平成二十五年東京都議会会議録第四号

〇議長(中村明彦君) 八番野上ゆきえさん。
   〔八番野上ゆきえ君登壇〕

〇八番(野上ゆきえ君) グローバル化の進展など世界全体が急速に変化する中、産業の空洞化や生産年齢人口減少など、我が国は深刻な課題を抱えています。
 この危機を乗り越え、持続可能な社会を実現するための一律の正解は、恐らく存在しません。社会を構成するすべての者が当事者として危機感を共有し、みずから果たすべき課題を追求し、それぞれの立場で行動することが求められます。
 そのため、私たちは、その基盤となる人づくりに尽力しなければなりません。教育こそが社会全体の今後の一層の発展を実現する基盤であります。
 石原前知事は、破壊的教育改革を提唱され、教育再生・東京円卓会議を設置し、有識者とともにさまざまな議論を行いました。この議論には、当時の猪瀬副知事も参画されております。石原前知事は、任期途中で辞任されましたが、その後を引き継ぐ形で猪瀬知事が就任されております。
 私たちは、子どもたちが持つ才能を一層伸長し、夢と情熱を持って物事に取り組む次代を切り開く子どもたちを育成しなければなりません。
 知事は東京都の教育改革をどのように進めていくか、所見を伺います。
 今、職業教育の重要性が高まっております。
 東京には、全国の一五・五%を占める約二十八万社の企業があり、特に資本金十億円以上の大企業は全国の約五〇%、さらに、国際的なビジネスの拠点として外資系企業の約七五%が立地しています。東京にこそ、企業や教育機関の集積を活用し、職業教育を存分に行い、技術と知識を蓄積できる豊かなフィールドがあるといえます。
 若年者の職業教育は、やはり学校教育においてなされるのが基本であり、既に大学においても、研究から教育へ軸足を移す大学が主流となりつつあります。このことは、大学全入時代の昨今、学生の質が多様化する一方で、厳しい就職環境であることを踏まえ、職業教育の充実が不可欠との考えのあらわれです。
 文科省においても社会接続的な教育課題について取り上げ、こうした大学教育と社会接続とをセットで再構築すべきであるとしているところですが、現在、多くの大学では、社会接続を意識した教育、すなわち職業教育のカリキュラムが十分ではありません。こうした中、実践的、専門的な技術や技能、知識を習得するための、いわゆる専修学校の役割が注目されるところです。全国の専修学校数は二〇一二年三千二百四十九校、東京には四百十九校あり、全国の約一三%を占めています。
 若者の進路選択の多様化やキャリアアップ志向が進む中、専修学校は、職業教育機関として都民の幅広い教育ニーズを支えています。
 平成二十四年度学校基本調査によれば、都内専修学校には、全国から集まった約十四万人の生徒がおり、都内高校卒業生九万八千五百人のうち、約八人に一人に当たる約一万二千人が専修学校専門課程、いわゆる専門学校に進んでいます。
 都内の専門学校は、そのほとんどが私立学校であり、専門学校が果たしているこうした役割を踏まえ、都として支援を実施しておりますが、その内容について伺います。
 一方、この職業教育を担う専門学校は、一九七五年の専修学校制度発足以来、学校一条校、高等教育としての学校らしい教育の質を十分に担保している体制にはなっておりません。
 例えば、授業の運営は、学生が授業に出席しているか否かの出席率中心主義となっており、履修の判定は形式化し、基準の不明確な再追試が慢性化しているのが実情であったと聞いています。
 また、資格試験の合格を重視する、ある種の受験至上主義、形骸化した資格教育が教員自身の資質向上を図る取り組みを停滞させ、本来の職業教育の充実につながっていない面も見受けられます。
 また、実績の公表の仕方にも課題があります。その一つが学生の就職率についてです。
 就職率の分母は、就職希望者が分母になってはいますが、卒業年次の四月の当初の時点での希望者ではありません。四月当初には就職を希望していても、就職活動中に自信を失い、就職活動を断念した学生は、いつの間にか就職希望者の分母から外されていきます。四月当初の就職希望者と年度末三月卒業時の就職希望者が、在籍数比において二割、三割と減じられる場合も多いようです。
 また、各学校が独自の集計方法により就職率を算出して発表し、結果として、専門学校への進学を希望する生徒が入学の判断をするに当たって信頼できる情報が提供されていない学校もあると聞いています。
 こうした指標のあいまいさは、専門学校の職業教育に対する信頼すら脅かしかねないものであると考えます。
 都の支援も受けながら運営されている専門学校の教育活動は、極めて公共性が高いものであり、広く都民に正しい情報を提供することが求められています。しかしながら、その必要性を認識しつつも、正確で十分な情報提供を行っていないケースがあることも事実です。学校を選ぶ上で判断材料となる就職率の情報に関しては特に重要です。
 東京都は、専門学校が適正な就職率を公表することで、都民が的確な学校選択ができるよう指導を進めるべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、電力システム改革について伺います。
 二〇一三年二月八日は、戦後の日本の電力供給システムのあり方を考える上で最も重要な一日となりました。この日開催された、総合資源エネルギー調査会総合部会第十二回電力システム改革専門委員会において、これまで同委員会で検討が進められていた電力システム改革について、その政策メニューと工程表を含めた、電力システム改革専門委員会報告書が提示されました。
 後日取りまとめられた報告書は、これまでの垂直一貫体制による地域独占、大規模電源の確保と各地域への供給保証といった我が国の電力供給システムを改める抜本的な改革の必要性を指摘しました。
 そこでは、需要に応じて幾らでも電力を供給するという需要追随型の発想のもとで大規模電源による供給力を確保するという従来の仕組みを改め、電力の需要と供給の両面、すなわち、節電やデマンドレスポンスなど需要側の対策、コージェネレーション設備など自立分散型電源の活用という供給側の対策の両面を、電力需給を均衡させるための有効な手段として政策的に位置づけています。
 私は、本報告書で示された改革の理念を骨太な政策パッケージとして構築し、着実に実現に移すことが何よりも必要であると考えます。
 そこで、まずは電力需要側の対策の方向性について伺います。
 例えば、米国カリフォルニア州では、ローディング・オーダー制度により、電力の供給資源として、まずは省エネやデマンドレスポンスによる需要抑制を計画した後に、再生可能エネルギー、分散型電源への投資を行うという優先順位を定めています。
 都は、世界初となる都市型キャップ・アンド・トレード制度の導入など、先駆的な取り組みを推進してきましたが、今後の電力システムを考える上で、このような需要抑制を優先的に施策の中に位置づけることが重要と考えますが、都の見解を伺います。
 次に、電力供給側の対策について伺います。
 東日本大震災は、計画停電など、首都東京にかつてない電力危機を引き起こしました。こうした中、都としても、系統電力だけに頼らず、自立分散型を推進するなど、地産地消の東京産電力の確保に取り組むことが重要です。
 特に、ガスを利用したコージェネレーションシステムは、電気と発電の排熱をむだなく利用することで高いエネルギー効率を実現し、省エネ、低炭素にもつながります。
 また、昨年六月に新たに創設された分散型・グリーン売電市場等の活用も極めて重要です。コージェネの余剰電力を市場で売電することで新電力の育成も可能となり、電力供給の多様化につながります。市場メカニズムのフル活用を通じて、地域独占体制に競争原理を導入し、ひいてはサービスの多様化と電気料金の抑制につながる効果も期待できます。
 さらに、高い耐震性があるといわれている中圧管等を利用したガスを燃料とすることは、災害時の事業継続性、防災、危機管理機能を高められます。
 今後、都はどのように自立分散型電源を普及していくのか、見解を伺います。
 コージェネレーション設備が自立分散型エネルギーの重要なファクターとなることは間違いありませんが、再生可能エネルギーのさらなる活用も必要です。
 前政権下で示された革新的エネルギー・環境戦略では、再生可能エネルギーの発電量を二〇三〇年までに三千億キロワットアワー以上という数値目標が示されましたが、再生可能エネルギーというと、太陽光発電や風力発電のように電気のイメージが強く、実際、昨年七月に開始された固定価格買い取り制度も、再生可能エネルギーの発電を促進する制度として効果を発揮しています。
 しかし、再生可能エネルギーについても、熱の利用を促進することを忘れてはなりません。給湯や暖房といった熱利用がエネルギー利用の約半分を占める家庭においては、熱利用の促進が特に重要です。中でも太陽熱利用は、太陽光発電に比べ比較的狭いスペースでも設置可能でコストも半分程度というメリットがあり、もっと普及してしかるべきと考えますが、太陽光発電の陰に隠れ、国の十分な支援もないため、普及が十分に進んでいません。
 こうした状況の中で、都は全国に先駆け、太陽熱利用の促進に向けて独自の補助事業を展開しているとのことですが、事業の特色及び実施の状況について所見を伺います。
 最後に、監理団体について伺います。
 都民の雇用、就業を支援するため、就業相談やキャリアカウンセリングなどをワンストップで実施している東京しごとセンターについては、都が、都の監理団体の一つである東京しごと財団に委託し、実際の管理運営は財団からさらに再委託された民間事業者が行っております。
 しごとセンターで行っているセミナーの受講者の声では、十分な専門性を持った講師が対応していない、さらには、具体的な成果の測定も十分に行われていないという声も聞きます。民間事業者を活用して就職支援を行う際には、専門知識を持ったスタッフによる対応が重要であると考えます。十分な専門性を持った講師による対応や具体的な成果の測定が必要と考えますが、見解を伺います。
 こうした団体事業における事業を促進していくための仕組みとして、都では、監理団体三十三団体に対して経営評価制度を運用しています。毎年、それぞれの団体が十個程度の経営目標を掲げ、翌年にその実績を評価し、結果を公表するものであります。
 制度のわかりやすさを高めるためには、団体の間で統一的な指標を掲げることで、ほかの団体との比較などができるのではないかと思います。
 本制度を所管し、監理団体を全庁的に指導監督する立場にある総務局として、今後、この評価制度をどのように運用していくつもりなのか見解を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事猪瀬直樹君登壇〕

〇知事(猪瀬直樹君) 野上ゆきえ議員の一般質問にお答えします。
 教育改革についてでありますが、強い者が弱い者を助け、余裕のある人が余裕のない人を助け、そして多様な生き方を認め合い尊重する、そういう考え方が、古い言葉でいえば道徳ですが、教育の基本になければいけないと思っています。
 そして、このたび「五体不満足」で知られる乙武洋匡さんを、皆さんの議決が得られれば教育委員に任命したいと思っております。そういう、その人事一つが、僕は教育改革の一環だと思っております。
 子どもたちには、どん欲に疑問を持ち、徹底的に解を求める姿勢や、社会に積極的に貢献する意識、事実やエビデンスなど根拠を示しながら議論する力など、生きる力と支え合う力を身につけさせる必要があります。これを教育改革の基本として、固定観念にとらわれず、発想力を駆使して施策を展開することが必要であります。
 例えば、世界に伍して活躍する人材を育成するとともに、新たな教育モデルとして、都立小中高一貫教育校の設置の検討を始めます。
 また、共助の意識を高めるため、全都立高校における一泊二日の宿泊防災訓練の内容をさらに充実させます。
 また、いじめ問題に対処するために、スクールカウンセラーを七百人から千四百人に、二倍にします。公立小中高等学校二千百校すべてにスクールカウンセラーを配置する。
 改革の要諦はスピードであります。スピード感を持ち、次代を切り開く人間を育成していきます。
 その他の質問については、関係局長から答弁します。
   〔生活文化局長小林清君登壇〕

〇生活文化局長(小林清君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、専修学校専門課程、いわゆる専門学校への支援内容についてでありますが、専門学校は、大学、短大と同じく高等教育機関であり、本来、国が基本的な支援を実施すべきものと考えております。
 しかしながら、専門学校は、実践的な職業教育、専門的な技術教育を行っていることから、都内の生徒に対する職業教育機関として大きな役割を果たしております。
 このため、生徒が安心して学べる環境づくりのための耐震改築等に対する事業費補助を初め、専門的な教育に必要な設備や図書の整備などに対する補助など、都独自の判断により必要な支援を実施しております。
 次に、専門学校が公表する就職率への指導についてでありますが、専門学校が社会の幅広いニーズに的確に対応し、多様な進路を保障するという役割を適切に果たすためには、就職率など、入学希望者が適切に学校を選択するための情報を正確に発信することが必要であります。
 都といたしましては、専門学校の設置認可等を所管している区市と連携し、生徒募集活動等における就職率の表示方法などについて、より適正な公表に向けて指導してまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 三点のご質問でございます。
 まず、電力の需要マネジメントについてでございますが、東日本大震災後、都は、電力需給に弾力的に対応できる賢い節電の実践と定着を図るための取り組みを推進してまいりました。
 その結果、二〇一二年は、大規模事業所だけでなく、中小規模事業所におきましても、約八割の事業者が二〇一一年とほぼ同様の取り組みを継続するなど、東京における省エネの取り組みは、より一層深化しております。
 都は、今後とも、賢い省エネ、節電の定着を図るとともに、大規模なテナントビル等を対象とした電力デマンドレスポンス実証事業を実施するなど、新たな取り組みを進めてまいります。
 次に、自立分散型電源の普及についてでございますが、コージェネレーションの導入に当たりましては、熱と電気の双方を有効に利用し、実際のエネルギー効率を高めることが課題でございます。
 ホテル等に比べまして、熱需要が少なく、これまで普及のおくれておりましたオフィスビルにおいても、電力需要量ではなく、空調等の熱需要量に合わせてコージェネレーション設備の規模を設定し、その稼働を電力需要が高い時間帯に合わせることで、経済性を高め、低炭素化につなげることができます。
 震災後の自立電源へのニーズの高まりや電気料金値上げの対応、さらには最近の高効率機器の開発の機をとらえまして、都は新たに導入支援制度を創設し、環境性能の高いコージェネレーション設備の普及を図ってまいります。
 最後に、太陽熱利用の促進についてでございますが、太陽熱利用を促進するには、利用者にとって魅力的なモデル事例を数多く生み出すことが必要でございます。
 このため、都は、すぐれた新技術を公募し、新築住宅の供給事業者を支援する補助事業を昨年度構築いたしました。
 その結果、デザイン性にすぐれた屋根一体型システムや屋根設置が困難な場合でも導入可能なバルコニー型システムなど、採択した補助対象システムは六十四件に上りまして、既に十四物件、千百七十四戸について補助申請がなされております。
 都は、新たなモデル事例の成果を発信することで、太陽熱の認知度を高め、普及を進めてまいります。
   〔産業労働局長中西充君登壇〕

〇産業労働局長(中西充君) 東京しごとセンターの就職支援についてでございます。
 開設以来、就職者数は毎年増加しており、民間事業者を活用した支援は着実に実績を上げてまいりました。これは、きめ細かいキャリアカウンセリングやセミナー等の成果でございまして、利用者アンケートでも好評を得ています。
 セミナーに関しては、面接対策等の講座の内容に応じて、経験、実績の豊富な講師の人選が行われています。
 また、民間事業者の選定及び毎年の契約の継続に当たっては、外部有識者も含めて具体的な評価項目を定めた上で適切に評価を行っております。
 さらに、事業運営の中では、民間事業者と緊密に連携し、進行管理を行っており、引き続き民間のノウハウを十分に活用しながら、効果的な就職支援を展開してまいります。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 今後の監理団体経営評価制度についてでありますが、都は、監理団体改革の一環として、毎年度、団体みずからに経営目標を設定させ、その達成度を評価、公表しております。これにより、団体の経営責任が明確になるとともに経営改革が図られてきております。
 経営目標の設定や評価に当たりましては、各団体の経営実績について財務諸表など共通の指標を用いて分析を行っております。その上で、団体の規模や事業内容など、さまざまな要因を考慮するとともに、客観性や妥当性などについても検証し、必要な見直しを行っております。
 都といたしましては、今後も監理団体を都政のパートナーとして活用していくことから、さまざまな意見も踏まえて、改善すべき点は改善し、本制度を監理団体の経営改革に役立てるとともに、都民への説明責任を果たしてまいります。

〇議長(中村明彦君) 以上をもって質問は終わりました。

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