ベルギー王国(ブルージュ)

調査目的

市内の歴史的建造物

 都市機能の高度な発展の影で、経済を最優先して造られた都市の構造物は、人々の暮らしにとって必ずしも親和性のあるものではなくなった。一定の経済成長を実現した今日の東京において、生活者にとって心地よい街並みづくりが求められている。その中でも水辺空間の活用は重要な課題であり、積極的な取組を進めているブルージュ市を訪問した。

ブルージュ市の概要

歴史的建築物であることを示すプレート拡大図  水辺空間の豊かさを活かした都市空間形成ゆえに世界遺産にも指定されているブルージュは、フランス語で「橋」や「船着場」を意味し、入り組んだ運河に50以上の橋が架かるベルギー北西部、フランドル地方を代表する水の都である。
 街は中世にハンザ同盟として繁栄し、15世紀に黄金時代を築き、その後、港が砂で埋まり急速に衰退した。そのため、当時の街がそのままに保存され、中世フランドルの「生きた博物館」、「屋根のない美術館」と呼ばれるほど美しい姿を残している。
 一歩街に足を踏み入れると、歴史の重みや、この街を愛し誇りに思っている多くの市民の想いが伝わってくる。

市内視察

現地でのヒアリング運河から見た岸辺のマーケット  現地では、ブルージュ市の公認ガイドでもある市職員とともに市内視察を行い、意見交換を行った。
 ブルージュでは16世紀にできた街の地図をもとに、忠実に建物の再現をし、今でも道路は石畳で、外壁はレンガやオーク材などを使用しており、建て替えも厳しく制限されている。最近建築されたコンサートホールを除き、昔のままの中世の美しい街並みを残している。こうした街並みの維持や修復については課題も多いが、歴史的建造物にはプレートを交付するなどの取組を進めている。また、交通政策として、旧市街への乗り入れを制限するパークアンドライド、駅からのシャトルバス運行、観光バスを含む大型バスの乗り入れ規制などが実施されていた。運河にはたくさんの船が往き来していて、陸から見る景色とは違い、来訪者を魅了してやまない。
 現地市担当者との意見交換会では、上記歴史的建築物の保存や交通政策のほか、街の美観では、ネオンや看板といった広告などの制限が挙げられた。また、夜間のライトアップといった歴史や文化を活かそうとする演出もあったが、運河の水位や水質への影響など、問題がないわけではないとの説明があった。

まとめ

 かつて東京は江戸(江に臨む所の意)と呼ばれた。河川や運河が縦横に走り、舟運が物流を支えた水辺の大都市であり、水辺を中心に賑わいが広がっていて、海外からは『水の都江戸』とも賞賛されていたと言われている。
 今日の東京でも平成18年2月に『東京の水辺空間の魅力向上に関する全体構想』を策定し、居住者、来訪者に魅力的な水辺の都市空間を創造するための取組を開始した。「水辺の賑わい」「舟運」「水辺景観」「水辺環境」の4つの視点から、「人々が集い、賑わいあふれる交流空間」という将来像を掲げ、水辺活用の気運の醸成や水辺イベントの連携促進など、水辺を活かした活動の推進を図るとしている。
 失われてきた江戸・東京の水辺の美しさ、調和のとれた景観や街並みを今後どのように構築していくかが今後の課題である。

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