オリンピック・パラリンピックの気運醸成
質問1
初めに、東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック競技大会の機運醸成について質問します。
東京二〇二〇大会の開会式まで七百六十五日後と迫りました。これからの期間は、機運醸成に向けて、文化、教育、スポーツなど関連するさまざまなイベントを重層的に展開する必要があります。
その一環として、組織委員会が推進している機運醸成事業の一つに、小学校でオリ・パラ競技に関連した問題を解きながら算数を学ぶ東京二〇二〇算数ドリルがあります。
このドリルを区内の全小学校で採用している渋谷区では、ことしの四月、区立代々木山谷小学校に、女子マラソンの高橋尚子さんや塚原直貴さんらのオリンピックメダリストを招いて、実践学習会を開催いたしました。
陸上競技のトップアスリートの走る速さに、子供たちは声を上げて驚き、一秒間に何メートル走るかを計算。算数は嫌いだけど、この算数ドリルを使った授業は楽しかったとの感想を書いておりました。
このドリルを通し、児童がオリンピックやパラリンピック競技のルールやアスリートの名前を覚え、学んだことを児童の家族や地域に広めることで機運醸成につなげようというものです。
我が党は、この授業を視察してきましたが、渋谷区では、ドリルを地元で開催される五競技を中心に編さんし、既に全区立小学校の六年生に配布し、副教材として活用しているとのことです。
地元で開催される競技だけでなく地元出身の選手に焦点を当て、地元が練習会場になっている競技を取り上げるなど、区市町村の状況に合わせてドリルを活用していけば、競技や選手を身近に感じ、開催機運の醸成につながると考えます。
渋谷区だけでなく、都内の小学校に広く活用されるよう、この算数ドリルの周知に取り組み、開催機運醸成を図るべきと考えますが、都の見解を求めます。
答弁1
オリンピック・パラリンピック準備局長
算数ドリルを通じた機運醸成についてでございますが、東京二〇二〇大会の成功のためには、開催機運の醸成を図ることが重要でございます。
そのため、都はこれまでも、カウントダウンイベントやフラッグツアーなど、多くの都民、国民が参加できるプログラムを通じ、子供たちも含め、大会へのわくわく感を共有する多様なプログラムを展開してまいりました。
今般、組織委員会は、楽しく算数を学習しながら競技についても自然に学べる算数ドリルを作成し、アスリートの協力のもと実践学習を実施するなど、渋谷区をモデルエリアとして機運の醸成を図っております。
こうしたドリルを通じた取り組みが都内に広がり、開催機運の醸成につながりますよう、組織委員会と連携し、小学校や区市町村などへの周知や案内に取り組んでまいります。
観光施策
質問1
次に、東京二〇二〇大会に関連して、観光振興について質問します。
東京を訪れる観光客は年々増加し、昨年は一千三百七十七万人に上っています。
都内には、伝統的なまち並みや水辺空間など、世界に誇るべき魅力のある観光資源が随所にあります。都市型景観だけでなく、アニメや漫画に代表されるポップカルチャーや最新の映像技術の演出によるイベントなど、観光客を引きつける多様な観光資源も多く存在しています。
例えば、私の住んでいる葛飾区では、柴又が国の重要文化的景観に選ばれています。古来より伝統的な情緒や雰囲気を継承する地域として選ばれたもので、都内では初の指定です。
また、区内にある東京理科大学の校舎でプロジェクションマッピングを実施したり、最寄り駅でも、光のページェントLEDと銘打ち、イルミネーションで美しい景観が醸し出されています。
このほか、男はつらいよの寅さん、こちら葛飾区亀有公園前派出所やキャプテン翼、さらに、昔懐かしいモンチッチやリカちゃん人形など、葛飾区にちなんだ人気のある作品や玩具を取り上げて、まち並みの装飾に活用して活性化を図っております。
都内各地域では、観光資源を活用したそれぞれ独自の取り組みが開催されており、東京二〇二〇大会に向けて、にぎわいの創出や旅行者の誘致につなげていくことは、都内全体の活性化、観光の振興につながるものと考えます。
都として、こうした地域の観光資源の発掘と宣揚などの支援をさらに強化すべきと考えますが、知事の見解を求めます。
答弁1
知事
観光に関してでございます。
地域の資源を生かした旅行者誘致について、東京は、ご指摘のとおり、歴史的な建造物や美しい水辺の空間、地元に代々伝わる食や祭り、そして海外からも注目されるアニメなど、それぞれの地域に際立った個性がございます。
東京二〇二〇大会は、魅力にあふれた東京のまちを世界に発信をして、都内各地に国内外からの旅行者を誘致する絶好の機会でございます。
これまで都といたしまして、伝統文化や食、景観のほか、アニメや漫画などのコンテンツを活用いたしました地域の観光振興の取り組みに対しましては、ソフトやハードの両面から支援を行いまして、地域への誘客を進めてきたところでございます。
今年度からは、江戸東京の史跡や名所、若者に人気のかわいい文化を感じられるスポットなどをめぐります、まち歩きツアーの開発を新たに支援をいたしまして、こうした取り組みを都内全域に広めることによって、旅行者の回遊を促してまいります。
また、プロジェクションマッピングを活用いたしまして、イベントへの支援を強化するなど、夜間における地域の演出力を高めてまいります。
ことしは、ちょうど東京百五十年という節目でもございます。こうしたイベントに多くの都民の皆様にもご参加をいただいて、身近な地域の魅力を再発見してもらう、そのことで二〇二〇年に向けて、地域のにぎわいのさらなる創出につなげてまいりたいと考えております。
質問2
また、水辺空間は、今後さらなる活用が期待される観光資源であります。
柴又には、柴又帝釈天という有名な観光スポットがありますが、その先の江戸川の矢切の渡しまで、にぎわいが広がれば、さらに広域に観光を楽しむことができます。水辺に広がる美しい景観を生かして、夜間の時間にプロジェクションマッピングを活用し、観光客を誘致することは、東京ならではの魅力となります。
こうした水辺空間を東京の有望な観光資源に発展させていくべきと考えます。都の見解を求めます。
答弁2
産業労働局長
水辺空間を活用した観光振興についてでございますが、東京を訪れた旅行者に、より魅力的な観光の機会をふやすため、水辺空間をすぐれた観光資源に育てることは重要な取り組みでございます。
都はこれまで、地域の魅力を生かした観光のアイデアを民間のノウハウと結びつけて実現する取り組みにより、柴又、金町エリアの寺社や江戸川堤防等を徒歩や自転車で散策するイベントなどを支援してまいりました。
今年度は、水辺空間を活用したにぎわい創出がさらに進むよう、マルシェの開催や水上アクティビティーなどのイベントに対する支援規模を拡充するとともに、夜間の新たな楽しみを生み出すため、プロジェクションマッピングを実施する場合の助成の充実を図ることといたしております。
こうした取り組みにより、水辺空間を活用した地域の取り組みを後押ししてまいります。
教育
質問1
次に、都立高校生の就学の継続対策について質問します。
就学の断念にはさまざまな原因があり、その一つの理由として、妊娠、出産による就学の断念があります。
文部科学省が公表した二〇一五年から二〇一六年の二年間の調査によると、全国の公立の高等学校で妊娠の事実を学校が把握した生徒数は二千九十八人です。東京都の人数は全国の約十分の一と推定されます。
都立高校においては、学習指導要領に従って、性に関する教育を実施しており、産婦人科専門医を活用した教員に対する指導や、生徒、保護者に対する講演会なども実施しています。産婦人科医を活用した事業は、教育現場からの要請も高い取り組みですが、医師不足の現状があり、十分に実施されているとはいえません。今後は、助産師や保健師などの協力を得ることが効果的であると考えます。
高等学校における性教育に関する都教育委員会の基本的な考え方について見解を求めます。
答弁1
教育長
高等学校における性教育についてでございますが、学校における性教育は、人間尊重の精神に基づいて行うとともに、生徒が性に関する正しい知識を身につけ、適切な行動を選択できるよう進めていく必要がございます。
学習指導要領における性に関する指導内容は、小学校から高等学校まで体系的に示されており、高等学校では、中学校までの内容に加え、受精、妊娠、出産や、それに伴う健康課題、また、家族計画の意義や人工妊娠中絶の心身への影響などについても取り扱うことにしております。
今後、都教育委員会は、性教育の実施状況を把握するとともに、医師等との連携方法などについても検討して、今年度中に性教育の手引を改定、配布し、生徒が自分の行動に責任を持ち、相手を尊重した適切な行動ができるよう、高等学校での指導の充実を図ってまいります。
質問2
都内の妊娠に関する相談窓口では、さまざまな団体やNPOが丁寧な対応を心がけており、私もそうした方々から、現状や課題などについて折々にお話を伺っております。
妊娠により、自主退学に至った高校生は、二〇一七年の文部科学省の調査で、全国で六百七十四人に上っています。
妊娠相談に当たる方々も、母体保護の観点からやむを得ず自主退学を勧めることもあるそうですが、高校生からは、出産後に学校に戻れる方法を教えてほしかった、休学や復学などで学び続けたかったなど、切実な悩みを訴えられるケースが少なからずあります。
都教育委員会は、こうした声に応え、復学などの再チャレンジを初め、さまざまな配慮を凝らし、丁寧で温かな対応を図るべきと考えます。都教育委員会の見解を求めます。
答弁2
教育長
妊娠した生徒への支援についてでございますが、生徒の妊娠が明らかになった場合、母体の保護を最優先にしつつ、進級や卒業に向けて教育上の配慮をしていくことが必要であります。
これまで都教育委員会は、生徒からの不安や悩みに対して、スクールカウンセラー等の外部人材を配置し、きめ細かな相談体制を整えてまいりました。また、学校は、進級や卒業に向け、体調不良により欠席した場合に補習を実施するなどの配慮を行うとともに、休学や復学、再入学を希望する場合の相談に対して丁寧に助言してきております。
今後、都教育委員会は、校長連絡会や養護教諭等を対象とした研修会において、学校が家庭や関係機関との連携により、卒業に結びつけた事例等を周知するなどして、妊娠した生徒に寄り添い、学びの継続ができるよう支援をしてまいります。
防災対策
質問1
次に、防災対策について質問します。
いつ発生するかもしれない首都直下地震や大規模水害に備え、実施可能な取り組みには万全を期すべきです。その観点で幾つか課題を取り上げます。
東京都の東部低地帯は、ゼロメートル地帯が広がり、過去においては幾多の大水害に見舞われてきたことから、河川の耐震化、堤防や水門の強化は重要です。
そのため、私の地元葛飾区を流れる中川の七曲がりと呼ばれる屈折箇所の堤防では、現在、耐震補強工事が進められています。
また、都は、新小岩公園付近において、以前より緩傾斜型堤防の整備を計画しております。
中川の耐震対策と新小岩公園付近の堤防整備に向けた今後の取り組みについて見解を求めます。
答弁1
東京都技監
中川の耐震対策と新小岩公園付近の堤防整備の取り組み状況についてでございますが、東部低地帯におきまして、水害から都民の生命と暮らしを守るには、河川施設の整備が重要でございます。
中川の堤防の耐震対策につきましては、平成三十年度に青砥橋上下流など四区間で新たに着手いたします。これによりまして、計画延長の約七割を事業化することとなります。また、津波の遡上等を防ぐ役割を持つ上平井水門では、大型門扉の交換、門柱や堰柱等、コンクリート躯体の耐震補強を実施しております。
新小岩公園付近の緩傾斜型堤防の整備につきましては、既設道路の線形などが変わることから、整備後の交通処理につきまして、地元や関係機関と協議を進めております。今後、これらを踏まえまして、詳細な堤防構造や施工方法等の検討を実施してまいります。
引き続き、東部低地帯における都民の安全・安心の確保に向け、必要な対策を着実に進めてまいります。
質問2
次に、帰宅困難者対策について質問します。
都は、首都直下地震が発生した際の帰宅困難者対策の一環として、平成二十五年度から、民間事業所等の協力による一時滞在施設の確保を進めてきました。しかし、九十二万人分の施設目標に対し、三十四万人分の確保にとどまっているのが現状です。
一時滞在施設の確保を進めるためには、協力していただく民間事業者の費用負担を軽減する支援策が重要と考えます。
費用負担の一つである備蓄食料の購入費については、本年三月の予算特別委員会における我が党の主張により、新規購入時だけでなく、更新時においても、都が六分の五を補助することになりました。
しかし、もう一つの負担要因となっている備蓄倉庫に係る固定資産税や都市計画税等の減免については、まだ明確な措置が示されておりません。
今後、都が進める一時滞在施設の協力事業所を拡大していくために、税の減免について早急に措置を講じるべきと考えます。都の見解を求めます。
答弁2
主税局長
備蓄倉庫に係る税の減免についてでありますが、帰宅困難者の受け入れ人数の維持拡大を図るためには、民間事業者の協力を得ていく必要があり、協力事業者の負担の軽減を図ることが不可欠でございます。
こうした認識のもと、都では、税制面の支援として、備蓄品購入に対する都の補助を初めて受ける場合に、備蓄倉庫に係る固定資産税等を減免してまいりました。
一時滞在施設の一層の確保に向けましては、初めて備蓄品を購入する事業者だけでなく、備蓄品を更新する事業者に対しましても負担軽減を図っていくことが重要でございます。
このたび、備蓄品の更新費用が補助対象に追加されたことを踏まえ、固定資産税等につきましても、新たに備蓄品を購入した場合に加え、更新が行われた場合も減免対象とするなど、税制面の支援を拡充してまいります。
質問3
次に、木造住宅密集地域の解消を進めるための、魅力的な移転先の整備について質問します。
我が党は、三月の予算特別委員会において、木密地域の不燃化を加速するためには、木密地域の権利者や借家人等の移転先の確保が重要であり、その受け皿づくりのため、民間の力を生かして魅力的な計画をつくるべきと要望しました。
都からは、魅力ある住宅を整備することが効果的であり、民間事業者へのヒアリングなどを行い、柔軟なアイデアやノウハウを取り入れていくとの前向きな答弁があったところです。
今定例会における知事の所信表明でも、木密地域対策の必要性を強調されており、先般、先行実施候補地区を足立区内に選定し、都有地を活用した民間事業者からのヒアリングの実施について公表しました。
しかし、木密地域の現居住者が移り住むためには、費用負担的にも妥当な金額でおさまるような民間提案を得なければなりません。
そこで、今後、魅力的な移転先整備事業の実効性を高めることが必要不可欠と考えますが、事業実施方針等を含めて、都の見解を求め、私の一般質問を終わります。
答弁3
都市整備局長
魅力的な移転先の整備についてでございますが、木密地域の不燃化を加速するには、権利者が安心して生活再建できるよう、コミュニティを維持しながら入居できる魅力的な移転先を確保することが効果的でございます。
このたび、その第一歩として、足立区江北及び関原の都有地で民間活力による整備に向けた取り組みを開始いたします。
来月から、リーズナブルな価格など、権利者が移り住みたいと思う事業内容や民間事業者が参入しやすい仕組みなどについて、対話型の個別ヒアリングを実施いたします。そこで得られた柔軟なアイデアや権利者のニーズなどを踏まえて、秋ごろに事業実施方針を取りまとめ、それに基づき、今年度内に事業者募集を開始いたします。
燃えない、燃え広がらないまちの実現に向け、今後も工夫を加え、不燃化を強力に推進いたします。