平成二十五年東京都議会会議録第四号

〇議長(中村明彦君) 二番加藤雅之君。
   〔二番加藤雅之君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇二番(加藤雅之君) 初めに、観光振興について伺います。
 観光庁が昨年発表した外国人旅行者に対するアンケート調査によると、旅行中に困ったことのトップが、無料公衆無線LAN環境が少ないとのことでした。そして、観光案内所にあってほしい設備のトップにも、公衆無線LAN環境が挙げられています。
 公衆無線LAN、これは一般的にWi-Fiと呼ばれていますが、無料のWi-Fiであれば、自国のメーカーの通信端末でも無線LANによる高速インターネット通信が可能となります。
 そこで、外国人旅行者が手軽に必要な情報を手に入れ、東京の魅力をより堪能できるようにするため、無料のWi-Fiスポットをふやすなど、情報通信技術、いわゆるICTを活用した観光情報の提供を推進していくべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、さきのロンドン・オリンピックでは、ロンドン市長が、オリンピックを開催するまでに、ロンドン交通局が所管する赤い二階建てのロンドンバスで無料のWi-Fiが使えるようにすることを表明し、そのとおり実現させました。
 また、東京招致のライバル都市であるマドリードでも、市内のバスで無料Wi-Fiが当たり前のように使えます。
 こうした中で、都バスは都心部をくまなく走り、オリンピックの予定会場を含め、都内の多くの観光スポットなどに運行し、しかも保有台数は約一千五百台にもなります。車内で無料のWi-Fi環境が整えば、乗りかえや目的地の情報など、素早く検索できます。オリンピックで東京を訪れた外国人の皆様の利便性が高まれば、その宣伝効果も相まって、利用者の増加も見込まれます。
 そこで、都営バスにおいても無料のWi-Fi環境の整備を行っていくべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、災害時帰宅支援ステーションとなるコンビニの一部などにおいては、既に、Wi-Fi対応端末さえあれば、その場でアドレスなどを登録するだけで高速無線LANを無料使用できるようにしております。
 また、二十三区の一部自治体でも、区有施設にWi-Fi端末を設置し、災害時にはフリーに使える環境の整備を行っています。
 都においても、都議会公明党も参加して昨年実施された帰宅困難者対策訓練を踏まえて、一時滞在施設や避難所において、ツイッターなどを利用した家族との連絡手段を確保しておくことは重要と考えます。
 そこで、都立施設を活用した一時滞在施設においては率先してWi-Fiを整備し、安否確認に活用すべきです。見解を求めます。
 次に、私の地元墨田区には、自立式電波塔として世界一の高さを誇る最先端技術の結晶ともいうべき堅牢な東京スカイツリーが天高くそびえております。
 しかし、その一方で、地域に目を凝らしてみると、昨年十月に公表された国交省が実施した地震等に著しく危険な密集市街地調査の面積比率で、墨田区は全国ワーストワンとなるなど、木造住宅密集地域の典型的なエリアです。それだけに住民の防火防災に対する意識は大変高く、都が進める防災隣組のモデルともいうべき住民組織が既に数多く存在します。
 細い通路や行きどまりが多い地域をくまなく歩くと、我が党が初期消火に活用を推進すべきと訴えてきた排水栓の存在に多くの方が気づきます。
 昨年、私は防災対策特別委員会でこの排水栓の消防活動への活用を取り上げました。これに対し消防庁は、水道局との間で排水栓の利用に関する覚書を締結すると答弁し、その後、実際に締結がなされました。
 また、水道局でも私道内給水管整備工事の施行対象を拡大し、排水栓が着実にふえていることを高く評価いたします。
 水道管路の耐震継ぎ手管を整備していくとともに、排水栓の増設に当たっては、危険度の高い地域を優先して整備を進めることが極めて重要と考えます。
 そこで、私道内給水管整備工事の今後の目標と優先整備の方針について見解を求めます。
 さらに、都内にはこうした排水栓が約二千カ所にありますが、それ以上に簡易排水栓は約七千カ所も設置されています。この簡易排水栓は、スタンドパイプの差し込み口は排水栓と同様ですが、放水の操作が難しく、応急給水には使えても初期消火の利用には課題があるとされています。
 しかし、私道の行きどまりに多く設置されており、木密地域に多いことなどから、震災時だけでなく通常の火災に対する延焼防止にも効果を発揮すると思います。地域防災力の強化の観点から、消火器よりもはるかに消火能力の高い簡易排水栓をできるだけ活用できるよう検討すべきであります。見解を求めます。
 次に、下水道幹線の再構築について伺います。
 さきの我が党の代表質問で、安全・安心な都市づくりをより一層強化すべきとの観点から、老朽化が進んだ下水道幹線の再構築の取り組みについて確認しました。規模が大きく大量の下水を集める下水道幹線が老朽化により機能を失った場合、その影響ははかり知れないものがあります。
 現在、下水道局は、区部にある約四百の下水道幹線のうち、昭和三十年代以前に整備され老朽化が進んでいる四十七幹線について再構築を進めておりますが、今後は損傷が多い幹線を対象に加え対策を行っていくとのことでありました。
 また、これらの幹線は規模が大きく、掘ってつくり直すことが困難なため、既存の幹線を生かした更生工法などにより再構築が行われます。
 さらには、水位が高いなど既存の幹線を生かすことが困難な幹線については、新たな幹線を整備してつけかえることの方が周辺環境への影響を抑えるといわれており、こうした手法も取り入れていくことを評価いたします。
 そこで、老朽化した下水道幹線の再構築工事と地元墨田区内の取り組みについて見解を求めます。
 次に、木密不燃化十年プロジェクトについて質問します。
 先月、木密不燃化十年プロジェクトの不燃化特区制度案が公表され、不燃化特区に対する特別な支援の項目の概要が明らかになりました。
 住民の合意形成の促進、不燃化の取り組みをスピードアップさせるための未接道敷地の先行取得、区が積極的に事業を進めるための支援など、多種多様な二十項目にわたる支援となっており、幅広く木密解消に対応できるものと高く評価いたします。
 地元では京島周辺と鐘ヶ淵周辺東の二地区が先行実施地区に指定されております。京島地区は昭和五十八年度から、鐘ヶ淵周辺地区は平成十八年度から再開発事業や木密整備事業、主要生活道路の拡幅整備など、木密解消に向けて区がさまざまな取り組みを進めてきました。それでも、特に京島地区では、平成二十三年度の不燃領域率が五三%であり、木密地域の解消がなかなか進んでおりません。
 そこで、木密地域の改善に向けて、今まで地元区が進めてきた取り組みと、今春からの不燃化特区としての取り組みはどう違うのか、支援策の具体策を含めて見解を求めます。
 また、長年の懸案事項であった補助一二〇号線鐘ヶ淵通りと東武伊勢崎線が交差する鐘ヶ淵駅前の踏切における渋滞対策や人身事故の危険解消に向け、都は補助一二〇号線の特定整備路線選定を機に、今こそ踏切対策を含め、関係者間で綿密に協議を行うべきだと考えます。
 一方、首都直下地震が切迫性を増している中で、木密地域の不燃化に向けた対策は待ったなしの状況であり、都は、延焼遮断帯となる特定整備路線の整備を急ぐべきです。補助第一二〇号線の未着手区間の早期着工に向けた都の見解を求めます。
 次に、マンションのエレベーター閉じ込め防止対策について伺います。
 都の被害想定では、首都直下地震が発生した場合、都内で七千台を超えるエレベーターに閉じ込められると予測されています。
 私はこれまで、委員会の質疑等で、都営住宅のエレベーターの安全対策の推進を求めてまいりました。その結果、都は、都営住宅すべてのエレベーターにP波感知型の最寄り階自動着床装置の導入を完了しました。
 しかし、その一方で、民間の建物ではまだまだ安全装置の導入が進んでおりません。エレベーターメーカーの調査では、都内約十五万台のエレベーターのうち、約七割がP波感知型の装置が未設置とのことです。
 平成二十一年度以降は建築基準法で安全装置が設置されておりますが、新耐震基準の建物であったとしても、平成二十年度までの建物については、エレベーターの閉じ込め防止対策を行うことは重要です。特に分譲マンションにはさまざまな考え方の権利者がいる中で、新耐震基準の建物において、新たに費用を負担してまでエレベーター改修の合意をとることは簡単ではありません。
 そこで、分譲マンションの権利者や管理組合に対して実効性のある普及啓発を一層促すことが大切です。都の見解を求めます。
 最後に、都立病院改革について伺います。
 都立病院は、平成十三年に都立病院改革マスタープランを策定し、大規模な再編整備や医療人材の確保、育成などによる医療機能の強化を図ってきました。
 その後も急速な少子高齢化の進行や病院数の減少など、医療環境の急激な変化を背景に、近年は特に高齢者の救急患者が増加しています。そのため、現在、都立病院が策定中である来年度からの次期計画では、こうした医療環境の変化に対応するため、東京ERの機能強化を図るとしております。
 墨東、広尾、多摩小児総合医療センターに設置された東京ERは、重篤な患者に対する救命救急センターを有し、三百六十五日二十四時間、一次から三次までの救急医療を提供しております。
 特に地元にある墨東病院のERは、区東部保健医療圏に中核病院が少ないということもあって、延べ患者数、年間五万人以上を受け入れています。地域にとっては身近な存在であってほしいという期待も高く、大きな役割を果たしております。
 墨田区内では、平成二十三年度中、救急車が一万六千件余り出動しました。こうした増加する救急搬送に対して、消防庁では先月、向島消防署墨田出張所に新たに救急隊を発足させ、多くの都民から、安全・安心が前進したとの声が届けられております。次は受け入れ先の確保であります。
 高齢化が進み、医療と介護の連携や、急性期から回復期への転院に当たって、患者や家族との相談体制もますます重視されています。
 そこで、今後の墨東病院におけるERの強化と患者サービスの向上について見解を求め、質問を終わります。(拍手)
   〔産業労働局長中西充君登壇〕

〇産業労働局長(中西充君) 加藤雅之議員の一般質問にお答えします。
 ICTを活用した観光情報の提供についてでございますが、外国人旅行者がスマートフォンなど自分の携帯情報端末で必要な情報を容易に入手できることにより、旅行者の利便性が向上し、より快適な東京滞在につながるものと認識しています。
 そこで、都は新年度、新たな取り組みとして、都内各所の観光案内窓口や宿泊施設において、無料公衆無線LAN、いわゆる無料Wi-Fiの整備を進めます。
 また、スマートフォン向けの観光ウエブサイトを作成するなど、外国人旅行者に対する情報提供の充実を図ります。
 一方、ICTの活用に当たっては、技術の進歩や普及の速度が速いことから、都としてはこうした動向も踏まえながら、旅行者の利便性の向上に向けてWi-Fi環境の整備などの取り組みを進めてまいります。
   〔交通局長中村靖君登壇〕

〇交通局長(中村靖君) 都営バスにおけるWi-Fi環境の整備についてでございますが、交通局では、これまでも都営地下鉄の駅構内でスマートフォンなどで快適にインターネットを利用できるよう、Wi-Fi環境の整備に積極的に取り組んでまいりました。
 都営バスにおいても、このほど策定した平成二十五年度を初年度とする三カ年の交通局経営計画二〇一三の中で、Wi-Fiなどの無線LAN機器の設置場所としてバス車内を提供していくことで、インターネットへの接続環境を向上させることといたしました。
 今後、通信事業者から提案を受け、無料Wi-Fiなどの通信環境の整備を進め、平成二十五年度には、渋谷から六本木、新橋を走行する都01系統に導入するなど、お客様のより一層の利便性向上を図ってまいります。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 一時滞在施設におけるWi-Fiの整備についてでございますが、大規模災害発生時、帰宅困難者の方々が一定期間、一時滞在施設に待機するためには、家族等との安否確認や災害関係情報の収集を可能とする環境整備が不可欠であります。
 このため、都立施設を活用した一時滞在施設には、特設公衆電話の配備に加え、通信の制約を受けにくいインターネットやSNSを活用できるWi-Fiのアクセスポイントを整備してまいります。
 こうした取り組みにより、行き場のない帰宅困難者の施設内待機を徹底してまいります。
   〔水道局長増子敦君登壇〕

〇水道局長(増子敦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、私道内給水管整備工事の目標と優先整備の方針についてであります。
 私道内の給水管につきましては、さきの東日本大震災での被害状況を踏まえ、昨年九月から全面的に耐震化を進めているところであり、十年後の耐震化率七五%を目標に整備を進めております。
 整備に当たりましては、全体的なバランスに配慮しつつ、震災被害想定の内容を勘案して実施してまいります。
 次に、簡易排水栓の活用方策についてであります。
 私道の末端などに設置しております都内約七千カ所の簡易排水栓につきまして、今後、東京消防庁などと連携し、詳細にわたってその活用を検討してまいります。
   〔下水道局長小川健一君登壇〕

〇下水道局長(小川健一君) 下水道幹線の再構築工事についてでございますが、工事に当たっては、道路を掘らずに下水を流したままで、管の内側から補強する更生工法などを活用しております。これにより、工事現場周辺のお客様への影響を少なくするとともに、工期短縮やコストの縮減を図ってまいります。
 墨田区内では、既に再構築を完了した錦糸町幹線などに引き続き、明治通りに埋設した砂幹線などの再構築を進めるとともに、今年度は業平橋ポンプ所に流入する横川幹線に着手いたしました。
 今後は、下水の流れを切りかえるための新たな代替幹線として、京島、文花周辺地域等の下水が流入する京島幹線を整備してまいります。
 今後とも、下水道幹線の再構築を着実に進め、将来にわたり安定的な下水道機能を確保してまいります。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、不燃化特区についてでございますが、現在、都と墨田区が連携を図りながら、京島周辺地区及び鐘ヶ淵周辺東地区で、先行実施地区として整備プログラムの作成を進めております。
 その中で、お話の主要生活道路の整備などについては、不燃化特区制度により、弁護士や税理士等の専門家を派遣し、これまでの取り組みを加速させることとしております。
 また、墨田区では老朽木造建築物の建てかえを促進させるために、新たにまちづくりステーションを現地に設置し、生活再建プランの提示や住民個別の相談にこたえるなど、きめ細かい対応を図ることとしております。
 都は、このような区の取り組みを支援することで、不燃化を強力に推進してまいります。
 次に、補助一二〇号線の未着手区間についてでございますが、この区間は、鐘ヶ淵地区の延焼遮断帯を形成する防災上重要な路線であることから、都は区と連携して沿道の地権者に直接働きかけるなど、街路整備を契機としたまちづくりの理解を深める取り組みを進めてきております。
 さらに、首都直下地震の切迫性等を踏まえ、これまでの取り組みを加速させるため、木密地域不燃化十年プロジェクトの一環として、この区間を特定整備路線に選定いたしました。
 また、この沿道を含む地区を不燃化特区の先行実施地区として、現在、区とともに整備プログラムの作成を進めております。
 都は、燃え広がらないまちの実現に向け、本区間の早期の事業化に取り組んでまいります。
 最後に、分譲マンションにおけるエレベーターの閉じ込め防止対策についてでございますが、都はこれまでも、管理組合等に対して、毎年の定期検査報告の機会をとらえて、P波感知型装置の設置やロープの外れどめ対策など、エレベーターの耐震性を高める設備の改善を促してまいりました。
 また、昨年九月から、管理組合に対し、保守点検業者等の協力のもと、閉じ込め防止対策のリーフレットを配布しており、今後はこれに加えて、区市が設置するマンション相談窓口や管理会社等の関係団体を通じて配布することで、さらに周知を強化してまいります。
   〔病院経営本部長塚田祐次君登壇〕

〇病院経営本部長(塚田祐次君) 都立墨東病院のERの強化などについてでございますが、高齢化の進行により合併症を有する患者や重症患者が増加しております。こうした環境の変化に対応するためにも、高度で質の高い救急医療を提供することが重要であります。
 このため、次期計画では、重症患者への対応としてICUの増床、心疾患への対応として心臓疾患特定集中治療室などの整備を行いますとともに、医師や看護師の確保などを進め、墨東病院のERの機能強化を図ります。
 また、急性脳血管障害などの救急患者の病態の改善を図る高気圧酸素治療室を都立病院のERでは初めて設置いたします。
 加えて、急性期を脱した患者の円滑な地域医療機関への移行を支援するため、患者支援センターを設置し、患者、家族との相談体制を強化いたします。
 今後とも、墨東病院は区東部保健医療圏における救急医療の拠点としての役割を果たしてまいります。

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