亜鉛の排水基準への対応に関する意見書

 水質汚濁防止法に基づく排水基準のうち、亜鉛については平成18年12月に一律の排水基準が設定されたが、一部の業種の排水処理技術が開発途上にあることから暫定の排水基準が設定され、これまで暫定基準の適用期限が延長されてきた。この間に、製造工程の見直し等により対応が可能となった業種については、順次、基準値の強化や一律の排水基準への移行が行われてきたが、その一方でいまだ技術的な対応の難しい業種も存在する。
 暫定排水基準が適用されている業種のうち、例えば、電気めっき業は、都内23区に約300の事業場が集積しているが、節水型の施設が多いため、排水濃度が高くなる傾向にある。また、これらの事業場の多くは市街地に立地し、狭あいな敷地で事業を営んでいることから、排水処理施設の設置スペースを確保しにくい実情がある。
 加えて、亜鉛の処理においては、他の金属成分が含有されている場合、亜鉛の除去のみに目的を置いた排水処理が一層困難となり、高度な処理装置を導入する必要性から多額な設備投資が必要になる。
 今般、現行の暫定排水基準が、令和3年12月10日をもって適用期限を迎えるが、先般の延長から今日までに、こうした事業場が導入できる安価で実用的な排水処理技術の開発に関し、特段の進歩があったとは言い難い。
 このような状況の下、仮に厳しい一律の排水基準が適用されることになれば、都内における多数の中小零細企業の事業場では、その対応に苦慮することが予測される。
 よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、大都市に立地する中小零細企業の現状を勘案の上、次の事項を実現するよう強く要請する。
1中小零細企業が導入可能な排水処理技術が開発されていない状況に鑑み、暫定排水基準の適用期限を再度延長するとともに、その基準については、中小零細企業でも対応可能なものとすること。
2国が主体となって、排水処理技術の調査、研究・開発を早期に推進し、その普及・実用化に努めること。
3中小零細企業が新たな排水処理技術の導入を図る場合には、財政援助を行うこと。
4地方自治体が行っている排水処理技術の研究・開発等に対し、必要な財政措置等を講ずること。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
 令和3年3月26日
東京都議会議長 石川良一
衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 総務大臣 経済産業大臣 環境大臣 宛て
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