障害当事者のニーズの把握を
都営新宿線のホームに工夫を

バリアフリー

質問1
 建築物バリアフリー条例改正案に当たっては、ホテル一般客室の規定において、これまで障害者団体を交え協議を続けてまいりました。また、会派要望も提出させていただきました。

 当事者要望を踏まえ、より現実的な努力義務規定と今後の検討の附則をつけていただいたことを評価いたします。初めて一般客室の規定にまで踏み込み、ユニバーサルデザインを浸透させるきっかけとなります。今後、他自治体に誇れる条例になるよう、さらに検証を続けていただきたいと要望いたします。

 車椅子の種類は多様で、自走式、介助式、また手動、電動があります。電動の中でも簡易なものから四輪、六輪と多岐にわたります。

 今回の条例で障害者団体が要望したのは、入り口からの通路幅とトイレや浴室の出入り口幅です。通常、トイレや浴室の出入り口は、客室出入り口のすぐ近くにあります。七十から八十センチメートルの通路で、七十センチ幅の浴室出入り口では直角に曲がれない、一番小さい手動式の車椅子では何とか入れても壁を傷つけてしまう、また、回転できず出られないなどの声がありました。

 誰しもがいつ障害を持つかわかりません。今回の要望書を提出した障害者団体の方も、以前はスポーツ選手だったり、元気に飛び回る学生だったりしました。あるとき、事故や病気で車椅子の生活になっただけです。彼らも障害がなかったときには、幅五センチの要望をするとは考えてもみなかったのではないでしょうか。

 今回のような当事者の現実的なニーズを的確に把握し、反映するためには、実証実験などを行い、利用者と供給側の双方が確認することが重要と考えます。都の所見を伺います。

答弁1
都市整備局長
 建築物バリアフリー条例の改正についてでございますが、法で設置が義務づけられている車椅子使用者用客室の整備拡大に加えまして、法の義務対象ではない一般客室のバリアフリー化を進めることで、客室のバリエーションもふやしながら、誰もが利用しやすい宿泊環境を整えていく必要がございます。

 今回の条例改正に当たっては、障害者団体やホテル業界などと意見交換を行い、利用実態等も聞いた上で、パブリックコメントでの意見等を踏まえ、改正案を取りまとめました。

 今後、東京二〇二〇大会時の宿泊施設の利用状況や客室のバリアフリー化の動向等を勘案し、将来的な望ましい整備のあり方について、利用者や供給側など関係者とも協議しながら検討を行い、障害者や高齢者など、あらゆる方々が利用しやすい宿泊環境の実現を目指してまいります。

質問2
 私は、十年来の政策課題として、鉄道駅ホームのかさ上げ、すなわちスロープ設置を要望してきました。車椅子やベビーカーの方が、駅員さんの手をかりずして電車の乗りおりができるもので、大変喜ばれております。しかも、健常者は気づかないぐらいわずかな傾斜なので、つまずくこともない安全なものです。

 ホームドア設置時に同時に工事をすると費用が縮減されるため、これまでにもホームドア設置時に、都営三田線では二両目と五両目、大江戸線では四両目と五両目の車椅子スペースのある乗降口のホームにかさ上げをしていただき、さらには「ゆりかもめ」でも実施していただいています。

 私の地元を通過する都営新宿線でも、全駅で平成二十九年からホームドア設置とかさ上げ工事を行っております。このかさ上げに関しては、全駅の全てのドアが対象と聞き、大変喜んでいましたが、実際に車椅子利用者が乗車したところ、ホームと車両間の段差、すき間が大きく、小さい車椅子では越えられない、大きな電動車椅子でも、勇気を出さないと、簡単には乗車できないという声がありました。

 ホームが大きくカーブ状になっていることなどから、すき間がより大きくなっている場所があると聞いております。せっかく設置するものですから、利便性を上げていただきたいと考えます。

 都営新宿線の駅や乗降口によりすき間が異なるのであれば、その旨を表示するなど、車椅子等の利用者がわかりやすいように工夫をするべきと考えますが、所見を伺います。

 あわせて、国では現在、すき間や段差に関して実証実験を行い、検討を進めていますが、この検討結果を受けて、今後可能な場所については、くし状ゴム設置などの工夫をしていただきたいと要望しておきます。

答弁2
交通局長
 都営新宿線のホームと車両のすき間についてでございますが、交通局では、新宿線におきまして、高齢者、障害者を初め、全てのお客様に安全・安心にご利用いただけますよう、ホームと車両のすき間が広い箇所に、現在、くし状ゴムを設置し、すき間を狭める対策を進めてございます。

 一方、大きくカーブしているホームの乗降口につきましては、くし状ゴムを設置するなどの対策を講じてもなお、すき間の広さに差異が生じてございます。

 車椅子やベビーカーをお使いのお客様にも円滑にご利用いただくためには、乗降口のすき間に関する情報をきめ細かくお知らせする必要があり、今後、その具体的な方策につきまして検討してまいります。

質問3
 障害に限らず、利用当事者の意見を反映するには、パブリックコメントや説明会での意見聴取などがあります。二〇一一年に障害者基本法の改正に伴う条例改正時に、東京都障害者施策推進協議会の委員構成について障害者割合の質問をしましたが、当時は、二十名の協議会委員のうち五名、専門委員は十名のうち五名が障害者団体の関係者でした。現在の第八期は、委員は以前と同じ数ですが、専門委員は十三名のうち七名、うち四名が障害当事者で、八年前より委員も当事者もふえました。

 今後は、福祉保健局だけでなく、関連のある事業、計画策定の審議の場において、当事者割合をふやすなどの工夫が必要と考えます。審議会の性格や審議の内容に応じ、当事者からの意見をよりよく反映できるようにすべきと考えますが、都の見解を伺います。

答弁3
総務局長
 審議会等への当事者の意見の反映についてでございますが、都の審議会等は、専門知識の導入や公正の確保、民意の反映などを目的として設置をしております。

 平成二十八年度からは、都政改革の一環として審議会等を一層開かれたものとし、より活性化させるため、委員の重複任用制限による多様な人材の登用促進や、会議や議事録の公開徹底など、さまざまな取り組みを強化してまいりました。

 審議事項と密接なかかわりを持つ当事者からの意見を適切に反映し、多様な視点と知見を得ることは重要であり、今後も審議会等の性格に応じて、さまざまな手法を講じ、幅広く各方面からの意見を得ることにより、審議会等の一層の活性化に努めてまいります。

質問4
 今回の建築物バリアフリー条例案で障害者団体が要望をしたという記事に対して、ネット上のコメントでは、一般客室全部にやらなくてもいいのではないかとか、全部改良したら大企業しか生き残れないのではないかとか、車椅子の障害者の利用者は何人いるんだなど、否定的な意見がありました。

 ユニバーサルデザインの提唱者は、アメリカ・ノースカロライナ州立大学のロナルド・メイス氏です。障害の有無、年齢、性別、国籍、人種等にかかわらず、さまざまな人々が気持ちよく使えるよう、都市や生活環境を計画する考え方で、バリア、すなわち障壁に対処するバリアフリーデザインに対し、全ての人がある時点で何らかの障害を持つことを発想の起点にしており、健常者も障害者も、若い人も高齢者も、全ての人にとって使いやすいものです。

 このユニバーサルデザインの意義は、まだまだ社会に浸透していません。この発想が当たり前になる社会を目指していくべきと考えますが、知事の見解を伺います。

答弁4
知事
 ユニバーサルデザインについてのご質問にお答えをいたします。

 年齢、性別、障害の有無などにかかわらず、全ての人が安心・安全、快適に暮らして、また、訪れることができる都市東京を実現していくためには、ユニバーサルデザインの理念に基づいた施策を推進していくことは重要であります。

 都といたしまして、現在、学識経験者や障害当事者、そして事業者などが参画をいたしました福祉のまちづくり推進協議会の意見具申を踏まえまして、来年度から五カ年間を計画期間といたします東京都福祉のまちづくり推進計画の年度内策定に向けて改定作業を進めているところでございます。

 この計画ですが、誰もが円滑に移動できる交通機関や道路等のさらなるバリアフリー化、そして、全ての人が快適に利用できる施設の整備など、ハード面の施策の充実に加えまして、情報のバリアフリーや心のバリアフリーを推進をいたしますソフト面での施策も盛り込みまして、総合的かつ計画的に取り組むことといたしております。

 東京二〇二〇大会とその先を見据えまして、ユニバーサルデザインの先進都市東京を目指し、全庁一丸となって、その実現に向けた取り組みを加速してまいります。

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予期せぬ妊娠

質問1
 次に、予期せぬ妊娠について伺います。

 十代、二十代の若年世代で、望まない妊娠や思いがけない妊娠をし、誰にも相談することができないまま、妊婦健診も受けられない特定妊婦が増加しています。誰にも相談できない背景には、本人だけでなく、若年妊娠の現実を受け入れる環境や寛容さが社会に整っていないのではないかと懸念いたします。

 妊婦健診の未受診が多い最大の要因は、医療費の懸念です。結果、母子手帳が取得できず、妊婦健診費用の助成券を得られず、さらに受診が困難になり、妊娠中の母体の管理ができない状況になります。入院助産の制度もありますが、知らない方が多いのではないでしょうか。

 このたび、教育庁では、外部講師を活用しての性教育のモデル授業を昨年より展開、来年度は十校と拡大になりました。

 こうした性教育では、情報、知識の詰め込みだけにとどまらず、妊娠したときにまずどうすればよいのか、実際に利用可能な行政の制度なども含めて伝わるようにするべきと考えますが、所見を伺います。

答弁1
教育長
 妊娠、出産に係る制度等の指導についてでございますが、高等学校においては、学習指導要領に基づき、結婚生活と健康に関連して、母体保護法の内容や母子の健康診査、保健相談といったさまざまな保健医療サービスについて、全ての生徒が学習しております。

 また、中学校においては、都教育委員会が今年度実施した産婦人科医によるモデル授業で、将来の結婚、妊娠に向けて家族計画を考えさせるとともに、性に関する相談窓口や行政の支援体制等を扱い、その効果を検証してまいりました。

 今後、こうした取り組みを生かし、現在改定中の性教育の手引に、妊娠、出産に伴う母子の健康課題や支援策等について考察し、理解を深める指導事例を示すなどして、各学校における性教育の適切な実施を支援してまいります。

質問2
 先日、コンドームの達人と呼ばれる、医師の岩室紳也先生の講義を聞いてまいりました。どんな性教育の講演をするのかと思えば、心の話でした。性犯罪やいじめ、児童虐待や自殺など、居場所をふやすことが重要だとのことです。性をストレスや寂しさのよりどころとしてしまう若者に、本当に求めているものは何かを探す機会となる性教育であってほしいと考えます。

 性教育については、モデル授業の段階でさまざまな検証を行い、より子供たちに寄り添う教育を行うべきと考えますが、見解を伺います。

答弁2
教育長
 生徒に寄り添う性教育についてでございますが、学校における性教育は、人間尊重の精神に基づいて行うとともに、生徒が性に関する正しい知識を身につけた上で、適切な行動を選択できるよう進めていく必要がございます。

 そのため、来年度のモデル授業においては、例えば妊娠中や出産後の女性に対する社会的な支援について調べ、話し合うといった活動を新たに加えるなどして、生徒が生命のとうとさや人間としてのあり方、生き方について考え、相手を尊重し、適切に行動することができる力をより一層育んでまいります。

質問3
 都では、妊娠相談ほっとライン事業があります。これまでにも、利用時間の拡大など、ユーザビリティー向上の意見が上がっていました。若い世代では、友人の間でも電話はめったにかけず、SNSを利用することが当たり前となっており、また、誰にも打ち明けられないことを相談するためには、放課後や帰宅後、夜間が多くなります。

 妊娠相談ほっとラインについて、若年世代が相談しやすくなるよう工夫をするべきと考えますが、見解を伺います。

答弁3
福祉保健局長
 妊娠相談ほっとラインについてでありますが、都は、平成二十六年度に妊娠相談ほっとラインを開設し、妊娠や出産に関する悩みを抱える女性の相談に対しまして、看護師等の専門職が電話やメールで対応しております。

 平成二十八年度からは、電話相談の受け付け時間を延長し、平日及び土曜日の午前十時から午後十時まで開設しているところでございます。

 来年度は、若者世代を含むより多くの都民に利用していただけるよう、日曜日も相談を受け付けるとともに、妊娠疑いなどのキーワードを検索した場合に、ほっとラインの連絡先を表示するインターネット広告を実施するなど、相談窓口の普及啓発を強化してまいります。

 あわせまして、ほっとラインの実施状況等を踏まえ、SNSの活用も含め、相談手法に関する検討を行ってまいります。

質問4
 親にも相談できない若年の妊婦などは、相談機関の方に同行してもらい、医療機関を訪れる場合も多くあります。当事者に寄り添い、同行し、対応する人や機関との橋渡しをする同行支援は、大きな役割を果たします。

 今後、予期しない妊娠をした若年世代の同行支援につながる支援が必要と考えますが、見解を伺います。

答弁4
福祉保健局長
 予期しない妊娠などの相談に対する支援についてでありますが、区市町村では、妊娠届け出時の面接等、さまざまな機会を通じ、悩みを抱える妊婦を把握し、医療機関等への同行を含め必要な支援につなげる取り組みを行っております。

 都が実施している妊娠相談ほっとラインでは、相談内容に応じまして、医療、保健、子育て支援などの関係機関を紹介するとともに、予期しない妊娠や若年の妊娠など、特に継続的な支援が必要な場合は、相談者に対しまして、区市町村の保健所や保健センターに相談するよう勧めているところでございます。

 来年度は、こうした場合に、ほっとラインから区市町村に直接連絡することによりまして、相談者を確実に引き継げるよう、相談窓口の体制を充実することとしており、今後とも、若年世代の相談に適切に対応してまいります。

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特別養子縁組を前提とした新生児委託

質問1
 熊本市の慈恵病院に、養育が難しい乳幼児を匿名で託せる、こうのとりのゆりかご、通称赤ちゃんポストがあります。開設当初は、育てられないなら産まなければいいとの批判もありました。当時看護部長をされていた田尻由貴子さんは、どんな理由があろうとも、子供は生まれる権利も育つ権利もあるといいます。

 日本では、産んだ親が育てるという考え方が強いのですが、欧米では、決して養子は特別なものではありません。私が学生のころ滞在していたマサチューセッツの家庭では、ある日ハイチから子供がやってきて、突然家族になりました。

 東京都の里親制度は、昨年十月に委託の認定基準が追加、変更になり、年齢や居住要件の緩和、配偶者がいなくても同居の補助者がいれば受け入れ可能となり、子供の受け入れ先が広がったことを評価いたします。

 愛知県では、妊娠中からの相談、出産直後の相談に応じ、新生児を病院から直接里親宅へ委託する、愛知方式というものを行っており、三十六年間の間に二百二十六名の新生児委託をしたそうです。妊娠中の女性が安心して出産を迎えることができ、里親側も自然に親子関係を紡ぐことができ、また、赤ちゃんは生まれてから数日中に愛着の対象を持つことができます。

 里親側は、里子の性別は問わない、出産後に、産んだ女性が養子に出したくないと表明したらあきらめる、実親から引き取りたい、育てたいと申し出があれば話し合いに応じる、子に障害、病気の可能性があることを承知するなど、あらかじめ幾つもの覚悟をして委託を希望いたします。

 新生児委託がほかの自治体で進んでいない背景には、病気や障害の有無が明らかになる年齢になるまで乳児院で養育し、その後里親に委託することを採用しているからです。

 都では、新生児委託推進事業を平成二十九年度から始め、特別養子縁組ができるよう支援をしているものの、新生児は乳児院で養育し、妊娠中の縁組は行っていません。

 望まない妊娠では、堕胎を決意する女性もいます。一方で、妊娠中から委託が約束されていれば、産む決意をする場合もあります。中絶可能な期間は妊娠二十一週六日までですが、産後二十四時間以内に亡くなる子供が多いことは、ご案内のとおりです。大切な命をつなぐために、東京都でも妊娠中からの縁組に踏み出すべきと考えます。

 そこで、東京都の新生児委託事業を開始した理由を改めて伺います。

 また、子供の立場から、できるだけ早い委託や縁組みが必要と考えますが、今後の検討課題として、特別養子縁組を含めた里親制度についての登録状況の他府県との比較や、実親、里親の制度利用の理由など細かい実証分析を行う必要があると考えますが、都の見解を伺います。

 以上で私の一般質問を終わります。

答弁1
福祉保健局長
 特別養子縁組を前提とした新生児委託についてでありますが、都は、平成二十八年十一月に児童福祉審議会から、里親子の愛着関係を育むため、できる限り早期に委託できる仕組みを構築すべきとのご提言をいただきました。

 これを受けまして、医療機関や区市町村等から支援を要する妊婦の状況を把握し、養子縁組が最善と判断した場合には、できる限り新生児のうちに委託できるよう、昨年度から児童相談所と乳児院に専任職員を配置し、養育の支援等を行う新生児委託推進事業を開始したところでございます。

 特別養子縁組に関する取り組みにつきましては、来年度策定する社会的養育推進計画に盛り込む予定であり、今月開始いたしました児童福祉審議会専門部会で、本事業の実施状況等を検証し、できる限り早期に委託できる体制整備に向け、必要な検討を行ってまいります。