平成二十五年東京都議会会議録第四号

〇副議長(ともとし春久君) 四十二番鈴木隆道君。
   〔四十二番鈴木隆道君登壇〕

〇四十二番(鈴木隆道君) まず初めに、スポーツ振興についてお伺いをいたします。
 スポーツは、人々の心と体の健全な発達を促し、人生をより充実したものとするとともに、地域の活性化やスポーツ産業の広がりによる経済的効果など、明るく豊かで活力に満ちた社会の形成にも寄与するものであります。言語や生活習慣の違いを超えて、人類が共同して発展させてきた世界共通の文化そのものであります。
 国は、一昨年八月に、スポーツ立国の実現を目指し、国家戦略として、スポーツに関する施策を総合的、計画的に推進するため、スポーツ基本法を施行いたしました。基本法では、スポーツを世界共通の文化であると位置づけ、障害者スポーツの発展についても言及をし、省庁横断的な組織であるスポーツ庁の設置についても検討することが盛り込まれました。まさにスポーツ立国に向けてようやくスタート地点に立ったところではないかとの印象を持っております。
 ただ、私といたしましては、国家戦略としてスポーツを推進するのであれば、スポーツ省を設置するのが至極当然のことであると思っております。日本はスポーツ後進国と世界から見られている可能性がもしかしたらあるかもしれません。
 例えば、我が国のスポーツを取り巻く環境を改めて見てみますと、必ずしもスポーツ立国にふさわしくないといえる実態がかいま見られます。
 例を申し上げます。パラリンピックの選手の中には日常生活にも苦労がありますが、それを乗り越えて自立し、収入を得て、世界のトップを目指しトレーニングを積んでいるという現実があります。果たして我が国はスポーツ先進国といえるのでありましょうか。
 オリンピック・パラリンピック招致をかち取るためには、国はスポーツ先進国といえる社会を実現し、強力に世界に示していかなければなりません。動きの遅い国を待っていたのでは、目前に迫っている招致レースを勝ち抜くことはできません。今こそ都がオールジャパンの中心となり、国を引っ張っていくべきと考えます。
 東京がスポーツ先進都市として世界に認められる、そのためにも、知事は、ぜひ招致都市の首長として、スポーツ都市東京の魅力をさらに一層世界に発信していくべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 次に、オリンピック・パラリンピック招致について伺います。
 まず、オリンピック教育についてであります。
 ロンドン・オリンピックの開会式には、崇高な理念と哲学があり、世界平和につながるロマンや歴史に沿った壮大なストーリーが表現されていました。まさにスポーツは文化であります。
 特に私は開会式でのアーティスティック・オリンピアードの場面で、元ビートルズのポール・マッカートニーの「ヘイジュード」を聞いたときに、涙があふれるほど感動をいたしました。
 ロンドンでは、二〇〇八年から四年間、カルチュラル・オリンピアードという文化プログラムが行われ、人々が魅了され、感動の渦に包まれたと聞いております。
 このようにオリンピックは、アスリートによる競技とともに、歴史や文化と最新のテクノロジーとが融合された新しいオリンピアードへと進化をしています。
 私は、オリンピックを東京に招致し、子どもたちに夢と希望、勇気を心の財産として伝えたいと切に願っています。そして、日本人の心、感性、美、和という我が国の伝統と歴史と伝統文化のよさを世界に発信していきたいと考えています。
 現在、小学校、中学校、高等学校の授業で、子どもたちがオリンピックについて学ぶこととなっていますが、カルチュラル・オリンピアードなど文化事業は日本では知られていません。こうしたヨーロッパのスポーツに対する文明に学ぶところは多いのではないでしょうか。
 私は、オリンピック招致を目指す東京にあって、オリンピックの崇高な理念や哲学、世界平和につながる歴史と文化について、子どもたちはもっと深く学ぶべきだと考えています。
 そこで、都教育委員会のオリンピック教育の取り組みについて所見を伺います。
 次に、海外の都市との交流について伺います。
 東京都ではこれまで、姉妹友好都市、アジア大都市ネットワーク21を活用した実質的な都市外交を推進してまいりました。特に各国の頭脳、心臓である首都、大都市が共通する課題の解決を目指すアジア大都市ネットワーク21の取り組みは、世界の三極の一つを占めるに至った近年のアジアの大躍進を予期していたかのごとき先見性を備え、都市の世紀である今世紀を象徴するものとして高く評価をしたいと思います。
 このネットワークの取り組みを活用した危機管理、感染症対策の推進や、先般、友好都市である北京市に対して行った環境協力の申し出などは、これまで養ってきた信頼関係に基づく課題解決への取り組みの好例ということができましょう。
 こうした交流や協力関係を通して、世界各国や主要都市の共感と信頼を得ることは、オリンピック・パラリンピックの東京招致にとっても非常に大切で重要なことであります。
 都市と都市の間には、身軽で自由な交流が可能であります。国家間の外交が停滞したとしても、政治体制や思想を超えてさまざまな分野で交流することができます。
 東京都は、これまで築いてきた信頼関係に基づく都市間交流をさらに発展させ、今後も世界の平和と繁栄に貢献しなくてはなりません。特に姉妹友好都市、アジア大都市ネットワーク21の会員都市とは、スポーツや文化、経済の分野での協力関係をより強固にするなど一層の連携を深め、この世界をともに牽引していく必要があります。
 国や在京大使館のネットワークも最大限活用しながら、こうした東京だからこそできる都市外交を推進することで、アジア諸国だけでなく、世界からの尊敬を集め、ひいては都が目指すオリンピック・パラリンピック招致の実現につながると考えますが、所見を伺います。
 本年一月、立候補ファイルを国際オリンピック委員会に提出いたしました。いよいよ国際招致活動が本格的に始動したのであります。
 本年九月には、二〇二〇年の開催都市が決定をいたします。我々招致を目指す都市では当たり前に思われますが、世界じゅうを見渡しますと、東京、マドリード、イスタンブールの三都市が招致レースを戦っていることをどれほど理解しているのでありましょうか。
 招致はいうまでもなく都市間の競争であります。この競争を勝ち抜くためには、東京がいかに世界に貢献をしているのかということをあまねく広く世界にアピールし、できるだけ多くの世界の国々からのサポートも得ることが大変重要であると考えます。
 もちろん我が国の中においても、スポーツ界に加え、都議会、国会、さらには財界なども含め、オールジャパンの総合力で国際招致活動を展開していくことが必要であることは申し上げるまでもありません。
 昨年の予算特別委員会におきまして、私は、国際的に通用する招致の顔ともいうべき人物がこの国際招致活動において何よりも重要であることを申し述べました。今日の日本、東京において、果たして招致の顔というべき人物、それはだれなのでありましょうか。もしかしたら海外にいる私人、法人がそういう人になり得るのかもしれません。
 一九六四年の東京オリンピック招致の際には、IOCに属する各国の大使が、当時の岸信介首相の親書を携え、招致活動を展開したと聞いています。現在は、IOCの行動規範があり、規制があるとのことでありますが、知恵を使っていかに行動するかということが大切なことであると考えます。
 さらに、ロサンゼルスでスーパー経営に成功した日系人、フレッド和田氏も、一民間人として私費で南米各国を回り、招致の票固めに尽力したということを聞いています。
 そこで、今回の招致活動を勝ち抜くためには、いわゆる海外サポーターの協力を幅広く獲得していくべきと考えますが、所見を伺います。
 一言申し上げます。オリンピックの招致に関して協力をいただけるのであれば、外国人の要人を含め、有名な選手等を含め、この日本のことを理解してくれるような人の強力なサポーターのネットワークをつくるというのも一案であるんではないかということもあわせて申し述べさせていただきます。
 次に、東京の資源循環について伺います。
 資源循環の中で、都民に最も身近な存在として古紙のリサイクルがございます。都民が古紙を資源として出す主な方法として、区市町村が行う行政回収と、町会、自治会等の住民団体が行う集団回収があります。
 古紙が製紙メーカーで再生利用されるという健全な古紙リサイクルを続けていくためには、都民が古紙を適正に分別して資源として出すことが継続をされる必要があります。
 しかし、あらかじめ集積所等に出された古紙を、区市町村や町会等が指定する業者が回収をする前に、一部の業者が勝手に持ち去る行為が見受けられます。これは、古紙のリサイクルに協力をしようとする都民の意欲を失わせる大変悪質な行為であります。
 各区市町村では、この持ち去りをなくすため、罰則つき条例の制定や現場パトロールの実施など、資源回収業界の方々と協力をし、また警察との連携も行いながら、それぞれの対策に取り組んでいるところであります。
 しかし、残念ながら被害は後を絶たず、条例違反で起訴されたケースはあるものの、いまだに根絶には至っておりません。
 そこで、この古紙持ち去りの実態と都の問題意識について伺います。
 次に、家庭ごみのリサイクルは、区市町村の責務ではありますが、持ち去り業者は特定の区市町村だけではなく、広域的、組織的に持ち去り行為を行っています。
 そのために、我が党はかねてから都に対して、広域的な立場からこの問題に取り組むことを求めてまいりました。悩みを抱える区市町村と一体となって早期の解決を目指すべきと考えますが、都の見解を伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事猪瀬直樹君登壇〕

〇知事(猪瀬直樹君) 鈴木隆道議員の一般質問にお答えします。
 スポーツ都市東京の世界への発信についてでありますが、東京はスポーツを大切にし、スポーツを愛し、人々がスポーツへの情熱を持っている都市であると。こういうことを、三月一日の朝、クレイグ・リーディー委員長が参ります。三月八日の金曜日まで一週間、いろんな形で歓迎をして、そしてプレゼンテーションをやります。
 そこで、まず去る二月二十四日の東京マラソンのこともお話しします。この東京マラソンは、三万六千人が参加して、沿道に百七十万人の観衆が出て、そして一万人のボランティアがいた。
 さらに、二人、心拍停止で倒れましたよね。そのときに、沿道の観衆やランナーがすぐAEDで、コースに七十台AEDを配置しまして、そのAEDですぐ回復しました。三万六千人出て死者が一人もいない。こういうホスピタリティー、おもてなしを含めて、こういうやり方ができると。この運営能力をきちんと証明してあるわけですから、それをどう上手に伝えるかということが重要だと思っております。
 さらに、三万六千人の人が新宿で荷物を預けて、そしてビッグサイトでまた個別にその荷物が一つも間違いなく、来たときの服を着て帰れる。ホテルのクローク並みですね。こんなおもてなしは日本にしかできないし、東京にしかできません。これを実証してきているわけですから、きちんと伝えていきたい、そう思っております。
 東京マラソンに象徴されるように、スポーツは自信や達成感、さらには考える力をもたらし、生きる力の根本となっていくと思います。自分でも四十二・一九五キロ、去年走りましたが、非常に自分にとっては大きな自信につながっております。
 そして、オリンピック・パラリンピックを展望しながら、より多くの人に、スポーツに対する欲求にこたえ、だれもが、いつでも、どこでもスポーツに親しむことができる。つまり、走る人もいれば、支える人もいる。こういうスポーツ都市東京の実現を目指していきたい。
 IOCに対するプレゼンテーション、とにかく本気で臨みます。そして、スポーツ都市東京の本当の生の姿をきちんと見ていただければ、必ずや招致活動は勝てると確信してアピールしていきたいと思っております。
 なお、その他質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長比留間英人君登壇〕

〇教育長(比留間英人君) オリンピック教育の取り組みについてでございます。
 オリンピック教育とは、児童生徒にオリンピックの歴史、文化や理念を教えるとともに、スポーツを通して精神と身体を健全に育て、平和な社会の実現に貢献できる人間を育成することであります。
 このため、オリンピック・パラリンピック招致を目指す東京にあって、都教育委員会は、児童生徒がオリンピックをさらに詳しく学習できるよう、補助教材の作成やアスリートの学校派遣を行うとともに、スポーツ教育推進校を三百校指定するなどの取り組みを展開しております。
 今後は、児童生徒がオリンピックの感動をアスリートから直接学び、将来に夢や希望を抱くことができるよう、オリンピック選手をすべての区市町村に派遣するなどして、オリンピック教育の一層の推進を図ってまいります。
   〔知事本局長前田信弘君登壇〕

〇知事本局長(前田信弘君) 都市外交についてでありますが、都は、単なる友好親善にとどまらず、都市の課題解決を目指した都ならではの実質的な交流を推進してまいりました。
 アジア大都市ネットワーク21では、産業、環境、文化、スポーツなどの共同事業に取り組むとともに、各都市の個別のニーズに応じました人材育成、技術協力につなげ、より緊密な協力関係を構築しております。
 成長を続けるアジアの活力を取り込みながら、経済のグローバル化など新たな課題にも対応し、アジアの発展に一層貢献してまいります。
 今後も、東京が持つすぐれた技術やノウハウを世界の各都市と積極的に共有することで、国際社会への貢献を果たしてまいります。
 こうした取り組みの積み重ねが東京の国際的なプレゼンスを高め、二〇二〇年オリンピック・パラリンピックの東京招致の実現にもつながっていくものと考えております。
   〔スポーツ振興局長細井優君登壇〕

〇スポーツ振興局長(細井優君) オリンピック・パラリンピック招致における国際招致活動についてでございます。
 招致の実現のためには、東京都、招致委員会、JOCはもとより、オールジャパン体制で東京の優位性や魅力を海外に向けて広く発信していくことが必要でございます。
 このため、招致委員会では、澤穂希選手、鈴木孝幸選手など、国際的に知名度の高いオリンピアン、パラリンピアンを招致の顔として招致アンバサダーに任命し、国際招致活動で活躍をしていただきます。
 また、観光分野における海外とのチャンネル、環境、水道などの分野での国際会議でのつながりなど、東京都を初め国や経済界などが有する海外とのルートも活用いたしまして国際プロモーションを行ってまいります。
 このように、あらゆるネットワークを駆使いたしまして、総力を挙げてIOC委員の投票行動につなげてまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 二点のご質問でございます。
 まず、古紙持ち去りの実態と、これへの問題認識についてでございます。
 区市町村による古紙回収に加えまして、都民の資源リサイクル意識の高まりに伴い、古紙の集団回収に参加する町会や自治会等の住民団体が増加をしてきております。
 古紙持ち去り行為は、こうした集団回収の実施日を調べ、受託業者のふりをして持ち去ったり、区市町村がパトロールを行う時間帯を避けて行うなど巧妙になり、被害は後を絶っておりません。
 こうした行為の横行は、古紙のリサイクルに協力している都民と行政、回収業界との信頼関係を損なうような事態をも招いておりまして、都民のリサイクル意識の高まりに水を差しかねない、極めて重大な問題であると認識をしております。
 次に、区市町村と連携した都の資源リサイクルの取り組みについてでございますが、都は昨年度、古紙持ち去りを防止するため、区市町村回収業者、古紙問屋、製紙会社、警視庁など関係者で構成する協議会におきまして、その対策を取りまとめました。
 その後、都が区市町村に罰則つき条例の制定を強く働きかけた結果、この二年間で新たに三つの市が条例を制定しておりまして、現在も関係者で情報交換会を行っております。
 また、区市町村が地域のリサイクル団体等と協力し、持ち去り行為の実態を詳細に調査する取り組みや新たな回収システムの調査検討など、これまでよりも一歩踏み出し、対策を強化する取り組みを開始しようとしておりまして、都は、地域と連携した環境政策推進のための区市町村補助制度を活用し、これを支援してまいります。
 今後とも、区市町村との連携を図り、資源リサイクルの取り組みを推進してまいります。

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