消費者のための新たな訴訟制度の創設に関する意見書

 全国の消費生活相談の件数は、平成22年度で約89万件と依然として高い水準が続いている。都内においては、同年度で約12万5000件の相談が寄せられており、特に60歳以上の高齢者からの相談件数は過去最多、被害金額も高額となるなど深刻な状況である。
 一方、現在の訴訟制度の利用には相応の費用・労力を要することから、事業者に比べ情報力・交渉力で劣る消費者は、被害回復のための行動を起こすことが困難である。また、これまでの消費者団体訴訟制度では、適格消費者団体に損害金等の請求権を認めていないため、消費者の被害救済には必ずしも結び付かないという課題がある。
 そこで、消費者のための新たな訴訟制度の案が、平成23年8月に消費者委員会集団的消費者被害救済制度専門調査会において報告書に取りまとめられ、現在、その法案化が消費者庁において準備されている。
 この制度案は、共通争点を有し多数発生している消費者被害を対象とし、手続追行主体を内閣総理大臣が認定する適格消費者団体に限定している。また、訴訟手続を二段階に区分し、一段階目の訴訟で事業者側の法的責任が認められた場合に、二段階目で個々の被害者が参加し簡易な手続で被害額を確定し被害回復を図るという仕組みとなっている。
 本制度案は、消費者にとって費用・労力の面で現行制度より負担が軽減されるとともに、対象事案も事業者が紛争全体を見通すことのできる契約関係を中心に選定するなど、事業者にも配慮のあるものとなっている。
 よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、消費者委員会の報告書の内容を踏まえ、消費者のための新たな訴訟制度について、平成24年1月に開催予定の通常国会に法案を提出し、早期にその創設を図るよう強く要請する。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
  平成23年12月15日
東京都議会議長 和田宗春
衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 総務大臣 消費者及び食品安全担当大臣 宛て
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