業として不登校児童の支援に関してさまざまな取り組みをサポートしてきました。このモデル事業が終了するに当たり、都からの支援はなくなりますが、大切なのは事業から確認された取り組みの有効性を今後広く区市町村に共有し、広めていただくことです。
教育支援センターのモデル事業の成果と、区市町村等への周知や情報共有に関する今後の取り組みについて伺います。
答弁2
教育長
教育支援センター機能強化モデル事業についてでございますが、都教育委員会は、不登校の子供に対する個別の支援を充実させるため、平成二十九年度から三年間、十一地区においてモデル事業を実施し、教育支援センターに対して、人材の配置や学習環境の整備などを行ってまいりました。
モデル地区からは、新たに配置された登校支援員による家庭訪問や心理職による面談により子供の学校復帰につながった事例や、タブレット端末の導入により子供の学習意欲が向上した事例などが報告されております。
今後、都教育委員会は、モデル地区の先進的取り組みや、モデル事業終了後も効果的な実践を継続、発展させている取り組み等を区市町村教育委員会の担当者連絡会で周知するなどして、教育支援センターの取り組みを支援してまいります。
コミュニティバス
質問1
最後に、東京都の交通政策、とりわけコミュニティバスのあり方について伺います。
近年、地域交通バスは少子高齢化が急速に進む多摩地域において、高齢者を初めとする交通弱者が気軽に利用できる重要な交通手段として市民の生活を支えています。地元稲城市からは、ルートの見直しなどの経営努力を行っているものの、財政的に大きな負担となっているという声が届いています。
本来、コミュニティバス支援は福祉の観点から、交通空白地域にバスを運行するという趣旨で開始された都独自の施策であり、最終的に自立的な運行を行っていくのが望ましいという考え方も理解しております。ですが、現実にはコミュバス運行を自立的に行えている区市はそう多くなく、市場原理に任せれば、過疎地域で路線縮小が生じることは必至です。
そこで、東京都では現在、地域福祉推進区市町村包括補助事業によりコミュニティバス導入補助を行っていますが、近年、区市町村からは、運行維持に対する支援を拡充してほしいという要望も出ており、これについてコミュバスの制度そのもののあり方も含めての見解を伺います。
頻発する高齢者の交通事故に端を発して、プロジェクトチームにより公共交通のあり方についても議論がなされるものと思いますが、その際、これまで福祉保健局と都市整備局のはざまに入り込んでしまっていたコミュニティバスへの支援のあり方についても、根本的な見直しを検討していただきますことを要望し、私の質問を終わります。
答弁1
福祉保健局長
コミュニティバスの導入補助についてでありますが、都は現在、区市町村が交通空白地域を走行すること、事業の持続可能性などを踏まえて事業化することを条件に、コミュニティバス導入時の調査検討経費や車両購入費、運行開始後三年間の運行経費の一部について、包括補助で支援しております。この補助につきましては、お話のように、区市町村から拡充に向けた要望が寄せられております。
この支援は、コミュニティバスが地域の高齢者、障害者等の社会参加を促進するための有効な交通手段の一助ともなっている観点から、一定の条件を付して導入時に行っているものであり、引き続き、区市町村の取り組みを支援してまいります。