平成二十五年東京都議会会議録第四号

〇議長(中村明彦君) 四番和泉武彦君。
   〔四番和泉武彦君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇四番(和泉武彦君) 初めに、在宅療養の推進について伺います。
 高齢者の多くが、医療や介護が必要になっても、住みなれた地域での生活を望んでおります。都が平成二十三年十月に実施したスポーツ・運動と保健医療に関する世論調査によると、約四割の方が、長期療養が必要となった場合に、在宅での療養を希望しているにもかかわらず、その中の約六割が、在宅での療養の実現は困難だというふうに思っております。
 私も、地元の葛飾区で、在宅療養支援診療所を開設し、通院困難な患者さんのご自宅を訪問し、二十四時間三百六十五日の診療を行っていますけれども、在宅医療に携わる医師として、病院が急性期の治療を終えた患者さんを在宅療養にうまくつなぐことができていないのではないかと疑問に感じることがあります。
 また、在宅での療養生活は、在宅医はもちろん、ケアマネジャーや訪問看護師、ヘルパーなど、さまざまな職種がチームとなって支える必要がありますが、一人の医師の力でこれらの多種多様な職種とのネットワークを構築することは難しく、そもそも私の地元では、在宅医療を負担に感じている医師もおり、在宅医療に携わる医師も、まだまだ十分ではないのかなというふうに感じております。
 そこで、病院を退院した患者の地域での受け入れ体制の整備について伺います。
 また、都立病院次期計画についての我が党の代表質問に対し、都立病院では、患者支援体制の充実を図り、区市町村や在宅医療実施機関である地域の医療機関等との協働を推進するなど、都民の医療ニーズに的確に対応できるよう取り組んでいくとの答弁がありました。
 そこで、都立病院では、地域の医療機関や在宅療養に対する支援を具体的にどのように進めていくのか伺います。
 続いて、認知症対策について伺います。
 国は、我が国の何らかの支援が必要な認知症の人の数は、これまでの予想を大幅に上回り、現時点で三百万人を超えております。十二年後の平成三十七年には、四百七十万人に達すると推計しております。
 都内においても、現在、何らかの支援が必要な認知症の人は二十三万人を超えており、平成三十七年には、約三十八万人に達すると推測されています。また、認知症の人の多くは在宅で生活しており、ひとり暮らしや高齢者夫婦のみの世帯の人の割合も増加しております。こうした中、国は、昨年九月に認知症施策推進五カ年計画、いわゆるオレンジプランを発表し、認知症施策の方向性を示しました。
 都がこれまで、国に先駆けて、地域で認知症の人と家族を支える仕組みづくりや、若年性認知症総合支援センターの開設などの施策を実施してきたことは評価できます。しかしながら、今後急増する認知症の人と、その家族を地域で支え、安心できる暮らしを確保していくためには、さらなる施策の強化を速やかに講じる必要があります。知事に意気込みを伺います。
 特に、認知症の人とその家族ができる限り住みなれた地域で暮らし続けるためには、認知症の早期の段階から高齢者の在宅生活を、医療と介護の両面で支える体制づくりが不可欠です。
 医療機関、介護事業者、地域包括支援センター、区市町村等の医療、介護分野の地域のさまざまな社会的資源が連携強化を図り、地域の実情に応じた認知症医療、介護のネットワークづくりを進めることが急務であると考えます。所見を伺います。
 次に、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターについて伺います。
 センターは、病院と研究所が一体化した法人であるという利点を発揮し、高齢者のための高度専門医療と研究を積極的に行い、これまで着実に実績を上げてきました。平成二十五年度からの第二期中期目標期間に臨み、我が党は、センターが認知症などの重点医療にかかわる課題に積極的に取り組み、社会的役割を果たしていくべきという提案を行いました。
 昨年の第三回定例会では、この提案を反映した中期目標を議決し、本定例会には、中期目標を踏まえた中期計画案が提出されています。平成二十五年六月には、いよいよ新施設での運営が始まります。新施設の機能も十分に活用して、都の高齢者施策に貢献すべきだと考えますが、今後のセンターの取り組みについて伺います。
 私の地元葛飾区を含む城東地区には、東京の製造業の事業所の約半数が立地しており、東京のものづくりを支える重要な役割を果たしております。しかし、その事業所の大部分は、中小零細企業であり、経済のグローバル化進展に伴う競争の激化により、大変厳しい経営環境にあります。
 このような状況の中、中小企業が持続的な成長を実現していくためには、付加価値の高い製品、サービスを提供することが必要です。その際にかぎとなるのは、いうまでもなく人です。多くの経営者が、人こそ競争力の源泉であると考えており、人材育成はますます重要なものとなっております。
 こうした中で、中小企業がみずから実施する教育訓練に対して補助金が出る幾つかの制度がありますが、必要不可欠な訓練にもかかわらず、職場の実情で小規模で訓練を行わざるを得ない、補助金の対象とならないという話を、経営者の方からよく耳にします。
 東京都は、中小企業の実情に即した人材育成支援を行うべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、高齢者の就業について伺います。
 少子高齢化社会が加速し、労働力人口の減少が見込まれる中、健康で意欲のある高齢者の一層の活用が求められています。このような状況の中で、本年四月からは、改正高年齢者雇用安定法が施行され、企業には、段階的に六十五歳まで希望者全員の継続雇用の制度の導入など、雇用確保措置が義務づけられます。
 一方、高齢者の中には、定年まで雇用されていた企業ではなく、その知識や経験を生かすことができるほかの企業での雇用を希望される方もいますし、また、いわゆる団塊の世代が六十歳代後半に到達する中で、年齢にかかわりなく働きたいという方も少なくありません。
 しかしながら、高齢者を取り巻く雇用環境は厳しいことから、再就職に向けた支援を強化していくことが必要です。さらに、高年齢になると、体力や意欲に個人差が出てくることなどから、本格的な雇用による働き方だけではなく、身近な地域で短時間だけ働きたいという方もおり、こうした高齢者の多様なニーズに対応していくことも必要です。
 このような中で、高齢者の就業を促進していくための支援を行っていく必要があると考えますが、見解を伺います。
 なお、雇用就業の施策に関して、基金を活用して行われている緊急雇用対応の事業について触れておきたいと思います。
 私の地元の葛飾区では、緊急雇用として、資源ごみの持ち去りを監視する事業などが行われ、地域住民からは高い評価を受けているものもあります。事業の財源がすべて基金で賄われているため、基金の設置期間が終わると事業が終了になるのはやむを得ないわけですが、事業効果の高いものについては、さらに実施内容に改善を加え、改めて都や区で事業展開を図るような発想も重要になることを申し上げておきたいと思います。
 最後に、葛飾区における木密対策について伺います。
 不燃化特区の先行実施地区である四つ木一丁目二丁目地区は、荒川や水戸街道などに囲まれ、古くは水戸街道沿いのまちとして、市街化が進んできた地区であります。震災や戦災にも被害を受けなかったため、都心から多くの方が移り住んできました。
 旧来、農地であった地域が宅地化され、この結果、細い通路や行きどまり道路が多く、建物の更新が進まない古い木造住宅が集まる危険な地域となっています。
 これまで、区によって主要な生活道路の拡幅整備など木密対策が行われ、不燃領域率が五五%程度まで向上してきていますが、まだ地域内の基盤が脆弱であり、京成押上線の連続立体交差化に合わせて、不燃化や道路整備など、まちづくりに取り組まなければならない地区となっております。
 この春から、不燃化特区として取り組みを進めることと聞いております。十年プロジェクトの期間内に実効性が高まる取り組みとなることが求められますが、四つ木一丁目二丁目地区は特区としてどのように取り組んでいくのか伺いまして、質問を終わらせていただきます。(拍手)
   〔知事猪瀬直樹君登壇〕

〇知事(猪瀬直樹君) 和泉武彦議員の一般質問にお答えします。
 認知症対策についてでありますが、認知症は、年齢を重ねる上での大きな不安であり、妄想や徘回の病状が出るなど、それを支える家族の負担も決して小さくありません。
 認知症については、現在、多くの研究が進められているが、いまだに特効薬は開発されていない。しかし、早期に発見し、治療を開始すれば、進行をおくらせたり、病状を軽くすることが可能なことはわかるようになりました。
 そのため、東京都は来年度、地域の力を生かした早期発見、診断、支援のための新たなシステムづくりを始めることとしました。
 具体的には、区市町村に認知症コーディネーターを配置し、かかりつけ医師や介護事業者と連携して、認知症の疑いのある高齢者を訪問し、早期発見を図るとともに、医師、看護師、精神保健福祉士によるチームが、疑いのある方を直接訪問し、治療の開始に結びつける取り組みであります。
 認知症高齢者グループホームについては、利用定員を、全国一律二ユニット十八人、一ユニット九人です、二ユニット十八人と規制するのではなく、大都市の実情に応じて、三ユニット二十七人まで緩和するよう、国に働きかけて実現しました。
 また、民間の力を引き出す東京都独自の補助制度によって整備は進めておりまして、二年後の平成二十六年度には、一万人分整備し、認知症高齢者の地域での住まいを確保したいというふうに考えています。
 今後とも、こうした具体的な政策を、医療、介護の両分野で充実させ、認知症になっても地域の中心で安心して暮らすことができる東京をつくっていきたい。和泉議員の日ごろの実践からも学ばせていただきたい、そう思っています。
 なお、その他の質問については関係局長から答弁します。
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、退院患者の地域での受け入れ体制の整備についてでありますが、都はこれまで、地域における在宅療養の取り組みを進めるため、病院から在宅への円滑な移行等を調整する在宅療養支援窓口の設置や、医療、介護の関係者等による協議会の設置に取り組む区市町村を支援してまいりました。
 また、医療職と介護職や、医療機関相互の理解を深める研修などを通じ、在宅療養患者を支える体制づくりを進めており、今年度からは、支援窓口でのサービス調整を担う在宅療養支援員の養成を開始いたしました。
 さらに、在宅医療に医師が取り組みやすくするよう、複数の在宅医が互いに補完し、訪問看護ステーション等とチームを組んで、二十四時間体制で訪問診療等に取り組む地区医師会への支援も行っており、今後とも、在宅療養を支える地域の連携体制を強化してまいります。
 次に、認知症対策のネットワークづくりについてでありますが、認知症高齢者の在宅生活を支えていくためには、お話のように、医療、介護の両面で、地域におけるさまざまな関係機関の連携を進めていくことが必要であります。
 都は今年度、都内十二の医療機関を東京都認知症疾患医療センターに指定して、医療と介護の連携に向けた取り組みを進めており、センターは、かかりつけ医や地域包括支援センター等関係機関からの相談に応じるとともに、連携協議会や研修会を通じ、情報の共有化を図っております。
 また、来年度は、区市町村に認知症コーディネーターを配置し、診療所や介護事業者、認知症疾患医療センター等と連携して、地域で暮らす認知症の疑いのある高齢者を早期に適切な支援につなげる取り組みも始めるなど、関係機関のネットワークをさらに強化してまいります。
 最後に、健康長寿医療センターの取り組みについてでありますが、センターでは、都が示した第二期中期目標に基づき、重点医療の充実、在宅療養の支援などについて、具体的な取り組みを盛り込んだ中期計画を作成したところでございます。計画では、血管内治療など高度専門医療の拡充や、がん医療に関する専門相談窓口の設置、緩和ケア病棟の開設など、高齢者の特性に配慮した医療を充実するとともに、在宅療養患者を一時的に受け入れるための在宅医療連携病床の確保などに取り組むこととしております。
 また、これまでの研究成果を活用し、かかりつけ医や介護事業者等を対象とした認知症研修のカリキュラムを作成するなど、都の認知症対策の推進にも貢献いたします。
 こうした取り組みにより、都における高齢者医療と研究の拠点として、その成果を広く都民に還元してまいります。
   〔病院経営本部長塚田祐次君登壇〕

〇病院経営本部長(塚田祐次君) 都立病院の在宅療養などへの支援についてでありますが、都民が住みなれた地域で安心して療養生活を送るためには、保健、医療、福祉が連携し、在宅療養を支える仕組みづくりが重要であります。都立病院では、患者のニーズを踏まえ、地域の医療機関等と連携し、これまで、紹介予約制の推進を図るとともに、医療福祉相談や看護相談などに取り組んでまいりました。
 次期計画では、患者の療養生活を支援するため、医師を初め看護師やソーシャルワーカー等で構成する患者支援センターを、各都立病院に設置することとしております。このセンターでは、区市町村や地域の医療機関、訪問看護ステーションなどとの役割分担を踏まえ、関係者との情報交換を行いますとともに、訪問看護のためのセミナーを開催するなど、関係機関と連携し、円滑な転院、退院や在宅移行に向け、相談支援機能を一層強化してまいります。
   〔産業労働局長中西充君登壇〕

〇産業労働局長(中西充君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、中小企業の人材育成に対する支援についてでございます。
 都はこれまで、国の認定職業訓練制度を活用し、企業が現場で実施する訓練を助成してまいりました。しかし、中小零細企業において一定数の訓練生の確保が困難となってきており、また、短時間の技能講習等の訓練ニーズが増加してきています。このため、必要な訓練であるにもかかわらず、支給要件に合わずに助成が受けられないという状況が生じております。より実態に合った支援のため、都は新年度より、都独自の助成制度を創設し、二人以上、六時間以上の小規模、短時間の訓練も助成対象とすることといたしました。
 今後とも、こうした取り組みを通じ、中小企業の人材育成をきめ細かく支援してまいります。
 次に、高齢者の就業支援についてでございます。
 少子高齢化の進展により、社会の支え手の減少が懸念される中、都は、改正高年齢者雇用安定法の改正趣旨等について、セミナー等により普及啓発を行っています。また、しごとセンターでは、就業相談や職業紹介、業界団体と連携した就職支援講習など、きめ細かい就業支援に取り組んでおり、新年度は相談員を増員するなど、就業相談体制を強化いたします。
 さらに、地域で臨時的、短期的な就業機会を提供するシルバー人材センターへの支援を引き続き実施するとともに、緊急雇用創出事業を活用し、就業促進につながる事業も検討してまいります。
 今後とも、高齢者がその意欲と能力を生かして活躍できるよう支援してまいります。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 葛飾区四つ木一、二丁目地区における木密対策についてでございますが、現在、都と地元区が連携を図りながら、この先行実施地区の整備プログラムを作成しております。その中で、お話の主要生活道路の整備については、用地折衝の専門家を派遣する新たな特区の制度を活用することで、現場の体制を強化し、取り組みを加速させることとしております。
 加えて、木密地域において特に課題となっている相続や借地権の問題等に対応するため、弁護士などの専門家を派遣する支援策を取り入れ、きめ細かい対応を図ることで、より実効性を高めてまいります。都は、こうした取り組みを支援し、不燃化を強力に推進してまいります。

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