平成二十五年東京都議会会議録第四号

〇副議長(ともとし春久君) 五番近藤充君。
   〔五番近藤充君登壇〕

〇五番(近藤充君) 都議会自民党、近藤充でございます。
 八王子市の中核市移行につきましてお尋ね申し上げます。
 八王子市は、人口五十八万人を擁する多摩地域最大の都市であります。これまで八王子市は、地方分権改革の理念にのっとり、保健所政令市の移行など積極的に事務権限の委譲を受けるとともに、行財政改革により、自主自立の行政運営を行ってまいりました。
 今後、八王子市が首都圏西部の一大拠点都市を目指して豊かな資源を生かしたまちづくりを進めていくためには、さらなる分権の推進が必要であることから、現在、八王子市は、中核市への移行を目指しております。
 八王子市は、中核市移行により、これまで以上に住民に身近な事務を処理できるようになり、真の多摩のリーディングシティーにふさわしいまちづくりが行われるようになると考えています。
 猪瀬知事におかれましても、国の地方分権改革推進委員としてのご経験をお持ちでいらっしゃいますから、今後、ご高説も賜りたいと存じます。
 本日は、中核市移行の都の所見をお伺いしたいと思います。
 現在、中核市移行に向けました具体的な動きといたしましては、昨年八月に都と市で協議会を立ち上げ、法定委譲事務や、都の単独補助金の取り扱い等について協議を行っております。
 中核市移行の検討は、今回が二回目であります。前回協議は平成十年に行われましたが、当時は、八王子市が不交付団体であったことなどから、都の単独補助金の取り扱いなどにつきまして、都と市で考え方が大きく乖離していたため協議が調わず、八王子市は中核市移行を断念した経緯があります。
 しかし、その後、八王子市は保健所政令市に移行するなど、八王子市を取り巻く状況は当時と大きく異なっており、今回は、八王子市が中核市に移行できることを五十八万市民ともども願っている次第であります。
 今後は、新たな権限をどのように、条例やまちづくりに生かすのかという具体的な議論はこれからでありますし、中核市と都との役割分担など分権のあり方についての協議や課題は多いと考えます。
 八王子市が中核市に移行するには、まず協議会において、だれもが納得する形で都と市で合意することが必要でありますが、現在の協議状況について伺うものであります。
 次に、単独処理区の東京都流域下水道編入につきましてお尋ねいたします。
 八王子市、立川市、三鷹市では、流域下水道事業が制度化される前から市単独の下水整備を進め、それぞれ下水処理場を稼働してまいりました。これらの処理場は、稼働から四十年以上経過しており、老朽化が顕著であります。また、狭い敷地に立地しているため、耐震性の向上や水環境の改善など、高度処理施設の整備も困難な状況であります。
 さらに、既存施設の維持管理費に加えまして施設更新等にかかる財政支出も、市にとって大きな負担となっております。これまで自民党三多摩議員連絡協議会や東京都市長会からも、これら単独処理区の流域下水道への編入を以前から強く要望されています。
 東京都では、平成十四年三月に、東京都と多摩三十市町村で構成した多摩地域の下水道事業のあり方に関する検討会において、流域下水道への編入の方向性を示すとともに、平成二十一年七月の多摩川・荒川等流域別下水道整備総合計画の改正の中で、八王子市、立川市、三鷹市の三市の単独処理区の編入が位置づけられたことを受け、技術的な検討などを進めてきたと聞いております。
 そこで、改めて単独処理区の編入の事業効果について伺うものであります。
 今後、下水道局は、精力的に関係機関との調整を進め、昨年十二月に、立川市、八王子市と編入に関する基本協定を締結したことは、多摩地域の十数年来の悲願達成に向け、大きな一歩を踏み出せたと大いに評価するものであります。
 このたび、早期に編入を実現するためには、市が実施する公共下水道の整備や法手続に向けた技術的な課題があるとも聞いています。それらの課題を解決し、編入事業を効率的、効果的に推進していくことが不可欠であります。豊富な事業運営の経験とノウハウを持つ東京都下水道局が中心となり、市町村とかたく連携して、多摩地域の下水道事業を進めていくべきであると考えます。
 そこで、基本協定の内容と今後の取り組みについて伺うものであります。
 次に、脱法ドラッグの規制強化についてお尋ねいたします。
 私は、八王子市で保護司をしております。これまで多くの青少年のケースを扱い更生保護のためにお手伝いをしてきました。できることなら保護司の世話になる少年を減らしたいと考えています。
 青少年の健全育成のためにも、違法、脱法ドラッグの取り締まり強化に東京はさらに努めるべきだと考えています。
 国の方でも、自民党、公明党、民主党三党は議員立法の動きもあるようでありますが、東京都議会からも、昨年六月には、対策の強化に関する意見書が採択され国に提出されました。一日も早い法改正、強化が望まれるところであります。
 近年、違法ぎりぎりの脱法レベルを承知の上でハーブと称し、体や精神に刺激を与える麻薬と似た幻覚や興奮作用を伴う薬物が市中に出回るようになり、都内には、青少年をえじきとするような脱法ドラッグを販売する店舗はいまだ数多く存在しています。青少年のだれもが間違って安易に手にすることができ、青少年を食い物にする心ない大人たちの被害者となり得るのであります。
 前知事同様、猪瀬知事におかれましても、青少年の健全育成には、施政方針の中でも熱く表明されておりました。都はこれまで、我が党の働きかけにより、平成十七年に、脱法ドラッグを規制する条例を制定するなど、国に先駆け、国を動かし、大都市東京の現状を踏まえた先進的な対策を講じてきました。
 有害な薬物から青少年を守り、乱用の広がりをとめるためにも、都の取り組みを一層進めていくことが必要だと考えます。知事の所見を伺いたいと思います。
 次に、若年者の就業対策について伺います。
 小資源国たる日本の生き残りには、有為な人的資源の確保こそが重要であると考えます。一方で、東京の産業を支えているのは中小企業であり、中小企業が元気になれば東京も活性化します。意欲ある若者が、都内中小企業で活躍することで、新たな発想によるビジネスの創出なども期待され、東京の潜在的成長力が引き上げられます。
 こうしたことから、いかに効果的に若者と中小企業とをマッチングさせるかが、雇用政策、産業政策の両面における重要な課題であると考えます。
 衣食足りて礼節を知るという言葉がありますが、日本全体で青少年の健全育成が図られていけば、資質の高い公教育を受けて、それなりの教育を身につけ、みずから生きる力を涵養できれば、それなりの仕事につき、次代を支える担税力のある立派な大人に成長することができます。そのためにも青少年、若年者の就業環境は守られ、つくられなければならないと考えます。
 現下の若者を取り巻く就職環境は、持ち直しの兆しも見えつつあるものの、依然として厳しい状況にあります。次代を担うべき若者が、職業的自立を果たせずに、持てる能力を十分に発揮することができないとすれば、本人のみならず、社会にとっても大変不幸なことであります。
 一方で、中小企業が将来を見据えて有為な若者を採用したいと思っても、人材確保に苦慮しているのも実態であります。
 若者と中小企業とのミスマッチを解消し、若者の就業と中小企業の人材確保を促進するためにも、こうした中小企業の課題に対応した実効性のある支援策が必要であると考えますが、都の見解を伺うところであります。
 また、採用した若者を企業に戦力として定着させることも重要と考えます。採用した若者が、入社後、一年や二年などで早期に退職してしまっては、採用や人材育成にかけた時間やコストが全くむだになってしまい、企業の経営上も大きなマイナスとなります。
 しかし、大学卒業後、入社三年以内にやめてしまう若者の割合は三割を超えているのも実態であります。私の知り合いの企業でも、せっかく採用した若者が早期にやめて困っているとの話も聞きました。
 若者の早期離職の原因はいろいろあると思いますが、その要因の一つとして企業の職場環境が考えられます。残念ながら中小企業の職場環境は、大企業と比べれば、労働時間や休暇制度、福利厚生や教育訓練など、まだまだ不十分な例も見られます。こうした企業の職場環境を改善し、働きやすい職場づくりを行うことは、人材の定着にも大いに役立つものと思います。
 また、職場環境の実態や具体的な課題は、企業ごとに異なるのはもちろん、業種ごとに、例えば、長時間労働や休暇がとりにくいなどの特徴があり、雇用環境整備は業界に共通した悩みとなっているケースも多いと聞きます。
 そこで、職場環境改善を図り、企業の人材確保、定着の実現に向けて、こうした業界の実態も踏まえつつ、都として若者にとって魅力ある職場環境づくりの取り組みを支援していくべきと考えますが、都の見解を伺いたいと思います。
 以上で質問を終わります。(拍手)
   〔知事猪瀬直樹君登壇〕

〇知事(猪瀬直樹君) 近藤充議員の一般質問にお答えします。
 違法、脱法ドラッグ対策についてでありますが、東京は、先頭を走っています。よい意味でも悪い意味でも、流行は東京から始まりますので、まずは東京が最初にいろんなことをやらなきゃいけない。そして、平成十七年に薬物濫用防止条例を制定し、我が国で初めて脱法ドラッグの規制を開始した。この東京都の動きを受けて、国はようやく重い腰を上げて、二年後の平成十九年に薬事法を改正し、都条例に倣った規制を導入した。
 その後も、東京が先頭に立って、都内で流通している脱法ドラッグの分析や人体への影響調査などを行い、その結果を速やかに国に情報提供して、全国的な規制につなげるなど、違法、脱法ドラッグ対策の先駆者であり続けておりますが、国及び全国の自治体を常にリードしなければいけないという役割も、東京都の責任であると思っています。
 今月には、海外でしか確認されていない薬物を、東京が独自に分析して自治体として初めて国内流通前の規制を実施しました。また今年度は、販売事業者の取り締まりを強化するため、警視庁とも連携しながら、店舗への集中的な立入調査を行うとともに、通信販売による取引を規制するため、運送事業者等の団体に対して、宅配時の代金引きかえサービスの自粛を要請してきました。
 来年度は、こうした取り組みに加え、インターネットの検索サイトで、脱法ドラッグ、合法ハーブなどのキーワードを入力すると、薬物の危険性を訴える警告メッセージを表示する取り組みを開始します。
 薬物の乱用は、心身をむしばみ、人の一生を台なしにするばかりか、社会の秩序を乱すものであり、その害悪は、はかり知れないものがあります。副知事時代にも、テレビに出演して啓蒙活動をやりました。
 今後とも、行政、警察、地域が一体となって、薬物の恐ろしさを、あらゆる機会をとらえて繰り返し訴え、指導取り締まりを強化しながら、繰り返しますが、東京が本当に先頭に立って、この薬物の乱用の根絶に全力を尽くすというふうに責任感を持ってやろうと思っております。
 なお、その他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、八王子市の中核市移行についてでありますが、中核市制度は、人口三十万人以上の市に、都道府県の権限の一部を一括して移譲する制度でありまして、住民に身近な事務は、できるだけ基礎自治体で行うという地方自治の理念を実現するために創設されたものであります。
 中核市移行により、八王子市は、都から移譲される保育所等の設置認可や運営基準の制定、屋外広告物の設置制限などの権限を活用して、これまで以上に、地域の実情を踏まえた行政サービスの提供や地域の特性を生かした独自のまちづくりを行うことが可能となります。
 都は、こうした八王子市の創意工夫による主体的な取り組みに対し、でき得る限り協力をしてまいります。
 次いで、中核市移行に向けた都と八王子市の協議状況についてでありますが、都は、八王子市からの要請を受け、議員のお話のように、昨年八月、円滑な中核市移行を図ることを目的に、八王子市の中核市移行に関する都・市協議会を設置いたしました。
 これまで協議会では、中核市移行に伴い、八王子市に移譲する事務や市の行財政への影響について、お互いに確認を行うとともに、現在、関連する都補助金の具体的な取り扱いについて協議を行っているところでございます。
   〔下水道局長小川健一君登壇〕

〇下水道局長(小川健一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、単独処理区編入の事業効果についてでございますが、老朽化した施設の更新や耐震対策が進み、震災時にも相互融通機能を有する流域下水道の水再生センターで、下水や汚泥を処理することが可能となり、防災能力の向上が図られます。
 また、高度処理を推進することができ、多摩川の水質改善や東京湾の富栄養化防止など、水環境のさらなる向上が図られます。さらに、流域下水道のスケールメリットを生かし、単独処理区を存続した場合に比べ、施設整備にかかる建設事業費が軽減できることや、維持管理に関する費用を大幅に縮減できるなど、多摩地域全体の下水道事業運営の効率化が図られるといった効果がございます。
 次に、単独処理区編入に関する基本協定の内容と今後の取り組みについてでございますが、基本協定では、汚水の受け入れ先となる流域下水道の水再生センターについてや、編入に必要となる施設整備に関する都と市の役割分担などを定めております。
 今後は、汚水の受け入れ時期や受け入れ量など、具体的な事項について、八王子市、立川市と実施協定を締結し、編入の早期実現に向け積極的に調整を進めてまいります。
 編入に当たっては、両市においても、都市計画、事業認可変更などの法手続や、公共下水道管の整備等の取り組みが必要となります。そのため、東京都では、これまで培ってきた技術やノウハウなどを生かして技術支援してまいります。
 今後とも、市町村との連携強化を図り、多摩地域の下水道事業の発展に貢献してまいります。
   〔産業労働局長中西充君登壇〕

〇産業労働局長(中西充君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、中小企業の人材確保への支援についてでございます。
 中小企業が採用に当たり直面するノウハウや体制面での課題に対応した支援を行うことは、若者の中小企業への就業を促進する上で重要でございます。
 このため、都は、新年度から新たに若者の多くが利用いたします民間の就職情報サイトを活用し、中小企業の求人情報を効果的に発信してまいります。
 また、合同企業説明会を開催し、就職情報サイトの掲載企業と若者が直接交流する場も設けてまいります。さらに、ノウハウの不足する中小企業が円滑に採用活動を行えるよう、アドバイザーによる支援など必要なサポート体制を整備いたします。
 こうした取り組みを通じて、意欲ある若者の就業機会を確保するとともに、中小企業を人材面から支援してまいります。
 次に、中小企業の職場環境改善への支援についてでございます。中小企業の職場環境整備は、若者の職場定着のみならず、企業の人材確保にも資するものと認識しております。
 都はこれまで、事業主を対象とした労働相談やセミナーを通じて、企業の職場環境改善への助言等を行うとともに、仕事と生活との両立に関してすぐれた取り組みを進める中小企業を認定、表彰し、他の企業の参考となるよう、そのノウハウを広く発信してまいりました。さらに、業界ごとの実態に即して、雇用環境の整備を図ることが効果的であることから、労働時間の短縮などに自主的に取り組む業界団体やグループに対し、必要となる経費を助成する事業を新年度から開始いたします。
 今後も、こうした取り組みにより、若者がいきいきと働くことのできる企業の職場環境づくりを支援してまいります。

〇副議長(ともとし春久君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後四時五十三分休憩

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