東京都議会友好代表団ソウル特別市訪問報告書

訪問概要

目的

 東京都議会は、ソウル特別市との友好都市提携に基づく交流事業の一環として、ソウル特別市議会を隔年で訪問・受入をしています。平成25年は、都議会が訪問する年にあたるため、ソウル特別市議会の招請を受け、東京都議会友好代表団を派遣しました。

 交流を通じて、東京都とソウル特別市との友好・親善の増進に寄与するとともに、両都市に共通する都市問題などに関して、調査及び意見交換を行い、都議会における政策立案に資することを目的としています。

訪問都市

 ソウル特別市

訪問期間

 平成25年11月19日(火曜日)から21日(木曜日)までの3日間

代表団名簿
団長吉野 利明都議会議員(東京都議会自由民主党)
団員鈴木隆道都議会議員(東京都議会自由民主党)
団員神林 茂都議会議員(東京都議会自由民主党)
団員桜井浩之都議会議員(東京都議会自由民主党)
団員清水 孝治都議会議員(東京都議会自由民主党)
団員谷村 孝彦都議会議員(都議会公明党)
団員斉藤 やすひろ都議会議員(都議会公明党)
団員かち佳代子都議会議員(日本共産党東京都議会議員団)
団員中村 ひろし都議会議員(都議会民主党)
随行産形稔議会局長 ほか職員2名
費用

総額 約2,961千円

日程概要
月日 時間 行程
11月19日(火曜日) 午前 羽田空港発
午後 金浦空港着
ソウル特別市議会表敬訪問及び市議会視察

(ソウル市内泊)

11月20日(水曜日) 午前 ソウル特別市新庁舎視察
ソウル安全統合センター視察
午後 MICE誘致促進施策聴取
ナヌムカー(ソウル市カーシェアリングサービス)視察

(ソウル市内泊)

11月21日(木曜日) 午前 COEX(展示施設、コンベンション施設)視察
午後 地下鉄への自転車持込システム及び施設視察
金浦空港発
羽田空港着

報告

 吉野 利明議長を団長とし、自民党、公明党、日本共産党、民主党の各会派代表から成る友好代表団9名は、ソウル特別市議会の招請を受けて、平成25年11月19日から21日までの3日間、ソウル特別市を訪問しました。

基礎データ(2012年現在)
ソウル特別市議会組織図
  • 市長:朴元淳(無所属2011年就任)
  • 人口:1,044万人
  • 世帯数:417.8万世帯
  • 面積:605.4平方キロメートル(東京都の約3分の1)
  • 行政区域:25自治区
ソウル特別市の概要
  • 議員数:114人
  • 任期:4年
  • 役職:議長1名、副議長2名、任期2年
  • 議会運営:本会議(年2回)、常任委員会(11委員会)、特別委員会(必要の都度)
  • 議会の機能:条例の制定・改正・廃止、予算案の審議・確定、決算の承認、行政事務の監査・調査、請願の審査・処理など
ソウル特別市の場所
(ソウル特別市公式ウェブサイト参照)

 まず、ソウル特別市議会の金軫洙(キム ジンス)副議長を表敬訪問しました。

 友好都市提携を結んでから25年間、両都市は文化、経済、教育、スポーツなどの広範な分野において、多彩な交流を行ってきました。特に、毎年、絶えることなく実施してきた両議会の交流の積み重ねが、今回の訪問と相まって、両都市の間の相互理解と友情の深まりに多大な貢献を果たしていることを確認しました。

 吉野団長からは、東京が2020年夏季オリンピック・パラリンピックの開催地に決定したことを報告し、応援を頂いた韓国、そしてソウルの皆さんへの感謝の言葉をお伝えしました。そして、東京大会に先立つ2018年には、韓国の平昌(ピョンチャン)で冬季オリンピック・パラリンピック大会が開催されることから、東京都議会とソウル特別市議会とが、しっかりと手を携えて両大会の成功を支援し、アジアにおけるオリンピックムーブメントの推進に貢献していくことを提案し、合意を得ることができました。

 その後、本会議場に移動し、ソウル特別市議会及び議員の活動について説明を受けました。議場前面に設置された大型スクリーンや議席に備えられた端末画面など、本会議場のIT化と、これによる議事運営の迅速化やペーパーレス化などの効果についても見聞し、大変有意義な視察となりました。

 次に、ソウル特別市の政策について3つのテーマに基づき調査・視察を行いました。

 1点目は、昨年9月にオープンしたソウル特別市の新庁舎の機能です。庁舎に入り、まず目を引くのは「垂直庭園」と名付けられた高さ28メートルの屋内壁面緑化で、これはギネスブックにも登録された程の規模とのことです。また、太陽光、太陽熱、地熱なども積極的に取り入れ、エネルギー使用量の28.3%を再生可能エネルギーでまかなうなど、新庁舎の高い環境性能についてお聞きしました。これらの視察は、ソウル市の環境戦略の一環として参考になりました。

 また、新庁舎の地下に新設された「ソウル安全統合センター」を視察しました。これまで3か所に分散していた災害対策、危機管理、交通管理の3つの機能を1か所に統合し、平常時は交通管理を行いつつ、洪水などの災害発生時には防災センターとして、テロなどの非常事態には危機管理センターとして重点対応を行う拠点となっています。統合により予算・人員が3分の1に削減されるなど、行財政の効率化に寄与したとの説明もありました。

 視察の2点目は、交通政策です。総合交通管理センターにおいて、路線バスや道路上に設置されたカメラ、GPS、道路下のセンサーなどの機器を駆使した交通情報の収集や、これを活用した警察、道路公社などとの連携による渋滞対策、違反取締などの交通マネジメントの状況を確認しました。このシステムは、今年の10月に東京で開催されたITS世界会議でも表彰された程優れたもので、世界各地からの視察が相次いでいるようです。

 また、渋滞対策としてソウル市が実施する「ナヌムカー」というカーシェアリングシステムを視察しました。これは、スマートフォン一つで空き自動車の検索と予約、自動車の開錠と使用後の精算も行えるという、たいへん利便性の高いシステムです。利用者の満足度も高く、現在、約700台の車両を来年末までに2000台に増やす予定とのことでした。

 さらに、「地下鉄への自転車持ち込みシステム」についても視察しました。環境対策や余暇の活用という観点から、土、日、休日に、地下鉄の一部車両に無料で自転車を持ち込むことを可能としており、このための改良車両を見学し、自転車の持ち込みと設置を実際に体験しました。

 滞在中、ソウル市内の渋滞は深刻で、これら交通政策の効果は今後の課題と感じましたが、可能性のある施策には大いにチャレンジするという精神には感心させられました。

 視察の3点目は、MICE政策です。ソウルは、昨年、イギリスの観光専門誌において最優秀MICE都市に選ばれるなど、東京を一歩先んじている都市です。現在、MICE機能で世界5位のソウルは(注;東京は6位)、5年後に世界3位を目指すという明確な目標のもと、2020年までに現在のインフラを3倍近くの面積に増やす戦略を掲げているとの説明がありました。

 実地には、「COEX(コエックス)」というMICE施設を見学しました。展示面積としては東京ビッグサイトに及びませんが、国際会議場、ホテル、ショッピングセンター、カジノなどが複合的に併設されている点で強味があり、当日も朝から大変な賑わいを見せていました。また、COEXの吸引力を活用し、ソウルの優れた中小企業にCOEX内の店舗・スペースを安価で貸し出し、国内外からの来場者に紹介するというソウル市の取組を視察しました。ソウルの政策は、現状に甘んじずに高い成長を志向しており、同様にMICEを重点施策に掲げる東京にとって手強い相手と実感しました。

結び

 今回の訪問は、3日間という短い期間でしたが、これまでの交流の成果を確認し、二つのオリンピック・パラリンピックの成功に向け、両都市の友好のきずなを一層深めるとともに、環境・交通・産業などの分野で意欲的な政策を手掛けるソウル特別市の現在の姿を見聞し、さらに意見交換を行うなど大変有意義な訪問・調査となりました。

 今回の視察及び意見交換の成果を、今後の都政に生かしていきたいと思います。

 このたびの訪問に当たり、お世話をいただきましたソウル特別市議会はじめ関係者の方々に、心より厚く御礼を申し上げまして、東京都議会友好代表団の報告とさせていただきます。

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