委員外の出席者
東京都議会情報公開推進委員会学識経験者 藤原 静雄君
本日の会議に付した事件
学識経験者の選任について
公文書開示の実施状況について
「情報公開の最近の動き」について
・学識経験者意見聴取
〇矢部委員長 ただいまから東京都議会情報公開推進委員会を開会させていただきます。
初めに、お手元に資料を配布させていただいておりますけれども、学識経験者の選任について申し上げます。
日程の次のページ、資料1をごらんいただきたいと思いますが、現在、このお三方にお願いをしておりますが、学識経験者として選任をしていただいておるわけでございますけれども、現在の任期がこの十二月末で終了となります。
議長から、引き続き来年もこのお三方に再任をお願いをしたいというご報告がありましたので、ご了承のほどお願い申し上げます。
〇矢部委員長 次に、公文書開示の実施状況について、広報課長から説明をいただきます。
〇別宮議会局広報課長 前回、十月一日の情報公開の委員会でご報告いたしました後、今日までに都議会に対して公文書開示の請求がございました案件の実施状況につきまして、ご報告させていただきます。
お手元の資料2をごらんいただきたいと思います。
お手元に配布いたしました資料2、東京都議会の公文書開示実施状況をごらんいただきたいと思います。
初めに整理番号の1でございます。平成十三年八月の議会局長のスケジュール表の開示請求がございました。当該文書の中で、休暇等個人に関する情報につきましては、非開示の処理をいたしてございます。
次に、2でございます。平成十二年度及び十三年度の議員待遇者会運営費補助金に関する文書の開示請求がございました。当該文書の中で、待遇者会会長印の印影の部分、また、引退した議員の住所等につきましては、非開示の処理をいたしております。
次に、3でございます。平成十二年四月から平成十三年十月までの宿泊を伴う視察に関する文書の請求がございました。本件につきましては、常任委員会の管外視察及び北京ソウル友好代表団に関する文書が該当いたします。随行職員の給料号級、参加者のパスポート番号、業者関係の印影部分につきましては、非開示の処理をいたしてございます。
次に、4の応招に係る公用車等使用通知の請求でございますが、現在事務処理中でございまして、以前にも同趣旨の請求があり、同じく開示として決定する方向で準備を進めております。
以上で報告を終わらせていただきます。
〇矢部委員長 ただいまの報告につきまして、ご質問等がございましたらお願いをいたします。
〔「ありません」と呼ぶ者あり〕
〇矢部委員長 ありませんか。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
〇矢部委員長 よろしゅうございますか。それでは、本件につきましては、以上のとおりとさせていただきます。
〇矢部委員長 次に、情報公開におけるビデオテープ等の取り扱いについてでございますけれども、東京都議会情報公開条例第十八条により、開示方法は視聴に限定をされております。コピーすることは認められておらないわけでございますけれども、この規定は東京都の情報公開条例に沿った規定ですが、東京都の方は、来年の第一回定例会におきまして、コピーを認める方向で準備を進めているようでございます。
都議会といたしましても、ビデオテープ等の取り扱いについて検討していく必要があると考えております。
コピーを認めた場合の問題点等について、事前に事務局に調査をするように依頼をしたいと思うんですが、いかがでございましょうか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇矢部委員長 よろしゅうございますか。--それでは、そのようにさせていただきたいと思います。
速記停止をしてくださいませ。
〔速記中止〕
〇矢部委員長 それでは、速記を再開してくださいませ。
〔藤原学識経験者出席〕
それでは、これから学識経験者からの意見聴取を行わせていただきたいと思います。
前回の委員会で、本委員会の学識経験者の方をお呼びすることをご提案をさせていただいておりましたが、本日は、先ほどもご紹介申し上げました國學院大學の藤原静雄法学部教授から、情報公開の最近の動きについてご意見を聴取をさせていただきたいと思います。
藤原先生、本日はお忙しいところ、ご出席をいただきまして、ありがとうございました。
都議会では、これまで幸いにして、非開示決定による不服申し立ては起きておりません。したがいまして、先生にお出ましをいただく機会を得ずに今日まで来ておるわけでございますけれども、改めて、いろんなお立場から、限られた時間で恐縮でございますが、情報公開にまつわりますご意見等を拝聴させていただければというふうに思う次第でございます。
なお、藤原先生には、ご着席のままでご説明をいただきたいと思います。
それでは、藤原先生、よろしくお願いを申し上げます。
〇藤原学識経験者 それでは、お言葉に甘えまして、着席のままで失礼いたします。
本日は、このような席にお招きいただきまして、どうもありがとうございます。光栄に存じております。
それでは、早速でございますけれども、二十分ないし二十五分ということで、情報公開の最近の動きについてお話をさせていただきたいと存じます。
お手元に資料、三枚組みのものが配られていると思いますけれども、それをごらんいただきながら、お話を聞いていただきたいと思います。
まず、「はじめに」ということで、情報公開法がこの四月に施行されているわけでございますけれども、ちょうど二十年少したつということで、情報公開の二十年の動きということで、情報公開制度というのはどういうものであったかということを、「はじめに」にかえて振り返っておきたいと思います。
つけておきました略年表の方をごらんいただきたいんですけれども、情報公開に関します二十数年の動きを、ごく大ざっぱにではございますけれども分けると、三つの時期に分けることができるのではないかと思います。
そこにございますように、まず初めは自治体条例の展開の時代であった。これは、先生方ご存じのように、一九七〇年代の後半から地方の時代という言葉がうたわれまして、神奈川県で一番初めに住民参加システムの研究という形で情報公開の問題が取り上げられたわけでございます。その研究会の成果等を経まして、一九八二年に山形県の金山町、そして神奈川県の情報公開条例が制定されたわけです。二年たって一九八四年に東京都も、自治体としてはかなり早い段階で情報公開条例を制定したわけであります。これが旧条例です。
この後、十年ぐらいの間は地方公共団体で、市民運動に携わる方等が交際費でありますとか、食糧費でありますとか、そういったものの支出をめぐって積極的に情報公開請求をし、さらに裁判で、また開示に満足がいかないと争うということで、情報公開というものが進化、あるいは展開してきたわけであります。
このような時代を経て、二番目に情報公開法の制定と自治体条例の見直しと書いておきましたけれども、一九九五年になりますと、政権の枠組みも変わったということで、行政改革委員会情報公開部会が設置されるわけです。翌年、九六年、つまり平成八年に情報公開法の要綱案というものができております。この要綱案は、地方自治体のそれまでの経験を網羅的に調べて、よいところは取り入れ、地方の経験で改善すべきものは改善した方がいいのではないかという、そのような観点から書かれているものです。この情報公開法要綱案ができたことが、今度は自治体の条例の見直しにつながるわけです。
我が国の情報公開制度のおもしろいところと申しますのは、自治体が先行しまして、それを受けて国のものができた。それを今度、国のものができたらフィードバックされる形で自治体の見直しにつながったというような、他の国にも例を見ないようなおもしろいところがあるわけでございます。
九六年に要綱案ができましたんですけれども、これを受けて情報公開法が九九年には制定されるわけですけれども、レジュメの本文の方に戻っていただきますと、情報公開法が制定されたときに残された課題とされましたのが、国の場合は当時の特殊法人をどうするのかということでありました。地方公共団体の場合は出資法人の問題、あるいはそれまで条例では警察が実施機関には入っていなかったので、警察の問題をどうするのか、さらには議会をどうするのかというようなことが残された課題となったわけです。
東京都の方でも見直しの動きがありまして、要綱案が公表された翌年の九七年には、略年表に載っておりますけれども、情報公開制度のあり方に関する懇談会が設置されて、東京都の旧条例の見直しが検討されております。さらには、九九年には情報公開条例が改正され、議会の情報公開条例も独自のものがつくられるということになったわけです。さらに、出資法人等についても、東京都の監理団体の情報公開のモデル要綱がつくられて、その出資法人等についても情報公開が進められるということになったわけです。
国の方でも、この年表にございますように、ごく最近になりまして、独立行政法人等の情報公開法が成立しました。さらには、要綱案ができた直後から公共料金のあり方、公共料金といいますのは、必ずしも公的部門だけがかかわっているわけではありませんで、電気事業でありますとか、ガス事業でありますとか、水道事業がございますので、運輸料金とか、そういうものについても情報公開を考えるべしという委員会が物価安定政策会議の中に設けられまして、情報公開が検討され、ガイドラインのようなものができております。
このように一言で申しますと、情報公開法が制定されてからは、自治体条例が見直されるとともに、我が国の社会全体の中に説明責任という考え方が浸透していったということ、あるいは浸透しつつあるんだということがいえるかと思います。説明責任というのは、いうまでもありませんで、情報公開法の眼目でありますアカウンタビリティー、信託された者が信託してくれた者に説明する責任があるのではないかという、そういう考え方であります。それが、浸透している過程ではないかというふうにとらえることができるかと存じます。
これが第二の時期でございますけれども、さらに第三の時期になりますと、情報公開法の運用の時代ということで、この四月から情報公開法が適用されている。さらに、その情報公開法を受けて、先ほど申し上げましたように、独立行政法人の情報公開法も通りましたし、さらに十月からは警察が情報公開条例の実施機関に東京都でもなっている。そういう流れにあるわけでございます。
それで、レジュメの二番目ですけれども、それでは、これまでの情報公開法でありますとか、条例の運用の動向はどうかと申しますと、自治体は既に二十年を超えておりますので、例えば訴訟とここに書いておきましたけれども、裁判についていえば、数は恐らく四百五十近くの裁判の蓄積があります。さらに、四月から施行されている国の情報公開審査会の方も、答申の諮問案件が二百件を超えておりますし、答申も既に六十件を超える答申が出ております。国の方は、現在のところ、まだマスコミ関係の方による請求が多いようですけれども、これも地方のレベルと一緒で、早晩、一般化してくるものと予測されるわけです。
これが一般的な情報公開のお話なんですけれども、直近の情報公開の様子をどのようなものかということをお示ししておきますと、レジュメの次のページに情報公開条例の制定状況というものがついていると思います。この図をごらんいただきますと、おわかりのように、我が国の地方自治体レベルの情報公開条例というのは、十三年四月一日段階でありますけれども、三千二百の自治体のうち、もう二千百を超えている。特徴的なことは、都道府県、市あるいは特別区のレベルでは既にほぼ一〇〇%情報公開条例というのはできている。市のレベルがまだ九七%でございますけれども、都道府県、区は既に十二年の段階、その前からですけれども、一〇〇%ということになっている。
今、条例の制定の動向はどのように動いておるかと申しますと、図の一番上をごらんいただくとおわかりのように、著しくふえているのが町、村の段階です。ですから、地方自治体の情報公開条例の波と申しますのは、今は比較的おくれているといわれていた町とか村のレベルに来ている。そこが、一生懸命情報公開条例をつくる段階に来ているというふうにいうことができるわけです。下の段のパーセンテージをごらんいただきましても、制定率について、町、村のところで著しいパーセンテージの増加が見られるということがおわかりになっていただけるかと思います。これが直近の状況でございます。
さて、その次に、では、議会に特有の情報公開の問題はどうかということについて一言触れさせていただきます。
議会の情報公開ということでございますけれども、情報公開は押しなべてそうなんですけれども、情報公開には国民、あるいは市民、あるいは都民の開示請求、請求を受けて、都民が権利の行使として開示を請求して、それにこたえる形の開示請求権に対する情報公開というものと、逆に知事部局、あるいは議会みずからが情報を公開していく情報の提供という二つの柱があるわけですけれども、この二つの柱のうちの提供の施策というものが充実しておりますと、統計的に見ますと、情報公開請求の開示請求の方は少ないということがいえるわけです。これは、全国的に地方自治体どの自治体を見ても、そのようなことがいえるかと思います。
そこで、議会について一言申し上げますと、議会は、ご存じのように地方自治法の百十五条は会議の公開をうたっており、あるいは百二十三条は議長が会議録を調製しなければならないというふうになっているわけですけれども、実はそれ以外の、例えば委員会の議事録等については公開されない自治体が非常に多いわけです。あるいは傍聴さえ全くの自由にならない自治体も多いということで、情報の提供がおくれている自治体では、ある意味でいえば情報公開も盛んであるということがいえるわけです。
幸いにして東京都の場合は、議会の情報公開条例の中で常任委員会以下の特別委員会まで公開規定が盛り込まれておりますし、都議会情報の公表及び提供の推進に関する責務規定も設けられている。さらに、本会議、委員会の会議につきましても、議事の質疑、討論の結果と経過を速記によりすべて記録して、直ちに行政情報として閲覧に供するようにしているということで、この点はかなり他の自治体と比べて進んでいるといってよろしいのではないかと思います。若干の都道府県レベルが今これを追おうとしている、そのような段階であります。ですから、提供施策が充実してくれば、開示請求はそれほど多くならないということを今申し上げたわけでございます。
それでは、二番目に、議会の情報公開をめぐる最近のトピックと申しますか、答申とか判例で目立ったものにどういうものがあるかということについてお話をさせていただきたいと思います。
そこに書いてございますように、最近少し目立ったものとして、横浜の地方裁判所の平成十三年三月七日という判決がございます。これは、神奈川県議会の議長さんに対して、いわゆる会派の政務調査研究費に係る実績報告書、あるいは交付申請書、さらには出納簿でありますとか、領収書類というものを請求したという事件であります。
これについて横浜地裁は、会派というものの役割は単なる議員の集まりという性格を越えていて、議事運営のために重要な役割を果たしている。さらに、しかし、会派は議会そのものではなく、議会の機関でもないということでありまして、政務調査会費というものの現金出納簿は会派が作成した文書でありますし、証拠書類となる領収書等は会派が取得した文書である。その後も会派が管理する文書であるということで、これは議会の管理権が及ぶものではない。したがって、議会の情報公開にのってこない文書であるということをいっております。
ただ、同時に、この判例は、会派の預金口座等については、預金口座の情報が明らかになっても著しい支障を運用等に及ぼすわけではないので、預金口座等の情報は、経理情報については一般の法人等以上に高度の透明性が要求されるのではないかということで、開示しなさい、公開しなさいということをいっている、こういう判例が最近ございます。
この判例に見られますように、議会関係で議論になりますというのは、やはり会派に係る情報でありますとか、政務調査会費が多いわけですけれども、それとの関連で、「対象情報の要件と『保有・管理』」とレジュメに書いておいた、そのようなものの裁判例の中ではよく見られるところです。
これは、情報公開条例が各自治体によって微妙に条例の文言が異なりますし、さらにはいわゆる情報公開法より以前の旧条例の段階で訴えられた裁判が今、高等裁判所のレベルまで上がってきているということがございますので、現在の条例に直ちに適用できる議論かどうかわかりませんけれども、ご参考のために申し上げておきますと、議会事務局に保有されている文書でありますとか、あるいは県警の文書であれば、それは行政部局に保有されている、要するに議会や警察が情報公開の実施機関になっていなかった、あるいは独自の条例を持っていなかった、そういう時代の判例が多いわけですけれども、これにつきまして文書を保有しているというのは一体どういうことなんだということについて、裁判所がその判断を示している、そういう判例が非常に多いということです。
つまり、保有しているという意味は、文書を事実上支配していなければならないのか、会計規則等の法令をつぶさに見ていけば保有する権限はあると書いてあるのか、実際に持っていなければならないのか、それとも法令を調べてみると、持つ権限は与えられているではないか、それによって情報公開の対象文書となるかどうかが争われているわけです。
これは高等裁判所レベルでもまだ意見が分かれているところなんですけれども、どうしてこれをきょうご紹介したかというと、この十二月十四日に、まだ判文を直接入手しておりませんけれども、議会文書も対象公文書になるということを肯定いたしました、高松の高等裁判所ですから、多分、徳島の事案であろうかと推測されますけれども、その裁判所の判決を最高裁判所が十二月十四日に破棄差し戻ししておりまして、これはひょっとするとこれまでの、先ほど申し上げましたように、議会の文書がそもそも情報公開の対象となるのかどうかということについて、一定の影響を与えるかもしれないと思われるところです。
ただ、東京都の場合は、もう都議会独自で情報公開条例をつくっておられますので、知事部局の一つの実施機関として議会が乗っかっている、そういうタイプの条例ほどの影響はもちろんないはずであります。
今申し上げましたのは、議会の情報公開条例にも、東京都を初め十ぐらいの道府県レベルの自治体のように、議会が独自に情報公開条例をおつくりになるというタイプともう一つ、知事部局の情報公開条例の中の実施機関の一つとして議会も加わるというタイプがあるんですけれども、そのタイプによっても今のような問題は変わってくる、そういうことでございます。
それから、不開示情報の領収書と書いておきました問題につきましては、先ほど、会派の自己の責任でもって透明性を図ってください、自主的に管理をしてくださいというのが裁判の傾向でもあるということを申し上げたところでございます。これについては、ほかの自治体の答申でも同じようなことがいわれておりますし、あるいはやはり調査研究費の支出の適法性を争って提起されたいわゆる住民訴訟ですね、住民訴訟におきましても、千葉の地方裁判所が、議会とか議員が執行機関から独立した会派の活動に支障を生ずるような行為をしない方がいいという立場から、実績報告書のとおり現実に会派の行為が行われているかどうかは、議会内部での検査体制でありますとか自己監査の体制を整えてください、そういういい方をしております。
以上が不開示情報、議会の情報公開に特有の問題でございまして、最後に、情報公開法の本人開示と個人情報保護法制と書いてあるところに移らせていただきます。
これは、情報公開法の中では幾つかの不開示情報、つまり非公開情報でございますね、見せてはならない情報というものがあるわけですけれども、その筆頭に出てくるのが個人情報、個人の情報はこれは原則として見せない。東京都の場合であれば、だれだれのこととわかる、個人が識別されるような情報は当然黒く塗って出すことにするということになっているわけです。
ただ、情報公開法の制定の過程からずっと争われておりましたのが、では、個人情報を本人が見せてくれといったらどうなるのかという問題です。つまり個人情報を幾ら見せないと申しましても、これは自分の情報なんだから構わないではないかという、第三者である個人なら、それはプライバシーの侵害の問題につながるだろうけれども、自分の情報は構わないのではないかという議論があったわけであります。これについては、だれでもが動機のいかんにかかわらず請求できる情報公開という制度と、自分の情報の流れをいわばコントロールするという理念に基づく個人情報保護という制度は異なるので、やはり情報公開制度の中では、ご本人の請求もだめだ、ご本人からの請求でもだめですということを、情報公開法をつくる段階ではそういう結論になったわけです。これは地方公共団体もいろいろ議論しておられるところです。
それを補って、情報公開法制を完結させるものとして、先ほどの略年表に書いてあります、三月には個人情報の保護に関する法律案というものが国会に提出されておりますし、さらに来年の通常国会には恐らく行政機関等の個人情報の保護に関する法律というものができまして、この個人情報保護の法制の中で、ご本人の自己の、自分に関する情報の開示請求権というものが手当てされる。これによって情報公開法の欠けていた部分、もちろん個人情報保護法制というのはまた別のプライバシー保護制度と密接に関連するものでありますけれども、とにかく情報公開法と関係した部分も完結する。恐らく一部自治体では既に先取りをして議論をなすって、東京都等も既に自己情報開示の議論は終わっているところでありますけれども、行政機関の情報公開法が通れば、その部分も完結するということになるわけであります。
大体このようなところが情報公開法制に関する最近の動きでありまして、ちょうど私に与えていただいた時間を使い切りましたので、私のご報告はまずこの程度とさせていただきたいと思います。
どうもご清聴ありがとうございました。
〇矢部委員長 どうも藤原先生、ありがとうございました。
大変興味深くお聞かせいただきましたけれども、ただいまのご説明につきましてご質問のある方はどうぞ。
〇中山委員 情報公開の歴史的な流れの中で先ほど先生がお話しになられ、これはやはり身近な地域の中から情報公開を求めるというそういう声が強まったということで、地方で情報公開の流れができて、そして国がそれを後追いをして、そしてまた国が今度は地方に対して方向を示した、こんな流れを聞いたんですけれども、日本の情報公開の中で、そういう流れというものは情報公開の本質的な部分でいい結果だったのか、それともまた、いろいろな欠点もあったのか、その辺のところを聞かせていただければと思うんですけれども。
〇藤原学識経験者 なかなか難しいご質問でして、情報公開のプラスの側面とマイナスの側面というご質問だと思うんですけれども、例えば東京都の議会の場合は、現在のところ、実質的に情報公開の開示の請求で争うということはないわけですけれども、それは提供の施策が充実しているからだと思うんですけれども、ただ、制度というものがあると、使われなくとも、何かのときにはこういう制度が利用されるかもしれないという一つの、伝家の宝刀というわけではございませんけれども、効果がありますので、制度そのものを置いておくことには意味は大いにあると思います。
それから、今の先生のこれまでの流れというご質問ですけれども、恐らく非常に大きなご質問でして、ある意味では行政改革の問題ともつながるでしょうし、あるいはある意味で地方分権の問題ともつながると思うし、規制緩和等の問題ともつながると思うんですけれども、今行政改革が国も都も非常に盛んに議論されていて、あるいは実施のプログラムの段階に移っているわけですけれども、我が国で中央省庁等の改革基本法が成立しましたときに、あの法律の第一条に書いてあるのは、行政改革会議の最終報告書の趣旨にのっとってということが書いてございます。その行政改革会議の最終報告書にどう書いてあるかというと、司馬遼太郎氏の有名な「この国のかたち」のありようを見直すということが書いてあります。「この国のかたち」のありようを見直すということの文章に続けまして、その背景としては、自律した、あるいは自己責任を貫ける市民を、我が国としては長い目で見れば、何十年単位で見れば、育成していかなければならないということが書いてございます。そうしますと、情報公開というのは、ある意味では情報を与えられた市民というものを育成しまして、情報を与えられた市民が、その情報に基づいてみずから律し、みずから判断することができるような社会になっていく。そのような意味では、やはり民主主義の標準装備であるといわれているぐらいですから、制度としては非常にいいものであるし、必要なものであると思います。
ただ、恐らく先生のご質問のご趣旨の中に含まれておりますのは、従来の利用の仕方がその利用の仕方にぴったりと当てはまるものであったかという、そういうご懸念を示されておられる部分があるのかと思いますけれども、確かに従来の利用の中には、いわゆる乱用的な請求と呼ばれるものでありますとか、あるいは行政に例えば自分の許認可が断られたから、そこの部署に情報公開を請求するというような事例も見られないわけではなかったんですけれども、制度でありますので、つくってしまうと必ずマイナスのものは出てくる。しかし、長い目で見ていけば、こういう制度が定着していけば、大多数の人が制度を知って、制度になれてくれば、制度本来の説明責任を行政に果たさせる、あるいはみずからも行政に参加できるような体制をつくるという、そのような方向に長い目で見れば動いていくのではないか、そのように考えております。
〇中山委員 非常に単純な質問で恐縮なんですけれども、先ほど政務調査会費のお話がございました。この前の判例から見て、流れは大体非開示、それは例えば領収書の問題であるとか、そういう問題については今先生のお話のように、自己責任で透明性を持たせなさい、こういうお話だったと思うんですけれども、大体流れとしてはそういう方向性というかが多いんですか。
〇藤原学識経験者 まだ地方裁判所レベルの判例ですけれども、今のご質問のとおりだと思います。流れはそのような方向の方が多いと思います。
〇中山委員 例えば政務調査費の、要するに会派で取得している、先ほどいわれました領収書、それから出納簿、そのほかにも何かありますか。
〇藤原学識経験者 主に争われているのは、今のようなそういう文書であります。
〇中山委員 わかりました。結構です。
〇藤田委員 今のと少しかかわりがあるわけですけれども、私も、今、住民側は自律的に開示を請求することによってその責任も問われるんだというのは、まさにそういうふうになってくるんだと思うんですけれども、実際にはやはり税金で行うことは基本的に開示をするべきだというふうに私なんかは思っているわけですけれども、今おっしゃった中で、自主的、自己開示で政務調査費については透明性を図るとおっしゃったんですが、もう一点、議会内部でというお話があったんですが、議会内部でどんなふうに開示をしていくのか。もしこれが議会内部ということであれば、幾ら会派の役割は議会とは違うというふうにいっても、そこは今度議会内部のこととして議会のものというふうになってきやしないかと思うんですけれども、その辺をちょっと教えてください。
〇藤原学識経験者 私が先ほど議会内部と申し上げましたのは、先ほどご紹介しましたように、平成二年の千葉の地方裁判所の判決がそのようにいっているということでありまして、裁判所が議会内部の検査体制を整えることが先決ではないかといっているということで、裁判でございますので、それでは具体的にどのようにしろということまでは裁判所はいってはおりません。ただ、要するに具体的活動が実績報告書のように、先生のおっしゃるように、行われたかどうか。特にこの裁判というのはまさしく税金の使われ方を問うた住民訴訟ということなんですけれども、その中で、いわゆる執行機関のチェックを受けるのがいいのか、自分たちでチェックするのがいいのかといえば、自分たちでチェックする方が会派の場合には望ましいだろう、そういう趣旨のことを述べているにすぎない、そういう判決です。
〇藤田委員 ですから、そのときにはかなり、例えば公用車の使い方ですとか、そういうことは明らかにした方がいいだろうというようなことで、きちんと都議会の中でも責任者を設けて、使うのであればその人の許可が必要だし、それから議長にもそれを申し出るというふうになったと思うんですけれども、政務調査費に関してはちょっとそこら辺まで行ってないところがあるんですけれども、特に政務調査費に限っていえば、これはどんなふうに考えたらよろしいんでしょうか。
〇藤原学識経験者 というか、裁判所のいっているのは、まさしくそこのところを議会で考えていただきたいというふうに申しているという趣旨だと私は思いますけれども。
〇吉田委員 ちょっと話題が違うかもしれませんけれども、不勉強で少し抽象的な話になるんですけれども、やはり透明性の拡大という課題と同時に、意思形成過程への参画を促進するということが情報公開の意図としてあって、先生も、私もざっとしか読んでなくて申しわけないんですが、本の中に書かれていると思うんですが、東京の場合には、行政も自治体も情報公開が非常に進んでいるという評価がされたと思うんですが、そういう意思形成過程への参加促進という観点から、もっと今後の課題といいますか、方向性みたいなことでもし先生の問題意識を聞かせていただければと思うんですけれども。
〇藤原学識経験者 意思形成過程への参加の問題というのは、現在の東京都の条例を改正する懇談会の段階から、先生おっしゃるように、議論された問題です。その議論の成果の一つが、重要な計画については途中でも都民にお示ししましょうという規定が入ったわけですけれども、先生おっしゃるように、今までの行政のあり方というのはどちらかというと、水面下ですべて調整が終わった段階で浮かんでくる計画等が多かった。それをできる限り早く、あるいは重要なものは少なくとも早くというので、条例の中にもそれのとっかかりとなる条文が書かれたわけですけれども、何かさらにそれを進展する方法ということになりますと、恐らく、一つはやはり積極的な情報提供でしょうし、それからさらには、地方分権の段階でいわれているのは、できるだけ下の方に、例えば都道府県であれば、住民の近くに権限をおろしていって、その住民の近くで直接住民と折衝する方々が情報を提供できるようにするという、そういうふうなことが一つはいわれております。
現在、我が国の場合、かなり情報を得られるようになったものの、いまだにどういうふうにして情報を得たらいいかとか、あるいはどういうふうに行政に対してアクセスしていいのかがわからないために、ある意味で不満のエネルギーがたまる場合がある。そういうものを解消するためには、できれば地域で、地域の参画ということから積極的にやっていったらどうだと。そしてそれには、これは東京都議会のような大きなところには必ずしも当てはまらないわけですけれども、市町村レベルで議会というものをより活性化していく必要があるんじゃないか、そういう議論がなされているところです。
〇和田委員 今お聞きして、短い時間でしたけれども、情報公開の歴史的な流れがわかったつもりです。
我々議会の側からすると、権力、それから権威、こう動いてきて、最終的にはこの情報公開が進んでいくと、日常というんでしょうか、デイリーライフというか、そこのところが、議会なり、選ばれた側と選ぶ側の方が水平線を同じくする、上下関係じゃなくて同じくするようなところに持っていくために、自分たちの持っている、議会の側の持っている--権力構造であれば、それは隠して、よらしむべからず知らしむべからず、そういうことでやってきたんでしょうけれども、それ以上に平準化していき、日常の中で政策が語られ、秘匿されるものは何もない、隠されたものはないという形で、オープンな、選ばれる側、選ぶ側の方の意識のまず平準化が求められるのがこの情報公開制だろうと思っているので、問題は、先ほど中山さんの方からもあったんですけれども、最終的にどんどんどんどん進んでくると、遺伝子組み換えのように、何しろそこに実があればそこまで入っちゃおうじゃないか。すなわちプライベートなところまで行って知ろうじゃないかという気がありますよね、私どもに。それから、確信できるものなら、人工的な命をつくってまでも、そこまで手を伸ばそうじゃないかと、科学的にも進んでくる可能性があるわけで、どこがぎりぎりの歯どめのかかる部分なのかということを常に模索していかないといけないと思っているんです。
そこで今出た横浜地裁判決、十三年と、それから十四年、直近に出された高松判決ですか、これについては、どちらかというと、ずっと今まで流れてきた中に、ちょっと待てよという、部分的にではあっても、立ちどまってもう一回情報公開のあるべき本来の姿を考え直したらどうなのというふうな判決に読み、聞こえたんですけれども、そういう理解でよろしいでしょうね。
〇藤原学識経験者 高松高裁のものを差し戻しました最高裁判決は、ひょっとするとそういうものかもしれないんですけれども、ただ、これは十四日の判決でございまして、まだ見ていませんので、何とも答えようがないというのが正直なところです。この点は、手に入れようとしたんですけれども、ちょっと間に合いませんでして。
それから、十三年の判決等はやはり、裁判所と議会あるいは執行部との関係でいえば、先生のおっしゃるとおり、裁判所のいえるところはここまでであるというようにも読めるところですけれども、別にそれは揺り戻したというよりは、裁判というのはある法的な論点について、この場合でしたら、ある文書を見せるか見せないかということですから、それ以上のことは裁判官は語りませんので。
〇和田委員 そこに言及してないだけで、それに積極的に言葉をつないだというわけじゃないという理解でよろしいんですか。
〇藤原学識経験者 別に積極でも消極でもなくて、この領収書等については、法律の解釈として、会派が管理すべき文書であって、それを議会が管理しているとか、議員個人が管理していると見ることはできないという法律の解釈を示したものであるということです。
〇和田委員 はい、わかりました。
〇服部委員 情報公開二十年といわれまして、先生のお話、ご説明のように、各自治体とも、三千二百五十ある自治体の中で、二千百を超える自治体が情報公開条例を制定をしてきた。かなりな割合で、町村を除いて情報公開が徹底をされてきている。そういう日本の現状がありますが、お尋ねしたいのは、例えば外国の、例えばアメリカ型といいましょうか、の情報公開のあり方とか、あるいは西欧の情報公開のあり方とか、それがまた日本に置きかえて、我が国の情報公開のあり方とか、この辺について一口でいうのは難しいかもしれませんが、何かお考えあるいはまたご感想があったら、お聞かせをいただきたいんですが。
〇藤原学識経験者 またそれは大変大きな問題なんですけれども、一口に申し上げまして、我が国で情報公開法制ができるのに一番大きな影響を与えたのは、これはアメリカ合衆国の法律であることは間違いないと思います。ただし、それではアメリカの運用等をそのまま我が国に持ち込んでいるかというと、決してそうではありませんで、やはりそれは法律を具体化、条文に書く、あるいは準備期間の間に、我が国でできること、あるいは我が国だからこそできることを取り入れている。アメリカのように例えば州のレベルで、すべての州が異なった法律を持っているわけでもありませんし、あるいは連邦は連邦ですけれども、いわゆる大統領制をとっておりますので、これもまた我が国のシステムとは違う。しかしながら、大きくくくって、進んだ民主主義的な国であれば大抵のところは持っている。
ただし、これも注釈が要るわけで、今先生が西欧ではどうかとおっしゃったんですけれども、ヨーロッパではようやく、イギリスは日本より若干おくれてということになっておりますし、さらにいえば、ドイツは環境関係の情報公開法は持っておりますけれども、まだ一般的な、我が国のようなすべての情報に対する情報公開法というのはまだ議論の途上であります。ただ、州のレベルではドイツも幾つかつくっているということで、必ずしも、それぞれの国の行政と国民のあり方ということがありますので、どの国を我が国のモデルにすればいいのかというのはなかなかいいがたい。
例えばアメリカという国は、ある意味でいえば、徹底した行政不信のところからああいう問題が出てきたわけですから、それにひきかえ、例えばドイツというのはある意味でいえば、昔型の官僚制の意識が残っているから、ひょっとしてまだ一般法的なところにたどりついていない。少し我が国より議論が一歩おくれているのかもしれませんし、ただ、それは全く推測の域を出ないということでございます。
〇矢部委員長 どうも藤原先生、ありがとうございました。貴重なご意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございました。これからもこの情報公開推進委員会の場でご意見を聞かせていただきたいと思う次第でございます。
以上をもちまして、藤原先生からの意見の聴取といいますか、を終わらせていただきたいと思います。本当にありがとうございました。
以上をもちまして本日の委員会を閉会をいたします。
午前十一時四十二分散会
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