生涯を通じた国民皆歯科健診の実現に関する意見書

 現在、我が国では、法律で義務付けられた歯科健診として、母子保健法に基づく乳幼児歯科健診、学校保健安全法に基づく児童生徒に対する学校歯科健診などが行われている。一方で、成人期以降については、健康増進法及び高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、40歳、50歳、60歳、70歳の歯周疾患検診や後期高齢者歯科健診が行われているものの、義務付けがされていない。また、事業所における歯科健診は、労働安全衛生法に基づく歯科特殊健診として、対象者が有害業務に従事する労働者に限られている。このため、成人期以降の歯科健診は十分とは言えない状況にある。
 近年、多くの研究により、歯の本数とフレイルや認知症の予防を含む全身の健康状態、歯周病と全身疾患との関係等についての科学的根拠が明らかになっている。人生100年時代を迎える中で健康寿命を延ばすためには、歯を含めた口腔(こうくう)内の健康維持が極めて重要であり、ライフステージに応じた切れ目のない歯科健診の受診機会を確保する必要がある。
 都においても、生涯にわたる歯と口の健康づくりに関し、都民の自主的な取組を促進するとともに、全ての都民が必要な歯科保健医療サービスを受けることができる環境を整備するため、東京都歯科保健推進計画「いい歯東京」を策定し、都民の歯と口の健康づくりを推進しているところである。
 こうした中、令和4年6月7日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022」において、生涯を通じた歯科健診、いわゆる国民皆歯科健診の具体的な検討を行うことが初めて盛り込まれた。
 よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、国民皆歯科健診の実現に向けた具体的な検討を早急に進めるとともに、次の事項を実現するよう強く要請する。
1国民皆歯科健診の実現に向けた法改正を早期に行うこと。
2国民皆歯科健診の制度設計等に関する具体的な検討を進めるに当たっては、地方自治体をはじめ関係者の意見を十分に反映させるための必要な措置を講ずること。
3国民皆歯科健診の実施に関しては、国において十分な財政措置を講ずること。
4国民皆歯科健診の実現と併せて、国民に対して歯と口腔(こうくう)の健康づくり及び歯科健診の重要性についての啓発や健診受診後の定期的な歯科受診の勧奨を行うなど、歯科疾患の発症や再発、重症化予防のための総合的な取組を推進すること。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
 令和5年10月5日
東京都議会議長 三宅しげき
衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 総務大臣 財務大臣 文部科学大臣 厚生労働大臣 経済産業大臣 内閣官房長官 経済財政政策担当大臣 宛て
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