平成二十五年東京都議会会議録第四号

〇議長(中村明彦君) 四十七番柳ヶ瀬裕文君。
   〔四十七番柳ヶ瀬裕文君登壇〕

〇四十七番(柳ヶ瀬裕文君) 「道路の権力」「日本国の研究」「霞が関『解体』戦争」「日本システムの神話」「壊れゆく国」過去の著作を読ませていただきましたが、そこにあったのは猪瀬知事の闘う姿勢、改革への情熱でありました。道路公団民営化、地方分権委員会、一貫して既得権益と対峙し、国益のために高い壁を突破してきた歴史を読み取ることができました。
 日本の沈没を防ぐのは東京にしかできない。現状を変え、改革のスピードを加速させてほしいという都民の願いが、闘う改革派の猪瀬氏に思いを寄せ、四百三十三万票に至ったのだと考えます。知事はこの願いにこたえなければなりません。
 市場社会の中心部分に国営企業が鎮座して経済活動を妨げている様子は、いわば都心の一等地が有効利用されずにペンペン草が生えているような状態と、その著書「壊れゆく国」の中で述べられています。これは、官営企業が市場を大きくゆがめ、成長の阻害要因となっていることを喝破された言葉だと思います。
 民でできることは民に。今でこそ大きなかけ声となっていますが、知事は二十年以上前から呪文のように唱え続けてきました。
 東京都にも、さまざまな公営企業があります。バス、地下鉄、上下水道、これらの企業は不断の経営努力を重ね、成熟した優秀な企業に育ちました。子どもを育てるのが親の役割、成人した子どもは、ひとり立ちさせるべきであります。
 この都の大事な資産である公営企業を、さらに都民に大きな利益をもたらす存在となるように、次のステージ、民営化に移す段階が来ていると考えます。
 都営バスは、一部の路線で、はとバスに運行管理の委託を行っている。この路線では、直営で実施した場合に比べて三割コストが削減できました。つまり、民間に任せた方がコストが三割安くなるという実績があるんです。赤字を解消し、都民の利便性を向上するには、民営化が必須であります。都内では交通網が発達し、地下鉄が複雑に張りめぐらされる中、都による公営バス事業の役割は終わっています。
 民でできることは民でやる。その方がうまくいく。路線を維持するためにも民営化し、経営の効率化を図り、それを原資として、料金の値下げや価値の高いサービスの提供など、さらなる都民の利益を求めるべきであります。そしてしっかりと納税をしてもらう。そのような企業に育てるべきであります。
 都営地下鉄は、東京メトロとの一元化の問題があります。一元化は都民に大きな利益をもたらすものであり、積極的に進めるべきです。一元化とその民営化によって、公営企業ではできなかった附帯事業、また沿線開発など活性化する投資は、東京の発展に寄与することは間違いありません。
 上下水道はどうでしょうか。水道事業はキャッシュが一千億円を超えるという異常なほどすばらしい財務状況を誇っていますが、私はここから、もっと成長できるけれど公営という枠に無理やり抑え込まれている、こんなメッセージを感じます。
 都は、世界一の技術をもって国際展開していくとしていますが、現状は厳しい。フランスの水メジャーであるヴェオリアは、既に埼玉県や千葉県、広島市などで浄水場、下水処理場の管理を受託、大牟田市では浄水場を買収、昨年から松山市の水道事業を委託されました。日本企業が海外市場に参入するどころか、国内市場が海外の水メジャーに脅かされているという現状が残念でなりません。これまでは実績がないことを理由に水メジャーを排除してきた自治体も、今後、雪崩を打っていくでしょう。
 東京都水道局は、世界一の技術と一千三百万都民においしい水を安定供給してきた実績があります。しかし、公営企業では限界がある。なぜ東京都がするのかという説明が求められますから、世界展開はあくまで国際貢献レベルが限界です。水ビジネスは初期投資が大きくリスクをとらなければならないですし、何より意思決定の速さが肝心だからです。
 そこで、安全や安定供給に関してはしっかりと規制をかけることを前提として、水ビジネスを成長産業と位置づけ、水道局を民営化する。プラントメーカーや商社と共同して、和製メジャーを目指す。その企業体を政府と東京都が応援する。将来的には利益を上げて、納税、配当、料金値下げ、雇用の創出など還元してもらう。これこそ、東京がその財産を活用して、日本を牽引するモデルを構築することになるのです。もう一歩踏み出したらどうでしょうか。
 新幹線の技術が海外に行っているのと同じように、高速道路の技術も海外に向かっている、それは民営化されたからできたこと、これは猪瀬知事の言葉であります。国鉄はJR、電電公社はNTT、専売公社はJTになりました。道路公団も忘れてはなりません。これらの企業が官から民へ移行したことが、我が国の経済を活性化し、発展に大きく寄与したことは、周知の事実であります。
 東京都は、公営企業の民営化に踏み出すべきと考えますが、今後の公営企業のあり方について知事の見解を伺います。
 民でできることは民で、これを徹底する。民間活用はサービスの向上、効率化だけでなく、民間にお金を回すことによって、地域経済の活性化や雇用の創出につながっていきます。都庁が仕事を抱え込んでいてはいけません。
 同じテーマで、外郭団体と天下りの問題に移ります。
 まず、過去十年間の局長級職員の退職者数、そのうち外郭団体に再就職した職員数について、それぞれ十年間の合計数を伺います。
 また、都の幹部職員が外郭団体に再就職した後、別の団体に再就職することについて、状況を把握しているのかどうか伺います。
 毎年のように定例監査で指摘されている事項がありますが、合理的な理由がなく特命随意契約を締結していたという指摘です。合理的な理由がないというのは、特命にする理由がないのに無理やり特命にしたということなんです。過去十年間で六十八件。定例監査は、膨大な事業、契約の一部を調査するものです。この六十八件は、氷山の一角といえるでしょう。
 一つ例を挙げると、平成二十三年度交通局、日・舎ライナー車両保守委託、監査報告書を抜粋します。この契約を平成二十二年度までは業者Bとの間で特命契約をしてきたが、二十三年度に東京交通サービスに変更して特命契約をした。しかし、状況を確認すると、交通サービスが業者Bに再委託していたことが判明した。だから、交通サービスと特命で契約する必要は認められず、適正ではない。こんな話です。
 東京交通サービスは、東京都が一〇〇%出資する監理団体、常勤役員三人はすべて都の退職者、常勤職員のうち都の退職者は九十四人、天下りを受け入れている外郭団体が公営企業からの随意契約によってその事業を総取りし、その実施は民間企業に丸投げをしている、それがこの例であります。
 局からの資料によると、各局から監理団体への特命随意契約の状況は、平成二十三年度分で三百十二件、九百八十六億円に上ります。
 猪瀬知事が一九九六年に書かれたのが「日本国の研究」、そこで明らかにされた官営事業の構造的な問題が、この東京にさまざまな改革に取り組みながらもいまだに存在するのではないでしょうか。
 「日本システムの神話」の中では、猪瀬知事は、天下りをこのように述べています。天下りというのは簡単な問題ではありません、国営企業という構造が問題なのです、民営化することによってコストを削減し、競争入札を導入することによって整理していく、廃止か民営化しか、彼らを整理することはできないのです、中略しますけれども、治療には劇薬が必要です、天下りというのは表面的に見えるようで、実は根深い問題なのです、このように知事は述べています。
 都はこれまでも、外郭団体、監理団体改革について取り組んできました。その結果、団体数の半減、都派遣職員の削減、包括外部監査の導入など成果を上げてきました。最後の総仕上げは、この問題をライフワークにしてきた猪瀬知事に託されたのであります。
 今後の行革の観点から、公営企業の民営化の検討、外郭団体のゼロベースでの見直し、都の幹部職員の外郭団体への天下り、わたりの根絶、都庁全体の事業の総点検について、知事の見解を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事猪瀬直樹君登壇〕

〇知事(猪瀬直樹君) 柳ヶ瀬裕文議員の一般質問にお答えします。
 まず申し上げなければいけないのは、包括外部監査についてでありますが、包括外部監査というのは国にはない。会計検査院というのは国にあるけれども、東京都は監査委員があり、その外側に外部監査がある。これは一九九九年に中核都市以上に義務づけられた法律ですけれども、しかし、国にはない。
 その包括外部監査も、普通のところでやっている包括外部監査に対して、やっぱり東京の公認会計士はそれなりにレベルが高いので、この包括外部監査はかなりきちっとやっています。
 最近の病院事業についての監査は、未収金の処理やコスト分析などを中心に、かなり厳しいものです。それを本当にきちっとやっているかどうかというのは、今は点検して、実際に回答も出ています。
 それから、柳ヶ瀬議員が特におっしゃりたいことは、公社、公団を含めた民営化だと思うが、例えば、東京水道は海外進出する、その海外進出するときにどこまでできるかという問題がある。地方公営企業法においては、例えば水道がいろんな事業をやるときに、じゃあ浄水場の横にプールをつくっていいよねと、そういうところまでは総務省の解釈はできるんだが、その先はまだこれから。だから、まずは海外進出体験を積んでいきながら、東京水道の世界的な発展を考えたい。
 それから、一番大事なことは、地下鉄一元化ですよ。どうしても国が絡んでくる。皆さんは余り疑問に思っていなかったということなんですが、二つの地下鉄があること自体がおかしい。で、地下鉄一元化をやるわけです。
 この地下鉄一元化をやる場合にどういう方法論でやるかという問題が、今、理論的に詰めています。とりあえずはサービスはすぐ、九段下の壁を取り払うことは何とかやりましたが、経営的にどういう形で統合するか──国との闘いなんです。国はなかなか渡さないんです。それを緻密にやりながら、今回安倍政権ができたので、きちんとその地下鉄一元化については、霞が関の省庁を含めて詰めていきたいと思っています。
 道路公団民営化でも、一番大変だったのは、実はプロパー社員の意識改革。そして、道路公団の場合は上下分離でやった。だからうまくいった。ところがそのときに、営団地下鉄は、道路公団民営化や郵政民営化で気をとられているときに、上下一体で民営化しちゃった。そうすると、自分の資産も全部抱えて、新しい建設はほとんどない、だからお金はたまる一方だ、こういう形で民営化という逃げ切りをやった。だから、民営化が何でもいいというわけじゃない。
 今回は、旧営団に対して、都営交通との一元化というようなかなり厳しい形で具体的なプランをつくりたいと思っています。それが改革です。具体的にこれからそれを進めます。
 あと、個別の問題は、できるだけ包括外部監査で指摘しながらやっていこうと思っていますが、最もやり方がいいのは何かということは考えながらやります。
 まだ知事になったばかりです。これからいろんなことを考えていきたい、こう思っております。
 以上です。
 その他の質問については、総務局長から答弁します。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、局長級職員の退職者数及び外郭団体への再就職者数についてでありますが、平成十四年度から平成二十三年度までの過去十年間において、局長級等で退職した職員は、特別職に就任した職員を除き合計百六十一名となっており、そのうち外郭団体を含め再就職した職員は、合計で百五十四名であります。
 次いで、都の幹部職員の退職後の状況把握についてでありますが、都は退職管理の適正化の観点から、幹部職員全員について、退職直後の再就職状況を一元的に把握、管理して公表をいたしております。一方、都を退職後、外郭団体に就職した幹部職員が別の団体に再就職する際には、出資者等の立場から、都が協議や相談を受ける場合もありますが、最終的には各団体と当該個人との間で決定されるものであるため、お尋ねのような情報は、幹部職員全員については把握しておりません。
 なお、監理団体の常勤役員については、都のホームページにおいて、都の幹部職員であった者全員の人数を公表いたしております。

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