文化資源の価値を再発見し
ICT化により更なる活性化を

ICT先進都市

質問1
 情報通信技術、ICTで変わる都民の生活や暮らし、そして、東京の文化資源について質問をさせていただきます。

 今、ICT化という技術革新により、第四次産業革命が進行しております。これからの社会や経済、暮らしは、全てのものがインターネットにつながり、あらゆる情報が集められ分析され、そして使う側に最適、最善なサービスをもたらされていきます。社会、経済の構造が激変しているのです。

 こうした情報通信技術、ICT化により、生活や暮らしがどのように変わるのかについてまず伺います。

 そして次に、ICT化、デジタルなものとは一見無縁な東京の文化資源をいかに活性化させるかについても伺ってまいります。

 それではまず、ICTについて伺います。

 先日、九月十三日に発表された東京都ICT戦略の策定に向けた基本的考え方と主要施策の方向性にも書かれていますが、私も、少子高齢化、そして労働力が減少する社会においては、ICTを活用することで、社会や経済、地域コミュニティもより活性化し、都民の皆さんの暮らしも持続的に向上していくべきだと考えております。

 東京都は、日本の各都市の、そして世界の先頭に立ってICT先進都市の実現に向けて取り組んでいただきたい。

 そこでまずは、具体的にICTの活用により都民生活がどう変わるのか、都の考えを伺います。

答弁1
総務局長
 ICTの活用と都民生活についてですが、日進月歩で発展するICTの先端技術を政策実現のツールとして導入することで、セーフシティー、ダイバーシティー、スマートシティーの三シティーの実現を加速させてまいります。

 具体的には、インフラの維持管理への活用による都民の安全・安心の確保や、障害者等の移動支援、高齢者の見守りなどによる誰もが快適に暮らせるまちづくり、省エネなどを推進するスマートエネルギー都市、手厚いおもてなしの国際観光都市の実現などを目指してまいります。

 先般公表した基本的考え方に基づき、この冬を目途に、仮称でございますが、東京都ICT戦略を策定いたします。導入したICTは、東京二〇二〇大会時にショーケースとするとともに、大会後のレガシーも見据えて取り組んでまいります。

質問2
 民間では、ICT利活用の最先端の事業が生まれています。自動運転技術などの交通インフラ、あるいは設備稼働が最適化された工場、そして、あらゆる家電がつながり、より便利になるスマートホームなど、さまざまな場面で効果が上がっています。

 本来、行政は、社会の発展を方向づける大切な役割があり、また、すぐれた事例を参考にしつつ、民間での幅広い展開を後押ししていくことも大事だと考えます。

 そこで、民間主導で発展するICT分野において、行政はどのようにかかわるのか、都の見解を伺います。

答弁2
総務局長
 ICTにおける行政のかかわりについてですが、ICTの活用はあらゆる分野にわたり、行政の関与も多様ですが、大きく三つに整理できると考えております。

 まず第一に、行政みずからがICTを活用するものでございます。これにより、都民サービスを含めた都市機能の高度化や、都庁内部の生産性の向上が可能となります。

 第二に、官民連携によるICTの活用でございます。行政がデータを公開し、民間がそのデータを用いたアプリを開発することなどで、地域の行政課題の解決が可能となります。

 最後に、民間でのICT活用の後押しでございます。特に、独力でのICT導入が難しい中小企業に対するサポートなどにより、生産性向上、新価値創造が可能となります。

 いずれも東京の持続的成長に不可欠なものであり、引き続き、さまざまな施策を効果的に実施してまいります。

質問3
 一方で、高度にICT化された社会では、セキュリティーの課題もあります。例えば二〇一五年七月、アメリカでは自動運転車両を遠隔操作できることが実証されており、また同年十二月、ウクライナ西部での大規模停電は、変電所のブレーカーが遠隔操作で遮断されたと報告されています。

 このように、制御システム、そして情報システムがつながることで、つまり、あらゆるものがインターネットにつながることにより、悪用されるリスクも高まってまいります。

 そこで、ICT先進都市東京に向け、国や民間と連携しながら、都におけるサイバーセキュリティー対策を確実に行っていく必要があると考えますが、都の見解を伺います。

答弁3
総務局長
 サイバーセキュリティーの確保についてですが、企業等へのサイバー攻撃リスクが高まる中、膨大な都民の個人情報を扱い、重要なインフラを維持管理する都も、情報セキュリティーに細心の注意を払うことが必要でございます。

 このため、東京都サイバーセキュリティポリシー等にのっとり、さまざまな対策を講じるとともに、万が一のセキュリティー事故に備え、サイバー攻撃への対処を専門的に行う東京都CSIRTを設置しております。

 あわせて、国や警視庁に加え、セキュリティーの知見や技術力を有する外部機関との連携を強化するとともに、区市町村のセキュリティー水準確保に向け、自治体情報セキュリティークラウドの設置や技術的助言を行ってまいります。

 今後とも、多様な主体と密接に連携しながら、東京のセキュリティーの確保を図ってまいります。

質問4
 そして、ICT化は暮らしにおいて、行政、金融、医療、防災、減災など、実に幅広い分野で取り組まれています。

 例えば、行政サービスについては、官民データ活用推進基本法が成立し、原則、電子化が定められました。しかし、いまだ道半ばです。

 東京都の行政サービスの電子化は都民の利便に資するものであり、国や区市町村との密接な連携が必要、また電子認証や電子決済などの技術的な課題の早期解決を都に強く要望いたします。

 また、金融のICT化でいえば、金融と情報技術を融合したフィンテックの技術が、暮らしの利便性に大きく寄与すると見込まれています。つまり、認証や決済の簡素化、迅速化が実現し、決済方法が多様化することで、現金での決済が少なくなっていくと見られています。

 そこで、東京においてフィンテック産業が活性化することで、どのように都民の暮らしが変わるか所見を伺います。

答弁4
政策企画局長
 フィンテック産業と都民生活についてでございますが、フィンテック産業の活性化は、ITを活用した金融サービスの高度化をもたらすことで、都民生活の利便性向上や都内企業の成長に貢献するものと考えております。

 例えば、キャッシュレス決済の促進により、送金コストの低下や家計管理の効率化が可能となります。また、ロボアドバイザーの活用により、投資へのハードルが下がることで、安定的な資産形成に寄与いたします。さらに、クラウドファンディングなどにより、中小企業等に対し必要な成長資金が供給されることで、都内経済の発展につながることも期待されます。

 このように、大きな可能性を持つフィンテック産業の活性化に向けて、積極的に取り組んでまいります。

質問5
 なお、国際金融都市構想において、海外フィンテック企業の誘致、集積を積極的に行うと明言されています。しかし、中国はウイチャットペイなどモバイル決済が盛んで、ユーザー数が今や約八億人に達しているほどのフィンテック大国です。

 現金決済の比率がいまだ高い日本において、諸外国に比して、海外フィンテック企業を東京都へ誘致する取り組みでの工夫や都の優位性について、所見を伺います。

 ICT化には課題もありますが、赤ちゃんの見守りセンサー、医療や調剤、介護の情報共有ネットワーク、ドローンによる被災状況の迅速な把握など、東京都の目指すICT先進都市が実現することで、都民の暮らしが実感を持って、より豊かに、よりよいものになることを期待いたします。

答弁5
政策企画局長
 フィンテック企業の誘致に向けた具体的な取り組みについてでございますが、外国企業の東京進出を促すには、企業の状況に応じたきめ細かなサービスを提供する必要がございます。

 このため、海外三都市に設置いたしました誘致窓口、アクセス・ツー・トウキョウなどを通じて、東京のすぐれた生活環境や治安を含む情報を提供していくほか、市場調査等について、オーダーメードの無償コンサルティングを実施しております。

 また、国内の大手金融機関が相談役となり、外国企業のビジネスプランの磨き上げを支援するとともに、中小企業を含む都内企業等とのマッチング機会を創出する、アクセラレータプログラムを実施しております。

 こうした取り組みを一体的に実施することで、海外フィンテック企業の誘致を着実に進めてまいります。

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文化・伝統

質問1
 さて一方で、デジタル化されれば、そのよさが消えかねないような文化や伝統、まちやコミュニティで今まで大切にされてきた、ぬくもりのある生活や息遣い、こうした文化資源をいかに活性化させるかについて伺ってまいります。

 民間の有識者による東京文化資源区構想によれば、わずか半径二キロメートルほどの徒歩圏内に、谷中、根津、千駄木、浅草、湯島、上野、秋葉原、神田、神保町と、江戸そして近代、現代へと時代を超えて受け継がれてきた文化資源が、非常に近くに集積していることが指摘されています。

 千代田区、文京区、台東区といった区域で分けず、より広域に捉え、さらなる活性化を目指すという提言がなされています。

 東京都としても、今までそれぞれの特色や資源を生かした文化振興が図られてきましたが、今後は近接した文化資源を連携させ、より文化振興に活用すべきと考えますが、都の見解を伺います。

答弁1
生活文化局長
 地域の文化資源を活用した文化振興についてでございます。

 お話の地域も含めまして、都内には、歴史的な背景を有する、多彩な文化的特徴を持った多くの地域が存在しております。

 都はこれまで、地元の団体と協働した文化イベントの支援などによりまして、それぞれの文化資源を生かしながら、地域の魅力向上に取り組んでまいりました。

 また、上野地区では、上野「文化の杜」新構想に基づく事業の中で、周辺地域とのつながりを活用した新たなアートプロジェクトなどを支援しております。

 今後とも、こうした取り組みを通じまして、都内の文化拠点の形成と魅力向上を促進してまいります。

質問2
 また、これら特色のあるそれぞれの文化資源は、近代的な高層ビル群のある西新宿、大手町、丸の内、有楽町、そして今の新虎ノ門などとは異なり、大規模開発を免れてきた地域です。

 例えば、町家が連なり、路地の散歩、寺院めぐりを楽しむ外国人観光客に人気の谷根千など、人々の生活と歴史が積み重なって形成されてきた個性的な地域でもあります。

 海外においては、このような個性的な文化資源を、MICEといった国際会議などのレセプション会場、つまりユニークベニューとして活用する例が多く見られます。

 こうした成り立ちのあるまち並みや寺社仏閣などを、地域において受け入れ可能な比較的中小規模のMICEのレセプション会場として使用することは、まちや地域の活性化にとって極めて重要だと考えます。

 観光振興の観点から、ユニークベニューについて都としてさらなる活用を図るべきと考えますが、所見を伺います。

答弁2
産業労働局長
 ユニークベニューの活用についてでございますが、国際会議やレセプション等を、地域の歴史や文化が凝縮された建物や庭園等で行うユニークベニューの活用は、MICE開催都市としての魅力を高めるとともに、地域の活性化や観光振興にも資する重要な取り組みであります。

 このため、都は、浜離宮恩賜庭園など都立八施設、上野の森美術館など民間等十四施設を掲載したPRパンフレットをMICE主催者や関連事業者に配布し、ユニークベニューとして利用していただけるよう働きかけているところでございます。

 また、民間の博物館や美術館等の施設で実施されます中小規模の会議やレセプション等に対しましても、開催経費の一部を支援し、利用を促進しております。

 今後も、地域の文化資源を生かしたユニークベニューの積極的な活用に向け取り組んでまいります。

質問3
 東京二〇二〇大会では、各国が自国の文化、観光などのPRのために、ホスピタリティーハウス、ナショナルハウスを設置すると想定されますが、これらの地域には、歴史的な建造物、リノベーション可能な民家、オフィスビルなど、ホスピタリティーハウスへの転用が可能な地域資源があります。

 前回、リオ大会におけるホスピタリティーハウスの実績は、資金的に余裕のある国による、わずか三十施設程度の設置にとどまっていたようです。ホスピタリティーハウスには、東京二〇二〇大会を機に、東京の伝統文化が各国の文化と交流する場として活用されること、また、大会後もレガシーとして継承されることが期待されます。こうしたホスピタリティーハウスを大会において活用すべきと考えますが、所見を伺います。

答弁3
オリンピック・パラリンピック準備局長
 ホスピタリティーハウスについてであります。

 過去の大会では、各国が、文化や観光情報等の魅力発信の拠点として、ホスピタリティーハウスを展開しております。

 具体的には、学校等の既存施設を利用したり、公園等の公共用地に仮設で設置するなどして展示や飲食の提供を行い、多くの市民や観戦者、大会関係者が来場し、大会の盛り上げに貢献をしておりました。

 二〇二〇年大会におきましても、都内に設置される多様なホスピタリティーハウスを通じて、地域との人的、文化的な交流やにぎわいの創出が期待されるところであります。

 都といたしましても、各国の状況やさまざまな意見を参考にしながら、ホスピタリティーハウスとの連携を図っていくことにより、来訪する多くの方々に楽しんでいただける大会を目指してまいります。

質問4
 文化資源には、無形のものも少なくありません。それは、情緒にあふれた盆踊り、また、千代田区でいえば、江戸の天下祭りとも称される神田祭り、山王祭もその例です。

 例えば、盆踊りは日本の夏を彩る風物詩です。誰でも簡単に見よう見まねで踊ることができ、また年齢や国籍問わず、その場で輪の中に入れる、そうした庶民性があります。実際、ことしの夏、丸の内行幸通りで行われた盆踊りは、多くの観光客や企業で働く外国人が輪に入り、楽しんでいました。

 オリンピック・パラリンピックは、スポーツの祭典であると同時に、文化の祭典でもあります。こうした無形の伝統が表現される江戸の祭りを機運醸成の一助として活用するのはどうか、所見を伺います。

答弁4
オリンピック・パラリンピック準備局長
 大会機運醸成のための祭りの活用についてでございます。

 二〇二〇年大会の成功に向け、機運の醸成を図るためには、地域に根づいた伝統や文化も活用しながら盛り上げていくことが重要であります。

 このため、これまで都は、リオ大会時のライブサイトにおいて、太鼓や踊りなど地域の伝統文化を発信してまいりました。

 また、組織委員会では、盆踊りなど地域の夏祭りを応援プログラムとして認証しているほか、東京五輪音頭二〇二〇を、祭りなどの地域イベントで幅広く活用できるよう取り組んでおります。

 今後、都は区市町村と連携し、町会等の地域団体にこうした取り組みのさらなる周知を図るとともに、都のイベントにおいても、伝統文化や祭りの要素を積極的に取り入れるなど、より一層の機運醸成を図ってまいります。

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文化資源とICT化

質問1
 また、まちや地域全体でいえば、それぞれの特色を生かしたまちづくりが求められます。例えば神保町においては、古本、古書、出版文化とともに発展してきたカレー、喫茶などの飲食文化もあわせ、近隣の文化資源との回遊性、滞留性を持たせた歩行空間、また、文化資源保全に向けた建築基準法の緩和、消防法の緩和などの検討が求められています。

 あくまで主体は地域の人々でありますが、地域住民、事業者、地元区、そして東京都などが相互に連携して、面的な視点を持ってまちづくりを進めていくことを期待いたします。

 これまで、ICTの活躍が、都民の生活や暮らしの向上にどうつながるのか伺ってきました。私は、人々の生活や暮らしの中から芽生えた風俗や習慣、しきたりが、やがて時間がたち、文化や伝統としてその地域に根づいていき、そして文化資源として継承されていくのだと思います。

 こうした文化資源については、従来の文化振興施策、観光施策に加えて、東京二〇二〇大会という大舞台も生かす。さらに、ICTを活用し、多言語対応、観光案内、キャッシュレス決済など、外国人や観光客の利便性向上を図ることにより、東京の文化資源の価値が再発見され、さらなる活性化へとつながっていくのではないでしょうか。

 最後に、都民の生活や暮らしを向上させるICTという技術革新を、文化や伝統と積極的につなぐことが重要だと考えますが、知事の見解をお伺いしまして、私の質問を終わります。

 ご清聴ありがとうございました。

答弁1
知事
 私に対しまして一問、伝統文化とICTなどの技術革新との関連でございます。この両方を持っていることこそが、私は東京の強みだと、このように考えております。

 特に来年は、江戸から東京への改称からちょうど百五十年の節目の年に当たるわけでございます。江戸から近代、現代へという時代の流れの中で、人々の日々の生活が東京の地域ごとの伝統文化を生み出してきた、このように考えております。個性的なまち並みや建築物など有形の伝統、あるいは祭りや盆踊りなどの無形の文化が洗練された形で受け継がれているものと考えます。

 こうした東京の伝統文化の魅力を磨き上げるために、ICTなどの最先端の技術を活用して、さらに、二〇二〇年大会という機会もございます。これを捉えながら、東京のプレゼンスを高めていく大きな原動力になると確信をいたしております。

 東京の持つ力を正しく認識をして、これを上手に組み合わせて相乗効果を発揮する、このことによって、誰もが生き生きと活躍して、多くの人が訪れる世界に誇り得る都市東京を築いてまいりたいと考えております。