児童相談所と警察の情報共有は
手話を学ぶ機会の環境整備を

児童虐待防止

質問1
 児童虐待防止は、都政の緊急課題です。三月に東京都目黒区で発生した虐待死事件を受けて、知事は児童相談所と警察の情報共有範囲の拡大を表明しています。

 しかしながら、どの情報を警察と共有するか、その判断が児童相談所に委ねられている限り、判断ミスから事案の抱え込みが発生するリスクを避けることはできません。

 こうした理由から、既に茨城県、愛知県などが情報全件共有を実施し、今回の重大な事件を受けて、埼玉県、岐阜県知事も全件共有の方針を発表しました。

 全件共有は、全員が全ての情報に目を通すのではなく、全員が全ての情報にアクセス可能であるという点に重要な意味があり、子供の命を救うためには、情報の全件共有をやるかやらないかではなく、どうやるかを議論すべき段階に進んでいます。

 東京都も、情報共有範囲について、全件共有まで視野に入れて速やかに検討すべきと考えますが、知事の所見をお伺いいたします。

答弁1
知事
 児童相談所と警察との情報共有についてのご質問でございました。

 児童虐待を防止するためには、警察との情報共有は重要でございます。

 そのため、都は現在、警視庁から現職の警察官の派遣を受けるとともに、警察官OBを全ての児童相談所に複数配置するなど、警察との連携を図っております。

 また、子供の安全確認等で必要がありますときは、警察に要請をいたしまして同行して訪問するほか、身体的虐待で一時保護した子供が家庭復帰した場合に情報を共有するなど、日常的に警察とは連携して取り組んでいるところでございます。

 一方、児童相談所でございますが、虐待してしまうことに苦しむ親の相談に応じる機関でもございます。児童虐待事件に長く携わっている弁護士の方々からも、児童相談所への相談をためらうことのないように、プライバシーの保護等には十分配慮することが必要との意見もいただいているところでございます。

 また、平成二十八年度、児童相談所が対応いたしました一万二千四百九十四件の虐待相談のうち、約二千件は虐待に該当しないケース、そして約八千件は児童相談所によります助言指導で終了したケースでございました。

 警察との情報共有の見直しというのは、こうしたことを踏まえながら進めることが必要であると考えておりまして、現在、児童相談所に相談がありましたケースのうち、保護者が子供の確認を拒否しているケース、そして措置を継続しているケースなど、リスクが高いと考えられるケースにつきまして全て共有する方向で、警視庁との協議を開始しているところでございます。

質問2
 また、情報共有という観点からは、児童相談所のICT化が欠かせません。既に横須賀市の児童相談所などで、最新のICTを導入した情報共有システムの運用がスタートしています。児童相談所間と関係機関との連携を確実なものとするために、紙とファクスが中心となっている現状を改め、ICT化を進めるべきと考えますが、都の見解をお伺いいたします。

答弁2
福祉保健局長
 児童相談所におけるICT化に関するご質問にお答えをいたします。

 都は、平成十七年度から、従来、各児童相談所が個別に紙で管理をしておりました児童に関する情報のデータベース化を図っており、虐待等緊急を要するケースの場合でも迅速かつ的確な対応を行えるよう、現在、十一カ所全ての児童相談所をシステムでつなぎ、情報を共有しております。権限を有する者がアクセスすれば、全てのケースを閲覧することができる状態になっております。

 全国の児童相談所間では、児童相談所が虐待等でかかわっている児童で、転居等により行方不明となった場合には、自治体ごとの情報セキュリティー基準に抵触せず送受信できるファクスで情報共有を行うこととされております。

 現在、国は、総合行政ネットワークのメーリングリストを利用した児童相談所間の情報共有について検討を進めており、都としては、その動向も注視しながら、国や全国児童相談所長会と連携して、ICT化を検討してまいります。

質問3
 そして、児童虐待根絶のためには、仕組みとして里親委託、特別養子縁組など家庭養護の推進が必要です。虐待から一時保護を行っても、それを受けとめる環境がなければ、虐待防止の仕組みは完成しません。

 ところが、国では、一度は新しい社会的養育ビジョンの中で里親委託率七五%を目指すという積極的な目標を掲げたものの、この目標値を撤回する流れが生まれています。

 先般、東京都は里親の認定基準を改定し、同性カップルにも里親認定の門戸を開くなど、画期的な対応を行いました。国が後退するのであれば、東京都こそ里親委託率の独自目標を設定し、里親制度をリードすべきであります。

 里親委託の推進と目標値の設定について、知事の所見をお伺いいたします。

答弁3
知事
 里親委託の推進と目標値の設定についてのご質問がございました。

 私は、社会的養護のもとにある子供たちも、できるだけ家庭と同様の環境において養育されること、このことが望ましいと考えております。

 こうした考えに基づきまして、里親への委託を推進するために、児童相談所の体制強化や民間団体を活用いたしました里親への相談支援などの取り組みに加えて、養子縁組が最善と判断した場合には新生児のうちに委託するモデル事業や、関係機関が連携しながら専門的な支援を行うチーム養育体制の整備を進めてまいりました。

 また、今般、児童の成長、発達に必要な養育環境を提供するといった観点から、里親の認定基準につきましては、年齢要件の上限の撤廃、配偶者がいない場合などの要件緩和の改正を行ったのはご指摘のとおりでございます。

 現在、都といたしまして、社会的養護施策の推進計画におきまして、平成四十一年度までに家庭的養護の割合を六割とする目標を設定いたしております。

 平成二十八年の児童福祉法の改正を踏まえまして、今後、国から計画を見直すための方針が示される予定でございまして、都といたしましては、児童福祉審議会において、改めて里親委託の推進の方向性や目標について、有識者の方々にご議論をいただく予定といたしております。

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障害者差別解消条例

質問1
 次に、いわゆる障害者差別解消条例についてお伺いいたします。

 本条例案には、情報保障の推進、言語としての手話の普及が盛り込まれました。これは大きな前進ではありますが、手話言語に関する独立した条例を成立させた他の道府県と比べると、十分なものとはいえません。

 特に東京都は、広域自治体として特別支援学校などの教育機関を所管しています。ですから、手話の獲得、手話による学び、手話そのものを母語として学ぶ機会の環境整備に注力すべきと考えます。

 言語としての手話習得の機会について、小池知事の見解をお伺いいたします。

答弁1
知事
 言語としての手話の習得機会でございますが、手話は聴覚障害のある方々にとりまして重要なコミュニケーション手段の一つでございます。

 そのため、障害者差別解消条例におきましては、情報保障の推進を基本的な施策の一つに位置づけました。

 また、手話は一つの言語であるとの認識に基づいて、都民及び事業者におきまして、言語としての手話の認識を広げるとともに、手話の利用が普及するよう必要な施策を講ずるものと規定をいたしております。

 都は、現在、手話通訳者の養成、初心者から指導者まで手話を学ぶ講習会や、外国語手話講習会の実施、そして大学生向けの手話普及イベントの開催など、手話の獲得、普及に向けましたさまざまな取り組みを展開いたしております。

 今後とも、手話を学ぶ機会の確保などを通じまして、聴覚障害者の意思疎通支援の充実を図ってまいりたいと考えております。

質問2
 また、情報保障の推進については、東京都が率先して、例えば知事記者会見の中継、また都が配信する動画に手話通訳や字幕を完備すべきと考えますが、都の所見をお伺いいたします。手話はおしまいです。

答弁2
生活文化局長
 都が提供する動画等に手話通訳や字幕をつけることについてでございますが、障害の有無にかかわらず、誰もが情報を得やすい環境を整備することは重要でございます。

 都はこれまでも、必要に応じて、都政広報テレビ番組の放送時に字幕をつけたり、インターネット中継後にその内容を文字でホームページに掲載してまいりました。

 今後も、動画による都政情報の提供が増加すると見込まれることから、動画を作成、配信する際には、障害者差別解消条例に規定する障害者の情報保障に十分配慮するよう、各局の広報担当者による会議などを通じて周知してまいります。

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市場移転問題

質問1
 最後に、千客万来施設についてお伺いいたします。

 知事によるトップ会談と謝罪により、東京都が、二〇二〇年以降の着工方針を発表し、交渉決裂、再公募という最悪の事態は回避されました。しかしながら、二〇二〇年まで都が事業を運営する追加の費用が発生し、それまでは予定されていた地代収入が生じません。

 本年一月末までに着工できれば、千客万来施設の一部は東京五輪前に開場可能であるとされていました。事業者への謝罪の必要性を知事は早くから理解していたはずであり、知事がもっと早く決断、行動していれば、この追加支出は発生しなかったわけであります。これは、知事の標榜するワイズスペンディングから最もかけ離れた結果ではないでしょうか。

 地域住民や江東区議会からも、一連の知事の行動を非難する声が上がっております。知事は、その責任を認め、事業者のみならず、関係各所に謝罪と真摯な説明を行うべきと考えますが、本責任について知事の見解を求めます。

答弁1
知事
 千客万来施設事業に関するご質問でございます。

 都は、千客万来施設事業を着実に進めるという観点から、今回の事業者の提案を前向きに捉えました。そして、協議に応じる判断をしたところでございまして、現在、事業者と事業実施に当たりましての課題の整理を進めているところでございます。

 また、事業の推進に当たりましては、地元江東区のご理解を得ることは大変重要との認識を当然持っております。

 この間の一連の経緯、そして都の対応につきましては、私から直接区長にご説明させていただいておりますが、急な展開になったことからも、江東区や江東区議会の皆様に事前に十分な調整、ご説明ができていないことについては、ご心配をおかけいたしております。

 引き続き、今回の経緯につきましては丁寧にご説明するとともに、千客万来施設を確実に整備することや、それまでの間のにぎわい創出に向けた方策を早急に示すことで、江東区の皆様のご理解を得ていきたいと考えております。

質問2
 また、二〇二〇年までの暫定利用についても課題が山積みです。年間を通じてにぎわいを継続できるだけのコンテンツがあるのか、平日はどうするのか、屋外スペースは真冬や真夏、あるいは梅雨時など気候にどう対応するのか。二年間、都が運営して成功するビジョンが全く見えません。

 暫定事業の費用を一般会計、市場会計、どちらが支出するのかを含め、運営に対する都の具体的な計画をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。

答弁2
中央卸売市場長
 都によるにぎわい創出の取り組みについてですが、今回の事業者からの提案について、今後、最終的に合意が図られた場合は、千客万来施設は東京二〇二〇大会後の着工となります。

 都といたしましては、豊洲市場の開場後、千客万来施設が開業するまでの間、継続的ににぎわいを創出していくため、現在、五街区及び六街区の千客万来施設用地を活用したさまざまなイベントや仮設施設による事業等につきまして、財源も含めて検討を進めているところでございます。

 今後、にぎわい創出に向けた方策を早急に示すことで、都民や江東区の皆様のご理解を得られるよう取り組んでまいります。